遊花VS桜、前編です。
デュエルは遊花視点で進みますが、ところどころで桜視点の回想が入ります。
正直、遊花回というよりは桜回と言った方がいいかも知れません。
回想時の台詞は『』にしてます。
そして今回は久しぶりの2万字越え、その上今までで1番文字数が多いです………前編なんだぜ、これ?
今回のデュエルパートは今までで1番疲れた気がします、主にルートを考える的な意味で。
どういうことなのかは本編にGOなのです‼︎
●
『ねぇ、そこでなにしてるの?』
そんな声が聞こえて私が振り向くと、そこには水色のリボンをつけた私と同い年ぐらいの女の子がいた。
その女の子の柔らかな笑顔が眩しくて、私はつい不機嫌そうに言葉を返す。
『なによ、わたしになにかよう?』
『むこうであそばないの?むこう、おともだちがたくさんいるよ?』
『いないわよ、おともだちなんて』
『いないの?』
『あいつら、わたしのことばかにするし。なんでおまえには"ぱぱ"がいないんだって。だから、あんなやつら、しらないわ』
『そうなんだ』
そういうと女の子は私が座っていた保育園の砂場に、同じように座り込む。
能天気な顔をして座り込む女の子に私は思わず、むっとして怒鳴りつけてしまう。
『なんなのよ‼︎わたしにようがあるわけじゃないんでしょ⁉︎さっさとどっかいきなさいよ‼︎』
『?なんで?』
『あんたもどうせわたしのことをばかにするんでしょ‼︎』
『??なんでばかにするの?』
『なんでって、ばかにしてんの⁉︎』
『???ゆうか、ばかにしてないよ?』
『あーもう‼︎なんなのよあんたは‼︎』
『?ゆうかはゆうかだよ?』
『なまえをきいたんじゃないわよ‼︎』
私の言葉に心底不思議そうに首を傾げる女の子を見て、私は何故だか胸が苦しくなって涙が溢れ出してくる。
私が急に泣き出したからか、女の子は心配そうな顔をして私の近くまで近寄ってくる。
『どうしたの?どこかいたいの?』
『いたい、わけじゃ、ない、わよ‼︎』
『えっと、えっと、いたいの、いたいの、とんでけー?』
『だから、いたいんじゃ、ない、わよー‼︎』
『でもでも、ないてるし。あのあの、なかないで?ぎゅー‼︎いいこいいこ』
そういって心配そうに私を抱き締めながら頭を撫でてくる女の子を見て、私の目から余計に涙が溢れてくる。
久しぶりだった。
お母さんや保育園の先生以外と話すのも、こうやって抱きしめて貰うのも。
だからこそ、涙が溢れるのは止められなかった。
『うわ、ああああああ‼︎』
『だいじょうぶ、だいじょうぶだよー』
『ああああああ‼︎』
『ゆうかがいっしょにいるよーだから、だいじょうぶだよーいたくないよー』
結局、そんな私の泣き声を聞いて、保育園の先生が近づいてくるまで、私はずっとその女の子ーーー遊花に抱きしめられながら泣いていた。
お父さんがいないことを馬鹿にされ、いじめられていた私の目には、能天気で、何も悩みが無さそうに笑う遊花が、羨ましく見えたんだと思う。
結局その後、私が泣いていたせいで遊花は遊花のお父さん達に怒られて、遊花のお父さん達が私のお母さんに必死に謝っている中、相変わらずぼんやりとしながらも心配そうに私の方を見つめていたのを覚えている。
その日から、遊花はいつも私の傍に来るようになって、私と一緒にいたせいで、同じように周りの子供からいじめられるようにもなって、私みたいに言い返したりもしないから、次第に遊花の方がいじめの標的になっていて………
それでも、遊花は気にした様子もなく、ずっと私の傍にいてくれた。
そんな遊花がいじめられるのは許せなくて、私は遊花をいじめようとする奴らを片っ端からこてんぱんにやっつけるようになった。
遊花のお父さんにデュエルを教えて貰ったり、身体の鍛え方も教えて貰って、デュエルでも、喧嘩でも、そう簡単には負けないぐらいに強くなった。
………身体の鍛え方に関しては、遊花のお父さんも苦笑していたけど。
『壊獣』を選んだのは、名前の通り、何もかも壊せるぐらい強くなりたかったからだ。
私を縛るしがらみも、遊花をいじめようとする敵も、全部壊してしまえるぐらい、強くなりたいと願ったから。
遊花は、『いつも私を守ってくれてありがとう』なんて言ってたけど、本当は逆だ。
私が守ってるんじゃない。
私が守られていたんだ。
遊花の優しさに、遊花の笑顔に、ずっと守られてた。
だから、遊花の両親が事故で亡くなって、遊花が塞ぎ込んで笑わなくなった時、今度こそ、私が遊花を守るんだって、思った。
遊花が私を助けてくれたように、今度は私が遊花を助けるんだって。
でも、結局私には遊花を助けることが出来なかった。
遊花が辛い時も傍にいることしか出来なくて、昔みたいに笑ってくれなくなった遊花を励ますことも出来なくて………
結局、最終的に遊花を助けたのは、私じゃなくて偶然出会っただけの結束だった。
………正直言うと、そんな結束に少し嫉妬した。
突然現れて、まるでヒーローみたいに遊花を救った結束に。
でも、そんな嫉妬も結束の話を聞いたら無くなった。
結束も、遊花と同じだったから。
辛い境遇にあっても、諦めずに前に進んでいた結束だったからこそ、遊花を救えたんだって、今なら思う。
そんなことを考えた時、私は自分がどうすればいいのか分からなくなった。
遊花を守ることも出来ず、結束のように導くことも出来ず、ただそこにいるだけの私は、どうすればいいのだろうかと。
だからこそ、私はーーー
ーーーーーーー
★
「………来たわね」
「桜ちゃん」
フィールドを移動すると、そこには既に桜ちゃんが待っていた。
桜ちゃんは見たこともないような真剣な表情で私を見ている。
私はその表情に少し戸惑ってしまうが、頭を振って余計な考えを追い出し、改めて桜ちゃんを見つめる。
「悪かったわね、急に順番を変更させて」
「やっぱり、桜ちゃんが順番を変えたんだ」
「ええ、校長室に乗り込んで直談判してきたわ」
「………もう、桜ちゃんはまた無茶をして………」
私は思わず呆れた視線を桜ちゃんに向ける。
「悪いとは思ってるわよ?でも、今回は必要なことだったの。期末試験が始まる前だったら最初に決めた通り、最後に遊花とデュエルをすればよかったんだけど、今はこのタイミングでデュエルをするのが1番いいの」
そういって真剣な表情のまま話しかけてくる桜ちゃんに、私も1度目を閉じてから真剣な表情を作る。
そんな私を見て、桜ちゃんはデュエルディスクを起動しながら口を開く。
「このデュエル、私が勝ったら次の神路祇とのデュエル、遊花には棄権してもらうわ」
「………分かった」
「………案外あっさりと頷いたわね。もっと驚いたり、怒るかと思ったんだけど………」
「桜ちゃんのことだもん。分かるよ………私のこと、心配してくれてるんだよね?神路祇君とデュエルして、私が傷つかないように………桜ちゃんは、いつも私を守ってくれるから、分かるよ」
桜ちゃんは、優しいから………いつも私を守ってくれる。
私がいじめられてる時も、お父さん達がいなくなって塞ぎ込んでいた時も、ずっと傍にいて、私を守ってくれていたから………今回も、神路祇君とデュエルして、私が傷ついてしまわないように、こういう提案をしてくれてるのは分かる。
だけど………
「だけど………桜ちゃんに勝ったら、いいんだよね?神路祇君ともデュエルして?」
「っ………へぇ、遊花にしては言うじゃない?いつも負けてるのに、私に勝てるとでも?」
「うん、勝つよ………私だって、いつまでも桜ちゃんに守られてるわけにはいかないから。桜ちゃんの隣に、私も立ちたいから………だから………」
私もデュエルディスクを起動して桜ちゃんに向けて構える。
そして、私は真剣な表情を崩し、精一杯の笑顔を浮かべた。
「始めよう………本気の、楽しいデュエルを‼︎」
「っ‼︎楽しい………か。この状況でも、遊花はそう言うのね………」
そんな私を見て、桜ちゃんは真剣な表情を崩し呆れたような表情を浮かべる。
そしてしばらくの間目を閉じると、いつもの自信満々な笑みを浮かべた。
「なら、楽しめるものなら楽しんでみなさい‼︎私は容赦なく、遊花に勝ってやるわ‼︎」
「うん‼︎いくよ、桜ちゃん‼︎」
『決闘‼︎』
遊花 LP8000
桜 LP8000
ーーーーーーー
「先攻は私だよ‼︎クリバンデットを召喚」
〈クリバンデッド〉☆3 悪魔族 闇属性
ATK1000
私の前に現れたのは盗賊のような姿をした黒い毛玉のモンスター。
桜ちゃん相手に先攻なら、フィールドにモンスターを残しちゃダメだ。
フィールドにモンスターを残すと、そこから壊獣が現れてヘルテンペストを使われる可能性が出てくる。
だから、最初の内はモンスターをフィールドに残さずに、手札補充と墓地肥やしに専念する。
「私はカードを2枚伏せてエンドフェイズにクリバンデットの効果発動‼︎このカードをリリースしてデッキの上から5枚めくり、その中から魔法・罠カード1枚を手札に加えて残りを墓地おくよ‼︎」
クリバンデットの姿が消え、私はデッキの上から5枚のカードをめくって中から1枚のカードを手札に加える。
「私は魔法カード、クリボーを呼ぶ笛を手札に加えてターンエンド‼︎」
遊花 LP8000 手札3
ーー▲▲ー ー
ーーーーー
ー ー
ーーーーー
ーーーーー ー
桜 LP8000 手札5
「私のターン、ドロー‼︎………流石にモンスターがいないんじゃどう動こうとヘルテンペストは決められないわね。私はフィールド魔法、KYOUTOUウォーターフロントを発動‼︎」
桜ちゃんがフィールド魔法を発動すると、辺りの景色が海が近くに見える都市の街並みに変わる。
このカードは壊獣をサーチしたりできるフィールド魔法だったハズ………気をつけて動かないといけないかな。
「そして行くわよ、私の相棒‼︎月より来たる永遠の姫‼︎
〈妖精伝姫-カグヤ〉☆4 魔法使い族 光属性
ATK1850
現れたのは月のマークが入っている扇子を持ったお姫様。
カグヤは挨拶をするように私に扇子をひらひらと振ってにこやかに笑う。
桜ちゃんの相棒、カグヤ。
いつもこうやって挨拶をしてくれるいい子なんだけど、その効果は私にとってかなり辛いものなんだよね。
「妖精伝姫-カグヤの効果発動!召喚に成功した時、デッキから攻撃力1850の魔法使い族モンスター1体を手札に加える。私は2体目の妖精伝姫-カグヤを手札に加えるわ。バトル‼︎妖精伝姫-カグヤでダイレクトアタック‼︎タツノクビノタマ‼︎」
「あう‼︎」
カグヤは着物の中から綺麗な玉を取り出し、その玉を振りかぶって私に向かって投げつける。
毎回思うんだけど、凄く気合を入れた投球フォームで投げてくるけど、いいの、それ投げても?
遊花 LP8000→6150
「何も使ってこないか………私はカードを3枚伏せてターンエンドよ」
遊花 LP6150 手札3
ーー▲▲ー ー
ーーーーー
ー ー
○ーーーー
ー▲▲▲ー ▽
桜 LP8000 手札3
「私のターン、ドロー‼︎金華猫を召喚‼︎」
〈金華猫〉☆1 獣族 闇属性
ATK400
現れたのは霊体になっている猫のようなモンスター。
「金華猫の効果発動‼︎召喚した時、墓地に存在するレベル1モンスターを特殊召喚するよ‼︎戻ってきて、ミスティックパイパー‼︎」
「クリバンデットの時に墓地にいってたのね………」
〈ミスティックパイパー〉☆1 魔法使い族 光属性
DEF0
現れたのはフルートのようなものを弾いている男の人。
「ミスティックパイパーの効果発動‼︎このカードをリリースして自分のデッキからカードを1枚ドローするよ。そしてこの効果でドローしたカードをお互いに確認し、レベル1モンスターだった場合、自分はカードをもう1枚ドローするよ‼︎」
ミスティックパイパーが私を見て任せろというようにサムズアップをする。
私もサムズアップして返すと笑顔を浮かべながら消えていった。
「私が引いたのはバトルフェーダー‼︎レベル1モンスターだからもう1枚ドロー‼︎」
「KYOUTOUウォーターフロントの効果、フィールドのカードが墓地に送られる度に、1枚につき1つこのカードに壊獣カウンターを1つ。最大5つまで壊獣カウンターを置くわ」
KYOUTOUウォーターフロント
壊獣カウンター0→1
引いたカードも合わせて手札を見るけど、今の状態で虹クリボーとクリボールが引けていないのが少し辛い。
このままだと、3000以上のモンスターをこちらに送りつけられるとそのままヘルテンペストが決まっちゃうかも。
「私はカードを1枚伏せてエンドフェイズ。スピリットモンスターの共通効果で金華猫は手札に戻るよ」
「ならそのエンドフェイズ、速攻魔法、スケープゴート‼︎」
「えっ?」
「このカードを発動するターン、自分はこのカードの効果以外ではモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できなくなるけど、自分フィールドに獣族・地属性・レベル1・攻守0の羊トークンを4体守備表示で特殊召喚するわ‼︎ただし、このトークンはアドバンス召喚のためにはリリースできないけどね」
〈羊トークン〉☆1 獣族 地属性
DEF0
桜ちゃんのフィールドに現れるカラフルな羊達。
桜ちゃんのデッキにスケープゴートなんて前は入っていなかったと思う。
ということは、今回私とデュエルするために追加したカード?
でも、羊トークンが私とのデュエルで役に立つとは考え辛いけど………何か嫌な予感がする。
「KYOUTOUウォーターフロントの効果で壊獣カウンターを1つ置くわ」
KYOUTOUウォーターフロント
壊獣カウンター1→2
「………ターンエンドだよ」
遊花 LP6150 手札5
ー▲▲▲ー ー
ーーーーー
ー ー
○□□□□
ーー▲▲ー ▽
桜 LP8000 手札3
「私のターン、ドロー‼︎不思議そうな顔をしてるわね。確かに、スケープゴートは前は私のデッキには入って無かったわ。だけど、今回入れることにしたの。遊花とデュエルするために手に入れた新しい難題のためにね」
「新しい難題?」
「ええ、見せてあげるわ。私の新しい力を‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
「⁉︎桜ちゃんがリンク召喚⁉︎」
桜ちゃんが手をかざすと桜ちゃんの正面に大きなサーキットが現れる。
確かに桜ちゃんのEXデッキには数枚リンクモンスターが入っていたのは知っていた。
でも、私が見てきた限り、桜ちゃんはそのモンスター達を1度も使ったことはない。
そんなことをする前に壊獣の力で押し切っていたし、桜ちゃん自身、壊獣で押し切れない場合、自分が持ってるリンクモンスターじゃどうしようもないって言ってたから………そのモンスター達を今使ってくるの?
「召喚条件はモンスター2体‼︎私は羊トークン2体をリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎LANフォリンクス‼︎」
〈LANフォリンクス〉LINK 2 サイバース族 光属性
ATK1200 ↙︎↘︎
現れたのは白い蛇のような身体を持つ機械の竜。
「どんどん行くわよ‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
「っ、連続リンク召喚‼︎」
「召喚条件はモンスター2体‼︎私は羊トークン2体をリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎プロキシードラゴン‼︎」
〈プロキシードラゴン〉LINK 2 サイバース族 光属性
ATK1400 ←→
次に現れたのは私も使っている白い身体をした機械の竜。
出てきたのは小型のリンクモンスターが2体。
でも、桜ちゃん程の決闘者がこれだけで終わるとは思えない。
「私はこのターン通常召喚できなくなる代わりに自分フィールドに悪魔族・闇属性・レベル1・攻守0のトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚することで、遊花のフィールドにトーチゴーレムを特殊召喚するわ‼︎」
「っ⁉︎私のフィールドに⁉︎」
〈 トーチゴーレム〉☆8 悪魔族 闇属性
ATK3000
〈トーチトークン〉☆1 悪魔族 闇属性
ATK0
私のフィールドに大きな鉄のゴーレムが、桜ちゃんのフィールドにはそのゴーレムを小さくしたようなモンスターが現れる。
マズい、攻撃力3000のモンスターが送られて攻撃力0のモンスターが出てきた。
これじゃあヘルテンペストを使われちゃう‼︎
そんな焦る私を見て、桜ちゃんはクスリと笑う。
「焦ってるってことはヘルテンペストを防ぐカードはなさそうね。だけど、ヘルテンペストを使うのはもう少し先よ。繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
そういって桜ちゃんの前に再びサーキットが現れる。
「召喚条件は通常モンスター1体‼︎私はトーチトークンをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク1‼︎リンクスパイダー‼︎」
〈リンクスパイダー〉LINK1 サイバース族 地属性
ATK1000 ↓
桜ちゃんの前に機械の蜘蛛が現れる。
それを確認しながら桜ちゃんはまたサーキットを開く。
「まだまだ行くわよ‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
「っ、また⁉︎」
「召喚条件はトークン以外の同じ種族のモンスター2体‼︎私はリンクスパイダーとLANフォリンクスをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎アカシックマジシャン‼︎」
〈アカシックマジシャン〉LINK 2 魔法使い族 闇属性
ATK1700 ↑↓
次に現れたのはフラスコを持った研究者のような女の子。
女の子は私を見てウィンクをしている。
「KYOUTOUウォーターフロントの効果で壊獣カウンターを2つ置くわ」
KYOUTOUウォーターフロント
壊獣カウンター2→4
「そしてアカシックマジシャンの効果発動‼︎リンク召喚に成功した場合、リンク先のモンスターを全て持ち主の手札に戻すわ‼︎」
「えっ?」
アカシックマジシャンのリンク先………アカシックマジシャンの正面にいるのは………トーチゴーレム⁉︎
アカシックマジシャンが手に持っていたフラスコをトーチゴーレムに投げつけるとトーチゴーレムの姿が消え、トーチゴーレムが桜ちゃんの手札に返っていく。
さっき聞いた限りだと、トーチゴーレムの召喚にターン制限なんてものはなかった。
しかも、桜ちゃんのフィールドにはカグヤまでいる。
ということは、またトークンを利用されてリンク召喚をされちゃうの⁉︎
「気付いたみたいね。でも先にKYOUTOUウォーターフロントの効果、1ターンに1度、このカードの壊獣カウンターが3つ以上の場合、デッキから壊獣モンスター1体を手札に加えるわ。私が加えるのは、勿論切り札の雷撃壊獣サンダーザキングよ」
ウォーターフロントに地響きがして、桜ちゃんの手札にサンダーザキングが加わる。
桜ちゃんの切り札が加わった上に、ここからまだリンク召喚も残ってるなんて………
「私はまた自分フィールドに悪魔族・闇属性・レベル1・攻守0のトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚することで、遊花のフィールドにトーチゴーレムを特殊召喚するわ‼︎」
〈 トーチゴーレム〉☆8 悪魔族 闇属性
ATK3000
〈トーチトークン〉☆1 悪魔族 闇属性
ATK0
「次、行くわよ‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎召喚条件はモンスター2体‼︎私はトーチトークン2体をリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎セキュリティドラゴン‼︎」
〈セキュリティドラゴン〉LINK 2 サイバース族 光属性
ATK1100 ↑↓
次に現れたのはプロキシーに似た白い身体をした小型の機械の竜。
「セキュリティドラゴンの効果発動‼︎このカードがフィールドで表側表示で存在する限り1度だけ、このカードが相互リンク状態の場合、相手フィールドのモンスター1体を手札に戻す‼︎対象は勿論、トーチゴーレムよ‼︎」
「っ‼︎また………」
セキリュティが翼から電磁波のようなものを出し、それによりトーチゴーレムが再び桜ちゃんの手札に戻る。
またここからリンク召喚が来る。
本当に桜ちゃんは凄い。
今まで使ってこなかったリンク召喚を使って、こんなに凄いことが出来るなんて。
そんなことを考えている私を見て、桜ちゃんは優しい笑みを浮かべた。
「ここまで一方的に動かれて、そんな嬉しそうな笑顔を浮かべるなんて、本当に遊花は変わってるわね」
「えっ?笑ってた、私?」
「笑ってたわよ。凄くニコニコと、本当に遊花の笑顔は昔から変わらないわ」
思わず自分の顔をぺたぺたと触っていると、桜ちゃんがそんなことを言いながら昔を懐かしむように目を閉じる。
そしてしばらくすると、少し寂しそうな表情を浮かべた。
「遊花、さっき言ったわよね。『いつまでも桜ちゃんに守られてるわけにはいかない』って」
「えっ?う、うん」
「でもね、それは違うの。私は、遊花を守れてなんかいない。守られてたのは、私の方」
「えっ?桜ちゃん、が?」
桜ちゃんの言葉に私は首を傾げる。
私は桜ちゃんを守っていた記憶なんてない。
桜ちゃんはいつも強くて、私がいじめられてると、凄い勢いでその人達を追い払って、いつも私を助けてくれていたのに………
「遊花、私達が初めて会った時のことって覚えてる?保育園の砂場で1人でいた私に、遊花は話しかけてくれたわよね」
「えっと、うん。桜ちゃん、1人で寂しそうだったから」
私と桜ちゃんが初めて出会ったのは4歳の頃。
私が保育園の砂場で1人で寂しそうにしていた桜ちゃんを見つけて、一緒に遊べないかなと思って声をかけたのが始まりだった。
当時の私は保育園に入ったばかりだったし、理解できてなかったけど、桜ちゃんのお父さんは桜ちゃんが生まれてすぐに仕事中の事故によって亡くなったらしい。
そのことで桜ちゃんのお母さんは凄く苦労したという話は、私もよく聞いていたので知っている。
そして保育園にいた頃、お迎えに来ているのがいつもお母さんということに気づいた子供の誰かが、そのことを不思議に思っていなかった桜ちゃんに聞いたことで、周囲に知られ、そのことをからかわれていじめられていたようだ。
桜ちゃんと初めて会った時、少しお話ししてたら急に桜ちゃんが泣き出して、戸惑いながらもどこか痛いのかも知れないからどうにかしなきゃって思いで、痛いのが無くなるように頭を撫でながら抱きしめて慰めようとした記憶がある。
その後、保育園の先生が来て、私が桜ちゃんを泣かせてしまったということをお父さん達や桜ちゃんのお母さんに伝えて、私はお父さん達に怒られ、お父さん達は桜ちゃんのお母さんに必死に謝っていた。
私はなんで怒られたのか、全然分からなかったけど、それでも泣いてしまった桜ちゃんが心配で………次の日からはずっと桜ちゃんの傍にいるようになった。
桜ちゃんの辛そうに泣いてる表情が忘れられなかったから、誰かが泣いてるのは見たくなかったから、そんな思いで一緒にいた気がする。
そうして桜ちゃんと一緒にいると、知らない内に私もいじめられるようになっていて、それを桜ちゃんはいつも助けてくれた。
そしてお父さん達がいなくなってからも………沢山、本当に沢山守ってもらった。
それなのに、私を守っていないって言うのは、どういうことなんだろう?
「あの頃、遊花は確かにいじめられてたけど、それは私と一緒にいたせい。いじめられてた私と一緒にいて、だけど私みたいに言い返したりもしないから、私から標的が移っただけなの」
「えっと、それって別に桜ちゃんのせいって訳じゃないよね?いじめてた人達が悪いんだし………」
「それでも、私のせいで遊花が巻き込まれたことには変わりはないわ。私の代わりに遊花は傷付いた。私は遊花に助けられたのに………」
桜ちゃんの言葉に、私は何を言っていいのか分からなくなる。
私は、桜ちゃんのせいでいじめられてたなんて思ったこともないし、話を聞いた今も思ってもいない。
でも、桜ちゃんの言葉が正しいなら、確かにそれは私が桜ちゃんの身代わりになったような行為で、桜ちゃんからしたら、それは私が桜ちゃんを守って、代わりに私が傷ついたと感じて、苦しんでいたのかも知れない。
「だから、今度こそは私が遊花のことを守りたいの。それを遊花は望んでいないかも知れないけど、遊花は私の大切な"親友"だから、傷つくのは、見たくない」
「桜ちゃん………」
「だから、私も遊花みたいに変わってみせる‼︎このカードと一緒に‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
そういって桜ちゃんが手をかざし、巨大なサーキットが現れる。
「召喚条件はモンスター2体以上‼︎私はプロキシードラゴンとセキュリティドラゴンをそれぞれ2体分として扱ってリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」
「⁉︎リンク4のモンスター⁉︎」
桜ちゃんはリンク4のモンスターなんて持ってなかったハズなのに⁉︎
プロキシーとセキリュティが2体ずつに分身し、サーキットの中に吸い込まれる。
そして桜ちゃんはEXデッキから1枚のカードを取り出すと胸の前で握りしめた。
ーーーーーーー
●
『お願い、私に力を貸して‼︎リンク召喚‼︎閉ざされた運命を斬り開く魂の
『お、出たな‼︎遊花のヴァレルソードドラゴン‼︎』
『この状況でヴァレルソードドラゴン………』
『今度こそ、天雷君のサンダーエンドドラゴンを倒しちゃうんだからね‼︎』
『………はぁ〜』
『どうしたんだい、深いため息なんてついて?』
『島さん………』
デュエルをしている遊花と天雷。
それを近くで見ている九石を少し離れた場所から眺めながら、思わず吐いてしまったため息が聞こえたみたいで、島さんが声をかけてくる。
今日は御子神は用事があったみたいで『Natural』には一緒に来れなかったから、カウンターの近くにいるのは私と島さんだけだ。
『何か悩みごとかい?桜君は悩みごとはすぐに解決して作らないタイプだと思っていたけど』
『それってバカにされてる?』
『褒めているのさ。悩みごとを溜め込まないようにするのも大切なことだからね。でも、今は少し悩みがあるように見える。よければ話してみないかい?老い先短い老人だと思って』
『歳は聞いてないけど、見た目からして老人って言う程の歳じゃないでしょ、島さんは………でも、そういうことなら少しだけ………』
『ああいいとも。コーヒーはいるかい?』
『苦いのは苦手なの』
『じゃあカフェオレにしよう。椅子を持ってきてそこに座るといい。なに、どうせ客のこない店だからね。どこに座っても大丈夫さ』
『それは自慢気に言えることじゃないわよ、島さん』
そういって島さんがカウンターの後ろに置いてあったコーヒーメーカーを操作し始めたので、私は近くにあった椅子を持ってきてカウンターの前に座る。
………いいのかしら、ここカードショップなのに?
『ヴァレルソードドラゴンでサンダーエンドドラゴンを攻撃‼︎攻撃宣言時、ヴァレルソードドラゴンの効果発動‼︎アブソーブブースト!1ターンに1度、このカードが表側表示モンスターに攻撃宣言した時、ターン終了時まで、このカードの攻撃力はそのモンスターの攻撃力の半分アップし、そのモンスターの攻撃力は半分になる‼︎』
『ダメージステップ開始時、手札からオネストを発動‼︎自分の光属性モンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前までに、このカードを手札から墓地へ送ってそのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップします‼︎』
『ああ‼︎オネストはズルいよ〜‼︎』
そんな声が後ろにあるデュエルスペースから聞こえてくる。
この調子だと、今回も天雷の勝ちかしらね。
そんなことを思っていると、私の前にカフェオレが置かれる。
『それで、桜君は何を悩んでいるのかな?まあ、先程の視線やいつもの桜君を見ている限り、遊花君のことだとは思っているけどね』
『………そんなに分かりやすいかしら、私』
『どうだろうね、私は人間観察が趣味みたいなものだから気づけたのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。まあ、今そこは重要なところではないさ。問題は、桜君の悩みだよ』
『………意外と直球でくるのね、島さんって』
『桜君は直球で聞かれた方が答えやすいかと思ったからね』
『………あたり。人間観察が趣味って言うのも伊達じゃないわね』
私は苦笑しながらも、少しだけ遊花の方に視線を向けながら口を開く。
『遊花は、凄いスピードで成長してる。まあ、師匠が結束で、先輩として闇が教えてるって言うのもあるのかも知れないけど、それを踏まえても、やっぱり遊花の成長は凄いと思うわ』
『そうだね。遊花君のデュエルは何試合か見せて貰ったけど、相手の戦術も知識も根こそぎ吸収してるという印象だね』
『だからこそ、ちょっと不安なの。遊花が何処か遠いところに行っちゃうんじゃないかって。私の手の届かない、守りきれないところに行っちゃうんじゃないかって………まあ、今でも守れてるなんて言えないけど。あの子に対するやっかみは、ほとんど私が原因なんだし』
そういって島さんが作ってくれたカフェオレを飲みながら、自嘲気味に笑う。
昔だって、今だって、遊花がいじめられているのは私のせい。
原因も私でその後いじめが悪化したのも、そのことにイラついた私が叩きのめしたから。
私は………遊花の負担にしかなっていない。
そんな私を見て、島さんは優しい笑みを浮かべる。
『桜君は、本当に遊花君のことを大切に思っているんだね』
『私が今こうやって穏やかに過ごせているのは、遊花が私を助けてくれたから。遊花がいなかったら、私はどれだけ荒れてしまったかなんか、想像も出来ないわ』
『だからこそ、遊花君に追いつき、守りたいんだね、桜君は』
『………ええ』
遊花には沢山の恩がある。
こんな私といつも一緒にいてくれて、私が欲しいと思った言葉をくれて、居場所をくれた。
だから、そんな遊花を私は守りたい。
私は………私のデッキみたいに、壊すことしかできない獣のようなものなのかも知れないけど………それでも、遊花のことを………大切な親友のことを、守りたい。
そんな私を見て、島さんは柔らかい笑顔を浮かべると、何かを思い出したかのように、急に近くに置いてあった小さな箱を取り出し、中から1枚のカードを抜いて、私の前に置いた。
私はそれを見て、首を傾げながら島さんを見る。
『えっと………島さん、これは?』
『君の覚悟は十分に私に響いたよ。だから、お話を聞かせて貰ったお礼にそのカードをあげよう』
『えっ⁉︎そんな、悪いわよ‼︎私の悩みを聞いて貰っただけなのに………』
『ははは、気にすることはないよ。遊花君に渡したカードとはまた違った意味で扱いに困ってたカードだったからね。だが、桜君にならそのカードは相応しいだろう。何せ、このカードが君の元にいきたがっているからね』
『いや、意味わからないし………というか、それって不良在庫を押し付けられただけなんじゃ………』
困惑する私を見て、島さんは穏やかな笑みを浮かべながら口を開く。
『そのカードが、きっと桜君を望む場所まで連れて行ってくれるよ。君の守りたいという思いに応えてね』
『………分かったわ。受け取る………ありがとう、島さん』
『いやいや、気にしなくてもいいよ。それと、これは遊騎君や遊花君、後は闇君にも送った言葉だけど、桜君にも送らせて貰おう。抗いなさい。誰に何を言われようと、その思いを違えず、真っ直ぐに進んで行きなさい。絶望の先には、必ず希望が待っているハズだからね』
『‼︎………ええ‼︎』
私は貰ったカードを改めて見る。
カードが私のところに来たがってるとか、正直意味がわからないけど………それでも、このカードと一緒に進んでいきたいと思った。
遊花を………大切な人達を守れるように。
ーーーーーーー
★
「お願い、私に大切なものを守る力を貸して‼︎閉ざされた世界を守護する精神の盾‼︎リンク4‼︎ファイアウォールドラゴン‼︎」
咆哮が響く………世界を震わす龍の咆哮が。
〈ファイアウォールドラゴン〉LINK4 サイバース族 光属性
ATK2500 ←↓↑→
「これが私の新しい切り札………私にとっての、遊花のヴァレルソードドラゴン。それがこの、ファイアウォールドラゴンよ」
「ファイアウォールドラゴン………?」
桜ちゃんの前に現れたのはプロキシーとセキュリティが融合し、大きくなったような白いドラゴン。
ファイアウォールは桜ちゃんの姿を見て、嬉しそうに咆哮を上げる。
見たことがないドラゴンの姿に、思わず困惑する私。
それにあのドラゴンを見ていると、なんだか不思議な感じがする。
見たことがないハズなのに、何処かであったことがあるような………そんな不思議な感じが。
困惑している私を他所に、桜ちゃんはそのままターンを進める。
「妖精伝姫-カグヤの効果発動‼︎アンリーゾナブルディマンド‼︎1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動‼︎相手はそのモンスターの同名カード1枚を自身のデッキ・EXデッキから墓地へ送ってこの効果を無効にできる。墓地へ送らなかった場合、このカードと対象のモンスターを持ち主の手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できるわ。対象は勿論トーチゴーレムよ」
「このタイミングで⁉︎私のデッキにはトーチゴーレムは入ってないから、トーチゴーレムは手札に戻るよ」
私がそう宣言するとカグヤがテクテクと私のフィールドにいるトーチゴーレムに近づくと、その巨体を軽々と持ち上げて桜ちゃんに向かってぶん投げる。
すると、トーチゴーレムはカードとして手札に戻り、カグヤも1つ欠伸をしてから私にひらひらと手を振って眠そうに手札に戻っていった。
う、うーん、いつ見てもシュールな光景だなーというか、無理難題なのはカグヤのその筋力なんじゃ………
「なら私はまた自分フィールドに悪魔族・闇属性・レベル1・攻守0のトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚することで、遊花のフィールドにトーチゴーレムを特殊召喚するわ‼︎」
〈 トーチゴーレム〉☆8 悪魔族 闇属性
ATK3000
〈トーチトークン〉☆1 悪魔族 闇属性
ATK0
「さあ、また行くわよ‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
そういって桜ちゃんの前にもう何度目になるかもわからないサーキットが現れる。
「召喚条件はレベル1モンスター1体‼︎私はトーチトークンをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎希望の紡ぎ手‼︎リンク1‼︎リンクリボー‼︎」
「ええっ⁉︎リンクリボー⁉︎」
〈リンクリボー〉LINK1 サイバース族 闇属性
ATK300 ↓
出てきたのはいつも私に擦り寄ってくる青い球体型のモンスター。
だけど桜ちゃんのフィールドに現れたリンクリボーは桜ちゃんに擦り寄るようなことはせず、何処かキリッとした目でこちらを見ていた。
「あ、あれ?」
「?どうしたのよ、遊花?」
「いや、私のリンクリボーと少し違うというか、桜ちゃんのリンクリボーは私のリンクリボーみたいに擦り寄っていかないんだなって」
「………遊花、大丈夫?体調が悪かったりするの?」
「ええっ⁉︎だ、大丈夫だよ⁉︎」
「そう………きっと疲れが溜まってるのね。思えばここのところ上位者との連戦なんだし、疲れも溜まるわよね。大丈夫よ、出来る限り早めに終わらせるわ」
「え、ええっ………?」
なんだか桜ちゃんが凄く優しい目で私を見てくる。
げ、解せない。
だって、いつも私のリンクリボーは擦り寄って来てるし………うーん、立体映像にも個体差とかあるのかな?
「早めに終わらせるとは言ったけど、手は抜かないわよ。まずはアカシックマジシャンの効果発動‼︎1ターンに1度、カード名を1つ宣言してこのカードの相互リンク先のモンスターのリンクマーカーの合計分だけ自分のデッキの上からカードをめくり、その中に宣言したカードがあった場合、そのカードを手札に加え、それ以外のめくったカードは全て墓地へ送る。相互リンクしているのはリンク4のファイアウォールドラゴン。だから4枚までめくることが出来るわ。私が宣言するのはジェスターコンフィ」
桜ちゃんがカードをめくっていく。
そしてその中の1枚を私に見せた。
見せられたカードは当然、ジェスターコンフィ。
「宣言したカードがあったから手札に加えるわ。そして、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎召喚条件はトークン以外のモンスター2体以上‼︎私はリンクリボーとアカシックマジシャンを2体分として扱ってリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク3‼︎サイバースアクセラレーター‼︎」
〈サイバースアクセラレーター〉LINK 3 サイバース族 光属性
ATK2000 ←↓→
現れたのは背中にブースターのようなものをつけた人型のモンスター。
そしてそれに合わせてファイアウォールが咆哮を上げる。
「ファイアウォールドラゴンの効果発動‼︎リ・ペーストシールド‼︎このカードのリンク先のモンスターが、戦闘で破壊された場合、または墓地へ送られた場合に手札からモンスター1体を特殊召喚するわ‼︎再びフィールドに戻りなさい、妖精伝姫-カグヤ‼︎」
「ええっ⁉︎」
〈妖精伝姫-カグヤ〉☆4 魔法使い族 光属性
ATK1850
眠っていたところを起こされたのか、少しだけ不機嫌そうにしながら再びフィールドに現れるカグヤ。
そして私は恐ろしいことに気づいてしまった。
カグヤは自分の効果で相手モンスターと一緒に手札に戻り、ファイアウォールはリンク先のモンスターが墓地に送られるだけで手札からモンスターを出せる。
しかも、どちらの効果にもターン制限はない。
おまけに桜ちゃんにもリンクリボーがいる。
これ、かなりマズイことになってるんじゃ………
「ここでリバースカードオープン‼罠発動‼︎︎貪欲な瓶‼︎墓地に存在するリンクリボー、セキュリティドラゴン、プロキシードラゴン、リンクスパイダー、LANフォリンクスをEXデッキに戻して1ドロー。よし、フィールド魔法の張り替えよ‼︎フィールド魔法、サイバネットストーム‼︎」
「サイバネットストーム?」
都市が消え、フィールドが大きなデータの竜巻が吹き荒れるフィールドに変わる。
また、見たことがないカードだ。
師匠や闇先パイなら知ってるかも知れないけど………でも、見たことがないカードはワクワクする。
「サイバネットストームの効果でこのカードがフィールドに存在する限り、リンク召喚は無効化されず、リンク状態のモンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップされるわ」
「むむっ」
ファイアウォールドラゴン
ATK2500→3000
サイバースアクセラレーター
ATK2000→2500
トーチトークン
ATK0→500
分かってたことだけど、桜ちゃんのデッキは今までのデッキにプラスしてリンク召喚特化のデッキになっているみたいだ。
見たこともないカードがいっぱい出て来てるし、油断してるとすぐにやられてしまいそうだ。
「さあ、待たせたわね。お待ちかねのバトルフェイズよ‼︎」
「待ってはいないよ………ヘルテンペストは受けたくないし………」
「ふふっ、今日の嵐は一味違うわよ?バトル‼︎リンク状態じゃないトーチトークンでトーチゴーレムを攻撃‼︎」
「なら、このタイミング‼︎墓地に存在するクリボーンの効果発動‼︎さらにチェーンしてリバースカードオープン‼︎速攻魔法、クリボーを呼ぶ笛‼︎」
「っ‼︎クリボーン………それもクリバンデッドで落ちてたのね………」
「まずはクリボーを呼ぶ笛の効果で自分はデッキからクリボーまたはハネクリボー1体を選択し、手札に加えるか自分フィールド上に特殊召喚する事ができるよ‼︎私が選ぶのは手札に加える効果‼︎クリボーを手札に加えるよ。そして、クリボーンの効果で相手モンスターの攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のクリボーモンスターを任意の数だけ対象として、そのモンスターを特殊召喚するよ‼︎来て、サクリボー‼︎そして、いつだって、私と共に‼︎ハネクリボー‼︎」
〈サクリボー〉☆1 悪魔族 闇属性
DEF200
〈ハネクリボー〉☆1 天使族 光属性
DEF200
私のフィールドに現れる相棒とサクリボー。
それを見て、桜ちゃんが渋い表情を浮かべる。
「特殊召喚してこなかったのが不思議だったけど、墓地にすでにいたのね、遊花の相棒は」
「さあ、モンスターは増えたけど、攻撃対象の変更はする?」
「残したくはないけど、するわけないでしょ。リンク状態じゃないトーチトークンでトーチゴーレムを攻撃‼︎スーサイドエクスプロージョン‼︎」
「うぅ〜そうだよね。迎え撃って欲しくないけど迎え撃って、トーチゴーレム‼︎」
近寄ってきた小さなトーチトークンがトーチゴーレムに張り付いて爆発する。
しかし、当然ながらトーチゴーレムは無傷でピンピンとしていた。
桜 LP8000→5000
「さぁ、3000ポイントの戦闘ダメージを受けた時、リバースカードオープン‼︎速攻魔法発動、ヘルテンペスト‼︎」
「やっぱりあるよね………」
「このカードは3000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時に発動する事ができるわ。お互いのデッキと墓地のモンスターを全てゲームから除外する‼︎だけど、今日吹く嵐はこれだけじゃないわ、フィールド魔法、サイバネットストームの最後の効果発動‼︎ストームアクセス‼︎」
「えっ‼︎」
「自分が2000以上の戦闘・効果ダメージを受けた場合に、自分のEXデッキの裏側表示のカードだけをシャッフルし、その一番上のカードをめくる。めくったカードがサイバース族リンクモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚し違った場合は元に戻すわ‼︎」
「ええっ⁉︎」
さっきから桜ちゃんのEXデッキから出てきてるリンクモンスターはほとんどサイバース族モンスターだった。
ということは、EXデッキのモンスターはほとんどサイバース族のモンスターである可能性が高い。
桜ちゃんに向かってフィールドに吹いていたデータの嵐が近づき、桜ちゃんを呑み込む。
その嵐の中、桜ちゃんは正面に手をかざすと、データの嵐は桜ちゃんの手元に集まり、EXデッキから1枚のカードが桜ちゃんの手に収まる。
「迫る嵐も、最高の追い風に変えてあげるわ‼︎来なさい、バイナルソーサレス‼︎」
〈バイナルソーサレス〉LINK 2 サイバース族 地属性
ATK1600→2100 ←→
現れたのは長い手を持つ機械人形。
やっぱりあのEXデッキからなら出てくるよね。
「そしてヘルテンペストの効果でお互いのデッキと墓地のモンスターを全てゲームから除外する‼︎さらにデッキから除外されたネクロフェイスとドットスケーパーの効果発動‼︎ネクロフェイスの効果でこのカードがゲームから除外された時、お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する‼︎」
私のデッキから18枚のモンスターとさらに5枚のカードが除外され、墓地や元々除外されてたカードも合わせて26枚のカードが除外された。
これで残りのデッキは8枚の魔法・罠のみ。
「さらにドットスケーパーの効果でデュエル中に1度、このカードが除外された時、特殊召喚するわ‼︎」
〈ドットスケーパー〉☆1 サイバース族 地属性
DEF2100→2600
現れたのはドットの身体を持つモンスター。
これでまたモンスターが出てきたってことは、メインフェイズ2にはまたリンク召喚がくるってことだよね。
「妖精伝姫-カグヤの効果発動‼︎アンリーゾナブルディマンド‼︎1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動‼︎相手はそのモンスターの同名カード1枚を自身のデッキ・EXデッキから墓地へ送らなかった場合、このカードと対象のモンスターを持ち主の手札に戻す‼︎対象は勿論トーチゴーレムよ‼︎」
トーチゴーレムとカグヤが再び手札に戻る。
これでフィールドにもまた空きが出来るんだよね。
「さあ、行くわよ‼︎サイバースアクセラレーターでサクリボーを攻撃‼︎ブーストアームズ‼︎」
アクセラレーターがサクリボーに突撃して、そのまま弾き飛ばし、サクリボーが粒子になる。
「ファイアウォールドラゴンでハネクリボーを攻撃‼︎鉄壁のリフレクトノヴァ‼︎」
「っ、ゴメンね、相棒」
ファイアウォールの身体が赤く染まり、身体から溢れ出した雷がファイアウォールの前で光弾となりハネクリボーに撃ち出される。
ハネクリボーはそれを避けようとしたが、避けた瞬間にハネクリボーと光弾を囲うようにバリアが張られ、そのバリアの中で光弾が反射し、ハネクリボーを撃ち抜いた。
撃ち抜かれ、粒子に変わったハネクリボーは私の身体を包み込む。
「ハネクリボーの効果発動‼︎プリフィケーション‼︎このカードがフィールドから墓地に送られたターン、自分の受ける戦闘ダメージは0になる‼︎」
「その効果とバトルフェーダーからあるから決めきれないのよね。サイバースアクセラレーターには自身が攻撃できなくなる代わりに自分・相手のバトルフェイズにこのカードのリンク先のサイバース族モンスター1体に、そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで2000ポイントアップさせるか、そのモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できるようにさせれたのに………」
「ええっ………あ、危なかった。モンスターは私のモンスターを破壊するだけの数は足りてたし、攻撃力5000のファイアウォールドラゴンの攻撃なんて受けてられないよ」
「だけど、だからこそ私の難題は意味を成すわ。メインフェイズ2、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
「まあ、そうなるよね」
「召喚条件はモンスター2体‼︎私はトーチトークンとドットスケーパーをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎プロキシードラゴン‼︎」
〈プロキシードラゴン〉LINK 2 サイバース族 光属性
ATK1400→1900 ←→
「これで私のフィールドはまた空いたわ‼︎自分フィールドに悪魔族・闇属性・レベル1・攻守0のトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚することで、遊花のフィールドにトーチゴーレムを特殊召喚するわ‼︎」
〈 トーチゴーレム〉☆8 悪魔族 闇属性
ATK3000
〈トーチトークン〉☆1 悪魔族 闇属性
ATK0
もう何度目か分からないトーチゴーレムの特殊召喚。
心なしトーチゴーレムも疲れているように見える。
まあ、あれだけ手札とフィールドを行き来してたら疲れもするよね。
「そして、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎召喚条件は通常モンスター1体‼︎私はトーチトークンをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク1‼︎リンクスパイダー‼︎」
〈リンクスパイダー〉LINK1 サイバース族 地属性
ATK1000→1500 ↓
「まだ、まだ行けるわ‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎召喚条件はモンスター2体‼︎私はトーチトークンとリンクスパイダーをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎スペースインシュレイター‼︎」
〈スペースインシュレイター〉LINK 2 サイバース族 闇属性
ATK1200→1700 ↑↓
現れたのはパワードスーツのようなものを纏った人型のモンスター。
本当に、桜ちゃんはリンクモンスターの種類も増やしたんだね。
「ファイアウォールドラゴンの効果発動‼︎リ・ペーストシールド‼︎このカードのリンク先のモンスターが、戦闘で破壊された場合、または墓地へ送られた場合に手札からモンスター1体を特殊召喚するわ‼︎再びフィールドに戻りなさい、妖精伝姫-カグヤ‼︎」
〈妖精伝姫-カグヤ〉☆4 魔法使い族 光属性
ATK1850→2350
再びフィールドに呼び出されて桜ちゃんを見て仕方なさそうに項垂れているカグヤ。
貴方も疲れてるよね、うん。
そんな何処か脱力しそうな私とは逆に桜ちゃんは真剣な目で自分のEXデッキを一瞥してから目を閉じる。
そして、目を開けると真剣な表情で私を見た。
「遊花、見せてあげる。私のもう1体の新しい切り札を」
「もう1体の切り札?」
「ええ。ファイアウォールドラゴンは、デッキ調整の時に何人かに見せたけど、こっちは本当に誰にも見せてない。正真正銘、遊花が初めてみることになる切り札よ。私にとってのヴァレルソードドラゴンがファイアウォールドラゴンなら、これから出すモンスターは私にとってのヴァレルロードドラゴンかしらね」
「桜ちゃんにとっての………私のヴァレルロードドラゴン………」
「ええ、行くわよ、遊花‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
桜ちゃんの前にまたサーキットが現れる。
しかし、その後に続いた召喚条件に、私は驚くことになる。
「召喚条件は………効果モンスター3体以上‼︎」
「えっ⁉︎」
効果モンスター 3体以上………その条件は私が使うヴァレルソードとヴァレルロードと同じ条件。
前に闇先パイに教えて貰ったけど、この条件でのリンクモンスターはかなり珍しいという話だった。
大体の大型リンクモンスターでも大抵はモンスター2体以上で、 3体を最低ラインにしているヴァレルソード達は少し変わった部類だと。
それと同じ条件でのリンク召喚………それが意味しているのは………
「私は、妖精伝姫-カグヤ、スペースインシュレイター、プロキシードラゴンを 2体分として扱ってリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」
プロキシーが2体に分身し、インシュレイターとカグヤと一緒にサーキットの中に吸い込まれる。
そして桜ちゃんはEXデッキから1枚のカードを取り出すとファイアウォールの時と同じように胸の前で握りしめ、その名前を呼んだ。
「閉ざされた世界を守る決意の隔壁‼︎リンク4‼︎ヴァレルガードドラゴン‼︎」
「⁉︎ヴァレルガードドラゴン⁉︎」
咆哮が轟く………銃声のような、龍の咆哮が。
〈ヴァレルガードドラゴン〉LINK4 ドラゴン族 闇属性
ATK3000→3500 ↑↓→↘︎
現れたのはヴァレルロードに似た姿の腕にシールドがついたドラゴン。
ヴァレルガードもファイアウォールのように歓喜の咆哮を上げる。
「なんで、桜ちゃんがヴァレルの名を持つドラゴンを………」
「貰ったのよ………昨日の夜、闇にね」
「闇先パイに?」
「ええ、まあ遊花は闇が帰ってきた時、もう寝てたものね」
ーーーーーーー
●
『うーん、難しいわね………そもそもEXデッキのモンスターなんてまともに使ったことないし………』
『………デッキ、作ってるの?』
『きゃあ‼︎』
夜、23時をまわった頃、リビングで島さんに貰ったファイアウォールを眺めながらデッキを組んでいると突然後ろから声をかけられ、思わず悲鳴が漏れてしまう。
おそるおそる振り返ると、そこには相変わらずの無表情で闇が立っていた。
『お、驚かさないでよ⁉︎心臓に悪い………なんでアンタはそんなに気配がないのよ‼︎』
『ごめん、悪気はなかった』
『まあ、それぐらいは分かるけどね。お帰りなさい、今日は遅かったわね』
『ん、ただいま。ちょっと知り合いが仕事の収録前に一緒にご飯食べようって誘ってきたから、少し遅くなった。遊花はもう寝てる?』
『ええ。明日が試験も最終日だしね。私はデッキも組み直したかったし、闇が帰って来てないのに戸締りするわけにもいかないからこうして起きてたってわけ』
『ごめん、考えてなかった。今まで1人暮らしだったから、何時に帰って来ても関係なかったし』
『別にいいわよ。私も正直煮詰まってたところだしね』
そういってもう1度テーブルの上に広げていたカード達に目をやる。
闇も近づいてきて、テーブルの上においてあるカード達を覗き込む。
そして少しだけ驚いたような声色で口を開く。
『桜、リンク召喚を使うの?』
『まあね。島さんから貰ったファイアウォールドラゴンのカードを使いたくてね。でも、私は壊獣しか使ったことないし、どうすればいいのか分からないのよね』
そういって闇にファイアウォールのカードを見せる。
すると、闇はファイアウォールを見て目を見開いた。
『ファイアウォール………桜、貰えたの
?』
『?闇は知ってるの、このカード?なんかこのカードが私のところに来たがってるとか、よく分からないことを言われて渡されたのよね』
頭を掻きながらそういうと、闇は少しだけ驚いたような表情を浮かべた気がした。
『そっか………
『えっ?』
『なんでもない。そういうことなら、私も手伝う。桜にも、お世話になってるから』
『………そうね、ここはお言葉に甘えようかしら。私1人じゃ限界みたいだし』
『ん、任せて』
それから闇に意見を聞きながらデッキを組み上げていく。
足りないカードもあったけど、闇が自分は使わないからと余っているカードを分けてくれて何とか形になっていった。
そうしてデッキを組み上げていく中でふと思い出したかのように、闇が口を開く。
『そういえば、どうして今日の内に作ろうと思ったの?明日には遊花とのデュエルがあるハズ。組んだばかりのデッキより、使い慣れたデッキの方が全力でぶつかれると思うけど?』
そう不思議そうに尋ねる闇に、私は少し苦笑する。
多分、本当に今気づいたのだろう。
どこか抜けてるその様は自分の親友そっくりだ。
あまり口に出すつもりはなかったのだが、聞かれてしまったのに答えないのも落ち着かないからと、私は言うつもりのなかった思いを口に出す。
『この新しいデッキはね、願掛けのつもりなのよ』
『っ………願掛け?』
『ええ………私は遊花を守ることが出来てない。私のせいで、遊花は傷ついてばかりで………だから、今度こそ遊花を………大切な親友を守りたい。そして、遊花を守るために、今までの私でダメだというなら新しい私に変わってみせる。私は、壊獣みたいに壊すことしか出来ないのかも知れないけど………そんな私自身も受け入れて、その上で遊花を守れるように変わりたいの』
『………だから、壊獣デッキのままで、ファイアウォールドラゴンと一緒に戦いたいんだね』
『ええ………ファイアウォールドラゴンとは一緒に戦いたい。でも、壊獣だって今まで私と一緒に戦ってくれた大切な子達だから』
そういって、私は近くに置いてあったサンダーザキングとカグヤのカードを持つ。
『この壊獣デッキもね。実は私達に重ねて作ったの。壊獣は私自身。そして………カグヤは遊花』
『カグヤが遊花?』
『あの子、結構頑固でしょ?一度決めたら、他人が何を言っても聞かなくて、一直線に進んじゃって………そして、見えないところに消えてしまいそうな危うさが、あの子にはあるの。それがね、かぐや姫の昔話に似てると思ったの。かぐや姫も育ての親に引き止められても、自分の意思を曲げず、最後には月に帰っていった。それがなんだか遊花みたいに思えたの。だから、私のデッキには相手に送った壊獣を止めるためにカグヤが入ってるの。
昔から私が怒って誰かを傷つけようとすると、遊花は絶対に私を止めようとしていた。
どんなにムカつく奴らが相手でも、それをすると私も傷つくからって。
素直で、天然で、だけど芯はしっかりしてて、誰かを労わることができる優しい心を持った、私とは真逆の女の子。
だからこそ、私は遊花を守りたいと思う。
その優しさに、私も救われてきたのだから。
『私は壊獣に何もかも壊せる力を望んだ………その思いを壊獣達に押し付けて、自分自身に重ねてしまったのは私なの………だけど、壊獣達がカグヤの力を借りることでお互いに戦わないで済むように………壊獣達も、私も、誰かと力を合わせれば、見つけられるかも知れない。壊す以外の新しい在り方を』
『………そっか。その思いが、きっと………』
私の思いを聞いて、闇は何かを呟いて目を閉じる。
そして目を開けると、1枚のカードをとりだして私の前に置いた。
『なら、このカード、桜にあげる』
『このカード………って、ヴァレルリンクモンスター⁉︎なんで闇がそんなの持ってるのよ⁉︎』
『今日の大会で優勝した時に商品で貰った。本当は遊花にあげようかと思ったけど、このカードは桜の方が相応しい』
『い、いやいやいや、そんな軽く大会の優勝商品なんて渡してこないでよ‼︎貰えないわよ、そんなの‼︎』
『気にすることなんてない。どうせ私じゃ使えないし………それに前に言ったハズ。桜が私に勝つの、楽しみにしてるって。だから、そのための投資』
そういって闇は私の手に無理矢理ヴァレルガードドラゴンを握らせる。
私は握らされたヴァレルガードドラゴンを見て、思わずため息を吐く。
闇も遊花のようにかなり頑固だ。
多分、こうなってしまったら返そうとしても受け取ってくれないだろう。
『………分かった、受け取る。大切に使わせて貰うわ』
『ん、それで全力で遊花にぶつかってくるといい』
『………それで遊花が退学になる可能性もあるのよ?』
『それは困るけど、多分大丈夫。桜はその思いを違えなければいい。何かあっても、私がフォローするから』
『何する気なのよ………』
『内緒………桜の願い、叶うといいね』
『………ええ』
ーーーーーーー
★
「闇から貰ったこのカードで、私の難題は完成する。ファイアウォールドラゴンの効果発動‼︎リ・ペーストシールド‼︎2体目の妖精伝姫-カグヤを特殊召喚よ‼︎」
〈妖精伝姫-カグヤ〉☆4 魔法使い族 光属性
ATK1850
「そして、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚出来るわ。来なさい、ジェスターコンフィ‼︎」
〈ジェスターコンフィ〉☆1 魔法使い族 闇属性
ATK0
現れたのは球に乗った道化師のモンスター。
いつもならヘルテンペストのためのモンスターだけど、今の桜ちゃんにはリンク召喚がある。
「さあ、これがこのターン最後のリンク召喚よ‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」
桜ちゃんの前にもう何度目になるかもわからないサーキットが現れる。
「召喚条件はレベル1モンスター1体‼︎私はジェスターコンフィをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎もう1度希望を紡ぎなさい‼︎リンク1‼︎リンクリボー‼︎」
〈リンクリボー〉LINK1 サイバース族 闇属性
ATK300→800 ↓
再びフィールドに現れるリンクリボー。
だけど、そのリンクリボーが現れた場所は………
「もう1つのエクストラモンスターゾーンに⁉︎」
「これが私の新しい難題、エクストラリンクよ‼︎」
「エクストラリンク………」
エクストラリンク。
2つのエクストラモンスターゾーンに存在するリンクモンスターが、メインモンスターゾーンに存在するリンクモンスターを通じて全て相互リンクでつながっている状態のことがそう呼ばれている。
通常なら、片方のエクストラモンスターゾーンしかプレイヤーは使用することが出来ないけど、エクストラリンクとなる場合にのみ、もう一方のエクストラモンスターゾーンにもリンクモンスターを特殊召喚することができるようになるというものだ。
聞いたことはあったけど、まさか実物を、しかも桜ちゃんが使ってくるなんて………
「エクストラリンクが成立している限り、遊花はエクストラモンスターゾーンにEXデッキからモンスターは出せない。その上、私のモンスターのリンクマーカーは1つも遊花のバトルゾーンには向いてないから、そこから出すということも不可能。これで遊花のEXデッキは完全に封じたわ」
「っ‼︎」
「それと、教えておいてあげる。ヴァレルガードドラゴンは遊花のヴァレルソードドラゴンとヴァレルロードドラゴンを合わせたようなモンスター。ヴァレルガードドラゴンは相手の効果によって破壊されず、1ターンに1度、自分の魔法・罠ゾーンのカードを墓地に送ることでそのターンに破壊された自分または相手の墓地へ送られたモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する効果と、1ターンに1度フィールドのモンスター1体を守備表示にすることができる。勿論、ヴァレルソードドラゴンと同じように、相手はこの効果に対してカードを発動することができず、相手ターンにも使えるわ」
「うっ………」
それは確かにヴァレルソードとヴァレルロードの効果を合わせ、より防御能力を上げたような効果。
守備表示の効果を突破するにはリンクモンスターを出すしかないけど、今の私にはリンク召喚は封じられている。
その上、私のデッキは、ヘルテンペストを受けたせいでモンスターが残っていない。
私にあるのは墓地の少しのモンスターと手札にあるモンスターそして数枚の魔法・罠のみ。
だけど、私のメインデッキのモンスターはクリボー達が主になっているから、その攻撃力は基本的に300。
今のままだと、サイバネットストームで強化されてるのもあってリンクリボーすら倒せない。
さらにカグヤの効果もあるから最低でも3体分モンスターが出ないと攻撃が通らない。
「そしてファイアウォールドラゴンにも、このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、このカードと相互リンクしているモンスターの数だけ、自分または相手フィールド・墓地のモンスターを手札に戻せる。そしてこの効果も相手ターンにも使えるわ」
「っ………」
防御は許されず、攻めることも許されない。
おまけに耐え続けれてもデッキ枚数という限界が迫ってくる。
桜ちゃんは貪欲な瓶を使ってたけど、前のデッキと基本が同じなら、確か転生の予言まで入ってたハズ………貪欲な瓶と合わせてお互いをデッキに戻すから桜ちゃんにデッキ切れはない………やろうと思えば、相手が負けるまで永遠にデュエルができる。
………これが桜ちゃんの新しい力、新しい難題。
「私はこれでターンエンドよ。さあ、私に勝つというのなら、この難題を超えてみなさい‼︎」
桜ちゃんが真剣な表情で私を見る。
状況はいつも以上に絶望的。
だけど、最後まで諦めない。
私のためにこんな戦術を用意してくれた桜ちゃんの為にも、絶対に攻略してみせる‼︎
遊花 LP6150 手札6
ーー▲▲ー ー
ーーーーー
☆ ☆
○☆☆☆ー
ーーーーー ▽
桜 LP5000 手札2
次回予告
少女達はぶつかり合う、お互いの譲れない思いのために。
桜の繰り出したエクストラリンクにより、攻めることも守ることも許されなくなった遊花は、それでも諦めずに立ち向かう。
ぶつかり合う思いの果てに、導かれるデュエルの行方は?
次回 遊戯王Trumpfkarte
『親友』
次回、遊花VS桜、決着です。
流石に後編は今回程長くなりません。
次回は回想はあまり入らない予定だし………トーチゴーレムがいったりきたりしないからね‼︎
今回桜が1ターンで行ったリンク召喚の数、計13回。
多い、多いよ桜ちゃん………やっぱりトーチとファイアウォールはあかんのやなって、ぶっちゃけこれのせいで更新が遅れたまである。
因みに作中ではスケープゴートとかサイバネットストームがあったからエクストラリンク出来たようにも見えますが、カグヤがフィールドにいた時点であの2枚がなくても普通にエクストラリンクは成立させれます。
ファイアウォール効果でカグヤ出してトーチ戻せばいいだけの簡単なお仕事ですからね………怖い話です。
今回のお話は桜の内面を結構描いたお話になってます。
ただの友人というには過剰な程遊花を守ろうとする桜の裏側。
本人は気づいておらず、何気なく過ごしているつもりでも、それによって救われている人も、本当はいるのかも知れません。
というわけで、今回はここまでです。
流石に今週中に期末試験を終わらせるのは無理そうです。
来週のはじめ、なんとか仕事に完全復帰する前には終わらせれるようにしたいと思います。
ではでは〜