遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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今回は遊騎のデュエル決着回。
そして意外なカードが新しい遊騎の切り札に?




第14話 騎士の証

 

 

 

 

遊騎 LP5700 手札2

 

ーーーーー ー

ーーーーー

ー ◯

ーーーーー

ーー△▲ー ー

 

黒い男 LP3000 手札0

 

 

「俺のターン、ドロー………くっ、モンスターをセット。ターンエンド」

 

なんとか立ち上がりカードを引くが、今は出来ることがない。

 

ここは、耐えるしかない。

 

『そうだ。君の選択肢はそれしかない。エンドフェイズ、No.86HーC ロンゴミアントは自身の効果でオーバーレイユニットを1つ取り除く。残りのオーバーレイユニットは4』

 

 

遊騎 LP5700 手札2

 

ーーーーー ー

ーー◼︎ーー

ー ◯

ーーーーー

ーー△▲ー ー

 

黒い男 LP3000 手札0

 

 

『私のターン、ドロー。私は墓地に存在する幻影騎士団ダスティローブの効果発動。墓地のこのカードを除外し、デッキから幻影騎士団( ファントムナイツ)クラックヘルムを手札に加える。そして幻影騎士団クラックヘルムを召喚』

 

 

〈幻影騎士団クラックヘルム〉☆4 戦士族 闇属性

ATK1500

 

 

現れたのは宙に浮くヘルムのようなモンスター。

 

『さあ、君のセットモンスターは何かな?バトル。幻影騎士団クラックヘルムでセットモンスターを攻撃‼︎クラックインパクト‼︎』

 

「セットモンスターはクィーンズナイト。幻影騎士団クラックヘルムでは届かない‼︎」

 

 

〈クィーンズナイト〉☆4 戦士族 光属性

 DEF1600

 

 

『分かっているさ。リバースカードオープン。罠発動‼︎幻影剣‼︎幻影騎士団クラックヘルムを対象に装備し、攻撃力は800ポイントアップし、戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを破壊できる。これで攻撃力はこちらが上だ』

 

 

幻影騎士団クラックヘルム

ATK1500→2300

 

 

クィーンズナイトがクラックヘルムの装備した幻影剣に斬られる。

 

………来る‼︎

 

『お待ちかねの時間だ。No.86HーC ロンゴミアントでダイレクトアタック‼︎ディスペアジャベリン‼︎』

 

「っ‼︎‼︎があっぁぁぁ‼︎⁉︎」

 

 

遊騎 LP5700→2700

 

 

ロンゴミアントの槍が投擲される瞬間に横に跳び避けようとしたが、槍から衝撃波が放たれ今度は衝撃波が先程と同じ左足を貫いた。

 

あまりの痛みに再び俺はその場に崩れ落ちる。

 

次は、避けられそうにない。

 

『やはりダメージは他のカードの比ではないな。流石は闇のカードのエネルギーだ。私はこれでターンエンド』

 

 

遊騎 LP2700 手札2

 

ーーーーー ー

ーーーーー

ー ◯

ーーー◯ー

ーー△▲ー ー

 

黒い男 LP3000 手札1

 

 

「俺のターン………ドロー。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

立ち上がることが出来ない………痛みで意識が朦朧としてくる。

 

まだだ、まだ召喚を行うことは出来ない。

 

この1ターンだけ………なんとか、耐えれば………

 

『フッ、モンスターを引けなかったか。それなら決まったようなものだ。エンドフェイズ、No.86HーC ロンゴミアントは自身の効果でオーバーレイユニットを1つ取り除く。残りのオーバーレイユニットは3』

 

 

遊騎 LP2700 手札2

 

ーー▲ーー ー

ーーーーー

ー ◯

ーーー◯ー

ーー△△ー ー

 

黒い男 LP3000 手札1

 

 

『私のターン、ドロー。すぐに楽にしてやろう。バトル‼︎これで終わりだ。No.86HーC ロンゴミアントでダイレクトアタック‼︎ディスペアジャベリン‼︎』

 

「まだだ‼︎まだ終われない‼︎相手の直接攻撃宣言時、墓地から罠カード幻影騎士団シャドーベイルの効果発動‼︎このカードをレベル4、戦士族、攻撃力0、守備力300の通常モンスターとして守備表示で特殊召喚する‼︎」

 

『なに⁉︎幻影騎士団だと⁉︎』

 

「ただし、このカードが場を離れる場合、除外される」

 

 

〈幻影騎士団シャドーベイル〉☆4 戦士族 闇属性

 DEF300

 

 

俺を守るように亡霊の騎士が現れる。

 

それを見て、奴は苛ついたようにロンゴミアントを振るう。

 

『手札抹殺の時に送っていたか‼︎No.86HーC ロンゴミアント‼︎その亡霊を引き裂け‼︎』

 

ロンゴミアントの槍が振り切られ、シャドーベイルは空気に溶けるように消えていった。

 

『無駄な足掻きを………だが、攻撃すればH・Cサウザンドブレードが出てくるか。メインフェイズ2、私は墓地に存在する幻影騎士団サイレントブーツの効果発動。このカードを除外し、デッキからファントム魔法・罠を手札に加える。私は幻影霧剣を手札に加える。私はモンスターをセット。カードを2枚セットしてターンエンドだ』

 

「エンドフェイズ‼︎手札を1枚捨て、速攻魔法、ツインツイスター‼︎セットされた2枚の魔法・罠カードを破壊する‼︎」

 

『チッ、幻影霧剣を狙ってきたか。幻影騎士団クラックヘルムの効果発動‼︎幻影騎士団カードかファントム魔法・罠が墓地に送られた場合、攻撃力が500ポイントアップする‼︎』

 

 

幻影騎士団クラックヘルム

ATK2300→2800

 

 

遊騎 LP2700 手札1

 

ーーーーー ー

ーーーーー

ー ◯

ー◼︎ー◯ー

ーー△△ー ー

 

黒い男 LP3000 手札0

 

 

これで奴の伏せカードは無くなった。

 

その代わり、こちらの手札も1枚。

 

ロンゴミアントもクラックヘルムもこちらのライフを超えているから攻撃をくらえばその時点で負け。

 

身体も、もう限界が近い。

 

ここで動けなければ負ける。

 

「俺のターン………ドロー‼︎」

 

引いたカードを見る………いける‼︎

 

「俺は、H・C ダブルランスを召喚‼︎」

 

俺が出したのは2つの槍を持った白い戦士。

 

「H・C ダブルランスの効果発動‼︎召喚成功時に手札・墓地の同名モンスターを表側守備表示で特殊召喚する‼︎俺は墓地のH・C ダブルランスを特殊召喚だ‼︎」

 

『クッ………さっきのツインツイスターで送っていたか』

 

 

〈H・C ダブルランス〉☆4 戦士族 地属性

DEF900

 

 

もう1体ダブルランスが現れる。

 

そして俺は正面に手を翳す。

 

「俺は戦士族、レベル4のH・C ダブルランス2体でオーバーレイ‼︎2体の戦士族モンスターでオーバーレイネットワークを構築‼︎エクシーズ召喚‼︎」

 

2体のダブルランスが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けるとそこにいるのは赤い鎧を着た王者の風格を漂わせる戦士。

 

「光を纏て、闇を切り裂く孤高の王者‼︎HーC( ヒロイックチャンピオン)エクスカリバー‼︎」

 

 

〈HーC エクスカリバー〉★4 戦士族 光属性

ATK2000

 

 

「HーC エクスカリバーの効果発動‼︎シャイニングフォース‼︎オーバーレイユニットを2つ使い、このカードの攻撃力は、次の相手のエンドフェイズ時まで元々の攻撃力の倍になる‼︎」

 

エクスカリバーの周りを漂っていたオーバーレイユニットがエクスカリバーに集まり、エクスカリバーの身体が光り輝く。

 

 

HーC エクスカリバー

ATK2000→4000

 

 

「さらに魔法カード、ヒロイックチャンス‼︎自分フィールド上のヒロイックと名のついたモンスター1体を選択し、このターン、選択したモンスターは攻撃力が倍になる‼︎ただし、相手プレイヤーにダイレクトアタックは出来なくなる」

 

 

HーC エクスカリバー

ATK4000→8000

 

 

『攻撃力8000のエクスカリバーだと⁉︎』

 

「バトル‼︎これで終わらせる‼︎HーC エクスカリバーでNo.86HーC ロンゴミアントを攻撃‼︎必殺剣 刀光剣影‼︎」

 

エクスカリバーの剣がロンゴミアントに向かう。

 

エクスカリバーの剣がロンゴミアントを斬り裂こうとしたその時、その間に割り込むように、フィールドにセットされていたモンスターがエクスカリバーの剣からロンゴミアントを守った。

 

「………な………に?」

 

『危ないところだったよ。君がさっき破壊したカードがなかったらやられていたところさ。墓地から罠発動‼︎仁王立ち‼︎墓地のこのカードを除外して攻撃対象を私のセットモンスターを対象にし、そのモンスターしか攻撃出来なくする‼︎残念だったな‼︎必死の攻撃だったのにな‼︎』

 

攻撃対象の固定。

このターン、攻撃出来るのはあのセットモンスターのみ。

 

つまり、このターン、どう頑張っても勝つことは出来ない。

 

『さあ、セットモンスターを攻撃するか。選ぶがいい』

 

「………HーC エクスカリバーでセットモンスターを攻撃する」

 

 

〈幻影騎士団フラジャイルアーマー〉☆4 戦士族 闇属性

DEF2000

 

 

セットされていたフラジャイルアーマーをエクスカリバーが両断する。

 

『幻影騎士団クラックヘルムの効果発動‼︎幻影騎士団カードかファントム魔法・罠が墓地に送られた場合、攻撃力が500ポイントアップする‼︎』

 

 

幻影騎士団クラックヘルム

ATK2800→3300

 

 

しかし、これでこのターンのバトルは終わり。

 

俺は手札も0。

 

フィールドにいるエクスカリバーもヒロイックチャンスの効果でこのターンの終わりに2000に戻る。

 

そしてそうなれば次のターン、確実にクラックヘルムとロンゴミアントに破壊されるだろう。

 

そうなれば俺の負けだ。

 

「………っ」

 

俺は自分の墓地にあるカードを必死に思い出すが勝つところまでどうしても持っていくことが出来ない。

 

耐えられる手段は………まだ見つかった。

 

しかし、奴のライフはまだ3000もある上に俺のデッキで最も攻撃力が高いエクスカリバーはもう出してしまい、2枚目はない。

 

例えエクストラソードを引いてエクシーズ召喚に繋げられたとしても決め切ることはできない。

 

そして決めきれなければ、墓地にある幻影騎士団かテラナイトを使い突破されるだろう。

 

『フッ、あまりの状況に絶望したかな?ならば早く諦めてしまえばいい。そうすれば、ロンゴミアントが君を貫いてあげよう』

 

「‼︎………ああ、そうだよな」

 

『フッ、意外と物分かりがいいじゃないか』

 

「ハッ………お断りだ」

 

『何?』

 

奴の挑発するような言葉を笑い飛ばす。

 

ああ、確かにこの状況は諦めた方が早いだろう。

 

これ以上限界の身体に鞭打つ必要もない。

 

だけど………

 

 

ーーーーーーー

 

 

『………遊騎さん』

 

『………どうした?』

 

『………私は、諦めません』

 

『………』

 

『これから何があったって、どんな困難に見舞われたって、諦めることだけは、絶対にしません‼︎運命は、私が斬り開いて行きます‼︎だから………』

 

『………』

 

『だから、このデュエルも絶対に勝たせて貰います‼︎』

 

『………ふっ、そうか。なら、やってみな』

 

『はい‼︎』

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

俺は知っている。

 

本当に絶望的な状況で諦めず、奇跡を起こした奴のことを。

 

確かに勝つことは出来なかった。

 

でも、それでアイツは自分の可能性を文字通り斬り開いてみせた。

 

そんな奴が俺なんかを師匠だって言ってくれている。

 

そんな奴が俺の思いを背負おうとしている。

 

なのに、その手伝いも出来なくなってアイツにもう1度深い傷をつけようとしている?

 

冗談じゃない‼︎

 

「俺は………諦めることだけは絶対にしねぇって決めたんだ‼︎」

 

そう叫びながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

確かに勝ちの目なんて、ないのかも知れない。

 

だが、まだライフも残ってる。

 

思考だって止まってない。

 

なら、まだ終わっていない。

 

終わらせない‼︎

 

「俺はこれでターンエンド‼︎エンドフェイズ、ヒロイックチャンスの効果でHーC エクスカリバーの攻撃力は元に戻る‼︎」

 

HーC エクスカリバー

ATK8000→2000

 

 

「さあ、来るなら来やがれ、この黒ずくめのヘンテコヘルメット野郎‼︎テメェなんかにやれるもんなんか、俺には1つもねぇんだよ‼︎」

 

『っ、黙って聞いていれば好き勝手言ってくれるじゃないか。なら、お望み通りこの霊園に埋めてあげよう‼︎エンドフェイズ、No.86HーC ロンゴミアントは自身の効果でオーバーレイユニットを1つ取り除く。残りのオーバーレイユニットは2』

 

 

遊騎 LP2700 手札0

 

ーーーーー ー

ーーーーー

◯ ◯

ーーー◯ー

ーー△△ー ー

 

黒い男 LP3000 手札0

 

 

『私のターン、ドロー。墓地に存在する幻影騎士団フラジャイルアーマーの効果発動‼︎墓地のこのカードを除外し、手札の幻影騎士団カードまたはファントム魔法・罠カード1枚を墓地へ送り、デッキから1枚ドローする。私は手札から幻影死槍を墓地に送り1ドロー。幻影騎士団クラックヘルムの効果発動‼︎幻影騎士団カードかファントム魔法・罠が墓地に送られた場合、攻撃力が500ポイントアップする‼︎』

 

 

幻影騎士団クラックヘルム

ATK3300→3800

 

 

『バトル‼︎幻影騎士団クラックヘルムでHーC エクスカリバーを攻撃‼︎クラックインパクト‼︎』

 

「すまない………エクスカリバー。迎え撃て‼︎必殺剣 刀光剣影‼︎」

 

幻影剣を持ったクラックヘルムにエクスカリバーも剣技で対抗するが、強力な力で押し切られ、斬り伏せられた。

 

その衝撃が俺の身体にも響いてきて、思わず片膝をつく。

 

「ぐぅぅぅ‼︎」

 

 

遊騎 LP2700→900

 

 

「だが、戦闘ダメージを受けた時、H・Cサウザンドブレードの効果発動‼︎このカードが墓地に存在し、戦闘・効果で自分がダメージを受けた時、このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する‼︎」

 

〈H・C サウザンドブレード〉☆4 戦士族 地属性

ATK1300

 

 

俺の前に現れたのは頭巾を被り、背中に何本もの刀を背負った戦士。

 

『今更ソイツが出てきたところで貴様に何が出来る‼︎終わりだ‼︎No.86HーC ロンゴミアントでH・C サウザンドブレードを攻撃‼︎ディスペアジャベリン‼︎』

 

サウザンドブレードに向けて、ロンゴミアントが槍を放つ。

 

だがそれを受け止め、投げ返す赤い鎧の戦士が現れた。

 

 

〈タスケナイト〉☆4 戦士族 光属性

ATK1700

 

 

『何⁉︎』

 

「墓地に存在するタスケナイトの効果発動‼︎このカードが墓地に存在し、自分の手札が0枚の場合、相手モンスターの攻撃宣言時にデュエル中に1度だけ発動出来る‼︎このカードを墓地から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する‼︎」

 

『バトルフェイズを終了だと⁉︎馬鹿な⁉︎そんなカードをいつの間に墓地に………』

 

「1番最初だよ。お前が手札断殺を使った時だ」

 

『っ⁉︎あの時………だが、私の場には攻撃力が3800まで高められた幻影騎士団クラックヘルムとNo.86HーC ロンゴミアントがいる。貴様なんかに逆転など出来るわけがない‼︎私はカードを1枚伏せてターンエンドだ‼︎』

 

 

遊騎 LP900 手札0

 

ーーーーー ー

ーーーーー

ー ◯

ーーー◯ー

ー▲△△ー ー

 

黒い男 LP3000 手札0

 

 

「俺のターン………」

 

そろそろ本当に身体の限界が近い。

 

状況的にも正真正銘これがラストターンだ。

 

デッキよ、俺の思いに応えてくれ‼︎

 

「ドロー‼︎」

 

引いたカードを見る。

 

引いたのはH・C エクストラソード。

 

悪くないカードではあるが俺のEXデッキにこの状況を突破出来るカードはない。

 

どうする?

 

そう思った時、EXデッキが黒く光った気がした。

 

何処かで感じたその感覚にEXデッキを見てみると………

 

「なっ⁉︎」

 

EXデッキの中に、今回のデュエルのきっかけとなったカードが混ざっていた。

 

そのカードは微小の闇を振りまきながらまるで急かすように輝いている。

 

「………ハッ、使えって言ってるのかよ?お前のせいで俺はこんな目に合ってるってのに」

 

奴はこのカードを闇のカードと呼び、同じような闇のカードを研究しロンゴミアントを作ったと言っていた。

 

なら、当然オリジナルであるこっちの方が数倍ヤバイカード何だろう。

 

今は触っても最初に触った時の感覚はしないが、使用すればどうなるかまでは分からない。

 

だが………俺はそのカードの効果を見てため息を吐いた。

 

「いいぜ、使ってやる。俺も弟子の為に死ぬわけにはいかないし、俺自身でいなきゃならないからな。俺の身体を取りたきゃやればいい。だが、出来なかった時は大人しく俺の言うことを聞いて貰うぜ?姿形はあれだが、名前は立派に騎士の証を示してんだ。騎士道は守れよな。俺はH・C エクストラソードを召喚‼︎」

 

 

〈H・C エクストラソード〉☆4 戦士族 地属性

 ATK1000

 

 

 現れたのは銀色の鎧を身に纏った二刀流の戦士。

 

俺はその姿を確認してから、3体の戦士に手をかざす。

 

「俺はレベル4のタスケナイト、H・C サウザンドブレード、H・C エクストラソードでオーバーレイ‼︎3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼︎エクシーズ召喚‼︎」

 

タスケナイト、サウザンドブレード、エクストラソードが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けるとそこから現れるのは異形の存在。

 

悪魔のような身体に白いツノ、黒い鉤爪を持つ異形の神。

 

「騎士の魂が宿し紋章よ‼︎今こそその魂を示せ‼︎現れろ‼︎No.69 紋章神( ゴッドメダリオン)コートオブアームズ‼︎」

 

 

〈No.69 紋章神コートオブアームズ〉★4 サイキック族 光属性

ATK2600

 

 

『馬鹿な、No.だと⁉︎』

 

「ぐっ………効くな、結構」

 

呼び出したと同時に右手の甲にコートオブアームズと同じ数字が浮かび、思わず耐えるように胸の前で腕をクロスする。

 

その数字から嫌な感覚が登ってきて、ぼろぼろの俺の身体を奪おうとし、意識が薄れ始める。

 

だけど、俺はさっき言ったハズだぜ、コートオブアームズ。

 

「俺は弟子の為に死ぬわけにはいかないし、俺自身でいなきゃならないって、さ‼︎お前なんかじゃ、俺は止められねぇ‼︎」

 

気合いを入れて嫌な感覚を吹き飛ばすように胸の前でクロスした腕を振り払う。

 

すると途端に嫌な感覚が消え、意識もはっきりした。

 

それを見て、奴は機械越しに驚愕の声を上げた。

 

『馬鹿な、生身の身体でのNo.の侵食を気合いで振り払ったというのか⁉︎』

 

「理屈なんか知るか。なんか勝手に動いた。でも、これでようやくお前を倒せる。まずはエクシーズ素材になったH・C エクストラソードの効果発動‼︎このカードを素材としてエクシーズ召喚したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする‼︎」

 

 

No.69 紋章神コートオブアームズ

ATK2600→3600

 

 

「さらにNo.69 紋章神コートオブアームズの効果発動‼︎ロストグローリー‼︎このカードが特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上の全てのエクシーズモンスターの効果を無効にする‼︎」

 

『何だと⁉︎』

 

「ご自慢の効果、消させて貰うぜ‼︎」

 

 

No.86HーC ロンゴミアント

ATK3000→1500

 

 

コートオブアームズから謎の波動が放たれ、ロンゴミアントが色を失っていく。

 

『っ、私の才能の結晶が色を失っていく‼︎(だが、私が伏せたカードは幻影騎士団ウロングマグネリング。これで攻撃を無効にすればこのターンやられることはない)』

 

「そいつさ、アンタの才能の結晶なんだよな?」

 

『何?』

 

「だったらさ、自分の才能の結晶を自分で体感して貰おうか」

 

『何だと?』

 

「No.69 紋章神コートオブアームズの効果発動‼︎アームズドレイン‼︎自分のメインフェイズ時、1ターンに1度、このカード以外のエクシーズモンスター1体を選択し、エンドフェイズ時まで、このカードは選択したモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る‼︎」

 

『同じ効果を得るだと⁉︎』

 

「対象は勿論、ご自慢のNo.86HーC ロンゴミアントだ‼︎」

 

コートオブアームズの鉤爪から光の糸が現れ、ロンゴミアントの身体を貫く。

 

すると、そこからコートオブアームズは何かを吸い取り、しばらくするとコートオブアームズの前にロンゴミアントが持っていた槍が現れた。

 

「さて、No.86HーC ロンゴミアントの効果だが、素材が3つの場合は戦闘破壊されず、攻撃力・守備力は1500ポイントアップし、このカードはこのカード以外の効果を受けない、だったよな?」

 

 

No.69 紋章神コートオブアームズ

ATK3600→5100

 

 

『効果を受けない攻撃力5100だと⁉︎』

 

「終わりだ。バトル‼︎No.86HーC ロンゴミアントとなったNo.69 紋章神コートオブアームズで、No.86HーC ロンゴミアントを攻撃‼︎クレストマジェスティ・バージョン・ディスペアジャベリン‼︎」

 

コートオブアームズが槍をロンゴミアントに向けて投擲し、さらにツノからエネルギー波を撃ち込んだ。

 

その攻撃を受けたロンゴミアントは跡形もなく四散した。

 

『馬鹿なぁぁぁ‼︎』

 

 

黒い男 LP3000→0

 

 

ーーーーーーー

 

 

「ふぅ………勝った。お、場所も元の公園に戻ったな」

 

『ば、馬鹿な………私が、負けるなど………』

 

コートオブアームズの攻撃により、あの男が吹き飛び、しばらくすると景色が元の公園に戻った。

 

しかし、俺もあの男も、身体がぼろぼろなのには変わらない。

 

今でも意識を強く持たないと倒れそうだ。

 

とりあえずどうするべきかと考えていると、背筋に嫌な感覚が過った。

 

何事かとその感覚がした方を見ると、あの男のデッキのカードの1枚が勝手に宙に浮き、凄い勢いで回転しながら俺の元に飛んできた。

 

「うおっ⁉︎」

 

あまりのことに咄嗟にそのカードを掴んでしまう。

 

恐る恐るそのカードを見て見ると、先程嫌と言う程痛めつけられたロンゴミアントのカードだった。

 

一瞬、カードから黒い闇が溢れてきそうになったが、何かの力がその闇を打ち消した。

 

『くっ、元にしたNo.の勝者の方に移動する性質が残ってしまったか‼︎私のNo.を返せ‼︎』

 

「っ、まずっ‼︎」

 

ロンゴミアントがこちらにきたことに焦ったのか、男が立ち上がり、こちらに向かって駆けよって来ようとする。

 

こっちの身体はぼろぼろ、このまま襲われたら………

 

男が俺に摑みかかろうとした時………

 

「ちょっと‼︎何やってんのよアンタ‼︎」

 

そんな聞き覚えがある声と共に男が勢いよく横に吹き飛ばされた。

 

そして男がいた場所には明らかに何かを蹴り飛ばしたかのような体勢の宝月がいた。

 

「………見事な飛び蹴りだな」

 

「バッカじゃないの‼︎本当にバッカじゃないの⁉︎アンタそんなにぼろぼろになってる状況で何を言ってんのよ‼︎」

 

『くっ、私の邪魔をするのか、小娘風情が‼︎』

 

「するに決まってんでしょうが‼︎そいつは私の知り合いなの‼そいつをぼろぼろにしてる奴を見て放っておくわけないでしょ‼︎︎これ以上コイツに何かする気ならセキュリティを呼ぶわよ‼︎」

 

声を張り上げて威嚇する宝月に、男は機械越しでも分かる忌々しそうな声を漏らし、デュエルディスクについてある何かのスイッチを押した。

 

『チッ、邪魔が入ったか。そのカードは預けておく。次は貴様の持っているNo.も頂いていくぞ』

 

そう言葉を残し、まるで空気に溶けるかのようにその男は姿を消した。

 

しばらく宝月は周りを警戒した後、本当にいなくなっていることが分かったのか、警戒を解いて慌てた様子で俺の方に近づいてきた。

 

「消えた?」

 

「何なのよ、アイツ?明らかに不審者って格好してたし………というかなんでアンタはそんなにぼろぼろになってんのよ‼︎血だらけじゃない‼︎」

 

「知らねぇよ。こっちは無理矢理襲われたんだ。変なフィールド魔法みたいな奴で逃げられなかったし、立体映像のハズなのにモンスターの攻撃で実際に俺の身体はぼろぼろになるし、むしろこっちが聞きてぇよ」

 

俺の身体を支え、宝月がとりあえずベンチの方に連れて行ってくれる。

 

俺はベンチに座ると、とりあえず宝月に疑問に思っていたことを尋ねた。

 

「というか、宝月はなんでここにいるんだ?デュエルアカデミアは?」

 

「私の講義はもう終わったわ。それで遊花の講義が終わるのを待ってたら、闇から電話がかかってきて、アンタと連絡が取れなくて胸騒ぎがするって言うから直接見にきたの。そうしたら、アンタはぼろぼろだし、不審者はいるし、一体何がどうなってんのよ?」

 

「さあな。とりあえず………病院行かないと駄目だよな、これ?」

 

「当たり前でしょうが。どう見ても入院案件だし、そんな状態で帰るなんて許さないわよ」

 

「いや、行くのはいいんだよ。正直今も意識を保ってるのもぎりぎりだ」

 

「なら尚更ーーー」

 

「ただ………遊花、多分泣くよな?」

 

「ーーーあ」

 

宝月も思い当たったのか悲痛な表情を浮かべる。

 

アイツにとって、多分身内の事故や怪我って言うのはトラウマの1つだ。

 

殺されてそうな状況で死ななかっただけマシと言えるが、それでもアイツのトラウマを刺激するには十分な出来事だろう。

 

「………仕方ねぇか」

 

「何がよ?」

 

「こうなったら、この状況も利用して遊花が少しでも大会に出れるように話を持っていくようにしよう。とりあえず宝月、不審者に襲われたって言うのは遊花には内緒だ。仕事中にミスって斜面から落ちたってことにでもしといてくれ」

 

「それはいいけど………どうする気なのよ?」

 

「まぁ、それは追々な。とりあえず………もう意識が持ちそうにない………後、頼んだ」

 

「ちょっ‼︎結束⁉︎しっかりしなさい‼︎結束‼︎」

 

宝月の慌てた声を聞きながら、俺は意識を手放すのだった。

 

 

 






次回予告

遊騎が怪我をしたことに取り乱す遊花。
自分がいない場所での出来事に、再び過去のトラウマが彼女を襲う。
そんな遊花に、遊騎はある1つの約束をする。


次回 遊戯王Trumpfkarte
『踏み出すための一歩』


次回はデュエルパート無しの会話回。
遊騎は遊花を導いていくことができるのか?
入院するキャラがいるのもある意味遊戯王の伝統ですね。
そして遊騎の新しい切り札はコートオブアームズさん。
神の名を持つ宿命かアニメ版より大分弱体化しているOCG版ですが、かなりお気に入りのナンバーズです。
1番好きなナンバーズと聞かれるとコートオブアームズかダイソンスフィアでいつも悩みます。
そもそもコートオブアームズは紋章が描かれた貴族や騎士の装備品のことだから、騎士だったり装備で戦う遊騎にはある意味ぴったりのカードです、本人サイキック族ですけど。
ライバルキャラの名だしはまだまだ先です。
ポジション的には遊騎を付け狙うキャラクターになりそうですね。
それじゃあ今回はここまでにして。
ではでは〜

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