遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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遅くなってしまい本当に申し訳ありません。
休みなんて………幻想に過ぎなかったのです………
それはそれとして、いよいよ1章のラストです‼︎
今回は前半遊花視点、後半遊騎視点でお送りします。
最後まで張り切って、GO GO‼︎なのですよ‼︎



第51話 選択する運命

 

 

 

 

デュエルが終わり、立体映像が消えていく。

 

消えていくBlooーDの姿を見ながら、師匠は深く息を吐く。

 

「………ふぅ、何とか勝てた、か。本当に、強くなったな、遊花」

 

「いえ、私なんて、まだまだです。もっともっと頑張って師匠に追いつかないといけませんから‼︎」

 

「………目標にしてくれるのは素直に嬉しいんだが、そう自分を卑下することもないと思うんだがなぁ」

 

私の言葉に、師匠は苦笑を浮かべる。

 

師匠に褒められるのは嬉しいけど、やっぱり現状で満足してはダメだ。

 

師匠の後を継ぐのであれば、もっともっと腕を磨かないといけない。

 

それに、異世界で交わした約束もある。

 

『お互い強くなったら、お互い全力でデュエルしよう』

 

その約束を果たすためにも、私はまだまだ強くなりたい。

 

………少なくとも、自分の強さにちゃんと自信が持てるぐらいには。

 

「遊騎、遊花、お疲れ様」

 

「あ、闇先パイ」

 

「2人とも、凄くいいデュエルだった。特に遊花はペンデュラム召喚も使えるようになったし、大進歩。えらいえらい」

 

「ありがとうございます………えへへ」

 

そんなことを考えると、いつの間にか観戦場所から闇先パイが私達に近付き、そんなことを言いながら背伸びをして私の頭を撫でてくれる。

 

そんな闇先パイは無表情ながらも嬉しそうに、そしてちょっと困っているような声色で言葉を続ける。

 

「これで大会は終わり。だけど、ちょっと困ったことがある」

 

「困ったこと………ですか?」

 

「うん。遊花に勝ったんだから優勝者は遊騎。だけど、主催者も遊騎。元々この大会は記録に残すには問題があったけど、遊騎が優勝したことでより残すことが出来ない大きな問題になった」

 

「あ」

 

闇先パイの言葉に、師匠が冷や汗をかきながら引き攣った表情を浮かべる。

 

確かにこの大会は師匠が私のために開いてくれた大会だけど、それで師匠が優勝したことにどんな問題があるんだろう?

 

師匠や闇先パイが困った表情を浮かべている理由が分からず首を傾げていると、闇先パイは寂しそうな表情で口を開く。

 

「今回の大会では現在のプロリーグで活躍しているようなプロ決闘者が半数は出てる。その中で決勝を戦ったのがプロリーグを追放された遊騎と、まだデュエルアカデミア生である遊花。しかも、主催者であった遊騎がそのまま優勝したとなると、出来レースを疑われる」

 

「っ⁉︎そんなわけーーー」

 

「勿論、今日実際にデュエルをした皆はちゃんと分かってる。だけど、外部から見たらそうは思われない。世の中には、人の頑張りを悪意で塗り潰そうとするような輩が確かに存在する。そんな輩には、この大会の結果はうってつけなの………本当に、下らない」

 

「そんな………」

 

闇先パイが吐き捨てるかのようにそう告げる。

 

私や師匠がデュエルで勝ったことで、そんなことになるなんて………

 

闇先パイの言葉に、私は思わず泣きそうになりながら師匠を見る。

 

そんな私を見て、師匠は苦笑を浮かべながら、私の肩に手を置いた。

 

「そんなに泣きそうな顔をするなって。遊花が責任を感じることなんて何もないんだ。遊花は純粋に、今日の自分の成長を喜べばいいんだよ」

 

「でも………」

 

「でもも何もないって。それとも、遊花は今日、ここで行われたデュエルはあってはいけないと思うか?デュエルを通じて感じたことも、ぶつかった思いも、全部無かった方が良かったと思うか?」

 

「っ‼︎そんなわけないです‼︎今日の大会があったから、私は色んなことを知ることが出来たんです‼︎師匠のことも、闇先パイのことも、リーネさんのことも、美傘さんのことも、他の人達のことだって、たくさん知ることが出来たんです‼︎それなのに、今日のことが無かった方がいいなんて、そんなことあるわけないです‼︎」

 

師匠の言葉に、私は思わず大声で反論してしまう。

 

そんな私の言葉を聞き、師匠は安心したように柔らかく笑った。

 

「なら、それでいいんだよ。誰になんと言われようと、どう思われようと、俺達がそのことに意味を見出せたならそれでいいんだ。言いたい奴には勝手に言わせとけ………まあ、1番迷惑をかけちまう俺が言えたことじゃないんだがな」

 

「ふふっ、確かにね。だけど、遊騎はそれでいいし、遊花もそれでいい。2人が気にすることなんて何もない。元々、この大会を記録に残すには問題が多すぎるから今更多少の問題が増えても大して変わらない。それに、記録には残せなくても、記憶には残る。私達が忘れなければ、今日のことは無くならない」

 

「………闇がそういうと重いな」

 

「えへん。伊達に記憶を失ってないから」

 

「それも胸張って言えることじゃないけどな………俺もやらかした側だから大差は無いが」

 

そういって、師匠と闇先パイが冗談めかして笑う。

 

そんな2人を見て、私は思わず自分の手をギュッと握りしめる。

 

ああ、やっぱりこの人達は強い。

 

デュエルだけじゃなくて、心も。

 

私も、いつかはこの人達のようになれるだろうか?

 

どんなに辛いことがあっても、一緒に笑い飛ばすことが出来るように。

 

「それじゃあこれにて大会、『Bescheiden』の全日程を終了する。本日はこのような大会に参加してくれて感謝する。一応、この大会の参加者にはこちらで賞品は用意させて貰っている。といっても、成績に応じたこの『Natural』に置いてあるカードの交換券みたいなものだがな。順次配っていくから、交換したいものが決まったら俺か島さんに声をかけてくれ。そして大会が終わったため、ここからは自由時間だ。フリーデュエルを行ったり、積極的に交流してくれて構わない。それでは、これにて解散‼︎」

 

師匠の言葉に、観戦していた参加者達は思い思いに散っていく。

 

店内のショーケースを見て回る人や、デュエルを始める人、今日のデュエルについて話す人など参加者達の動きは様々だ。

 

そんな光景を思わずボーっと眺めていた私に、話しかけてくる声があった。

 

「お疲れ様なのです、遊花ちゃん」

 

「あ、リーネさん」

 

「遊騎君とのデュエル、すっごく良かったのです。冗談抜きで今すぐ遊花ちゃんが欲しくなっちゃたのですが………流石にデュエルアカデミアを中退して貰うわけにもいかないですからね、来年まで我慢するのです」

 

「あ、あはは………私も流石に中退はしたくないので、その方が助かります」

 

本当に残念そうなリーネさんを見て、私は思わず苦笑いを浮かべる。

 

せっかくこの間退学になりそうだった状況を覆したばかりなのに、中退するのは流石に勘弁してほしい。

 

「待ち遠しいのですが、その待っている間に遊花ちゃんがまた成長してくれるのをを楽しみに待たせて貰うのですよ。それじゃあ、リーネはここで失礼させて貰うのです」

 

「えっ⁉︎もう帰っちゃうんですか⁉︎」

 

「あはは、リーネも残念なのですが、まだ片付けないといけない仕事を会社に残してきちゃったので、仕方がないのですよ。遊花ちゃんの採用試験に関しては、闇ちゃんを通じてまた後日お知らせするのです」

 

「………もしかして、ご迷惑をかけちゃいましたか?」

 

私のために開かれたこの大会に出るためにお仕事を残してまで参加してくれたのであれば大変心苦しい。

 

私が申し訳なく思っていると、リーネさんは慌てたように手を振った。

 

「ち、違うのです‼︎遊花ちゃんは何も悪くないのですよ?ただリーネがお仕事を片付けるのが苦手なだけなのです‼︎」

 

「それは大声で言えるようなことでもないだろうが、アホめ」

 

「あぅ‼︎痛いのですよ、遊騎君‼︎」

 

「お前がアホなことを大声で宣言してるからだろうが………」

 

リーネさんの声が聞こえたのか、交換券を配っていた師匠が呆れた表情を浮かべながら近づいてきてリーネさんの頭を軽く小突く。

 

「というか、お前の場合は仕事が残るのはサボり癖があるからだろうが。やる気さえ出せば冗談みたいなスペックで仕事を片付ける癖に」

 

「だってだって、遊騎君がいなくなってからは息抜きがあんまり出来なくなっちゃったので、息が詰まっちゃうのですよ。炎君、真面目過ぎるのです。遊騎君がいた時はなんだかんだ言って遊騎君は息抜きに付き合ってくれてたのに、炎君はなかなか息抜きさせてくれないのです」

 

「俺だって別に付き合いたくて息抜きに付き合ってた訳じゃないんだが………」

 

「うぅ〜遊騎君、やっぱり『Trumpfkarte』に戻って来る気は無いのです?書類仕事だけでも手伝ってくれたらリーネは凄く助かるのですが………」

 

リーネさんは何処か冗談めかしながら、それでいて真剣な表情で師匠にそんなことを言う。

 

そんなリーネさんに、師匠は苦笑をしながらも首を振る。

 

「悪いが、お前達に迷惑がかかるのが分かってて戻るつもりはない。ただでさえ、お前達には借りが多いんだ。これ以上借りを作ってられないさ」

 

「リーネはそんなこと気にしないのですが………仕方がないのです。頑固な遊騎君の説得はまた時間が出来た時にゆっくりするのです」

 

「………諦める気は?」

 

「無論、ないのです‼︎リーネは強欲ですからね、遊騎君が戻って来てくれるまで何度だって言うのですよ」

 

胸を張ってそう告げるリーネさんに、師匠は困ったような表情を浮かべながらリーネさんに背を向ける。

 

そして呟くような声で口を開いた。

 

「………まあ、考えてはおく」

 

「‼︎えへへ、言質は取ったのですよ?」

 

「あくまで考えておくだけだ」

 

「それでも十分なのです‼︎それじゃあ、リーネは本当にここで失礼するのです‼︎遊騎君、遊花ちゃん、また、なのです‼︎」

 

「あ、はい‼︎また‼︎」

 

「………ああ」

 

リーネさんは心底嬉しそうな笑顔を浮かべると、そのまま『Natural』を出て行った。

 

私はリーネさんが出て行くのを見送ってから、師匠の方を見る。

 

私の視線に気づいたのか、師匠は苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「………はぁ〜甘いよな、俺。困ってる奴は、どうしても放っておけない」

 

「いえ、師匠は甘いんじゃくて、優しいんですよ。それでこそ、私が尊敬する師匠です‼︎」

 

「………そんなんじゃないと思うんだけどな。とりあえず、ほら、遊花にも交換券渡しとくな」

 

「あ、ありがとうございます。といっても、私の欲しいカードは師匠や闇先パイが譲ってくれたので、特に思い浮かばないのですが………」

 

「………まあ、今すぐに交換しないといけないわけじゃないし、ゆっくりカードを見たり、他の奴らと話ながら考えればいいさ。それより、遊花もあっちでデュエルしてる奴らに混ざってきたらどうだ?他の奴らのデュエルを見ることも勉強になるだろうからな」

 

「そうですね………はい。それじゃあ、色々見てじっくり考えたいと思います」

 

「ああ、それじゃあまた後でな」

 

「はい‼︎」

 

師匠が私にひらひらと手を振って、島さんがいるカウンターに向かって行く。

 

私はそんな師匠を見送り、みんながいるデュエルスペースに移動する。

 

デュエルスペースではちょうど美傘さんが大地君とデュエルを行なっており、それを桜ちゃんと霊華さん、そして不知火さんが観戦していた。

 

「オッドアイズファンタズマドラゴンで電磁石の戦士マグネットベルセリオンを攻撃‼︎この瞬間、ペンデュラムスケールのオッドアイズファントムドラゴンの効果発動‼︎1ターンに1度、もう片方の自分のPゾーンにオッドアイズカードが存在する場合、自分の表側表示モンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時にその自分のモンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1200ポイントアップする‼︎」

 

 

オッドアイズファンタズマドラゴン

ATK3000→4200

 

 

「っ、攻撃力4200‼︎」

 

「さらに速攻魔法、アクションマジック-フルターン‼︎このターン、モンスター同士の戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは倍になる‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

「そしてオッドアイズファンタズマドラゴンの効果発動‼︎ファントムワールド‼︎このカードが相手モンスターに攻撃するダメージ計算時、その相手モンスターの攻撃力はそのダメージ計算時のみ、自分のEXデッキの表側表示のペンデュラムモンスターの数×1000ポイントダウンする‼︎」

 

「っ⁉︎ってことは………‼︎」

 

「私のEXデッキにいるペンデュラムモンスーはEMドクロバットジョーカー、オッドアイズペルソナドラゴン、そしてオッドアイズペンデュラムドラゴンの3枚‼︎よって、電磁石の戦士マグネットベルセリオンの攻撃力は3000ポイントダウン‼︎」

 

 

電磁石の戦士マグネットベルセリオン

ATK3000→0

 

 

Well then finale( それじゃあフィナーレだよ)‼︎幽幻のファンタズマミラージュ‼︎」

 

 

大地 LP6500→0

 

 

「だあー‼︎負けた‼︎やっぱりプロ決闘者って強え‼︎」

 

「ふぃ〜危なかった〜遊花ちゃんといい、霊華ちゃんといい、本当に最近のデュエルアカデミア生は凄いなぁ。うかうかしてたらすぐに抜かれちゃいそうだよ」

 

「うん、流石の大地もプロ決闘者相手には分が悪いみたい」

 

「流石に九石がプロ決闘者相手に何回も勝ったら驚くわよ。デュエルアカデミアでは私達より順位下なんだから」

 

「九石は十分健闘していたと思うぞ。デュエルアカデミア生の間でプロ決闘者とデュエル出来る機会自体多くはないだろうが、その上で1度勝利しているのだからな」

 

「大地君、美傘さんとデュエルしてたの?」

 

「お、遊花、こっちに来たのか。美傘さんにもデュエルして貰ってたんだけどさ、やっぱプロ決闘者ってすっげぇ強えな‼︎全然勝てねぇぜ」

 

そう言って大地君は楽しそうに笑う。

 

そんな大地君を見て、私は大地君とデュエルをしていた美傘さんと一緒に苦笑いを浮かべる。

 

「デュエルしただけでここまで喜ばれたのは流石に初めての経験だな。なんというか、凄いね、大地君は」

 

「あ、あはは………大地君がすみません」

 

「ううん、気にしないで。喜んで貰えたなら私も嬉しいからさ。それより、遊花ちゃんもお疲れ様‼︎ペンデュラム召喚、ばっちり決めれてたね‼︎」

 

「はい‼︎本当にありがとうございました、美傘さん‼︎」

 

「にひひ、どういたしまして‼︎遊花ちゃんが喜んでくれたなら私も嬉しいよ」

 

そういって美傘さんが嬉しそうに笑う。

 

そんな話をしていると、桜ちゃん達が私に気が付いたのか声をかけてくる。

 

「遊花、お疲れ様。結束とのデュエル、惜しかったわね」

 

「ありがとう、桜ちゃん。うん、私も師匠に追いつけるようにもっと頑張らないとね」

 

「全ての召喚方法を使えるようになったのに、まだ上を目指すのね。うん、遊花らしくていいと思う」

 

「えっと、それって褒められてます、霊華さん?」

 

「勿論。友達がこんなにも成長してるのだから、私も負けてられないわ。美傘さん、次は私とデュエルして貰ってもいいかしら?」

 

「にひひ、勿論いいよ‼︎」

 

「なら、私は炎さんに挑もうかしら?弟子として、お師匠様には稽古をつけて貰わないといけないものね」

 

「………だからお師匠様は止めてくれ。いいだろう、師匠になると決めたからには弟子の成長を促すのも大事な使命だからな」

 

「今度は桜達がデュエルするのか。なら、遊花、俺とデュエルしないか?」

 

「うーん、今はちょっと遠慮しとこうかな?カードの方も見ておきたいし」

 

大地君のデュエルの誘いに、私は首を振る。

 

まださっきまでの師匠とのデュエルの余韻が残ってるから、今はもう少しだけ、この余韻を感じていたい。

 

そんな私の返答に、大地君は残念そうにしながらも、首を振っていつものように笑った。

 

「そっか。まあ、あれだけ凄いデュエルをした後だもんな。じゃあ、俺は他の人にデュエルを挑みに行ってくるぜ‼︎とりあえず、闇さんにデュエルを挑んでみるかな、世界ランキング4位ってどれだけ強いのか実際に体験して見てぇし‼︎」

 

「………大地君って、結構怖いもの知らずだよね」

 

そんな私の呟きが聞こえなかったのか、大地君は楽しそうに笑いながら闇先パイの方に走っていった。

 

闇先パイなら断らないとは思うけど、大地君、闇先パイ相手にどうデュエルするつもりなんだろう?

 

大地君のデッキって闇先パイのヴェルズオピオンを出されたら動けなくなっちゃうと思うんだけど………

 

大地君にデュエルを挑まれて驚いている闇先パイを横目に、私は今後はショーケースやストレージがある場所に移動する。

 

そこでは天雷君と桜糀さんがショーケースの中にあるカードを見ており、そこから少し離れた場所で竜河さんと空閑君が何かを話しているようだった。

 

天雷君と桜糀さんはともかく、竜河さんと空閑君は何を話しているんだろう?

 

不思議に思って首を傾げていると、竜河さんは私に気付いたのか面白そうに笑いながら空閑君に何かを口にする。

 

竜河さんの言葉を聞いた空閑君はこちらを見て、渋い表情を浮かべると竜河さんに何かを告げて私の方に近付き、口を開く。

 

「栗原」

 

「えっと、うん。どうしたの、空閑君?」

 

「お前は俺様が認める強者だ。だからこそ、俺様はもっと強くなり、次にデュエルする時には、必ずお前に勝つ」

 

「え、えっと?」

 

空閑君の突然の言葉に私は首を傾げる。

 

そんな私を見て、空閑君は鼻を鳴らすと私の横を通り過ぎて『Natural』を出て行った。

 

突然のことに私が首を傾げていると面白そうに笑いながら竜河さんが私に近づいてきた。

 

「クックック、本当におもろいやっちゃな」

 

「竜河さん。空閑君と何を話してたんですか?」

 

「ああ、ちょいとワイのチームにスカウトさせて貰うただけや」

 

「‼︎空閑君、竜河さんにスカウトされたんですか⁉︎うわぁ、凄いなあ、空閑君」

 

「………あんさんそれなんの皮肉………いや、天然なんやろうな。今日の短い付き合いでもそれぐらいは分かるわ」

 

「?」

 

竜河さんのプロチームにスカウトされるなんて空閑君はやっぱり凄いなと尊敬していると、竜河さんは苦笑いを浮かべながら脱力したように肩を落とす。

 

何か変なことを言っただろうかと首を傾げていると、竜河さんは気を取り直すように首を振った。

 

「まあ、あんまいい反応は貰えへんかったけど、最後の言葉は効いたみたいやからな。あの感じやと、多分ウチに来てくれるやろ」

 

「一体何を言ったんですか?」

 

「残念やけど、それはヒミツや。まあ、栗原も足元を掬われんよう頑張りや」

 

「は、はぁ」

 

「ほな、向こうではデュエルしてるようやし、ワイも混ざってくるかいな。ほなな、栗原」

 

「あ、はい」

 

竜河さんの言葉の意味が分からず首を傾げていると、竜河さんは楽しそうに笑いながら桜ちゃん達がデュエルしているデュエルスペースに向かっていった。

 

………一体何だったんだろう?

 

「あ、栗原さんもカードを見にきたの?」

 

「天雷君。うん、天雷君はもう決めたの?」

 

「うん、この轟雷機龍-サンダードラゴンにしようかなって」

 

そういって、天雷君が指を指したのはリンクモンスターのサンダードラゴン。

 

雷族モンスターを2体以上求めるリンク4のモンスターだから普通なら少し難しそうだけど、天雷君のデッキはエレキモンスターを特殊召喚するためにフォトンリードや地獄の暴走召喚が入ってるからそこまで難しくはないのかも。

 

雷族モンスターに付加する耐性も攻撃力が低めなエレキモンスターを守るのに使えるし、確かに天雷君のデッキにはぴったりだ。

 

「そうだ‼︎天雷君、サンダードラゴンなんていつデッキに入れたの?前に私とデュエルした時には入ってなかったよね?」

 

「えっと、今日大会があるから昨日の夜にデッキの調整をしててその時に。前の期末試験の時に栗原さんも宝月さんも新しい戦術を試してたみたいだから、僕ももっと色々な戦い方を試してみたいなって思って」

 

そういって天雷君が自分のデッキを見て笑顔を浮かべる。

 

私と桜ちゃんがきっかけで新しいカードをデッキに加えたって言われると少し恥ずかしい。

 

そしてサンダードラゴンが加わったことでただでさえ手強かった天雷君のデッキはさらに強化されている。

 

うぅ、また天雷君に勝つ道が遠のいちゃったかも。

 

「私も負けてられないなぁ………」

 

「あはは、準優勝した栗原さんにそう言われるのは少し変な気分だけど………それじゃあ僕は島さんを呼んでくるから」

 

「うん、私も何かデッキに加えれそうなカードがないか探して見るね」

 

そういって、天雷君が島さんを呼びに離れていく。

 

私は結局天雷君に1度も勝てていない。

 

天雷君がもっと強くなったなら、これ以上引き離されないように頑張らないと。

 

そんなことを考えながら、私もショーケースの方に近づいていく。

 

「あ、遊花さん………」

 

私がショーケースに近づくと、桜糀さんがこちらに気付いたのか視線を向け、申し訳なさそうに目を伏せる。

 

………もしかして、まだ1回戦での師匠との事を気にしているのだろうか?

 

そのことに関しては理由も教えてもらったし、師匠にも謝ってくれたんだから私は気にしてないんだけど………うーん、よし‼︎

 

「桜糀さんは何か欲しいカード見つかりましたか?」

 

「えっ⁉︎いえ、私が使用している花札衛は色々と使用制限が多いので、なかなか相性が良いカードは見つからないので………」

 

「あ、確かに花札衛モンスター以外なら墓地にいったり特殊召喚効果を使えば花札衛モンスターしか特殊召喚出来なくなる縛りがあるんでしたよね。でもでも、絶対に花札衛モンスターしか出せなくなるわけじゃないですし、私も手伝いますからEXデッキのモンスターで探して見ましょう‼︎」

 

「えっと、あ、あの、遊花さん?」

 

戸惑う桜糀さんの手を引き、EXデッキのカードが置いてあるショーケースの前に移動して桜糀さんのデッキに入りそうなカードを探していく。

 

「うーん、どんなカードがいいんでしょう?花札衛はチューナーモンスターがいるのでシンクロモンスターでしょうか?でもでも、高レベルモンスターを展開できるので大型エクシーズモンスターの召喚も狙えるんですよね」

 

「‼︎エクシーズ召喚は考えたことがありませんでした。ですが、花札衛モンスターはそれぞれのモンスターのレベルが違いますのでエクシーズ召喚を狙うのはやはり難しいですね」

 

「それなら、レベルを変更できるカードを加えてみたらどうでしょうか?ちょっと花札衛モンスターの効果の成功率は下がっちゃいますけど、その分色々なエクシーズモンスターに繋げれるようになれば戦術の幅は広がりますし」

 

「………遊花さんは色々な事を考えているのですね。私にはそのような発想には至れませんでした」

 

「えへへ、常識に囚われてはいけない。一見変わった発想が、思いもよらない結果をもたらすのがデュエルだって、闇先パイにいつも教えて貰ってますから」

 

「冬城プロに………あの、遊花さん」

 

「?どうかしましたか?」

 

「………私は、遊花さんの師である遊騎さんを侮辱してしまいました。そのことを、遊花さんは怒っていないのでしょうか?」

 

「………やっぱり、そのことを気にしていたんですね」

 

私がそう尋ねると、桜糀さんは暗い顔で力無く頷く。

 

そんな暗い表情を浮かべる桜糀さんに、私はーーー

 

「えい‼︎」

 

「ひゃ‼︎ゆ、遊花さん?」

 

ーーー背伸びをして、桜糀さんの頰に手をおき、顔を両手で挟んだ。

 

うぅ、身長差があるから結構疲れる………でも、桜糀さんの暗い表情なんて私は見たくない。

 

「桜糀さんは気にし過ぎです。いや、2年間も両親の事故を引きずってデュエルが出来なかった私が言えた試しではないかも知れませんが………それでも桜糀さんはちゃんと師匠に謝ってくれました。だから、桜糀さんが気にする必要なんて、もうないんです」

 

「ですが………」

 

「それに、桜糀さんは私を心配してくれただけなんです。それなのに、私が怒れるわけないじゃないですか。桜糀さんが師匠や私にあんな厳しいことを言うことになったのは、私達に問題があるからなんです。プロリーグから追放されたプロ決闘者と、その弟子。私が桜糀さんの立場でも、きっと心配しちゃいます。だから、桜糀さんが必要以上にそのことを抱える必要はありません」

 

今回の桜糀さんの一件は、これからの私達に必ず降りかかってくる問題だ。

 

私が師匠の………プロリーグから追放された元プロ決闘者、結束 遊騎の弟子である限り、必ず今回のような侮辱や嘲笑は降りかかる。

 

それでも………

 

「それでも、私は師匠の弟子ですから。他の誰でもない、結束 遊騎の弟子ですから」

 

そういって、桜糀さんに笑顔を見せる。

 

そう、誰になんと言われようと、私は師匠の弟子だ。

 

どんな逆境でも、笑顔で、楽しそうに切り抜けて、皆を驚かせる………あの人の弟子だ。

 

「師匠は、どんなに謂れ無い嘲笑を受けようと、折れずに頑張ってきました。だから、その弟子である私も、そう簡単には折れません。師匠が歩んで来た道は、誰にも非難される謂れはないということを証明して、今日みたいにたくさんの人の前で師匠と一緒にデュエルが出来るようになるまで、私は絶対に諦めません」

 

「遊花さん………」

 

「だから、もしそれでもまだ桜糀さんが罪悪感を感じるというのなら、また師匠とデュエルをしてくれませんか?」

 

「結束さんと、デュエルを、ですか?」

 

「はい。師匠はこの街では悪名が高いせいで、誰ともデュエルをすることが出来ませんでした。あんなにデュエルが好きなのに………あんなに、楽しそうにデュエルをする人なのに………それを奪われて………だから、桜糀さんがよろしければまた師匠とデュエルをしてあげてください。そうしてくれたら、きっと、師匠は喜びます」

 

私がそう言うと、桜糀さんはしばらくの間驚いた表情を浮かべ、それからとても優しい笑みを浮かべた。

 

「ふふっ………遊花さんは、本当に素敵な方ですね………承りましたわ。それが、私の罪滅ぼしになり、遊花さんや結束さんに喜んでいただけるのであれば」

 

「ありがとうございます、桜糀さん」

 

「紅葉、でいいですよ、遊花さん。私達、もうお友達ですから」

 

「‼︎はい‼︎紅葉さん‼︎」

 

「それでは遊花さん、私のデッキに加えれそうなカードを探すのを手伝って貰っても構いませんか?彼の方とデュエルをするのであれば、精一杯楽しんでいただきたいので」

 

「はい‼︎勿論です‼︎」

 

私は紅葉さんと笑い合い、一緒にショーケースの中を覗き込み、カードを探す。

 

大切なお友達が………また1人増えた。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「………ふぅ、何とか終わったか」

 

「お疲れ様だね、遊騎君。コーヒーはいるかい?」

 

「島さん………ああ、いただこうかな」

 

遊花との決勝戦が終わって数時間。

 

俺と島さん以外に誰もいない店内で、島さんに渡されたコーヒーを飲む。

 

あれから、しばらくの間参加者達の交流は続き、19時を回ったあたりで完全に解散となった。

 

デュエルアカデミア生達をあまり遅くまで外出させるのも良くないし、プロ決闘者達は明日にはまたそれぞれの仕事がある。

 

だからこそ、切り上げるにはちょうどいい時間帯だった。

 

俺は片付けを手伝うと言って聞かない遊花を闇と宝月に連れて帰って貰い、島さんと2人で大会の後片付けを行ない、ようやく一区切りがついたところだった。

 

「………ふふっ」

 

「島さん?どうかしたのか?」

 

「いや、まさかまた君が楽しんでデュエルをする姿が見れる日が来たのかと思うと感慨深くてね。これも、遊花君のおかげかな?君は本当にいい弟子を持ったものだ」

 

そういって、島さんが嬉しそうに笑う。

 

そんな島さんに、俺はコーヒーカップを覗き込みながら思わず言葉を漏らす。

 

「………俺、ちゃんと遊花の師匠をやってあげれてるのかな?」

 

「不安かい?」

 

「そりゃあ………まぁ。俺はこの街では大罪人だし」

 

「君は周りにはあまり弱味を見せずに1人で思い悩むのが悪い癖だね」

 

「うぐっ………自覚はしてるけどさ」

 

「ただ大罪を犯しただけの人間なら、遊花君はあそこまでの笑顔と信頼は見せていないさ。君は十分、師匠として上手くやれているよ」

 

「………島さんにそう言われると、少し安心する」

 

「それは良かった。私は君に何もしてあげられなかったからね」

 

そういって、島さんは寂しそうに目を細める。

 

そんな島さんの言葉に、俺は強く首を振る。

 

「そんなことない‼︎島さんがいなかったら、俺は今ここにはいなかった‼︎両親がいなくなった俺を支えてくれたのは島さんだ‼︎だから、島さんが俺に何も出来てないなんてことはない‼︎」

 

「遊騎君………」

 

「だから、そんな悲しいことは言わないでくれ。俺の方こそ、島さんに何も返してあげられなくて、ごめん」

 

そういって頭を下げる俺を見て、島さんは苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「………全く、それこそそんなことはないんだけどね。君は私に十分色々なものをくれたよ。君がいてくれた日々は、今でも色褪せることはない私の宝物だからね」

 

「島さん………」

 

「だからこそ、例え君がこの街で大罪人と呼ばれていようと、私にとって、君は変わらず1番大切な宝物だ。だから、迷惑だなんて考えなくてもいい。血は繋がっていなくとも、私達は家族なのだからね」

 

「………ありがとう」

 

「ああ、こちらこそ。さて、そろそろ今の君の居場所に帰った方がいいんじゃないかい?あまり遅くなってしまうと、可愛い弟子が君のことを心配してしまうよ?」

 

「………それは島さんよりも俺の方がよく分かってるよ」

 

「ははは、本当にいい弟子を持ったものだね」

 

嬉しそうに笑う島さんを見て、俺はなんとなくばつが悪い感じがして、目を逸らす。

 

そこで目に入ってきたショーケースを見て、俺は島さんに頼みたかったことを思い出す。

 

「そ、そうだ、島さん。ちょっと探して欲しいものがあるんだけど………」

 

「おや、頼みたいこと?また遊花君へのご褒美かい?」

 

「いや、まあそれもなくはないんだけど、そっちじゃなくてーーー」

 

俺は島さんに頼みたかったことを話す。

 

俺の話を聞き、島さんは興味深そうな表情を浮かべる。

 

「成る程ね。別に構わないが、またどういった心情の変化なんだい?」

 

「………遊花を見てて思っただけだよ。まだまだ負けてられないって」

 

「ふふっ、そうかい。そういうことなら喜んで協力させて貰おう」

 

「ありがとう。それじゃあ、今日のところは遊花達のところに戻るよ………島さん」

 

「?なんだい?」

 

そういって、店の扉に手をかけたところで、島さんの方を振り向かずに、俺は気恥ずかしく思いながらも、その言葉を口にする。

 

「その………たまには、この店にも帰ってくるから」

 

「‼︎………ああ、いつでも帰っておいで。この店も、君の家なのだから」

 

「………ああ。それじゃあ、いってきます」

 

「ふふっ、いってらっしゃい、遊騎君」

 

そんな島さんの言葉を耳に、俺は店を出て、置いていたバイクに跨って帰路に着く。

 

………これで俺も、少しは遊花みたいに前に進めたのかな?

 

そんなことを思いながら、俺は夜の街にバイクを走らせるのだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「結構遅くなっちまったな」

 

栗原家の玄関口につき、腕時計に目をやると現在の時刻は『Natural』の片付けと、その後に島さんと話し込んでいた為に22時を回っていた。

 

この時間ならば、遊花達はもう眠っているだろうか?

 

そんなことを考えながら、玄関の扉を開け、家にあがる。

 

するとその音が聞こえたのか、リビングの方からぱたぱたとした足音が近づいてきた。

 

「師匠、お帰りなさい‼︎遅かったですね、桜ちゃんも闇先パイももう寝ちゃいましたよ?やっぱりお手伝いした方がよろしかったでしょうか?」

 

「遊花、まだ起きてたのか?いつもならもう寝てる時間だろうに」

 

リビングから玄関に現れたのは水色のワンピースのパジャマに真っ白なエプロンを身につけた遊花だった。

 

驚いた表情を浮かべる俺を見て、遊花は恥ずかしそうに頰を掻く。

 

「えへへ、なんだか眠れなくて………それに、やっぱり師匠を待っていたかったですから」

 

「俺を?」

 

「はい‼︎今日は、本当にお疲れ様でした、師匠。ご飯にします?お風呂にします?」

 

「ん………じゃあ先に晩御飯をいただこうかな?流石に腹が減ったからさ」

 

「お任せください‼︎そろそろ帰ってくるかなって思ってたので、食べられるように準備だけはしてたんです。すぐに作っちゃうので少々お待ちください」

 

「ああ、別に急がなくていいからな」

 

リビングに移動し、テーブルの椅子を引いて座り、キッチンで料理を作る遊花を眺める。

 

キッチンで料理を作る遊花はどこかいつもより嬉しそうで、しばらくすると、遊花が料理を持ってテーブルに運んできた。

 

「お待たせしました‼︎時間が時間なのであまり大したものは作れませんでしたが、どうぞ召し上がってください」

 

「いや、ありがとう。いただきます」

 

そういって、遊花が用意してくれた料理に口をつける。

 

「うん、美味いな」

 

「えへへ、よかったです。どんどん食べてくださいね」

 

「ああ」

 

料理を食べ進める俺を見て、遊花が嬉しそうに、にこにこと笑う。

 

あまりにも嬉しそうに笑う遊花を見て、俺は思わず言葉を漏らしてしまう。

 

「………なんだか、凄く嬉しそうだな」

 

「えへへ………こうして2人だけで食卓を囲んでいると、師匠が初めて私の家に来てくれた時のことを思い出しちゃって………」

 

「………そういえば遊花と2人だけだったのは、遊花の家に来た日と遊花が『Natural』に初めて行った日の2日間だけだったな。次の日からは宝月がこの家に住むようになったし」

 

「だから、懐かしいなって思いまして。なんだかおかしいですよね、まだ師匠と出会ってから1ヶ月しか経っていないのに」

 

「まあ、それだけ遊花が濃い時間を頑張ったってことさ………少しは頑張った自分に自信が持てたか?」

 

懐かしむように目を細める遊花に、俺はそんなことを尋ねる。

 

すると、遊花は真剣な表情を浮かべて首を振った。

 

「………ちょっとだけは。でも、まだまだ全然足りないです。師匠の弟子と胸を張って言えるようになるには、まだまだ足りないんです」

 

「そんなに気張らなくてもいいんだけどな………」

 

「そういうわけにもいきませんよ。今日の大会に出て、よく分かりました。世の中にはまだまだ強い人がたくさんいます。でも、その人達が今日大会に参加してくれたプロ決闘者の皆さんのように、友好的な方ばかりでは、きっとないです。今日の紅葉さんの一件のように、師匠や師匠の弟子である私に、厳しいことを言う人は、恐らくたくさんいると思います」

 

「遊花………やっぱりーーー」

 

思わず否定的な言葉が出そうになる俺の口を、遊花が手をかざして遮る。

 

「師匠、それ以上自分を否定するような言葉を出したら、私怒っちゃいますよ?その話は紅葉さんの時に終わらせました。誰がなんと言おうと、私が師匠の弟子を辞めることはありません」

 

「………悪かった」

 

「はい。私も偉そうなことを言ってしまい申し訳ありません。でも、この思いだけは絶対に変わりませんから。だから、それだけはちゃんと、師匠に分かってて欲しいなって思ったんです」

 

「遊花………」

 

遊花は1度目を閉じると、確かな意志が込められた真剣な表情を浮かべて俺を見た。

 

「改めて、私は誓います。私は、どんな逆境でも、笑顔で、楽しそうに切り抜けて、皆を驚かせるデュエルができるプロ決闘者になります。そして、そんな私を導いてくれた師匠が、プロリーグから追放されるような、卑怯者なんかじゃない、誰かの為に戦うことが出来る立派な決闘者なんだって証明してみせます。その夢を叶えるまでは、私は絶対に諦めません。そのためだったら、辛い運命とだって戦ってみせます」

 

「………」

 

「だから、師匠も約束してください。その夢が叶うまで、私の師匠でいてくれるって。私と一緒に、運命と戦ってくれるって」

 

「………何を言っても無駄か。遊花の諦めないって気持ちは、絶対に折れないってことはこの1ヶ月でも十分過ぎる程分かったしな」

 

遊花の揺るぎない意志が込められた言葉に、俺は思わず苦笑を浮かべる。

 

本当に、その意思の強さがあるのなら、俺が師匠である必要はないと思うんだが………だけど、それがお前の望みなんだもんな。

 

だからこそ、その思いには真剣に答えないといけない。

 

あの日、身体を震せ、涙を浮かべながらも、運命と戦う決意をした少女の思いを、俺は確かに受け止めたのだから。

 

「ああ、俺も遊花に誓うよ。遊花が俺を師匠だと思ってくれる限り、俺はいつまでも遊花の師匠だ。そして、弟子である遊花が運命と戦うというのなら、俺もまた、運命と戦う。そして勝ってみせる」

 

「はい、約束です」

 

そういってゆびきりをするように、遊花が小指を俺に向かって差し出す。

 

そんな遊花を見て、俺は柔らかく笑いながら、差し出された遊花の小指に自分の小指を絡めた。

 

『ゆーびきりげんまん♪ウソついたら針千本のーます♪ゆーびきった♪』

 

「………ぷっ、飯食ってる時に何やってるんだろうな、俺達」

 

「あはは、確かにそうですね」

 

2人でゆびきりをしてお互いに笑い合う。

 

………今なら、少しだけ前に進める気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーと、ここまでなら真面目な雰囲気で終わっていたのかも知れないが、どうやら俺の弟子はそう一筋縄にはいかないらしい。

 

「さて、ご馳走さま。美味しかったよ」

 

「はい、お粗末様でした」

 

「それじゃあ洗い物したら、風呂に入って今日のところは寝るとするかな?」

 

「あ、ま、待ってください‼︎」

 

「ん?」

 

食べ終わった食器をキッチンに運ぼうと立ち上がった俺を、同じように立ち上がった遊花が呼び止める。

 

その表情は先程の話をした時と同じかなり真剣なもので、俺は思わず身構える。

 

そんな俺に、遊花は少し言葉を詰まらせながらもハッキリとした口調で口を開く。

 

「あの………ですね。今日の紅葉さんとのデュエルの後にした約束、覚えてますか?」

 

「紅葉って言うと、桜糀のことだよな?桜糀とのデュエルの後って言うと………」

 

遊花の言葉に、俺は頭に手を当てながら桜糀とのデュエルの後のことについて思い返す。

 

桜糀とのデュエルは色々と俺達の問題を浮き彫りにしたデュエルだったが、それが終わった後というと………

 

 

ーーーーーーー

 

 

『それで、遊花。そろそろ大会を進行したいから離してくれないか』

 

『嫌です』

 

『即答かよ………』

 

『だって、師匠はいっぱい私に心配かけたんですもん。だから今は嫌です』

 

『それを言われると辛いんだがな………後で俺にできることならなんでもやってやるから、今は離れてくれよ』

 

『なんでも………ですか………分かりました‼︎そういうことなら離れます‼︎』

 

『お、おう』

 

 

ーーーーーーー

 

 

「………あ」

 

「師匠、あの時言いましたよね?俺にできることならなんでもやってやるって」

 

遊花の言葉に、俺の身体から冷や汗が流れる。

 

そういえば、そんなことを口にしていた。

 

あの時は不機嫌そうな遊花をどうにかするために咄嗟に出てしまった言葉だったが、今日は色々なことがあったから、まさかそれをちゃんと覚えているとは思わなかった。

 

「だから………ですね、師匠に、やってもらいたいことがあるんです」

 

そういって、遊花が俺の目の前にやってくる。

 

遊花の真剣な声色に、俺は思わず後退りをするが、後退りしてできた距離を遊花はすぐに詰めてくる。

 

ヤバい、ここまで真剣な遊花は今まで見たことがない。

 

俺は一体何をさせられるのだろう?

 

不用意なことを言った過去の自分を恨みながらも、観念して遊花に向き合う。

 

「あ、ああ。確かに言った………な。分かった、俺にできることなら何でもしてやる」

 

「本当ですか‼︎」

 

「ああ、師匠として、弟子とした約束を反故にはしない」

 

そんな俺の言葉に、遊花は心底嬉しそうな表情を浮かべる。

 

………ああ、言った………言ってしまった。

 

ここまで嬉しそうな表情を浮かべるなんて、一体俺は何をさせられるのだろう?

 

「そ、それじゃあ………あ、あのですね、そのですね………」

 

興奮しているのか頰を赤く染め、何度も言葉を詰まらせる遊花に、俺は身構える。

 

「すー………はー………それじゃあ、い、言います‼︎」

 

そんな俺に遊花は深呼吸を1つするとーーー

 

「あの………わ、私の頭を撫でて貰えないでしょうか‼︎」

 

「………………………は?」

 

ーーーそんなたわいも無いことをお願いしてきた。

 

「えっと………それがお願い、なのか?」

 

「そ、その、今日、私いっぱい頑張ったと思うんです‼︎師匠には負けてしまいましたけど、準優勝でしたし‼︎」

 

思わずそう聞き返してしまった俺に、遊花はぶんぶんと手を胸の前で振りながら、言い訳をするように口を開く。

 

「だから、その、ご褒美、として、褒めて、貰いたいな、なんて、思った、わけでして、その、だ、ダメでしょうか?」

 

そういって、少し不安そうな上目遣いで遊花が俺を見る。

 

何というか、本当に拍子抜けするようなお願いに、逆にその程度の願いでいいのかと思ってしまう。

 

「いや、別に構わないんだが………本当にそんな願いでーーー」

 

「よ、よかったです‼︎それじゃあ、その、お、お願い、します‼︎」

 

再確認しようとする俺の言葉を食い気味に遮り、遊花がちょこんと自分の頭を差し出してくる。

 

そんな遊花の気迫に戸惑いながらも、俺は要望通りに遊花の頭に手を置き、優しく撫でる。

 

「………………えへへ」

 

すると、遊花は心底嬉しそうにその表情を緩ませた。

 

そのあまりの表情の緩みっぷりに戸惑いながらも、遊花が満足するように、撫でる位置を変えていきながら彼女の頭を撫で続ける。

 

「ふぁぁ〜幸せです〜」

 

「………安上がりな幸せだな………」

 

「ふぁい?なにかいいましたか〜ししょ〜?」

 

「………いや、なんでもない」

 

どんどん表情を緩ませていく遊花を見て、俺はまあいいかと口を紡ぐことにした。

 

本人がそれで幸せだと言うのなら、余計なことは言うまい。

 

それにしても………

 

「〜〜〜♪」

 

俺に頭を撫でられながら、嬉しそうに表情を緩ませ、鼻歌まで歌いはじめた遊花を見て、ふと思う。

 

「(犬っぽいなぁ………)」

 

撫でて貰えないかと不安そうな上目遣いをし、頭を撫でられて嬉しそうに表情を崩している様を見ていると、なんだか犬みたいだと思ってしまう。

 

あまりの犬っぽさに犬耳と犬尻尾を幻視してしまいそうだ。

 

「それで、いつまで撫で続ければいいんだ?」

 

「わたしがまんぞくするまでですぅ〜」

 

「………マジかー」

 

この状態の遊花が満足することなんてあるのだろうか?

 

これは思っていたよりも大変なお願いなのかも知れない。

 

俺はさっきまでの真面目な雰囲気はなんだったのかと思いながら、遊花の頭を撫で続ける。

 

何だか締まらないが、たまには、こんなのも悪くないかもな?

 

これから、俺達に襲い掛かる困難は、きっと想像もつかない程辛いものだろう。

 

だけど、今日の誓いや、こんな穏やかな時間を忘れない限り、俺達はきっと大丈夫だろう。

 

そんなことを思いながら、夜は更けていく。

 

俺達の運命との戦いは、まだ、始まったばかりだ。

 

 

 

遊戯王Trumpfkarte

 

 

 

一章 運命の邂逅

 

 

Das Ende

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クックックッ、ハハハハハ‼︎また1つ、完成したぞ‼︎やはり、私の才能に不可能はない‼︎」

 

薄暗い部屋の中で男の声が響き渡る。

 

その声色に含まれているのは、抑えきれない歓喜と狂気。

 

薄暗い部屋の中、ただ1人、男の声だけが響いている。

 

「へぇーまた新しいカードを作ったんだ。流石だねー」

 

「‼︎ほう、君か。相変わらず神出鬼没だな」

 

「さっきからいたんだけどなーまあ、気付かれないのも当たり前だけど。私は透明なんだし( ・・・・・・)

 

そんな薄暗い部屋に、突如として透き通った幼い少女の声が加わる。

 

突如現れた少女に、男は近くに置いてあったカードの束を投げると、少女はそれを片手でしっかりと掴んだ。

 

「おっとと、いきなり投げないで欲しいなー」

 

「テストプレイが必要だ。そのカード達を適当に街にばら撒いてきて貰いたい」

 

「あれ?いいの?これはあなたの才能の結晶なんでしょ?」

 

「使えるプレイヤーが増えなければ意味はない。そうでなければ、ゲームとして成り立たないだろう?」

 

「ゲームねぇ………まあいいや。面白そうだし、乗ってあげるよ。でも、カードに適応できなかった人は?きっとめちゃくちゃ暴れるよ?」

 

透き通った、感情がこもっていないような少女の声が男に投げかけられる。

 

そんな少女の問いに、男はつまらなそうな声を出す。

 

「それは私の知ったことではない。私の目的はただ1つ………君だって知っているだろう?」

 

「そうだねーまあ、いいや。それじゃあ、いってくるね。今回は、楽しいゲームになればいいね」

 

そういうと、まるで初めからその部屋にいなかったかのように、少女の気配が消える。

 

少女がいなくなった部屋で、男は先程作り上げた闇のカード( ・・・・・・・・・・)を掲げて、楽しそうに笑った。

 

「これで計画も次の段階に移る………精々私の目的の為の良い実験台になってくれたまえ。さあ、闇のゲーム( ・・・・・)のスタートだ」

 

 

 

二章 闇より出でしゲーム

 

Fortsetzung folgt………






というわけで、第一章、完‼︎
いや〜長かった………めちゃくちゃ長かったよぉ。
初期のプロットなら20から30ぐらいで1章が終わるハズだったのにどうしてこうなった。
倍にまで増えてますが、それはって感じです。
まあ、理由は私が暴走したせいなんですけどね‼︎
まだ始まってないけど、この調子で二章は大丈夫なんでしょうか?
確か初期プロットでも40話近くになる予定だったんだけど………倍になったりしないよね?
この作品でもよく使用してるように攻撃力やダメージが倍になったりするカードは大好きだけど、作品自体の話数は倍にならなくてもいいのよ?
うん、本当に。作品時間が1ヶ月しか進んでないことに脅威を感じてるからね、二章はわりと劇的に時間が進んでくんだけどさ。

というわけで二章の話を少しだけ出してますが、前から話してるようにすぐには二章に移らずに一章終了時のキャラクター設定と幕間を数話挟みます。
幕間は夏休み中のお話です。リアルはもう冬休みになる時期ですけどね‼︎季節感ないなー
幕間も何話書くか少し迷い中。
幕間で入れるか、二章の中に入れるか、微妙な話が何話かあるんですよね。
とりあえず書くことを決めている幕間の内容はこちら。

・遊花の就職試験
・遊騎と桜の2人きりのお出かけ
・闇の実家訪問

ここにリーネと遊騎の過去話や、デュエルアカデミア生達の話を入れるかが悩む。
だけど現在既に闇の話は2〜4話になることが決定してるんですよね。
あの話だけデュエルパートが3回あるので、デッキ的にも長くなりそうだし、だけどどうしても外せないんですよね、後々のことを考えると。

とまあ、本編の内容はこの辺でここからはフラゲされてた禁止制限の話。
とりあえず、アレですね。
ウチの作品の子はがっつりかかってますね。
禁止としては遊騎の神剣-フェニックスブレードと桜のファイアウォールドラゴン、後は闇が少しだけ使ってたグローアップバルブですね………うん、知ってた。
まあいずれかかると思ってたので実はそんなに影響ないです。
桜のファイアウォールドラゴンは切り札なのに影響ない?と不思議に思った方、いずれ分かるさ、いずれな。
まあこの言葉から分かるように、二章では桜はがっつりデュエルしますよ。
後はまあ、幕間か二章のモブで出そうかと思ってたキャラが若干影響を受けた感じですが、まあまだ修正が効くレベルなので特に問題ないですね。
次、制限。
リーネのカガリです。まあ、そもそもリーネは閃刀姫リンクを1体ずつしかEXから出してないのであまり関係なし。
準制限以降は本当に関係なかったので省きます。
こう見ると、メインキャラがめっちゃ引っかかってるなって感じです。
フェニックスブレードは一章でめちゃくちゃお世話になったので本当にお疲れ様でした。遊騎のデュエルで使われてないデュエルが多分無いし、やっぱり手札コストを半永久的に作れるのはダメでしたね。
イゾルデがやられないだけ良かった、あっちやられると別パターン考えるのが余計面倒だったし。
ファイアウォールドラゴンは主人公カードだけど許されなかったね、当たり前だけど。効果に名称ターン1とかがなかったのが悪い。
ぶっちゃけハリファイバーが生き残ったのは少しびっくりしましたね。
そのために他のカードが禁止の犠牲になった気がしますが。

さて、それじゃあ長くなりすぎたので今回はここまでです。
次回はキャラクター設定。
幕間はどの順番かもまだ考え中なので次回予告も無しですよ。
それではまた次回。
ではでは〜
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