3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第十八話です。


第18話:ラグナ、記憶を失う

「さ~て、これで買い物はすんだな」

 

 ある日の夕方、ラグナは買い物のため近くのスーパーに行っていた。

 一人暮らしであるが料理好きのラグナはほとんどが自炊、レトルトや弁当に頼る日はよほど忙しい時くらいである。

 今日は大好物の天玉うどん、なんでも今日に限ってうどんが大安売りしていたからである。

 そのうどんを何玉か買えてご機嫌のラグナ。後はこのまま家に帰ってうどんを作るだけ。

 

 ……だったのだが。

 

キーーーーー!!

 

「うん?うわあああああああああああ!!」

 

 その帰りの道での出来事だった。

 ラグナはよそ見をしていたため、曲がり角から来た大きなトラックが来るのに気づくことができなかったのだ。

 結果、ラグナはトラックにひかれてしまい病院に運ばれてしまった。

 彼の場合は体力が他の人より低いため、本来バング先生ならばかろうじて助かるところ彼の場合は重傷だった。

 病院にて手術を行い、なんとか一命を取り留めたラグナ。

 

「……う……ん?」

「先生!よかった……先生が目を覚ました!!」

 

 目が覚めたラグナのそばにはノエルがいた。

 ラグナが病院に運ばれたことを聞きつけた彼女は、満身創痍の思いですぐに病院にかけつけたのだ。

 ラグナはここ4~5時間は寝ていたようで、すでに外は真っ暗。本来学生がいてはいけない時間である。

 

「あ……ここ……は?」

「病院ですよ、先生トラックに引かれて重症だったんですよ?」

 

 ラグナは周りを見渡す。

 病院に一室、上を見れば知らぬ天井。傍にはカグツチの最新医療機器。

 自分の身体は思ったよりも素直に動き、手を握ってみたりする。

 そして近くにいるノエルの顔を再度見る。その時、ラグナのとある異変が明らかとなった。

 

「え~と、君……だれ?」

「……え!?」

 

 なんと、ラグナはノエルの顔を見てもノエルのことをわかってはいなかった。

 そう、彼はトラックにひかれたショックで、すっぽりと記憶をなくしてしまっていたのである。

 いくら格ゲーのキャラとはいえ全速力の10tトラックにひかれればただでは済まない。身体は蒼の魔道書で回復できても精神的ダメージまでは回復しきれていなかった。

 その事実を知ったノエルは焦りを覚える。

 

「そ……そんな……私ですよ!ノエル!ノエル・ヴァーミリオンですよ!!」

「え~と……ナイチチ」

「ちげえよ!!一文字もあってねえよ!!」

 

 どうしてそのあだ名は覚えているのか、ノエルは思い切り否定をするがやはりラグナはノエルを覚えていない模様。

 どうしよう、とノエルがあたふたしていると、後ろからラグナの怪我を知ったジンとニューがやってきた。

 

「兄さん!大丈夫!?」

「ラグナ!!けがしたって聞いたよ!!」

 

 病室に入るなり心配の眼差しでかけよるジンとニュー。

 この二人はまだラグナが記憶喪失であることを知らない。知ったらどれだけ悲しむことだろう。

 ……と、思っていると。

 

「おうジンとニューか、俺はピンピンしてるぞ」

「……え?」

 

 ラグナは記憶喪失、先ほどノエルがその様子を確認したはず。

 だが、そのラグナがなんとジンとニューを見て名前を発した。そのことに首をかしげるノエル。

 様子のおかしいことに気づいてつかの間、今度はハクメン先生とバングがやってきた。

 

「まったく心配掛けさせよって……」

「相変わらずしぶといでござるな~」

「ハクメン先生にバング先生、ったく俺はトラックごときで死なねえっての」

 

 覚えていたのはジンとニューの事だけ、というわけではなかった。

 立て続けにハクメン先生とバングの名を口にするラグナ。

 この現象にはいても経ってもいられなくなり、平和ムードをぶち壊す覚悟でノエルが口を挟んだ。

 

「ちょ……ちょっとまったーーーーー!!」

 

 急にノエルが大きな声で会話に割って入ってくるので、みんながノエルの方を見る。

 

「どうしたノエルよ?」

「ラグナ先生が無事でいい雰囲気になっていたでござるのに……」

 

 ハクメン先生とバングの視線が冷たい。

 雰囲気をぶち壊しにしたことは空気を察すればわかる。

 だがノエルには確認しなければならないことがあるのだ。

 

「障害、お前等々空気すら読めなくなったのか?」

「KYなのはよくないよノエルちゃ~ん」

 

 ジンとニューにはさらにきつく言われ押され気味のノエル。

 だが引いてはいけない、ノエルはとても大切なことをラグナに問いただした。

 

「いやいや確かにそうかもしれませんが!先生あなた記憶喪失じゃないんですか!?」

 

 ノエルのそれを聞いて、他の4名は首をかしげた。

 確かに先ほどラグナはノエルのことを覚えていないそぶりを見せた。

 そしてラグナは素直のままに答える。

 

「え……え~とその……すまねぇ。お前だけ誰かわかんないんだけど……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ノエル他4名は黙り込む。

 特にノエルは軽いショックを表情に浮かべた。

 そして重苦しく口を開く。

 

「……左から順番に名前を言ってってみてくれませんか?」

「ジン、ニュー、ハクメン先生、バング先生……」

「………」

 

 ジン、ニュー、ハクメン先生、バングまでは完璧に覚えている。

 だが、ノエルの顔を何度見ても。ノエルの名前はラグナの口から出ることはなく。

 数秒の沈黙の後、ラグナはぽかんと口に出した言葉がこれである。

 

「……誰?」

「なんで私だけ覚えてないんじゃーーーーーーーーーー!!」

 

 そう、ラグナはなぜかノエルの記憶だけ失っていたのだ。

 ノエルのことだけがすっぽりと抜け落ち、それ以外は普段と何ら変わりない。

 だがこんなバカみたいな話はない。そこでノエルは思った。

 冗談好きでいつも自分をバカにしている先生のことだ。きっと演技に違いないと。

 

「おいてめえわざとじゃねえよな?からかってるんじゃないですよね!?」

「ノエル殿、落ち付くでござる!!」

「そんな簡単に変身するな!!」

 

 ノエルはあまりのひどさに怒りを表に出し、ミューに変身してラグナを問いただす。

 バングとハクメン先生が全力でミューを制止する中、ラグナは思い出したように言った。

 

「おう、ミューじゃねえか」

「なんでこっちはわかるんじゃーーーーーーーーー!!」

 

 ラグナは怯むことなく、ノエルじゃなくてミューの名前を口にした。

 結局ノエルに戻ると(目の色が変わっただけなのに)ラグナは思い出せず、何が何だかわからないとノエルをぱちくり見つめた。

 

「いくらラグナ先生が冗談好きでも、これは本当っぽいな」

「確かにやりそうではあるでござるが……」

 

 バングの言う通り、確かにラグナはこの状況下でもノエルをからかいそうではある。

 だがハクメン先生も腕を組み、ラグナの表情を見る限りこれが演技でないことはわかる。演技ならば微弱ながら笑みを浮かべる。ハクメン先生ならそれを見過ごすことはない。

 演技でもなくからかうのでもない。ラグナは本当の意味でノエルの事を忘れてしまった。どういう流れでなぜノエルだけなのか、それは誰にもわからない。

 

「本当に思い出せねえ、冗談抜きで」

「な……なんで……」

 

 ひどく落ち込むノエル。

 だがそんな彼女にさえ容赦なく、ジンが切り口を入れた。

 

「単純に嫌われていたからじゃないのか、障害」

「んな!?」

 

 ノエルは予想以上に傷ついた。トドメとしては申し分ない一言。

 嫌われていた。つまり思うことのない駄目な生徒だったからラグナはあっさりノエルを忘れてしまったのか。と。

 その言い分にはさすがにほどかったのか、バングが軽く注意をした。

 

「ジン、言っていいことと悪いことがあるでござるよ」

「ちっ」

 

 舌打ちをするジン。

 次にニューが励ましのつもりでこんなことを言う。

 

「でもさ、ここにいるメンバーだけ覚えてて、ひょっとしたら数人くらい忘れてるかもよ~」

「た……たしかに!いくらなんでも私だけってことは……」

 

 この場にいるのはノエルを含め5人。

 学校には校長をはじめラグナの知人は数多くいる。ならばどこかこっか忘れている人もいるはず。

 本来ならこういうことはあってはいけないとは思っているが、ノエルはこの差別的行為にひどく頭を悩ませ、正義論を語る暇さえない。

 

「とりあえずだ。この程度の度の低い記憶喪失なら、明日になったら回復してるだろう」

 

 きっと近いうちに治るだろう。それに記憶を失っているのならココノエにでも直してもらえばいい。

 そんな軽い気持ちでハクメン先生はいい、ラグナは落ち込むノエルを励ますように頭に手を置き言った。

 

「まあなんだ。俺もかんばって思い出すからさ、ノエルちゃん」

「う………」

 

-----------------------

 

 そして次の日

 

「おはようノエルちゃん」

(思い出してねえ……)

 

 翌日、ラグナは昨日のままだった。

 しかも慣れない呼ばれ方をされ抵抗感を覚えるノエル。

 

「さてと、みんなに会ってみるか」

 

 自称記憶を失った男ラグナ。

 自分の記憶はどれだけ通用するのか。学園内を一通り周ってみる。

 ちなみに学園の内部に関して忘れている事はなく、順序良く学園内を進んでいくラグナ。

 

「ツバキおはよう、マコトおはよう、マイもカジュンも元気そうだな。ライチ先生にハザマ先生、テイガー先生にココノエ先生」

「………」

「タオカカ、アラクネ、カルルにニルヴァーナ、ラムダにレイチェル校長に(ry」

 

 結論的に言おう。

 ラグナは会うたび会うたび出会う生徒や教師の名前を次々と当てていった。

 つまり、ノエル以外で覚えていない人物は一人もいない。正真正銘彼はノエルの記憶のみを失っていたのだ。

 

「え~と……その……」

「なんで私だけ忘れてるんじゃーーーーーーーーーーー!!」

 

 この事実に等々涙まで出始めるノエル。あまり表に出ることのないマイ・ナツメやカジュン・ファイコットの名前まで覚えているのだからもう悪意すら感じる勢いであった。

 主要人物なら覚えていても話はわかるが……、今まで先生にどれだけ迷惑をかけてしまったのだろうか。

 ひょっとしてミューになった際に傷つけたことをまだ根に持たれていたのだろうか。

 そんなことをたくさん頭に思い浮かべ、嘆くノエル。

 

「だから怒るなでござる!!」

「一応ラグナも病み上がりだよー!!」

「うぅ……」

 

 ノエルをたしなめるバングとニュー。

 だが事実は残酷で、覚えていないものは覚えていない。

 ノエルがどれだけ傷ついているかもよく理解していない今のラグナは、気軽にこんなことを言う始末である。

 

「とりあえずまあ、ゆっくり思い出してくからさ。ノエルちゃん」

 

 まただ。ノエルはその呼ばれ方にひどく寒気を感じる。

 今まで気軽に名を呼んでくれていた先生が遠くに行ってしまうような。

 

「……めてください」

「……え?」

「その、"ノエルちゃん"っていうのやめてください!!」

 

 ノエルはいつになく強く言った。堪えていた感情を全て乗せた、心の底からの一言だった。

 まるで自分だけ置いてけぼりにされているような気がしてたまらなかった。

 今までラグナと過ごした日常が消えてしまいそうで怖かった。

 その恐怖が、ノエルにそれを強く言わせたのだ。

 

「え~、じゃあナイチチちゃんとか」

「それもちげえよ!!」

 

 かといってそのあだ名を認める気はないし言わせない。流行らないし流行らせないのである。

 そこらへんはきちんと否定しておきつつ、ノエルは自分を呼び捨てにするように促した。

 

「じゃあ"ノエル"でいいのか?」

「そうです。なんか先生が遠くに行ってしまったみたいで……いやだったんですよ」

「ノエル……」

 

 ノエルの心情を察し、ラグナは今ようやく自分が彼女を傷つけている事を知った。

 無意識であるが彼の一言一言が彼女をどんどん追い詰めていっている。それを悟ったラグナはひとまず職員室へと向かった。

 今はあまり話さない方がノエルのため。あまり記憶喪失の件で迷惑をかけさせまいと。

 そんなラグナの心遣いだった。

 

-----------------------

 

 ラグナが記憶喪失になってから3日後。

 未だにラグナの記憶(ノエルだけの)は戻っていない。

 このまま黙っていても戻る気配がない。悩んだノエルはマコトとツバキも呼んで3人で考えることに。

 

「う~ん、なんとかして先生に私の記憶を思い出してもらわないと……」

「ついでにノエルの胸もでかくしてもらわないとね~」

「今言わなくていいよねその話!あ~いいよねマコトは!胸でかくてさ!!私にも少し分けてほしいな!!」

「えっへへごめんごめん、分けてあげられないんだよね☆」

「そっち!?そっちを謝るの!?」

 

 マコトにいらんことを言われからかわれるノエル。

 しかし今はそんなコントを繰り広げている余裕などない。

 ツバキはそんな二人に呆れながら、自分なりの意見を語った。

 

「ツッコミを連発してる場合じゃないでしょ、そうね……やっぱり記憶を思い出させるにはショックを与えるのが一番ね」

「さすがツバキ、頼りになる~!!」

 

 記憶を失ったらショックを与えて戻す。よく言われている仮説である。

 ラグナに強いショックを与えることで抜けた記憶を完全に取り戻させるのである。

 ツバキの全うな意見にノエルは賞賛を送るのだが。

 

「ということは、先生を思いっきり殴りころ……殴ってみるのがいいわね~」

 

 ツバキは不気味な笑みを浮かべてそう言った。

 ショック療法を提唱したわいいが、明らかに別の目的がある。

 ツバキの下心を察したノエルは、ジト目でツバキを見て冷静に言う。

 

「……その案はいいけどツバキはかかわらないで」

「え~、なんでよノエル~」

 

 いつものツバキらしくない態度。

 ジンをたぶらかすラグナに対して、ツバキはいつも壊れるのである。

 

「私がやるから、ツバキに任せると先生が危ない」

「しょうがないわね、じゃあ"お願い"ねノエル」

 

 その"お願い"は何を意味しているのだろうか……。

 色々考えたが気にしない方がいいと、ノエルは話を続ける。

 

「でもさ、教師を殴るのはだめだよ~」

 

 ラグナにショックを与える。ということは手っ取り早いのは暴力である。

 だが生徒が教師に暴力などご法度。マコトはそう思い暴力での作戦を却下する。

 

「仮に打ちどころ悪ければ、ノエルのことを思い出すどころかみんなのことを忘れちゃうかもよ」

「う……そう、だよね」

 

 しかし殴る以外のショック療法などあるのだろうか。

 だがマコトは用意周到だった。そう考えることを想定しておきあらかじめ別の作戦を考えていたのだ。

 

「だから、殴るよりも効率のいいショック療法があるんだけど~」

「え!? なになに?」

「それはね~」

 

 ひそひそとその作戦をノエルに耳打ちするマコト。

 その作戦の全容を聞いて、ノエルはぽんと手を叩いた。

 これならいける。確実にラグナは記憶を取り戻す。そう確信するほどの完璧かつ効率の良い作戦。それは……。

 

「ラグナ先生、ちょっといいですか?」

「ああ、なんかいい案でも思いついたのか?」

 

 放課後、ノエルはラグナの元をおとずれた。

 そしてラグナの記憶をっ取り戻すべく、"あるもの"をラグナに見せた。

 

「その……先生の記憶が戻るように、"クッキー"を焼いてきたんですけど……」

「!?」

 

 その言葉を聞き、咄嗟に反応したのはハクメン先生であった。

 ハクメン先生がすさまじい勢いでゲージを貯め、アンリミ式自動雪風ですぐさまノエルを連れ出し職員室を出た。

 その一連の流れにラグナは何が何だかわかっていない。だがハクメン先生は全てを悟っていた。

 

「きゃ!何をするんですかいきなり」

「何をするんですかはお前の方だ」

 

 それはこちらの台詞だと言わんがごとく、ものすごい剣幕でハクメン先生はノエルの迫る。

 だがノエルからすればただクッキーを食べさせたいだけである。というかその行為がどれだけえげつないものか未だに本人は理解していない。

 

「おいしいものを食べさせればうまくいくってマコトが言ってたんですよ、愛情たっぷりの料理で」

 

 マコトはうまくごまかしたつもりで言ったのだろう。

 ハクメンはなんということをノエルに吹き込んでしまったのかと呆れながら、言葉を返す。

 

「ショック療法のことを言っていたんだろうがそれはずれてるようで正しい……否、ずれまくっているようでずれまくっている!!」

 

 確かにノエルのクッキーをラグナに食べさせると違う意味でショック療法になる。

 だがそれはショック療法などというレベルで解決してはならないため、やっぱりショック療法ではないのである。

 ……総合すると、ハクメン先生の言っている事は意味不明であった。自分でも何を言っているのかわからなくなったハクメン先生はわかりやすく安直に言った。

 

「とりあえず……これをラグナ先生に食べさせるくらいなら思いっきりラグナ先生を殴れ!!」

「なななな……なんでそこまで否定的なんですか!?」

 

 クッキーを食べさせるくらいならば暴力行為を見逃す。とハクメン先生は言うのだ。

 ノエルには何が何だかわかっていない。未だに自らが作る料理がカタストロフィーを引き起こすという事実に気づいていないのである。

 だが、問題はここからだった。ここから予想外の事態が判明する。

 

「ひどいんじゃないですかハクメン先生、せっかく生徒が料理を作ってくれたんだ、食ってやるのが良心ってもんよ」

「ラ……ラグナ先生!?」

 

 これはハクメン先生自体が予想してすらいなかったであろう。

 ラグナはノエルに関する記憶を全て失った。ということはノエルが作り出す料理(へいき)のすさまじさに関する記憶も"失っている"のである。

 予想外の事態にハクメン先生は戸惑いを隠せずいた。

 

(しまった!こいつノエルの料理に関しての記憶も失っているのか!?)

「う~ん、ちょっとどどめ色だが見た目より味だろう……いただきま~す」

「ま、待てラグナ先生!!」

 

 モグモグ……ドサっ!

 それを口にした瞬間、ラグナ先生は静かに倒れた。

 最強のショック療法、その領域に踏み入れた二人はすぐさまラグナのもとへ駆け寄る。

 

「ちょ……ラグナせんせーーーい!!」

「しっかりしてください先生!!」

「う……う~ん」

 

 どうやらラグナはまだ生きている。

 そしてゆっくりと目を覚ます。ノエルは必死にラグナを呼び掛けた。

 

「先生!先生!!」

「あ。……ノエ……ル?一体どうしたんだ?」

 

 と、ノエルはここで今までとは違う雰囲気を感じた。

 ラグナがノエルの名を呼ぶ際の懐かしい感覚をノエルは感じ取った。

 

「せ……先生もしかして……クッキー一ついかがですか!?」

「はぁ!?お前なんの冗談だよ!お前のクッキーなんざ食ったら地獄逝きだ!!」

「よ……よかったーーーーーーーーーー!!」

「なんで!?意味わかんねえし!!」

 

 ラグナはノエルの料理のすさまじさを覚えている。

 すなわちラグナはノエルの記憶を取り戻したということである。

 ノエルの料理によって、ラグナのノエルに関しての記憶は全て元に戻ったのである。

 恐るべきノエルの料理、それは医学の領域にすら力を及ぼす。さすがの結果に他のみんなも圧倒されるだけであった。

 

「人の記憶を戻すか、あのクッキー……良い研究材料になりそうだ」

「いやいやココノエ先生それはちょっと……」

 

 騒ぎを聞きつけ、ココノエとライチとバングがやってきた。

 ノエルのクッキーに興味津々のココノエ。そしてそれをジト目で見るライチ。

 

「にしてもよかったでござるなノエル殿、そしてラグナ先生」

 

 何はともあれ全てが解決した。

 バングがうんうんと笑顔で解決を喜んでいると。

 また、あらたなる問題が発生した。

 

「……え~と、あなたたち……誰?」

「…………え!?」

 

 なんということか。ラグナは今度は"ノエル以外の記憶"を失ってしまった。

 ノエルのクッキーの威力はすさまじく、ノエルの記憶を取り戻す程度では済まなかったということである。

 当然この状態は前よりたちの悪い。それを知ったジンとニューはノエルに迫りくる。

 

「障害~!!」

「ノエルちゃ~ん!!」

「ひぃ~ん!ごめんなさ~い!!」

 

 しばらく二人に追いかけ回され、泣き叫びながら逃げ回るノエルであった。

 ちなみに、その後ラグナが正常に戻れたかは誰も知らない……。

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