3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第32話です。


第32話:欠勤明けのセントラルフィクション

 みなさん、こういう経験はありませんか?

 長い夏休み明け、クラスで一番背が低かった男子の背が高くなってて別人みたいになっているといったこと。

 永い眠りから目覚めたら、自分の名前も含めて一切の記憶を失っていたといったこと。そういう経験……あると思います。

 そう、自分の中の時間が止まっていても、常に世界は動いているのだ。

 風邪で学校、あるいは会社を休んだ後、学校や職場に行くと周りの雰囲気ががらりと変わっており適応するのに戸惑う。それは誰しもが経験することである。

 

 これはある日、ラグナが他の先生たちと飲みに行った日の事。

 

「ぐへへへ~。おい姉ちゃん生ジョッキ追加で~」

「ラグナ先生、ちょっと飲み過ぎでござるよ~」

「気に済んなよバング先生~。もう生徒共や仕事やらに振りまわされて……ひっく! 飲まずにゃいられねえんだよ~!!」

 

 この日、ラグナは結構うっぷんが溜まっていたのか、他の先生達に比べて酒のピッチが速く、そして飲みまくっていた。

 飲み会は三次会まで進み、最初参加していた10人が最終的には4人まで減っていた。その4人に当然ラグナも入っていた。

 他の面子はというと、どんだけ飲んでも次の日にはけろっとしているライチを除いて、バングとハクメン先生は仕事に差し支えないよう勢いをキープしていた。

 

「ラグナ先生よ。こんだけ飲んで明日も仕事だというのに、大丈夫か?」

「だいじょ~ぶだいじょ~ぶ。帰って3時間も寝れば万全だっての!!」

 

 ハクメン先生に心配されるラグナだが、酔いが回っているのか余裕を浮かべまくっていた。

 このまま深夜四時まで飲み会は続き、途中ライチが飲み屋を破壊し始めたあたりで解散。

 ライチは路地裏に放り投げ、ラグナとバングとハクメン先生は代行タクシーでそれぞれ家路まで帰宅。

 タクシーから降りたラグナは、アパートの玄関に頭をぶつけたりと心配な様子を見せたが、なんとか家の中に入ったのを二人は見届けた。

 学校への出勤まであと3時間弱しか寝られないが、はたして大丈夫なのだろうか。

 そんな心配をよそに、朝7時ごろ、ブレイブルー学園にラグナから電話がかかってきた。その内容とは。

 

「うっぷ! あのすいませんラグナ・ザ・ブラッドエッジですけども……。ちょっと頭痛と吐き気がひどくて、風邪みたいなんで今日休ませていただきたいんですけども……」

 

 といった内容。当たり前というか充分予想できた内容の電話であった。

 ラグナからしたら風邪をひいたから学校を休みたい、というが電話を取ったハクメン先生からしたら、風邪ではなく完全に飲み過ぎで休む羽目になったことは明確。

 教師として、というか社会人として遊びに羽目を外して学校を休むというのはいかがなものか。ハクメン先生はため息交じりで、少し説教をするようにラグナに説く。

 

『ラグナ先生よ。昨日三次会あたりで我々は言わなかったか? こんだけ飲んで仕事の方は大丈夫か……と』

「いや……そりゃわかってっけど。確かにこんな理由で学校休むのは教師としちゃいかがもんかと思うけどよ。けど今にももう……うっぷ!」

『全く貴様という奴は教師としての自覚が足りん。生徒の見本になるべき先導者だというのに、髪は銀髪に染め眼はカラコンかなんか知らないがオッドアイにしてかっこつけ。そのうえ他人への対応も大雑把でまばら、TPOもままならない』

「うえぇ……。ハクメン先生よぉ、偉そうに言えた立場じゃねえが超吐きそうな時に説教とはやめてくれよ。頭に響く。てか全身鎧姿に長髪銀色のエセサムライ野郎にそんなこと言われる筋合いはねえんだけど……」

 

 と、電話越しに聞く限りラグナはとても学校に来れる様子ではなさそうだった。

 ハクメン先生はもう呆れるしかなかったが、こんな状態で学校に来られても生徒に授業などできるわけもないだろうと、もう欠勤を認めてやるしかなかった。

 

『はぁ……。仕方ない校長には話を通しておく。後日たっぷり絞られるがいい』

「……すまねえ」

 

 このハクメン先生の対応には、ラグナも感謝と同時に申し訳なさが頭をよぎった。

 そして最後に、ハクメン先生はこんなことをラグナに言う。

 

『だがラグナ先生、貴様が休んでいる間も学校に休みはない。休み明けで色々と周りの環境が変わっていても、「俺休んでて全く状況が掴めない」などといった戯言は言うでないぞ』

「あぁ。てか一日二日休んだ程度でそんな学校がガラリと変わることはないと思うがな……」

『ふん、どうかな』

 

 そう会話が終わると、ラグナ側から一礼して電話を切る。

 これでラグナは正式に欠勤、今日中になんとか治して明日には学校に行かなければならない。

 

「なんとか休みになったか。後で校長の説教が怖い所だが……。考えても仕方ない、今日は一日休もう」

 

 電話が終わるとラグナは寝間着に着換えて、身体の中から出す物出して布団で熟睡。

 そして翌日、ラグナは体調を万全にして、いつも通り学校へ出勤。

 まずは校長に謝罪をと思い、ラグナは一目散へ校長室へ。

 

 コンコン!

 

「えー。失礼します! レイチェル校長この度はつまらない理由で欠勤してしまいすいませんっしたー!!」

 

 と、完全に心から謝ろうとする男の態度では無かったが、ラグナなりに誠意を尽くしたつもりである。

 さっそくレイチェル校長から激が飛んでくるのか、と……思っていたのだが。

 そう、これがラグナの……一日休んだことによって生まれた不思議な一日の始まりだったのである。

 

「ご……ごほーんごほーん! あら、誰かと思ったら酒飲みすぎて休んだ愚鈍なラグナ先生じゃない」

 

 なにやら咳き込んでそういつもの態度でラグナに接するレイチェル。

 しかし、その様子は何かがおかしかった。

 咳き込んでいるのはレイチェルが風邪だからというわけではない。というか……根本からレイチェルがおかしかったのだ。

 姿形はそのまま、しかしその美しい金髪は白髪になっており。そしてあのレイチェルが……車椅子を使用していたのである。

 

「……」

「ごほーん。まったく歳を取ると身体に答えるのー……わね~。こんな年寄りに朝から説教させるなんて、お年寄りへの配慮が怠ってるのではなくて?」

 

 と、自分を年寄り扱いするレイチェル。

 確かに年齢こそ世間のおばあちゃんの何倍も歳を取っているレイチェルであるが、皆が知るレイチェルはいつまでたっても子供の姿のままなのが一般的だった。

 それが、ラグナが一日休んだだけで、たった一日でレイチェルの雰囲気がおばあちゃんそのものになってしまったのだ。といっても白髪に車椅子になっただけなのだが。

 

「えーと。校長、一体なにがあったんだ?」

「なにがあったんだじゃないわよ。年寄りへの口のきき方がなってないわ。まったく最近の若いもんは。うちのヴァルケンハインを見習いなさい」

 

 そういって、年寄りレイチェル校長は自分の執事であるヴァルケンハインを呼ぶ。

 すると、本来年寄りの印象の強いヴァルケンハインもまた、様子がおかしくなっていた。

 

「あぁ~。朝からやる寒風摩擦は結構にいいですなぁ~! 次は腕立て伏せ千回と腹筋一万回ですなぁ~!!」

 

 と、上半身裸で肉体美をさらけ出したヴァルケンハインがラグナの前に現れた。

 その外見もどこか原作でいう暗黒大戦の時期まで若返っているような気がしないでもなかった。

 普段は万能執事だがお茶をすする姿が似合っていたヴァルケンハインが、まったく異なる体育会系へと変わっていた。

 

「うむ! 誰かと思えばラグナ先生じゃないか!? 身体の調子は良くなったのか!? ならば今から欠勤していた分として、グラウンドを百周しようではないか! なぁ~に一人じゃさびしいかぁ? なら私も付き合ってやろう!」

「いや遠慮します。てかあんたあのおっさんだよな? そうじゃなくともあのおっさんだよな?」

「おっさんとは馬鹿にされたものだ。シルバー世代になっても私はまだまだ現役だぞ!! 来月にはカグツチボディービルダー大会が控えている。筋肉の鍛錬はおこたれんぬはっはっはっは!!」

 

 やたらおおらかな筋肉体育会系キャラになってしまったヴァルケンハイン。

 年寄りレイチェルに体育会系ヴァルケンハイン。一日休んだラグナからすれば何が何だかわけがわからない。

 

「はぁもういいわ。今日からきちんと働いてさえしてくれればこれ以上は責める気も起きない。あなたに説教する時間があるなら朝の落語の番組が見れてしまうわ」

「は、はぁ……。と……とにかく今日からまた頑張りますんで、よろしくおなしゃーす!!」

 

 そう言ってラグナは一礼して校長室を退室。

 そして何が起きたのかさっぱりわからないまま、廊下を歩く。

 

「ったく、俺がいない間に何があったんだ? "俺休んでて全く状況が掴めない"ぞ……」

 

 と、どこかの電話で聞いたようなセリフが自然的にラグナの口から出た所で。

 廊下の奥から、聞きなれた一人の生徒の声がラグナを呼んだ。

 

「あ! ラグナ先生学校来たんですかー?」

 

 そうラグナを呼んだのは、ノエルだった。

 ノエルなら何かを知っているかもしれない、ラグナはそう思い、ノエルの傍にかけよるのだが……。

 そこでラグナは思い知る。変わっているのが何も、レイチェルやヴァルケンハインだけではないことに。

 

「あ、ノエ……」

「まったく聞きましたよ。他の教師の方々とプライベートで飲み会をして羽目を外して体調を崩して欠勤。話を聞いた時には呆れて笑いすら出ませんでしたよ……」

 

 ノエルは皮肉交じりにそう言葉を漏らし、かけている眼鏡をクイっとあげた。

 もう一度いう、眼鏡をクイっとあげたのだ。

 そう、ノエルが眼鏡をかけている。それだけならただのおしゃれで済むのだが。

 片手には何やら難しそうな本。そして全体的に何やら秀才オーラを醸し出しているではないか。

 

「……ノエルお前どうしたんだ? 眼鏡なんてかけて。お前が気にするべきはそこじゃねえだろ? その小さい胸を何とかすべきだろ?」

 

 と、いつものようにラグナはノエルをおちょくるが。ノエルの反応はというと。

 

「まったくまたいつものセクハラ発言ですか? 聞き飽きましたね。人をからかうにもそのボキャブラリーの無さ。飽きたというか呆れたというか」

「……なんでこんなに冷めてんだおめえ?」

「こっちは先生のセクハラに対してむきになっている暇はないんですよねぇ。くだらない話なら話しかけないでください。今ヒエログリフをマスター中なので」

「ヒエログリフ!? え? なにその秀才キャラ。なんか差し棒持ってるし、めっちゃ頭良さそうなんだけど……」

 

 ノエルはラグナが休んでいるたった一日の間に、ドジっ子キャラを卒業して秀才生徒会長系のインテリ美少女に変化していた。

 ラグナがナイチチとおちょくってもくだらないと突っぱねる。クールビューティーなノエルの姿に戸惑うラグナ。

 これも、一日くだらない理由で休んだせいなのか。まったく適応できていない。

 

「あ、あのよノエル。一体俺がいない間に何があったんだ?」

「"色々"あったんだんですよ。い・ろ・い・ろ」

 

 何やら意味深な発言をするノエル。

 そんな中、遠くからまた誰かの声が聞こえてきた。

 

「ノエルー!」

 

 そうノエルの名前を叫んでこちらに走ってくるのは、ツバキの姿だった。

 ツバキは見た所、姿は変わっていないようだった。ところが。

 

「しゅばーん! どぅわー! あぁ~。ノエルと一緒にラグナ先生もいるーあははははーーー!!」

 

 そう自分で擬音を叫びぶっ飛んできたツバキ。

 元をたどれば、学校の廊下を叫ぶ時点でツバキからすればあり得ない。

 それどころかアホみたいな顔をして、ラグナとノエルが一緒にいるだけで爆笑するこのありさま。

 一日の間にツバキがまじめな優等生を卒業して、異常に馬鹿で明るい狂人のようになっていた。

 

「ツバキ。朝からうるさいです。他の生徒に迷惑ですよ」

「あははー! 言うよねぇー!!」

 

 ツバキが廊下を走って騒いで、それをノエルが注意する。なんとも珍妙な光景だった。

 それがノエルとツバキにとっては今までどおりの光景なのかもしれないが、ラグナは全く理解していないで取り残されている。

 

「てかノエルー! マコトが相変わらず元気ないのー!!」

「え? ツバキだよね? お前ツバキ・ヤヨイだよね? あの糞真面目なツバキだよね?」

「え、私、ツバキ・ヤヨイだけど? いやツバキだけど? ツバキだけど! ツバーンってかツバッキーン的な!? ツバアーーーーーーッ!!」

 

 ラグナにツバキなのかと尋ねられ異様に自分の名前を連呼するツバキ。しかし最後の方でノエルにしばかれ強制的に黙らされた。

 

「ツバキ。朝から本当にうるさい」

「ごめんってば! てかはいはいはーい! いいっすかー!? マコトが元気ないんだってー!! ノエルさー親友としてなんとかしてあげようよー! マコトこっちカモーンカモーン!!」

 

 ツバキがアホ丸出しなテンションでマコトを呼ぶと。

 いつもならここまでではないが高いテンションで走ってこっちへ来るはずのマコト。

 しかしなにやら捻くれた形相で、本当に嫌そうな顔でツバキ達の方へやってきて、そしてこの一言。

 

「ったく朝から迷惑なんだよね。こんなうるさい女と友達だと思われてる私の身にもなってよまったく。つか友達とかありえないし。友達?……仲間? 私には一生いらない」

「なんでこんなに捻くれてんだよお前は……」

 

 とてもマコトとは思えないようないじけた台詞。

 一体ラグナが休んでいる間に何があったのか。

 ここまでの三人をまとめると。ノエルが真面目なリーダー格になり、ツバキはアホに、マコトは誰も信じない根暗と化していた。

 補足しておくと、ラグナが飲み会をやった日は三人はラグナの良く知る三人だった。ここまで一日で変化するような予兆など微塵も感じられなかったことをご理解いただきたい。

 

「……あの~。本当にこの一日で……なにがあったの?」

「だから言ったでしょう? 色々です」

「いろいろー!」

「めんどくさいこと山ほど……」

「……なるほど、色々ねぇ~。あは、あははははは!! 何があったのぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ラグナはそう叫び職員室へと走った。

 自分が休んでいる間に5人も知っている人たちのキャラが変わっている。

 あのハクメン先生が電話で言った一言。"貴様が休んでいる間も学校は休みはない。休み明けで色々と周りの環境が変わっていても"の言葉が現実のものとなっているのだ。

 いや、まだ全部が変わっているとは考えにくい。変化の及んでいない人に話を聞いて理解する時間はいくらでもある。

 ラグナは思う。ハクメン先生なら何かを知っているのではないか……と。

 しかし、そんな淡い期待も一瞬で裏切られる結末となる。

 

「ジーン!! 勢いが足りないぞぉぉぉ!!」

「わかったよ! 兄貴ぃぃぃ!!」

 

 ラグナの耳に声質は違えど同じ声が二つ聞こえた。

 その方向へ目を向けると、なにやら穴掘りのファッションに身を包み、ドリルを持ちより叫び合うハクメン先生とジンの姿があった。

 

「ジン・キサラギ! 貴様の穴掘りはそんなものか!? 穴掘りジンと呼ばれた貴様は所詮その程度だったのかぁぁぁ!!」

「わかってるさ兄貴!! 僕のドリルは、天を突くドリルだ!!」」

「あぁそうだ。我がドリルは、時をも掘り進むドリルだ。そうだ!! 我を!!」

「僕たちを!!」

「「誰だと思っていやがる!!」」

 

 なんか主人公の声が一人で二人分同じことをやっているような天元突破であった。

 というかハクメン先生もジンもあれと声は一緒だが、熱血系とは程遠いキャラだし、ドリルなんて武器にしたこともない。

 

「なにやってんのお前ら?」

「むお! ラグナ先生!! もう身体は大丈夫なのかぁ!?」

「元兄貴!! 身体は治ったのか!?」

「あぁ、てか元兄貴って……」

 

 この一日で、どうやらジンにとっての兄貴はラグナからハクメン先生になったようである。

 ハクメン先生なら何か知っているかもしれないと思ったが、どうやらお門違いのようであった。

 

「悪かったな。ゆっくり穴掘りつづけてくれ」

 

 そんな二人に別れを告げ、ラグナは事情を知る人物を探すべく職員室へ。

 とりあえず一端休んで落ちつこう。そう思った矢先。

 

「おや、ラグナ先生じゃないですか? くだらない理由で休んで、いいですねぇ休みが増えるなんて」

 

 そう皮肉たっぷりに話しかけてきたのは、ハザマ先生だった。

 この台詞回し、ひょっとしたらハザマは何も変わっていなかったりするのだろうか。

 ラグナは皮肉など一端後回しにし、ハザマに何か知らないかを聞こうとするのだが。

 

「あぁハザマ先生。あのよ何か知らねえか? 俺昨日休んでたからいったい何か何だか?」

「何かといわれましてもねぇ。そんな……毎日なんてのは常にスペクタクルの連続みたいなもんじゃねえか」

「……ん? テルミ先生?」

「その名はとうの昔に捨てたさ。やんちゃしてたころの俺は強いていうなら昭和の時代遅れみたいなもんサ。今の俺は今を生きる。俺のパンタロンルックに惚れるなよ……」

「いや充分昭和の時代遅れな台詞言ってんぞ?」

 

 なんだかハザマの雰囲気でテルミのような口調だが、例えるならこじらせた中二病みたいなかっこつけな口調。

 ということで、ハザマも一日を通して色々あったようである。

 

「まぁ色々あったが心配すんなよラグナ先生。なぜならこの世は毎日が誰かのバースデーだから……」

「あぁそうだな。わかったよハザ松先生」

「ハザマです!!」

 

 今のハザマがどこかの六つ子の二男に似てたからなのか、ついそんな名前で呼んでしまった。

 周りの変化に戸惑っている最中であるが、すぐさま朝のホームルームに行かなくてはならないラグナ。

 身支度を済ませ、自身が受け持つ3年B組に足を運ぶと……。

 

「これでダイエット一ヶ月目、まだまだ足りないわ」

「やあ! 僕は綺麗なアラクネ!!」

「いっけぇニルヴァーナ号!! 10万ボルトだ!!」

「うふ~ん。このルナの美貌に見惚れちゃったのか~い?」

「うおぉぉぉ!! 金髪メガネ男子最高ーーーっ!!」

 

 普段は食い意地の張ってるタオカカがダイエット中。

 綺麗なアラクネ。

 サ○シみたいにニルヴァーナで遊ぶカルル。

 背格好はそのままなのにやたら妖艶ぶるプラチナ。

 乙女ゲーにハマりまくっているバレット。

 といったように他の人達と同様に、ラグナが1日休んでいるうちに見慣れないキャラになっている3年B組の生徒達。

 

「あーラグナ―! 久しぶりやないか~!!」

「誰やねんお前らぁぁぁぁぁ!!」

 

 極めつけはコテコテの関西弁キャラになってるニューに釣られてつい関西弁でツッコミしかえすラグナ。

 ラグナが家で夢を見ていたうちにブレイブルー学園は色々とあった。しかしその色々をけして誰もラグナに教えたがらない。

 

「誰ってひどいやないか~。ラグナとニューはよし○とのカグツチ養成所で共にお笑いの道を目指すために競った親密な仲やないの~」

「俺よし○と入った覚えねぇけど!?」

「久しぶりにいっちょ仕込んでおいたネタ見せたるやさかい! ラムダ準備せーや」

「……ボソボソ」

「おいラムダ声小さすぎて何言ってっかわかんねぇぞ。こんなんで漫才できんのか?」

 

 ラムダは普段以上に暗い性格になり、もう言葉一つ聞き取れない状態に。

 そんな状態で、ニューとラムダの漫才がなぜか始まった。

 

「どーもー! 今ラグナ殺しにいくよくるよでーす!!」

「やたら物騒なコンビ名だなおい……」

 

 どこかで聞いたような有名なコンビ名で挨拶するニューにラグナは反応に困る。

 元気なニュー。一方でラムダはというと。

 

「……ボソボソ」

「聞きとれてねえぞ」

 

 やっぱりラグナにはラムダは何を言っているのかわからない。

 しかしニューはそんなラムダに対しお構いなしに。

 

「誰が福○雅治やねーん!!」

 

 バシーン!!

 と、ニューはラムダの頭をおもいっきりぶったたきツッコミをいれる。

 やたらといい音が教室内に鳴り響く。これは絶対に痛いであろう。

 しかし漫才は続く。

 

「いやしかし、カグツチも物騒になりましたなー」

「……ボソボソ」

「いやそれ家族になろうよのサビのワンフレーズやないかーい!!」

 

 バシーーーン!!

 

「それにしてもブレイブルーも歴史が長いことですなー!」

「……ボソボソ」

「いやそれ一つ屋根の下の「あ~んちゃ~ん」の声のトーンのくだりやないかーい!!」

 

 バッシーーーン!!

 

「うちの性能が結局CPアップデートでほぼ元通りになってもうてー」

「……ボソボソ」

「いやそれガリレオで「実に面白い」ってシーンのいや別にこちらとしては面白くないんだけどって心境を綴ってるだけやないかーい!!」

「お前さっきから適当に福○雅治でツッコミで返してるだけじゃねえか!!」

 

 ついニューのラムダへのツッコミの内容にツッコミで返すラグナ。

 結局ラムダが何を言っているかなんてのは関係なく、ニューが適当にツッコミで返してラムダの頭をおもいっきりぶったたいてるだけ。それを漫才と言っているだけのオチである。

 ちなみに尋常じゃない力で頭をぶったたかれているラムダであるが、気のせいかちょっと泣いていた。

 

「はいはいはーい!! ツバキも漫才やっていいー!!」

「ええで大阪人は心が寛大やからな~」

「お前大阪人じゃねえだろ……」

 

 とラグナがツッコミ。

 いつからニューは大阪人になったのだろうか。

 そして流れのままツバキとニューが即席でコンビを組むことに。

 

「はい始まりました~。ニューとツバキのデリバリーコント~!」

「うわ~ん! 十六夜を川に落としてしまった~い」

「ツバキとやら、あなたが落としたのはこの金の十六夜ですか? それとも銀の十六夜ですか?」

「いや、私が落としたのは……。ジン兄様への愛です」

「よろしい。正直者のあなたにはこの石渡大輔を差し上げましょう」

「いいんですか~? やった~。イシワタリ↓ダイスケ↑ダ~!!」

「これで次回作のギルティに、ロボカイが参戦♪」

「「どうもありがとうございました~!!」」

「意味がわかんねぇよぉぉぉ!!」

 

 ニューとツバキは満足いったようであるが、ラグナにはさっぱり意味が理解できていなかった。

 このままなにやら、ニューとツバキは信頼を深めあったようで、互いに握手をがっちりと交わす。

 

「これで次のTHE・漫才は優勝間違いナシや! ラムダなんかと組んだのは間違いやったんや~!! つうわけでラムダ、あんたとはやめさせてもらうわ」

 

 そうニューは冷たくラムダを引き離し、コンビ解消を告げると。

 

「ふざけんなや!! うちがどんだけあんたに頭叩かれて我慢した思うてんねん!!」

 

 と、さきほどまで何言ってるかさっぱりわからなかったラムダが、急に声を張り上げてマジギレ。

 それに教室中の空気が一気に変わる。

 

「せ……せやかて」

「せやかてやないやろニュー!! こっちはあんたとの漫才やコントのネタも全部書いて、ボケがあんたやからテレビ出演もほとんどあんたばかりで人気でよって。こちとら根暗キャラや性格ブスやでツ○ッターで叩かれる毎日。どんだけうちが我慢し続けた思うてんねん!!」

「そ、そりゃ悪い思うとるけど」

 

 ラムダの怒りは本気のようで、先ほどまで主導権を握っていたニューが押され、小さくなっていく。

 それでもラムダの怒りは止まることなく、さらに怒鳴りまくるラムダ。

 

「ほんまにこの馬鹿力が。毎日毎日脳みそがクラッシュしそうになるくらい痛いっちゅうに。一回やっちゃろうか!? どんだけ痛いかやっちゃろうか!?」

「ご、ごめんて。ほんまに謝るから」

「ほんまか!? 反省しとんのか!?」

「……うん」

「そっか……。はぁ~、めっちゃこわかった♪」

 

 ズッコーン!!

 

「なんか急に吉○新喜劇始まってるしぃぃぃぃぃ!!」

 

 3年B組の生徒総出で、息ぴったりな吉○新喜劇をラグナに見せつける。

 当然ラグナはついていけていない。これも全て羽目を外して1日欠勤したせいである。

 しかし悪いのはラグナなのは明確だが、ラグナからしたら一人だけ世界の外にはじき出されたようなものである。

 一人孤独に震えるラグナ。つい耐えきれず教室の外へと逃げ出してしまう。

 

「ひどいよみんなぁぁぁ!! 俺なんて所詮世界の敵だよ!! 秩序の敵で世界最強の犯罪者だよえーーーん!!」

 

 そう原作設定を叫び、教室から走り去るラグナ。

 この学校に自分の居場所はない。そう思い始めているラグナ。

 廊下を全力で走っていると、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

「ラグナ! 大丈夫!?」

 

 優しい声、目を向けるとそこにはセリカが立っていた。

 セリカはラグナにとっての母も同然。そこには変わらぬ聖母がいた。

 

「セリカ!? お、お前は変わってねぇのか!?」

「変わる? なんのこと? 実は私も昨日道に迷って学校サボっちゃったんだよね~」

 

 と、照れ隠しをするセリカ。

 そんな彼女の姿を見て、ラグナの目から一粒のしずくが。

 そして、子供に戻るような勢いで、セリカの元へとかけよる。

 

「お……お母……セリカーーーーーーーー!!」

 

 途中お母さんといいかけたような気もしたが。

 ラグナが全ての孤独をうめようと、セリカの元へと駆け寄ろうとした……その時だった。

 

「……」

「……セリカ?」

「ごめんラグナ。……気持ち悪いんですよ、童貞のナイト気取り!!」

 

 さきほどまでの聖母のような笑顔から一変、すさまじい表情をラグナに向けラグナの股間を思いっきり蹴りあげた!!

 

「がはっ!!」

 

 とてつもない激痛がラグナを襲う。身体的にも心的にも。

 

「セ……セリカ?」

「うっぜぇんだよこのマザコンシスコンロリコン野郎!! なに孤独で死にそうなウサギみたいな顔してんだ!! てめぇなんて家で※※して母ちゃんの※※でもしゃぶってろ!!」

「いや、母さんはあんただろ?」

 

 結局、セリカも他の人たちと同様、あり得ない変化をしてしまった始末だった。

 あの純粋で優しい女の子から一変。どこかの刑務所にいる口の悪い女の子みたいなキャラになっていた。

 その後なにやらガン○ムみたいになり果てたミネルヴァによって追い返されたラグナ。

 唯一の救いであった母からも見捨てられ、また孤独に戻ってしまったラグナが廊下をさまよっていると……。

 

「誰かぁ~。誰か俺を受け入れてくれぇ~」

 

 その切実なる思いに、三人の人物が答えた。

 

「ラグナ殿~!!」

「死神~!!」

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ!!」

 

 その声は、バング、アズラエル、カグラだった。

 藁にもすがる思いのラグナは、もうどんな変化でさえも目を背けないといった思いで振り向く。

 もう知っている人がどんな姿になっていてもいい。周りが変化したことに戸惑っていても始まらない。

 ならば向き合おう。そう決心した彼を出迎えた三人はというと。

 

「あ~らもう。いつ見てもいい身体付きでござる~」

「も~う、イチモツから食べ応えがある~」

「女なんかいらねぇ! 今私たちに必要なのは……い・い・お・と・こ☆」

「うえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 ラグナが振り向いた先にいたのは、ゴツイオカマとかした三人だった。

 元がイカツイ男性キャラだけあってか、キツイ香水のにおいと滲み出る男性ホルモンが混じり合いラグナを戦慄させる。

 

「あ……あの……」

「いいでござるよ~。ささ、こちらへいらっしゃい」

「お前の男の部分を、黒い……鷹で……ギューンするぞぉぉぉ!!」

「さあ、こっちにいらっしゃいよ。マイブラッドエッジ~」

 

 最強のオカマ三人に迫られるラグナ。その結果……。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 結果的にラグナは早退。二日連続で休みになってしまった。

 これではまた後日学校に来た時に、また違うことになっているかもしれないのに。

 今回彼が休んでしまったことの代償は、彼にとっては激しく後悔することになった。

 これでしばらくは、羽目を外して欠勤なんて社会人あるまじき行為をしなくなることだろう。

 反省したならば、彼の見る夢はきっと冷めることだろう。……ちなみに。

 

「……ふぅ。はいお前達、事象干渉解いたぞ~」

 

 ハクメン先生の一声で、変わり果てたブレイブルー学園の教師並び生徒達が、一斉に我に返る。

 

「はぁ~。いやぁもうラグナ先生一人のために大変でしたよぉ。ヒエログリフとかわかるわけないでしょ~」

 

 ため息交じりでノエルがぼそり。

 実はみんな、欠勤したラグナにお灸を据えようと、帝理事長の事象干渉によってキャラをめちゃくちゃにミックスしたのである。

 これでハクメン先生がのいう"休み明けで環境が変わっていたら大変"ということの意味を、ラグナは心から身にしみたことだろう。

 とはいうものの、ダメージを受けたのは割とラグナだけではないらしく。

 

「もーう! あんなはしたない真似ジン兄様に顔向けできないわー!!」

「いくら事象干渉だからって、友達いらないとか私がいうわけないじゃん! ノエルとツバキはずっ友だよ!!」

「兄さんに向かって元兄貴などと、僕の兄は未来永劫兄さんしかいないじゃないかーーー!!」

「お腹すいたニャス~! 誰か肉まん百個よこすニャス~!!」

「ぎゃあああ! 姉さんがボロボローーー!!」

「うむ、割と乙女ゲーも面白いものだな」

「……頭痛い」

「※※とか※※とか……。どういう意味なんだろう?」

 

 皆、ラグナのために身体張りすぎなのである。

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