3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第13話です。


第13話:ジンとニューとドーナツ戦争

「兄さーーーーーーーーーーーーーん!!」

「ラグナーーーーーーーーーーーーー!!」

「うるせーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 ブレイブルー学園では、今日もラグナ争奪戦が行われていた。

 ジンが叫ぶ、ニューが抱きつく、ラグナが返り討ちにする。

 その流れが毎日のように起こるのである。

 

「シザーーーーーーーーーー!!」

「あーーー!兄さぁぁぁぁぁぁん!!」

「にゅーー!ラグナにゅーーーーーーーーー!!」

「毎日毎日……いい加減に俺に付きまとうんじゃねえ!!」

 

 今日も無駄にゲージを五十はき、二人を撃退する。

 しかし明日も襲いかかってくるのだろう。そう思うだけで気が疲れるラグナ。

 

「はぁ……なんで兄さんは僕の愛情をわかってくれないのかな~」

「ラグナを幸せにできるのはニューだけなのにな~」

 

 一方で。

 吹き飛ばされた二人はというと、当然懲りてなどいなかった。

 どうして自分のアプローチが効いていないのかと悩む限りである。

 明らかにそれが愛情などと軽いものではないというのに、それに気づくことも気づこうともしない二人であった。

 

「はぁ?貴様のような小娘が兄さんを幸せになんかできるわけないだろうが、このクズが。」

「そういうジンこそ、兄弟だかなんだかしらないけど、ラグナは男だよ。ジンに傾くはずがないよ~」

 

 こういう風に喧嘩をする始末である。

 どちらがラグナにふさわしいかと、襲撃後にはいつもこうやって言い合っている。

 

「同姓だからなんだ? 兄さんと僕の兄弟愛に同姓などという壁はもろく崩れるんだよ」

「うっわキモ~、そんなの幻想にすぎないよ・ラグナにはきちんとした女性が必要なんだよ~」

「きちんとした女性? 笑わせるな貴様のどこがきちんとした女性だ。ただの病んでるだけのガキ娘だろうが」

「病むほどに愛する恋だよ、それに病んでるのはジンだって同じでしょ~?」

 

 ああ言えばこう言う二人。

 そして口喧嘩で済むならまだしも、ジンは剣を取り、ニューはユニットを召喚する。

 口で言ってもわからぬならば実力でと、二人は睨みあう。

 

「貴様……切り殺されたいのか?」

「ジンこそ……私に刺し殺されたいの?」

「うーーーーーーーーーーーー!!」

「むーーーーーーーーーーーー!!」

「兄さんは僕のものだ!邪魔する者は……排除する!!」

「ラグナは私のものだよーーーーーーーーー!!」

 

 数分の死闘の末。

 互いの実力はほぼ五分であり、決着など付くはずもなくただただ無駄な体力を使うだけ

 この二人は犬猿の仲、ラグナを求めるもの同士なにかと喧嘩をするのである。

 

「はぁ……はぁ……このヤンデレ娘が・・・」

「はぁ……はぁ……キモメンめ~」

「ちょっと二人とも、また喧嘩してるの!?」

 

 喧嘩をしている二人の元へ、ライチがやってきた。

 ライチは二人が喧嘩するところを何度も見てきた。

 そして小さいながらも怪我をしてきている。この二人は時より喧嘩のレベルでは収まらず、殺し合いをやることもあった。

 

「もう二人とも!喧嘩しないで仲良くしなさい!!」

「うるさい! こいつが悪いんだ!!」

「いや! ジンが悪い!!」

 

 ライチは二人を叱るが、二人は効く耳をもたない。

 そっちが悪い、あっちが悪いと。互いに譲らない様子。

 互いにヒートアップしていき、第二ラウンドが始まろうとしていた。

 

「だまれーーー! 貴様みたいなやつが兄さんに触れるなんて許されないことだ!!」

「ジンこそいい加減兄離れしろーーーーー!!」

「あなたたち……」

 

 見るに堪えかね、ライチが恐怖の笑顔を二人に振りまいた。

 すると二人は身体が竦み、ぴたりと口を閉じる。

 そしてライチが萬天棒をがしっと握って、二人に付きつける。

 

「私……全シリーズを通しての安定した強キャラなんだけどなぁ~」

 

 かつてはCS時代にバングと並び二強と呼ばれたライチ。

 その後弱体化を繰り返してもなお、人口の少なさから来る対策のしづらさと、凶悪な起き攻め、二択により相手を圧倒し続けてきた。

 そんなライチのおぞましい笑顔によって、二人の喧嘩はぴたっと止まり、今日という日は丸く収まった。

 その後ジンは去り際、煮え切らない怒りを抱きながら兄への思いを口走っていた

 

「くっそあの小娘! 絶対やつより先に兄さんを手に入れる!!」

 

 ジンは強く決心する。

 あんなジャリガールに愛する兄さんを渡してたまるかと、娘を大事に思う父親とはまた違う変な感情を抱いていた。

 ジンは考える。ならばどうすればラグナを自分の方へ引きつけられるか。

 ジンがラグナのところへ向かえば、必ずといっていいほどニューがオプションとしてついてくるのだ。

 それで結局はニューと争いになり、ごちゃごちゃしたところにラグナのカーネイジシザーが飛んでくる。

 そう、ジン的にはニューがいなければいいのである。やつが現れるから作戦がめちゃくちゃになってしまう。

 ニューよりも多くラグナに接近し、コミュニケーションを取る方法。

 

「しかしそれならそれであいつと同じ作戦を使っていては埒が開かないな、それなら……」

 

-----------------------

 

 数日後。

 

「さてと、ミスドの百円セールは今日までだったよな……」

 

 今、ミスドカグツチ店では、全ドーナツの100円セールをやっていた。

 ラグナはドーナツが好きである。しかしお金に余裕がないため安く売っている時しか基本行かない。

 

「たくさん買って、家で映画見ながら食うかなっと」

 

 そう思い、ラグナがミスドの店内に入ると……。

 

「「いらっしゃいませ~!!」」

「……え?」

 

 そこにいたのは、ミスドで働いているニューとジンであった。

 なんとも意外なことがラグナにとって起こってしまった。

 まずどうしてお前らがいるのか、てかなんでお前らがいるのか。

 色々聞きたかったが聞くことがこの二人がどうしているのかだけだったことを知るのは数分後の事。

 ラグナは白い目で店内を見渡す。だが戸惑うラグナに二人は容赦しない。

 

「……」

「お客兄さん、どのドーナツをお取りしますか~?」

「お客ラグナ~、私というドーナツをお取りしますか~?」

「さ~て、今日はケンタにするか……」

「(二人揃って)ちょっと待ってーーーーーーーー!!」

 

 ラグナは何食わぬ顔で、何もありませんでしたという顔で隣のケンタに行こうとした。

 そんなラグナを逃がすまいと、ジンとニューは全力で引き留めた。

 引きとめられ、本当に仕方ないなと、めんどくさいなといった面持ちでラグナが二人に尋ねる。

 

「なんでてめえらがここにいやがる?」

「少々諸事情があって~(なんでニューまで!)」

「同じくだよ~(なんでジンまで!!)」

 

-----------------------

 

 それはセールの初日までさかのぼる。

 

「よろしく、君たちの研修を担当するバレットだ」

「はい! 少しの間だと思いますがよろしくおねがいします!!」

 

 ジンはラグナがミスドセールでドーナツを買いに来ることを知っていた。

 なのでミスドのアルバイトをして、待ち伏せをしようと企んだのであった。

 顔もよく仕事もできるジンはすぐさま採用され、難なくミスドに居座ることに成功した。

 

「にしてもまさかキサラギ先輩と同じところでアルバイトとは、学校では君が先輩だがここでは私が先輩だからな」

 

 ちなみにジンとバレットは同じ学年である。

 ジンはA組だがバレットはB組、その違いはあれど学年は同じ。

 なのにもかかわらずジンは皆から先輩と呼ばれている。その理由はジンがラグナのために留年し続けているからである。

 いつまでたっても卒業しないジン。そのことでラグナと喧嘩をした数は覚えていない。

 

「……こいつにまで先輩と呼ばれるのか」

「一応私はノエル達と同学年同年齢ということになっているからな。立場上の敬称をきっちりしておくのも戦場では当たり前の事だ」

「いや、だからここは戦場じゃなくて職場だから……」

 

 相変わらずバレットは全てにおいて戦闘を基準に考えているようだ。

 

「しかしこの地区だって戦争をしているぞ、このミスドの両端にそびえ立つ建物。マックとケンタだ」

「……確かに、有名なチェーン店がわざとらしく立ち並んでいるな」

「おかげさまでお昼時になると両端に客を取られてしまうんだ」

「まあ、昼飯食べるところじゃないからな」

 

 確かに昼飯だと一番候補になるのはハンバーガー。少しお金があればフライドチキンだろう。

 一応三時のおやつ時には両端に勝てるというが、それでも人気は三番手らしい。

 

「"どなるど"と"かーねる"の噂は聞いているぞ。なんでも長年の間果てしない殺し合いをしているそうじゃないか」

「大体それらはネットのコラだけどな」

「特にどなるどは子供たちを洗脳して兵士にしていると聞く。奴は魔術師の類なのか? 確か呪文は「らんらんる~」だったか」

「違うからあれはネタだから、どなるどそんなことしないから」

 

 世間に疎いバレットからすれば、あのようなコラ画像も全てが本物に見えてしまうようだ。

 先ほどまでボケに回っていたジンが冷静にツッコミをするほど、バレットの天然は恐ろしいものだった。

 

「にしても我々ミスド軍にも活路が見え始めてきたな」

「ミスド軍ってなんだ……」

「イケメンのキサラギ先輩に加え、もう一人可愛い子まで入ってきたからな」

「可愛い子……?」

 

 バレット曰く、このタイミングでもう一人ミスド軍に加わった者がいると言う。

 噂をすれば、その可愛い子が後ろからやってきた。

 そしてジンは、そいつの顔を見て驚愕の表情を浮かべる。

 

「店長~!ドーナツ揚がりました~!!」

「御苦労、ニューちゃん」

「いえいえ……ってジン!?」

「ニュー!? なんで貴様までそこにいる!?」

 

 そう、ミスドに同時期に入ってきたのはニューだった。

 ニューもまた、同じことを考えていた。ラグナの行動を予測してこの場へやってきたのだ。

 

「え~! ちょっと本気で落ち込むんだけど~」

「それはこっちのセリフだ!!」

 

 結局のところ二人はまたしても、同じ考えをしてしまったのだ。

 ラグナに対する思いはほぼ一緒、ならば考えることも同じということなのだろうか。

 

「どうした二人とも、会って早々喧嘩して」

 

 当然バレットは二人の事情を知らない。

 ちなみにバレットはまだ一度もデレたジンを見たことがない、ニューに至ってはほとんど接点がない。

 なのでこの二人に対しては、新鮮な気分を抱いていた。

 

「キサラギ先輩とサーティーン君はどういった関係なんだ?」

「恋敵だ」

「同じく」

 

 二人がそう答えると、バレットは首をかしげた。

 互いに性別が違うのに恋敵とは、おかしなことを言うものである。

 

「貴様がミスドだと? どうせ一番好きなのはエンゼルフレンチとかメジャーな答えしかできないんだろうが」

「私はハニーチェロが好きなの、ジンこそエンゼルフレンチとかつまらない答えしかできないんでしょ~?」

「エンゼルだと? 何を下らぬことを……僕は根っからのポンデ派だ。」

「うっわ、ポンデとか……小学生のような趣味してるんだね~」

「ポンデを舐めるなよ貴様!あの新食感を理解できないとはミスドで働く資格など無い!!」

 

 と、お互いミスドが好きなのかは分からないが、お互いに否定をし合っては己のミスド愛を主張する。

 こんなところでも譲らない二人、見兼ねたバレットはロックオンを発動し二人に焦点を当てる。

 

「な……なんだこれは!?」

 

 見慣れない技にジンが驚く。

 バレットのロックオンは己の周りに円陣を作りだし、領域に入った者を投げ飛ばす技なのである。

 

「この領域は私のテリトリーだ。今は仕事中だ。下らぬ会話は後にしてもらおう」

 

 それを聞くと、二人はごくりと唾をのみ、喧嘩を止めた。

 確かにここで喧嘩をしていても拉致が開かない。やりすぎてアルバイトをクビになっては目もあてられない。

 

「二人とも、戦場は時として敵と共闘しなければならない時がある。生き残るために己のプライドなど意味を成さないのだ」

「いや、僕たちはそんな大それたことは……」

「今の私達は仲間同士だ。お客という敵をいかに捌くか、それだけを考えろ」

「お客が敵っておかしくないかな?」

「心が乱れるのなら二人とも、今すぐ狂暴なポンデライオンを想像するんだ」

「「なんでだよ!!」」

 

 淡々と己の理論を語るバレット。

 話を聞いている限りでは何が何だかわからない。もうミスドってなんだっけってレベルである。

 そうこうしていると、お客が何名か入ってきた。お客はすぐさまジンとニューに目を付ける。

 

「きゃーーー! 可愛い女の子に美少年だーーーーー!!」

「な……なんか多くないか?」

「私ミスドにここまで人が来たの初めて見る……」

 

 やはりイケメンと美少女効果は大きいのだろう。

 百円セールなのもあっていつもよりお客が多く入るミスド。

 バレットはそれを見て計画通りと、口元に笑みを浮かべる。

 

「ミッションスタートだ二人とも、夕日を拝められるかは君たちにかかっているぞ!!」

「そんな!僕は兄さんを……」

「ラグナが来ると思ったのに……」

 

 ここまでお客が多いと、もう本来の目的どころではない。

 ラグナを待つということは他の客を相手にすることというのは予想通りであったが、こうも辛いものだったとは。

 と、そこで二人は考えた。

 ここで出来る店員をアピールすれば、常に表場に出られると。

 そしてどちらかが隙を見せヘマをすれば、調理場に回されるはずだ。

 ならばやることは一つだった。ジンはニューより、ニューはジンより。

 自分が優秀であることをアピールすることだ。

 

「は~いポンデお待ち~!!」

「ハニーチェロも食べていってね~」

 

 ジンとニューはどんどんドーナツを売っていく

 気がつけばポンデとハニーチェロだけが他のドーナツより無くなっていた。

 

-----------------------

 

 そんなこんなでセールの最終日、ようやく二人が求めたラグナが店にやってきたのだ。

 

「……」

「待ちわびたよ兄さん、初日や二日目には来ると思ったのに~」

「まさか最終日に来るなんて、焦らしちゃってさ~」

「ぶっとばしてぇ……ぶっとばしてぇけど……店の中だちくしょーーー!!」

 

 こんな変な理由で、尚且つ自分をただ我が物にするためだけにここまで頑張ってきたとなれば、ラグナは呆れてものも言えなかった。

 その頑張りに報えればいいのか、踏みにじればいいのか。それすら考えることもめんどくさかった。

 

「さて兄さん、どのドーナツにする?ポンデ?それともポンデ?」

「いやいやハニーだよね?ハニーーー!!」

 

 ポンデかハニーか、それはジンかニューかどっちにするかということである。

 というかこの二人が勝手にそう解釈しているだけである。ラグナはこの二択にそんな大きな思いが込められている事など知らず、自分の趣味で答える。

 

「とりあえずエンゼルだな。」

「な!?」

「え!?」

 

 ラグナは迷わずエンゼルフレンチを指名した。

 初日、あれほど馬鹿にしたエンゼルを、ラグナが選んでしまったのだ。

 それは、ラグナの趣味を散々馬鹿にしていた……ということである。

 二人は意味のない無駄な罪悪感に打ち拉がれながら、それらの過去を抹消するために必死になる。

 

「……う……うわ~兄さん僕の好きなドーナツと一緒だなんて~」

「はぁ? ジンはポンデが好きなんでしょ? 私はもちろんエンゼルが好きだよラグナ~」

「なに? そういうお前はハニーチェロが好きとかほざいてただろうが、僕の方がエンゼルが好きだ!!」

「ふざけないでよ! さんざんエンゼル馬鹿にしてたくせに!!」

「馬鹿にしてたのは貴様のほうだろうがーーー!!」

 

 またもくだらないことで喧嘩する二人。

 ラグナはそれを遠目で見ていた。そして……。

 

「あのよ……早くしてくんねえかな」

「あ……」

 

 ラグナはポツンと立っていた。

 いつもは敵になっているのに、なんか置いてかれたような感じになっていた。

 ここにきてまさかの蚊帳の外である。ひょっとしたら逃げるタイミングだったかもしれない。

 

「とりあえずこんなもんかな?」

 

 ラグナは手早くドーナツを四~五個ほどお盆の上に乗せた。

 

「ではお買い上げ……あれ兄さん、ポイント溜まってるね」

「あぁ、そういや結構溜まってたな」

「そうだね……じゃあこのポンデバスタオルにしようよ、そして僕と兄さんが……きゃ☆」

「何が「きゃ☆」だ。このバカ!!」

 

 お会計の時まで容赦のないジン。

 ラグナはドーナツを買いに来ただけなのに、すでに疲れきっている。

 

「バスタオルで巻かれるのはニューとラグナだよ~」

「どっちともしねえよ! だぁもう俺は帰る!!」

「あ~兄さんーーー!!」

「ラグナーーー!!」

 

 こうしてラグナはぐったりと、イライラしながら店を出た。

 

「ったくあいつらそろそろいい加減にしろよ……」

 

 ここまでされると、さすがのラグナも限界だった。

 いつも悪気はない悪気はないと甘く見ていたが、今回ので考えが変わったのである。

 何か痛い目を合わせたい。そして少しでも反省してほしいとラグナは道中ぶつぶつ考えていた。

 

「あれ?ラグナ先生じゃないっすか?」

「おう、マコトじゃねえか。それにノエルとツバキも……」

 

 道中、ラグナは仲良し三人組に出会う。

 

「先生もドーナツですか?」

 

 ノエルに聞かれ、ラグナはうなずく。

 若干疲れが出ていたが、それを見せるとこいつらに迷惑がかかるかなと、それを見せないように振舞うラグナ。

 

「いいですよねドーナツ! もう100円セールを今日この日まで忘れていたとは……マコト一生の不覚!!」

「何が一生の不覚よ、というかあなた放課後の居残りが忙しくてミスドに来れなかったでしょ」

「えっへへ、そうでしたそうでした~」

「マコト、ツバキ、早く買いにいこうよ~。ではラグナ先生また明日~」

「お~う……」

 

 ノエル達の去り際、ラグナは途端に何かを思いついた。

 今、ノエル達が向かうミスドには、ジンとニューが働いている。

 ジンとニューが一緒にいる。その理由は当然、ラグナを求める者同士だからである。

 そこでラグナは思った。その理由を"別の理由"にすり変えることはできないかと。

 色々考え、ラグナは去り際のノエル達を横目にぼそりと呟いた。

 

「……この際だから少しあいつらに痛い目みせてやるか」

「え?今なんか言いましたか先生?」

「お前ら、実は……実はな~」

 

-----------------------

 

 ミスドにて……。

 

「くっそ! お前さえいなければもう少しうまくいったんだ!!」

「それは私のセリフだよ!!」

 

 ラグナが去った後でも、二人は喧嘩をしていた。そんな中。

 ピロピロピロ~。

 ミスドの自動ドアが開き音が鳴る。

 

 

「ぐ……客か、いらっしゃいませ」

「いらっしゃいませ~」

 

 先ほどとは打って変ってローテンションな二人。

 そして入ってきた客はノエル達三人組。

 これにはジンも意外だったようで、心配をかけないように普通に振舞うことにした。

 

「ジン……兄様……」

「おや、ツバキ。君たちもドーナツを買いに来たのかい?」

 

 先ほどまでとは打って変って、普通の先輩としての姿を見せるジン。

 ジンからすればラグナへの態度は見られていない(実際はみんなに見られておりジンが気づいていないだけ)。

 なので今のジンは間違いなく、後輩を思いやる優しい先輩だった。ただし障害は除く。

 

「ジン……キャラ変わりすぎ~」

「貴様……あとで覚えてろ……」

 

 ニューが横目にちょっかいをかけてくるが、思念を奥に引っ込めて正常に振舞う。

 

「うっわ~ラグナ先生が言っていたことは本当だったんだ~!!」

「正直、驚きました……」

 

 三人が店内に入ってきて数秒、ジンはマコトとノエルの言葉を聞いて何かに気づく。

 マコトは眼を光らせ、ノエルは顔を赤らめ、そしてツバキは無茶苦茶落ち込んでいた。

 それぞれ三人の態度が異なっている。仲良くミスドにやってきたのならこれはおかしい。

 まさか道中でツバキに何かがあったのか、にしてもそれにしてはマコトの態度がおかしい。

 ツバキを心配する様子がなく、なにやらとても輝かしいものを見るような目でジン達を見つめる。

 

「……なんだ?何かが変だ。」

「マコトちゃん、ラグナがなにか言ってたの?」

 

 感のいいニューはすぐに気付いた。

 ラグナが去ってから数分後にこの三人が来たということは、この三人はラグナに会っているのだ。

 ということはこの不可思議な状況にはラグナが一枚噛んでいる可能性がある。

 

「もうもう! 隠さなくてもよかったのに! 隅におけないな二人とも!!」

「な……なんの話だ?」

 

 マコトにそう言われても、ジンとニューには覚えがない。

 いったいなんのことだろうと、そう思った矢先。

 ノエルが二人に対して、とんでもない一言を放った。

 

「ラグナ先生が言ってたんですけど、お二人……本当に"付き合って"たんですね……」

 

 ……。

 ………。

 

「「……はあーーーーーーーーー!?」」

 

 ジンとニューは声を揃えて叫んだ。

 当たり前である。いったいどうすればそんなありもしない噂が立つのだ。

 そしてラグナがどういう思いでそんなことを言い出したのか、この二人には理解できないのである。

 

「息もぴったりだよ! ラブラブだな~」

「ちょ! 君たちそれは大きな間違いだ!」

 

 マコトがちゃかすが、ジンは必死に否定する。

 よりにもよってどうしてニューなんだと、脳内で思うジン。

 

「私がなんでジンなんかと付き合わなきゃいけないの!!」

「それはこっちのセリフだ!!」

 

 すぐさまジンが思ったことをニューが口に出す。

 再三喧嘩が始まろうとするが、ここで変に喧嘩を始めている場合ではない。

 

「うっわ~照れてる照れてる! それに喧嘩もしてるし~!!」

「ち……違うってば!!」

「とってもお似合いですよ~」

「黙れこの障害ーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 マコトとノエルはラグナのその嘘に対し、すっかり信じこんでしまっている。

 そう、ラグナは二人がそろってバイトをしてることをいいことに、二人が付き合ってるという嘘をついたのである。

 もしその噂が広まれば、自分に襲撃をかけている時間なんて無くなると、ラグナは踏んだのである。

 

「兄様……」

 

 今までジンが変態であっても、ブラコンであっても、想いを寄せ続けてきたツバキ。

 そんなメンタル状態の中で囁かれたのがよりにもよってこんな嘘。ツバキにすれば効果覿面だった。

 

「ツ……ツバキ! これは違う……違うんだよ!!」

「……兄様……兄様」

 

 ジンは必死にツバキを宥めるが、すでにツバキは自分の世界に入っている。

 ジンはこの時だけ、ニューに対しお願いをした。お前からもこの誤解を解けと。

 

「ツバキちゃんもさ! 私がジンと付き合うはずがないじゃん!こんなキモいやつt」

「ジン兄様を馬鹿にしないで!!」

「は!?」

 

 こんな状況下であっても、ツバキはジンを崇拝している。

 そして湧き出る悲しみが怒りに変わる。自由と、正義がツバキを支配する。

 

「そんな勝者の余裕なんていらないわ……」

「しょ……勝者って、だからそんなんじゃ……」

「私のフリーダムがジャスティスしそう、フリーダムがジャスティスよ。そうよフリーダムがジャスティスなのよ!!」

「意味がわからないよツバキちゃん!!」

 

 なんかもう壊れてしまったツバキ。

 自由だの正義だの口にし、もう正気に戻る気配がない。

 一方のマコトはなにやらスマフォを取り出し、ツイッターを書き始めた。・

 

「これはニュースだよ、明日のBB学園ニュースの特賞狙えるよこれーーー!!」

「いやまてマコトくん! これは違うんだ!!」

「戦場の中で芽生える恋心か……」

「何を言っているんだお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 仕舞にはバレットまで参加しだし、ラグナの目論見通り、ジンとニューはひどい目に会った。

 まさかそこまで効果があったとはつい知らず、ラグナは家でドーナツを食べていた。

 

「ふっふっふ……これでしばらくは俺に襲いかかってこないだろ」

 

 ラグナはその夜、笑顔でドーナツを食べたという……。




BBCPのオンラインロビーで私を見かけることがありましたら、対戦の方をよろしくお願いします。レオパルド出ない病を患っているアズラエル4段です。
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