3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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長らくお待たせしました。第22話です。


第22話:Es子~呪いのビデオ~

 朝の職員会議にて。

 なにやらハクメン先生が持ってきた"ある物"に対し、教師方が集まっていた。

 机に置かれていたのは、今はもう古きVHSビデオテープである。

 

「あらハクメン先生。このブルーレイの時代に似つかわしくない古臭いビデオテープは何かしら?」

 

 レイチェルがそう尋ねると、ハクメン先生は腕を組みながら答えた。

 

「昔から通っているレンタル屋の店主が、倉庫を掃除していた時に見つけたらしい」

 

 という、いわくつきの品らしい。

 どうしてこんな物を学校に持ってきたのか。

 それは、ビデオテープのタイトル名が、人々の興味をそそるようなものだったからである。

 

「なるほど。へぇ~、"呪いのビデオ"ねぇ~」

 

 そう、タイトル名を読むレイチェル。

 他の教師達は面白そうに目を輝かせているが。

 一人、奥の方でそのタイトルを聞いて身体を震わせ、何食わぬ顔で関わらないようにしている男が一人いた。

 いつもは祭り事には積極的に参加をするのに、どうしてこの時に限って輪に入っていかないのか。

 そう、ラグナはそういう類の物が大嫌いだったからである。

 

「これってよく映画で見るような、再生したらテレビから女の"幽霊"が迫ってくるみたいな、そういう物よね?」

「ゆ……幽霊」

 

 レイチェルがわざとらしく言ったその単語に、思わず反応してしまうラグナ。

 

「じゃぱにーずほらー、"S子"でござろう? 拙者も仲間の忍者と共に見て夜も眠れぬ思いをしたことがあるでござるよ」

「俺もナインとの休日に暇で借りて来た時に、怖がるナインと一緒に見たなぁ」

「んもう! 恥ずかしいからやめてよ……」

 

 バングや獣兵衛、ナインもそのS子の映画を知っていた。

 S子はカグツチでも大ヒットしたホラー映画で、当時はかなり話題になり、今でもリメイクされているほどの人気作。

 レイチェルやハクメン先生も見たことがあるらしい。だが、ラグナは見ようとしたことも無かった。

 

「そのS子に出てくるような怖い女の幽霊が、そのビデオの中に封印されていたら面白いわねぇ。バング先生試しに家で視聴してきてちょうだい」

「拙者がでござるか!? 映画でさえ身の毛もよだつほど怖かったのに、モノホンなんて見れないでござるよ!!」

「情けないわね。ハクメン先生、あなたが持ってきたんだからあなたが試しなさい」

「別にかまわないが。この私がそんなものを見たところで面白いことなど起きないだろう。それでも構わないならいいが……」

 

 バング、そしてハクメン先生の二人とも、やんわりと呪いのビデオを見ることを断る。

 レイチェルはそんな二人の反応を、まるで最初から知っていたかのように、困ったふりをしながら顔をニヤニヤさせる。

 誰ならこのビデオを見てくれるのか、あっちこっちに声をかけ、その見せるべき当の本人に、徐々に近づいて行くレイチェル。

 そして、笑顔のレイチェルの視線が、ラグナに向けられた。

 

「だったら……しょうがない、ラグナこれ見てきなさい」

「なにがしょうがないなんだよ!」

 

 その遠回しな言い方に対し、ラグナがツッコミを入れた。

 明らかに最初から自分に見せようとしていたのが丸わかりだっただけに、ラグナは怒りを露わにしている。

 一方で他の連中はというと、もうラグナが見ることが当たり前だと目線をラグナに向けていた。

 だがそれでノリよくラグナがそんないわくつきに手を出すはずがない。

 ただでさえ幽霊が怖いのに、そのビデオは本物である可能性が高いのだ。

 

「俺は絶対見ないからな!!」

「あら? 情けないわね。さてはラグナ……お化けが怖いのかしら?」

 

 と、面白おかしくラグナを挑発するレイチェル。

 だが、その手には乗らないとラグナが腕を組んだ。

 

「はん! そんな安っぽい挑発に乗って前回夜の学校を探索するハメになったんだ。もう同じ手には乗るかよ」

「まったく、なんだかんだでみんなの期待に乗ってくれるラグナともあろう人が、ここにきてなんだかんだ先生をやめるというの?」

「何を言われようが……俺はぜっっっっっっっったいに、そのビデオを見ないからな!!」

 

 そう強い意志で突っぱねたラグナ。

 強い意志を見せたとはいえ、あまりにも情けないためみんなどう反応していいかわからず。

 結果的にこの日ラグナは、そのビデオを受け取るどころか、近寄りさえしなかったという。

 そして、あっという間に一日が終わりラグナが家に帰宅。

 

「ったく疲れた。しっかしあのウサギ校長、ホラー関係の話題が出れば全部俺に振りやがって」

 

 今朝の朝礼の時間の事を思い出し、苦い顔をするラグナ。

 今日こそは関わらんと拒否を示したが、今思えばとても情けなかっただろう。

 だが、たまにはこういう勇気も必要なのだと、自分に言い聞かすラグナ。

 

「何が呪いのビデオだ。何がS子だ。お化けなんてこの世にいないんだよ!!」

 

 と、幽霊怖さに恥一つ顧みなかった男が言うセリフではないのだが。

 ラグナは鞄を置いて、すぐさまテレビ番組を見ようとテレビをつけた。

 

『てめぇら全員、血祭りに上げてやるぜヒャッハー!!』

「ったく、またてるっしーテレビに出てるよ。ははは」

 

 そう、お笑い番組を見ながら朝の事を忘れようとするラグナ。

 数分テレビに夢中になっていると、後ろの方でゴトっと物音が鳴る。

 

「うぐっ!」

 

 朝の話題が頭から離れていなかったのか、ついビビるラグナ。

 音は鞄の方からなった。鞄が倒れただけだった。

 

「んだよ、ビビらせやがって」

 

 そう、倒れた鞄を元に戻そうとした時。

 ふと、鞄に違和感を感じたラグナ。

 帰宅中には気付かなかったが、なにやらいつもより膨らんでおり、ちょっとだけ重かった。

 揺らすと、中でごとごとと硬い何かの音がした。

 ラグナは授業で使う教科書やメモ用のノート、筆箱も伸縮性があるやつと特に突起物を入れた覚えはない。

 なんだろうかと、ラグナがそれを取りだそうとした時。

 その身に覚えのないものが、鞄からラグナの傍に落ちた。

 そしてラグナの目に入ったものは……呪いのビデオと書かれたビデオテープだった。

 

「……な……なん……で?」

 

 つい、硬直してしまうラグナ。

 おかしい。それを受け取るどころか触れてさえいないはずなのに。

 ただでさえ見たくも関わりたくもない代物が、今ラグナの自宅の床に置かれている。

 まるで、この世のものではない力が働いたかのように、ラグナの鞄に入っており、そして姿を露わした呪いのビデオ。

 

「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ラグナがその存在を認識すると、身体をぶるぶる震わせながら、そのビデオを窓から外にぶん投げた。

 そしてすぐさま窓を閉めて鍵をかけ、汗だくのまま外から背を向ける。

 

「はぁ……はぁ……。お……おおおおどろかしやがって。校長、いつのまにあんなもの俺のカバンの中に転移させやがった……」

 

 きっとレイチェルのいたずらだろう、だがもう現物を捨ててしまったのだからこれで解決だ。

 と、思ったのもつかの間。

 今度は、台所からガシャンと何かが割れるような音が聞こえた。

 

「な、なんだ!?」

 

 ビデオの件もあってか、ガチで驚くラグナ。

 すぐさま台所へ行くと、棚にしまっていたはずの食器が割れて地面に散乱していた。

 そして、やっぱりそこに置いてあった……呪いのビデオ。

 

「ガントレットハーデスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 捨てても現れた恐ろしいビデオをラグナが見つけた瞬間、力で壊すことを決めた。

 だがラグナがビデオを蹴りあげても、鎌でぶった切ろうとも、闇で食おうともビデオはびくともしなかった。

 

「なんで壊れないぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 謎の力が働いて、壊れないビデオ。

 そして、徐々に悪くなっていくラグナの自宅。

 ざわつく空気、聞こえるラップ音。

 このビデオの存在が、ラグナの周囲に不可思議な力を招き入れる。

 これは、このビデオを見ろという、何者かのメッセージなのだろうか。

 

「……見るしかないのか」

 

 そう覚悟を決めたラグナ。

 すぐさま物置から古いビデオレコーダーを取りだし、テレビに繋ぐ。

 今ならまだ間に合うと、ラグナは何度も思うのだが、まるで操られたかのようにそのビデオをセッティングするラグナ。

 

「は、はははははは! お、お化けなんてこここ、この世にいるわけがないんだよ……あははははははは!! あーーっはっはっはっは!!」

 

 そう自分の恐怖をはねのけようと必死なラグナ。

 そしてセッティングが終わり、いよいよビデオを再生するラグナ。

 

「そ、そんなな。テレビから幽霊が出てくるとか、そんなアニメや映画じゃあるまいし!!」

 

 ここがアニメみたいな世界であるにも関わらず、ありえないとラグナは不可思議な力を認めようとしない。

 ビデオが再生される。すると、S子に出てくるようなノイズが流れ、砂嵐がテレビ画面を覆った。

 数分間、ザーっと……不気味な音がラグナの耳に入ってくる。

 

「……んだよ、いたずらじゃねぇかよ!!」

 

 いつまでたってもビデオが進まない、砂嵐だけだ。

 だがこれで安心したのか、ラグナは力いっぱい握っていた拳を解く。肩の力も抜けて行った。

 さきほどの不可思議な現象も、恐怖のあまりの幻聴や幻想だったのだろうと。

 そう思い、ビデオを取りだそうとした……その時だった。

 ばつんと、画面が一瞬で切り替わった。

 

「え?」

 

 呆けるラグナ。

 ビデオは砂嵐から、古い井戸の映像へと変わる。

 これではまるで、あのS子ではないか。

 

「い……いたずらってすげぇよなぁ~。ふつうここまでやるか~?」

 

 ラグナはまた拳を握りしめ、ぶるぶる身体を震わせる。

 そして、テレビの中の井戸から、一人の女の子が這いあがってきた。

 ゴスロリチックな青の服を着た。アホ毛が特徴の長い金髪の少女。

 その少女が、ゆらりゆらりとテレビへと近づいてくる。

 

「ま、まさかテレビからこっちへやってくるとか……ほ、ほら今の時代の3Dは進化してるし」

 

 とかわけのわからないことを口走るラグナ。

 テレビの中の少女は、こちらへこちらへと向かってくる。

 ゆらりゆらりと、ラグナがまさかと思ったとてつもないことを、少女はやってのけた。

 なんと、テレビから手を出し、ラグナの方へとやってこようとする少女。

 

「来んじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 その少女が身体の半分までテレビから出してきた所で、その少女ごとテレビを思いっきり蹴り飛ばしたラグナ。

 大破するテレビ。だがその衝撃でも少女はテレビから身体を半分出した状態を維持していた。

 コンセントだって抜けているのに、謎の力でその場に留まる少女。

 

「いーたーいー」

「うるせぇ!! 帰れ!! 俺はお前なんてこここ、怖くねぇからな!! 怖くないからとっととテレビの中に帰れ!! お前なんて恐ろしくもない、だから井戸の中に帰ってくださいお願いします!!」

 

 なんかもう虚勢と願いが一致していないほど怯えるラグナ。

 だが少女はテレビにつっかえて、元に戻ろうにも戻れない。

 最も、こっちに来ようとしても来れないのだが。

 

「たーすーけーてー」

「誰が助けるか!!」

「助けを要請。対象をとても優しい人と認識。結論的に私が助かる率が99%」

「残りの1%にどれだけの可能性が込められているかしらないようだな! 俺は1%でも諦めはしねぇ! 俺は希望を信じる!!」

 

 口ではとてもかっこいいことを言っているのだが、状況が状況なのかとても腑抜けに見えるラグナ。

 ラグナは意地でも少女を助けようとしない。

 

「対象、未だ助けを拒否。このままでは行動不能。対処を検討、このまま救助の要請を続行」

「俺は絶対にてめぇを助けてなんてやらねぇ!! そのままテレビの中に帰りやがれ!!」

「帰還不可能、進行不可能。行動不可能。なので対象が生き続ける限り、いや死んでも尚対象を呪い続ける。アーメン、オーメン、ソーメン」

「あぁぁぁぁぁぁわかった!! 助けてやっから俺を呪うのはやめろ!!」

 

 呪われるのが嫌だったのか、ラグナは嫌々その少女を助けることに。

 数分後、金髪のアホ毛の少女はテレビから救助された。

 頭に三角巾を撒いている所を見ると、死んでいるのは変わりない模様。

 

「ありがとう、優しい人」

「褒めても何も出ねぇぞ。さっさと俺の前から消え失せやがれ」

「まだ名乗ってませんでしたね。私の名前はEs子です」

「おおそうか。ならばさっさと帰りやがれ」

「これでも私、膝に矢を受けてしまい負傷しており行動不能中。泊めてくださるとはやはりあなたは優しいのですね。感謝します」

「帰れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 恐怖におびえるラグナの叫びは空を切るばかり。

 自ら幽霊と名乗るEs子という少女は、無理やりラグナの家に泊まることにした。

 

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 Es子が現れてから早数時間、時刻はすっかり深夜を周った。

 Es子の存在が原因なのか、ラグナの自宅からは怨念のような霊波動が醸し出されている。

 Es子はずっと座っており、その間もラグナはEs子を見ないようにと奥で布団にくるまってぶるぶる震えていた。

 

「ラグナ、私のお願いを聞いてはもらえないでしょうか?」

「誰がゆゆ、幽霊の願いなんか聞くかよ!! 俺じゃなくてもいいだろ? この世には俺以上に優しい奴なんてごまんといるよ!!」

 

 なんという情けないことか、ラグナは幽霊に関わりたくない一心で少女一人の願いを拒否する。

 呪いのビデオから現れたEs子。なんでも数百年前にワダツミにて無残な死を遂げた少女の幽霊だという。

 そして知らぬ間にビデオに閉じ込められ、百年後、ラグナの手によって解き放たれたEs子。

 未だに成仏できない彼女のお願いとは一体何なのだろうか。

 

「私は死ぬ前に"あること"をやり残しました。このままでは成仏できません。早く成仏して天国であの人たちに会いたい」

「んなもん会いたきゃ会いに逝けばいいだろうが!」

「その前にやることがあったはずなのです。けれどその願いを忘れてしまいました」

「じゃあ手伝うことはできねぇな! 俺はあの日見た花一つ守ることもできねぇ臆病ものさ! 帰れ帰れ!!」

 

 あれだけ多くの物を守りたいと願った男が、幽霊一つでその信念を捻じ曲げてしまった瞬間だった。

 だがこのままではEs子はいつまでたってもラグナから離れていかない。願いを叶えるまではずっとラグナの周りで心霊現象が続くのだ。

 これはこれで困りもの。だがラグナはEs子から離れるまで布団から出ようとしない。

 

「ラグナ。私の願いを叶えて成仏させてください」

「断る!!」

「……そうですか。ならこのまま私はこの現世に留まり、呪いによって増幅した霊力で、日に日にあなたの傍にたくさんの幽霊を招き入れることになります。この先肩コリから始まりやがては謎の病気に発展し、霊波動がラグナを蝕んでいくことになr」

「あぁぁぁぁぁわかったわかった!! すぐさまその願い一つ叶えてやらぁ!!」

 

 こうして、ほぼむりやりラグナはEs子の願いをかなえることになってしまった。

 その日、寝る時もずっとEs子の存在が邪魔をし、結局ラグナは一睡もできなかった。

 そして次の日、ラグナはEs子をおぶって(実際は憑依されている)学校に向かった。

 

「ラグナ先生。なんか顔色が良くないのだが……」

 

 職員室に入ってすぐ、ラグナの異変に気付いたのはハクメン先生だった。

 ラグナの顔はというと、目の下には巨大なクマ、さらにEs子をおぶっているせいか気だるそうに腰を曲げており、どっからどう見ても正常ではない様子だった。

 

「……ハクメン先生。あんた……除霊ってできるか?」

「なにをいきなり。……貴様まさか」

 

 そのラグナの除霊という言葉で、ハクメン先生は察した。

 いつのまにか職員室から消えていた呪いのビデオ。その翌日にラグナのこの様子。

 もう答えは一つしかなかった。ハクメン先生は小さな笑みを浮かべラグナに言う。

 

「ふっ。ラグナ先生も人がいいな。あれだけ見たくないと喚いていたのに我々のためにこっそりと呪いのビデオを……」

「誰があんなもん自ら進んで見るか! 校長てめぇだろ!? 俺のカバンにあんなもん転移させたのは!!」

「私はなにも知らないわよ。言っておくけど嘘なんてついてないので、おそらく呪いのビデオがあなたを驚かせたくて自らあなたの家にでも向かって行ったのではないかしら?」

 

 そう冷静に言うレイチェル。その顔を見る限り、嘘をついているわけではなさそうだった。

 あれはまごうことなき呪いの力であり、レイチェルはラグナを陥れようとはしていなかったのだ。

 

「ラグナ。早く私の願いを叶えてください」

「うるせぇお前はだまってろ!!」

 

 急かすEs子に対してラグナは怒鳴り散らした。

 この光景。ラグナからすればおぶっているEs子に怒鳴ったわけだが、他の連中にはラグナが突如居もしない誰かに怒鳴ったようにしか見えなかったという。

 

「あらあらラグナ。本当に頭がどうかしてしまったのではないかしら? ゴーストの囁きとか、それとも友達が少なすぎてエア友達でも始めたのかしら?」

「誰がんなもん始めるか!?」

 

 この状況をレイチェルにおちょくられ、ますます気分を害するラグナ。

 と、幽霊に取りつかれていようともラグナは立派な社会人、今日も授業をしなければならない。

 朝礼が終わり、ラグナは一時間目の授業のため3年B組の教室へと向かった。

 

「先生。なんだか顔色が悪そうですけど。なんか姿勢も低いし……」

 

 教室に付くと、初っ端ノエルに心配されるラグナ。

 

「うるせぇ。てめぇの胸の調子ほど悪くねぇよ」

「なんか心配しただけなのにいきなりぶっこまれたんですけど! しかもいつも以上に感じわる!」

 

 ただノエルはラグナを気遣っただけなのに、さっそく胸の事でいじられるノエル。

 その後も、授業中に暇さえあれば。

 

「暗黒大戦で、人類が最初に作ったアークエネミーは? ノエル答えてみろ」

「え、えぇと……無兆鈴?」

「ったくタケミカヅチだ覚えておけって言っただろうが、いつも授業中に無兆鈴で胸を大きくしたいとか考えてるから無兆鈴しか頭にねぇんだよ」

「そこでも言うか!? かれこれこの一時間で数十回は胸の事でいじられてるんですけど!」

 

 とても機嫌が悪いからなのだろうか、いつも以上にノエルにうっぷんをぶつけるラグナ。

 だがノエルにはEs子は見えておらず、呪いのビデオの事も知らないため。

 ノエルからすればラグナがまたパチンコかなんかで負けて機嫌を損ねて、自分をいじめてうっぷんを晴らしているのだろうと思っていた。

 

「先生、何があったかは知りませんが私にあたるのやめてもらえませんか?」

「うるせぇてめぇに俺の何がわかる。てめぇのその壁はなんのためにあるんだよ? 人の傷ついた心を受け止めるためにその絶壁が存在してるんだろ?」

「うがーーー!! これ以上言ったらミューに変身するか新作クッキー食わすぞこの野郎!!」

 

 ここにきてノエルもたまらずラグナにブチ切れ。

 ミューに変身してラグナを殺すか、料理を食べさせて殺すと言っている。

 と、ここでいつものラグナなら反省の色を見せるのだが。

 Es子に憑依されているからなのか、ラグナが予想外の反応を見せた。

 

「……ノエルの……クッキー?」

「ん? な、なんですか?」

 

 意外なことに、ノエルのクッキーに反応を示したラグナ。そして……。

 

「ノエル、そのクッキー俺に食わせろ!」

 

 と、とてつもないことを言いだしたラグナ。

 それを聞いたノエルは、ジト目でラグナを見つめ。

 

「先生……。これ以上私をおちょくると泣き叫びますよ?」

「おちょくってなんかいねぇ!! 俺に取り憑いているこいつを引きはがせるかもしれねぇんだ! お前の料理ならどんな悪霊すら消しさる威力があるはずだ! 俺はその可能性を信じる!」

「なんかすっげぇバカにされてる気がするんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 多分料理を褒められているのだろうが、その褒め方がものすごく侮辱的だったためノエルは素直に喜べなかった。

 事情はよくわからなかったものの、言われたままにノエルはラグナに新作クッキーを手渡した。

 

「ま、まぁとりあえず……食べてみてください」

「よくやったノエル! Es子てめぇを葬り去ってやる!!」

 

 と、ラグナはなんと間髪いれずにノエルのクッキーを全て口に運んだ。

 すると、徐々にラグナの顔色が紫色に変化していき。

 

「ぎゃあああああああああああ!!」

 

 案の定叫びをあげた。

 だが、苦しみを訴えるのはラグナだけではなかった。

 

「こ、この物質は……。検索不可能。未知の物質を感知、周りの怨念そのものを除去するほどの波動わわわわわわわわわ」

「どどどどうだEs子! この殺人クッキーは死者すら葬り去るとてつもない最終兵器だ!! 俺の身体から消えされぇぇぇぇぇ!!」

「……」

 

 一人で何者かとしゃべりながら、それもノエルのクッキーを大声で侮辱しているラグナ。

 当然Es子はノエルには見えていない。ノエルはとてもやるせない気持ちになった。

 

「が……がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「う……ぅぅぅぅぅぅぅ……」

 

「「ケェェェェェェェケケケケケケケケーーーー!!」」

 

 と、突如ラグナは白目を剥いてブリッジの体制をとった。

 そしてそのまま、エクソシストがごとく教室から後走。

 まるで何かに取り憑かれたかのように、実際に取り憑かれているのだが。

 

「……なんだったんだろう、いったい」

 

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 そして昼休みの時間。

 結局の所Es子は、ノエルのクッキーを持ってしても成仏していなかった。

 お腹の痛みとEs子の怨念で苦しみを上げるラグナ。

 

「お……おぉぉぉぉ」

「もう少しで消える所でした。危なかったです」

「消えてしまえばよかったのに……」

 

 ラグナの必死の覚悟すら、Es子の強い怨念がそれを勝った。

 結局ラグナはノエルのクッキーを自ら食べて苦しい思いをしただけだった。これほどに無様な結果があるだろうか。

 だが、そのクッキーは、多少の希望を残して行ったという。

 

「さきほどのゲキマズクッキーの衝撃で、多少その願いを思いだしました」

「な、なにぃ……?」

 

 そう、あのクッキーの衝撃が、Es子の中に眠っていた願いを思い出させたのだった。

 さすがはノエルのクッキーと言うべきか、怨念の封印されし記憶すら引きずり出して見せた。

 

「んで……その願いってなんだ?」

「私は死ぬ間際、もう一度"あるもの"を食べたいと願ったのです」

「食べ物かよ……。クッキーか?」

「クッキーだったらもう消え去っているでしょう。その……ふわふわしていてほにゃほにゃしていて、とても甘くてとってもおいしい、口の中でとろけるアレです」

「わからん……」

 

 Es子はその願いが食べ物である所までは思いだしたのだが、その肝心な食べ物を思いだすには至らなかった。

 できるなら今日中に除霊をしたいところ、だがその道のりは遠い。

 どうしたものかと、悩んでいた時だった。

 

「わ~。ありがとうラムダ~」

「おみやげ、約束したから……」

 

 なにやら奥の方で、喜ぶニューの声が聞こえてきた。

 そのむかいにはラムダもいる。二人が一緒にいるのは珍しいことだった。

 ただでさえEs子に悩まされているのに、ニューに会えば絡まれてさらに精神が削られる。

 

「どうしたのですラグナ」

「今はあいつと顔を合わせたくねぇ」

 

 そう、その場を離れようとした時だった。

 

「これ食べたかったんだよねぇ。イカルガ印のとろける"プリン"」

「!?」

 

 その、とある単語がニューの口から出た瞬間、Es子の表情がきゅっと変わった。

 そして、ラグナをずるずる引きづって、ニューの方へと向かっていく。

 

「ななななななんだぁぁぁぁ!?」

 

 自らの意思で操れない身体。

 そして、わざわざラグナはニューとラムダの近くへ。

 

「あーラグナ~! どうしたの~?」

 

 そう歓喜に満ち溢れるように言うニュー。

 いったいどうして、Es子はわざわざラグナをニューの近くへ連れて行ったのだろうか。

 

「なんのつもりだEs子!!」

「思いだしました。私の願いを……」

「なに!? いったい何を食べたいんだ!?」

 

 すでに、そのEs子の願いはニューがすでに答えを出していたのだ。

 ニューとラムダが手に握っている、それである。

 

「ふわふわでほにゃほにゃの……プリンが食べたい」

「プリン!?」

 

 そう、Es子は生前プリンが大好きで、家族同然の人達と一緒に食べるプリンを常に楽しみにしていたのだ。

 それは死に際も同じこと。ある大事な最終決戦前にも食べたのだが、死ぬ寸前やっぱりもう一回食べたかったなぁと思ってしまったという。

 それからというもの、一回でいいからプリンを、それもごく普通に売っているプリンではなく限りなくおいしいプリンを食べたいと成仏できずにいた。

 そして今、Es子を成仏させるキーであるプリンが、目の前に二つもある。

 

「ラグナ。あれをぜひとも奪い取ってください」

「いや……奪い取ってくださいって……」

 

 そう突拍子もないことを言いだすEs子。

 

「ラグナ~。さっきから何を一人でぶつぶつ言っているの? 頭ぶつけた?」

「お前に心配されるとは……」

「……」

 

 ニューにはEs子を見えていない、だが……ラムダはラグナの後ろに潜む何者かの存在には気付いていたという。

 そのせいなのか、ラムダは急にプリンを隠し始めた。

 

「ま、まぁなんだ……。その……お前らのプリンを一つでいいから……譲ってくれねぇかな?」

 

 ラグナは率直にそうお願いをした。

 たかがプリン一つ、特にラグナにぞっこんのニューの事だ。あっさりと譲ってくれるに違いない。

 と、思っていたのだが。

 

「えーーー!? これは流石のラグナにも譲れないよ!!」

「なに!?」

「だってこのイカルガ印のとろけるプリンは、あまりの売れ行き故にかなりの希少価値、この二つを逃したらもう一生手に入らないかもしれないんだよ!!」

 

 と、らしくないほど必死になるニュー。

 たしかにとてもおいしいお菓子を、ただで譲れと言われて譲るやついないだろう。

 だが、どうにもこの二人も、プリンに対する想いが深く感じた。

 

「あーその、なんとかならねぇか?」

「だめだよ~。私たちプリン大好き同盟に、プリンを誰かに譲るなんていうのはもってのほかなんだよ」

「なんだよプリン大好き同盟って……」

 

 そう、ニューとラムダも大のプリン好きであり、ラムダが暇な日は一緒にプリンのカタログやプリンを手作りしたりしているらしい。

 そこまでのプリン好き。そして今回のこのイカルガ印のとろけるプリンである。

 あのニューが、ラグナのお願いを断ってまで譲らないプリン。これは相当なことだろう。

 だとすると、残ったラムダに頼むしかない。だが、ラムダはラグナと目を合わせてくれない。

 

「ラムダ~。プリンを……」

「つーん」

「あの……ゆずってくれないかな~?」

「つーん」

 

 わざとなのか、ラムダはうんともすんとも言わない。

 このままではEs子が成仏しないのである。

 

「Es子。街で売ってるぷちんプリンで我慢してくれねぇか?」

「拒否。そのプリンがいいです」

「……奮発して十個くらい買ってやるからさ」

「つーん」

「おめぇもかよ! つかてめぇらなんかどこかこっか似てるな!!」

 

 Es子、ニュー、ラムダはラグナの必死の頼みに対し、うんともすんとも言うことなく目を合わせてくれなくなった。

 せっかくEs子を成仏できる手がかりを得たのに、しかもそのプリンはもう手に入らないらしい。

 

「……仮に、そのプリンが手に入らなかったら?」

「私の呪いの力が増幅され、やがてあなたに途方もない残酷な力が降り注ぎ」

「ニュー! ラムダ!! たのむそのプリンを譲ってくれ!!」

「「つーん」」

 

 プリンが手に入る兆しなし、このままではラグナは呪いでやられてしまう。

 悩んだ末に、ラグナは覚悟を決め。

 

「……あ! 空に巨大なプリンが浮いてる!!」

「え!?」

「お外……」

 

 そう、二人がラグナの簡単な手にひっかかり、目線を反らした所で。

 ラグナは一瞬の隙に、二人からプリンを奪い逃走する。

 

「あーーーーーーーーーーーーー!!」

「プ……プリン……」

 

 ニューは叫び、ラムダは途方に暮れる。

 少女二人からプリンを奪って全力疾走で逃走するラグナ。もうなんだかんだの優しさ一つ感じられなくなってしまった哀れな男。

 そして、二人の姿が見えなくなった所で、すぐさまプリンを開けてEs子に渡す。

 

「はぁ……はぁ……。マジですまねぇ」

 

 そう、プリンを見て二人に謝るラグナ。

 だがこれで、Es子が成仏してくれるのなら、今は罪悪感に縛られている場合ではない。

 

「ほら、早くそれを食え。そしてさっさと成仏しろ」

「ありがとうございますラグナ。プリン……あぁプリン。うふっ……ぐふふ……ぐへへへへへぇ~」

 

 おいしいプリンを目の前にして、Es子のポーカーフェイスが崩れる。

 そこまでプリンが好きなのか、そして食べたかったのか……。

 

「ほら、食え早く。食えよ早く……」

「まってください。匂い、クンカクンカ。そしてその圧倒的存在感を噛みしめてから」

「頼むから早く食べてくださいお願いしますぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 そう、眺めるだけでプリンを食べようとしないEs子。

 そうこうしていると、何やら遠くから大きな音が鳴り響いた。

 

「な、なんだ!?」

 

 ラグナは驚いて振り向くと。

 そこにいたのは、完全排除モードのニューとラムダだった。

 それぞれアーマーを身につけ、ラグナを殺さんとしていた。

 

「ラグナ~。ニューだってラグナに何されても怒らないわけじゃないんだからねぇ~」

「対象……プリンを奪う大罪者。プリンを奪う物には消滅を……完全消滅を……」

「お前ら本気すぎぃぃぃぃ!! Es子早くそれを食べろ!!」

「あ……。このスプーンで触った感触……」

「早く食べてくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいい!!」

 

 いつまで経ってもプリンを食べようとしないEs子。

 そしてニューとラムダは、ペタルを展開し、魔法陣から剣を召喚する。

 

「レガシーエッジ!!」

「カラミティ……ソード……」

 

 ニューはレガシーエッジを、ラムダはカラミティソードを放ちラグナを攻撃。

 このままではプリンまでもが滅びてしまう。ラグナはEs子を庇うようにその攻撃を受け止めた。

 

「が……がはっ!!」

 

 どうしてこんな目に合わなければならないのか……。

 ラグナは血まみれの身体になりながらも、Es子とプリンを守ろうとする。

 

「ラグナ、大丈夫ですか?」

「し、心配するくらいなら……早く食べてください……」

「「滅べ」」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 いつまでもEs子がプリンを食べないせいで、ラグナの身体は剣で串刺しにされ、血まみれに。

 このままではラグナまで幽霊になってしまう勢いだった。

 

「は……はや……く……。プリン……を」

「うーん、まだ眺めていたいなー」

「……お前……ドSだろ?」

「Es子だけに」

「笑えねぇーーーーーーーーーーーー!!」

 

 Es子は中々プリンを食べようとせずに、ラグナが滅びる限界まで観察していた。

 

「はぁはぁ……。早くどいてよラグナ~。その奥にいるやつ殺せない」

「もう死んでるんだよそいつは……」

 

 プリンを奪われて病みまくっているニューに、意気消沈で答えるラグナ。

 そして等々身体も限界が来て、その地に倒れ込むラグナ。

 そんなラグナを、受け止めるEs子。

 

「Es……子……」

「ありがとうございますラグナ。もう私は大丈夫です」

 

 そうやんわりとほほ笑むEs子。

 先ほどまでとはなにやら様子が異なる。

 そう、三角巾が取れており、現世に姿を現界しているのだ。

 

「ちょっとあなた! 私のプリンまでならまだしもラグナまで!!」

「プリン返して……」

「その必要はありません」

 

 殺気溢れる二人に怯むことなく、Es子は二人に向かっていく。

 その瞳は、綺麗な蒼に染まっていく。

 彼女の中に眠りしエンブリオの力が発動され、圧倒的な力を身にまとうEs子。

 

「な、なにそれ!?」

「解析不能。これは……プリンへの愛のエナジー……」

「ラムダ……おめぇ何言ってんの……?」

 

 お前そういうキャラじゃねぇだろうと言わんばかりのラグナのツッコミ。

 そんなエンブリオ、プリンへの愛のエナジーを纏ったEs子は、二人の傍までより。

 そして、自らの意思を説くように、優しい声色で語る。

 

「本当にプリンが好きな者が、プリンのために争っていてどうするのですか? 少しは考えてください」

「いや……あなたがラグナをかどわかしてプリンを奪ったのが原因じゃ……」

「プリンとは、ふわふわでほにゃほにゃの、とても甘くて幸せになれる食べ物です。その幸せの象徴を目の前に、争いをするわけにはいきません」

「う……うん、そうだね」

 

 あのニューが圧倒されていた。

 一方でラムダは、Es子の語る言葉に魅了されていた。

 

「ラムダ。あなたならわかってくれますよね?」

「……うん」

「え!? ラムダそれでいいの!?」

 

 ラムダはすっかりEs子に取り込まれていた。

 それに対しどうにも納得しきれていないニュー。

 

「プリンは二つ。でも私たちプリンを愛する心は一つ。ここは三人で分けて食べるのが妥当かと思われます」

「いやいやどうしてさ!? あのプリンはニューとラムダのものなのに!!」

「その通りだと思う」

「えぇぇぇぇぇ!! ラムダ騙されてるよもう少し自我を保って!!」

 

 Es子に同調するラムダ。それを止めようとするニューだが、もうラムダとEs子は行き統合してしまっている。

 そしてそのままむりやりEs子は、二人と手を繋ぎ、そしてその場で輪を作って周り始める。

 

「幸せなら~♪ 一緒にプリンを食べましょう~♪」

「プリン~♪ プリン~♪」

「う……。プ、プリ~ン……」

 

 こうして三人は仲直り……したのかどうかはわからないが、イカルガ印のとろけるプリンを分けて食べることに。

 これでEs子は成仏されるだろう。と、そこで一人忘れ去られている男が。

 

「……俺、なんのためにここまで……ボロボロ……に……」

 

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 翌日の朝礼にて。

 朝職員室へとやってくると、ハクメン先生に声をかけられるラグナ。

 

「おぉラグナ先生。すっかり体調も良くなったようだな」

「あぁ……なんとかな」

 

 Es子の瘴気にやられていた気だるさも、ニューたちにやられた傷もなんとか癒して、いつも通りに学校へとやってきたラグナ。

 もう、肩にのしかかる少女の怨念は存在しない。

 ラグナは自由になったのだ。呪いから解放され、足に付けられていた重りが無くなったような気分だった。

 これほどに平和な日常が恋しいと思ったことは、なかったという。

 

「そうかそうか。さてと、そういえば……」

 

 と、いつぞやの時のようにハクメン先生は、鞄から何かを取りだした。

 

「あらハクメン先生。このブルーレイの時代に似つかわしくない古臭いビデオテープは何かしら?」

 

 レイチェルがそう尋ねると、ハクメン先生は腕を組みながら答えた。

 

「昔から通っているレンタル屋の店主が、倉庫を掃除していた時に見つけたらしい」

 

 という、いわくつきの品らしい。

 どうしてこんな物を学校に持ってきたのか。

 それは、ビデオテープのタイトル名が、人々の興味をそそるようなものだったからである。

 

「へぇ~。"ワダツミの殺人鬼、リッパーの呪い"ねぇ~」

「あぁ、このビデオを見た物は見た日から一週間、殺人鬼に追いまわされるといういわくつきの呪いのビデオらしい」

「なるほど。是非とも気になるわねぇ。誰かこのビデオを見てくれる人は……」

 

 そう、レイチェルが周りを見渡すと。

 一人、先ほどまでいた教師の姿が消えていた。

 

「……逃げたわね」

 

 レイチェルが少しだけ残念そうにそう呟いた。

 これ以上は関わりたくないと、ラグナは学校から逃げ出したのだ。

 これにはハクメン先生も、半分呆れ顔を浮かべた。

 

「仕方なかろう。まぁ……このビデオは危なさそうだからさっさと処分して……」

 

 と、ハクメン先生がビデオの方に目を向けると……。

 

「……あれ? 先ほどまでここに置いてあったのだが……」

 

 一方で、逃げたラグナはというと……。

 

「ヒャッハハハハハハハハ!! 死神ラグナくんと殺りあえるとか超ラッキー!!」

「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 こうして、再び呪われてしまったラグナ。

 果たして彼の呪いは、いつ解呪されるのだろうか……。

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