今回は新キャラ登場回。
視点は遊花視点です。
★
「………ん、もう朝………ん〜〜〜」
軽快に鳴り響く目覚まし時計を止めながら私は自分の部屋のベッドから身体を起こして伸びをする。
起きたばかりで寝ぼけている顔をパチパチと叩いて気合を入れる。
「さてと、早く朝ご飯とお昼のお弁当を作らないと‼︎」
私は胸の前で両手を握って気合を入れると急いでクローゼットから制服を取り出し、着替える。
そして身だしなみを整えてから2階にある私の部屋からリビングキッチンに降りていく。
リビングキッチンに入ると、そこには既に先客がいた。
「お、起きてきたか」
「師匠‼︎おはようございます‼︎」
「ああ、おはよう。悪い、ちょっとコーヒーメーカーを借りたぞ」
「別に言わなくても勝手に使っていいって言ったじゃないですか、だから気にしないでください」
リビングでは師匠がソファーに座ってコーヒーを飲んでいた。
あのコーヒーはお父さんが使っていたコーヒーメーカーで作ったものみたい。
お父さんも誰かが使ってくれた方が喜ぶと思う………私は飲めないし。
私はいつものように机の上に置いてある写真立てに話しかけた。
「お父さん、お母さん、おはよう。今日も師匠や桜ちゃんと一緒に頑張ります」
「………親父さんとお袋さん、今日も喜んでるだろうな。俺がいることには怒ってるかも知れないが」
「大丈夫ですよ、師匠ならお父さん達も怒りません」
「どっから来るんだろうな、お前のその自信は」
そういって苦笑を浮かべながらコーヒーを飲む師匠。
出来ればもっとこうして話していたいけど、そろそろ朝ご飯とお弁当を作らないと………沢山作らないといけないから、時間がかかっちゃうもんね。
「それじゃあ、朝ご飯作っちゃいますね」
「いつも言ってるが、手伝うぞ?」
「いえいえ、私がしたいからしてるので、これぐらいやらせて下さい」
「………そういうこと言われると、本当に立つ瀬がないんだがな」
「師匠は私の師匠なので大丈夫です」
そういいながら朝食とお昼のお弁当を作り始める。
師匠と出会ってから、1週間が経った。
最近の朝は私が1人暮らしをしていた頃より忙しい。
でも、それは全然嫌なことじゃなくて、寧ろ充実していて凄く嬉しい。
こうやって朝から誰かと話せるような生活が送れるようになるなんて思わなかった。
それに、今は師匠だけじゃなくて………
朝ご飯とお弁当のおかずがある程度作り終わった時、2階からドタバタと物音が聞こえだした。
私と師匠はその音を聞いて、顔を見合わせて笑い合う。
しばらくすると、リビングキッチンの扉が勢いよく開いた。
「朝ご飯は‼︎」
「第一声がそれかよ」
「おはよう、桜ちゃん」
勢いよくリビングキッチンに入ってきた桜ちゃんに私と師匠はそう返す。
それを聞いて、桜ちゃんは気にもしないように師匠に手を振る。
「別にいいじゃない、お腹空いたんだから」
「そうだとしても急ぎすぎだろ。ドスドスいわせながら降りてくるとか、ドゴランかお前は」
「誰が壊獣よ‼︎」
「まあまあ」
桜ちゃんが師匠と戦った次の日、早速桜ちゃんは家に引っ越してきた。
といっても、必要最低限の荷物を移動してきただけで、まだ完全に全部が移動したわけじゃないけど。
流石に毎日接しているからか、桜ちゃんの師匠への態度も、かなり丸くなった。
師匠は最初から桜ちゃんの態度に関しては気にもしてなかったけど、距離が近くなった理由で1番大きかったのは師匠の境遇を聞いて、桜ちゃんが本気で怒ったからだろう。
あの後、師匠は両親のこととかは話さなかったけど、ほんの少しだけ桜ちゃんに自分の境遇を話した。
そのことで、桜ちゃんは周りの師匠への態度に余程腹が立ったのかその人達を見つけ出してぶん殴りに行くとまで言い出して私と師匠に止められたのは記憶に新しい。
桜ちゃん、優しいから………私の時もそうだったように、聞いてる内に影から攻撃している人達に腹を立てたのだろう。
それからは、桜ちゃんの師匠に接する態度は、多分私と話す時ぐらい軟化した気がする。
「それじゃあ朝ご飯食べよう?」
「運ぶのは流石に手伝わせて貰うぞ?」
「それじゃあお言葉に甘えて………」
「あ、私も手伝うわよ‼︎」
「うん、桜ちゃんもお願い」
そういって皆で朝食を準備する。
この瞬間が、私は1番好きだ。
なんだか、失くしてしまった時間が戻ってきたみたいで………ちょっとだけ寂しいけど、それでもやっぱり嬉しい。
『いただきます』
皆で挨拶をしてから食べ始める。
「ん〜今日も遊花のご飯は美味しいわね」
「あはは、ありがとう、桜ちゃん」
桜ちゃんが満面の笑みを浮かべるので、私も凄く嬉しくなる。
そんな桜ちゃんを見て、師匠が口を開く。
「宝月は自分で作ったりしないのか?」
「別に作らないわけじゃないけど、遊花が作るのより美味しくないもの。それなら食べてる方がいいわ」
「言い切ったな。まあ、お前が今のこの家で1番食ってるわけだしな」
「うるさいわね、アンタがあまり食べないだけでしょ?」
「いや、俺も平均的な成人男性ぐらいは食べてるハズだぞ?それより多い宝月がおかしい」
そんな雑談をしながら穏やかな時間が流れていく。
しばらくそんな雑談を続けていると、「さて」と、師匠が少し真面目な表情をした。
私もそんな師匠を見て、表情を切り替える。
桜ちゃんは、どこか呆れた表情を浮かべているけれど。
「もう俺が師匠になって1週間になるんだが、少しはデュエルが怖くなくなったか?」
「はい‼︎毎日、師匠や桜ちゃんが相手になってくれますから」
「まあ、リハビリは必要よね、ずっとまともにデュエルしてなかったんだし」
「それに関しては俺も少し耳が痛い話なんだが………」
「結束はやらなかったんじゃなくて、出来なかったんでしょ?なら、そこを気にしたって仕方ないんじゃない?」
「いや、師匠としてはちょっとな」
「………ホント、真面目よね、アンタ達。毎朝こんなミーティングみたいな時間まで作っちゃって」
桜ちゃんが呆れながら焼き鮭を口に入れる。
そう、この時間はいつも行っている今日やることの確認の時間だった。
やっぱり時間は有限だし、私はただでさえデュエルをしていなかった期間があったのだから、こういうこともしっかりと確認しながらやっていこうというのが、私と師匠の決定だった。
まあ、桜ちゃんには呆れられてるけど。
仕切り直すように師匠が口を開く。
「まあとにかく。少しでも慣れてきたのなら、そろそろ次の段階に移るべきなのかもな。勿論、無理は絶対にさせないし、打てる手は全部打つつもりだが」
「アンタってかなり過保護よね?」
「この次の段階っていうのが遊花には1番鬼門だと思ってるからだよ。だが、プロになるなら絶対避けられない道でもある」
「1番の鬼門、ですか?」
「ああ………次の段階なんだが………」
首を傾げる私に、師匠は少し逡巡し、覚悟を決めたように口を開いた。
「どこかのデュエル大会に出る」
師匠のその言葉を聞いた瞬間、私の胸が思いっきり締め付けられた気がした。
身体が震え、動悸が激しくなり、視界がブラックアウトしそうになる。
しかし、予想はついていたからか、師匠はすぐに肩を抑えて軽く背中を撫でながら優しく声をかけてくれる。
「落ち着け、大丈夫。大丈夫だ。お前の大切な人間は、もう誰もいなくなったりしないよ」
ぽんぽんと優しく背中を叩いてくれる師匠に、私はしばらく大きく深呼吸をしてから少しだけ落ち着きを取り戻した。
桜ちゃんはそんな私達の光景を何故か少し悔しそうに見ながら口を開いた。
「………それは確かに必要なことなのよね?」
「間違いなく、な。事業団ならまだしも、プロ決闘者となると特に大会の頻度は多くなる。プロツアーとかもあるしな。だから小さい大会なりなんなりから出てみて始めないといけないんだが………」
師匠がチラッと私の顔色を見て、首を振る。
「やっぱり、まだ無理そうだな」
「すみ、ません………」
「謝る必要なんてない。俺も通った道だしな」
師匠は優しい目をして私の頭を撫でてくれる。
それに対して桜ちゃんが首を傾げた。
「アンタも?」
「………そういえばそこら辺は宝月には話してなかったな。まあ、機会があれば今度話すさ」
「………分かったわ。それで、アンタの時はどう解決したの?」
「俺の時は状況が状況だったから参考になりそうにないな。俺の場合、プロになれなかったたら極端な言い方をすれば家が無くなるところだったしな」
「………なんか凄い物騒な感じの話になって来たんだけど………」
「あ〜話してないところがあると面倒だな。かといって俺から話すのも微妙な話だし………そろそろ、俺も向き合うべき、か」
師匠はしばらく考え込むと、私の方を向くと覚悟を決めたように頷いた。
「遊花、後は宝月も出来れば」
「私は完全におまけみたいな扱いね。まぁ、分かってるけど」
「なん、ですか?」
まだ身体が震えている私に師匠は優しい笑みを浮かべながら呟いた。
「今日の放課後、『Natural』に行ってくれるか?」
「『Natural』って、こないだ遊花が話してたカードショップよね?」
「ああ。俺も仕事が終わったら向かう。そこで色々、これからの方針とかも話そうと思う………俺も1度挨拶しに行っときたいしな。遊花の約束を果たすために」
「………わかり、ました」
「………まぁ、まだ焦らなくていい。ゆっくり、乗り越えて歩いていけばいいさ」
そう優しく声をかけてくれる師匠に、私は少しホッとしながらも、やっぱり、まだ過去を振り切れてはいないんだなって、少しだけ、気持ちが重くなった。
ーーーーーーー
「遊花、本当に大丈夫なの?」
「うん、もう平気だよ。ゴメンね、今日は1日迷惑かけちゃって」
「何言ってんのよ。私達、友達でしょ?これぐらい大したことないわ」
「………ありがとう」
放課後。
あの後はすぐにデュエルアカデミアに行ったのだが、朝の事が尾を引いていたのか今日は講義の内容も全然頭に入ってこなかった。
あまりにもぼんやりとしていたので桜ちゃんにもかなり心配をかけてしまった。
………分かっていたハズだった。
プロ決闘者になるのであれば大会に出るのは必須事項だ。
だけど、実際に自分が大会に出る姿が思い浮かぶと、どうしてもダメだった。
お父さんとお母さんがいなくなってしまった時の事を思い出して………苦しくて………辛くて………師匠が優しく声をかけてくれなければ私はあのまま倒れていたかも知れない。
師匠が折角私のことを考えて動いてくれているのに、それに応えれない私自身が嫌になる。
私は、この痛みを乗り越えることは出来るんだろうか?
いや………越えるんだ、絶対。
今の私は、色々なものを背負っている。
お父さん達の願い、島さんの思い、そして師匠の信頼。
だからこそ、それだけは裏切りたくない。
こんな私を救ってくれた師匠に、私が前を向いてくれることをきっと望んでくれてるお父さん達のために。
「………よし」
「………あんまり無理するんじゃないわよ」
「えっ?」
思考の海に潜っていた私に桜ちゃんが心配そうな、応援するような、複雑な表情を浮かべていた。
「遊花には、私も、結束も付いてるわ。結束の奴だって、遊花があまり無理しないでいいように色々考えてくれてるみたいだし、きっとアイツが何とかしてくれるわよ」
「桜ちゃん………」
桜ちゃんのそんな言葉に私は思わず頰が緩んでしまった。
だって………
「そんなに師匠のこと信用してくれてるんだ?」
「なっ⁉︎べ、別にそういう訳じゃないわよ‼︎ただ、アイツが遊花のために色々動いてるのは事実だし、それだったら下手な案でも数うちゃ当たると思っただけだから‼︎」
そう言って顔を背ける桜ちゃんを見て、思わず笑いが溢れてしまう。
そっか………そうだよね。
私は、私がこの痛みを超えられるなんて、信じきることは出来ない。
でも、そんな私がこの痛みを乗り越えられるって信じてくれてる、師匠や桜ちゃんを、私は信じればいいんだよね。
「桜ちゃん、本当にありがとう‼︎」
「わあっ⁉︎だから、いきなり抱きついてくるんじゃないわよ‼︎」
顔を真っ赤にして照れている桜ちゃんに抱きつきながら、私は、もう少しだけ頑張れる気がした。
ーーーーーーー
「こ、こんにちは」
「いらっしゃい………おや、遊花君じゃないか」
お店の中に入ると、前来た時と同じようにレジのところで島さんがコーヒーを飲んでいた。
「島さん、し、失礼します」
「ははは、そんなに緊張しなくてもいいんだよ。そちらのお嬢さんはお友達かい?」
「はじめまして。遊花の友達の宝月 桜と言います。遊花がお世話になったみたいで、本当にありがとうございました」
「おやおや、これはご丁寧に。島といいます。気軽におじさんとでも呼んでくれていいからね」
「分かりました。でも、遊花みたいに島さんで」
「ははは、いいともいいとも。好きなように呼ぶといい」
そうやってすんなりと島さんと会話をする桜ちゃんを見て、私は思わず驚いてしまう。
そんな私の様子に気付いたのか桜ちゃんがジト目でこちらを見てくる。
「………何よ?」
「桜ちゃん………敬語使えたの?」
「なっ⁉︎どういう意味よ、それ‼︎」
「だって、師匠に大しては最初から喧嘩売ってたし、その後も『結束』、とか言って、タメ口だし」
「そ、それは、その、最初に強く出ちゃったから、今更態度を改めるなんて、変だし………どう接すればいいか、分かんないし………」
そう言ってごにょごにょと呟き始める桜ちゃんを見て、島さんは面白そうに笑った。
「ははは、これはまた面白いお嬢さんだ。桜君も、遊騎君のことを知っているかい?」
「あ、はい。桜ちゃんも、今私の家に住んでるので」
「成る程ね………うん。遊騎君も、君達が一緒なら、楽しく過ごせてそうだ」
そう言って島さんがうんうんと頷く。
そうだ、それよりも島さんに伝えておかないと………
「あの、島さん」
「ん?どうしたんだい、遊花君?」
「今日、お仕事が終わったら師匠がこの店に来るってーーー」
「本当?」
「ーーーえっ?」
聞こえて来たのは島さんではない人の声。
声が聞こえてきた方向を見ると、お店の入り口にメガネをかけた黒髪でショートボブの小学生程度の少女がいた。
その子の目は真っ直ぐに私を射抜いている。
その少女を見て、島さんも少し驚いた表情を浮かべた。
「ちょうどいいタイミングで来たものだね。いらっしゃい。ところで、そのメガネはどうしたんだい?」
「ん、変装用」
「………それは本当に変装になっているのかい?」
「バレてないから問題ない」
「そういう問題ではないと思うけどね」
島さんが呆れた声をあげている間に少女は私の前に歩いてくる。
「遊騎、来る?」
「えっ?あ、うん………お仕事が終わったら、だけど」
「そう………貴方が遊騎の弟子?」
「えっと、一応、そう、だよ?」
「そう」
私の返答にポツポツと答える少女。
その少女の表情はまるで人形のようにさっきから一切変わらない。
すると、少女はいきなりデュエルディスクを起動した。
「えっ?」
「遊騎の弟子なら、デュエル、しよ?」
「えっと、あのーーー」
「ちょっと待った‼︎」
どう対応しようか迷っていると私と少女の間に桜ちゃんが割り込んだ。
桜ちゃんは屈みこんで少女と目線を合わせながら問いかける。
「あのね、貴方が誰だか知らないけど、いきなりデュエルなんて言われたら驚くでしょ?」
「?そう?」
「普通は驚くの‼︎それに、その子はーーー」
「でも、遊騎の弟子、興味ある。なら、デュエルするのが1番」
「あーもう‼︎人の話を聞きなさいよ‼︎分かったわ‼︎そんなにその子とやりたいんだったら私に勝ってからにしなさい‼︎」
「さ、桜ちゃん⁉︎」
桜ちゃんが相手って、しかもその目、小さい子だからって手加減する気とか無いよね?
トラウマ植え付ける気だよね?
そんな桜ちゃんに少女は顔を向ける。
「貴方に勝てば、いい?」
「ええ。勝てたらこの子とデュエルしてもいいわ」
「ん、分かった。なら、早く終わらせよう」
「なっ⁉︎」
少女の言葉に桜ちゃんの額に青筋が浮かぶ。
あわわ、どうすれば………慌てた様子で島さんの方を見るが、島さんは呆れた表情を浮かべるだけだった。
「彼女は相変わらずだね」
「し、島さん‼︎止めなくていいんですか⁉︎」
「何、すぐに終わるからね。それよりも、遊花君もデュエルの準備をしておいた方がいいよ。彼女も手加減する気はなさそうだから」
「………えっ?」
島さんの言葉に私は思わず驚きの声をあげる。
だって、その言い方はまるでーーー
「早く、やろう?」
「舐めてくれるわね………後悔させてあげるわ‼︎」
ーーー桜ちゃんが負けることが分かってるみたいだ。
『決闘‼︎』
桜 LP8000
少女 LP8000
ーーーーーーー
桜 LP8000
少女 LP8000
「先攻は私………召喚僧サモンプリーストを召喚」
〈召喚僧サモンプリースト〉☆4 魔法使い族 闇属性
ATK800
少女の前に現れたのは黒いローブを纏った魔法使い。
しかし、その魔法使いは直ぐにその場に座り込む。
「召喚僧サモンプリーストは召喚時、守備表示になる」
召喚僧サモンプリースト
ATK800→DEF1600
「召喚僧サモンプリーストの効果、1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて、デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。私は終わりの始まりを捨てて、デッキから終末の騎士を特殊召喚」
〈終末の騎士〉☆4 戦士族 闇属性
ATK1400
サモンプリーストが呪文を唱えると、サモンプリーストの横に黒い騎士が現れる。
「終末の騎士の効果、召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。 私はデッキからゾンビキャリアを墓地に送る。そしてレベル4、召喚僧サモンプリーストと終末の騎士でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」
サモンプリーストと終末の騎士が光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。
そして渦が爆けるとそこにいるのは王者の風格を持つグレムリン。
「群れを伴い進撃せよ、ランク4、キングレムリン」
〈キングレムリン〉★4 爬虫類族 闇属性
ATK2300
「キングレムリンの効果、王者の呼び声。オーバーレイユニットを1つ使い1ターンに1度、デッキから爬虫類族モンスター1体を手札に加える。私はデッキからカゲトカゲを手札に加える」
キングレムリンの咆哮が響き、少女の手札にカードが加わる。
「私はカードを2枚伏せてターンエンド」
桜 LP8000 手札5
ーーーーー ー
ーーーーー
◯ ー
ーーーーー
ーー▲▲ー ー
少女 LP8000 手札2
少女のターンは凄く淡々と進んでいった。
それを見て桜ちゃんが少し顔を引き攣らせる。
「なんだか不気味ね………さっさと終わらせてあげるわ‼︎私のターン、ドロー‼︎アンタのキングレムリンをリリースしてアンタのフィールドに怒炎壊獣ドゴランを攻撃表示で特殊召喚よ‼︎」
「‼︎」
〈怒炎壊獣ドゴラン〉☆8 恐竜族 炎属性
ATK3000
キングレムリンのいた場所に地割れができ、キングレムリンが呑み込まれ、その代わりに巨大な地竜が現れた。
これ、桜ちゃんのお得意のパターンだ。
「さらに相手フィールドに壊獣モンスターがいるため、手札から壊獣は攻撃表示で特殊召喚することが出来る‼︎私の切り札の登場よ‼︎あなたの全てを壊してあげる‼︎雷撃壊獣サンダーザキング‼︎」
〈雷撃壊獣サンダーザキング〉☆9 雷族 光属性
ATK3300
「攻撃力3300………」
「そしてこれが私の相棒よ‼︎月より来たる永遠の姫‼︎
〈妖精伝姫-カグヤ〉☆4 魔法使い族 光属性
ATK1850
現れたのは月のマークが入っている扇子を持ったお姫様。
桜ちゃんが相棒と呼ぶモンスターだ。
「妖精伝姫-カグヤの効果発動!召喚に成功した時、デッキから攻撃力1850の魔法使い族モンスター1体を手札に加える。私は2体目の妖精伝姫-カグヤを手札に加えるわ。そしてこのカードは攻撃表示で特殊召喚出来るわ‼︎来なさい、ジェスターコンフィ‼︎」
〈ジェスターコンフィ〉☆1 魔法使い族 闇属性
ATK0
現れたのは球に乗った道化師のモンスター。
「攻撃力0のモンスターを攻撃表示?何か効果がある?」
桜ちゃんの行動に少女は首を傾げている。
こ、この流れは完全に桜ちゃんはやる気だ。
「魔法カード、左腕の代償‼︎このカード以外の自分の手札が2枚以上の場合、その手札を全て除外し、このターン魔法・罠カードをセットできなくなる代わりに発動‼︎デッキから魔法カード1枚を手札に加えるわ。私が手札に加えるのはヘルテンペスト‼︎」
「‼︎成る程………」
「バトルよ‼︎ジェスターコンフィで怒炎壊獣ドゴランを攻撃‼︎スーサイドマジック‼︎」
コンフィはドゴランに火炎を吐かれ、そのまま消滅する。
桜 LP8000→5000
桜ちゃんのライフが大きく減る。
そしてそれはあのカードの発動の合図。
「3000ポイントの戦闘ダメージを受けた時、速攻魔法発動、ヘルテンペスト‼︎このカードは3000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時に発動する事ができるわ。お互いのデッキと墓地のモンスターを全てゲームから除外する‼︎」
桜ちゃんがそう宣言するとお互いのデッキ、墓地からモンスターが一気にいなくなる。
そしてまだ桜ちゃんの戦術は終わっていない。
「そしてデッキから除外されたネクロフェイスの効果発動‼︎このカードがゲームから除外された時、お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する‼︎」
「なら、こちらもデッキから除外されたネクロフェイスの効果発動。このカードがゲームから除外された時、お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する」
「‼︎あら、貴方のデッキにも入っていたのね。それは好都合だわ」
少女のデッキが更に減り、残りデッキはあと2枚になってしまった。
ほ、本当に容赦がなさすぎるよ桜ちゃん‼︎
「そして妖精伝姫-カグヤの効果発動‼︎アンリーゾナブルディマンド‼︎1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動‼︎相手はそのモンスターの同名カード1枚を自身のデッキ・エクストラデッキから墓地へ送ってこの効果を無効にできる。墓地へ送らなかった場合、このカードと対象のモンスターを持ち主の手札に戻す。因みにこの効果は相手ターンでも発動できるわ。対象は勿論怒炎壊獣ドゴランよ」
「私のデッキに怒炎壊獣ドゴランはいない」
「怒炎壊獣ドゴランと妖精伝姫-カグヤは手札に帰るわ。そしてこれで貴方の場はガラ空きよ。雷撃壊獣サンダーザキングでダイレクトアタック‼︎グラビティレイ‼︎」
「………」
少女 LP8000→4700
サンダーザキングの三つ首からレーザーが放たれ、少女のライフが大きく削られる。
しかし、少女はそれでも表情が動かない。
あんなに追い詰められているのに、どうして………
桜ちゃんも不気味に思ったのか、その感覚を拭い去ろうとするように顔を大きく振る。
「私はこれでターンエンド‼︎さぁ、勝てるものなら勝ってみなさい‼︎」
桜 LP5000 手札2
ーーーーー ー
ーー◯ーー
ー ー
ーーーーー
ーー▲▲ー ー
少女 LP4700 手札2
「私のターン、ドロー」
「さぁ、貴方のデッキは後1枚よ。どうするかしら?」
「………名前」
「えっ?」
「名前、教えて?」
「………私のってこと?」
「ん」
「………宝月 桜よ」
「宝月 桜………ん、覚えた」
少女の突然の言葉に桜ちゃんが首を傾げる。
リベンジの為に名前でも聞いてるのかな?
そんなことを思った私にーーー
「桜。貴方、強い。戦術も、凄く面白い」
「えっ?あ、うん。ありがとう?」
「だからーーー
ーーー私に勝つの、楽しみにしてる。今日は私の勝ちだから」
「………えっ?」
ーーー圧倒的な自信を持ってその言葉は紡がれた。
「召喚………
〈終焉の精霊〉☆4 悪魔族 闇属性
ATK?
現れたのは黒い精霊のような姿をした小さな悪魔。
しかし、その身体は急激に膨れ上がる。
「終焉の精霊の永続効果、グリーフアブソーブ。このカードの攻撃力・守備力は、ゲームから除外されている闇属性モンスターの数×300ポイントになる。私の除外されてる闇属性モンスターは21枚」
「わ、私は7枚………」
「合計28枚。つまり………」
終焉の精霊
ATK?→8400
「攻撃力………8400」
「因みに伏せカードに闇次元の解放と今引いたのがDDR。除外されている闇属性モンスターを特殊召喚出来るから手札に引けていなくてもヘルテンペストを使われた時点で勝ちは決まってた」
淡々と告げる少女に、桜ちゃんは悔しそうに顔を伏せる。
しかし、直ぐに頭を振って少女に笑いかけた。
「次は勝つわ」
「ん、楽しみにしてる。バトル。終焉の精霊で雷撃壊獣サンダーザキングを攻撃。ジエンドオブカタストロフィ」
サンダーザキングより遥かに大きくなった終焉の精霊はサンダーザキングを片手で握り潰した。
桜 LP5000→0
ーーーーーーー
「本当に、容赦が無いね。まあ、桜君もかなりのものだったし、彼女が気に入ったのなら、才能はあるってことだね」
「嘘………」
私は目の前の光景が信じられなかった。
桜ちゃんはデュエルアカデミアでトップ10に入る実力者だ。
そのことは師匠だって認めていたし、実際師匠もかなり苦戦して勝利した。
しかし、今目の前にいる少女はそんな桜ちゃんのほぼ最高といえる動きを受けながらもあっさりと勝ってしまった。
「勝ったから、いい?」
「………デュエルでの約束を違えたりなんてしないわ」
「ん、ありがとう、桜。凄く楽しかった」
そういって少女は相変わらずの無表情で桜ちゃんにお礼を言うと、デュエルディスクを構えて私の前に立つ。
「これで、貴方と戦える」
「っ⁉︎」
そう少女が言うと、一瞬、少女の身体から黒い何かが見えた気がした。
私もデュエルディスクを起動して構える。
この人は、強い。
油断したら、すぐにやられる。
「………行きます‼︎」
「お手並み、拝見」
『決闘‼︎』
遊花 LP8000
少女 LP8000
次回予告
桜に勝利した謎の少女とデュエルをする遊花。
その圧倒的な実力に為す術もなく追い込まれていく。
そのデュエルの先に、彼女は一体何を見るのか?
次回 遊戯王Trumpfkarte
『呪われし邪念』
次回、遊花対謎の少女。
今回はあえて少女の使うカードはよく見る汎用系のカードで纏めてみました。(ヘルテンで使えなかったとも言う)
次回は彼女の本当のデッキが明かされるかも。
そして一歩進んだと思ったらまた過去に足を引っ張られる主人公。
主人公達が過去から抜け出せるようになるのはいつの日になるのやら。
と言ったところで今回はお開きです。
ではでは〜