退院手続き諸々で少々遅くなってしまいました。
今回は遊騎視点の会話回。
後半に少し第三者視点からのパートがあります。
☆
「今頃、遊花は退学をかけて期末試験中か」
「心配?」
「いや、遊花なら大丈夫だろ。というか、闇。なんでお前はこんな朝っぱらから俺の病室に入り浸ってるんだ?」
「今日はオフ」
「オフならなんかやりたいこととかあるだろ?」
「ん、だからやりたいことをやってる。遊騎とお話、楽しい。大会のこと、確認しておくのも大事だし」
「………お前は本当に相変わらずだな」
遊花の為に大会を開くと約束してから10日。
俺は自分の病室で遊花のための大会について考えている。
といっても、俺に大会で出来るのは遊花が呼ぶ参加者以外の参加者で誰を呼べるかを考えるぐらいが関の山で、主に考えているのは大会中に遊花が落ち着いて、楽しくデュエルするにはどういう風にしてやればいいのかっていうことになるのだが。
それがすぐに思い浮かぶのならば苦労するわけもなく、とりあえず思いついたことを片っ端から書き出しては闇に相談に乗ってもらっていた。
そして、今日は朝っぱらからオフだと病室に乗り込んできた闇の話相手をしながら、遊花が今どういう状況なのか、報告を受けていたところだ。
デュエルアカデミアでもまともにデュエルが出来る状況ではなかったことは分かっていたが、まさか退学なんて話が出るほど酷い状況だとは正直思っていなかった。
しかし、遊花なら大丈夫だろうという確かな確信がある。
まだ出会ってから2週間程しか経っていないが、その2週間でも、遊花は見違える程成長した。
デュエルをすること自体を怖がっていた少女が、今やどんな相手だろうと怯むことなくデュエルを行い、それが闇のような世界ランキング4位の人間にすら認められるような決闘者になっているのだ。
闇から聞いた話だと、召喚方法は1つを除き使いこなせるようになってきているらしく、その召喚方法も完全に使いこなせるようになるのは時間の問題だろうという話だったし、早々退学にされそうなデュエルをするとは思ってもいなかった。
というより、全ての召喚方法を使いこなせることが知られ、それでも遊花を学年最下位だからと追い出してしまえば、今のデュエルアカデミアは全ての召喚方法が使える決闘者は当たり前のようにいて、全ての召喚方法を使うぐらいでは特に面白味もない生徒なんだと、周りにアピールすることになり、無駄にデュエルアカデミアで現在学んでいる生徒のハードルを上げてしまうだけだ。
それこそ酷というものだろう。
「というか、遊花のことで心配なことがあるとすれば本人が全ての召喚方法を使えることがどれだけ普通じゃないことなのかをちゃんと分かってるかどうかなんだよな」
「?普通じゃないの?」
「………教えた本人がこれだもんな………普通なら出来たとしてもあまりやらないだろ。そりゃあ無理してやろうと思えばどんなデッキでも可能だが、どれかの召喚方法に特化した方が戦いやすいんだし。やるのは本当にそういう複数の召喚方法を根底に置いてるデッキだけだ。それに比べて遊花のクリボーデッキはどれかの召喚方法に特化しているわけじゃないからこそ、やろうとさえ思えばどんな召喚方法でも出来るっていうだけだしな」
どの召喚方法にも全く染まっていないからこそ出来る芸当。
一体あの弟子はどこまで進んでいくのか、心配する一方でやっぱり期待してしまうのも師というものなのか。
「まあ、それも心配するだけ無駄か。もう始まってるならなるようにしかならないしな。遊花も今更他人の目なんか気にしないだろうし、多少他人の目があったからって今のアイツの意思が折れるとは思えないからな。正直、あの意思の強さだけは俺でも勝てん」
「ん、私も無理。あの不屈の意思だけはどうしようもない。ウイルスで完全に動きを縛っても折れなかった子だから」
闇と2人でうんうんと頷き合う。
そんな時、病室の扉がノックされる音が聞こえた。
俺と闇は思わず首を傾げる。
回診の時間は終わったし、遊花達はデュエルアカデミアに行ってるこの時間に俺を訪ねてくる人がいるとは思えないのだが………
ベッドから動けない俺の代わりに闇が病室の扉を開ける。
そこにいたのは茶髪でセミロングの仏頂面をした男性。
その細められた目からは何処か生真面目な雰囲気を醸し出している。
その男性を見て俺が驚いて目を見開くと、男性はその仏頂面を柔らかい笑顔に変えた。
「ふっ、久しぶりだな、結束」
「不知火さん⁉︎どうしてここに⁉︎」
突然病室に訪れた男性に、俺は驚愕の声を上げた。
不知火 炎(しらぬい ほむら)。
闇と同じプロチーム『Trumpfkarte』でダイヤのスートを与えられているメンバーであり、俺の元チームメイト。
俺の両親が亡くなった日に『Natural』で行なっていた大会の最後の参加者だった年上の男性だ。
少し無愛想で冷たい印象を受けるが、実際はとても優しく、俺が一番辛かった時期にも何かと気にかけてくれていたし、『Trumpfkarte』を結成する際にも一も二もなく引き受けてくれた俺が最も尊敬している先輩だ。
不知火さんを見て、闇も少し驚いた表情で首を傾げる。
「炎、今日の試合は?」
「ああ、どうやら運営側の不手際があったみたいで少し時間が出来てな。会場もここの近くだったから、それならば少し様子を見にくるかと足を運んでみた。冬城はどうしてここに?」
「遊騎とお話しにきた」
「そうか。お前達は昔から仲が良かったからな。だが、結束に迷惑がかかることはするなよ?」
「無論」
そんなやり取りをすると、不知火さんは俺のベッドの近くにあった椅子に座った。
「本当に、久しぶりだな結束。冬城から話は聞いている。弟子を取ったと………お前が間接的にとはいえデュエルの世界に戻ってこれたこと、嬉しく思う。お前が弟子の為に開くという大会には、俺も喜んで参加させてもらおう」
「あ、ありがとうございます‼︎」
思わず頭を下げる俺を見て、闇は呆れたような目線を俺に向ける。
「相変わらず、遊騎は炎の前だと固い」
「お前が砕けすぎなんだよ………不知火さんは年上なんだぞ?」
「それなら社長も年上。でも、遊騎は社長を呼び捨てにしてる」
「アイツは普段の態度から全然尊敬出来ないからいいんだよ………チームにいた時も書類仕事とかでよく泣きついて来たし。それに、最初は敬語を使ってたけど、アイツ嫌がるし………」
「その態度も結束相手だからやっていたのだと思うがな。今の奴を見たら、結束も驚くだろう」
「………まあ、アイツには悪いことをしたと思ってますよ。ほぼ俺の為にチームを作ってくれたって言うのに、その俺はプロリーグから追放されて迷惑をかけてますから」
「………勘違いしているようだが、俺達はお前がプロリーグから追放されたことは迷惑だと思っていない。急にいなくなったことに関して色々と言いたいことがあるがな」
「………すいません」
不知火さんの言葉に俺は素直に謝る。
すると、不知火さんも苦笑を浮かべながら俺の肩を叩いた。
「何、だからといってお前がなんでそうしたのかも理解しているつもりだ。次に似たようなことがあれば気をつけてくれればいい。お前はもっと人を頼れ」
「………次、あるんですかね?」
「その次を作る為に、俺達は戦っているんだ。無論、お前ともう1度共に戦うためにな」
そういう不知火さんの表情は真剣そのものだ。
戦っているというのは、前に闇が話していた今のプロリーグとは別のプロリーグを作るという話だろう。
俺の為にそこまでしてくれるのは嬉しいのだが、その為に他の誰かが割りを食うというのは違うと思う。
それが顔に出ていたのか、不知火さんも苦笑を浮かべながらも、真面目な声で口を開く。
「お前がそれを望んでいないことは分かっている。お前は優しい奴だからな………」
「………」
「だが、その優しさによって今のお前の現状があるのも事実だ。だから、その優しさを利用されるな。正直に言って、今のプロリーグの根本に関わっている奴らは信用できない。お前の件も色々と調べてみたが、不可解な点があまりにも多すぎる」
「不可解な点………ですか?」
俺がそう尋ねると不知火さんは真剣な表情で頷く。
「ああ。まずお前が見つけた対戦相手のデッキだが、見つかる場所があまりにもおかしい。お前の対戦相手だった人間の控え室だが、その場所はお前の控え室があったエリアとは全く反対のエリアにあった。意図的にお前の対戦相手がお前の控え室があったエリアに行ったか、誰かが持ち出さなければあんな場所に落ちているわけがない」
「っ⁉︎じゃあ俺のあの時の対戦相手がわざと俺の控え室の近くに置いて行ったって言うんですか⁉︎」
「いや、その可能性は低いだろう。あの日の大会の日程を調べてみたがあの大会はかなり試合の密度が濃かった。あの規模の会場で反対エリアの控え室にわざわざ仕掛けに行ったらまず試合自体に間に合わないし、その姿を見られてバレるだろう」
確かに、あの時デッキを届けに会場に向かったら既に対戦相手の人はデッキがないということで大会運営のスタッフのところにいた。
俺の後に来たのであればおかしくないが、俺よりも前に来ているのであれば時間的に無理があるだろう。
俺が盗んだという疑いが拭えなかったのも、俺の方が後に会場に来たからというのもあるのかも知れない。
「次に警備員の話だな。あの時間帯、何故かお前の控え室の近くにだけ警備員がいなかった上に、その近くのエリアが一時封鎖されてたらしい」
「えっ、警備員?というか、そんなのどうやって調べたんですか?」
「まあ色々なところで聞き込んでな。というより、分からないか?警備員が普通にいたとすれば、落ちているデッキケースなんてものはその警備員が届けているだろう?だが、実際に見つけて届けたのはお前だ。お前が発見できたような物を真っ当に仕事をしている警備員が見落とすとは考えにくい。つまり、その時にその場には警備員がいなかったか、いたとしてわざと見逃したのか、はたまたその警備員がその場にいた時にはデッキケースがまだなかったか。考えられるのはこんなところだろう」
そう言われて思い返してみれば、確かに控え室から会場に向かう時には誰にも会わなかった気がする。
いくら準々決勝だからといえ、あそこまで人がいなくなることなんてありえるのか?
「まあ話していけば他にも色々とあるんだが、1番の理由はあまりにも処分の決定が早過ぎる上に問答無用の強制的なものだったということだな。大した聞き取りもせずにその場での出場停止、その上お前の除名が決まったのも僅か1週間だ。その間にお前への聞き取りがなかったことも踏まえて全く腑に落ちん。まるで最初からお前を除名することが決まってたようにしか俺には思えん」
「………誰かが俺を邪魔に思ったってことですか?」
「当時、ウチのエースは間違いなくお前だったからな。結成から僅か2年で瞬く間に世界ランキング2位を掻っ攫ったチームのエースだ。疎まれる理由は色々あっただろう。そしてもし本当にそうなら、お前を邪魔に思った相手は運営にも繋がっているような人間だってことだ。おまけにそれだけ運営を動かせるぐらいの、な」
「………」
不知火さんが語る言葉に俺は何も言えなくなる。
確かに思い返してみれば不自然なことばかりだ。
俺を邪魔に思う人間の働きは、確かにあったかも知れない。
だけど………
「それでも………俺はプロリーグを潰すようなことは、闇と不知火さん達にやって欲しくないですよ」
「遊騎………」
「確かに、思うところがないわけじゃないですよ?それでも、俺の為にプロ決闘者として今精一杯デュエルをしている人が困るのは、俺も認められない。そんなこと、俺を助けてくれた人達にやって欲しくない。そういう困っている人を助けようとした人達だったからこそ、俺は救われることが出来たんだから」
俺の言葉に闇と不知火さんが驚いたように目を見開く。
正直、本音を話すのは少し照れくさい。
でも、こうして俺を救ってくれた人達には知っておいて貰いたい。
そんな貴方達がいたからこそ、俺は救われることが出来たのだと。
「大丈夫です。今のプロリーグだって、きっとこれから変わりますよ。俺の弟子が、次の世代の奴らがきっと変えていってくれます。アイツは、諦めが悪いですから。俺の評価を変えて『Natural』を立て直すまで、絶対に諦めないって、宣言してましたからね」
「………弟子のことを信頼してるんだな」
「弟子の可能性を信じてやってこその師匠でしょ?俺は遊花を、アイツが望むべき場所まで導きます。これが俺の仕事です。大切な人達を失い、優しい人達に救って貰った俺が、今やらなければならない、自分の人生を懸ける価値のある仕事です」
「………うん、そうだね。遊花は信頼出来る。私を相手にしても最後まで諦めなかった、あの子なら」
「………そうか。お前達の弟子という奴により興味が出て来たよ。だが、プロリーグの奴らを信用しないのは変わらない。俺は俺なりに色々調べる。お前らが未来に目を向けるなら、俺は過去に目を向けよう。それも、お前達を守るための、年上としての俺の仕事だ」
そういうと不知火さんは椅子から立ち上がる。
「そろそろ会場に戻らないといけないからこれで失礼する。今日は久しぶりに話が出来てよかった。次に会うのは大会の時になるかも知れないが………お前とまた会えるのを楽しみにしている」
「不知火さん………無理だけはしないでくださいよ?」
「分かっている。なに、俺は俺のデッキと一緒でしぶといからな。成し遂げるまでは、何度でも蘇ってみせるさ。冬城、結束のことは頼んだぞ?」
「ん、炎も頑張って」
「ああ、今日も勝ってくるさ。俺も『Trumpfkarte』だからな」
そういうと不知火さんは病室から出て行った。
不知火さんを見送り、俺は側にいた闇に向かって口を開く。
「俺って、本当に沢山の人に思われてんだな。あんなに沢山のことを調べて貰ってさ」
「ん、『Trumpfkarte』は皆遊騎のこと大好きだから。だから、皆遊騎が戻って来る日を待ってるんだよ」
「………もっとちゃんと向き合わないといけないよな、『Trumpfkarte』とも」
「私は、遊騎がいるなら何処でもいい。皆も、きっとそう思ってるよ。私達は、あの頃から変わってない。『Natural』で皆でデュエルしてたあの頃から………ずっと、遊騎が抗う姿を見てたから」
「………遊花といい、俺には勿体ない人達ばかりだよ、本当にさ」
そう言いながら俺は病室の窓の外に目をやる。
俺も、進まないといけないよな。
遊花の為にも………俺自身の為にも。
ーーーーーーー
○
「サクリファイスでミセスレディエントを攻撃‼︎イリュージョンマグネットストームマキシマム‼︎」
「リバースカードオープン‼︎罠発動‼︎立ちはだかる強敵‼︎相手の攻撃宣言時に自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、発動ターン相手は選択したモンスターしか攻撃対象にできず、全ての表側攻撃表示モンスターで選択したモンスターを攻撃しなければならない‼︎対象にするのは磁石の戦士マグネットバルキリオンだ‼︎」
「でも、サクリファイスは攻撃力4000‼︎磁石の戦士マグネットバルキリオンの守備力は4350‼︎サクリファイスはこのカードの効果でモンスターを装備したこのカードの戦闘で自分が戦闘ダメージを受けた時は、相手も同じ数値分の効果ダメージを受けるようになるから反射ダメージで私の勝ちだよ‼︎」
「ああ、だから遊花も道連れだ‼︎リバースカードオープン‼︎罠発動‼︎仁王立ち‼︎フィールドの表側表示モンスター1体を対象にそのモンスターの守備力は倍になり、ターン終了時にその守備力は0になる‼︎対象は磁石の戦士マグネットバルキリオンだ‼︎」
「ええっ⁉︎」
磁石の戦士マグネットバルキリオン
DEF4350→8700
「さあ、反射ダメージ3700を一緒に受けて貰うぜ‼︎」
「もう〜‼︎どれだけ負けず嫌いなの〜‼︎」
遊花 LP1600→0
大地 LP200→0
「また引き分け。こうなると逆にすごい」
「今何回目だったかしら………御子神は覚えてる?」
「4回目。サクリファイス2回にファイナルフュージョン2回」
「つまり試験を入れて5回目ね。九石が負けず嫌いなのもあるけど、いつになったら決着がつくのかしら?」
「ははは、これはまた遊花君は面白いお友達を連れてきたものだね」
「面白いって言えるのかしら、アレって」
カードショップ『Natural』の一角で引き分けばかりを続ける遊花と大地を眺めながら、桜は霊華と島とそんな会話をしていた。
期末試験が終わり、遊花と一緒に帰ろうとした桜は遊花を引っ張りながら現れた大地と、そんな遊花に誘われて追いかけてきた霊華と一緒に『Natural』に連れてこられていた。
そして連れてきた本人達は試験での決着をつける為に早々にデュエルをはじめてしまい、結果手持ち無沙汰になってしまったのでそのデュエルを観戦しながら霊華や島と話していたのだ。
「ああ、面白いとも。お互いに勝つ為に全力でデュエルし、その結果いつも引き分けを引き寄せているのだからね」
「まあ、さっきはどう頑張っても負ける状況だったから遊花からサクリファイスで自爆特攻をかけたものね」
「あの2人からはお互いに似た波動を感じるわ。きっとその波動があの結果を導いているのね」
「………相変わらず御子神の言ってることはよく分からないわ」
「ははは、それにしてもこんな光景、いつ以来だろうね。もう随分見ていない気がするよ。遊騎君がいた頃はよく見ていたけどね」
そういって懐かしそうに目を閉じる島に桜は興味本意からそのことを尋ねた。
「結束がいた頃は違ったの?」
「まあ人数はあまり変わらないけどね。前に桜君には話しただろうけど、ここは『Trumpfkarte』の子達がよく来ていたからね。特に遊騎君と闇君は、今の遊花君達のように毎日デュエルをして、それを他のメンバーがよく眺めていたものさ」
「プロチーム『Trumpfkarte』が結成されたお店。ここからは面白い波動を沢山感じるわ。ここは本当に素敵な場所なのね」
「ははは、霊華君のような子にそう言われると嬉しいね。だからこそ、今の現状は少しだけ寂しいよ。あの子達のいた場所には、誰もいなくなってしまったからね」
そういって寂しそうに笑う島を見て、桜は何とも言えない気持ちになる。
なんとなく気まずい気分になっていると島はなんてことないように笑う。
「桜君が気まずく感じる必要はないさ。確かに、今はあの光景は見れなくなってしまったが、今日こうして、新しい光景を見せて貰えているからね。やはり、遊花君は遊騎君に似ているよ。その生き方でこうして周りの人を惹きつけていくところとかね」
「も〜いつになったら決着が………あれ?島さん‼︎」
そんなことを話していると遊花の方から島に向けて声がかかる。
島が遊花の方を見ると遊花の手には1枚のカード。
そのカードから溢れ出ている闇とそれを手にしても平然としている遊花。
島は思った。
またか、と。
「こんなところにカードが落ちてますよ?」
「遊花が持っているカードから面白い波動を感じるわ」
「アンタは何言ってるのよ?どう見てもただのカードじゃない」
「………遊花君は本当にそういうカードを惹きつけているんだね。あまり触らない方がいいものなんだが………」
「えっ⁉︎またそんなにダメなカードだったんですか⁉︎弁償ですか⁉︎」
「マジで⁉︎そんなにレアなカードなのか、それ‼︎」
そういってカードを覗き込もうとする大地と慌てている遊花。
それを見て島も思わず苦笑を浮かべる。
「いやいや、遊花君なら別に構わないよ。なんなら遊花が持っていってくれても構わない。その子もアンチホープのように、少し扱いに困っていたカードだからね」
「島さん………なんでそんなカードが店の中に落ちてるのよ?」
「ははは、案外自分から逃げ出してるのかもしれないよ?」
「そんなわけないでしょ‼︎ちゃんとカードを管理はした方がいいわよ。カードショップなんだから………」
そういって呆れて声をかけてくる桜に、島も苦笑いで返す。
そんな2人を余所目にカードを覗き込んでいた遊花は、しばらく考えてから申し訳なさそうに島を見た。
「あの、それならこのカードいただいてもいいですか?勿論お金は払いますから‼︎」
「いやいや、お代はいらないよ。そのカード、気に入ってくれたのかい?」
「その………なんて言えばいいのか分からないんですけど、アンチホープの時と同じ感覚がしたんです。この子も、
「………遊花まで変なことを言い出したわね………類は友を呼ぶって奴かしら?」
「?なんで私を見るの?それにそれは桜も同じという意味じゃないかしら?」
「私はアンタ達と比べれば常識人よ‼︎」
隣で騒ぎ立てる桜を見て、島は笑うと優しい表情で遊花を見た。
「ははは。ともかく、使いたいのなら使ってあげなさい。その子はきっと、君を待っていたのだからね」
「‼︎はい‼︎ありがとうございます‼︎」
「なんだ?そのカード、遊花のデッキに入れるのか?」
「うん‼︎だけど、ちょっと構築も変えないといけないかな?この子を活かせるようにしてあげないと」
「うっし‼︎なら、デュエルは1度止めてカードを一緒に探そうぜ‼︎俺も手伝うからさ‼︎」
「うん‼︎ありがとう、大地君‼︎」
そういってストレージやショーケースからカードを探し始める遊花と大地を見て、島は嬉しそうに笑った。
「いやはや、遊花君は本当にいい出会いをしたんだね」
「………そうね、今日のところは遊花はいい出会いをしたと思うわ」
「桜?」
島の言葉に、少し顔を強張らせる桜に霊華は首を傾げる。
そんな霊華に、桜は苦々しい表情で口を開く。
「霊華だって分かってると思うけど、大地も霊華も………癪だけど空閑の奴も、トップ10の中では遊花のことをあまり気にしてない友好的な部類だわ。だけど………残りの奴らは全員が友好的ってわけじゃない。それどころか、
「………」
桜の言葉に、霊華も思うところがあるのか口を閉じる。
自分と同じぐらい強いということで一括りにされている分、霊華だって同じトップ10のメンバーのことは耳にしている。
その中に、桜が
「遊花は明るくなった………ううん、違うわね。結束と会ってから、あの子は元の自分に戻ることが出来たの。でも、そいつらとデュエルすることになった時………あの子が傷つかないか、またあの頃の遊花に戻ってしまわないか………それが心配なの。今日のデュエルが、楽しく終わっただけに、ね」
そういって暗い顔をする桜の肩を霊華は優しく叩いた。
「大丈夫」
「御子神?」
「今日デュエルをして遊花のことはよく分かったわ。あの子は強い。悪意なんかでは決して屈しない程に」
「でも………」
「不安なら、私達が支えてあげればいいだけ。あの子は沢山のものに支えられて、私達と戦う場所に立った。なら、今度も同じように支えてあげればいい。私もあの子を支えるわ。あの子からはそういう波動が出ているの。周りの人を惹きつける波動を」
「………最後で台無しよ、途中まではいいこと言ってたのに………でも、まあそうよね。支えてあげれば、いいのよね」
「ええ」
頷き合う桜と霊華に遊花と大地が声をかけながら手を振る。
「桜ちゃん‼︎霊華さん‼︎少しデッキ作るの手伝ってくれないかな?」
「桜と霊華も一緒に探さないか?面白そうなカード、いっぱいあるぜ‼︎」
そんな2人を見て、桜と霊華は顔を見合わせてくすりと笑うと2人の方に歩いていく。
そんな4人の姿を見て、島は嬉しそうに呟いた。
「本当に………いつみてもいい光景だよ。若者達が未来に進んでいく姿というのは、ね」
次回予告
大地達とのデュエルを通し、再び楽しいデュエルを体験した遊花。
その時の思いを胸に次のデュエルに向けて気合を入れる。
そんな遊花が次にデュエルするのは、隠しきれない傲慢な悪意。
次回 遊戯王Trumpfkarte
『蠢く悪意』
次回は再び遊花のデュエル回。
多分前後編に分かれると思います。
次回予告からして不穏な感じですが一体どうなることやら。
そして遊騎の過去にも何やらきな臭いものが見え隠れ
真相が明らかになる日は来るのか?
というところで今回はお開き。
ではでは〜