3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第六話です。


第6話:μ-12爆誕

「しかしお前、胸無いな」

「いきなりかよおい!!」

 

 始まって早々だが、ラグナ先生はいつものごとくノエルをバカにする。

 ノエルにとって貧乳はコンプレックス、あまり触れられたくないところである。

 しかしラグナにとってはノエルをからかう絶好の材料であり、何かにつけて胸がないと。

 そしてついたあだ名は『ナイチチ』。ノエルは毎度そのあだ名で呼ばれることを嫌がるがラグナにとってはおかまいなし。

 教師が今時女子高生に対する対応としては、本来ならば少し自重すべきところである。

 

「先生いい加減にしてくださいって、胸無いのは認めますけど毎度の如く言わなくてもいいじゃないですか」

「だって面白いんだもんお前の反応」

 

 ラグナは聞く耳持たず、ふふ~んとそっぽを向いて答える。

 その態度にノエルは呆れと怒りが混じったように返す。

 

「あなた本当に教師ですか? 先生いい加減私も怒りますよ本当」

「ほほ~う、もう怒ってるくせにな~」

「………」

 

 ノエルの反応が、いつもより鈍く感じた。

 今までのようなノリの良い返しではなく、素で傷ついたような反応。

 しかしラグナはそんなことなど気づかず、更に罵倒を繰り返す。

 

「貧乳がステータスって言う言葉があるけど、お前にすら当てはまらないようだな、だって"無い"んだもんな~、ぬはは~」

「うー」

「まあこれも生徒と教師のスキンシップだと思ってよ、ツッコミ役として必死につっこんでくれたまえ」

「うーーーーー」

「てなわけで、授業始まるぞマイナスAカップ♪」

 

 様子のおかしいノエルに対して調子に乗りバカにしまくったラグナ。

 未だノエルの異変に気付かない鈍感なラグナ。そして……。

 

「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 ドカーーーーーーーーーーーーン!!

 ノエルの怒りが頂点に達し、大声で唸りを上げる。

 そしてノエルの中の何かが爆発した。そこまでいくとさすがのラグナも異変に気付き。

 

「……へ?」

 

 何が起こったんだ?といわんばかりにノエルの方を見るラグナ。

 見ると、ノエルの雰囲気が何やら重苦しく、今までと彼女と違い鋭い視線。

 本来の碧色の瞳ではなく、透き通った蒼色の瞳。そしてなぜか知らないが露出度の高い服装。

 しばらく間が空き。ノエルがゆっくりと口を開く。

 

「起動……起動……起動……」

「あの……ノエルさん?」

 

 機械のようにぶつぶつと呟くノエル。

 何かがおかしい、ラグナは慌てる様子でノエルに問う。

 

「ラグナ先生が……ラグナ先生が……ラグナ先生がーーー!!」

「おい、ノエル? どうしちまったんd」

「憎いーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 憎しみをのせ大きく叫びを上げた後、変貌したノエルがラグナに襲いかかった。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」

 

 襲われたラグナは大きく悲鳴を上げた。

 変貌したノエルにとてつもなく残虐なことをされ、耐えかね必死に逃げだす。

 しかしノエルはなにやら水晶のようなオブジェクトを召喚してラグナを拘束。ビームを大量に発射し今までのうっぷんを晴らすがごとくラグナをボコボコに。

 ビームの霰をかいくぐり、苦し紛れにも命だけは助かったラグナは急いで職員室へと向かった。そして……。

 

「お、どうしたラグナ先生、すごいケガだぞ?」

 

 無残な姿になったラグナを見てハクメン先生が一言。

 他の先生方もそれに気付きラグナの方を見る。

 

「いったいどこで転んだでござるか?」

「バング先生……これが転んだように見えるならそれは病気だぞ……う!!」

 

 ラグナ先生はその場で倒れた。

 これには冗談を言っている暇もなくなり。

 

「ズェ……ラグナ先生大丈夫か!?」

「しっかりするでござる!!」

 

 いったいなにがおきたのだろうか。

 そんなことを思いながら、ハクメン先生とバングは担架を担ぎラグナを保健室へ運ぶ。

 保健室につき、傷だらけのラグナをベッドの上に寝かせ、ライチが中国四千年の歴史の医療秘術を使って強引にラグナを治療。

 ラグナは保健室にて「ヒーーーホーーー!!」と先ほどに勝る激痛に叫びをあげ、なんとか一命を取り留める。

 数分後、他の先生がラグナから事情を聞く。

 

「なるほど、いつものようにノエルをからかっていたらノエルが変身して返り討ちにあったと」

「ああ、これでこのザマだよ……」

 

 ラグナは素直に事情を話した。

 生徒にちょっかいをかけてたら返り討ちにあった。なんとも情けなく、そして恥ずかしい話である。

 あまりの大けがに心配をしていたハクメン先生とバングであったが、その話を聞いた瞬間急に態度を変え。

 

「そうか、それは災難だったな」

「自業自得でござるなラグナ先生、というか変身させるまでセクハラ発言するとは最低でござるなラグナ先生」

 

 ハクメン先生とバング先生はラグナを見捨てるように言い放った。

 無下に扱われたラグナは、待てよと言わんばかりに大声を張り上げる。

 

「おいー! さっきまで心配してくれたお前らはどこ行ったーーー!?」

「そんなこと言ったって、ノエルをバカにしたお前が悪い」

 

 これにはハクメン先生の言い分が正しい。

 確かに傷つけたのはノエルであるが、元の原因を作ったのはラグナの軽率な発言。

 ノエルは何も悪くない。

 

「これに懲りたら今後はナイチチ発言は控えることねラグナ先生」

「ライチ先生まで、ま……まあ俺が悪かったよ……けどよ」

 

 ライチにまで叱られ、言い返したくてもいい返せなくなったラグナ。

 それに続きバング先生もラグナに厳しく言葉をかける。

 

「けどもクソもないでござる。そこまでされるほどストレスためてたノエル殿の気持ちも考えるでござるよ」

 

 ラグナもここまで言われ、本気で反省の意を示す。

 皆はラグナの表情を見て、ふぅと一つため息をつく。

 少しばかり重苦しくなった空気に耐えかね、ハクメン先生が口を開く。開く口があるかどうかはさておき。

 

「にしても、お前はどうしてそこまでノエルにちょっかいかけるのだ?」

「そ……それは……あいつとそういう会話するのが楽しいんだよ」

 

 ハクメン先生の質問に、ラグナは答えにくそうに返した。

 その返しにハクメン先生は苦笑し、ライチ先生もぷっと噴き出しそうになる。

 なんとなくラグナの心情を察し、言わんとすることは言わなくてもよい。ハクメン先生はそう思い黙っている。

 が、そんな心使いなど微塵もない一方通行なこの男はというと。

 

「それはたぶん、ラグナ先生はノエル殿の事が"好き"なのでござるな」

 

 バングの何気ない一言で、場の空気が凍りついた。

 

「ん?拙者いまなんか空気を壊すことでも言ったでござるか?」

 

 この状況を生み出しておいて何も思うところのない鈍感なバング。

 あまりのひどさに、ハクメン先生は剣を取り出し。

 

「バング先生、ちょっとこっちへ来てもらおうか」

「ほへ? 何をするでござるかハクメン先生」

「疾風!!」

「ぎょえええええええええええええ!!」

 

 バング先生を部屋の外へ連れ出し、疾風でお仕置き。

 数秒後保健室へ連れ帰り、ハクメン先生は皮肉を込めて言った。

 

「空気を読めバング先生、お前はKY忍者なのか?」

「KY忍者か、データに加えさせてもらおう」

「ハクメン先生! テイガー先生! ちょっと待つでござる!!」

 

 テイガーまで話に入ってきて、バングの空気の読めなさに呆れをこぼす。

 一方、バングにいらんことを言われたラグナはというと、顔を赤らめ必死の形相でこう言った。

 

「俺はちげえよ! 全然ちげえよ! 違うからな!!」

「ほら戸惑ってるズェア」

 

 あきらかに動揺しているラグナ。

 言わなくてもわかるぞと、ちょっかいを出すハクメン先生。

 

「赤くなっているなラグナ先生」

「違うっつってんだろうがお前らーーー!!」

 

 テイガーにまでからかわれ、否定すればするだけどつぼにはまっていくラグナ。

 

「ラグナ先生? 今の話は本当かしら?」

「校長まで入ってくるんじゃねえよーーー!!」

 

 しまいには校長まで話に入ってきて、さらしものにされたラグナは終始思いっきり笑われていた。

 途中レイチェルだけは気に食わなそうに笑顔を濁らせていたが、それが何を意味するかは誰にもわからない。

 ラグナがノエルの事を好きかどうかはさておき、この一部始終の会話を盗み聞きしていた生徒が一人いた。

 赤みがかった長い髪を揺らし、壁の隙間からラグナ達を覗く少女は不気味な笑みを浮かべた。

 

「ノエルが変身を……これは……使えるわね」

「ツバキ、なにやってんの?」

「え? いや! なにもしてないわよマコト!!」

「?」

 

-----------------------

 

 その放課後。

 

「ノエルまた補習入ってるよ、あんな事があった後だとやりにくいな~」

 

 放課後。ノエルとあんなことがあった上に、教師たちにいらん話をされたラグナは非常にノエルと会うのを拒んでいた。

 会えば罪悪感と、変に彼女を意識してしまい濁った空気になるに違いない。

 教師が一般生徒を好きになるなどあってはならない、ラグナは教師として気合を入れなおす。

 これは教師として生徒の補修を任されただけにすぎない。そう心で念じ歩いていると。

 

「ラグナ先生~!」

「おわ! ツバキ!!」

「どうしたのですラグナ先生? 元気がないですよ?」

 

 こんな時に限って、何やらやばそうな奴に出会ってしまった。

 このツバキ・ヤヨイとは、前にジンとの一件があって以来変な因縁をつけられている。

 そして今目の前にいるツバキは生徒らしい普通の笑顔。だがその笑顔が今のラグナには怪しく映る。

 

「おめえ、な~にか企んでねえか?」

「いえいえ、それよりもまたノエルが補習ですか?」

 

 悟られる前に話題を変えるツバキ。やり手なのが伺える。

 

「ああ、だけどちょっと朝あいつとトラブってしまってよ……」

「見てましたよ、ノエルが変身したところ」

 

 あの光景を実はこっそりと見ていたツバキ。

 それに加えあの教師陣との会話まで盗み聞きしていたとなれば、ツバキの考えている事は闇の奥深く。

 狙ったようにツバキは、こんな話題を切り出した。

 

「ノエルが変身した時、私思ったんですよ」

「……何をだよ?」

「あのノエルは、ノエルの中に眠ってる潜在能力が全て解放された姿だと、そうは思いませんか?」

 

 人を勧誘するような引き込むような語り口調。

 それがラグナの中の疑心をさらに強くする。

 

(なんかこいつ、すっげえ怪しい感じ……)

「先生、今私を疑いましたね?」

「い……いやぁなにも~」

 

 怪しいとわかっていながらも、逃げられないツバキの視線。

 疑われているならばその疑心が消えるまで丸めこめば良い話。

 さながらエリート営業マンのようなツバキは、離す技術を最大限に生かし、たたみかけるように会話を続ける。

 

「つまりあの怒ったノエルなら、どんな難問も一瞬で解いたり、体育の授業も全て完璧にこなしたり、ダメだったことろが全てできちゃう気がするんですよ~」

「ま……まあその可能性は無いとは言えんな……」

 

 確かに、あの時怒ったノエルは明らかに雰囲気が変わっていた。

 口調も機械的になっていたし、普段ぼーっとしているノエルのアホな感じも一切感じられなかった。

 ということは考えられることの一つに、あれがノエルに隠された力の断片である可能性があった。

 人は奥底に強大なパワーを隠していると言われている。俗に言う火事場のクソ力というやつである。

 それを発揮した時、本来ならばできないこともできるようになる。つまりそれはノエルにも当てはまるわけである。

 

「これはチャンスですよ先生、ノエルがあの力をモノにできれば、これからノエルにとって役に立つものになります」

 

 ノエルのために、そう言ってラグナを丸めこもうとするツバキ。

 これに対してラグナはジト目で、これ以上ぐだぐだ話していてもきりがないと悟ったのか自ら本題を切り出した。

 

「つまりなんだ? 俺にもう一回あいつを怒らせろと?」

 

 要はツバキが言っているのはそういうことである。

 ノエルを怒らせて痛い目を見ろと、ツバキが言おうとしている事はバレバレである。

 しかしツバキは下がらずに言葉を続けた。

 

「先生、なにを恐れているのです? 悟空も最初は怒りにまかせていましたが、最終的には力を使いこなして地球を守り抜いたじゃないですか~」

「ドラ○ンボールは今関係ねぇだろうが!!」

 

 例えがわかりやすかったはさておき、ラグナは頭を抱える。

 ツバキの話に乗っかるわけではないが、少しばかり考え、そして教師らしく結論する。

 

「あーだめだ! これ以上変身させてあいつの身になんかあったら大変だし! 教師としてそれはできない!!」

 

 今までは軽い気持ちで彼女にちょっかいを出してきた。

 しかしあそこまで変貌するまでストレスをためていたのだとしたら、もう不用意にノエルを怒らせるのはまずい。

 ラグナはあくまで教師としてそれに反対をする。するとツバキは厳しい視線でこう返してきた。

 

「今まで散々バカにしてきたクセに自分に害が及び始めると逃げるのですか?」

「う!!」

 

 その言葉に、ラグナは一歩後ずさり。

 ツバキに言われたその一言は、ラグナを追い詰めるには威力が充分すぎた。

 そう、ラグナは怒ったノエルに瀕死の重傷を負わされた。それは明らかにラグナが悪い。

 だからあんな思いは二度としたくないし、仮に今度ノエルを怒らせたとなったら他の教師たちにまで何かされる可能性もある。

 結局ラグナは逃げているだけである。ラグナのその反応を見たツバキは後一撃加える。

 

「ノエルのためですって? 本当は自分のためじゃないんですか? 何を正当化してるんですか先生は」

「う!! う!!」

「先生、愛あれば暴走する生徒も止められます。ノエルのため、ノエルのためですのよ~」

 

 ツバキは悪女が如くラグナにささやき続けた。

 悩むラグナ、悩んで悩んだ。

 だが否定をする度にツバキに言い負かされ、会話のガードライブラがツバキの色に染まってゆく。

 数分の議論の末、ラグナが出した答えはというと。

 

「……俺、もう一度あいつと向き合うよ」

「そうこなくては~!」

 

 ラグナは負けてしまった。

 こうなってしまってはツバキの思い通り、ツバキは次のステップに移る。

 

「だけど、今度もまたあいつを変身させるほど怒らせれるとは限らないぞ、失敗したらあいつは泣きじゃくるだけで俺の信用問題に発展しかねるし……」

 

 ノエルは朝の事件でひどく落ち込んでいるだろう。

 つまり今度はちょっとやそっとの事では怒らない。ラグナを傷つけまいと必死に怒りを抑えるはず。

 その状況を見ているだけでも心が痛くなるというのに、最悪完全に信用を失ってしまうかもしれない。

 そんな不安をよそに、ツバキはご心配なくといった感じで。

 

「その点はご心配なく、いざって時はプロフェッショナルにお願いしてあるので」

「プロフェッショナル?」

 

 人を怒らせるプロフェッショナルってなんだよ……とラグナは怪しさ満点にツバキを見る。

 

「まあその時がくればわかりますよ、じゃあ頑張ってくださいねラグナ先生~」

「あ……ああ」

 

 ラグナが色々と考える時間など与える暇もなく、流れるように言った後ツバキは笑顔で帰って行った。

 帰り際、それはもうひどい笑みを浮かべ小さくこうつぶやいた。

 

「あとは……ノエルがラグナ先生を……ククククク」

 

 そこには誰にでも平等で接する優しい生徒副会長の姿はなかった。

 俗に言う黒ツバキである。いったいどこで染まったというのであろうか。

 

-----------------------

 

 補習の時間

 

「う~、全然わからないよ~」

「ったくこのバカが、こんなもん中学生レベルの問題だろうが!!」

「そんなこと言いましても~」

 

 簡単な問題集に悪戦苦闘するノエル。

 やっぱり普段のノエルではこの通り通常営業でバカをやっている。

 この補修を乗り切るためには、やはり奥底に眠る潜在能力を発揮する他はない。

 戻れるチャンスはここしかない、が……すでにツバキの手に堕ちたラグナは。

 

「はぁ……そんなお前のために提案があるんだが」

「へ? なんですか?」

 

 そしてラグナ先生はあの話を切り出す。

 覚悟は決めた。あとは天に委ねるのみ。

 

「ノエル、お前今日の朝、俺に対して変身するほど怒ったよな?」

「は……はい、あの……すいませんでした! 私なにがなんだかわからずあそこまで先生を傷つけてしまって!」

(う……謝られるとますますやりにくい……)

 

 思った通りに、根は優しいノエルは朝の事を非常に気にしていた。

 自分なんかハクメン先生らにあそこまで言われなきゃわからなかったというのに、ラグナの中の罪悪感は膨れてゆく。

 だがそこで戻っていいんだろうか、ここでも悩んだがやはりツバキに言われた言葉が離れられない。

 自分の身が大事と逃げてはいけない。間違った方向に進むラグナはもう止まらない。

 

「どうしたんですか先生?」

「あ……いやな、そんとき俺思ったんだよ。きっとあれがお前の本当の力だって、あんだけ戦闘能力が上がったんだ。きっと学力も上がってるはずだ」

「は……はい?」

 

 ノエルにはラグナが何を言おうとしているのかは全く理解が出来なかった。

 あーっと頭を書き、ラグナは最後まで悩んだ末、ストレートにこう言い放った。

 

「つうわけで、怒れ」

「は?」

「怒れ!怒るんだノエル! そうすればおめえは全世界の誰にも負けねえ!!」

「私は悟飯ですか!? 怒れって言ったってそんな簡単に怒れるはずがないでしょう!!」

 

 ドラ○ンボールは関係ないとか言っておきながら、自分もそのネタに走るラグナ。

 

「じゃあ俺が怒らせてやるよ、や~いナイチチ~! 女じゃなくて男~!!」

「む……むーーーーーーーーー!!」

 

 流れるままにノエルを怒らせようとするラグナ。

 もう後戻りはできない。意地でも怒らせてまたあのすごいノエルを引き出して補習を終わらせれば全部が解決だ。

 ラグナは朝以上にノエルをバカにし、中にはからかうレベルでは済まないことまで口にしノエルを煽る。そして傷つける。

 だがノエルは中々怒らない。怒れば潜在能力とやらが出るかもしれないがまた感情に身をゆだねてラグナを傷つけてしまうかもしれない。

 ノエルの頭の中が少しずつ崩れぐちゃぐちゃに、最終的には耐えきれなり目から雫がこぼれ始める。そして……。

 

「う……うぅぅぅぅぅええぇぇぇぇぇええぇぇん!!」

「泣いちまったよ……」

 

 わんわんと泣きだし、取り返しのつかない事態に。

 これにはラグナも弁明できず、泣きやませようと行動に移ることもなく。

 ただただ立って泣くノエルを冷や汗流しながら眺めていた。

 

「だってぇ……だってぇ~!! 仮に……私の中にいる何かが目覚めてぇ……なんでもできるようになったと……してもぉ……これでまた制御できずにラグナ先生を傷つけてしまったらどうするんですかぁぁぁぁぁわあああああん!!」

 

 ノエルの優しさが籠った言葉を聞いて、後悔がラグナの頭の中を支配する。

 気がつくとハクメン先生他数名がノエルの泣き声に駆け付けていた。

 この光景を理解した後、ラグナを鋭く睨みつけ。

 

「おい……ラグナ先生」

「まだ……懲りていなかったでござるか?」

「私たちもそろそろご立腹が近いわよ」

 

 ハクメン先生とバングとライチは怒りを露わにする。

 ラグナは身体をぶるぶると震わせる。

 

「そそそそ……そんな目で見るんじゃねえよ!!」

「傷つけたくないよぉ……ラグナ先生を……傷つけたくないぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「ノエル殿……」

 

 ノエルの必死の叫びに思わず貰い泣きするバング。

 それがハクメン先生とライチの怒りを加速させる。

 

「なんという教師思いの生徒、ラグナ先生にあそこまで言われながらも……」

「それに比べて……」

「お~いなんだこの空気はよーーー!!」

 

 もう完全に外道畜生と化したラグナは無様に叫ぶことしかできない。

 と、そこにそんなラグナをサポートすべく、全ての元凶、ツバキがやってくる。

 

「負けてはなりません!!」

「ツバキ! おめぇのせいでこんなことになってんぞ!!」

「ならば最終的に全て良しとするまでの事です!! まだ最後の切り札が残っているのですよ、先生お願いします!!」

 

 責めるラグナを一蹴し、そのプロフェッショナルを呼び出すツバキ。

 パンパン! と呼ばれてやってきたのは、黒い帽子を被りスーツを着こなした見た感じ優しそうな人物。

 温和の二文字が絵に合うハザマ先生であった。

 

「あの……私でございますか~?」

「……おいツバキ、これはどういうことだ?」

 

 やってきたのがハザマ先生で、ラグナはきょとんと口をあける。

 

「プロフェッショナルのハザマ先生です」

「ハザマ先生が人を傷つける人には見えねえんだけどな先生は!!」

 

 いつも紳士的に振舞い、女性の扱いには長けている(ように見える)ハザマ。

 ラグナは騙された! と、疑心いっぱいで騙された割にツバキをすごい形相でにらみつける。

 

「ノエル君を怒らせてくれと言われてきたのですが。彼女はすでに泣いてますし、私こういうのは……苦手なもんでしてねぇ」

 

 困りはてるハザマ。

 ここまで無関係な人を巻き込みたくさんの人を困らせたラグナに、他の教師達が失望と軽蔑の目を向ける。

 

「そうよ! ハザマ先生にまでとばっちりを受けさせるなんて!!」

「ラグナ先生よ、悪滅の準備はできているぞ」

「大噴火もでござるよ……」

 

 ライチがラグナの行為に失望し、ハクメン先生とバングが武力でラグナを捌こうと技の準備をし始めた。

 散々な目にあったラグナは、再度ツバキの方を見る。

 

「ツバキてめぇ……」

「最後まであがいてみたらどうです?ラグナ先生」

 

 ツバキはここにきて、憎たらしい笑みを浮かべラグナを見離す。

 もう逃げ道はない。ならばやることは一つしかない。

 

「ぐ……こうなったらやけだ!! ハザマ先生でもいいから、ノエルを怒らせてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 ラグナ先生は叫ぶ。まるで悪役のように。

 どうせ痛い目見るなら最後の最後までノエルの可能性に期待をしたい。

 ハザマが本当にノエルを怒らせられるのかまで考えず、ただ縋り、足掻くように。

 

「う~ん、気がひけますが……え~と、あなた頭悪いですね~」

「ひっく……ひっくぅ……」

 

 嫌嫌そうにハザマはノエルをバカにし始めた。

 ノエルはというと泣きじゃくっている。

 

「これくらいの問題もできないなんて、どうしようもないですね~」

「ひっく……う……」

「これを言ったらいいのでしょう。バカを通り越して……"ゴミ"……ですかね~」

 

 この時、ラグナ達全員がハザマの異変に気がついた。

 紳士的なあのハザマ先生がありえない一言を放ったような。そんな気がしたが。

 聞き間違いだろう。そう思いながら恐る恐るラグナはハザマに近寄る。

 

「お……おいハザマ先生?」

「それにしてもあなた聞いていた通り胸が無いのですね、あなたお嫁に行けないのでは?」

「うー」

 

 ラグナが声をかけるが、ハザマは止まる気配がない。

 

「ほんっと、ゴミ貧乳で馬鹿でアホで間抜けで汚らわしいですね~」

「うーーー」

「……な~に唸ってんだ? クズの分際で睨んでんじゃねえよこのクソアマ」

 ハザマ先生はどんどんエスカレートしていった。

 みんなは「こんな人だったっけ?」と言わんばかりの眼でハザマ先生を見る。

 人は見かけによらないとはこのことで、次第にハザマの髪の毛が逆立つ。

 ノエルもノエルで、次第に朝のあの嫌な雰囲気を醸し出している

 頂点の一歩手前まで来たノエル、ハザマは最後の一撃とばかりとどめを言い放った。。

 

「ったくやっべえ腹立ってきたわ、おいクソアマ! 悔しかったら怒ってみろよこらぁ!! このナイチチがぁぁぁぁぁぁ!!」

「うーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 ドカーーーーーーーン!!

 ノエルのコンプレックスがトリガーとなり、ノエルは朝と同じく姿形を変えた。

 ストレスが一定以上を超え、ノエルの中にいる何か……ノエルの潜在能力の塊である"ミュー・トゥエルブ"が姿を現す。

 瞳は蒼に染まり、服装はなぜか露出度が高く。

 普段のぼーっとしたノエルの空気など微塵も感じない、鋭い憎しみの塊。

 それを見たハザマは、高らかに叫んだ

 

「ヒャッハー! リミッターがぶっ壊れやがったーーーーー!!」

「は……は……ハザマ……先生?」

「さすがハザマ先生! こういうのはお手の物ね~」

 

 にわかには信じられなかったが、あの優しそうなハザマがノエルを怒らせてしまった。

 ラグナは口をぽかんと空け、ツバキはさすがとばかりに拍手をしている。

 

「起動……起動……起動……起動!!」

「今ですラグナ先生! ノエルにこの問題を!!」

 

 ノエルの変貌を確認し、ツバキがラグナに声をかける。

 ラグナは我に返り、一か八かの勢いで問題集をミューに提示する。

 

「あ、ああ! さあノエル! いやミューよ!! この数学の難問を一瞬にして解き明かし……」

「憎い……憎い! 憎い!!」

「解き明かし……解き明かし!!」

「憎いーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 結末はわかっていた。

 ノエル――基ミューは怒りのままにラグナに襲いかかる。

 襲われたラグナはまたもビームに霰に身体を焦がされ、ミューのグシャグシャとズタズタにされる。

 血は噴き出し、ラグナの中からありとあらゆるものが飛び出し。それは無残な物であった。

 

「うわ、これはすごいな……」

「おお、ラグナ先生の中からいろんなものがわき出てくるでござる……」

「これは私でも治療できないわよ、うぷ……」

 

 ハクメンは腕を組み、バングはすごいものを見るようにこの光景を、ライチはあまりの残虐さに口を押さえる。

 そんな中で、スーツを着こなす優男、ハザマはというと呑気にこう漏らしていた。

 

「いや~、やっぱり女性を傷つけるのは気がひけますね~」

「「「嘘つけ!!」」」

 

 3人は一斉にツッコミ。

 明らかに嘘だ。ハザマの中身はきっとあんな感じなのだろう。

 それを知っていたツバキは、全てが上手くいったとぐふふと笑いその場を去る。

 

「うふふ……これで恋敵がまた一人消えたわ~」

 

 悪女ツバキはこうして、ジン・キサラギを手に入れる算段を考えるのであった。

 ラグナ先生はその後、全治1か月で長期休暇をとったとのこと……。

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