3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

3 / 33
第三話です。


第3話:お酒は二十歳になってから

「はぁ~、保健室勤務は退屈ね。ここの生徒タフだから滅多に保健室来ないし」

 

 ブレイブルー学園保険医であるライチ・フェイ・リン。

 とにかく美人であり、思春期真っただ中の男子生徒達からも人気が高い。

 腕も確かで少しの怪我ならあっという間に直してしまう。

 だが健康自慢のブレイブルー学園の生徒達は、怪我もしていないのに保健室に訪れることがほとんどである。

 そんな今日は怪我人も、遊びに来る生徒もおらず、非常に暇を持て余していた。

 

「まあ良いことではあるんだけど……ん?」

 

 ライチが廊下を歩いていると、二人の教師の姿が見えた。

 ラグナとハクメン先生である。なにやら話をしているようだ。

 

「おいハクメン先生。"例の計画"、進んでるんだろうな?」

「順調だ。2%も遅れていない」

 

 なにやら計画という物騒な言葉が聞こえてきた。

 

(例の計画……? 何のことかしら。ていうか、何故私は隠れたのか。盗み聞きは良くないわね)

 

 悪いと思っていながらもついつい盗み聞きをしてしまうライチ。

 計画などと耳にしてしまえば、気になってしまうのが人の性である。

 どうせ大したことじゃないだろう、きっとまた小さな悪さをたくらんでいるに違いない。

 と、他人事のように思いながら話を聞いていると……。

 

「そちらこそ、ライチ先生には気取られていないだろうな?」

(え……?)

 

 なんと、意外なことに自分の名前が出てきて思わず驚くライチ。

 

「たりめーだ。奴にバレたら台なしだからな」

(いったいどういうこと?)

 

 自分にバレたら台無し。とラグナが言う。

 いったいどういうことだろう。ライチには身に覚えがない。

 何かしら悪いことをしたというならわかる。しかし自分が関わったら大変なことになるような事態など今までなかったはず。

 思えば思うだけモヤモヤするライチ。そんな本人が見てるとも知らず二人はというと。

 

「そのとおりだ。では詳細はまた後ほど。教員達への伝達は頼んだぞ」

「任せとけ。ライチ先生と生徒以外には知らせとく」

 

 その会話の一部始終を聞いたライチは、二人に妙な疑問を抱く……。

 

(生徒と……"私"以外? 何よ? 一体なんなの!? 私が一体なにをしたって言うのよ!)

「おっといけねぇ。じゃあそろそろ行くわ」

「ああ。楽しい一日になるよう全力で練ろう」

 

 と、ラグナとハクメンはがっちり握手を交わし、去って行った。

 今の会話を聞く限りでは、本当にライチだけが除け者になっているようだ。

 悪いことなどした覚えがない。そもそも正義感の強いライチは隠し事が大嫌いである。

 被害者が自分だと知ってしまった以上、怒りと探究心が頭の中を支配する。

 

(私だけをハブいて楽しい計画、そんなの絶対許さないんだから!! まず尋問ね。場合によっては拷問になるわよ? うふふふふ、さあてどっちから吐かせてやろうかしら……)

 

 ライチは心の中でひっそりと炎を燃やした。

 この会話を聞かれてしまった以上、先ほどのどちらかが地獄を味わうことは確定事象となった。

 

「ハクメン先生は口が堅そうで面倒ね。となるとラグナ先生……下準備が必要だわ」

 

 尋問対象はラグナに決定した。

 しかしただ聞きに言っても適当にごまかされて終わってしまう。

 相手の本心を聞きだすならば圧倒的なアドバンテージが必要、そのために二つ三つ罠を貼る必要がある。

 さらに、罠を貼った上で圧倒的な力関係を見せつけなければならない。そんな恐ろしいことを黙々と考えていると。

 

「ライチせんせ~、指切っちゃいましたぁ~」

「天は我に見方せり!!」

 

 飛んで火に入る夏の虫とはこのことか。

 丁度良いタイミングでノエルが指を切ったと保健室に入ってきたではないか。

 そこで保健室に入ってきたのがノエルだったのがライチの好機となる。ノエルを見てすぐさまラグナを陥れる作戦を思いつくライチ。

 目を光らせるライチに、ノエルは少々困惑した表情で。

 

「え? 今なんて……」

「いえいえなんでもないわよ? じゃあちゃっちゃと手当てするわよー」

「なんか今日のライチ先生怪しい……」

 

 あきらかに急いでいるのか、手順が素早く本題に持っていこうとしているのがわかる。

 ライチはノエルの切った指を見て。力を貯める。

 

「えい、ベ○マ」

「ちょ!? 怪しい!?」

 

 ライチ先生はベ○マを唱える。

 作品無視で回復魔法を唱えたライチは、やり切った表情で言った。

 

「はい完治」

「マジでーーー!?」

「怪我治したお礼にちょっと付き合って欲しいんだけど……」

「保健医なのに生徒の怪我治してお礼要求するんですか? まあいいですけど」

 

 仕事が早い上になんとお礼を要求してきたライチにノエルは微妙な表情になる。

 

「ニヤリ……」

 

 ライチは"じごくへのかたみちキップ"をてにいれた!

 

「ちょっと!? 今凄く不穏なテロップ流れませんでした!?」

「気にしない気にしない~」

 

 こうしてノエルというじごくのかたみちキップを手に入れたライチは、ノエルにあることを指示する。

 罠の仕掛けを終えたライチは、ラグナを地獄に落とすための算段を念入りに組み立てる。

 その様子を見ていたノエルは、ライチが放つ恐ろしい覇気に終始怯えていた。

 

-----------------------

 

 そして放課後……。

 

「ふ~今日も一日が終わったな。あっと、ハクメン先生のとこに行って最後の詰めを」

 

 これから地獄を見るなどと思ってもいないであろうこの男は、呑気に廊下を歩いていた。

 そして時は来る。地獄からの使者がラグナに声をかける。

 

「ラーグナせんせっ!」

「うおっ!?」

 

 気軽に声をかけるライチ。

 ラグナはライチに声をかけられたと知るや否や、表情を大きく崩す。

 

「あ~ら、どうしたんですか? 声かけただけでそんなに驚くなんて……」

「らららライチ……せんせい? な、なんでもねぇよ! ちょっと気ぃ抜いてたとこだから焦っ」

 

 なにも知っていませんといった風に近づくライチ。

 本当は裏ありまくりでこれから地獄に落とそうとわざとらしい笑顔を見せながらラグナに滲みよる。

 そんな中ラグナは焦りから平常心を保っていられるわけもなく、焦りながらも対応をする。

 

「そうですか。確かに放課後って一気に楽になりますよね。うふふっ」

 

 焦るラグナを確認し、さらにわざとらしくそんなことを言ってみたりするライチ。

 

(な、なんなんだ? なんか喋り方に少しとげを感じるような。ま、まさかバレたか!? いやそんなはずはねぇ……)

 

 このライチの奥底に眠る暗黒を垣間見たラグナは、自分が失敗したかと疑い始める。

 まさかあの時あの場所で盗み聞きをされていたなどと知る由もない。

 ラグナの動揺する様を見終えたライチは、作戦を次の段階に進める。

 

「なにやら気分がすぐれないみたいですね、どうですお疲れのところクッキーはいかがですか? 以前ラグナ先生が仰っていた方法で作ってみたんですけど~」

(一刻も早くこの場を離れたいが……不信感を与えるのはまずいか)

 

 そう言ってライチはさりげなくクッキーをラグナに差し出した。

 ラグナは下手な真似が出来ない。ここで無理に断ったりすればさらにライチに不信感を抱かせる原因となる。

 ラグナはクッキーを受け取ることにした。そう、こうなるようにライチに操られているとも知らず……

 

「ラグナ先生?」

「あ……ああ、いただくぜ!」

 

 迫りくるライチからクッキーを受け取るラグナ。

 ライチが作ったクッキーならば害はないだろう。ライチが作ったクッキー……ならば。

 ましてやラグナの中ではライチが計画を知っているはずもないと言う安心感を念じているのだから、ラグナからすればこのクッキーはライチ以外のであるはずがないのだ。

 全てに安全ラインを引き、ラグナはクッキーを何の疑いもなく食べた。すると……。

 

「しょーへきかいふぉぉぉぉう!?」

「あらやだ脊髄バースト~」

 

 拒絶反応がごとくブレイクバーストを使うラグナ。

 それだけの威力が彼を襲ったのだ。吹き飛ばさなければこのままラウンドを取られてしまう。

 

「あ、あ、あんじゃこらぁぁぁぁぁぁ!! 俺はこんな核兵器の作り方言った覚えはねぇぞ!?」

「また大げさな、たかがクッキーじゃない」

 

 ライチが言うにはあくまでたかがクッキーである。

 が、食べたラグナの様子からこれがただのクッキーでないことがわかる。

 

「こんなもんクッキーじゃねぇ! クッキーは、甘いとかサクサクとかしっとりだろ!? これすっぱくてべとべとでぬめついてんでよ! おまけにくせぇ!」

 

 ラグナはクッキーに対して言いたい放題である。

 ラグナにダメージが伝わっていることを確認し、ライチが口を開く。

 

「変ねぇ。ちゃんと教わったとおりに作ったはずなのだけど……"ノエルちゃん"が」

「あ~の~ナイチチィィィ!」

 

 そう、お察しの通りこのクッキーを作ったのは料理兵器工場(ナイトメア・アーセナル)の異名を持つノエル・ヴァーミリオン。

 彼女に好き勝手クッキーを作らせたことで、乙女の手作りクッキーとは名ばかりのどどめ色の兵器が出来上がったのである。

 これを前情報なしで食べたためか、ラグナの体力は9割近く持っていかれている。

 

「ま、隠し味とか言ってオリーブオイルたくさん入れて、「速水も○みちがオリーブオイルたくさん入れたら料理がおいしくなるって言ってました!」とか言いながら楽しく作ってたわ」

「あいつ都合のいいところだけ解釈してんじゃねぇよ! も○みちに失礼だろうが!!」

 

 料理を侮辱されたような気分になり、計画関係なしに怒りを覚え始めたラグナ。

 しかし今はノエルに怒りを覚えている場合ではない。敵は目の前にいるのだ。

 

「さて本題に移りましょう。ラグナ先生、私に何か隠し事してませんこと?」

 

 大きなダメージを与えよろめふためくラグナに対し、ライチは必殺とごとくその話題を切り出した。

 ラグナはやはりかといった感じで、自身のダメージも含め冷静になり、吹っ切れる。

 

「隠し事? そりゃするさ。"仲間には隠し事なんてしない!"とか言い出すほど俺はK1やってない」

「あは、なかなか嘘がお上手ですね。"隠し事なんて無い"とか陳腐なこと言わないのは好印象です」

(こ、こえぇ。今日のライチ先生超こえぇ~)

 

 表上受けて立つラグナであったが、内心はビビりまくっていた。

 あと一押しでボロがでる。しかし今この場を耐えれば流して場を離れることが出来る。

 だがライチは逃がそうとしない。とことんまでラグナを追い詰める。

 

「でもねラグナ先生。私見てしまったの。こないだあなたとハクメン先生が私と生徒をハブいて"楽しい計画"を建てているところをね」

「な、なんのことだかさっぱりわからねぇな! 俺がなんであんなキモいお面野郎とお楽しみにならないといけねぇんだ!?」

 

 徐々に真相へと歩みよってくるライチに恐怖を抱きながらも立ち向かうラグナ。

 この状況ではラグナが圧倒的に不利。最悪武力行使してでも切り抜けなければ。

 

「やれやれ。どうやら武力行使の必要がありそうね」

 

 と、ラグナが武力行使に出る前にライチから仕掛けるようだ。

 こうなったらとことんやるまでだ。とラグナも覚悟を決める。

 

「来るならきやがれ!こっちだってBBEXでしこたま強化されたんだからな!?」

 

 BBEX時点でラグナはかなり上位のランクにいる。

 CSから数年経ち、でもなんやかんやで上位キャラの面目を保っているライチであるが、CS時代じゃない限りラグナにもワンチャンがある。だが……。

 

「先生、忘れてしまったかもしれませんが。このゲームキャラがアンリミの状態なら、ある程度はCS仕様のままなんですよ?」

「は……はぁ!? あんた何言ってやがる!? まさかてめぇ、その状態、アンリミ……っ!?」

「先生。貴方さっき"覚悟"しちゃったわよね? バーストで相手の攻撃を防ぐということは、もう一度相手にターンを取られた時に簡単にガークラされてしまうことを"覚悟"したってことよね? 私は国士もろもろ使いやすい技にプライマ削りが追加されているのだけど……」

 

 先ほどのクッキーのせいで、ラグナのブレイクバーストは尽きていた。

 ラグナは確かに強化されたが、ただでさえ通常のキャラを超越したアンリミ性能のライチに対して通常のラグナが勝てるわけがない。

 ましてや体力、バーストともに圧倒的なアドバンテージに部のあるライチ相手に、逆転など夢のまた夢である。

 

「き、貴様。あのクッキーはその為に!?」

「すでに設置は完了しているわ。あとは発動するだけ……」

 

 画面端、体力1割、バースト尽きゲージ尽き。

 ライチはゲージがたらふく溜まっており。

 

「ま、待ってくれぇ!!」

「いいや限界だ! 押すね!『国士無双』!!」

「ぎゃああああああああああ!! …………あ?」

「と、なりたくなければ洗いざらい吐きなさい」

「う、うえええええん!!」

 

 どうしようもなくなったラグナは、とうとう観念した。

 地獄に落ちた男ラグナ、ここから計画の全容がライチに伝わってしまうのだ。

 

「で、結局楽しい計画って一体なんなのかしら? いくら私でもそういうものを隠されると流石に不愉快です!!」

 

 ライチに内緒の計画。

 隠し事をされご立腹のライチは、勝利したのをいいことに先ほどの優しさなど微塵もない。

 強気に攻めてゆき、ラグナは後ずさることもできずべらべらとしゃべりだした。

 

「俺たちはただ、"飲み会"を企画してるだけなんだが……」

「ツ・バ・メ・返しぃ!」

「いてぇ!? 何しやがる!」

 

 飲み会という言葉を聞いた瞬間、ライチの中の怒りがさらに上昇した。

 武力を前面に押しだす攻めで、更にラグナに滲みよる。

 

「私差し置いて飲み会とかどういうこと!? 唯一立ってるのん兵衛キャラなのに!」

「そ、それだよ!あんたやり過ぎたんだ!! あんたと飲み会に行くと酒量が半端じゃなくなる。飲み会最中はおろか二日酔いも酷い。俺たちはもっと楽しく飲みたいんだ!!」

 

 それは、年初めの飲み会でのことだ。

 今年を安泰を願い、ブレイブルー学園の教師達が飲みに行ったその日、飲み会は核の炎に包まれたことを皆は知っていた。

 ここにいるライチ・フェイ・リン、お酒が入るとそれは大変なことになることで有名。

 その性能はCS時代、アンリミなど遥かに超越。HP10万はあるのではないかというくらいの耐久力。

 そして彼女が暴れれば一撃3000ダメージ、更に酒を飲んで威力がアップ。傷ついたダメージも回復ともう手がつけられない。

 その場にいた男性教師が総出(ハクメン先生は100%出した)で止めに入って死闘を繰り広げ3時間、飲み屋の大半を破壊しつくし6対1で相討ちというのはブレイブルー学園の伝説ともなっている。

 それ以降長らく教師たちは飲み会を封印知ってきたが、夏の暑いこの季節、どうにかライチに気付かれないよう飲み会をしたいと1か月前から計画してきたのだ。

 が、ここにきて、やっとのところで本人にバレてしまった。これにより飲み会は再び荒れることは確定となった。

 

「ふ、ふふふふふ、うふふふふふふ……」

 

 この話を聞いてしまえば、もうライチは笑うしかなかった。

 私の独壇場が始まる。普通に隠さず誘ってくれたのならば控え目に飲む配慮はあった。

 だが隠すということをするならば容赦はいらないだろう。ならば本能のまま酒を喰らおう。ライチは非常に怖い笑みを浮かべていた。

 

「な、なあ。もういいだろ? 俺の知ってることはもう全部言った! 見逃してくれよ!」

「まるで3流悪役ね。斬る価値も無いわ。お行きなさい」

「どうせ俺はヘタレ主人公だよ! どっかのマイコーにも観客呼ばわりだよ! うえええええん!!」

 

 洗いざらい全てをしゃべったラグナに、もう価値はない。

 全てを知った。ならば後は本日介入すればいいだけ。

 

「さあて、これから楽しくなりそうね~」

 

 ライチは飢える。酒に、そして場に。

 そんなことなど何も知らないハクメン先生は職員室にいた。

 ハクメン先生の携帯が鳴り響く。

 

 虚空陣奥義……夢幻! 虚空陣奥義……夢幻! 虚空陣奥義……夢gピッ。

 

「ラグナ先生からメールか。何々?「じいちゃんの寿命がストレスでマッハ。実家に帰るから飲み会は欠席する。やみくわ(訳.おつかれさまです!)」なんだアレほど楽しみにしていたというのに……」

 

 親友の不参加に残念ながらも、ハクメンは仕方が無く店に電話をかける

 

「もしもし庄○カグツチ店ですか? すまないがブレイブルー学園御一行一名キャンセルで。はい……はい……日時は変更無しで・・・」

 

 そして、地獄の一夜は刻々と近づいていく……。

 

-----------------------

 

 そして計画の実行日がやってきた。

 ライチ抜きでの楽しい飲み会、惨劇など起きるはずもない。

 この時までは、皆がそう思っていた。

「待ちに待ったぞ……この日を!」

 

 ハクメン先生は長く、この時のために策を講じていた。

 飲み会の立案者であり誰よりも楽しみにしていたため、他のメンバーよりも心が躍っていた。

 メンバーはハクメン先生、テイガー、レイチェル校長、ハザマ、ココノエ、バング。

 ライチが来ないということがよほどうれしいのだろう、他の皆も盛り上がりを見せていた。

 

「ああ、長かった……」

「まあ、たまにはこういうのも良いかしらね~」

 

 続けてテイガーとレイチェルが。

 本人たちもかつてライチに一つやらかされたことがあるため、来ないことを心の内側だが喜んでいた。

 

「飲み会にあいつが来ないというだけでこうも高ぶるとはな……正直自分でも驚きだ」

「そ、そんなに凄いんですかライチ先生の飲みっぷりは? そこまで言われると一度見てみたい気も……」

 

 ライチをよくしるココノエ、そして今回にして飲み会初参加のハザマ。

 ハザマはライチの伝説を直に見ていないため、ライチの奇怪な行動に少しばかりの興味を抱いていた。

 軽率にそう言うハザマを、ココノエがたしなめる。

 

「止めておけハザマ先生、好奇心は蛇をも殺すぞ」

「ココノエ先生、それを言うなら"猫をも殺す"では?」

「何を言う? 私は死なん!!」

「もう訳がわかりません」

 

 よくわからない会話が続き、もうすぐ目的地に着くというところで、

 そんな歓喜極まる状況の中、一人だけ罪悪感に見舞われている漢がいた。

 

「………はぁ」

 

 そう、それはバングである。

 彼は男としてライチに惹かれており、ライチの飲みっぷりを差し引いてもライチの事が好きなのである。

 前回の飲み会で最も被害をこうむったバングであるが、ライチへの好意はライチが見せた地獄を含めても有り余るほどであった。

 

「どうしたバング。こんな楽しい日に沈んだ顔して?」

 

 落ち込むバングを見て、ハクメン先生が声をかける。

 バングは罪悪感を表に出して、しょんぼりと答えた。

 

「うむ、自己防衛のためとはいえやはりライチ殿を除け者にしたのはやはり心苦しいでござる」

「ふ、相変わらずだな。だが奴を参加させて一番被害を被るのはお前だぞ?」

「まったくだ。あいつのぶっ飛んだピッチに無理についていこうとするし」

 

 ハクメンに続きココノエにもはげまされるバング。

 

「まあライチ対策はいずれまた考えるとして、今日はただ楽しもうじゃないか!」

「……そうでござるな! ライチ殿には申し訳ないが、今日は楽しむでござる!!」

「それでこそお前だ! さあ着いたぞ。ここが庄○カグツチ店だ!!」

 

 ハクメンの励ましに吹っ切れたバングは、今日一日だけライチの事を忘れることにした。

 そしてハクメン先生御一行は、庄○カグツチ店に入っていく。

 見せに入ると、第一声に店員の元気ある声が聞こえてきた。

 

「らっしゃーせー!」

「ブレイブルー学園御一行で予約したハクメンだが」

「あ、ハクメン様ですね! お待ちしておりました!御席こちらになっております」

「ああ、ありがとう」

 

 店員に案内され、皆は席につく。

 席に着くなり飲み放題コースを指定し、注文票を取り出す。

 

「ふう、では注文か。まあとりあえず全員ビールでいいよな?」

「あーすみません、私ビールは苦手なんですよ……カシスオレンジ頂けますか?」

「ハザマ先生は好き嫌いやたら多いな」

「私もビールじゃなくてスクリュードライバーを頂こうかしら」

「はいかしこまりましたー!!」

 

 ハザマとレイチェルが他の酒を注文する。

 皆が注文してる際、ここでココノエの豆知識が飛び出す。

 

「ちなみにスクリュードライバーの名は昔低賃金労働者がカクテルを作る時にドライバーで混ぜたことから由来している。」

「さすがはココノエ先生、物知りだな」

「それほどでもない」

 

 ハクメンに褒められ、満更でもない調子のココノエ。

 それに乗っかり、今度はレイチェルが補足説明を始め出した。

 

「飲み安い割にアルコール強いから女性を酔わせるのに良いらしいわよ。ロマ○ガで同名の小剣技に女性特効が付いてるのはそのため」

「流石レイチェル校長ネタが古い!伊達に歳取ってあばばばばば!?」

 

 いらぬことを言ったせいで、ハザマがゲオルグの餌食に。

 

「馬鹿な! CSのゲオルグは風が無ければよちよち歩きしか出来なくなったはずでござるよ!?」

「校長たる者CT仕様よバング先生」

 

 おまけに過去最強とうたわれたCT仕様のレイチェル校長であった。

 飲み物の注文が全員終わり、今度は食べ物の注文に入る。

 

「つまみは……まぁから揚げや串盛り頼んでおけば間違いは無いか」

 

 色々あって選ぶのに時間がかかりそうだったので、ハクメン先生が適当盛りセットで頼むことに。

 そこで、ハザマが続けざまに大好物のあの品を注文することに。

 

「あ、言うまでもないですけどゆで卵もお願いしますよ」

「出たなゆで卵」

 

 ハクメンはやはりきたかといった風に。

 ハザマのゆで卵好きは学内でも有名。昼の弁当はゆで卵、夜めんどくさかったらゆで卵である。

 愛読書はキン○まん、茹でかたは半生と硬いの半分よりちょっと半生よりという徹底したこだわりまで持つ。

 コレステロールがこれでもかと溜まるような食生活であるが、彼は痩せ型である。

 

「5個ほど」

「多いなおい!」

 

 テイガーに指摘されるが、下手に焼き鳥頼むより多く頼もうとするハザマ。

 そんなに頼んでも食べるのはハザマだけ。昼にパフェを食べる学生にもあそこのゆで卵はおいしいですよと別の店を進めるほどの彼に死角はないのであろう。

 

「まあ最初はとりあえずそんなものでいいでしょう。足りなければまた頼めばいいですし」

「いったい何個食べる気だお前は!?」

 

 5個も頼んでなお頼もうとしている。

 そんなハザマのゆで卵への愛に対しテイガーが突っ込んでいる時、それは起こった。

 ココノエがハザマにとって衝撃の一言を発した。

 

「どうでもいいが、メニューにゆで卵がないぞ」

「何故に!?」

「メニューに単品ゆで卵なんか載ってる店のほうが少ないと思うけど」

 

 レイチェル校長の言葉の後、メニュー票を間近で見るハザマ。

 揚げ物、刺身、サイドメニューまでいったところでゆで卵の文字がない。

 どこをどう探してもない。そしてゆで卵はないくせに温泉卵は置いてある。

 この事実を知ったハザマは、先ほどまでの飄々とした立ち振る舞いから一転。

 

「そのメニューは嘘だ! 嘘だらけだ!」

「メニューが嘘って何よ?」

 

 急に立ち上がり叫ぶハザマにレイチェルがツッコミ。

 徐々にハザマから緑色のオーラが漏れ出し始め、ゆったりとどこかへ向かう。

 

「はぁ……ちょっと厨房……じゃなくて、トイレに言ってきます」

「あ……ああ」

 

 大丈夫かな、と心配するような目でテイガーが見る。

 そしてハザマ先生はオーラを発しながらどこかへと姿を消した。

 一連の流れを見て、バングがこそこそと話し始めた。

 

「なんか今ハザマ先生の周りに緑色のオーラが見えた気がするでござる……」

「帽子の位置も普段より高くに見えたが……」

 

 ハザマの異変に対しバングとココノエがなにやら言っている。

 ハザマは普段からとても紳士的で、そんなゆで卵が居酒屋にないだけで怒ったりするようなイメージはない。

 善人のテイガーは少なくともそう思っているため、変に噂されているハザマを庇うように言った。

 

「な、何を馬鹿なことを。一人でに帽子が動くはずはない。それともなんだ? 髪の毛に押し上げられたとでも言うのか?」

 

 そうテイガーが色々否定していた時、厨房からこんな叫び声が聞こえてきた。

 

「卵なら冷蔵庫に腐るほど入ってんだろ!!」 「いいから茹でりゃいいんだよ!!」 「んだよ使えねえなこのゴミシェフどもがよーーー!!」

 

 ものすごく荒っぽく、まるでチンピラを想わせるような殺伐とした声色。

 だがどこかで聞いたような、さっきも聞いていたような声が店中に響き渡る。

 

「……なんか聞こえてくるのだけれど」

 

 言ったら負けと思いながらも、レイチェルがそれを切りだす。

 いやまさか。と、テイガーが再度庇うように言った。

 

「まさか。ハザマ先生の声なはずが無い! あんな温厚な人、他にライチしか知らない!!」

「私は別にハザマ先生の声だと言った覚えは無いわよテイガー先生」

 

 レイチェルは一度もハザマの名を口にしてはいない。

 しかしそんなことなどお構いなしに、ハザマの疑いを証明しようとテイガーがなにやらスイッチを入れた。

 

「くっ、いいだろう。私の声紋識別機能ではっきり違うことを証明して……」

「止めろテイガー! 世の中知らないままでいいこともある!!」

 

 そう言ってココノエがテイガーを制止する。

 そんな会話をしていたら、ハザマ先生が微妙な笑みを浮かべて帰ってきた。

 

「いや~お待たせいたしました~」

「うぎゃぁ!?」

「どうしたんですかぁ~? 変な声出しちゃって」

 

 急な登場だったので思わず驚くテイガー。

 

「い、いや遅かったでござるな~」

 

 もうこの話はしない方がいい。

 バングがうまいことフォローを加え、ハザマに話しかける。

 話しかけられたハザマはというと、とても機嫌が悪そうに答えた。

 

「ああ、あのクソ料理人が話わかんねぇもんだからよぉ」

「!?」

 

 先ほどまで敬語で丁寧な口調だったハザマが、一瞬ながらとてもざっくりとした凶悪な口調になった。

 これにはみんなが声を失った。

 しまった……といった感じにハザマがいつもの口調に戻し。

 

「……じゃなかった。ちょっとコンビニまで出てゆで卵買って来たもので。これが無いとダメなんですよ私」

「そそそ……そうか」

(詳しい話は聞かないでおこう……)

 きっと追求しても碌な事がない。この話は忘れようと皆は心の中で思う

 色々あったが時間は経ち、酒と料理がテーブルに運ばれてくる。

 

「さて、酒と料理も来たことだしぼちぼち始めようか」

 

 飲み会のリーダーであるハクメン先生はグラスを取る。

 皆も続けてグラスを取り、ハクメン先生はハザマの方を見据え。

 

「じゃあ乾杯は初飲みのハザマ先生にお願いしようか」

「え?いいんですか? 私なんかで……」

「勿論でござる。さあ景気良く!」

 

 バングにも一つ押され、腰を折りながらハザマは申し訳なさそうに立ちあがり。

 

「では僭越ながら……ん?」

「どうした?」

 

 何かに気がついたハザマ。

 ハクメンがその様子に気づき問う。

 

「逃げ逃げ♪」

 

 ハザマは何者から逃げる様にバックステップした。

 次の瞬間、そう……地獄からの使者が舞い降りたのであった。

 天井から流星がごとく一人の酒に餓えた教師が降ってきた。

 その瞬間から、飲み会は地獄へと変わり果てるのであった。

 

「ぎゃああああ!?」

 

 何かに押しつぶされ、絶叫するバング先生。

 その上には、萬天棒をこさえた女教師が一人。

 

「私抜きで乾杯しようなんて、10年遅いんじゃないかしら?」

 

 お酒は二十歳になってから的な意味で。

 振ってきたのは、かつて飲み会で酒を浴びる様に飲み、アンリミを超越した存在となり全てを破壊しつくした恐怖の魔人。

 酒の王者、ライチ・フェイ・リンであった。この場にいるはずのない、いてはならない存在を見てハクメン先生とココノエは驚愕の表情を浮かべる。

 

「ららららら……ライチ先生!?」

「何故ここに!?」

「てめぇらに会うために、地獄の底から舞い戻ったぜ!!」

 

 舞い戻らなくてもいいのに、と皆が心の奥底で思う。

 

「どうしてこの場所がわかったかとか天井ぶち抜いて入って来るなとか棒に乗ってくるなんてお前はタオ○イパイかとか言いたいことはいくつかあるが、まず一つ」

「なんですかココノエ先生?」

「いい加減降りてやれ。バングがあと一息で死ぬ」

 

 ココノエにそう言われ下を見ると、そこにはあと数ダメージで沈むバング先生がもがいていた。

 

「た……たすけてくれでござる……」

「おおバングよ……死んでしまうとは何事だ」

「まだ死んでないから!」

 

 バングを死亡扱いにするライチ、ココノエはそれをすぐさま否定する。

 

「じゃあトドメを……」

「刺すなーーー!!」

 

 トドメまで刺そうとするライチ、ココノエが全力でそれを止める。

 そしてここにライチが降ってくるのを間一髪でよけた男に、レイチェルは流し目で言った。

 

「それよりハザマ先生。貴方急襲に気づいたのに一人だけ逃げたわね?」

「はて~なんのことやらぁ」

 

 澄まし顔で言うハザマ。

 結局、飲み会に現れてはならない存在が現れ、この先地獄になることが明確となったこの夜。

 もうこの先どうなってしまうのか。明日の授業は大丈夫か。教師たちは先が思いやられる気でいっぱいになった。

 

-----------------------

 

「という訳で、私をハブにして飲み会なんてことに納得出来ずについ「ぶんっ!」として「びょっ!」っと飛んで来たのです」

「事情はわかったがタオ○イパイを擬音で表すな」

 

 ココノエが呆れながら、しかしライチは止まらず。

 

「さしずめ今の私は"タオッパイパイ"ってとこかしらね☆」

「自分で言うかこのおっぱいお化けは……出すな舌を! さほど上手いことは言ってない!」

 

 てへぺろと舌を出すライチにココノエは調子に乗るなと一言。

 ライチは非常にノリノリで、冗談まで言えてしまう始末。

 そんな冗談に乗れないほど皆のテンションはクールダウンしてしまっている。そして同時に静かな怒りが灯り始める。

 

「もはや観念するしかないな。だが、その前に……」

 

 もうライチがこの場に来てしまった事実は変えようがない。覚悟は決めた。だがやることがあるとハクメンは低い声色で発する。

 どうしてここにライチがいるのか、そう、ライチに飲み会の事を誰かが教えたからである。

 飲み会の情報をライチにリークした覚えがあるやつは、この場に一人たりともいない。

 ということは、ライチに情報を漏らした愚か者はこの場にいない者。そして飲み会計画に関わった者。

 この二点が当てはまる者が一人だけ当てはまる。ここにおっぱいお化けを呼び寄せた愚かしい存在。

 

「裏切り者に制裁を加えよと校長から勅命が出ています」

 

 それは、間違いなくあの男である。

 ハザマがそう言いレイチェルは手をパンッと一回鳴らし。

 

「我が執事ヴァルケンハイン!"ラグナ"を拘束してきなさい。手段と生死は問わないわ」

 

 そう言うと、バラの香りと同時に空間が現れ、老執事が一人現れる。

 ヴァルケンハイン・R・ヘルシング。レイチェルの執事をやっている老人であった。

 

「すでにここに」

「離せーーーーーーーーーーーー!!」

「さすがね、褒めてつかわす」

「光栄にございます」

 

 仕事が早いことで有名なヴァルケンハインは、すでにラグナを捕まえていた。

 もがくラグナ、しかしヴァルケンハインは離さず、皆がいっせいにラグナを睨む。

 お前のせいで台無しだ。と、立案者のハクメンは失望さえしていた。

 

「ではこれより正義の名の下に弾劾裁判を執り行う。裁判官は私ハクメン。被告はラグナ先生。弁護人は無し」

「ちょっ!?」

 

 ハクメン先生が執行し、弾劾裁判は開始した。

 

「判決、死刑」

「審理すら無しですか!?」

 

 あっという間にラグナの未来が決まる。

 決まるや否やハクメン先生が夢幻を、バングが風林火山を、レイチェルがリリーを、ハザマがウロボロスを、テイガーがジェネの構えを、ココノエがなにやら物騒な品を召喚する。

 しかしこの場は居酒屋、今皆が本気を出すと飲み会が台無しになると思ったライチは皆をたしなめる。

 

「せっかくの飲み会なんだから執行は別の日にしてあげて」

「……そうね。では執行は明日。ノエルにクッキーを沢山作ってもらわなきゃね」

 

 なんやかんやで執行猶予が付き、死刑内容はノエルの兵器による惨殺に決定した。

 未来のないラグナを見て、バングは悲哀にも似た感情でぼそりと呟く。

 

「ラグナ殿、今まで楽しかったでござるよ……」

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ラグナは盛大に雄たけびを上げた。

 全ては自分のせいだと言うのに、往生際の悪いことに皆は失意を超え呆れかえっていた。

 色々あったが、飲み会の悪魔を一人加え飲み会を再開することに。

 

「いい加減始めないか? 料理が冷めてしまう」

 

 すでに料理等は運ばれてきている。

 ライチの登場で一難あったが、ここまできて帰るわけにもいかない。

 ハクメンが促すと、ライチが気分を高くして乗っかってきた。

 

「そうね! 始めちゃいましょ!」

「食い付きがいいですねライチ先生……」

「それでは皆様グラスをお持ちになって。えーと乾杯の音頭ってどういうのだっけ?」

「あ~、私の役目が……」

 

 まるで最初からいたかのように、誰よりも張り切り中心人物となってしまったライチ。

 おまけに乾杯の音頭という役目をハザマから奪い取ってしまい、ハザマが流れる様に放置状態に。

 こうして乾杯の音頭を取ることになったライチ、だが音頭の取り方が分からずしばらく考え。

 

「あ、あれだ! はっけよーい……」

「違う!それよつ○と9巻のネタだから! パクるな!」

 

 なにやら別の作品のネタを思いついたらしく、流れるままやろうとしたがテイガーに制止される。

 

「なによテイガー先生、じゃあブレイブルーらしく行きましょ」

 

 ライチはしぶしぶそう漏らす。

 ブレイブルーらしくとはなにか、皆はしばし疑問に思ったが。

 

「the wheel of fate is turning……」

「ああなるほどね」

 

 戦闘が始まる前のアレである。

 レイチェルが思わず納得する。

 

「Rebel 1、アアアアアクショォォォンッ!!」

 

 ライチが叫ぶと同時になにやらグラスが割れる。

 このナレーションは過去の中で一番声質の高いCS初代の声であった。

 

「CS式!? 力みすぎだろ!!」

「グラス欠けちゃったでござる……」

「普通に乾杯してくれお願いだから」

 

 どうして途中参加なのに誰よりもテンションが高いのだろうか。

 ライチが来て他の面子のテンションが下がってしまっているのもあるのだろうが、ライチのその激流のような荒れっぷりにぽかんとなるテイガー、バング、そしてハクメン先生。

 

「はいではRebel 2」

「すでに飲み干してますよこの人!!」

 

 電光石火のごとく最初の一杯を飲みほしたライチに驚くハザマ。

 早い、早すぎる。出来上がるのがあまりにも早すぎてみんなの心の中の恐怖が徐々に膨れ上がる。

 膨れ上がるにつれ、中には吹っ切れる者もいる。そんな中その悪魔を連れてきた愚かしい男が眼を覚まし。

「俺もまぜろよぉぉぉぉぉ!!」

「ああ、復活したのねラグナ先生」

 

 復活したラグナを、どうでもよいものを見るような目でレイチェルが言う。

 

「じゃ、一人増えたし仕切直しね。今回は普通に乾杯っ♪」

 

 完全に飲み会を掌握したライチは、どんどん空気を自分の流れに持っていく。

 ライチは乾杯を告げ、皆はグラスを一斉に持ちよった。

 

「ぷはぁ~! 効く~!」

「ライチ先生早くも2杯目を!?」

 

 始まって3分も経っていない。ライチの勢いは素晴らしく。

 まさに酒を浴びる様にとはこのことで、隣のバングが唖然としていた。

 

「乾杯とは杯を乾かすと書く!」

「いやだからそれ違う人のネタだから!」

 

 テイガーのツッコミなどお構いなしに、ライチはどんどん爆走。皆をぶっちぎるように酒を頼み飲んで飲んで飲みまくる。

 ライチだけなら良いものの、御一行にも酒を振りまくりどんどん酒を飲ませてゆく。

 

「ほらほら、みんなピッチ遅いわよ?」

 

 そして1時間後、ライチは皆の8倍は酒を飲んでいるにも関わらず正気を保っていた。

 

「まっらふ情けない。貴方たちそれでも男にゃの?」

「お前も微妙に呂律回ってねーぞ……うぷっ」

「ハイハイハイハイハイ! バングセンセのちょっとイイとこ見てみたいってかぁ!?」

 

 他の人たちはというと、レイチェルがどんどんふにゃけており、ラグナも顔を赤らめ徐々に堕ちてゆく

 ハザマにいたっては普通に豹変していたが、皆はまるで気づいていないほど酔っていた。

 

「も、もう無理でござる……」

 

 ここにきてあまり酒には強くないバングが沈もうとしていた。

 しかしライチは逃がさない。一度捕まえたらもう逃がしはしない。

 

「私もバング先生のかっこいいところ、見てみたかったなぁ~」

「ライチ殿のためならどんと来いでござるぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「きゃーバング先生ぃぃぃ!!」

 

 大好きなライチにアゲられたバングは調子に乗って2杯もお酒を一気飲み。

 その後一段と強いお酒をライチが間近で飲ませ、飲んだ瞬間バングがテーブルに倒れ込んだ。

 ガシャーン!とバングが沈む音が響き渡り、ライチがゴミを見るような目でバングを見下した。

 

「戦闘力たったの5か……ゴミめ」

 

 しかしバングがひどい目にあっていることなど、酔いつぶれたみんなからすればもはや関係なかった。

 沈むバングを尻目に、ラグナがゆったりとした口調で語りだした。

 

「うう…俺がガキの頃はよぉ」

「あらラグナ先生、絡み酒?」

 

 そんなラグナを顔を真っ赤にしたレイチェルが隣で話を聞く。

 

「今でこそ世界最強とか死神とか言われてるけどよぉ……わかるかぁ? ガキの頃なんか俺術式使えなかったんだぜ!? 才能じゃねーの努力だっつの!」

「し、知っへるわよ! 努力したのよね貴方は!!」

「そのとぉりぃ! けどなぁ!その努力だってアレだぞ? 猫に教わってんだぞ? どんだけシュールな絵なんだよ!」

「でも相手は最強のナマモノ」

 

 話の内容がブレイブルー本編の話になっている事など気づくこともなく。

 そしてそんなラグナを見てハザマが完全にテルミとなって励ます。

 

「そーだぜラグナ先生! もっと楽しくやれよ! ヒャハッ、ヒャハハハハハハッ!」

「ハザマ先生とんでもない笑い上戸だな……」

「がはははあはははは!!」

「テイガー先生お前もか……ぷっ、くくく……」

 

 冷静に振舞っていたが、ココノエももう限界の域に達していた。

 いつもはおとなしいテイガーが大笑いしたのを見て、崩れるココノエ。

 

「ハクメン先生も変に我慢してないで思いっきり笑っちゃいなさいな~」

「もうこうなったらジン・キサラギに戻るぞーーー!!」

 

 レイチェルに促され、いつも頑なにつけている仮面を店の端に投げ捨て阿波踊りするハクメン先生。

 さりげなく正体を露呈するが、酔っている皆には関係ないこと。

 そしてラグナがまたもゆったりとした口調で。

 

「だからよぉ、俺がガキの頃わよぉ」

「データにあるぞ! これが酔っ払い名物「会話ループ」だな!」

「いよ! ラグナ先生男前!!」

「ぐはははははっあっはっはははははは!!」

 

 飲み会が始まり4時間。

 店の閉店時間のギリギリまで皆は飲み続けた。

 中にはギブアップを訴える物もいたが、ライチがそれをよしとしなかった。

 

「よぉーーーーし!! したら今度はカラオケで歌って飲んでやるわよぉぉぉ!!」

「いや……もう無理、帰してぇ……」

「そんなの許すと思ってんのかぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!」

「ぐふぉ!!」

 

 ラグナの必死の願いさえライチは打ち砕き。

 潰れた他のメンバーを電源切れ寸前のテイガーをむりくり動かし運ばせ。

 日が変わる時にはカグツチの夜も町にある小さなカラオケ店へと入っていた。

 そこでライチが勝手に飲み放題を入れ、他のメンバーが沈むならば打撃で吹き飛ばして叩き起こして歌い続けた。

 

「じゃあ朝の6時までいくわよ!! 明日も仕事?そんなの関係ないわ!! ジューシーポーリーイェイーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 そして彼らの夜は明けていく……。

 

-----------------------

 

 翌日。

 

「ラグナ先生酒くさ!!」

 

 午前8時半。

 カラオケ店から直接学校へと向かってきた飲み会メンバー。

 ここまで皆を振りまわしたライチはというと、一人保健室で居眠りという卑怯極まりない保健室特権を生かしている中。

 死人のような顔つきで教壇に上るラグナ。入ってきた瞬間酒の匂いが漏れ出しノエルがそれを指摘する。

 

「うるせぇぞナイチチ……本当はこんなことに……」

 

 今にも倒れそうなラグナを見て、ノエルは呆れながら言う。

 

「先生、社会人なんですから遊びと仕事はきちんと割り切って行動してください」

「うっせぇぞナイチチ……そもそもてめぇがライチに加担してあんなクッキー作んなきゃな……あんな……どどめ色……うぇ!」

 

 あのクッキーの無残な姿、そして味を思い出したラグナは、口を押さえふらふらとノエルのところへ向かってきた。

 ノエルはひぃ!と怯え、まさかと思いながら後退し続け。

 

「せせせ先生!? あなたまさか……ちょっとやめてください!!」

「お……お……おうえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 結局今日という一日、飲み会メンバーは授業どころではなかったという。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。