3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第21話です。


第21話:クリスマス+誕生日=プレゼントは一つ

 十二月二十五日はクリスマス。

 いるかもわからないサンタにプレゼントをもらえる日である。

 そんなクリスマスは、ノエル・ヴァーミリオンの誕生日でもある日。

 ノエルの友人であるツバキとマコトは、ノエルのために誕生会を開いてあげようと予定を入れていたのであった。

 

「つうわけでノエルの誕生会に誘われたわけだが……あいつが料理作るって話なら華麗に断りを入れる予定だ」

 

 自らの誕生会を開いてくれるということで、少しでも皆にお礼をしたいノエル。

 ノエルの感謝の気持ちは料理……なのだが。自分の誕生日に人を殺すのは非常にまずい。

 それを見越してか、料理はツバキとマコトが作ることになった。

 

「大丈夫ですよ先生、私たちがいますから」

「料理ならあたし達にまかせちゃってくださいよーーー!!」

 

 ツバキとマコトもえらく張り切っていた。

 親友を喜ばすため、楽しめるためにと色々物を用意していた。

 それを聞いたラグナは、一安心した様子で言葉を返す。

 

「マジで頼むぜ、あいつが料理手伝うとか言い出したら全力で止めるんだぞ」

「大丈夫ですって、ノエルもさすがにいつも失敗してるんですからそろそろ学習してるでしょう~」

 

 この学園生活。ノエルは自身が作る出した創作料理で様々な強者共を地に沈めてきた。

 それらの経験はきちんとノエルにフィードバックされている。ノエルもいい加減バカではない。

 料理を作れば大惨事になると知った上ならば、自身は一切手を出すはずがないのである。

 

「では先生、当日になってドタキャンはやめてくださいよ? ノエルにとって誰が来て一番喜ぶのかわかってますよね?」

「わかってるよ、てめぇらも来いよ」

 

 こうしてツバキとマコトはプレゼントだのなんだのと準備をするため帰って行った。

 ラグナも一息おき、そして腕を組みながらサプライズを考える。

 プレゼントは何を持っていけばいいか、というか本当にノエルは料理を手伝わないでいられるのか。

 いやはや、結局はノエルがケーキか何かを作っておいてあり、それを食べる羽目になってお腹を壊して一週間入院してしまうのか。

 考えているうちに気が付けばラグナは腹筋をしていた。腹筋をしながら色々考え。

 

「そうだな……せっかくだし"あれ"を持って行ってみるか」

 

 自分らしいサプライズが思いついたラグナ。

 

-----------------------

 

 そして日は経ちクリスマス当日……。

 ノエルが一人暮らしをしているアパートへと向かったラグナ一同。

 それぞれノエルへのプレゼントを持ちより、マコトが一目散にチャイムを鳴らした。

 

「のえる~ん! ハッピーバースデー&メリークリスマース!!」

「わ~、みんな来てくれてありがとう!」

 

 先陣を切ったのはマコトであった。

 それに続くようにツバキとラグナも家に入っていく。

 

「ノエル、誕生日おめでとう」

 

 ツバキが家に入るなりノエルの誕生日を祝う。

 次にラグナだが、そこはラグナ、普通にはいかない男である。

 

「それとメリー苦しみます(料理的な意味で)」

「先生、いきなり傷つくようなギャグ言うのやめてください」

 

 ラグナは相も変わらず加減を知らないようである。

 クリスマスと苦しみますをかけた不謹慎なギャグでノエルのツッコミを誘うのである。

 

「今日に向けて、腹筋と肺と胃袋を鍛えてきた。あぁやっべ、鍛えるのに夢中でプレゼント忘れたかもしんねぇ」

「先生、おめでたい日ですけどキレますよ? 料理はツバキとマコトに任せますから安心してください」

 

 言わずともいいことを次から次へと言ってノエルをからかうラグナ。

 ちなみに腹筋と肺と胃袋を鍛えたことは本当であるが、やはりそれをわざわざ言う必要はない。

 はははとラグナは笑い、皆より早いか鞄から何かを取り出すラグナ。

 

「冗談だよ冗談、ほら早いけどプレゼントだ。感動すんなよ~」

「あ、ありがとうございます。『誰でも胸がでっかくなる胸パット』……ってセクハラですよ!!」

 

 ラグナのそれはプレゼントというより、プレゼントと評してノエルをバカにしているそれであった。

 まだ家にすら入っていないのに容赦のないラグナに、徐々に不機嫌になっていうノエル。

 ラグナのその行動にはツバキもやり過ぎと思ったのか、ラグナを咎めた。

 

「んもう先生、今日はノエルの誕生日なんですよ! 少しは限度というものを考えてください!!」

「わあったわあった。そんな怒んなよツバキ」

「でもさ、本当に二人って仲いいよね~」

「「んな!?」」

 

 ラグナとノエルを指してマコトが発した急な発言に、二人は急激に顔を赤らめる。

 

「あ~、赤くなったーーー!!」

「う、うっせえよ!」

「んもうマコトもいじわる!!」

 

 そんなやり取りを玄関でした後、ノエルに招き入れられてお茶の間へと移動した。

 

「みんなが来るというので、頑張ってお部屋をかたつけました!!」

 

 普段部屋をかたつけないノエルだが、親しい人たちが自身を祝いに来てくれるというので頑張って部屋をかたつけたと言うのである。

 だがじゃーんと手を広げ言うノエルの後ろは、かたつけたとは到底言い難いほど散らかっていた。

 というより散らかっていたものを適当に端っこに寄せただけで、全くかたついていないのとおんなじであった。

 

「……さてと足の踏み場がないな。まずはかたつけだな」

「どうせこんなことだと思ってゴミ袋持ってきてよかったわ」

「パッパとかたつけちゃおうそうしちゃおう!!」

「ちょ、ちょっとーーーーーー!!」

 

 用意周到なラグナ達三人は、ざっと三十分ほどかけてノエルの部屋をお掃除。

 クリスマス会兼ノエルのお誕生会というめでたいパーティの最初が部屋のかたつけ、これがノエルクオリティとでもいうのだろうか。

 そして料理をするというのに台所はカビにまみれていた。ただでさえ料理を作れば殺人兵器だというのに料理の聖地である台所自体がこれでは話にならない。

 むしろ、ノエルが料理を作れば常に台所がパトリオットアポカリプス状態になるというならば、そこで話は解決である。

 

「さて座る場所もできたことだし、台所もまぁまぁ綺麗になったわけだ」

 

 ラグナは一仕事を終え充実感に浸っていた。その裏では自身の努力を打ち砕かれたかのようにうなだれたノエルの姿もあった。

 だがせっかくのめでたいパーティの主役が落ち込んでいても仕方がないと、ノエルはすぐさま元気を取り戻す。

 パーティが始まり皆は一斉にクラッカーを鳴らす。そしてツバキとマコトは持ってきたバッグからプレゼントを取り出す。

 

「料理の前に、マコト、最初にノエルにプレゼントを渡しましょう」

「そうだね、さっきラグナ先生がものすごいフライングで渡しちゃったし。しかもなにあれ~? プレゼントとしては最悪だったよ~」

 

 ラグナが渡した胸パットは、ノエルのコンプレックスは元より、基本的に男性が女性に渡すものとしてはダメなものであった。

 しかもその胸パットは高級品の定番であるヒヒイロカネを使用した胸パットで、貧乏なラグナがノエルに手渡すものとしてはちょいと高額な物である。

 金をかけてでもノエルをからかうその精神はどこから生まれるのだろうか、それにしても呆れる話である。

 

「からかうにも限度がありますよ先生、セクハラ以外のなにものでもありません」

「わ、悪かったよ」

 

 ツバキに厳しく注意され、ラグナは少し落ち込む。

 ノエルの方をちらっと見たが、ノエルもまだ少し怒っていた。

 

「まぁラグナ先生ですから仕方ありません、私ももらう側ですから文句は言えないです」

「ノエル。こんなセクハラ教師のプレゼントなんて忘れて、私達のプレゼントこそ本当に心のこもったプレゼントよ」

「のえるん、誕生日おめでとう!!」

 

 まずノエルは、ツバキからプレゼントを受け取る。

 箱は結構大きく、そして重量感もある。

 

「ゲーム機?いやぬいぐるみかなぁ?」

「さあ、開けて見て」

 

 ノエルは中身がなんなのかを予想しながら、そのプレゼントに想像を膨らませながら。

 ツバキに言われるがまま、ノエルは嬉しそうにその箱をあけた。

 

「え~と、『電子レンジで簡単クッキング十点セット』……ってあんたも人のこと言えねえだろうがーーーーー!!」

 

 ツバキのプレゼントは、電子レンジで簡単に料理ができる簡単調理道具一式であった。

 しかもこれまた素材にヒヒイロカネを使用した、一般家庭には手のつけがたいお値段の代物。

 これを使って料理を失敗した事例など聞いたことがないと言われるほどで、値段の割にバカ売れ状態らしい。

 しかしノエルからすればこれは、「料理下手くそだから最終手段としてこれで妥協して」とか言った皮肉にもとれるプレゼント。

 値段の高さからして、多分そんな感じだった。

 ラグナはそれを見て一人爆笑する。

 

「ぎゃはははははははは! は、腹いてぇ!! ツバキにまで料理のこと気にされてんじゃねえかぎゃはははははは!!」

「ち……違うのよノエル! ノエルのためを思って、流石に詰めるだけ詰めて電子レンジでチンなら失敗しないかなと思って~」

「なに!? もう私それしか料理作れないの? ガスとか使っちゃだめなの!? インスタントで攻めろっての!?」

 

 ツバキにはそんなつもりは無くとも、料理によって失敗を繰り返してきたノエルからすればそう捉えても仕方のないこと。

 大親友のツバキを信じてただけにノエルは、ラグナのプレゼントの前例も重なり相当ショックであった。

 なにより一番ショックだったのは、ツバキもノエルの料理の腕を気にしていたことであろう。多分誰もが気にしてるとは思うが。

 

「ご、ごめんねノエル! そんなつもりでは~」

「もういい! マコト~!! この人たち私をいじめる~!!」

「んもうツバキまでひどいなぁ。のえるん私は大丈夫だから、私のプレゼントで全てを忘れ元気になって~」

 

 そう言うマコトには、ノエルを傷つけない自信があった。

 ノエルはマコトからプレゼントを受け取り、一応プレゼントの箱を上下に揺さぶってみた。

 中からはゴトゴトと音がする。結構重く、家電製品(料理関係)の可能性こそあったものの、お手軽料理グッズではなさそうだった。

 むしろ家電製品ならば自身の料理の幅が広がるのでうれしいものである。これは期待できると、ノエルは希望に溢れた。

 

「マコト……ありがと」

「いいってことよ~。ささ、開けてみなさ~い!」

 

 マコトの優しさを噛みしめ、ノエルはプレゼントの箱を開けた。

 中から出てきたのは"本"。ノベルサイズから事典のように分厚いものまで幅広い種類の本。

 ノエルはなんの本なのか、手にとって確認して見ることに。

 

「え~と、『超簡単料理大百選』、『蛇でもできる料理』、『ありんこでも作れる料理』、『てか毒が入っていようとうまく調理できる料理の本』……」

 

 どれもこれも料理関係の本であった。

 しかもどれもが高価なもので、これを読めばどれだけ料理が下手だろうと、ぶっちゃけ料理が兵器になる人でも絶対安心に料理が作れるという本ばかりである。

 ノエルはこのプレゼントの詳細を理解すると、身体をぶるぶるとふるわせた。

 

「のえるん~、お気に召してくれたk」

「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」

 

 マコトがプレゼントの感想を聞こうとノエルに話しかけると同時に、ノエルは泣き叫びながら自らの家を出て行った。

 外は雪が降っており、ノエルの格好は寝巻。寒い格好でどこまで行ってしまうかわかったものではない。

 下手をしたら帰ってこれない場所まで逝ってしまう場合がある。

 これはまずいと、三人とも慌てて家の外までダッシュで向かい、ノエルを保護して家へと連れ戻した。

 

「はぁはぁ……のえるん大丈夫?」

 

 息を切らす四人。

 マコトが今のノエルの心境を問うと、ノエルは怒り心頭の面持ちで叫んだ。

 

「大丈夫じゃねえよ!! なにさこのプレゼント!? 私の料理ってそんなにダメなの!? てか料理を超えて兵器なの!? 世界破壊できるの!?」

「厳密に言うとそこまでのレベルだ」

「うわーーーーーん!!」

 

 マコトにも裏切られた。

 そして続くラグナの厳しい一言で、自分の誕生日なのにテンション下がりまくり、怒りまくりのノエル。

 プレゼントは全て自身のコンプレックスとなっている貧乳か、料理に関わっている物ばかり。

 この三つのうち悪意があるのはラグナだけであり、ツバキとマコトに悪意などは一切ない。

 むしろ、純粋な優しさが悪意以上にノエルを傷つけてしまったと、例えるべきだろうか。

 教師としてそれは違うぞと、ラグナはノエルにフォローを入れるのだが。

 

「まぁなんつうか、俺達三人ともお前のことを良く見てるってことじゃん?」

「悪いとこしか見てねえだろ!!」

 

 ノエルの言うことはごもっともであった。

 と、そこでノエルはあることに気づいた。

 今日は自身の誕生日で、同時にクリスマスである。ということは……。

 

「ち……ちなみに……誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントって……」

 

 そこで、誕生日用とクリスマス用が別にあると、皆が言ってくれればよかったのだが。

 

「一緒になってるに決まってるだろ」

「一緒になってるに決まってるでしょ」

「一緒になってるに決まってるじゃん」

「わーーーーーーん!!」

 

 クリスマスに誕生日を迎える人の宿命であった。

 プレゼントがもらえる日が一つに集約されているのだから、上げる側はどちらも兼ねればいいのである。

 落ち込むノエル。そんなノエルに今やってあげることは言葉をあげること。

 教師ラグナは落ち込むノエルにこう説くのだった。

 

「とりあえずあれだ。プレゼントって言うのは"人の心"だ! 物じゃねえんだよ!! あれ、今先生いいこと言ったんじゃね?」

「そのプレゼントのどこに心が詰まってるんじゃ!!」

 

 いいことは言ったのだろうが結果になっていない分ノエルを怒らせるだけであった。

 

「そういえば。ツバキ、マコト、料理できてるか?」

「もうすぐですよ。ああノエル、さっきの電子レンジのやつ一から十まで教えてあげるからこっち来て」

「自分で覚えるもん!!」

 

 この時ほどノエルは、いつか料理が上手くなってみんなを見返してやると思ったことはなかった。

 結果的に散々な目に遭ったが、自分を祝いに来てくれているということだけを信じ、最終的には機嫌を直しテーブルに着いた。

 そして数分後、料理が運ばれ、しばし平和で楽しい時間を過ごした。

 

-----------------------

 

「さて、料理も食った楽しい話もしたということだし、先生は今日とっておきのものを持ってきたぞ」

「お、先生のサプライズ!?熱いねぇ激アツだねぇ」

 

 料理を食べ終わり、トランプなどをして飽き始めたその時、ラグナはプレゼントとは別に考えてあったサプライズを発表した。

 マコトがキラキラした眼でラグナを見る。ツバキとノエルは何が始まるのかと少しばかり期待を寄せる。

 そしてラグナが奥から出したものはというと……。

 

「じゃ~ん! "お酒"だ~」

 

 なんとお酒であった。

 それは自分が飲みたかっただけなのか、未成年の生徒たちに先生自らが酒を振る舞うなどあっていいものなのだろうかはさておき。

 

「ちょっと先生!私たちは未成年ですよ!!そこら辺のマナーは守ってください!!」

 

 案の定、生徒会副会長のツバキが黙っていなかった。

 未成年の飲酒、煙草などに対しては特に厳しいツバキ。

 ツバキはすぐさまラグナからお酒を取り上げる。

 

「んだよノリ悪いなツバキは。こういう楽しい時はルールになんて縛られなくていいんだよ、尾○豊も言ってただろうが。なぁマコト?」

「うんうん! たまにはお酒とかもいいよねぇ~」

「知らないですよ、とりあえずそれは没収します」

 

 ツバキが怒りながらお酒を奥に引っ込める。

 だが、ラグナからすればこの展開は想定済みだった。

 そう、想定していたからこそ、ラグナには秘策があったのである。

 ラグナは誰に聞かせるでもなく、独り言のように大きな声で言った。

 

「あぁ~残念だな。"ハクメン先生"も言ってたぞぉ、酒を交わせる女性とお付き合いしたいなぁ……って」

「酒を持ってこいやーーーーーーーーー!!」

 

 ツバキは一転して、酒をグイグイ飲み始めた。

 ツバキを取り入れるなら大抵、ジンかハクメンの名前を出せばいいのである。

 

「よ~し。ツバキの了承も得たし、のえるん飲もうよ~!」

「え? でもいいのかなぁ、私未成年だし……」

「関係ねぇよ、ほら飲め!」

 

 と、ラグナとマコトに押され、ノエルもしぶしぶ飲むことに。

 ちなみに酒に強いのはマコト、他はそこまで強くはない。

 開始十二十分。ツバキはビール三缶目ですぐさま寝込み、ノエルはふらふら、ラグナはなんとか正気は保っている。

 一番強いマコトは、ビール五缶目に突入してもなお本調子である。

 

「ったく、これじゃあハクメン先生と、付き合うなんて無理だってえの!」

「先生も酔ってますねぇ~」

「マコトおめぇ強いな、亜人ってみんな酒に強いの?」

「うちの父ちゃんはどんだけ飲んでも酔わないよ~」

 

 マコトがあまりにも酒に強かったので、ラグナは少しばかり悔しそうにしていた。

 ツバキはもはや朝まで起きないであろう眠りについていた。

 そしてノエルはというと……。

 

「ふひゃ~」

「ノエルも沈みそうだな……。俺はこの程度で終わりにしておくか」

「じゃあ二人で朝まで……なにかします?」

「エロいこととか考えてんじゃねえだろうな?」

 

 マコトも少しは酔いが回り始めたようで、上着を一枚脱ぎだした。

 これ以上はバレるとまずいとラグナが止めに入る。

 そんなやり取りの中で、突如ノエルに異変が起こった。

 

「ふひゃ……。う!? うぅ……」

「ん?おいノエルどうした?」

「あ……あ……」

 

 少しばかり頭を押さえ、そこら辺を這いずる。

 そして唸り声を上げたりうわごとを言ったりと危ない状況が続き。

 急に眠りにつくように、その場に倒れた。

 

「せ……先生。ノエル頭痛くて吐きそうになってるんじゃ……」

「そ、そうなのか? でもなんか様子が……」

 

 その時であった。

 虚ろだったノエルの目が、突如ハッキリと開いた。

 そして、徐々に緑の目が……"蒼"へと変わっていく。

 

「あ……あれ? このパターンって……どこかで」

「……」

「お……おいノエル?」

 

 そして、ノエルは突如しゃきんと起き上がった。

 その目ははっきりと蒼に変わっており、顔つきも変わっていた。

 

「ノエル? 違う私は違う」

「ま……まさかおめぇ。酔って意識無くして……裏に潜んでいた"ミュー"が……」

 

 そう、ノエルは酔った末に深く眠りについたらしく、その影響で奥で眠っていたミューがノエルの体を支配したらしい。

 普段はラグナが怒らせると出てくるようになっていたのだが、時が経つにつれ、そしてニューが行ったオカルト部の実験の影響もあり。

 結構ミューは出やすくなっていた。

 

「あわわわわ、先生これって……」

「だだだ大丈夫だろう、なんでもレイチェル校長が週一でノエルの精神トレーニングを行ってるらしいからな。ノエルもミューに乗っ取られないように強くなりたいって言ってたし……ははは」

 

 と、ラグナは言ったものの。

 あきらかに怒りの矛先がこちらに向いていた。

 無言の圧力が二人を襲う。ノエルがミューの意識をある程度制御できるようになったとはいえ、酔っぱらっている彼女にそんな器用なことができるはずがない。

 この場合はノエルは酔っぱらって意識を失っているため、本来あるべきミューの破壊衝動は100%出てしまうのである。

 

「先生、どうしましょう?」

「死を覚悟するか、クロノファンタズマの性能でどこまで抵抗できるのやら……」

「憎いーーーーーーーーーーーーー!!」

「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」」

 

 こうしてノエルの誕生日、そしてクリスマスは終わった。

 マコトはそれほどというほどダメージを負うことはなく。八割方ラグナへの攻撃だったという。

 そしてすごいことに寝ているツバキはというと、流れ弾を寝ぼけながらかわしたり防御したりと意外なところで才能を発揮していた。

 そして一時間後、ノエルが目覚めたことでミューは奥底へと引っ込んでゆく。

 

「え~と、先生どうしてそんなに傷だらけなんですか? まさかマコトとなにか……」

「おめぇの中にいる奴の……がく」

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