3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~ 作:トッシー00
「御苦労さま、後は僕がやっておくから」
「でも、ジン兄様……」
「君は課題が忙しいんだろ?大丈夫、僕ならこれくらい1時間で終わるよ」
ブレイブルー学園、生徒会。
この学園の治安を守るため、そして良い学校にしていくため、忙しい日々を過ごしている。
この学園の生徒会長の名は、ジン・キサラギ。
数多くの女生徒を引き付ける綺麗な容姿、そして学園トップの成績。運動神経抜群。
世に言う天才、イケメンとはまさに彼の事。名家キサラギ家の名に恥じないその立ち振る舞いは、この学園の誇りでもあった。
「で、では失礼します。」
「ツバキ、遠慮しなくていいんだからね」
「は……はい!!」
そしてもう一人。
ツバキ・ヤヨイ、ブレイブルー学園の生徒副会長。
彼女もまた名家ヤヨイ家に生まれ、気品のあるまじめを絵に書いたような少女である。
男子だけでなく女子生徒からも憧れの対象として見られ、けして人を差別などしない、誰にでも平等に立ち振舞う優しい性格の持ち主。
文武両道、容姿端麗。そんな美少女がそこにいた。
そんな彼女は、生徒会長であるジン・キサラギに恋をしていた。
昔からの幼馴染であり、子供の時から仲良く遊び、共に競い合っていた仲だ。
ジン自体あまり他人と触れ合わない消極的な性格だが、このツバキにだけは兄として深く接していた。
ジンからすればツバキは可愛い妹であり、ツバキからすればジンは理想の兄、そして興味惹かれる異性であった。
ジンの何気ない優しさに心打たれたツバキは、一人廊下を彷徨う。
「ジン兄様……なんて優しくてかっこいい方なのかしら~」
恋は盲目と言うだろう。ジン以外何も見えないといった感じでぼーっと歩くツバキ。
そんなツバキに後ろから声をかける少女がいた。
「お~いツバキ~!!」
「ジン兄様ーーーーーーーー!!」
「おわーーー!!」
「あらマコト、いたの?」
「いたよさっきから、てかまたキサラギ先輩のこと考えていたわけ?」
ツバキに声をかけた少女、マコトがツバキに尋ねる。
マコト・ナナヤ、ツバキとノエルの親友であり、活発な女の子である。
マコトはツバキの顔を見てすぐに察した。叫んでいたので丸わかりであったが。
「も……もうマコトーーー!!」
「隠さなくていいじゃん、お似合いだよ~」
「もう、はぐらかさないでよ……」
ツバキをおもしろおかしく茶化すマコト。ツバキは顔を赤らめる。
ツバキとジンの仲の良さは他の生徒もよく知っているほどであった。
「でもキサラギ先輩って本当にパーフェクトなイケメンだよね~」
「そうそう! 私が小学校の時も一緒に掃除手伝ってくれたし! 中学校の時なんかいつもテスト勉強を手伝ってくれたわ、あの人は唯一無二の……」
「そ……そうだね、じゃあ私いくわ」
「じゃあね、気をつけて帰るのよ」
ツバキはジンの話になると何も見えなくなるほど、彼を心酔している。
ジンの良さを語らせれば右に出る物はいない、昔から一緒によく遊び、彼の上から下まで何もかも自分が理解している。
ツバキにとってジンは、唯一無二の兄で、憧れなのであった。
そして次の日……
「やあツバキ、おはよう」
「ジ……ジン兄様!」
朝、ジンに声をかけられるツバキ。
いつも何ら変わりのない光景であるが、ジンの顔を正面で見ると思わず顔が赤くなる。
ジンの綺麗な碧色の瞳にツバキの赤くなった顔が写り込み。そしてジンは微笑みかける。
「どうしたんだいツバキ? 顔が真っ赤だよ?」
「あ……いやあの、大丈夫ですから!」
「どれどれ……」
ジンはツバキの額をやさしい手で触った。
熱があるのではないかと、ツバキの体温を測る。
「ジン、兄様……」
「熱はないみたいだから、でも無理はいけないよ」
そう言って、愛しのジン兄様は教室へと向かってゆく。
去りゆく背中姿を見て、ツバキは余韻に浸る。
そして感情を爆発させるようにツバキは身体を激しく揺らした。
「ジン兄様……もうなんて素敵で美しくて完璧でかっこいい人なのかしら~!!」
ツバキは毎度のことジンを美化する。
変な妄想までするくらいだ。
「ジン兄様は、私にとっての王子様。あの人ほどイケメンでかっこよくて真面目で、もうそんな人このカグツチには」
と、ツバキがジンを褒めちぎっていた時。それは起きた。
「兄さーーーーーん!!」
「……へ?」
急に、そのイケメンでかっこよくて真面目なジン兄様が、先ほどのクールな雰囲気が嘘かと思うくらいな叫びをあげた。
その方向を見ると、なにやらジン兄様がラグナ先生の方に猛ダッシュで向かって行っている。
「どわ!いきなり抱きついてくるなーーー!!」
「何を言ってるんだい兄さん? これは僕たち兄弟の……愛の契りだろ?」
「カーネイジ・シザーーー!!」
「兄さーーーーーん!!」
この会話で何が起こったかというと、順序はこうである。
ジンが奇妙な叫び声をあげ、抱きつかれたラグナが気味悪がる。
そしてジンがあり得ない言葉(男であるラグナに愛の契りとか)を言って、耐えかねたラグナに吹き飛ばされた。
簡単に説明すればこんな具合。あのジンが、数ページ前のイケメンだった彼とは思えない一部始終。
「だぁ気持ちわりぃ……」
「ラグナーーー!!」
「ニューも勢いに乗ってくるなーーー!」
「にゅーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ちなみにラグナに対して似たようなことをするやつがもう一人いる。
ニュー・サーティーン、こちらは少女であるためラグナに一図になるのはわかるがやりかたに問題があるので普通とは言えなかった。
「ジ……ジン……兄様」
そう、必ずも完璧な人なんていないのである。
ジンは確かにツバキの前でこそパーフェクトなイケメン男子である。優しくてかっこよくて何でもできる。それは嘘偽りでも何でもない。
が、ラグナを前にするとそれは大きく変化する。
実のところジンとラグナは兄弟である。ツバキとは違って実はこちらが血のつながった本当の兄弟である。
昔からジンはラグナに依存しっぱなしで、何かある度に兄さん兄さんと連呼。兄弟の絆を通り越して兄弟愛に発展してしまうほど非情に危ない状態である
ジン・キサラギはイケメンではなくキモイイケメン、略してキモメンになってしまうのである。
この衝撃の一部始終を見たツバキは、唖然とし考えこむ。
(嘘……ジン兄様は私ではなく、ラグナ先生が好きなの?)
恋する乙女にとっては、この勘違いも仕方ない?であろう。
その上ツバキがジンとラグナの家族事情を知らないのがさらに誤解させるきっかけとなってしまっている。
ジンはツバキに対してラグナに関することはなにも言っていないし、ジン自体ツバキとラグナはきちんと割り切っている。
要は猫かぶっていたのである。そのためツバキにあらぬ誤解を植え付けてしまったのが今の現状である。
(しかもあの様子だと、かなり入れ込んでいる。どうしよう……どうしましょう)
ツバキの中では、次第にラグナが悪者になってゆく。
ラグナに誑かされ、変なプレイを強要されてるに違いない。
本気で嫌がるラグナを見ればラグナが悪くないことなど考えればわかることだが、考えこむとツバキは止まらない。
恋する乙女、ツバキ・ヤヨイが下した決断は……。
「……ラグナ先生を……殺るしか」
「まてーーーーーーーーーーい!!」
ラグナは電光石火が如く勘違いするツバキの元に向かった。
「あらラグナ先生……ごきげんよう」
「おい~、笑顔で包丁持って挨拶すんな怖い、てか握りしめないでくれその得物を……」
凶悪な笑みを浮かべ挨拶をするツバキにラグナは冷や汗をかく。
ツバキの手にはいつのまにか包丁が握られていた。十六夜ほど威力は無いにしても描写的には凶悪な絵面であった。
何も悪いことしていないのに指されてたまるか、とラグナはツバキを諌めることに。
「ところでラグナ先生とジン兄様はどのような関係で?」
「間違いしないように分かりやすくなおかつ短く完結的に言うとな、"兄弟"だ」
「輝砕閃!」
「あぶねええええええええええええええええええええええ!!」
ツバキが振った包丁を、ラグナ先生は間一髪で避けた。
ラグナは嘘など言っていない。ラグナとジンは兄弟。その事実は揺らぐことはない。
しかしそんな言葉で説明したところで、ツバキが信じるわけもなく。
「先生、嘘が苦手なのですね~」
「嘘じゃないって! 本当だってば!!」
「兄弟なのに全然似てないじゃないですか? しかも私とジン兄様は幼稚園の時からの幼馴染ですよ? なのに私あなたとは全然顔を会わしたことないんですが」
そう、ラグナとジンは兄弟だがまるで似ていない。
ラグナは銀髪でごつい形相をしているがジンは金髪でスマートな顔つきをしている。
正直二人を見て兄弟ですかと聞く人の方がすごい、事実この学校でこの二人が兄弟だと知っているのはハクメン先生やレイチェル等の一部の教職員とココノエや獣兵衛等の親戚くらいである。
そしてもう一つ、ラグナとツバキには接点がない。これはジンが物ごころついた時にキサラギ家に引き取られたためである。
ラグナはというと獣兵衛の元へ引き取られたため、気がつくと二人は離れ離れになってしまっていたのである。
だからラグナとジンが兄弟でも、ジンの従妹であるツバキとは接点がないのである。
「まあ俺らは離れて暮らしてたし、これじゃだめ?」
「先生……?」
「わかったから笑顔で包丁向けるな! てかお前ヤンデレキャラじゃないはずだろうが!!」
説明されても納得していない様子のツバキ。
ジン兄様はお前のせいでおかしくなってしまったんだと言うがごとく滲みよるツバキに戸惑うラグナ。
「とりあえず。せっかくの完璧イケメンのジン兄様がああやってぶっ壊れるのは私としても見ていられません! なのでなんとかしてください!"兄"として!!」
「俺だってなんとかしてぇよ、つうか俺的にはあんな変態でいいなら引き取ってほしいくらいだよ」
「ジン兄様は変態ではありません!!」
あれを見てもまだジンは変態でないと言い張るツバキ。
ツバキの中のジンはどうなっているのだろうかというかジンはどこまでツバキの前では猫かぶっていたのだろうか。
弟が迷惑をかけたなと罪意識まで感じ始めたラグナ。なんとかしなきゃなと本気で頭を抱え始める。
というかなんとかしないと殺されるかもしれない。
「というわけで、正義の名のもとにラグナ先生を成敗します」
もうツバキの中ではラグナが元凶だと思いこんでしまっている。
ツバキの被害妄想に呆れまで出始めるラグナ。
「お前の私情に正義も何もねぇだろうが……わかったわかった! 俺でいいならてめえらのキューピットになってやるよ」
言い方はどうなのかと思うが、ラグナはツバキとジンを繋げるサポートをすることにした。
「敵に塩を送るふりして私を除け者にするつもりですね?」
「なんでそうなるんだよ、言っておくけど俺とジンはお前の思っているような関係じゃないからな?」
「隠しても無駄です。ジン兄様とラグナ先生は兄弟という設定での(ピー)で(ピー)な関係なのでしょう?」
「1%もあってねえから! てかおめえそっちの趣味もあるな?」
と、何か知られてはならない部分を指摘されたのか、ツバキはしばし黙り込み。
「……ではラグナお兄様、よろしくおねがいしますね☆」
「流したな? 今話を大きく流したな?つうかお前にお兄様とか呼ばれたくないんですけど」
さりげなくお兄様呼ばわりされるラグナ。
こうして一時的だがツバキを説得することに成功したラグナ。
あとはジンを上手く誘導してツバキとつなぎ合わせれば解決。けして簡単ではないがやるしかない。
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「ジン、大事な話があるんだが……」
「なんだい兄さん!? もしかして……僕と……」
「ディバイダーしてえが我慢だ我慢……」
出会いがしらさっそくそっちに話を持っていくジンに怒りを覚えながらも、ラグナは踏みとどまる。
ジンをツバキとくっつければもうそんなこともなくなるだろう。全てはその時まで。
成功したら天玉うどんを浴びる様に食べよう、ラグナはそう誓い肝心の話を振る。
「お前さ、ツバキって子と仲いいんだってな?」
「ああ、僕とツバキはとても仲のいい幼馴染だよ。もしかして兄さん、彼女のこと好きになってしまったのかい?」
意外なことをジンに聞かれたラグナ。
それを聞くということは、ジンはなにかしらツバキに感情があるのかもしれない。
これは手ごたえあるか、とラグナが思った矢先。
「もしそうなら、ツバキにも兄さんを好きになってもらわなきゃね」
「……それってどういう意味だ?」
「兄さんと僕とツバキで、仲良く3人で暮らすためさ~」
何を言っているんだこのバカは……とラグナは弟の駄目さ加減に頭を抱える。
後ろを見ると眼を光らせて美少女とは思えない形相でこちらを睨みつけるツバキが気になる。
「あ、ああ。なあジン、もしさ……もしもだぞ」
「な~に兄さん?」
「俺とツバキが、誰かに殺されそうになるとする。そんで絶対にどちらか一人しか助けられないという状況になったとしたらお前はどっちを助ける?」
「……え?」
ラグナがそう質問をすると、ジンの言葉が止まった。
「例えばこう、帽子を被ったスーツ姿の男が「ヒャッハー!」とか言いながら俺とツバキを殺そうとしてたとして、どっちかしか助けられないみたいな状況が発生したら、お前はどっちを助けるつもりだ?」
「そ、そうなったら僕は……」
「……よく考えればわかるはずだ。兄の……俺の気持ちが本当にわかるのなら……」
「う~ん……う~ん……」
あのジンが本気で悩んでいる。そう、ジンにとってツバキは大好きなラグナと天秤にかけるほどの人物なのだ。なんかおかしく感じるのはきっと気のせいだろう。
う~んう~んと悩み、苦しみ、考えこむ。
ジンにとって答えを出すのに時間がかかるというならいつまでも待ってやろう、ラグナはどっしりと腕を組み。答えが出るのを待つ。
そして、2時間後……。
「う~ん……う~ん……」
「早く決めろやーーーーー!! いつまで悩んでんだこのバカ弟はーーー!!」
2時間経っても、ジンは答えを出せずにいた。
普通はツバキと答えて済む話なのだが。
本当に甘やかせすぎたのだろうかと、ラグナは昔に戻りたいとまで思い始め。
「兄さん!僕はたとえどんなことになってもあきらめない!僕は二人とも助ける!!」
「お……おい、そんな漫画の主人公みたいなことをここで言われてもな……」
そんな大層なことじゃないはずだが、ラグナはジンの気迫に思わず後ずさり。
「時にはあきらめてはいけないことだって、あるはずさ!!」
「う……うん。それはいい考えだと思うけどさ、だけどさ……」
弟がいいことを言っている。とまたそこでラグナの甘さが目立つ。
今はそんなことで終わらせていい問題じゃない。だがジンは両方救う道を選ぶと言ってきかない。
ラグナは思わず後ろを見やる。すると。
「ラグナ……先生?」
「………」
怪物のような形相で血を滲ませ睨みつけるツバキに、ラグナは背筋が凍るような感覚を覚えた。
結局ジンには、ラグナもツバキも同じくらい大切だったようである。
どちらかは決めれない、もう少し時間がかかりそうだ。
そしてツバキは、怒り心頭の様子でラグナに宣戦布告する。
「ラグナ先生、これからは私たちは恋敵です!どんなことしてでも……ジン兄様には私の方を振り向いてもらいますからね!!」
「じゃあ降参します。つうかマジで引き取ってくれるなら引き取ってくれ」
「情けはいりません!!」
(こいつバカか……)
情けなどいつしただろうか、ジンもジンだがツバキもツバキで走ったら止まらない性格らしい。
ラグナの悩みの種は、また一つ増えた。
いったい。いつになったらこの誤解が解けるのだろうか。