遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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今回は前半遊花、後半遊騎視点でお送りします。
遊花視点は明るく、遊騎視点はちょっぴりシリアスです。






第12話 夢に至るための道

 

 

Trumpfkarte( トルンプフ)』というチームがある。

 

ドイツ語で切り札を意味する名が付けられたそのチームは、4年前に結成され、結成からたった2年、たった4人という人数でプロチームとしての世界ランキングで2位にまで上り詰めた実力派のプロチームだ。

 

そしてそのチームの現エース、世界ランキング4位で、どんな状況であろうと変わらない無表情とそのエースモンスターから『氷の女王』と呼ばれ恐れられている人物、それが冬城 闇という人物だった。

 

人物だった、ハズなんだけど………

 

「どうして連絡してくれなかったの?」

 

「いや、お前らだって忙しいだろう?俺が抜けてからは3人になったんだし」

 

「遊騎の分は社長が埋めてるから大丈夫。というより、遊騎が戻ってくれば問題ない」

 

「積極的に調べてはなかったけど、アイツが出てんのかよ。自分でデュエルするより他人がデュエルするのを眺める方が好きな奴なのに………というか、俺はリーグ追放されてるんだぞ?戻ったって役に立たないだろう?」

 

「社長から今まで参加出来なかった実業団も巻き込んで一緒に新リーグを作ろうって話もいくつかのチームと合同で出てるって聞いたから問題ない。というより、遊騎のイカサマ騒動を信じてるのなんて一般人と新規と古参のほんの一握りのプロぐらい。プロでまともに遊騎とデュエルした人はほとんど信じてない上、あのリーグの審判の何人かがきな臭いという話も出てる。むしろ潰してやろう」

 

「頼むから俺がいないところで事件を大きくしないでくれよ………」

 

明らかに憤りを隠せないといった様子で師匠を呆れさせている様子を見ると全然そういう人物に見えない。

 

というより、そんなプロリーグの闇みたいな話をこんなところでしていいのだろうか?

 

私は桜ちゃんの方をちらりと見ると桜ちゃんもこちらを見てふるふると首を振って耳を塞ぐようなジェスチャーをした。

 

どうやら関わるだけ疲れそうだから放っておこうということらしい。

 

そしてさらに闇さんから爆弾発言が続く。

 

「そもそも『Trumpfkarte』が出来たのは遊騎とこの店の為なのに本人がいないなら意味がない」

 

「いや、それはだな………」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい‼︎今なんか凄い話が出なかった⁉︎」

 

流石に聞き流せなかったのか桜ちゃんが止めに入る。

 

私も、その話は少し気になった。

 

師匠がプロ決闘者になったのはこのお店を立て直す為だって言うのは聞いていた。

 

でも、そのチームが出来たのも師匠が理由って言うのはどういうことなんだろう?

 

桜ちゃんの言葉と私の反応に闇さんは首を傾げ、師匠を見る。

 

「言ってないの?」

 

「言えるかよ、お前らに迷惑がかかるかも知れないのに。そもそもプロを追放されてからは『Trumpfkarte』って名前だって出さないようにしてたんだ」

 

「むぅ………むしろ出してくれれば良かったのに。そうすればプロリーグから簡単に抜けれて別のリーグを作る口実になったのに」

 

「………お前自分が爆弾発言してる自覚あるか?俺の時でも世界ランキング9位の奴が急に消えるって問題が出たのに、お前は4位だしチームはまだ2位のままなんだろ?」

 

「他人の評価とか興味ない。そして冤罪をかけてくる外道にかける情けもない。それが私達チームの総意」

 

「なんでそんな物騒なことになってるんだよ………いや、俺のせいなのは分かるけどさ」

 

師匠が頭が痛いという風に額に手をやる。

 

そんな師匠に桜ちゃんが問いかける。

 

「ちょっと‼︎私の質問に答えなさいよ‼︎世界ランキング2位のチームの結成の理由がアンタとこの店にあるってどういうことなの⁉︎」

 

「あ〜分かった分かった。説明するからちょっと待てって」

 

師匠は明らかに疲れた表情を浮かべながら、1つ咳払いをして話しはじめた。

 

「コホン………それじゃあ話し始めるわけなんだが、遊花は島さんから聞いてると思うが、先ずはこの店が俺の行き着けの店でこの店が悪化して潰れかけた時期があった」

 

「今は違うの?来た時も人がいなかったけど」

 

「………どうなの、島さん?」

 

「『Trumpfkarte』の皆が新カードを手に入れる際には全部この店に発注してくれるようになったから、ほぼお抱えの店になって潰れることはなさそうだよ。勿論、他のお客さんも来てくれるしね」

 

島さんが桜ちゃんのあんまりな言い方に苦笑しながら答える。

 

師匠が「そんなことになってたのか………」なんて呟きながらも話を戻す。

 

「まぁ、その際にその時はまだ社長ではなかったけど、『Trumpfkarte』を経営してる社長がちょうど新しい事業としてプロチームを作ろうとしてたみたいで、その人と偶々縁があって話してる内にこの店のこととか、まぁ色々合ってな。それならスポンサーになるから、プロ決闘者になってこの店を盛り上げてみないかって言われて、俺と闇はプロになったんだ」

 

「私はその場にいただけのほとんどおまけみたいなものだったけど。当時の私は強くもなかったし、社長は遊騎のデュエルがもっと見たかったからプロに誘ったんだもん。いわゆる金持ちの道楽」

 

「いや、アイツは闇のこともかなり評価してただろ?『絶対この子は輝くのです‼︎間違いないのです‼︎』とか言われてたし。そしてアイツのアレは金持ちの道楽も半分はあるだろうが、もう半分はアイツがお人好しなだけだ」

 

「えっと、それじゃあ何。あの世界ランキング2位の超少数精鋭チームが出来たのは………」

 

「お人好しの社長が偶々見つけた遊騎を気に入って、遊騎の思いを汲んでこのお店を立て直す手伝いをしたいと思い、ついでに自分が気に入った遊騎のデュエルがもっと見たいから作られた。『Trumpfkarte』のメンバーは元々この店の常連だった人間で構成されてるし、メンバーを増やさなかったのも単純にこの店の常連でプロ決闘者として戦える人がいなかったというだけ」

 

師匠と闇さんが語ったあまりの真実に私も桜ちゃんも絶句する。

 

別に意図したわけでもなく、ただ自分達の思いを果たしたかったからやっていたらそうなった。

 

この人達にとって、本当に自分達の評価はどうでもよくて、このお店を、自分達の居場所を守ろうと動いた結果が、今の状況に繋がっているのだ。

 

「まあ、それがこのざまだけどな。俺のせいで島さんにも、拾ってくれたアイツにも、闇達チームの仲間にも迷惑をかけちまったし」

 

「私達は全然気にしてない。皆まだ貴方の為に動いてる。遊騎なら知ってるでしょ?『Trumpfkarte』は底無しの"お人好し集団( バカ)"なの」

 

「………それでも、俺は戻らないよ。お前らに迷惑をかけたくない」

 

「遊騎………」

 

少し悲しそうな目をする闇さんに、師匠は苦笑しながら応える。

 

「そんな顔するなって。別に、後ろ向きな考えで言ってるわけじゃないんだ。俺にはもう、自分の思いを託すべき奴が見つかった。だから、今はそいつのことを見ていてやりたい」

 

そういって師匠は私のことを見る。

 

私は、胸の中が熱くなった気がした。

 

師匠は本気で私に全てを託してくれている。

 

それが堪らなく嬉しかった。

 

師匠に初めて会った時、私はまだデュエルをすることが怖かった。

 

空閑君にヴァレルソードドラゴンを盗られてしまった時ですら、失うことが怖くて、デュエルすることが出来なかった。

 

そんな私を、師匠は助けてくれた。

 

空閑君からヴァレルソードドラゴンを取り返してくれて、私に、もう1度デュエルが楽しいものだっていうことを、見せてくれた。

 

私の師匠に、なってくれた。

 

やっぱり、私は師匠の期待に応えたい。

 

それがどんなに険しい道だったとしても、偶然出会っただけの、こんなにも弱い私のことを信じてくれる師匠の為にも。

 

師匠の視線が私に向いていることに気づいたのか、闇さんは1度こちらを見ると、少しの間目をつぶってから、師匠に向けて、本当に少しだけ笑った。

 

「分かった、無理強いはしない。でも、いつかまた遊騎と一緒に、皆の前でデュエルするのは諦めないからね?」

 

「………ふっ、分かったよ。いつかまた、そんな日が来たらな」

 

「ん。それはそれとして、それなら私にも考えがある」

 

「考え?」

 

そういうと、闇さんは私の前にやってくる。

 

そして私の目を見ながらはっきりとした声で告げた。

 

「遊花をプロ決闘者にするの、私も手伝う」

 

「えっ⁉︎」

 

闇さんの宣言に私は驚いて声を漏らす。

 

世界ランキング4位の人に手伝って貰うって、なんだか凄く大ごとになってきているような………いや、でもそれなら師匠だって元世界ランキング9位らしいし………もしかして、今更?

 

そんな闇さんを見て、師匠も思わず苦言を呈する。

 

「いや、手伝うも何もお前だってプロリーグで忙しいだろうが」

 

「遊騎、遊花の家に泊まってるって聞いた。なら、私も遊花の家に泊めてもらう。遊花、ダメ?」

 

「えっ⁉︎あの、確かに部屋は空いてますけど………」

 

「ん、私も1人暮らしだから問題ない。一緒に過ごすなら仕事が終わった後やオフの時に教えられる。完璧」

 

「はぁ⁉︎」

 

その宣言に、流石に師匠も驚きの声を上げる。

 

そんな師匠を闇さんは真っ直ぐに見つめ返す。

 

「遊騎の弟子なら私の弟子も同然。それに、遊騎の後を継ぐというのなら、遊花がくる場所は決まってる」

 

「おい、それって………」

 

「ん………遊花を、『Trumpfkarte』に入れる。遊騎だって、本当はそう考えてるハズ」

 

「えっ⁉︎」

 

私を、世界ランキング2位のチームに⁉︎

 

闇さんの発言に、師匠も困ったような顔をする。

 

「………まあ、そうなればいいなとは思っていたが………」

 

「大丈夫、私が認める。私と遊騎の推薦なら社長達は拒否しない。それに、さっき遊花とデュエルして私にも分かった。遊花は間違いなく、遊騎と同じぐらい強くなる。私にだって勝てるぐらいに強くなる。だったら、社長達にもすぐに認められる」

 

「や、闇さん………」

 

まさか、さっきのデュエルでそこまで評価されてるとは思わなかった。

 

私は終始防戦一方だったハズなのに………

 

「それに、さっきのデュエルを見ててちょっと勿体ないところがあることにも気付いた。遊花、EXデッキのモンスター、リンクモンスターしか持ってない?」

 

「えっ?あ、はい」

 

「そこが少し勿体ない」

 

「えっ?」

 

闇さんの言葉に首を傾げる。

 

リンクモンスターだけなのが、勿体ない?

 

「遊花のデッキは固い防御から展開してカウンターをすることが得意なように見えた。でも、リンクモンスターだけだと選択肢自体が少なくなる。私の見立てでは、遊花のデッキはもっと沢山の可能性がある」

 

「沢山の、可能性?」

 

私は思わず自分のデッキを見る。

 

私のデッキに、そんな可能性が?

 

「ん。金華猫もいたからエクシーズ召喚は簡単だし、チューナーさえいればシンクロ召喚も出来る。手札の維持も上手だったから融合も出来るかも知れないし、サクリボーには儀式関係の効果があったから儀式召喚だって出来る。本当の意味で、遊花のデッキには無限の可能性があるの」

 

「他の召喚方法………」

 

確かに、私は今までリンク召喚しか使ったことがなかった。

 

でも、闇さんは私のデッキには無限の可能性があると言ってくれてる。

 

「遊騎は多分、遊花がデュエルをする時の気持ちとか、デュエルを楽しめるようになることを今教えてくれてると思う。だから、私は、遊花が全力で楽しいデュエル出来るような、遊花のデッキの特色を壊さず、遊花にあった戦術を見つけるお手伝いがしたい」

 

「私にあった戦術………」

 

「幸い、私は全部の召喚方法が使える( ・・・・・・・・・・・)から、遊花にしっかりと教えることが出来る」

 

「えっ?でも、さっきのデュエルではエクシーズ召喚とリンク召喚しか………」

 

私がそういうと闇さんは心なし誇らしげに答える。

 

「これでも、世界ランキング4位だから。まだまだ、今の遊花相手なら全力は見せない。ヴェルズウロボロスを出した時に言ったハズ、私の切り札の1枚( ・・)だって」

 

「むっ」

 

分かっていたことだが、それは少し悔しかった。

 

さっきのデュエル、私は私の全力で闇さんとデュエルした。

 

でも、闇さんからはまだまだデュエルをしている際に他の切り札を隠せる程の余裕があったということだ。

 

そんな私を見て、闇さんは挑発するように声をかけてくる。

 

「悔しい?」

 

「はい………でも、いつかは絶対に闇さんの切り札を全部出させて見せます‼︎」

 

「ん、その意気や良し」

 

「………闇さん、私に教えてくれませんか?私に合った戦い方を」

 

「ん、約束したから。私の場所まで辿り着くの、いつまででも待ってるって。だから、そのためのお手伝い、頑張る。それに遊花が『Trumpfkarte』に来てくれるなら、私の後輩になる。後輩の面倒を見るのも、先輩の務め」

 

「‼︎なら、これからよろしくお願いします、闇先パイ‼︎」

 

「ん、凄くいい響き。これからもよろしく、遊花」

 

「はい‼︎」

 

笑い合う(闇先パイは無表情に見えるけど多分笑っているハズ)私達を見て、呆れたような声が聞こえてくる。

 

「なんか私達空気になってるけど、いいの?完全に忘れられてない?私達がいるの」

 

「まあ、家主は遊花だし、強くなりたいというのも遊花の意思だ。なら、俺はそれを尊重したい」

 

「なんか、遊花が一気に遠いところに行っちゃった気分ね」

 

「寂しいか?」

 

「まさか。すぐに追いついてやるわよ。それに、少し離れたぐらいで、友達ってことは変わらないわ」

 

「………そうか」

 

「うんうん、最近は本当にいいものがよく見れる。未来のプロ決闘者に期待だね」

 

わ、忘れてたわけじゃないデスヨ?

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「ふぅ………少し疲れたな」

 

あれから、すぐに遊花の家に移るという闇の要望で、闇の借りていたアパートから闇の荷物を運び出して遊花の家に移動させていたら、時刻はすっかり遅くなってしまった。

 

全員で協力したから早めに片がついたが、それでも終わった頃には8時半を回っていたので、今日の晩御飯は外食ということになってしまい、結局遊花の家に戻ってくる頃には10時前になってしまった。

 

遊花と宝月は明日もまたデュエルアカデミアがあるからもう眠ってしまっているだろう。

 

そういう俺もそろそろ寝ないと明日の仕事に響きそうだ。

 

そんなことを考えていると、俺の部屋の扉が控えめにノックされた。

 

こんな時間に来るのはアイツしかいないだろうと辺りをつけ扉を開けると、そこには予想通り、パジャマ姿の闇が立っていた。

 

「少し、お話ししたい。いい?」

 

「ああ、別に構わない」

 

「ん、お邪魔、します」

 

そういうと闇は俺の部屋に入ってきて、置いてあった椅子の上にちょこんと座った。

 

それに対して、俺も床に敷いていた布団の上に座り込む。

 

話したいことはたくさんあるハズなのに、なんとなくお互いにどう話題を切り出せばいいのか分からず、辺りを静けさが支配する。

 

そんな時、お互いの視線が向いたのは俺が机の上に置いてあったデッキだった。

 

お互いの視線がデッキに向いたことが分かり、思わず俺達は笑いあった。

 

「なんというか、相変わらずだな、俺達も」

 

「ん、そうだね。私達が初めて出会った時も、『Natural』で遊騎がデッキを調整してるのを見かけたことだし」

 

「あの頃は驚いたんだぞ?デッキを弄ってる俺を無表情のままジッと見てくるんだから。今なら、お前の雰囲気で感情の動きが多少分かるが、あの頃はそれも分からなかったし」

 

「ん、褒めて遣わす」

 

「どこ目線のコメントなんだよ、それ」

 

こうして、たわいもない軽いノリで話せる闇との会話は好きだ。

 

どうしようもないこと、苦しいことを考えないで済んでいたから。

 

多分、お互いにそれが分かっているのだろう。

 

だから、あの頃の俺達にはそのことが凄く救いになっていたんだ。

 

でも、今はそうじゃない。

 

こういう会話をするのも好きだが、今はそれよりも語るべきことは沢山あるだろう。

 

だから、俺は意を決して話を切り出す。

 

「闇」

 

「ん?」

 

「………悪かった」

 

「………」

 

「何も言わずにチームを辞めたことも、それから連絡を取ろうとしなかったのも、結局さ、怖かったんだよ。世間が、じゃない、お前達に嫌われるのが、何よりも怖かった。そんなこと、ありえるわけないのにな。親友のお前達を、信じきることが出来なかった」

 

「………ん、本当に、バカ」

 

「ああ」

 

「バカバカ、大バカ」

 

「ああ」

 

闇の言い分に、俺は何も返すことは出来ない。

 

返しちゃいけない………だって、返してしまえば、それを悲しんでくれた闇を否定することになってしまうから。

 

「私、あの頃辛かった」

 

「………」

 

「遊騎がいなくなって、したいことが分からなくなった。デュエルの勝率もすっごく落ちた。デッキも、私に応えてくれなくなった」

 

「………さっきの遊花との会話で薄々気付いてたよ。デッキ、変わったんだな。『ヴェルズ』なんて、俺は聞いたことがないカードだったし。異名は変わらなかったから、相変わらず『氷結界』を使ってるんだと思ってたよ」

 

そう、闇は元々『ヴェルズ』なんていうカードは使っていなかった。

 

彼女が好んで使っていたのは『氷結界』。

 

彼女がプロ決闘者になる時、彼女の希望から皆で強力して組んで送ったデッキだった。

 

そんな俺の言葉を聞いて、闇は少し寂しそうな声を出す。

 

「あのデッキは、願掛けだったから。多分、使えなくなったのは、誓いを破った私への罰」

 

「願掛け?」

 

「ん………氷結界を使ってたことにはちゃんと意味があったの。そして、今のヴェルズにも。氷結界に込めていたのは、遊騎のこと」

 

「俺?」

 

突然出てきた俺の名前に思わず首を傾げてしまう。

 

そんな俺に闇は頷きながら答えてくれる。

 

「私は、あの火事の時、遊騎の心を救えなかった。私は、あの時側にいたのに、社長に会うまで、遊騎を救うことが出来なかった」

 

「っ⁉︎闇………お前、そんなこと気にしてたのか?」

 

「当たり前………だって、あの頃1番遊騎の近くにいたのは私。なのに、私は遊騎に対して何も出来なかった………友達だと思っていたのに………」

 

そう言って目を伏せる闇に、俺は何も言えなくなる。

 

あの日、俺の両親が亡くなったあの火事の日。

 

闇は、俺と一緒にあの現場にいた。

 

闇も俺と同じで『Natural』で大会に出ていて、そして夜遅くなったから一緒に島さんに家まで送って貰うところだった。

 

そして、彼女も見たハズだ。

 

炎によって燃え尽きる俺の家を。

 

それからのこと、俺が荒れていた頃のことは、正直あまり覚えていない。

 

でも、その時には闇の姿はあったと思うけど、会話らしい会話は出来ていなかった気がする。

 

それは、彼女のせいじゃなく、間違いなく俺の責任で。

 

それは、彼女が背負わなくてもいいハズのものなのに………無表情でも、心優しい彼女は背負ってしまったのだろう。

 

「だから、プロ決闘者になる時に氷結界を選んだの。もし、また遊騎があの火事の時みたいに傷ついた時、その火も全部凍りつかせて遊騎を守れるようにって」

 

「お前………そんな理由で氷結界を使ってたのか?」

 

「だって………遊騎は私に初めて出来た友達だったから。無表情で無感情だった私の、初めてのお友達だもん」

 

そういう闇に俺はなんて声をかけていいか分からなかった。

 

そこまで自分の存在が闇にとって大きかったなんて、分からなかったから。

 

「だから、誓いが守れなかった私を、氷結界は怒っちゃったの。三龍は、まだ力を貸してくれるんだけどね。虎とか、他の子は無理だった。そんな時だね、ヴェルズに会ったのは」

 

そういう闇の言葉から感情は読めない。

 

でも、その言葉には様々な思いが詰まっている気がした。

 

「初めて見るカードで、戦い方も全然違うハズなのに、どうしてか私の感覚に馴染んだ( ・・・・)。だから、今はヴェルズを使ってる。ヴェルズにも、込めている願いはあるけれど」

 

「ヴェルズに込めている願い?」

 

「ん………でも、それは内緒だよ?話したら、叶わなくなりそうだから」

 

そう言って話はここでおしまいとばかりに今度は俺に問いかけてくる。

 

「今度は私の質問。遊花と桜から聞いたけど、遊騎だってヒロイックなんて使ってなかった( ・・・・・・・)でしょ?あのカード達は?」

 

闇の質問に、俺も思わず苦笑を浮かべる。

 

何故なら、その理由は闇と同じものだから。

 

「理由はほとんど闇と同じだよ。デッキの中に入れても、あのカード達だけ、どうしても引けなくなった。絵札の三銃士は、変わらず力を貸してくれるんだけどな………多分、逃げた俺に愛想を尽かしたんだろうな」

 

「………ヒロイックにしたのは?」

 

「ん〜直感みたいなものかな?今の俺には、ちょうどいい気がしたんだよ。逃げ出したのに、諦めきれない。半端な俺には、さ」

 

「………そっか」

 

それ以上、闇は何も言わなかった。

 

多分、言いたいことはあったんだと思う。

 

でも、言わないでくれた。

 

だから、俺は他のことを闇に聞いてみることにした。

 

「闇、遊花のこと、どう思った?」

 

そんな俺の漠然とした質問の意図も分かったのだろう、闇は少し思い返しながらもはっきりと断言した。

 

似過ぎてる( ・・・・・)ね、遊騎に」

 

「………やっぱりそう思うか?」

 

「ん、ここまで来るとタチが悪いレベル。話は聞いたけど、まるで同じ人生を他の誰かで再現してるんじゃないかって思うぐらい、境遇、出来事が似通ってる。違いだって性別とか事故の内容ぐらいだし、流石に気味が悪い」

 

闇の分析に俺も頷く。

 

まあ、流石に人生の再現は無いにしても本当に笑えない。

 

俺の両親も遊花の両親も亡くなったのはデュエルアカデミア1年生の時、そしてその後にイジメにあい、3年生の時に誰かに救われる。

 

おまけにデュエルが好きで諦めきれないところまで似てるのは、並行世界の自分だとか言われても違和感はないレベルだ。

 

それぐらい、栗原 遊花の人生は結束 遊騎の人生に似ているのだ。

 

だとすれば、遊花が辿る道筋は………と不安になってしまっても仕方がないことだろう。

 

だけど………

 

「俺は、初めて遊花に会った時、運命に出会ったと思った。俺と同じ道を辿るものだと」

 

「………」

 

「けどさ、だったらなおのこと認めてやれない。それが運命だなんて、決めてやるもんか。遊花は絶対に、俺のようにはさせない」

 

「………ん、私も同意見」

 

「もし、遊花が俺と同じ運命を辿るのなら、俺は今度こそ、何があろうと、運命と戦う。そして絶対に打ち勝つ。遊花の意思は、誰にも、それこそ運命にだろうと曲げさせねぇ」

 

「ん………でも、きっと大丈夫。だって、遊花の周りには沢山の優しい存在がついてる。遊騎に桜に、私、他にも色々なものがあの子の側にいる。だから、きっと大丈夫」

 

そういって優しい表情で笑う闇に俺も笑い返す。

 

そう、今度は間違えない。

 

絶対に、運命に打ち勝つ。

 

それが、遊花の師匠として、俺に出来ることのハズだから。

 

「さて、そろそろ寝るか。お前も明日はプロリーグの試合があるんだろ?」

 

「ん、ついでに遊花の話もしてくる。とはいえ、まだまだ遊花には超える壁がありそうだから、面会はまだになるけど」

 

「とりあえず、大会に出れる精神状態には持っていってやらないとな。今の段階ではその時点でキツい」

 

「もうすぐデュエルアカデミアは夏休みだから、その期間に大きな大会には出れるようにすればいい。それまでに精神的に安定するように、支えてあげよう?」

 

「だな。そういえば『Trumpfkarte』に入って貰うならスートも引き継ぎかな?」

 

『Trumpfkarte』のメンバーはそれぞれトランプのスートの名前が与えられ、それで呼ばれるようにしていた。

 

例えば、辞める前の俺はスペード、闇はハートのスートが与えられてた。

 

そんな俺の言い分に、闇は忘れていたとばかりにパジャマのポケットから何かを取り出した。

 

「ん………忘れるところだった。これ、持ってて」

 

「ん?ネックレス、か?これ?」

 

闇から渡されたのは濃緑色半透明で赤い斑点が見える宝石をスペードの形に加工したネックレスだった。

 

「遊騎がまた勝手にいなくならないように作った。作ったばかり( ・・・・・・)だから不恰好だけど、危ない時には守ってくれると思うから、つけておいて。私も同じようなものがあるから、きっと危ないことがあったら私にも伝わるハズ」

 

「手作りの御守りみたいなものか。女の子ってそういうの好きだよな。というか、これ宝石かなんかじゃないのか?」

 

「大丈夫。これなら簡単にいくらでも( ・・・・・・・・)手に入るし、加工できるから」

 

「そんなものがあるのか。これ、なんて宝石なんだ?」

 

興味があって尋ねると闇は少し黒い笑みを浮かべながら答えた。

 

「ブラッドストーン………別名、ヘリオトロープ」

 

「へぇ、まあ貰えるなら貰っとくけどさ。ただ、これがスペードの形をしてるってことは………」

 

「スペードは遊騎のもの。今は仮で社長が使ってるけど、でも、皆遊騎のものだと思ってる。だから、遊花にも渡せない」

 

「それじゃあ遊花のはどうするんだよ?」

 

俺のそんな質問に、闇は珍しくにっこりと笑った。

 

「それなら考えがある。ある意味、遊花の立ち位置として、これ以上ないものが」

 

「これ以上ないもの?」

 

そして闇は自信満々にその言葉を口に出した。

 

「遊騎と私の弟子であり、私達『Trumpfkarte』に取ってもかなり重要な存在になる遊花に与えれる名前はただ1つーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー『ジョーカー』切り札の名を持ち、どのスートにも当てはまらないのが、遊花には相応しい」

 




次回予告

闇との再会を得て、自分のやるべきことを再確認した遊騎は遊花が大会に出るための方法を考えながら仕事に打ち込む。
その仕事の最中、遊騎は奇妙なカードを拾い、謎の決闘者にデュエルを挑まれる。
しかし、そのデュエルは遊騎が今まで経験したことがない熾烈なデュエルだった。


次回 遊戯王Trumpfkarte
『闇に呑まれし星』


次回は遊騎のデュエル回。
多分前後編に分けると思います。
今までの経験的にデュエルパートだけで1万5千字とかいきそうですし。
今回の話でチラッと出た遊騎の本当のデッキもいつか出せるかな?
そして闇の過去の一部の披露と微妙に前話の伏線を回収していくスタイル。
いやー闇ちゃんはブラッドストーンなんてどこで手に入れたんだろうなー(棒)
きっと今頃身体が少し欠けた石の戦士がうさぎさんに呼び出されていることでしょう。
ではでは〜
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