遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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遅くなってしまい本当に申し訳ありません‼︎
仕事やらなんやらを片付けてたらご覧の様だよ‼︎
今回は遊花の採用試験中の遊騎と桜のお話です。
かなりの難産だったうえ、文字数多めです。
今回は基本的には桜視点、時々遊騎視点でお送りします。






幕間2・変わり続ける月花

 

 

「ん〜………もう、あさぁ………ふぁ〜」

 

汗で張り付いた髪を掻き上げ、ベッドから起き上がるも、あまりの眠さに欠伸を零しながら、そのまま船を漕いでしまう。

 

「ん〜………ねみゅぃ………こにょままもぅぃちどねょうかなぁ………でもぉ………ねちゃうとゆぅかのぁさごはんがぁーーー遊花………?………………‼︎遊花⁉︎」

 

寝ぼけ頭でぼんやりとしていた意識が一気に覚醒する。

 

今日は遊花の『Trumpfkarte』での採用試験の日だ。

 

まさかそんな日に限って寝坊しちゃうなんて‼︎

 

私は慌てて自分の部屋を飛び出し、階段を降りてリビングに駆け込む。

 

「遊花‼︎」

 

「ようやく起きてきたのか………もう遊花は闇と出て行った、ぞ?」

 

そんな私を呆れた表情を浮かべて出迎えたのは遊花の師匠である結束だった。

 

結束は私を見て固まると、気まずそうな表情を浮かべて視線をリビングでついていたテレビの方に移すと、額に手をやって困ったような声を出す。

 

「………朝が弱いとは聞いてたが、まさかここまで弱いとはな。おまえ、もう9時半になるぞ?」

 

「し、仕方ないじゃない‼︎朝は苦手なのよ‼︎」

 

「分かった分かった‼︎とりあえず朝食の準備をしといてやるから、その格好をどうにかしてこい‼︎」

 

「えっ?」

 

結束にそう言われ、改めて自分の格好に目をやる。

 

私の格好は、起きた状態のまますぐに降りてきてしまったため、ピンクのワンピースのパジャマのままだった。

 

そのうえ慌てていたため、服が乱れてところどころはだけており、とてもじゃないが人前に出れるような姿ではなかった。

 

「〜〜〜‼︎」

 

私は耳まで真っ赤になりながら、声にならない悲鳴をあげ、急いで階段を駆け上がり自分の部屋に戻ると、そのまま布団の中に潜り込む。

 

「見られた………よりにもよって、結束に、っ〜〜〜‼︎」

 

私はあまりの恥ずかしさに悶え、声にならない悲鳴をあげながら、しばらく布団の中を転がることになるのだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「お、おお、おはよ、結束‼︎きょ、今日もいい朝ね‼︎」

 

「………………おう。とりあえず、もう準備も終わるから座って待っててくれ」

 

「え、ええっ‼︎そ、そそ、そうさせて貰うわ‼︎」

 

何とも言えない微妙な表情を浮かべる結束に促され、私は上擦った声を上げながらテーブルの近くにある椅子に腰をかける。

 

私はテーブルの上に置いてあったリモコンでテレビのチャンネルを適当に回しながら、横目で結束をチラチラと見る。

 

結束はそんな私を気にした様子もなく、キッチンで忙しなく動いていた。

 

………多分、気を使ってくれてるのよね?

 

や、べ、別に結束とは何も無かったし‼︎

 

気を使われる理由なんて、ぜーんぜん、これっぽっちも、見当つかないし‼︎

 

「朝食持ってきたぞ………って、何でお前はテーブルに頭を打ち付けてるんだ?」

 

「な、ななな、何でもないし‼︎」

 

「お、おう………まあいいけど、後、それ見るのか?」

 

「えっ?」

 

結束がお盆で手が塞がっているため、顎でテレビの方を差し、私もテレビの方に視線を移す。

 

テレビでは、火霊使いヒータをモチーフにした格好の俳優とゴヨウガーディアンをモチーフにした格好の俳優がエルシャドールエグリスタの着ぐるみに向かって『予告する‼︎アンタの核石、いただくぜ‼︎』とか『デュエルセキュリティの権限において、実力を行使する‼︎』とか、決め台詞的なことを言っていた。

 

………………………うん、どう見ても子供向けの特撮番組よね。

 

「べ、べべべ、別に‼︎たまたま映ってただけだから‼︎そんなことより、早く朝食を寄越しなさい‼︎」

 

「………分かった分かった。一応釘を刺しとくが、ちゃんと落ち着いて食べろよ?今の宝月だと、喉に詰まらせたりしかねん。そういうのは勘弁だ」

 

「………ん、ごめん。心配してくれて、ありがと………」

 

本当に心配そうな表情を浮かべる結束に、私は素直に謝る。

 

そんな私を見て苦笑を浮かべながら、結束は手に持っていたお盆を私の前に置いた。

 

「別にいいって。ほら、冷めちまう前に食えよ」

 

「………うん。いただきます」

 

「おう、食え食え」

 

結束に促され、お盆にのった朝食に手をつける。

 

「美味しい………けど、遊花の味付けじゃないわね、これ」

 

「当たり前だろ、俺が作ったんだから」

 

「えっ⁉︎これ、アンタが作ったの⁉︎」

 

「そんなに驚くことかよ………俺だって最近まで1人暮らししてたんだぞ?料理ぐらいできるっての」

 

驚く私に、結束が不服そうに表情を歪ませる。

 

そんな結束を見て、私は少し考え込む。

 

………思い返してみれば、私はまだ結束のことをあまり知らない。

 

勿論、プロリーグから追放された元プロ決闘者だとか、結束の過去にどんなことがあったのかは、少しだけ知ってはいるけど、結束 遊騎がどんな人間なのか、どんなことが好きなのか、どんなことが嫌いなのか、そういったことは何も知らない。

 

それに、そもそも私と結束はーーー

 

「それで、宝月は今日はどうするんだ?」

 

「ーーーほぇ?」

 

考え込んでいた私は急に結束に声をかけられて間抜けな声を出してしまう。

 

そんな私を怪訝そうに見ながらも、結束は言葉を続ける。

 

「今日は遊花がいないだろ?多分、試験が終わったらリーネ達に捕まるだろうから帰ってくるなら夕方とかになると思うが、宝月はどうするんだ?」

 

「………全然考えてなかった」

 

「………宝月って、意外と抜けてるところがあるよな」

 

「う、うるさいわね‼︎そういうアンタはどうするのよ‼︎」

 

「俺は宝月がどうするかによって動きを変えようと思ってたからな。遊花が鍵を置いて行ってるから、留守番が必要なら留守番するつもりだったし、逆に宝月が落ち着かないから出て行けって言うんなら適当に外で時間を潰すつもりだったからな」

 

「何よそれ………」

 

冗談交じりにそんなことを言う結束に、私は少しムッとする。

 

その考えは、完全に私に気を使った考え方だ。

 

まるで私にとって結束は邪魔な存在なんだって決め付けられてるみたいで、少し気に入らない。

 

そんな私の頭に、1つの妙案が思い浮かぶ。

 

………いいわ、そっちがそのつもりなら、こっちにだって考えがあるんだから。

 

「………なら、結束は今日決まった予定はないのよね?」

 

「ん?まあそうだが………」

 

「だったら、私に付き合いなさい」

 

「………は?」

 

私の言葉に、結束が首を傾げる。

 

これはチャンスだ。

 

遊花がいない状況で、結束 遊騎がどのような人間なのかを改めて見極めるチャンス。

 

だからこそ、私は自信満々にその言葉を口にした。

 

「今日1日、私がアンタを連れ回してあげる。後悔しても、知らないわよ?」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった………」

 

「ほら、早くこっちきなさいよ‼︎」

 

「分かったって」

 

俺はため息を吐きながら、店の奥で服を見ている宝月の所に向かう。

 

本当に、どうしてこうなったのか。

 

遊花は『Trumpfkarte』への採用試験に、闇はプロリーグでの試合、俺も今日は仕事が、休みだったため、栗原家には俺と宝月だけが残ることになった。

 

俺がいても宝月が落ち着けないだろうと思ったので、宝月が落ち着けるように別行動を取ろうと思っていたのだが………

 

『どうせ暇なんでしょ?だったら、荷物持ちとして買い物に付き合いなさい。男手があるなら普段より色々な物が買えるしね』

 

そんなことを言われ、宝月の買い物に荷物持ちとして付き合わされることになっていた。

 

特に用事があった訳じゃないので、別に構わないといえば構わないのだが、宝月と2人で出かけているこの状況が何とも奇妙で落ち着かない。

 

「?何妙な顔をしてるのよ?もしかして、具合悪いの?」

 

「いや、別にそういうわけじゃない。ちょっと考え事をしてただけだ」

 

「そう?ならいいんだけど………あ、この服………」

 

そういって宝月が手に取ったのは水色のシフォンワンピース。

 

水色は遊花のイメージが強く、宝月にしては珍しいなと思っていると………

 

「これ、絶対に遊花に似合う………買わなきゃ‼︎」

 

「いや、自分が買う服を選べよ」

 

何しに来たんだお前は。

 

思わずツッコミを入れてしまう俺に、宝月が不満そうな表情を浮かべる。

 

「何よ、別にいいでしょ?」

 

「いや、まあ宝月がしたいようにすればいいとは思うが、自分の服を見に来たんじゃないのかよ?」

 

「誰もそんなこと言ってないわよ。そもそも今日はウィンドウショッピングのつもりだったし」

 

「………お前、俺に荷物持ちで付いて来いって言わなかったか?」

 

「………………あ。そ、そうだったかしら?」

 

「おい、今の『あ』ってなんだ。どうして目を逸らす」

 

「な、なんでもないわ‼え、えっと、そう‼︎この服‼︎買おうか悩んでたんだけど、似合うと思う?」

 

俺の視線から逃れるように、慌てた様子で宝月が手に取ったのはピンクのフリルブラウス。

 

何だか誤魔化されたような気がするが、とりあえず自分の主観を告げる。

 

「似合うと思うぞ。まあ、宝月は元が可愛いから大抵の服なら着こなせる気はするが」

 

「か、かわっ⁉︎」

 

俺が感想を述べると、宝月は頰を赤く染め、あわあわと狼狽え始める。

 

「か、かかか、からかわないでよ‼︎私が可愛いだなんて、そんなわけーーー」

 

「?別にからかってるつもりはないぞ。宝月は元々小顔でスレンダーなモデル体型だ。俺の主観が入ってしまうから断言とまではいかないが、モデルとしてでも十分やっていけるぐらい可愛いだろ」

 

「なっ⁉︎ななななな、何恥ずかしいことを言ってるのよ⁉︎」

 

「は?俺はただ感想を言っただけーーー」

 

「分かった‼︎分かったからそれ以上何も言わないで‼︎」

 

宝月はそう叫ぶと、顔を両手で隠してその場に蹲み込んでぶつぶつと何かを呟き始める。

 

「うぅ………油断した………まさか結束が遊花と同じレベルで天然だったなんて………べ、別に照れてなんかないし、意識なんて全然してないし………………くそぅ………」

 

「………一体なんなんだ?」

 

宝月の不自然な行動に俺は首を傾げていると………

 

「ねぇ、あの男の人、どこかで見たことない?」

 

「えっ?どの人?」

 

「ほら、あそこの茶髪の………」

 

そんなひそひそとささやくような声が俺の耳に届く。

 

声が聞こえた方向をチラリと見ると、店にいた他の女性客がこちらを見て何かを話していた。

 

ああ、これはよくないパターンだ。

 

「………ままならないな」

 

「………?結束?どうかしたの?」

 

蹲み込んでいた宝月が顔を隠したまま、手の隙間からこちらを訝しげに覗き込む。

 

………宝月は気付いてないな………なら………

 

「………いや、何でもない。なんか悪いことしたみたいだし、俺は店の外で待ってるよ」

 

「あ‼︎ちょっと、結束‼︎」

 

宝月の言葉を背中に受けながら、俺は店を出て目立たないように近くの路地に移動する。

 

………本当に、ままならないな。

 

俺は空を仰ぎながらため息を吐くのだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「………うぅ、やらかしたわ」

 

急に店内から出て行った結束を見て、私は思わずため息を吐いてしまう。

 

せっかく結束がどのような人間なのかを改めて見極めるチャンスだって言うのに、別行動になってしまったら意味がない。

 

「で、でも、仕方ないじゃない‼︎あんなこと言われるなんて思ってもみなかったし‼︎私が、可愛い、とか………うがぁー‼︎」

 

私は自分自身に言い訳をしながらも、先程結束に言われた言葉を思い出し、体温が上がるのを感じて思わず、唸り声を上げてしまう。

 

て、照れてるわけじゃないし‼︎

 

ぜんっぜん、意識なんかしてないし‼︎

 

私、元から体温が上がりやすいだけだし‼︎

 

「あの、お客様?他のお客様のご迷惑になるのであまり大きな声は………」

 

「ご、ごめんなさい‼︎」

 

困ったような表情で近づいてきた店員さんに慌てて頭を下げる。

 

突然唸り声を上げた私を見て、近くにいた他のお客さんも怪訝そうな表情を浮かべていた。

 

………はぁ〜今日の私は本当にいいところないな。

 

何だか居心地が悪くなり、店内から出て行こうとした時、その声が私の耳に届いた。

 

「思い出した‼︎さっきの人、あの人に似てたんだ。プロリーグから追放された『墜ちた英雄』、結束 遊騎‼︎」

 

「っ‼︎」

 

その言葉が聞こえてきた瞬間、私は胸が強く締め付けられるような感覚がした。

 

声が聞こえてきた方向を見ると、店にいた2人の女性客が結束について話していた。

 

「えー本当に?見間違いじゃない?」

 

「本当に似てたんだって‼︎まあ、流石に本人だとは私も思ってないけど。というか、本物だったらこんな人が多いところになんかこれないでしょ」

 

「だよね。イカサマをしてプロリーグを追放だなんて、プロ決闘者として恥だもん。私だったら恥ずかしくて外になんか出られないって」

 

「っ………〜〜〜‼︎」

 

聞こえてくる言葉に、拳を固く握りしめ、今すぐ殴りかかってやりたくなるような衝動を必死に抑える。

 

………ダメだ。

 

これ以上ここにいたら、きっと私は耐えられなくなる。

 

私は脇目も振らずに、急いで店の外に出る。

 

「ん、もう出てきたのか?」

 

店の外に出ると、近くの路地から結束が驚いた表情で声をかけてくる。

 

「そんなに急いで出てこなくても、俺のことは気にしなくてよかったんだぞ?」

 

「っ‼︎アンタはどうしてそう‼︎」

 

「⁉︎お、おい‼︎どうしたんだよ⁉︎」

 

苦笑しながらそんなことを言う結束に耐えられず、私は思わず結束の胸倉に掴みかかってしまう。

 

結束の今の言葉と表情で気付いてしまった。

 

結束は気付いていたんだ、自分のことに気付きそうな人間がいたことを。

 

そしてそのことで私に迷惑がかからないように店の外に出て行ったんだ。

 

その事実が、どうしようもなく私の胸を締め付ける。

 

だってその姿は、私をいつも守ってくれる、私の親友にそっくりで………だからこそ、どうしようもなく腹が立つ。

 

相談してくれなかった結束も………そんな結束に八つ当たりをしている自分自身にも。

 

「っ………何でもない………いきなり掴みかかって悪かったわ。ごめんなさい」

 

「………いや、俺の何かが癇に障ったから宝月は怒ったんだろ?なら宝月が謝る必要なんてない」

 

「っ………行くわよ。ちょっと気分を変えたいわ」

 

「いや、俺はこのままどっかに行った方がーーー」

 

「いいから、行くの‼︎」

 

渋い表情を浮かべる結束の手を掴み、強引に引っ張りながら歩き出す。

 

………本当に、嫌になる。

 

こうやって、強引に、力尽くでしか動けない自分自身が。

 

私は………本当に変われているんだろうか?

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「宝月、大丈夫か?」

 

宝月に引っ張られ、街の中を進んでいった俺達はもうそろそろお昼の時間になるということで近くにあった喫茶店に入り、一休みをすることにした。

 

喫茶店に入ってから、沈黙を続ける宝月が気になり声をかけると、宝月は辛そうに表情を歪めながらも、薄く笑う。

 

「………ん、平気よ。私は平気。心配してくれてありがと」

 

「だけど、お前………」

 

「私だって分かってるわよ、自分がどんな表情をしてるかぐらい。だけど、これは自分で考えたいことだから、ごめん」

 

「………いや、こちらこそ無神経に踏み込み過ぎた、悪かったよ」

 

俺が謝ると、宝月はより表情を歪めながらも、何も言わずに首を振った。

 

そんな宝月を見て、どうして宝月がこんなに辛そうな表情をしているのかについて考えを巡らせる。

 

俺が店を出る前にも、宝月は不自然な動きをしていたが、どちらかといえばそれは驚いているような意味合いが強く、こんな辛そうな

雰囲気ではなかった。

 

だとすれば、宝月に変化があったのは俺が店を出てからの僅かな時間。

 

そしてその原因は先程の行動からして俺にあるということだ。

 

そうなると、心当たりは店内にいたーーー

 

「………ねぇ、結束」

 

「ん、どうした?」

 

宝月の変化について考えを巡らせていると、宝月が真剣な表情で俺の顔を覗き込む。

 

宝月は少し躊躇いながらも、その言葉を口に出す。

 

「あのさ………私とアンタって、どういう関係?」

 

「………は?」

 

宝月の質問の意図が分からず、俺は首を傾げる。

 

そんな俺に構わず、宝月は言葉を続ける。

 

「改めて考えるとね。私とアンタの関係って凄く曖昧なのよね。私にとって、結束は親友の師匠。結束にとっての私は、弟子の友人。でも、それってさ………結局は他人ってことじゃない?」

 

「それは………」

 

「だから、色々考えたけど、これってただのお節介でしかないのかなって、思ったの。そんなに歳が離れてる訳じゃないけど、結束は私よりも色々なことを知ってるし、経験してる。だから、私みたいな小娘が何かを言っても、余計なお世話なんじゃないかって、思うの」

 

そういう宝月の表情は、弱々しく今にも泣き出してしまいそうだった。

 

こんな弱々しい宝月の姿は、今まで1度も見たことがなかった。

 

俺の中での宝月は、遊花が俺の弟子になった時に俺を見極める為にデュエルを挑んできた時の印象が強く、宝月は友人の為に頑張れる眩しく、強い人間なんだと思っていた。

 

………だけど、それは俺の思い違いだったのかも知れない。

 

この弱々しく、誰かの為に思い悩み、不安になっているこの姿こそが、本来の宝月の姿なのだと、俺の感覚が告げていた。

 

「………はぁ〜やっぱり、俺もまだまだ未熟だな」

 

1ヶ月近くも接していてそんなことにも気づけなかった自分が嫌になる。

 

だけど、気付けたのなら、まだ遅くはないハズだ。

 

「宝月ってさ………意外と抜けてるところが多いよな」

 

「………は?」

 

「朝起きてくるのは遅いし、無駄に憎まれ口を叩いてみたりするし、何かあるとすぐに相手に噛み付いていくし、不器用だし」

 

「………本人の前でよくそこまで言えるわね」

 

突然の俺の言葉に、宝月が怒りで頰を引攣らせる

 

そんな宝月に構わず、俺はさらに言葉を続ける。

 

「だけど、遊花のことは本当に大切に思ってて、その為だったら得体の知れない俺みたいな奴にでも立ち向かえる凄く強い決闘者。それが、俺がこの1ヶ月で知った、宝月 桜って人間だ。ああ、後意外と打たれ弱いところがあるってのも今知ったことだな」

 

「………何が言いたいのよ」

 

「さっき宝月は、俺とお前が他人だって話をしたけどさ。そんな他人の俺でもこんなに宝月を知ったんだぞって話だ。宝月だって、俺の事、少しは知ってるだろ?」

 

「………」

 

「関係ってのは、そんなにすぐに作られていくものでも、名前が付けられるものでもないんだよ。関わっていく中で少しずつ形が作られていって、気付いたらそういう関係に収まってるんだ。だから、そんなに関係がどうとか、考えなくてもいいんじゃないか?」

 

「結束………」

 

俺の言葉に、宝月が目を丸くする。

 

「まあ、それが不安だって言うんなら、宝月がこの関係に好きな名前を付ければいい。歳とかそんなものは関係ねぇよ。リーネや不知火さんは俺より年上だけど、俺はあの2人のことは友人だと思ってるぜ」

 

「私は………」

 

「まあ、俺との関係なんて、あってもデメリットにしかならないかも知れないけどな」

 

「っ、そんなこーーー」

 

「おや?彼方におられるのは宝月様ではありませんか、お嬢様?」

 

「げっ、あの女がいるんですの?」

 

「………お嬢様、淑女がそのような言葉を使うのははしたないですわ」

 

「ん?」

 

「うげっ、なんでアイツがいるのよ………」

 

宝月が何かを言おうと口を開こうとした瞬間、どこからか宝月の名前が聞こえてきて、思わずそちらの方を見ると、そこにはメイドを侍らせ、金髪に縦ロールという今時珍しいぐらいテンプレートなお嬢様がいた。

 

俺と同じようにそのお嬢様の方を見た宝月は心底嫌そうに顔を顰める。

 

宝月のことを知ってるってことは、あのお嬢様はデュエルアカデミア生か。

 

「分かっておりますわ。それで、宝月 桜は何処にいるんですの?」

 

「あちらでございます」

 

あからさまなお嬢様はメイドに促されこちらを向き、宝月と一緒にいる俺を見て表情が凍り付いた。

 

「お、男⁉︎あのデュエルアカデミアで刃向かう決闘者一人一人にトラウマを刻み込み、裏の人間でもすくみ上がらせるあの『壊獣姫』が男と一緒にいるんですの⁉︎」

 

「どうやらデート中みたいですね。お嬢様も宝月様を見習って早くお相手を見つけないと行き遅れてしまいますよ」

 

「よ、余計なお世話ですわ‼︎」

 

どうやら酷い勘違いをしているみたいで狼狽しているお嬢様。

 

というか………

 

「宝月………お前、デュエルアカデミアで何したんだよ?」

 

「何もしてないわよ‼︎ただ、遊花にいちゃもんを付けてくる奴を片っ端から蹴散らしただけで………」

 

「してんじゃねぇか」

 

そんな会話をしている内にお嬢様はメイドを引き連れてこちらに向かって歩いてくる。

 

何だか厄介事になる気配がするな、これ。

 

「ご機嫌よう、宝月 桜。今日は栗原 遊花の面倒は見なくてよろしいんですの?」

 

「っ、こんにちは、鬼石 千晶(きせき ちあき)。お生憎様、あの子は今日は就職試験に行ってるの。家で愛でられて食っちゃ寝するしか能がない誰かさんとは違って立派でしょ?」

 

「っ、あらあらあんな見窄らしい子が就職できる企業などあるのかしら?慰めておく準備でもしておいた方がいいんじゃなくて?」

 

「ぐっ、心配無用よ。いつまでたってもトップ10に入れない万年11位の方と違ってウチの遊花はトップ10とも余裕で渡り合える程優秀なの。貴方こそ、いつまで経っても結果が出せずに実家に見捨てられないように注意した方がいいんじゃない?」

 

「ふふ、ふふふ」

 

「はは、ははは」

 

「………なんなんだコイツらは」

 

「申し訳ございません。お嬢様はこうして宝月様と戯れ合うことが生き甲斐なのでご容赦いただければと」

 

「どんな生き甲斐だよ………」

 

「というか生き甲斐ではありませんわ‼︎」

 

宝月とお互いに怒りに頰を引攣らせながら笑い合っていた鬼石と呼ばれた少女がこちらを向く。

 

鬼石はしばらくこちらをジッと見て奥歯にものが詰まったような表情を浮かべる。

 

「ねぇ、貴方どこかで会ったことがないかしら?何だか見覚えがある気がするのですけど………」

 

「お嬢様………ご学友の恋人に手を出そうとするなんて………嘆かわしい」

 

「貴女本当に失礼ですわね、珊瑚(さんご)‼︎それでも私のメイドですの⁉︎」

 

「お嬢様を弄ぶのが私の生き甲斐ですので」

 

「そんな生き甲斐捨ててしまえ、ですわ‼︎」

 

「というか、結束はこ、恋人なんかじゃないわよ‼︎」

 

「あの、お客様方?他のお客様のご迷惑になるのであまり大きな声は………」

 

『ごめんなさい‼︎』

 

困ったような表情で近づいてきた店員さんに全員で頭を下げる。

 

うん、もう少し自重してくれないかな、コイツら。

 

そんなどこか気が抜けそうになったところで、珊瑚と呼ばれたメイドの言葉に背筋が凍った。

 

「冗談はさておき、お嬢様。この殿方は、あの方ですわ。2年前にプロリーグから追放されたプロ決闘者、『墜ちた英雄』、結束 遊騎」

 

「っ‼︎」

 

「『墜ちた英雄』………あのイカサマでプロリーグを追放された?」

 

鬼石がもう1度俺を見る。

 

そしてすぐに浮かんだのは侮蔑するような嘲笑。

 

「あらあら、栗原 遊花といい、結束 遊騎といい、宝月 桜。貴方の目はくすんでるんじゃないですの?それともゴミ拾いをする癖でもあるんですの?」

 

「………何ですって?」

 

「オーホッホッホッ‼︎だってそうでしょう?デュエルアカデミアでただ存在するだけの栗原 遊花に加え、そこにいる結束 遊騎なんてこの街1番の罪人。そんな人間とばかり付き合っているなんて、貴方の程度が知れるじゃありませんか」

 

そういって高笑いをする鬼石に宝月は………

 

「………いい度胸してるじゃない、鬼石。遊花だけじゃ飽き足らず、結束のことまで馬鹿にするなんて………アンタ、覚悟ができてるのよね?」

 

拳を握りしめ、底冷えするような声を出し、怒りを露わにした表情で鬼石を睨みつける。

 

「表に出ろ。デュエルで決着をつけてあげるわ」

 

「あら、怒りました?」

 

「これが怒ってないように見えるなら、アンタの目の方こそくすんでるわ。それとも、いつもみたいに逃げる?その方が弱虫のアンタにはお似合いだわ」

 

「………何ですって?」

 

宝月の言葉に、今度は鬼石の目に怒りの炎が宿る。

 

そんな鬼石を宝月は鼻で笑う。

 

「だってそうでしょ?アンタ、遊花を馬鹿にするわりには遊花や私にデュエルを挑んだことないじゃない?アンタは本当は知ってるんでしょ、遊花がどれだけ強いか。そして怖いからこそデュエルは絶対に挑まず、悪口を叩き続ける。デュエルしなければ、自分が負けていることにはならないものね。卑怯者らしい姑息な戦い方だわ、反吐がでる」

 

「っ‼︎言ってくれるじゃありませんか。そこまで言うのであればまずは貴方を、次に栗原 遊花を叩き潰してあげますわ。私を卑怯者だなどと口にしたこと、後悔させてあげますわ」

 

「後悔するのはアンタの方よ。その鼻につく上から目線が2度とできないぐらい、完膚なきまでに叩き潰してあげるわ」

 

「ふん、先に行って待っていますわ。珊瑚」

 

「分かりました、お嬢様。それでは宝月様、結束様、お待ちしております」

 

そういって鬼石が店の外に出て行った。

 

「お、おい、宝月‼︎」

 

面倒な事になってきた為、慌てて宝月に声をかける。

 

そんな俺に、宝月は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「悪いわね、結束。私の問題に巻き込んで」

 

「いや、迷惑をかけてるのは俺の方だろ。俺のせいでお前はいちゃもんを付けられたんだから」

 

「………確かにそうかもね」

 

「だろ?俺は別に気にしてなーーー」

 

「けどね、結束」

 

俺の言葉を遮り、宝月は真剣な表情で口を開く。

 

「覚えておいて、アンタが気にしてなくても、アンタが馬鹿にされることを気にする人間がいるんだってこと。少なくとも、私はアンタが馬鹿にされることを黙って聞いてることなんてできないから」

 

そういうと、宝月は鬼石を追うように店を出て行く。

 

そんな宝月に、俺は苦笑を浮かべ、思わず呟いた。

 

「………本当に律儀な奴だよ、お前はさ」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

「覚悟はよろしいかしら、宝月 桜」

 

「それはこちらの台詞よ、鬼石。いい加減、年貢の納め時って奴だわ」

 

店を出た私達は近くにあった街中にあるいつでも使用可能なフリーのデュエルスペースに移動し、デュエルディスクを起動する。

 

鬼石は遊花や結束を侮辱した。

 

それだけで私が戦う理由としては十分。

 

私はデッキケースから自分のデッキを取り出し、少しの間見つめてからデュエルディスクにセットする。

 

頼んだわよ、私のデッキ。

 

このデュエル、絶対に勝つ。

 

『決闘‼︎』

 

 

桜 LP8000

 

千晶 LP8000

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「先攻は貰いますわ‼︎………ふっ、完璧な手札ですわ‼︎宝月 桜、貴女を完膚無きまでに倒して差し上げますわ‼︎」

 

「御託はいいからさっさと始めなさい。私も今は加減とかしてあげれないから」

 

「減らず口を………ならば完全なる敗北というものを教えて差し上げますわ‼︎魔法カード、ブリリアントフュージョン‼︎同名カードは1ターンに1枚しか発動できませんが、このカードの発動時に、自分のデッキからジェムナイト融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を、攻撃力・守備力を0にしてEXデッキから融合召喚しますわ‼︎」

 

「いきなりデッキ融合………中々面倒なことになりそうね」

 

「ただし、このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊されますが。私はデッキからクリスタルローズとジェムナイトラピスを墓地に送り融合‼︎水晶の薔薇よ、癒しの戦士と交わりて、新たな輝石を生み出しなさい‼︎」

 

鬼石のデッキから水晶で出来た薔薇と、胸元に紫色の宝石が嵌め込まれた戦士が現れ、フィールドに出来た渦に飲み込まれる。

 

そして渦が弾けると、白いマントを羽織った金色の戦士が現れる。

 

「その輝きで仲間を導きなさい‼︎ジェムナイトセラフィ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトセラフィ〉☆5 天使族 地属性

DEF1400→0

 

 

「ジェムナイトセラフィ………」

 

「まずは下準備ですわ。私はジェムレシスを召喚しますわ‼︎」

 

 

〈ジェムレシス〉☆4 岩石族 地属性

ATK1700

 

 

フィールドに現れたのは橙色の宝石が嵌め込まれたアルマジロのモンスター。

 

「ジェムレシスの効果発動‼︎召喚に成功した時、デッキからジェムナイトモンスター1体を手札に加えますわ‼︎私はデッキからジェムナイトアレキサンドを手札に加えます。そしてジェムナイトセラフィの効果‼︎このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズにモンスター1体を通常召喚できますわ‼︎私は今手札に加えたジェムナイトアレキサンドを召喚しますわ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトアレキサンド〉☆4 岩石族 地属性

ATK1800

 

 

セラフィに導かれて現れたのは様々な色の宝石が鎧に嵌め込まれた白銀の戦士。

 

「さらにジェムナイトアレキサンドの効果発動‼︎このカードをリリースしてデッキからジェムナイト通常モンスター1体を特殊召喚しますわ‼︎ジェムナイトアレキサンドをリリースし、デッキから現れなさい‼︎ジェムナイトクリスタ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトクリスタ〉☆7 岩石族 地属性

ATK2450

 

 

アレキサンドの鎧が輝くと、その鎧から水晶が生え、白銀から銀色に色が変わった。

 

「そして、輝きなさい‼︎宝石に彩られしサーキット‼︎」

 

「リンク召喚か………」

 

鬼石の前に巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件はジェムモンスター2体‼︎私はジェムナイトセラフィとジェムレシスの2体をリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎幻想より伝わる原初の宝石‼︎リンク2‼︎ジェムナイトファントムルーツ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトファントムルーツ〉LINK 2 岩石族 地属性

ATK1450 ↙︎ ↘︎

 

 

セラフィとジェムレシスがサーキットに吸い込まれ、サーキットの中から銀色の翼を持つ戦士が現れる。

 

「ジェムナイトファントムルーツの効果発動‼︎このカードがリンク召喚に成功した場合、デッキからジェムナイトカード1枚を手札に加えますわ‼︎私はデッキからジェムナイトフュージョンを手札に加えますわ‼︎」

 

「っ、きたわね………ジェムナイト専用の融合魔法」

 

「まだ下準備は終わっておりませんわ‼︎私は墓地に存在するクリスタルローズの効果発動‼︎同名カードは1ターンに1度、このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地から融合モンスター1体を除外してこのカードを守備表示で特殊召喚できますわ‼︎私は墓地のジェムナイトセラフィを除外してクリスタルローズを特殊召喚しますわ‼︎」

 

 

〈クリスタルローズ〉☆2 岩石族 光属性

DEF500

 

 

「さらにクリスタルローズのもう1つの効果発動‼︎1ターンに1度、自分メインフェイズに、手札・デッキからジェムナイトモンスターまたは幻奏モンスター1体を墓地へ送り、エンドフェイズまで、このカードは墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱いますわ‼︎私はデッキからジェムナイトラズリーを墓地に送りますわ‼︎」

 

デッキからラピスに似た戦士が墓地に送られ、クリスタルローズの姿がラズリーに変わる。

 

「さらに墓地に送られたジェムナイトラズリーの効果も発動しますわ。このカードが効果で墓地へ送られた場合、自分の墓地の通常モンスター1体を対象としてそのモンスターを手札に加えますわ。私は墓地に存在するジェムナイトラピスを手札に加えます。これでようやく下準備は終わりましたわ。行きますわよ、宝月さん‼︎魔法カード、ジェムナイトフュージョン‼︎」

 

「さて、何が出てくるかしらね」

 

「自分の手札・フィールドから、ジェムナイト融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚しますわ‼︎私は手札のジェムナイトラピスとフィールドのジェムナイトラズリーとなったクリスタルローズを融合‼︎癒しの力を持つ双子の戦士よ、今交わりて、新たな輝石を生み出しなさい‼︎」

 

ラピスとラズリーがフィールドに出来た渦に飲み込まれる。

 

そして渦が弾けると、青い修道服をきた女戦士が現れた。

 

「その輝きで闇を払いなさい‼︎ジェムナイトレディラピスラズリ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトレディラピスラズリ〉☆6 岩石族 地属性

ATK2400

 

 

「まだまだ行きますわよ。まずは墓地に存在するジェムナイトフュージョンの効果発動‼︎自分の墓地に存在するジェムナイトモンスター1体を除外して墓地のこのカードを手札に加えますわ。私は墓地のジェムナイトアレキサンドを除外してジェムナイトフュージョンを再び手札に加えますわ」

 

「融合魔法が回収できるのがジェムナイトのズルいところよね」

 

「なんとでも言ってくださいまし。私はライフポイントを1000支払い、ジェムナイトファントムルーツのもう1つの効果を発動しますわ‼︎フュージョンルーツ‼︎」

 

 

千晶 LP8000→7000

 

 

「自分の墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、ジェムナイト融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをデッキに戻し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚しますわ‼︎ただし、この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン直接攻撃できませんが、どの道先攻なので、デメリットにはなりませんわね」

 

「っ、本当に1度融合が始まると面倒なテーマね、ジェムナイトは‼︎」

 

「私は除外されているジェムナイトセラフィとジェムナイトアレキサンドをEXデッキとデッキに、墓地に存在するジェムナイトラズリーをデッキに戻して融合‼︎導きの宝石よ、輝ける魔石よ‼︎癒しの戦士と交わりて、究極の輝石を生み出しなさい‼︎」

 

フィールドに出来た渦に、セラフィとアレキサンド、ラズリーが飲み込まれる。

 

そして渦が弾けると、赤いマントを羽織り、胸にダイヤモンドが嵌め込まれた女騎士が現れた。

 

「これが私のエースですわ‼︎闇の中でも輝く高貴なる宝石騎士‼︎ジェムナイトレディブリリアントダイヤ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトレディブリリアントダイヤ〉☆10 岩石族 地属性

ATK3400

 

 

「あれが鬼石のエースモンスター………」

 

「さあ、私の攻撃、存分に受けてくださいまし。ジェムナイトレディラピスラズリの効果発動‼︎ジュエルフラッシュ‼︎1ターンに1度、自分のメインフェイズに、デッキ・EXデッキからジェムナイトモンスター1体を墓地へ送り、フィールドの特殊召喚されたモンスターの数×500ポイントのダメージを相手に与えますわ‼︎」

 

「‼︎バーン戦術か‼︎」

 

「私はEXデッキから2体目のジェムナイトレディラピスラズリを墓地に送りますわ。フィールドに特殊召喚されたモンスターはジェムナイトクリスタ、ジェムナイトファントムルーツ、ジェムナイトレディブリリアントダイヤ、そしてジェムナイトレディラピスラズリの4体。合計2000ポイントのダメージを受けて貰いますわ‼︎」

 

「くっ‼︎」

 

 

桜 LP8000→6000

 

 

ラピスラズリの手から紫色の閃光が放たれ、私のライフを削る。

 

先攻から2000のバーンダメージって割と洒落にならないわね。

 

「驚くのはまだ早いですわよ?ジェムナイトレディブリリアントダイヤの効果発動‼︎ジュエルヴァンガード‼︎1ターンに1度、自分メインフェイズに自分フィールドの表側表示のジェムナイトモンスター1体を選んで墓地へ送り、EXデッキからジェムナイト融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚しますわ‼︎私はジェムナイトレディラピスラズリを墓地に送り、現れなさい‼︎ジェムナイトマスターダイヤ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトマスターダイヤ〉☆9 岩石族 地属性

ATK2900

 

 

ラピスラズリの姿が消え、代わりに現れたのはダイヤモンドの鎧を身に纏い、8個の宝石が嵌め込まれた大剣を持つ騎士が現れる。

 

あのモンスターは確か………

 

「ジェムナイトマスターダイヤの効果発動‼︎ジュエルライド‼︎1ターンに1度、自分の墓地のレベル7以下のジェムナイト融合モンスター1体を除外してエンドフェイズまで、このカードは除外したモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得ますわ‼︎私は墓地のジェムナイトレディラピスラズリを除外して、同名カードとして扱い、同じ効果を得ますわ‼︎」

 

「っ‼︎やばっ‼︎」

 

マスターダイヤが大剣に嵌められている紫色の宝石に手をやると、大剣を残してマスターダイヤの姿がラピスラズリに変わる。

 

「ジェムナイトレディラピスラズリとなっているジェムナイトマスターダイヤの効果発動‼︎ジュエルフラッシュ‼︎私はEXデッキから3体目のジェムナイトレディラピスラズリを墓地に送り、再び2000ポイントのダメージを受けて貰いますわ‼︎」

 

「ぐっ‼︎」

 

 

桜 LP6000→4000

 

 

マスターラピスラズリが持つ大剣から紫色の閃光が放たれ、再び私のライフを大きく削る。

 

これだけ動いて置きながら、鬼石はまだ攻撃の手を緩めない。

 

「まだ終わりませんことよ‼︎再び魔法カード、ジェムナイトフュージョン‼︎私は手札のジェムナイトオブシディアとフィールドのジェムナイトクリスタ、ジェムナイトファントムルーツの3体を融合‼︎黒曜の宝石よ、水晶の騎士よ、原初の宝石と交わりて、究極の輝石を生み出しなさい‼︎」

 

黒曜石の身体を持つ戦士とクリスタ、ファントムルーツがフィールドに出来た渦に飲み込まれる。

 

そして渦が弾けると、現れるのは2体目のダイヤモンドの騎士。

 

「闇を払う尊厳なる宝石騎士‼︎ジェムナイトマスターダイヤ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトマスターダイヤ〉☆9 岩石族 地属性

ATK2900

 

 

「っ、またマスターダイヤ⁉︎」

 

「もうお分りですわよね?まずはジェムナイトオブシディアの効果発動‼︎このカードが手札から墓地へ送られた場合、自分の墓地のレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚しますわ‼︎私は墓地のジェムナイトラピスを特殊召喚しますわ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトラピス〉☆3 岩石族 地属性

DEF100

 

 

「そして2体目のジェムナイトマスターダイヤの効果発動‼︎ジュエルライド‼︎墓地のジェムナイトレディラピスラズリを除外して、同名カードとして扱い、同じ効果を得ますわ‼︎そしてジェムナイトレディラピスラズリとなっているジェムナイトマスターダイヤの効果発動‼︎ジュエルフラッシュ‼︎私はデッキからジェムナイトラズリーを墓地に送り、再び2000ポイントのダメージを受けて貰いますわ‼︎」

 

「きゃっ‼︎」

 

 

桜 LP4000→2000

 

 

2体目のマスターラピスラズリが持つ大剣から紫色の閃光が放たれ、私のライフはとうとう2000まで削られてしまう。

 

苦い表情を浮かべる私を見て、鬼石は勝ち誇ったような高笑いをする。

 

「オーホッホッホッ‼︎どうですか、宝月 桜。貴女はヘルテンペストを戦術の起点に置いていますが、あのカードを使うには3000ポイントの戦闘ダメージを受けなければいけません。ですが、貴女のライフはすでに2000ポイント。これでヘルテンペストはもう使えませんわ」

 

「っ………」

 

「オーホッホッホッ‼︎その悔しそうな表情、堪りませんわ。私は墓地に送られたジェムナイトラズリーの効果を発動して墓地のジェムナイトクリスタを手札に加えます。そしてジェムナイトマスターダイヤの永続効果、ジュエルエレメント‼︎このカードの攻撃力は、自分の墓地のジェムモンスターの数×100ポイントアップしますわ。私の墓地にはジェムレシス、ジェムナイトオブシディア、ジェムナイトラズリー、ジェムナイトファントムルーツ、ジェムナイトレディラピスラズリの5体のジェムモンスターがいるため500ポイント攻撃力がアップしますわ」

 

 

ジェムナイトマスターダイヤ

ATK2900→3400

 

 

「私はカードを2枚伏せますわ。(私の伏せカードはジェムナイトモンスターが破壊された場合にそのモンスターの元々の攻撃力のダメージを与えるブリリアントスパークとジェムナイトをリリースすることで墓地のジェムナイトを蘇生するジェムエンハンス。こちらのモンスターを破壊しようとしたらその時点で貴女の敗北は決定しますわ)私はこれでターンエンド。さあ、最後までみっともなく足掻いてくださいまし」

 

 

桜 LP2000 手札5

 

ーーーーー ー

ーーーーー

○ ー

○□○ーー

ー▲△▲ー ー

 

千晶 LP7000 手札1

 

 

 

「………1ターン目からよくここまで追い詰められたものよね」

 

「オーホッホッホッ‼負けを認める気にはなったかしら宝月 桜‼︎︎ヘルテンペストが使えない貴方には打てる手もないでしょう?地面を這い蹲って泣いて謝れば許してあげてもよろしくてよ?」

 

思わず苦笑を浮かべた私を嘲笑うように、鬼石が高笑いをする。

 

確かに私のライフは2000まで削られている。

 

こうなってしまったらヘルテンペストは使えず、私の戦術の殆どが使用できなくなっていただろう。

 

………そう以前の私なら( ・・・・・・)

 

「ふっ、やっぱりアンタの目はくすんでるみたいね、鬼石」

 

「⁉︎」

 

「ヘルテンペストが使えなければ打てる手がない?一体いつの私の話をしてるのよ?その程度のことで私が負けるなんて、随分舐めてくれるじゃない?」

 

「何ですって⁉︎」

 

「大体、地面を這い蹲って泣いて謝る?ふざけんじゃないわよ‼︎アンタには見えないの?私の身体から溢れ出る怒りの炎が?」

 

「っ‼︎」

 

私の剣幕に鬼石が身体を震わせる。

 

「アンタは今までも遊花を侮辱してきた。それだけでも赦すわけにはいかない。だけど、今私から怒りの炎が溢れ出てるのはそれが理由じゃない」

 

そこで私は言葉を区切り、デュエルを観戦している結束に視線を向ける。

 

アンタが言ったんだからね、この関係に好きな名前を付けていいって。

 

結局、答えなんかもう出てた。

 

結束のことを悪く言われて私が怒ってしまう理由なんて1つしかない。

 

だからこそ、ここではっきりと宣言する。

 

「私が今1番赦せないのは結束を………私の友達( ・・)を罪人だと馬鹿にしたこと‼︎私の友達を馬鹿にして、ただで済むと思ってんじゃないわよ‼︎アンタの全てを壊してあげるわ‼︎」

 

さあ、行くわよ、私のデッキ。

 

結束と出会ったことで繋がった新しい力、存分に見せてやりましょ‼︎

 

「私のターン、ドロー‼︎手札からドットスケーパーを捨てて、魔法カード、ワンフォーワンを発動‼︎デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する‼︎出てきなさい、フォーマッドスキッパー‼︎」

 

 

〈フォーマッドスキッパー〉☆1 サイバース族 光属性

DEF0

 

 

私のフィールドに機械の身体を持つ魚のモンスターが現れる。

 

「墓地に送られたドットスケーパーの効果発動‼︎デュエル中に1度、このカードが墓地に送られた場合に特殊召喚するわ‼︎」

 

 

〈ドットスケーパー〉☆1 サイバース族 地属性

DEF2100

 

 

スキッパーの横にドットの身体を持つモンスターが現れる。

 

「行くわよ、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」

 

「リンク召喚ですか………」

 

私が目の前に手をかざすと巨大なサーキットが現れる。

 

さあ、初陣よ‼︎

 

「召喚条件はレベル4以下のサイバース族モンスター1体‼︎私はドットスケーパーをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク1‼︎転生炎獣( サラマングレイト)ペイルリンクス‼︎」

 

「転生炎獣ですって⁉︎」

 

 

〈転生炎獣ペイルリンクス〉LINK1 サイバース族 炎属性

ATK500 ↓

 

 

ドットスケーパーがサーキットに吸い込まれると、代わりにサーキットから現れたのは真っ赤な装甲に身を包んだ山猫のモンスター。

 

現れたペイルリンクスを見て、鬼石が目を見開く。

 

「転生炎獣………そんなモンスター見たことも聞いたこともないですわ‼︎それに、貴方はそんなモンスターは持ってなかったハズですわ‼︎」

 

「だから言ったでしょ?一体いつの私の話をしてるのよって。この子達は最近譲って貰ったのよ。私のお師匠様にね」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

『これで終わりだ。行け、戦神ー不知火‼︎不知火流 輪廻刃‼︎』

 

『きゃあ‼︎』

 

 

桜 LP2400→0

 

 

『ああ〜また負けた‼︎もう、炎さん強過ぎるわよ………』

 

『これでもプロ決闘者だからな。それにデッキ相性としてもこちらが有利だ。そう簡単には宝月に負けないさ』

 

『Natural』で行われた大会から3日後。

 

私は仕事終わりの炎さんに誘われて『Natural』で、炎さんとデュエルをしていた。

 

あの大会で炎さんの弟子になったということでこうして指導を受けているわけだけど、全然歯が立たなくて項垂れてしまう。

 

『やっぱり、少しデッキを見直そうかしら。ヘルテンペストだってどんなデュエルでも使えるわけじゃないんだし………』

 

『ふむ、どこか思うところがあるのか?』

 

『実はこの前、ライフポイント4000でデュエルしないといけない状況があって………』

 

『ほう、それは珍しい。だが、確かにライフポイントが4000だとヘルテンペストを使うのはかなり難しくなるな』

 

『ええ、その時は正直言って完全に足手纏いだったわ。でも、これから先また経験することもあるかも知れないし、ヘルテンペスト自体を封じてくるようなデュエルだってあるかも知れない。そのために、今の大半をヘルテンペストに頼ってる戦術も少しは変えていきたいのよね』

 

私の言葉に、炎さんは興味深そうな表情を浮かべる。

 

私が思い出したのは異世界でデュエルをした時のことだ。

 

こちらの世界とは違いライフポイントが4000であることが普通の世界。

 

確かにこちらの世界ではほとんど気にする程のことではないけど、またあのようなことが起こった時にルールの弊害で足手纏いになるのはゴメンだ。

 

そうじゃなくても、先攻でバーン戦術を使われて私のライフポイントが3000より少なくなりヘルテンペストを使えなくなるようなデュエルだってこれから経験する可能性は十分ある。

 

そうなった時に、何も出来ずに負けるようなことは避けたい。

 

『遊花だって、たったの1ヶ月で全ての召喚方法を使えるぐらいに変わって見せた。今だって、どんどん変わり続けてる。だから、私だって、遊花に負けないように何度だって変わって見せなきゃ』

 

『ふむ、何度だって変わる、か………』

 

私の言葉に、炎さんが何かを考え込む。

 

そして、少し寂しそうな笑みを浮かべたかと思うと、自分のバックから1つのカードの束を取り出し、私に手渡した。

 

『君の思いは分かった。なら、このカード達を使って見るつもりはないか?』

 

『………転生炎獣?見たことがないテーマね』

 

手渡されたカード達を見ていくと、どのモンスターにも転生炎獣という名称が付いていた。

 

聞いたことがないテーマだけど、闇が使ってるヴェルズみたいな何か特殊なテーマなのかしら?

 

『そのカード達は元々俺の………友人が使っていたものだ。色々あって今は俺の手元にあるが、俺にはそのカード達は使えなくてな。だが、変わりたいという宝月にはぴったりなテーマだと思う』

 

『………確かに少し見た限り私に合いそうだけど、炎さんの友人のものだったんでしょ?本当に私なんかに渡しちゃっていいの?』

 

友人から渡されたものなら、それはとても大切なもののハズだ。

 

それは使えないといいながらこうして持ち歩いていることからよく分かる。

 

そんなものを私なんかに託して大丈夫なのかしら?

 

そんな私の質問に、炎さんは相変わらず寂しそうな笑みを浮かべながらも、はっきりと告げる。

 

『ああ、構わない。そのカード達も、もう1度誰かと共に戦うことを望んでいるハズだ』

 

『炎さん………分かった、受け取る。大切に使わせて貰うわ』

 

『ああ、そうしてくれ』

 

炎さんの言葉に頷き、受け取った転生炎獣のカードを改めて見る。

 

………炎さんとこの転生炎獣達に何があったかは分からない。

 

だけど、初めて師匠である炎さんから受け継いだカード………絶対に使いこなしてみせる‼︎

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「みせてあげるわ‼︎師匠から受け継いだ、私の新しい力を‼︎転生炎獣ペイルリンクスの効果発動‼︎1ターンに1度、このカードがリンク召喚に成功した場合に、デッキから転生炎獣( サラマングレイト)()聖域( サンクチュアリ)1枚を手札に加える‼︎私はデッキからフィールド魔法、転生炎獣の聖域を手札に加え、そのままフィールド魔法、転生炎獣の聖域を発動‼︎」

 

フィールド魔法を発動すると、辺りの風景がマグマに囲まれた火山のフィールドに変わる。

 

「転生炎獣のフィールド魔法………」

 

「手札に存在する転生炎獣( サラマングレイト)モルの効果発動‼︎1ターンに1度、自分のリンクモンスターをリンク召喚に成功したターンの自分のメインフェイズに、手札のこのカードをリンクモンスターのリンク先となる自分のフィールドに特殊召喚する‼︎」

 

 

〈転生炎獣モル〉☆1 サイバース族 炎属性

DEF0

 

 

ペイルリンクスの近くの地中から、爪に炎を纏ったモグラのモンスターが現れる。

 

「さて、次はコイツよ‼︎私は転生炎獣ペイルリンクスと転生炎獣モルをリリースして轟雷帝ザボルグをアドバンス召喚‼︎」

 

「はあっ⁉︎」

 

 

〈轟雷帝ザボルグ〉☆8 雷族 光属性

ATK2800

 

 

ペイルリンクスとモルの姿が消え、フィールドに肩に巨大な赤い角が生えた鬼が現れる。

 

「轟雷帝ザボルグの効果発動‼︎さらにそれにチェーンして転生炎獣モルが墓地に送られたことで手札の転生炎獣( サラマングレイト)ガゼルの効果発動‼︎」

 

「っ、また転生炎獣ですの⁉︎」

 

「1ターンに1度転生炎獣ガゼル以外のサラマングレイトモンスターが自分の墓地に送られた場合、このカードを手札から特殊召喚する‼︎」

 

 

〈転生炎獣ガゼル〉☆3 サイバース族 炎属性

DEF1000

 

 

モルがいた場所に今度は炎を纏ったガゼルが現れる。

 

「そして轟雷帝ザボルグの効果発動‼︎このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのモンスター1体を対象としてそのモンスターを破壊し、破壊したモンスターが光属性だった場合、その元々のレベルまたはランクの数だけ、お互いはそれぞれ自分のEXデッキからカードを選んで墓地へ送る‼︎このカードが光属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、墓地へ送る相手のカードは自分が選べるけど、今回は光属性モンスターは使ってないからアンタが選べるわよ。まあ、そもそもアンタのEXデッキは残らないけどね‼︎私が破壊するのは轟雷帝ザボルグ自身‼︎」

 

轟雷帝ザボルグが自分の身体に雷を落とすと、轟雷帝ザボルグの身体から雷が溢れ出して私達のEXデッキのカードを吹き飛ばす。

 

「くっ………EXデッキが全て墓地に………」

 

「これでもう、お得意の融合召喚は出来ないわね」

 

「ですが、墓地にジュエルモンスターが増えたことでジェムナイトマスターダイヤの攻撃力はさらに上がりますわ‼︎」

 

 

ジェムナイトマスターダイヤ

ATK2900→4200

 

 

「攻撃力ぐらい、いくらでもくれてやるわ‼︎転生炎獣ガゼルのもう1つの効果発動‼︎1ターンに1度、このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから転生炎獣ガゼル以外のサラマングレイトカード1枚を墓地に送る。私はデッキから転生炎獣( サラマングレイト)スピニーを墓地に送るわ‼︎」

 

「くっ、次から次へと転生炎獣を………」

 

「墓地に存在する転生炎獣スピニーの効果発動‼︎自分フィールドに転生炎獣スピニー以外のサラマングレイトモンスターが存在する場合、このカードを墓地から特殊召喚する‼︎ただしこの効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外されるわ‼︎」

 

 

〈転生炎獣スピニー〉☆3 サイバース族 炎属性

DEF1500

 

 

私の墓地からガゼルに寄り添うように炎を纏ったアルマジロトカゲが現れる。

 

「魔法カード、貪欲な壺‼︎墓地に存在するリンクリボー、プロキシードラゴン、セキュリティドラゴンをEXデッキに、轟雷帝ザボルグ、ドットスケーパーをデッキに戻してシャッフルし、カードを2枚ドローする‼よし、︎今ドローした転生炎獣( サラマングレイト)ミーアの効果発動‼︎このカードが通常のドロー以外の方法で手札に加わった場合、このカードを相手に見せ、手札から特殊召喚する‼︎」

 

 

〈転生炎獣ミーア〉☆2 サイバース族 炎属性

DEF600

 

 

フィールドに身体から炎を噴き出しているミーアキャットが現れる。

 

これで準備は整った‼︎

 

「フォーマッドスキッパーの効果発動‼︎自分メインフェイズに、EXデッキのリンクモンスター1体を相手に見せ、このターンにリンク召喚する場合、このカードは見せたモンスターと同じカード名・種族・属性の素材としても扱えるわ‼︎私が見せるのは転生炎獣( サラマングレイト)ヒートライオ‼︎このターンの間、フォーマッドスキッパーはリンク召喚する場合、転生炎獣ヒートライオ・サイバース族・炎属性として扱えるわ‼︎そして、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」

 

「くっ、またリンク召喚」

 

私が前に再び巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件は炎属性の効果モンスター2体以上‼︎私は転生炎獣ヒートライオとなっているフォーマッドスキッパーと転生炎獣ミーア、転生炎獣ガゼルをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」

 

サーキットの中にスキッパーとミーア、ガゼルが吸い込まれると、フィールドにあった火山が噴火し、マグマが溢れ始める。

 

そして火山の噴火に合わせるように、サーキットの中からマグマを喰らいながら現れたのは炎の身体を持つ灼熱の獅子。

 

「古より伝わる灼熱の獅子‼︎リンク召喚‼︎リンク3‼︎転生炎獣ヒートライオ‼︎」

 

 

〈転生炎獣ヒートライオ〉LINK3 サイバース族 炎属性

ATK2300 ↙︎↑↘︎

 

 

「ヒートライオ………先程フォーマッドスキッパーが写し取ったモンスター」

 

「さあ、食事の時間よ、転生炎獣ヒートライオ‼︎転生炎獣ヒートライオの効果発動‼︎それにチェーンしてフォーマッドスキッパーの効果発動‼︎まずはフォーマッドスキッパーの効果でリンク素材としてこのカードが墓地に送られた場合、デッキからレベル5以上のサイバース族モンスター1体を手札に加えるわ‼︎私はデッキから転生炎獣( サラマングレイト)Bバイソンを手札に加えるわ‼︎そしておまちかねの転生炎獣ヒートライオの効果発動‼︎イグズィスタンスイーター‼︎このカードがリンク召喚に成功した場合、相手の魔法・罠ゾーンのカード1枚を対象に、そのカードを持ち主のデッキに戻す‼︎私は鬼石のセットカードを1枚をデッキに戻すわ‼︎」

 

ヒートライオが咆哮を上げると、炎で出来た魔法陣が現れ、鬼石のセットカードを吸収した。

 

セットカードを飲み込んだヒートライオは満足そうに両手を合わせる。

 

「くっ………私のブリリアントスパークが‼︎」

 

「まだ終わらないわ‼︎フィールド魔法、転生炎獣の聖域の効果発動‼︎」

 

「ここでフィールド魔法の効果ですって⁉︎」

 

「1ターンに1度、このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分がサラマングレイトリンクモンスターをリンク召喚する場合、自分フィールドの同名のサラマングレイトリンクモンスター1体のみを素材としてリンク召喚できる‼︎」

 

「なっ⁉︎ということは………」

 

「繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎私は転生炎獣ヒートライオをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」

 

ヒートライオの頭上にサーキットが、足元に炎で出来た魔法陣が現れ、交差するようにヒートライオの身体を通過する。

 

サーキットと魔法陣が通過すると、ヒートライオの身体からさらに大きな炎が噴き出した。

 

「生まれ変われ、古より伝わる灼熱の獅子‼︎転生リンク召喚‼︎リンク3‼︎転生炎獣ヒートライオ‼︎」

 

 

〈転生炎獣ヒートライオ〉LINK3 サイバース族 炎属性

ATK2300 ↙︎↑↘︎

 

 

「再びヒートライオが………」

 

「さあ、もう1度食事の時間よ‼︎転生炎獣ヒートライオの効果発動‼︎イグズィスタンスイーター‼︎私は鬼石のもう1枚のセットカードもデッキに戻させて貰うわ‼︎」

 

「くっ、ならばチェーンしてリバースカードオープン‼︎罠発動‼︎ジェムエンハンス‼︎自分フィールド上のジェムナイトと名のついたモンスター1体をリリースし、自分の墓地のジェムナイトと名のついたモンスター1体を墓地から特殊召喚しますわ‼︎私はジェムナイトラピスをリリースして墓地から蘇りなさい‼︎ジェムナイトレディラピスラズリ‼︎」

 

 

〈ジェムナイトレディラピスラズリ〉☆6 岩石族 地属性

DEF1000

 

 

フィールドのラピスの姿がラピスラズリに変わり、セットカードが消滅する。

 

セットカードを吸収出来なかったことでヒートライオは不満そうに咆哮を上げる。

 

「セットカードはなくなってしまいましたが、これで私のフィールドにレディラピスラズリが戻りましたわ。これでこのターンの間に貴方はレディラピスラズリとマスターダイヤ 2体を破壊しなけれ次のターンの負けが決定しますわ‼︎」

 

そういって勝ち誇ったように鬼石が笑う。

 

そんな鬼石に、私は冷ややかな表情で告げる。

 

「何甘いこと言ってんのよ。アンタに次のターンなんてあるわけないでしょ」

 

「………は?」

 

「手札の転生炎獣Bバイソンの効果発動‼︎自分の墓地のサラマングレイトモンスターが3体以上いる場合、このカードを手札から守備表示で特殊召喚する‼︎」

 

 

〈転生炎獣Bバイソン〉☆8 サイバース族 炎属性

DEF1000

 

 

ヒートライオに並び立つように炎を纏ったバイソンが現れる。

 

「転生炎獣Bバイソンの効果発動‼︎相手フィールドの表側表示のカードの数まで自分の墓地の炎属性リンクモンスターを対象としてEXデッキに戻し、その後戻したカードの数まで相手フィールドの表側表示のカードを選んでターン終了時までその効果を無効にできる‼︎私は墓地の転生炎獣ヒートライオと転生炎獣( サラマングレイト)サンライトウルフをEXデッキに戻して 2体のジェムナイトマスターダイヤの効果を無効にする‼︎」

 

バイソンの両横に、炎で出来たバイソンが現れ、 2体のマスターダイヤに突撃し、その身体を炎で包む。

 

 

ジェムナイトマスターダイヤ

ATK4200→2900

 

 

「くっ、マスターダイヤの攻撃力が………」

 

「さあ、これが最後のリンク召喚よ‼︎繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」

 

私の前に巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件はサイバース族モンスター2体‼︎私は転生炎獣Bバイソンと転生炎獣スピニーをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎クロックリザード‼︎」

 

 

〈クロックリザード〉LINK2 サイバース族 闇属性

ATK1200 ↙︎↓

 

 

「ここに来て、転生炎獣じゃないリンクモンスター?」

 

サーキットから現れた紫の水晶を身体につけた蜥蜴のモンスターを見て、鬼石が怪訝な表情を浮かべる。

 

さあ、いよいよフィナーレ、派手に行くわよ‼︎

 

「クロックリザードの効果発動‼︎このカードをリリースし、自分の墓地から融合モンスター1体を選んでEXデッキに戻す。その後、その融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の墓地から除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する‼︎」

 

「融合召喚ですって⁉︎」

 

「私は墓地に存在する転生炎獣( サラマングレイト)ヴァイオレットキマイラをEXデッキに戻し、墓地に存在する転生炎獣モンスター、もう1枚の転生炎獣ヴァイオレットキマイラとリンクモンスター、クロックリザードを融合‼︎」

 

フィールドに現れた渦の中に紫色の炎を纏った魔獣とクロックリザードが飛び込んでいく。

 

「紫炎を纏し古の魔獣よ、時間を司る蜥蜴と交わりて、新たな世界に、生命の炎を灯せ‼︎転生融合召喚‼︎」

 

そして渦が弾けると、フィールドに降り立つのは全身から紫炎を撒き散らす紫色の魔獣。

 

「生まれ変わりし、紫炎を司る古の魔獣‼︎転生炎獣ヴァイオレットキマイラ‼︎」

 

 

〈転生炎獣ヴァイオレットキマイラ〉☆8 サイバース族 炎属性

ATK2800

 

 

「転生炎獣の融合モンスター………そんなものまでいますの?」

 

「さあ、一気に喰い尽くすわよ‼︎転生炎獣ヴァイオレットキマイラの効果発動‼︎それにチェーンしてクロックリザードの効果発動‼︎クロックリザードの効果で墓地のこのカードが除外された場合、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで自分の墓地のサイバース族モンスターの数×400ポイントダウンする‼︎私の墓地には転生炎獣ミーア、転生炎獣ガゼル、転生炎獣モル、フォーマッドスキッパー、転生炎獣Bバイソン、転生炎獣ペイルリンクスの6体のサイバース族モンスターがいるため、鬼石のモンスターの攻撃力は2400ポイントダウンするわ‼︎」

 

「何ですって⁉︎」

 

 

ジェムナイトレディブリリアントダイヤ

ATK3400→1000

 

 

ジェムナイトマスターダイヤ

ATK2900→500

 

 

ジェムナイトレディラピスラズリ

ATK2400→0

 

 

クロックリザードが時を歪め、ジェムナイト達の身体が朽ちてボロボロになっていく。

 

「そして転生炎獣ヴァイオレットキマイラの効果発動‼︎リインカネーションブレイズ‼︎このカードが融合召喚に成功した場合に、このカードの攻撃力はターン終了時まで、素材としたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値の半分だけアップする‼︎私が素材にしたのは攻撃力2800の転生炎獣ヴァイオレットキマイラと攻撃力1200のクロックリザード‼︎よって転生炎獣ヴァイオレットキマイラの攻撃力は2000ポイントアップする‼︎」

 

 

転生炎獣ヴァイオレットキマイラ

ATK2800→4800

 

 

「攻撃力4800⁉︎ですが、その程度では私にトドメはさせませんわ‼︎どうやら、貴方は計算すら満足してできないみたいですわね」

 

「なんとでも言いなさい。負け犬の遠吠えは終わったら聞いてあげるわ。さて、本当はここまでやる必要はないけど、完膚なきまでに叩き潰してあげるって言ったもの、狩らせて貰うわよ、アンタの全てを」

 

「何ですって?」

 

「転生炎獣ヒートライオのもう1つの効果発動‼︎サラマングレイトマジック‼︎このカードが転生炎獣ヒートライオを素材としてリンク召喚されている場合、1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスター1体と、自分の墓地のモンスター1体を対象として、対象のフィールドのモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで対象の墓地のモンスターの攻撃力と同じになる‼︎」

 

「っ⁉︎まさか、そのために同名カードをリンク素材に………」

 

「そう、同名カードから生まれ変わる程強くなれる。それがこの転生炎獣よ」

 

「くっ………(宝月 桜の墓地にはまだ轟雷帝ザボルグの効果で落ちたモンスターも残っている。一体どんなモンスターの攻撃力をコピーして………)」

 

「私は………アンタのジェムナイトマスターダイヤの攻撃力を私の墓地にあるヴァレルガードドラゴンと同じ3000にするわ」

 

「………は?」

 

 

ジェムナイトマスターダイヤ

ATK500→3000

 

 

ヒートライオが魔法陣をマスターダイヤに向かって放ち、魔法陣を潜ったマスターダイヤの肩にヴァレルガードのシールドが現れる。

 

それを見た鬼石はしばらく呆気に取られた後、嘲笑を浮かべる。

 

「ぷっ、あははははは‼︎宝月 桜‼︎貴方、私を笑い殺す気ですの‼︎わざわざ自分で下げた攻撃力を一気にあげるなんて一体何がしたいんですの‼︎」

 

そういって可笑しそうに笑う鬼石を、私はいっそ哀れなものを見る目で見てしまう。

 

「ここまでくると、いっそ哀れね、鬼石 千晶。対戦相手が誰なのか、忘れてるんじゃないかしら………まあいいわ。気付いた時には終わってるから、そのまま笑ったまま潰れちゃいなさい。バトル‼︎転生炎獣ヒートライオで攻撃力3000になったジェムナイトマスターダイヤに攻撃‼︎ヒートストライク‼︎」

 

ヒートライオが炎を集めて弾丸を作り、マスターダイヤに向けて撃ち込む。

 

マスターダイヤはその炎の弾丸をヴァレルガードのシールドで防ぎ、そのまま大剣でヒートライオを斬り裂こうとする。

 

「ダメージ計算時、フィールド魔法、転生炎獣の聖域のもう1つの効果を、1000ライフポイントを払い、転生炎獣ヒートライオを対象として発動‼︎」

 

 

桜 LP2000→1000

 

 

「自分のモンスターが戦闘を行うダメージ計算時に、1000ライフポイントを払い、自分フィールドのリンクモンスター1体を対象として発動そのモンスターの攻撃力を0にし、そのモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復するわ‼︎」

 

「あははははは………は?」

 

マスターダイヤに斬られる瞬間、ヒートライオの身体から魔法陣が現れ、ヒートライオの炎を吸収すると、私の身体にライフポイントとして分け与える。

 

そしてマスターダイヤに切り裂かれたヒートライオは荒々しい咆哮を上げながら爆散した。

 

 

転生炎獣ヒートライオ

ATK2300→0

 

桜 LP1000→3300→300

 

 

「さてと、ちゃんと気付いた、鬼石 千晶? 」

 

「な、何がですの⁉︎結局貴方がやったことなど、無駄にライフポイントを回復してダメージを受けただけですわ‼︎そんな行動に何の意味がーーー」

 

「はぁ………まさかここまで言っても気付かないなんてね。なら、答え合わせはすぐだし最後のヒントをあげる。さて、問題よ。私は一体何ポイントの戦闘ダメージを受けたでしょう?」

 

「私を馬鹿にしていますの⁉︎そんなの勿論3000ポイント………っ⁉︎ま、まさか⁉︎」

 

そこまで答えて、鬼石の表情が蒼白になり、がたがたと震え始める。

 

「あら、やっと気付いたみたいね。じゃあ答え合わせといきましょうか。まあ、言いたいことはただ1つ………詰めが甘いのよ、三下が。3000ポイントの戦闘ダメージを受けた時、速攻魔法発動、ヘルテンペスト‼︎お互いのデッキと墓地のモンスターを全てゲームから除外する‼︎」

 

フィールドに炎の嵐が吹き荒れ、デッキと墓地から全てのモンスターを奪い去っていく。

 

「ついでにこれも受け取っておきなさい?デッキから除外されたネクロフェイスの効果発動‼︎このカードがゲームから除外された時、お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する‼︎」

 

「っ、私のデッキが………」

 

デッキが一気に無くなり、鬼石が青ざめた表情を浮かべる。

 

しかし、フィールドに残ったモンスター達を見て、再び勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「ふ、ふふふ、確かに驚かされはしましたが貴方はもう手札もなく、モンスターもその融合モンスターのみ。それに対して私はまだ4体の融合モンスターがいる。次のターンにはジェムナイトレディラピスラズリのバーン効果でーーー」

 

「はぁ〜だからアンタは哀れだって言ってるのよ、鬼石 千晶。動転して自分のモンスターの効果すら把握できないの?」

 

「な、何を言って………」

 

「じゃあ言ってあげるわ。アンタのそのご自慢のバーン効果、どうやって使うつもりなのかしら?ジェムナイトレディラピスラズリの効果はデッキ・EXデッキからジェムナイトモンスター1体を墓地へ送って発動するのよね?だけど、アンタのデッキとEXデッキ、既にモンスターがいないじゃない」

 

「ぁ………」

 

自分のデッキのモンスターとEXデッキが既に存在していないことに気付き、鬼石は絶望の表情を浮かべる。

 

「ついでに言えばアンタのご自慢の融合モンスターじゃ私の転生炎獣ヴァイオレットキマイラを超えられないわ。アンタのデッキはそのほとんどが融合関係のカードだから現状死に札となってるカードはかなり多いハズよ。そんな状況で、私がアンタのモンスターを狩り切る前に逆転のカードが引けるかしら?」

 

「ぁ………ぁぁ………」

 

「まあ、そんなのどうでもいい推論だわ。私は言ったハズよ、このターンでアンタは終わりだって」

 

「………ぇ?」

 

「さあ、メインディッシュよ。転生炎獣ヴァイオレットキマイラでジェムナイトレディブリリアントダイヤに攻撃‼︎」

 

ヴァイオレットキマイラが勢いよくブリリアントダイヤに向かっていく。

 

「ダメージ計算時、転生炎獣ヴァイオレットキマイラの効果発動‼︎フュアリィフレイム‼︎このカードが元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスターと戦闘を行うダメージ計算時に1度、このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ倍になる‼︎」

 

ヴァイオレットキマイラが怒ったような咆哮をあげると、ヴァイオレットキマイラの身体から紫炎が溢れ出し、ヴァイオレットキマイラの身体を包み込む。

 

 

転生炎獣ヴァイオレットキマイラ

ATK4800→9600

 

 

「攻撃力………9600⁉︎それじゃあ⁉︎」

 

「まだよ、転生炎獣ヴァイオレットキマイラの更なる効果‼︎ヘイトリッドリインカネーション‼︎転生炎獣ヴァイオレットキマイラを素材として融合召喚したこのカードと戦闘を行うモンスターの攻撃力は、ダメージ計算時のみ0になる‼︎」

 

ヴァイオレットキマイラが更に強く咆哮をあげると、身体から溢れ出した紫炎がブリリアントダイヤを襲い、その身体を溶かしていく。

 

 

ジェムナイトレディブリリアントダイヤ

ATK1000→0

 

 

「ブリリアントダイヤ⁉︎そんな………こんなの、勝てるわけが………」

 

「アンタの敗因は、ただ1つ。私を本気で怒らせたことよ。心火に焼かれて燃え尽きなさい、鬼石 千晶‼︎行って、転生炎獣ヴァイオレットキマイラ‼︎インフュアリエイティングインレジュメント‼︎」

 

紫炎を纏ったヴァイオレットキマイラが1つの弾丸となり、ブリリアントダイヤを貫く。

 

身体を貫かれたブリリアントダイヤは、その熱量で内側から身体を溶かされ跡形もなく消滅した。

 

「きゃぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

千晶 LP8000→0

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

「ふぅ、終わったわね………さて、と」

 

「ひっ‼︎」

 

デュエルが終わり、私が冷ややかな目で鬼石を見ると、鬼石は泣きそうな顔で私を見る。

 

そんな鬼石に、私はドスの効いた声で告げる。

 

「今回はこれで勘弁してあげる。だけど、次にもし私の友達を馬鹿にするようなことがあれば、どうなるか分かってるわよね?」

 

「………‼︎………‼︎」

 

鬼石が青ざめた表情で首を何度も縦に振る。

 

まあ、これだけ言えば十分よね。

 

「分かったんなら行きなさい。私の気が変わらない内に」

 

私がそういうと、鬼石は脱兎の如く逃げ出した。

 

鬼石のメイドは私達に深く頭を下げ、鬼石の後を追って走っていく。

 

鬼石の姿が完全に見えなくなったところで、私はようやく一息ついた。

 

「………はぁ、これだけ言えば何とかなるかしらね。慣れないことはするもんじゃないわ」

 

「いや、どう見ても手慣れてただろ。その道の人よりそれっぽかったぞ」

 

「何よ、失礼しちゃうわね」

 

呆れた顔でそんなことを言いながら近寄ってくる結束をジト目で睨みつける。

 

誰がその道の人よ、私はただの高校生だっての。

 

「まあいいわ。とりあえず移動しましょ?何だか無駄にギャラリーが集まって来ちゃったし、アンタもあんまり人に集られると面倒でしょ?」

 

「まあな。んじゃ、適当に移動するか」

 

「じゃあ行きましょ。ほら、アンタ達、邪魔よ‼︎消し炭になって世界の空を舞いたくなかったら退きなさい‼︎」

 

「………お前やっぱりその道の人だろ」

 

そんな結束の呆れたような声を聞きながら、私達は道を塞いでいるギャラリーを押し退けながら街中を後にするのだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜やっと落ち着けるわね」

 

街中から離れ、俺達がやって来たのはいつも俺が働いているデュエルアカデミアの近くにある公園だ。

 

ベンチに背中を預けてグイッと伸びをするに、俺は呆れた表情で疑問を口にする。

 

「宝月はいつもああやって向かってくる奴を蹴散らしてるのか?」

 

「まあね。気に入らないのよ、大した実力も無い癖に陰口だけは偉そうな奴らが。別に自分の実力があるんならある程度は私だって許容するわよ。だけど大抵ああやって口だけは達者な奴は実力は伴ってない奴ばかり、本当に腹が立つわ」

 

そういって本当に不機嫌そうに宝月は鼻を鳴らす。

 

そんな宝月を見て、俺は思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

本当に、律儀な奴だ。

 

きっと宝月はこれからもこの実直さで敵を増やしていくだろう。

 

真っ直ぐ過ぎるというのは、それだけ周りとの軋みも生みやすい。

 

しかし、だからこそ、宝月はこれほど強いのだろう。

 

心も、その生き方も。

 

「そ、それより、その、さっきのデュエル、ちゃんと見てたわよ、ね?」

 

「ん?ああ」

 

しばらく不機嫌そうな表情をしていた宝月だったが、落ち着いてきたかと思うと、突然挙動不審になり、チラチラと俺の方を見ながらそんなことを言う。

 

「じゃ、じゃあ、ちゃんと聞いてたわよね?その、私がアンタをどう思ってるか?」

 

「どう思ってるか………ああ、友達って言ってたやつか」

 

「っ〜〜〜‼︎」

 

俺がそういうと、宝月の頰が一気に赤くなる。

 

きっと照れているのだろう。

 

その様子が面白くてつい笑ってしまう。

 

そんな俺を見て、宝月が顔を赤くしたまま不機嫌そうな表情を浮かべる。

 

「な、何よ‼︎笑わなくてもいいじゃない‼︎改めて思い返すと恥ずかしかったのよ‼︎あんなにギャラリーがいる前で………と、とと、友達なんて宣言するの‼︎」

 

「はは、悪い悪い。俺は嬉しかったぜ、宝月が友達だって言ってくれてさ」

 

「………桜」

 

「ん?」

 

苦笑を浮かべながら謝ると、宝月がどこか拗ねたような様子で口を開く。

 

「前から気になってたの。遊花や闇は名前で呼ぶのに、私だけ宝月って苗字で呼ぶの。だから、友達なんだし、これからはちゃんと桜って、名前で呼んでよね。わ、私も、結束のこと、ゆ、遊騎って、呼ぶから………」

 

「‼︎………ああ、分かったよ。これからもよろしくな、桜」

 

「っ〜〜〜‼︎え、ええ、こちらこそ、よろしく頼むわ、ゆ、遊騎………」

 

「言わせといて照れるなよ………」

 

「し、仕方ないでしょ‼︎何だか恥ずかしいの‼︎」

 

さっきよりも顔を赤くしている桜に呆れていると、桜は急に真剣な表情を作って真っ直ぐに俺を見る。

 

「遊騎」

 

「ん?」

 

「私は、アンタの友達だから。だから、私には気を使わなくていいんだからね?」

 

「‼︎」

 

「アンタを馬鹿にする奴は、私が全員叩き潰してあげる。だから、少しは私を頼りなさい」

 

「………ああ、分かった。すぐには出来ないかも知れないけど、頑張ってみるよ」

 

「ん、それでいいの」

 

そういって桜が笑顔を浮かべて俺の胸を軽くパンチする。

 

………本当に、俺は恵まれてるな。

 

こんなことを言ってくれる友達ができるなんてさ。

 

「さて、言いたいことは言ったし、いい機会だから今度はお互いの昔話でもしない?私、あんまり遊騎の昔のこと知らないし」

 

「長くなるぞ?」

 

「構わないわよ、言ったじゃない。今日1日、私がアンタを連れ回すって。だから時間なんて気にしなくていいの」

 

「はは、分かったよ。さて、それじゃあ何から話すかな」

 

そういって、俺達は話し始める。

 

………こういうのも、悪くはないな。

 

 




まずは前書きでも話しましたが、更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
本当に年末は忙しくて敵いません。
何とか年が変わる前に更新できてよかった………本当はクリスマスとか正月の番外編を書こうかなとは思ったのですが、そこらは2章の本編にがっつりかかりどうしてもIFルートになるので今回はスルー。
前のハロウィンみたいに更新があるかなと楽しみにしていた人がいたら本当に申し訳ないです。

それでは本編の内容に。
今回は桜の新デッキのお披露目回でした。
桜のデッキに新しく加わったのは転生炎獣。
変わることを願う桜にはピッタリのテーマです。
元々どこかで出したいなと思っていたテーマだったのですが、こないだのデッキで登場したペイルリンクスにラクーンを見た時に、ライフ回復がしやすく攻撃力が0にできる………あれ?ヘルテン撃てるんじゃね?ってなり、桜のデッキに投入することになりました。
因みに今回は登場しませんでしたがちゃんと壊獣やカグヤも入ってます。
ファイアーウォールの禁止と転生炎獣の特性上トーチギミックは抜けましたけどね。
まあ、ただでさえソリティア気味の桜の1番文字数が増えるギミックが抜けたのは作者的には嬉しいところですが。
その代わりクロックリザードヴァイオレットキマイラの流れの関係で自害するザボルグさんが入りましたけどね、これによりとうとう桜はEX破壊まで手に入れました………何でもかんでも破壊し過ぎじゃね、この娘?
そして今回はメインメンバーの中で1番曖昧だった遊騎と桜の関係が友達という形に落ち着きました。
実際、遊騎と桜の関係はかなり微妙なものだったんですよね。
弟子の友人と親友の師匠、そこに深い繋がりのようなものはなく、希薄なのにお互いの深いところまで知っているというアンバランスさに桜としてはかなりモヤモヤしてました。
だからこそ、今回でようやく友達という形に落ち着けたのは2人にとっても良いことなのでしょう。

さてさてそれでは今回はこの辺で。
次は闇の実家に行く話。
正月休みの間に頑張って書き上げたいなと思います。
皆さんは年末どうお過ごしでしょう?
私は仕事だったり、資格試験の勉強だったり、県外の大学から実家に帰省した妹のヴァンパイアレモンやマドルチェエアトスを真紅眼レモンやクリボーで撃退したりして忙しかったです。
………あれ?最後が何かおかしかったような………きっと気のせいですね。
最近は新弾情報も多くてデッキを考えるのが楽しくていいですね。
急にきた雲魔物の強化にはビックリしましたが。
前話してた超量もリンクと新規エクシーズが増えて楽しみです。
ただ、戦隊、追加戦士、恐竜って途中で戦死しそうな組み合わせなんですよね、伝説の戦士達だったり暴れまくる翼竜の人だったり。
といったところで今回はここまで。
まだ書き始めて1年も経っていませんが、今年は『遊戯王Trumpfkarte』を読んでいただきありがとうございました‼︎
稚拙な作品ですが、来年もまたお付き合いいただけたら嬉しいです。
それでは皆様、良いお年を。
ではでは〜

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