遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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明けましておめでとうございます‼︎(今更)
むしろ明けましたおめでとうございますという具合ですけどね‼︎
三が日には更新予定だったのに結局過ぎてしまいました。
今回は闇の実家訪問のお話。
最初は遊花視点、後半遊騎視点でお送りします。





幕間3・無邪気さの落とし穴

 

 

 

 

それは、闇先パイのこんな一言から始まった。

 

「私、実家に帰るから」

 

「ふーん、そっか」

 

「………………えっ?」

 

「はぁっ⁉︎」

 

師匠と闇先パイの仕事がお休みで、珍しく全員が揃った朝食時、突然そんなことを口にした闇先パイに、私と桜ちゃんは驚いて持っていた箸を落としてしまう。

 

そんな私達を見て、師匠と闇先パイは不思議そうに首を傾げる。

 

「?どうかしたのか?」

 

「どうかしたのか、じゃないわよ‼︎遊騎は何とも思わないの⁉︎」

 

「は?」

 

「あの、闇先パイ‼︎私、何か気に触るようなことでもしたんでしょうか⁉︎」

 

「?そんなこと、遊花はしてないよ?いきなりどうしたの、2人共?」

 

「だって、闇先パイが実家に帰るって………」

 

「帰っちゃ駄目なの?」

 

「それは………」

 

無表情のまま、不思議そうに首を傾げる闇先パイを見て、私は思わず目を伏せる。

 

確かに、闇先パイは好意で私の家に泊まってくれていただけだ。

 

だから、寂しいけど、闇先パイが出て行きたいというのであれば、私は呼び止めることなんて出来ない。

 

「………分かりました」

 

「ん、夜には帰ってくるから」

 

「はい、夜には………………えっ?」

 

「ん?」

 

「………あ〜成る程なぁ」

 

闇先パイの言葉に、私は首を傾げ、そんな私を見て、闇先パイが首を傾げる。

 

そんな私達を見て、師匠は何かに気付いたのかうんうんと頷き、闇先パイに問いかける。

 

「闇、どうして実家に帰るんだ?」

 

「ん?院長から電話で、『寂しがってる子もいるから、偶には帰ってきなさい』って言われたから。どちらにせよ、そろそろあの子達の様子は見に行きたいと思ってたし」

 

「俺達のことが嫌いになってこの家から出て行きたいって意味じゃないんだよな?」

 

「?言ってる意味がよく分からない。私が遊騎達を嫌いになることなんてありえないよ?」

 

闇先パイが師匠の言葉に、理解出来ないというような表情を浮かべる。

 

「と、言うことだ、2人共。闇が言った実家に帰るは、文字通り1度実家に帰るってだけで出て行くって意味じゃないぞ。あ、この卵焼き貰うな」

 

「あ、私も貰う。どうせなら遊騎達も来る?遊騎に会えば、きっとあの子達も喜ぶ」

 

「まあ、遊花の修業の一環にはなるかも知れないけど、俺が行って喜ぶかは微妙だと思うがなぁ………」

 

そんなことを話しながら朝食を再開した2人を見て、桜ちゃんが俯きながらぷるぷると震えはじめる。

 

「………………ま」

 

「?どうかした、桜?」

 

「紛らわしいのよアンタは〜〜〜‼︎」

 

そんな桜ちゃんの様子に首を傾げる闇先パイを見て、桜ちゃんは家の中に響き渡るような大声を上げるのだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「ようやく着いたか。やっぱり、街中からは少し離れてるから遊花の家からじゃ結構かかったな」

 

「徒歩で1時間ぐらいかかったわよ………こんなに歩くなら先に言っておいて欲しかったわ」

 

「ゴメンね。ここって車とかで来ると色々と面倒なことになるから」

 

「ここが、闇先パイのご実家なんですか?」

 

「ん、そうだよ。教会と孤児院………今の言い方だと児童養護施設の複合施設、『Hilfe(ヒルフェ)』」

 

闇先パイに案内されて私達がやってきたのは、町外れにある小さな教会だった。

 

屋根が尖っており、2階の中央部には円で囲まれた十字架がつけられている。

 

外は白塗りの塀がぐるりと敷地を囲んでおり、出入り口としての門がつけられていた。

 

堂々と門を潜る闇先パイの後に続き私達も門を潜り、教会の敷地内に入っていく。

 

「誰も居ませんね………」

 

「多分、教会の中だと思う。最近はあまり外で遊ぶと騒音問題とかで五月蝿いし」

 

「世知辛い話だよな」

 

「あ、あはは………あれ?」

 

「どうしたの、遊花?」

 

敷地内を見回しながら歩いていると、少し離れた場所にある木の下にカードが落ちていた。

 

この教会にいる誰かの落し物だったりするのかな?

 

あのままじゃ風に飛ばされちゃうし、拾っておいた方がいいよね?

 

そう思った私は小走りでそのカードに近づいていく。

 

「遊花?………あ‼︎それに近づくな‼︎」

 

「えっ?」

 

私がカードの近くまで駆け寄ったところで、後ろから師匠の焦った声が聞こえ、私は思わずカードに手を伸ばしながら師匠の方を振り返る。

 

その瞬間ーーー

 

「ひゃあぁぁぁ⁉︎」

 

「遊花⁉︎」

 

「あー遅かったか………」

 

私の足元が急に陥没し、私の身体は小さな空洞に落下し、頭上からカラカラに乾いた木の枝が降り注いだ。

 

「あいたたた………こ、これって、落とし穴?」

 

直径はおよそ1メートルで、深さは尻餅をついた私の身体がほとんど埋まっているところを見ると1メートル50センチといったところだろうか?

 

穴の底にはふかふかのワラなどが大量に敷き詰められてあり、落下による怪我や骨折、捻挫といったものを負うことはなかった。

 

そんな私の足元に、拾おうとしたカードが落ちていた。

 

カードはスカゴブリンがスカと書いてある紙を掲げている『偽物のわな』。

 

………まさか、このカードが落ちてたこと自体がこの落とし穴に落とすための罠?

 

「ハーハッハッハ‼︎引っかかったな、悪者め‼︎」

 

「えっ?」

 

思わぬ事態に茫然としていた私の頭上から子供の笑い声が聞こえてくる。

 

声が聞こえてきた方を見ると、落とし穴の近くにあった木の幹の上で仁王立ちをしながら笑い声をあげている緑髪をセミロングにした小学生ぐらいの小さな女の子がいた。

 

「ふふん‼︎これに懲りたらさっさと尻尾巻いて帰れ‼︎この教会は、アタシが守る‼︎」

 

「え、えっと………」

 

「こらー‼︎そこのちびっ子‼︎降りてきて遊花に謝りなさい‼︎」

 

「へへーん‼︎誰が悪者になんか謝るもんか‼︎あっかんべー‼︎」

 

「なっ⁉︎頭にきた‼︎そこで待ってなさい‼︎すぐに引きずり降ろし、って、きゃあ‼︎」

 

「桜ちゃん⁉︎」

 

近付いて来ていた桜ちゃんの悲鳴と何かが落ちるような音が聞こえてくる。

 

頑張って落とし穴から顔を出して周囲を確認すると、桜ちゃんも落とし穴にはまって尻餅をついていた。

 

「やーい‼︎引っかかったー‼︎やっぱりアタシってばさいきょ、う?」

 

桜ちゃんの姿を見て、木の上を飛び跳ねながら喜んでいた女の子が、足を滑らせ、木の上から落ちてくる。

 

「っ⁉︎危ない‼︎」

 

「わぁぁぁぁ‼︎」

 

「………ったく、どうせそうなると思ったよ。本当に、しょうがねぇな」

 

「えっ?」

 

そんな声が聞こえたかと思うと、いつのまにかに木の近くまで移動してきていた師匠がジャンプして落ちてくる女の子をキャッチし、木を蹴って反動で私が落ちた落とし穴の近くに着地する。

 

「ふぅ………予想して近付いてきててよかったな」

 

「師匠、なんでわざわざ空中でその子を受け止めたんですか?」

 

「ん?ああ、コイツのことだからきっと木の真下にも落とし穴があるだろうからな。引っかかってたら間に合わないから空中で受け止めるしかなかったんだよ。手を貸す、これで出れるか?」

 

「あ、ありがとうございます。よいしょっと」

 

師匠が片手で女の子を抱え、空いた手で私を引き上げてくれる。

 

桜ちゃんの方を見ると、桜ちゃんも闇先パイに手伝って貰って落とし穴から抜け出しており、怒りからか引き攣った表情で師匠が抱えている女の子を見ていた。

 

木から落ちたことでしばらく茫然としていた女の子だったが、師匠に抱えられていることに気付くとジタバタと暴れ始めた。

 

「こらー‼︎は〜な〜せ〜‼︎」

 

「………はぁ〜お転婆は治ってないみたいだな、空子(あこ)」

 

「⁉︎なんでアタシの名前を知っている⁉︎さてはお前、すとーかーだな⁉︎」

 

「………しかも覚えられてないときた。2年程度で忘れられるとか少し悲しいぞ、おい」

 

「すとーかーがいるなんて、自分が魅力的過ぎて困っちゃう。流石アタシ‼︎」

 

「………品を作ってるところ悪いがコロボックリにしか見えないぞ」

 

「ふっ、アタシの魅力に気付かないなんてまだまだ子供ね」

 

「とりあえずさっき自分が言った言葉を思い返して話してくれるか?」

 

師匠が頭を痛そうに押さえながら深くため息を吐くと、空子と呼ばれた女の子は師匠の顔をまじまじと見て首を傾げた。

 

「ん〜この声、どこかで聞いたような………」

 

「空子ちゃん‼︎大丈夫⁉︎」

 

「おい‼︎空子から離れろ‼︎」

 

「お、続々登場だな」

 

師匠がそんなことを呟きながら教会の方を見る。

 

私も視線を追って教会の方を見ると、教会の陰から茶髪のエアリーショートの女の子と黒髪のベリーショートの男の子がこちらを見ていた。

 

男の子は警戒したように私達を見ていたが、女の子は師匠を見て驚いたように目を見開くとゆっくりとこちらに近付いてくる。

 

しばらくはゆっくりと近付いてきていた女の子だが、次第に驚きの表情を満面の笑みに変えて走り出し、そのまま勢いよく師匠に抱き着いた。

 

「やっぱり、遊騎お兄ちゃんだ‼︎」

 

「久しぶりだな、遊陽(ゆうひ)。しばらくこれなくて悪かったな」

 

「ううん、また来てくれるって信じてたもん。だから遊陽、泣かなかったよ。偉い?」

 

「ああ、偉い偉い。最後に会ったのが2年前だから………遊陽達ももうデュエルアカデミアの初等部3年生か。大きくなったな〜」

 

「えへへ〜」

 

遊陽と呼ばれた女の子は師匠に頭を撫でられて気持ち良さそうに目を細める。

 

そんな遊陽ちゃんの反応を見て、空子ちゃんが大声をあげながら師匠を指差す。

 

「あー思い出した‼︎ゆっくんじゃん‼︎今までどこに行ってたの⁉︎お土産は⁉︎」

 

「ようやく思い出したか………というか、まだ"ゆっくん"呼びなのかよ………残念だが、俺の弟子を落とし穴に落とすような悪い子には、お土産は無しだ」

 

「え〜‼︎」

 

そんな師匠達のやり取りを見て、遊陽ちゃんと一緒にいた男の子もこちらに近付いてくる。

 

しかし、近付いてくる男の子の表情は険しく師匠のことをキツく睨みつけている。

 

そんな男の子に、師匠は困った表情を浮かべながら声をかける。

 

「よう、竜路(りゅうじ)。お前も元気そうで良かった」

 

「………何しに来た、この裏切り者」

 

「裏切り者………ね。まあ、そう言われても仕方ないわな。お前らの声援を裏切ったことになるし。それに関しては言い訳のしようもない」

 

「帰れ。アンタの顔なんかもう2度と見たくない」

 

「………そっか。ということらしいんだが、帰っていいか、闇?」

 

「駄目。竜路も遊騎を困らせないで。遊騎だって、辞めたくてプロ決闘者を辞めたわけじゃない」

 

師匠が闇先パイの方を向いてそんな質問をすると、闇先パイも困ったような表情を浮かべて竜路と呼ばれた男の子を宥める。

 

そんな闇先パイを見て、竜路君は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「ヤミセン………」

 

「闇先生。変に略さないで、何だか闇金の一種みたいに聞こえるから」

 

「あ、よく見たらちびっ子先生だ」

 

「………どうやら空耳が聞こえたみたい。私みたいな立派な大人を捕まえてちびっ子なんて呼称が聞こえるわけがない」

 

「あ、闇先生‼︎お帰りなさい‼︎」

 

「………うぅ、遊陽。貴方だけ、私をちゃんと先生と呼んでくれるのは」

 

「わわっ‼︎苦しいよう、闇先生」

 

闇先パイが少し泣きそうな表情で遊陽ちゃんを抱きしめ、遊陽ちゃんがくすぐったそうに身をよじらせる。

 

いきなりの怒涛の展開についていけず、困惑する私達に気付いたのか師匠は、抱えていた空子ちゃんを下ろし、苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「あ〜悪いな。おいてきぼりにしちまって」

 

「い、いえ、それでこの子達は………」

 

「ここで暮らしてる子供達さ。落とし穴を作ってたのが空子。闇に抱きしめられてるのが遊陽。あっちで俺を睨んでるのが竜路だ。俺がプロ決闘者だった頃、闇の実家のこの教会をよく訪ねててな。その頃にこの教会に寄付したり、デュエルを教えたりしてたから、コイツらにととって俺はすっかり兄貴分ってわけだ………ここで暮らしてる子達は両親が行方不明だったり、両親から虐待を受けた子だっている。だからこそ、人の温もりって奴に飢えてるんだよ」

 

「………そう、ですか」

 

師匠が最後の方は子供達に聞こえないように小さな声で話す。

 

師匠の話してくれた事実に、私は胸が締め付けられるような感覚がした。

 

そんな私に気付いたのか、闇先パイから解放された遊陽ちゃんが私に声をかけてくる。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?どこか痛いの?」

 

「っ………ううん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。私は遊花って言うの。貴方のお名前は?」

 

「遊陽はね、遊陽って言うんだよ‼︎遊花お姉ちゃんのお名前、遊騎お兄ちゃんや遊陽とお名前が似てるね」

 

「あはは、そうだね。それじゃあ、今日はよろしくね、遊陽ちゃん」

 

「うん‼︎遊花お姉ちゃん‼︎」

 

そういって、遊陽ちゃんが嬉しそうに笑う。

 

………うん、私に何が出来るか分からないけど、今日はいっぱい頑張ろう。

 

少なくとも………私達がいる間、遊陽ちゃん達が笑っていられるように。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだね、遊騎君」

 

「………お久しぶりです、院長」

 

遊陽達を遊花達に任せた俺は、教会の中にある院長室に挨拶に来ていた。

 

俺は院長室に入った瞬間寸止めをするように降り抜かれた拳に苦笑しながら、その拳を抜き無表情のまま俺を見ている初老の男性に目を向ける。

 

冬城 時定(ふゆき ときさだ)。

 

この教会の院長であり、闇の義父。

 

院長は拳を振り抜いたまま、口を開く。

 

「避けようともしなかったね。当てられないと思ったのかな?」

 

「いや、単に殴られても仕方ないって思ってただけですよ?俺が来なくなることで与えた影響っていうのはやっぱり大きいと思ってますから」

 

「そうか、それはいい覚悟だ。勿論、当てるつもりは無かったがね」

 

「震脚まで使っててよく言いますよ。当たってたら多分良くて昏倒ですよ?」

 

「それは君の態度次第だったさ。避けようとしていれば当てていたかもね」

 

「俺が避けようとしなくてよかったですね。当たってたら多分闇がめちゃくちゃ怒りますよ」

 

「ふむ、確かによかった。義理とはいえ、男親にとって娘に嫌われること程怖いものはないからね」

 

そんな軽口を叩いていると、ようやく院長は拳を降ろす。

 

そして院長が拳を降ろしたところで今度は俺が頭を下げた。

 

「色々ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 

「事情はちゃんと闇君から聞いている。君が謝ることではないよ。まあ、君の心情からしたら謝りたくなる気持ちも分かるけどね。懺悔室にでも行ってくるかい?」

 

「………それもいいかもですね。経営、上手く行ってます?」

 

「君の寄付が無くなったのは痛かったが、闇君の仕送りも増えたからなんとかね。卒業した子の中にもプロ決闘者になって寄付をしてくれる子もいるし、それも助けになっているよ。ありがたい話だ、君や闇君が行なっていたデュエル教室も無駄では無かったということだ。誇りたまえ」

 

「………ありがとうございます」

 

院長の言葉に少しだけ報われた気分になる。

 

プロ決闘者だった頃、俺と闇はオフの日にはこの教会に立ち寄ってデュエル教室をしていた。

 

デュエルが物事の中心になっているこのケルンでは、デュエルが強い方が何かと優遇されやすい。

 

そのためこのような施設から出た人間であっても、デュエルが強ければその分色々な仕事につきやすいのだ。

 

だからこそ、この教会に来る子供達の助けに少しでもなるように行なっていたデュエル教室が身になっていたのであれば、それはとても嬉しいことだ。

 

「まあ、君がいなくなってからは一悶着もあったがね。君が突然こなくなったことにショックを受けた子、君の噂を聞き君に失望した子、などね」

 

「………まあ、そうですよね。当然だと思いますよ」

 

来た時に会った遊陽や竜路のことを思い出し、俺は苦い表情を浮かべる。

 

ここで暮らしてる子達は両親が行方不明だったり、両親から捨てられたり、両親から虐待を受けた子など様々な問題を抱え、精神的に参っている子も多い。

 

そんな子達がいつも来ていた人間が急にいなくなるなんてことがあって、影響を受けないわけがないのだ。

 

「だからこそ、私は君がまた来てくれたことを嬉しく思うよ。君との問題をどう乗り越えるか、それも子供達の………そして君の成長にもなるからね」

 

そういって、院長はいつもの無表情を崩し、少しだけ笑うのだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「あ〜‼︎やっと戻ってきたな、ゆっくん‼︎」

 

「うおっと‼︎」

 

院長室から出て、普段子供達が過ごしている講堂に入った途端に、勢いよく空子が突撃してきたため、怪我をしないように優しく受け止める。

 

突撃してきた空子は何処かで見たことがあるようなテンションで俺を指差しながら口を開く。

 

「ゆっくんはせんぽうでアタシとデュエルだ‼︎」

 

「は、せんぽう?………先鋒ってことか?何だ、チーム戦でデュエルでもするのか?」

 

「うん‼︎ちびっ子先生が、今日はゆか姉ちゃん達がいるからチーム対抗戦をやってみようって。それで、1番最初にやるのは3年生のアタシ達なんだって‼︎」

 

「………"ゆか"じゃなくて、"ゆうか"な」

 

「あれ?そうだっけ?まあとにかく、ゆっくんはゆか姉ちゃん達と一緒のチームね‼︎」

 

何だか知らない間に俺を入れて空子達とチーム戦をやることが決定してしまったらしい。

 

多分最初に空子達とやるのはある程度チーム戦のことを理解してデュエルができる年齢が空子達3年生のラインなんだろう。

 

それより下の子供達は見学に回り、上の子達は上級生だから後回しにといったところだろうか?

 

まあ後は俺が知る限りでは遊陽、空子、竜路はほとんど3人組で行動してるから、見てる側の子供達がチーム戦のイメージがしやすいと思ったのかもな。

 

「分かった分かった。とりあえず遊花達に聞いてみるから少しだけ待ってくれ」

 

「少しってどれぐらい?何時何分何秒? 地球が何回周った時?」

 

「………いいから少しだけ待ってろ。そうじゃないといつまで経ってもデュエルできないぞ?」

 

「えー⁉︎やだ‼︎ちゃんと待ってるから早くね、ゆっくん‼︎」

 

「はいはい」

 

早くデュエルがしたいのかその場で足踏みをしはじめた空子に苦笑しながら、遊花達の姿を探す。

 

すると、闇と桜がデュエルをするスペースを準備している中、講堂の一角で子供達に群がられている遊花の姿が目に入った。

 

「お姉ちゃん、いい匂いするねー‼︎」

 

「おっぱいおーきいねー‼︎」

 

「ふかふかー‼︎」

 

「あ、あの、変なところを触らな………ひゃぅ‼︎ちょっと待っ………‼︎」

 

「………大丈夫か、遊花?」

 

「あっ、師匠‼︎あの、助けてください‼︎」

 

子供達に群がられ、困ったような表情で助けを求める遊花に苦笑しながら手を叩いて子供達の注意を自分に向ける。

 

「やれやれ………はい、注目‼︎そこのお姉ちゃんは今から皆の前でデュエルを披露してくれるから、皆、良い子で待つことはできるかな?」

 

『はーい‼︎』

 

「良い返事だ。それじゃあ今闇先生が準備をしてるから、その近くで並んで待ってるんだぞ?」

 

『はーい‼︎』

 

俺がそういうと、子供達が一斉に闇の近くに駆け出す。

 

「………全く、怪我とかはないか?」

 

「は、はい…………ビックリはしましたけど、怪我はないですよ」

 

フラフラになりながらも、なんとか立ち上がる遊花だが、髪の毛と服がくちゃくちゃにされていた。

 

やっぱり子供達は容赦が無いな。

 

そんなことを思いながら遊花の髪を撫でて整えてやる。

 

突然髪を撫でられ少し驚いた遊花だったが、すぐにその表情を心底嬉しそうに緩ませた。

 

「あ、ありがとうございます………えへへ」

 

「それで、なんかチーム戦をすることになったんだって?」

 

「はい。闇先パイが言うにはチーム戦をすることでデュエルの腕だけではなく責任感も身に付けるためだとか。師匠が先鋒、桜ちゃんが中堅、私が大将らしいです」

 

「まあ、子供達の為だけじゃなくて遊花達の為でもあるんだと思うぞ。チーム戦とかあまりやったことないだろ?」

 

「そうですね………デュエルアカデミアの講義で少し行った程度でしょうか?その時はまだデュエルするのが怖かったので、チームを組んで下さった人には凄く迷惑をかけてしまいました」

 

そういって、遊花が当時のことを思い出したのか少ししゅんとする。

 

まあ、遊花の場合はデュエルすること自体がトラウマだったのだから、それ自体は仕方ないことだと思うけどな。

 

「それじゃあ実質初めてのチーム戦だな。『Trumpfkarte』に入ったら当然チーム戦をすることだってある。良い機会だから今の内に慣れておけよ」

 

「は、はい‼︎」

 

「んじゃ、準備も出来たみたいだし、闇達のところに行くか」

 

「あ………はい」

 

撫でるのを止めると、遊花は少し名残惜しそうな声を上げたが、首を振って真剣な表情を作る。

 

気負い過ぎる必要はないが、ある意味ちょうど良いか。

 

この教会の子供達を相手にするなら、全力でいかないと勝てない( ・・・・・・・・・・・・)だろうしな。

 

そんなことを思いながら闇達のいる場所に移動する。

 

俺の姿を見ると、桜は咎めるような目で俺を見た。

 

「遅いわよ、遊騎」

 

「悪い悪い。それで今からチーム戦なんだよな?」

 

「ええ、子供達が相手だからどの程度加減すればいいか分からないけど………」

 

「遠慮はいらないぞ?むしろ本気でいけ。その方がお前らのためだ。子供達の前で負けたら結構こたえるだろうからな」

 

「………その言い方、私達が負けるって言いたいの?」

 

「流石にそれはちょっと私達を見くびり過ぎですよ、師匠?」

 

遊花と桜が不服そうな顔で俺を睨む。

 

そんな遊花達を見て、俺は思わず笑ってしまう。

 

「ふっ、どうやらちゃんと現状を認識してないみたいだな。さっき遊花には言ったぜ?子供達のためだけじゃなくて遊花達のためでもあるって。むしろ今回試されてるのは遊花達の方なのさ」

 

「………どういう意味ですか?」

 

「なあ、遊花。お前はこの1ヶ月で闇の指導を受けてどうだった?」

 

「闇先パイの指導………ですか?すごくためになりました。デュエルの後に私の至らないところや改善点を教えてくれて、そこから私がどうしていきたいのかを聞いて、そのためにどうすればいいのかを一緒に考えてくれて………闇先パイの指導があったから、この前の大会だって、プロ決闘者の方々と対等に戦えたんだと思います」

 

首を傾げながら遊花は闇とのデュエルをしてきた日々を思い出して少しだけ笑顔を見せる。

 

そこまで思い至ってるなら気付いてもいいものなんだがな。

 

「そうだな。闇の指導は実際かなり上手いと思う。たったの1ヶ月で遊花がプロ決闘者相手に対等にデュエルが出来るようになったんだからな。それじゃあ問題だ。ここはどこで、子供達は闇のことをなんて呼んでいる?」

 

「えっ?それは、ここは闇先パイの実家で、闇先パイのことは闇先生って………あ‼︎」

 

そこまでいって遊花と桜の顔色が真っ青に変わる。

 

「気付いたみたいだな。勿論、闇は1人暮らしをしてたわけだから毎日この家に帰ってきてたわけじゃないが、俺が知る限りプロ決闘者になってからでも闇は5日に1度はこの教会に帰ってきてデュエルを教えていた。闇に教えられた日数は遊花より確実にこの教会の子供達の方が多い」

 

「じゃ、じゃあここの子供達は………」

 

「闇ほどではないが、全員プロ決闘者と普通に張り合えるぐらいには強いぞ。特に今から相手をする遊陽、空子、竜路は俺もたまに教えてた奴らで、デュエルアカデミア初等部の3年生ではあるが、この教会で過ごした期間だと1番長い部類で、一際優秀な奴らだ。俺も何度か負けたことあるしな」

 

「し、師匠がですか⁉︎」

 

「嘘でしょ⁉︎」

 

俺の言葉に、遊花と桜が驚愕の表情を浮かべる。

 

そんな遊花達に俺は苦笑を浮かべながらも、はっきりとした声で告げる。

 

「まあ、そこら辺を理解して貰うために俺が先鋒なんだろうけどな。ま、俺と空子のデュエルを見て、慣れておけ。お前達がこれからデュエルするのは、自分達より歳下だが格上の決闘者だってことにな」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「それじゃあこれから特別授業としてチーム対抗戦を行う。デュエルする子も、見学をする子も、準備はいい?」

 

『はーい‼︎』

 

「ん、いいお返事。今日は外部から私の友達が来てくれた。その人達に協力して貰って今日はチーム対抗戦の授業を行う。チーム戦はそれぞれのチームで最初にデュエルをする人の先鋒、次にデュエルをする人の中堅、最後にデュエルをする人の大将に分かれてそれぞれの同じ順番の人とデュエルをしてもらう。この順番も凄く重要。最初の2人が負けてしまえば、最後の人が勝っても負けてしまうし、1人目が勝って、2人目が負けてしまえば、最後の人の勝敗でチームとしての勝ち負けが決まってしまう。他にもーーー」

 

闇が行うチーム戦の説明を子供達は真剣な表情で聞いている。

 

俺が来てた頃は闇も途切れ途切れで話し、わざと騒いだりした子供もいた気がするが、今はそんな子供がいないのは闇の指導が上手くなったからなんだろうな。

 

「それじゃあ長い説明はここら辺にして、実際にチーム戦を見てもらう。先鋒、空子、皆の前に」

 

「はーい‼︎ちびっ子先生‼︎」

 

「………今日はよく空耳が聞こえる日。ちびっ子とか何のことだか分からない。遊騎、お願い」

 

「おう」

 

ちょっと遠い目をした闇に呼ばれ、子供達の前に出て、空子と向かい合うように立ち、デュエルディスクを起動する。

 

空子はそんな俺を見て、デュエルディスクを起動しながら不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふっふっふ、ようやくゆっくんにアタシの強さを思い知らせる日が来たようね‼︎ゆっくんなんて、けちょんけちょんにしちゃうんだから‼︎」

 

「ほう、そいつは楽しみだ。空子がどれぐらい強くなったか、しっかり見せて貰わないとな」

 

「ふっふーん‼︎強くなったアタシのデュエルを見たら、きっとゆっくんだって私にメロメロになるんだから‼︎そうなったら、ゆっくんはアタシの子分として一生私の傍でこき使ってあげるんだから‼︎」

 

「一生こき使われるのは勘弁だからこりゃあ尚のこと負けるわけにはいかないな」

 

「なんでよ⁉︎アタシの子分じゃ嫌なの⁉︎」

 

「いや、普通嫌だろ」

 

俺の返答が気に入らないのか空子が不満気に頰を膨らませる。

 

相変わらず空子はよく分からんな。

 

いや、基本がアホなのは分かるんだけどな。

 

「むぅー‼︎ゆっくんのばか‼︎絶対にけちょんけちょんにしてやる‼︎」

 

「よく分からんが、とりあえず俺は負けないぜ。闇、はじめていいか?」

 

「ん。それじゃあこれより、チーム『空子軍団』VSチーム『月花騎士』の先鋒戦をはじめる」

 

「………そんなチーム名だったのか。まあいいや、いくぞ、空子?」

 

「アタシの力、思い知れ‼︎」

 

『決闘‼︎』

 

 

遊騎 LP8000

 

空子 LP8000

 

 

ーーーーーーー

 

 

「先攻はアタシ‼︎まずはコイツだ。トリオンの蟲惑魔を召喚‼︎」

 

 

〈トリオンの蟲惑魔〉☆4 昆虫族 地属性

ATK1600

 

 

フィールドに頭に角のようなものが生えた白髪の少女のモンスターが現れる。

 

現れたトリオンは観戦している子供達に向かって可愛らしく手を振る。

 

………可愛くはあるんだが、本体は足元に潜んでいるアリジゴクなんだよな。

 

まあ、観戦している子供達の表情が少し引き攣ってるってことは本体を見たことがあるんだろう。

 

泣きだす子供がいないだけマシだな。

 

「トリオンの蟲惑魔の効果発動‼︎このカードが召喚に成功した時にデッキからホール通常罠か落とし穴通常罠1枚を手札に加える‼︎アタシはデッキから底なし落とし穴を手札に加えるよ‼︎」

 

「底なし落とし穴か………警戒するにしても面倒なんだよな、落とし穴って」

 

「そして掘り進め‼︎迷いも貫くサーキット‼︎」

 

「リンク召喚か………」

 

空子が目の前に手をかざすと巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件はリンクモンスター以外の蟲惑魔モンスター1体‼︎アタシはトリオンの蟲惑魔をリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」

 

トリオンがサーキットの中に吸い込まれていく。

 

そして代わりに現れたのは緑髪のツインテールの少女。

 

「リンク召喚‼︎全てを惑わす幻惑の花‼︎リンク1‼︎セラの蟲惑魔‼︎」

 

 

〈セラの蟲惑魔〉LINK1 植物族 地属性

ATK800 ↓

 

 

「蟲惑魔のリンクモンスターか………厄介なのが出てきたな」

 

「ふっふっふ、まだ終わりじゃないぞー‼︎魔法カード、二重召喚‼︎このターン、自分は通常召喚を2回まで行う事ができる‼︎そして、ティオの蟲惑魔を召喚‼︎」

 

 

〈ティオの蟲惑魔〉☆4 植物族 地属性

ATK1700

 

 

フィールドに植物の中で寝そべっいる黒髪の少女のモンスターが現れる。

 

「ティオの蟲惑魔の効果発動‼︎このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の蟲惑魔モンスター1体を守備表示で特殊召喚する‼︎戻ってこーい、トリオンの蟲惑魔‼︎」

 

 

〈トリオンの蟲惑魔〉☆4 昆虫族 地属性

DEF1200

 

 

「くっ、蟲惑魔が2体出てきたってことは………」

 

「アタシはレベル4、トリオンの蟲惑魔とティオの蟲惑魔でオーバーレイ‼︎2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚‼︎」

 

トリオンとティオが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けるとフィールドに咲き誇るのは頭に大きな花をつけた桃色の髪の少女。

 

「全てを引き寄せる魔性の花‼︎ランク4‼︎フレシアの蟲惑魔‼︎」

 

 

〈フレシアの蟲惑魔〉★4 植物族 地属性

DEF2500

 

 

「やっぱり出てきたか、フレシアの蟲惑魔‼︎」

 

「フレシアの蟲惑魔の永続効果でオーバーレイユニットを持ったこのカードは罠カードの効果を受けないよ‼︎さらにこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、フレシアの蟲惑魔以外の自分フィールドの蟲惑魔モンスターは戦闘・効果で破壊されず、相手の効果の対象にならない‼︎」

 

「っ、相変わらず厄介な効果だな」

 

「アタシはカードを2枚伏せてターンエンドだ‼︎」

 

 

遊騎 LP8000 手札5

 

ーーーーー ー

ーーーーー

☆ ー

ー□ーーー

ーー▲▲ー ー

 

空子 LP8000 手札1

 

 

「最初からかなり厄介な布陣を作られたな………地道に削っていくしかないか。俺のターン、ドロー‼︎まずはこれだ‼︎魔法カード、予想GUY‼︎自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこのカードは発動できる。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する‼︎」

 

「なら、予想GUYにチェーンして手札から増殖するGを捨てて効果発動‼︎」

 

「げっ‼︎よりによって最後の手札がそれかよ⁉︎」

 

「同名カードは1ターンに1度、手札から捨てることで効果を適用‼︎このターン、相手がモンスターの特殊召喚に成功する度に、自分はデッキから1枚ドローしなければならないよ‼︎これでゆっくんが特殊召喚する度にアタシの手札は増える‼︎」

 

「くっ………予想GUYの効果でデッキからクィーンズナイトを特殊召喚だ‼︎」

 

 

〈クィーンズナイト〉☆4 戦士族 光属性

ATK1500

 

 

俺の前に赤い鎧を身に纏った女性の騎士が現れる。

 

それに反応するようにフィールドに黒い影が現れて空子の手元にカードを運ぶ。

 

「クィーンズナイトが特殊召喚されたからアタシは1枚ドロー‼︎」

 

「罠カードは使ってこないか………」

 

空子のフィールドを突破するにはまずフレシアを倒さなければならないが、今の手札でフレシアを超えようとするならEXデッキからモンスターを特殊召喚するしかない。

 

しかし、そうすれば増殖するGの効果で空子の手札は増えてしまうし、出したモンスターは罠カードによって対処されてしまうだろう。

 

これはなかなか厄介な状況になったものだ。

 

「それでもやれることをやるしかない。俺はH・C( ヒロイックチャレンジャー)サウザンドブレードを召喚‼︎」

 

 

〈H・C サウザンドブレード〉☆4 戦士族 地属性

ATK1300

 

 

フィールドに頭巾を被り、背中に何本もの刀を背負った戦士が現れる。

 

現れたサウザンドブレードを見て空子が首を傾げる。

 

「ひろいっく?ヒーローじゃなくて?」

 

「………残念だが、今はヒーローはほとんど休業中なんだ」

 

「えー⁉︎ゆっくんのヒーロー、カッコよくて好きだったのにー‼︎」

 

「悪いな。あの頃に負けないようなデュエルはしてみせるからそれで勘弁してくれ」

 

「むーならちゃんとカッコいいところ見せてよ?アタシが発動するカードはないよ」

 

「使ってはこないか………なら、斬り開け‼︎運命に抗うサーキット‼︎」

 

俺が正面に手をかざすと目の前に巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件は戦士族モンスター2体‼︎俺はクィーンズナイトとH・C サウザンドブレードの2体をリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎追想に生きる王女‼︎リンク2‼︎聖騎士の追想 イゾルデ‼︎」

 

 

〈聖騎士の追想 イゾルデ〉LINK 2 戦士族 光属性

ATK1600 ↙︎ ↘︎

 

 

クィーンズナイトとサウザンドブレードの2体がサーキットの中に消えると代わりに現れたのは金髪と白髪の2人の女性。

 

「聖騎士の追想 イゾルデが特殊召喚されたから1枚ドロー‼︎」

 

「聖騎士の追想 イゾルデの効果発動‼︎リンクレカレクション‼︎リンク召喚に成功した時、デッキから戦士族モンスター1体を手札に加える。ただし、このターン、自分はこの効果で手札に加えたモンスター及びその同名モンスターを通常召喚・特殊召喚できず、そのモンスター効果も発動できない。俺はデッキから魔装戦士ドラゴディウスを手札に加える‼︎」

 

「っ⁉︎ペンデュラムモンスター⁉︎アタシが発動するカードはないよ」

 

「なら、聖騎士の追想 イゾルデの更なる効果発動‼︎メモリーズギフト‼︎デッキから装備魔法カードを任意の数だけ墓地へ送り、墓地へ送ったカードの数と同じレベルの戦士族モンスター1体をデッキから特殊召喚する‼︎俺はデッキから妖刀竹光、最強の盾、ビッグバンシュート、閃光の双剣-トライスを墓地に送り、デッキからH・C( ヒロイックチャレンジャー)強襲のハルベルトを攻撃表示で特殊召喚‼︎」

 

 

〈H・C 強襲のハルベルト〉☆4 戦士族 地属性

ATK1800

 

 

俺のフィールドにハルバードを持った紫の鎧を纏った戦士が現れる。

 

「H・C 強襲のハルベルトが特殊召喚されたからさらに1枚ドロー‼︎」

 

「まだ使ってこないか………墓地に送られた妖刀竹光の効果発動。デッキから妖刀竹光以外の竹光カードを手札に加える。俺はデッキから黄金色の竹光を手札に加える。俺はスケール2の魔装戦士ドラゴディウスでペンデュラムスケールをセッティング‼︎」

 

俺の隣に光の柱が立ち上り、その光の中に戦士の姿が浮かびあがり、下に2の数字が現れる。

 

「あれ?聖騎士の追想 イゾルデの効果で手札に加えたモンスターの効果は使えないんじゃなかったの?」

 

「確かに聖騎士の追想 イゾルデで手札に加えたモンスターの効果は発動できないが、ペンデュラムモンスターをペンデュラムスケールとして使うのは魔法カード扱いだ。モンスター効果じゃないからペンデュラムスケールやペンデュラム効果を使うことはできる。ついでに言っておくと、魔装戦士ドラゴディウスのペンデュラム効果は自分のモンスターが相手の表側表示モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に手札を1枚捨て、その戦闘を行う相手モンスターの攻撃力・守備力は半分になるぜ」

 

「へぇーそうなのかー………ん?フレシアの蟲惑魔がやられるじゃん⁉︎」

 

「バトル‼︎H・C 強襲のハルベルトでフレシアの蟲惑魔に攻撃‼︎ライトニングハルバード‼︎」

 

ハルベルドがハルバードに雷を纏いながらフレシアに迫る。

 

迫ってくるハルベルドを見て、フレシアは怪しい笑みを浮かべる。

 

「させないぞ‼︎フレシアの蟲惑魔の効果発動‼︎アルアメントトラップ‼︎1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、発動条件を満たしているホール通常罠カードまたは落とし穴通常罠カード1枚をデッキから墓地へ送って、この効果は、その罠カード発動時の効果と同じになる‼︎この効果は相手ターンにでも使える‼︎さらにそれにチェーンしてセラの蟲惑魔の効果発動‼︎インヴァイトカヴァティ‼︎1ターンに1度、このカード以外の自分の蟲惑魔モンスターの効果が発動した場合、デッキからホール通常罠カードまたは落とし穴通常罠カード1枚を選んで自分フィールドにセットする‼︎アタシはデッキから奈落の落とし穴をセットする‼︎」

 

「また面倒な罠が増えたか………」

 

「そして、フレシアの蟲惑魔の効果でアタシはデッキから狡猾な落とし穴を墓地に落として効果をコピー‼︎自分の墓地に罠カードが存在しない場合、フィールドのモンスター2体を対象としてそのモンスターを破壊する‼︎H・C 強襲のハルベルトと聖騎士の追想 イゾルデを破壊だ‼︎」

 

フレシアが怪しい笑みを浮かべた瞬間、ハルベルドとイゾルデの足場が崩れ、地面の中に吸い込まれて姿を消した。

 

「すまない、ハルベルド、イゾルデ。だが、これでとりあえずフレシアのオーバーレイユニットは1つ使わせたな。メインフェイズ2、装備魔法、妖刀竹光をセラの蟲惑魔に装備する」

 

「えー⁉︎いらなーい‼︎」

 

セラの手元に禍々しい竹光が現れる。

 

「魔法カード、黄金色の竹光‼︎自分フィールドに竹光と名のついた装備魔法が存在する場合に発動でき、デッキからカードを2枚ドローする‼︎俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

「なら、エンドフェイズにリバースカードオープン‼︎罠発動、強欲な瓶‼︎自分はデッキから1枚ドローする‼︎それにチェーンしてセラの蟲惑魔の効果発動‼︎アトラクタントフェロー‼︎1ターンに1度、通常罠カードが発動した場合、同名カードが自分フィールドに存在しない蟲惑魔モンスター1体をデッキから特殊召喚する‼︎アタシはデッキからアトラの蟲惑魔を特殊召喚‼︎」

 

 

〈アトラの蟲惑魔〉☆4 昆虫族 地属性

ATK1800

 

 

フィールドに頭に紅い宝玉のようなものをつけた黒髪の少女のモンスターが現れる

 

確かアトラにはモンスターゾーンに存在する限り、自分の通常罠カードの発動及びその発動した効果が無効化されなくなる効果があったハズだ。

 

やはり、時間をかければかける程不利になっていくな。

 

これは短期決戦を狙っていくしかないな。

 

 

遊騎 LP8000 手札3

 

ー▲△▲△ ー

ーーーーー

☆ ー

○□ーーー

ー▲ー▲ー ー

 

空子 LP8000 手札4

 

 

「アタシのターン、ドロー‼︎ふふーん、ゆっくんなんてすぐに動けなくしてあげるんだから。アタシはティオの蟲惑魔を召喚‼︎」

 

 

〈ティオの蟲惑魔〉☆4 植物族 地属性

ATK1700

 

 

「ティオの蟲惑魔の効果発動‼︎もう1度戻ってこーい、トリオンの蟲惑魔‼︎」

 

 

〈トリオンの蟲惑魔〉☆4 昆虫族 地属性

DEF1200

 

 

「さらにトリオンの蟲惑魔の効果発動‼︎このカードが特殊召喚に成功した場合、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として破壊する‼︎ゆっくんのペンデュラムカード、魔装戦士ドラゴディウスを破壊だ‼︎」

 

ドラゴディウスのいる光の柱の下からトリオンの本体であるアリジゴクが現れ、光の柱の中にいるドラゴディウスを地面に引きずり込む。

 

「くっ、破壊された魔装戦士ドラゴディウスはEXデッキに送られる」

 

「まだまだいくぞー‼︎掘り進め‼︎迷いも貫くサーキット‼︎」

 

「リンク召喚………セラの蟲惑魔を使ってくるのか?」

 

空子が目の前に手をかざすと再び巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件は植物モンスター2体‼︎アタシはセラの蟲惑魔とティオの蟲惑魔をリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎アロマセラフィージャスミン‼︎」

 

 

〈アロマセラフィージャスミン〉LINK 2 植物族 光属性

ATK1800 ↙︎↘︎

 

 

セラとティオがサーキットに吸い込まれ、代わりに現れたのは葉っぱの羽根を持つ妖精のモンスター。

 

「墓地に送られた妖刀竹光の効果発動。俺はデッキから 2枚目の黄金色の竹光を手札に加える」

 

「それぐらい問題なし‼︎アロマセラフィージャスミンの効果発動‼︎1ターンに1度、このカードのリンク先の自分のモンスター1体をリリースしてデッキから植物族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する‼︎アタシはトリオンの蟲惑魔をリリースしてデッキからチューナーモンスター、ナチュルコスモスビートを特殊召喚する‼︎」

 

「げっ‼︎ナチュルモンスター⁉︎」

 

 

〈ナチュルコスモスビート〉☆ 2 植物族 地属性

DEF700

 

 

トリオンの姿が消え、代わりに現れたのは頭にコスモスを生やした土人形のようなモンスター。

 

ナチュルモンスターが出てきたってことはここらで使っておかないとマズイ‼︎

 

「リバースカードオープン‼︎速攻魔法、手札断殺‼︎さらにそれにチェーンしてリバースカードオープン‼︎罠発動、トゥルースリインフォース‼︎デッキからレベル2以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する‼︎ただし、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。来い、H・C( ヒロイックチャレンジャー)アンブッシュソルジャー‼︎」

 

 

〈H・Cアンブッシュソルジャー〉☆1 戦士族 地属性

DEF0

 

 

フィールドに緑のマントを羽織った迷彩服の戦士が現れる。

 

「そしてチェーン処理で手札断殺の効果だ。お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、その後、それぞれデッキから2枚ドローする」

 

「むー手札交換はいいけど、チェーンの関係で落とし穴カードはタイミングを逃すんだったよね?」

 

「ああ、よく覚えてたな。偉いぞ、空子」

 

「へへーん、これぐらい楽勝よ‼︎それに今の手札交換でいいもの引けたもんね‼︎このターンでゆっくんをがっちがちに縛ってやる‼︎」

 

「………本格的に嫌な予感がしてきたな」

 

「アタシはレベル4、地属性のアトラの蟲惑魔に、レベル2、地属性のチューナーモンスター、ナチュルコスモスビートをチューニング‼︎」

 

コスモスビートが光の輪になり、アトラが小さな星に変わり、光の道になる。

 

そして光の道が輝くと、その中から現れるのは樹木のような鱗を持つ大地の竜。

 

「古代より緑と共に生きた竜よ、その力で生命を守れ‼︎シンクロ召喚‼︎繁茂せよ、ナチュルパルキオン‼︎」

 

 

〈ナチュルパルキオン〉☆6 ドラゴン族 地属性

ATK2500

 

 

「やっぱりナチュルパルキオンが出てきたか」

 

「ナチュルパルキオンの効果、ナチュラルトラップは、罠カードが発動した時、自分の墓地のカード2枚を除外して、このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、その発動を無効にして破壊することができる。これでゆっくんの罠は封じたも同然だ‼︎そしてまだ終わらないぞ‼︎魔法カード、ソウルチャージ‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

「自分の墓地のモンスターを任意の数だけ対象としてそのモンスターを特殊召喚する‼︎ただし、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの数×1000ポイントのライフポイントを失い、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えないけどね。アタシは墓地からアトラの蟲惑魔、ティオの蟲惑魔、そしてチューナーモンスター、ナチュルチェリーを特殊召喚して3000ポイントのライフを失う‼︎」

 

 

〈アトラの蟲惑魔〉☆4 昆虫族 地属性

ATK1800

 

 

〈ティオの蟲惑魔〉☆4 植物族 地属性

ATK1700

 

 

〈ナチュルチェリー〉☆1 植物族 地属性

DEF200

 

 

空子 LP8000→5000

 

 

フィールドに現れるアトラとティオ、そして手足がついたさくらんぼのようなモンスター。

 

あのナチュルチェリーはさっきの手札断殺で落ちたカードだろう。

 

この布陣でレベル1チューナーが出たってことはあっちも出てくるか。

 

「アタシはレベル4、地属性のティオの蟲惑魔に、レベル1、地属性のチューナーモンスター、ナチュルチェリーをチューニング‼︎」

 

チェリーが光の輪になり、ティオが小さな星に変わり、光の道になる。

 

そして光の道が輝くと、その中から現れるのは樹木の身体を持つ緑の獣。

 

「古代より緑と共に生きた獣よ、その叡智で生命を守れ‼︎シンクロ召喚‼︎叢生せよ、ナチュルビースト‼︎」

 

 

〈ナチュルビースト〉☆5 獣族 地属性

ATK2200

 

 

「ナチュルビーストの効果、ナチュラルマジックはこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、デッキの上からカードを2枚墓地へ送る事で、魔法カードの発動を無効にして破壊できる。これでゆっくんは魔法も罠も使えなくなった‼︎それに蟲惑魔達がいるから落とし穴だって好きなものを使えるからモンスターだってまともに出せない‼︎このターンバトルフェイズは行えないけど、これでアタシの勝利は確定‼︎ふふーん、やっぱりアタシってば最強ね‼︎」

 

「っ、確かに面倒な布陣だな」

 

「アタシはカードを2枚伏せてターンエンド‼︎次のターンには一斉攻撃で決めにいくよ‼︎」

 

 

遊騎 LP8000 手札4

 

ーーーーー ー

ーー□ーー

ー ☆

○□○ー○

ー▲▲▲▲ ー

 

空子 LP5000 手札2

 

 

魔法も罠も封じられ、モンスターを出せば落とし穴に落とされる。

 

確かに、かなり厄介な布陣だ。

 

だけど、今の手札なら可能性が全くないわけではない。

 

問題は空子がどのタイミングでフレシアの効果を使おうとするか。

 

そして俺がこのドローであのカードを引けるかだ。

 

正直、ここであのカードをドローできなければその時点で手詰まりだ。

 

頼む、俺に力を貸してくれ‼︎

 

「俺のターン………ドロー‼︎」

 

俺は勢いよくドローしたカードを見る。

 

可能性は………繋がっている‼︎

 

「スタンバイフェイズ、H・Cアンブッシュソルジャーの効果発動‼︎自分のスタンバイフェイズ時、フィールド上のこのカードをリリースして自分の手札・墓地からH・Cアンブッシュソルジャー以外のH・Cと名のついたモンスターを2体まで選んで特殊召喚できる‼︎墓地より甦れ、H・Cサウザンドブレード、H・C( ヒロイックチャレンジャー)エクストラソード‼︎」

 

 

〈H・C サウザンドブレード〉☆4 戦士族 地属性

ATK1300

 

 

〈H・C エクストラソード〉☆4 戦士族 地属性

ATK1000

 

 

サウザンドブレードと共に現れたのは銀色の鎧を身に纏った二刀流の戦士。

 

現れたエクストラソードに空子は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

 

「さっきの手札断殺で落としたカードね。だけどそれぐらいどうってことないわ‼︎リバースカードオープン‼︎罠発動、底なし落とし穴‼︎相手がモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に、そのモンスターを裏側守備表示にする‼︎そしてこの効果で裏側守備表示になったモンスターは表示形式を変更できない‼︎」

 

フィールドに現れたサウザンドブレードとエクストラソードの足場が崩れ、地面の中に吸い込まれて暗闇の中に消える。

 

「裏側守備表示になっちゃえばリンク召喚にもエクシーズ召喚にも使えない。これでそのモンスター達は無力‼︎」

 

「ならH・C( ヒロイックチャレンジャー)クラスプナイフを召喚‼︎」

 

 

〈H・C クラスプナイフ〉☆1 戦士族 地属性

ATK300

 

 

フィールドに現れたのは鉄の鎧を見に纏った巨大なナイフを持つ戦士。

 

その姿を見て空子が首を傾げる。

 

「この状況で攻撃力300のレベル1モンスターを攻撃表示?」

 

「さあ、何か使うか?」

 

「(魔法と罠はナチュルビーストとナチュルパルキオンが封じてるから魔法や罠による強化じゃない。できるとしたらリンク召喚だけど、出せたとしてリンク1のモンスターだし、それでこの状況を突破できるわけないし、出てきたモンスターがもし強くても落とし穴罠でどうにかすればいいのはゆっくんだってわかってるハズ。なら、ハッタリでフレシアの蟲惑魔のオーバーレイユニットを使わせようとしてるってことね。ふふーん、そんな手には乗らないんだから)アタシが発動するカードはないよ」

 

「………ふぅ、賭けは俺の勝ちだな」

 

「………えっ?」

 

クラスプナイフが生き残ったことで俺は安堵の息を吐く。

 

この状況でクラスプナイフを除去されていたらヤバかった。

 

だけど、生き残ったなら勝機が見える‼︎

 

「見せてやるよ、空子が望んでた俺のヒーローをな‼︎自分フィールドのモンスター3体、H・C クラスプナイフ、H・Cサウザンドブレード、H・C エクストラソードをリリースし、手札からこのモンスターを特殊召喚する‼︎」

 

「えっ⁉︎」

 

クラスプナイフ、サウザンドブレード、エクストラソードが粒子に変わり、空に集まっていく。

 

集まった粒子が弾けると、空から舞い降りたのは龍の鎧を見に纏った漆黒の戦士。

 

その戦士はフィールドに降り立つと、力強い咆哮を上げた。

 

「呪われた運命に抗う孤独の戦士‼︎DーHERO( デステニーヒーロー)BlooーD( ブルーディー)‼︎」

 

 

〈DーHERO BlooーD〉☆8 戦士族 闇属性

ATK1900

 

 

「DーHERO⁉︎ゆっくん入ってないって言ったじゃん‼︎」

 

「入ってないとは言ってないぞ、ほとんど使ってないって言っただけだ。それに本当にDーHEROはBlooーDしか入ってないしな」

 

現れたBlooーDを見て、空子が一瞬目を見開くがすぐに不敵な笑みを浮かべる。

 

「だけど、いくらゆっくんのヒーローでもモンスターであることには変わりないもん‼︎リバースカードオープン‼︎罠発動‼︎奈落の落とし穴‼︎相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時にその攻撃力1500以上のモンスターを破壊し除外する‼︎これでゆっくんのヒーローもおしまいだよ‼︎」

 

「残念だが、そうはいかないぜ?ライフポイントを半分払い、手札からカウンター罠発動‼︎レッドリブート‼︎」

 

 

遊騎 LP8000→4000

 

 

「相手が罠カードを発動した時に発動できる‼︎その発動を無効にし、そのカードをそのままセットする‼︎その後相手はデッキから罠カード1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットできる。ただしこのカード発動後、ターン終了時まで罠カードは発動できないがな」

 

「そんなの無駄だよ‼︎アトラの蟲惑魔の永続効果でこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の通常罠カードの発動及びその発動した効果は無効化されな………い?」

 

発動していた奈落の落とし穴が空子のフィールドに伏せられる。

 

それを見て空子が驚愕の表情を浮かべる。

 

「な、なんで⁉︎」

 

「確かにアトラの蟲惑魔の永続効果やナチュルパルキオンの効果があればレッドリブートで奈落の落とし穴は無効にできない。だが、奈落の落とし穴が発動するのはあくまで特殊召喚の成功時。特殊召喚が成功した時点で俺のDーHERO BlooーDの永続効果が発動していた‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

俺の言葉に空子が改めてフィールドを見ると、BlooーDの鎧から闇が吹き出し、辺りの風景が夜に変わる。

 

そのBlooーDから吹き出した闇により、空子のモンスターは力を失っていた。

 

「DーHERO BlooーDの永続効果、シールデステニー‼︎このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手フィールドの表側表示モンスターの効果は無効化される‼︎」

 

「あっ‼︎そういえばそんな効果だった‼︎ということは………」

 

「確かに空子の布陣はかなり強固だが、それはほとんどモンスター効果に頼ったものだ。DーHERO BlooーDでモンスター効果を封じてしまえば、俺を縛るものはない。そしてレッドリブートの効果により、このターン空子はもう罠カードは使えない。追い詰めたのはこっちの方だ」

 

「そんな………むぐぐー‼︎レッドリブートの効果でデッキからナチュルの神星樹をセット‼︎私のライフはまだ5000もあるもん‼︎次のターンで逆転してやる‼︎」

 

悔しそうに唸りながらそんなことを言う空子。

 

確かに次のターンになってBlooーDがやられれば俺の負けだ。

 

だからこそ、このターンで終わらせる‼︎

 

「いや、空子に次のターンはない‼︎DーHERO BlooーDの効果発動‼︎カースアブソーブ‼︎1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として、その相手モンスターを装備カード扱いとして1枚だけこのカードに装備し、このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力の半分だけアップする‼︎対象はナチュルパルキオン‼︎」

 

BlooーDがパルキオンに手を伸ばすと、BlooーDの背中に付いている龍の爪がパルキオンに放たれ、その爪に貫かれたパルキオンはガラスのように砕け、粒子に変わるとBlooーDに吸い込まれていった。

 

 

DーHERO BlooーD

ATK1900→3150

 

 

「さらに装備魔法、孤毒の剣をDーHERO BlooーDに装備‼︎」

 

BlooーDの手元に悪魔の意匠が凝らされた禍々しい紫の魔剣が現れる。

 

「孤毒の剣は自分フィールドに装備モンスター以外のモンスターが存在する場合にこのカードは墓地へ送られるが、相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時のみ、装備モンスターの元々の攻撃力・守備力は倍になる‼︎」

 

「っ‼︎だけどそれだけならまだ足りないよ‼︎」

 

「そうだろうな。だから答え合わせといこう。バトル‼︎DーHERO BlooーDでナチュルビーストを攻撃‼︎そして、速攻魔法、アクションマジック-フルターン‼︎」

 

「⁉︎そのカードは………」

 

「このターン、モンスター同士の戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは倍になる‼︎」

 

「戦闘ダメージが倍⁉︎」

 

「そして相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、孤毒の剣によりDーHERO BlooーDの攻撃力は倍になる‼︎」

 

 

DーHERO BlooーD

ATK1900→3800→5050

 

 

BlooーDが孤毒の剣を撫でると、孤毒の剣が青いオーラに包まれる。

 

「攻撃力5050の戦闘ダメージが倍⁉︎それじゃあ………」

 

「これで終わりだ。行け、DーHERO BlooーD‼︎ファイナルフィアースラッシュ‼︎」

 

BlooーDが青いオーラを纏った孤毒の剣をナチュルビーストに振るうと、孤毒の剣から青い斬撃が放たれ、ナチュルビーストを斬り裂く。

 

BlooーDがナチュルビーストに背中を向けながら孤毒の剣を再び撫でると、青いオーラが消え、それと同時にナチュルビーストが爆散した。

 

 

空子 LP5000→0

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「そこまで、勝者、遊騎」

 

「ふぅ、結構ギリギリだったな」

 

立体映像が消え、俺が一息吐くと子供達から歓声が上がる。

 

そんな中、対戦相手だった空子は悔しそうに表情を歪める。

 

「むー‼︎絶対勝ったと思ったのにー‼︎」

 

「ははは、そう簡単に俺も負けるわけにはいかないからな。だけど、空子も凄く強くなってたな。見違えたぞ、偉い偉い」

 

そういって頭を撫でてやると。空子が嬉しそうに鼻を掻く。

 

「‼︎へへ、でしょー‼︎見ててよ、ゆっくん‼︎次は絶対に勝ってやるんだから‼︎」

 

「ああ、楽しみにしてるぜ」

 

空子にそういって、遊花達が控えていた場所に戻る。

 

俺が戻ると遊花と桜は凄く真剣な表情で俺を見ていた。

 

そんな遊花達に、俺は苦笑しながら声をかける。

 

「どうやら、ここの子供達の強さがしっかりとイメージできたみたいだな」

 

「あんなデュエル見せられたら嫌でも分かるわよ………アンタ、結構危なかったでしょ?」

 

「まあな。BlooーDをドローしてなかったら、空子が別の落とし穴やフレシアの効果を使ってたらその時点で俺は負けだったよ。まあ、落とし穴を掻い潜ることはできるとふんでたから実質BlooーDがドローできるかどうかだったんだけどな」

 

「師匠がギリギリですか………」

 

そういって遊花が少し暗い表情を浮かべる。

 

全く、気負い過ぎるなって言ってるのにな。

 

「そう気負うなって。あくまでも今日のメインは子供達のチーム対抗戦の練習だからな。手を抜くのもダメだが、負けようとデメリットはない。それに、気負い過ぎるとその緊張は子供達にも伝わるぞ?気楽に、楽しんでデュエルをしろよ」

 

「‼︎………そうですね。私達が楽しんでデュエルできないと、子供達も楽しんでデュエルなんでできませんよね」

 

俺の言葉に、ようやく遊花が柔らかい笑顔を見せる。

 

よかった………どうやら上手く気持ちを切り替えられたみたいだな。

 

やっぱり、遊花に暗い顔は似合わないからな。

 

「さてと、次は桜だが。相手は多分竜路だな」

 

「あのアンタに突っかかってた男の子ね」

 

「まあ、それに関しては俺が悪いから言ってやるなよ。最初に空子が来たなら多分そうだろう」

 

「なんで空子ちゃんが最初なら次は竜路君なんですか?」

 

「今回空子は俺とデュエルしたいから先手に来ただろうからな。そうじゃなかったら自分が1番強いと思ってる空子は大将をやってるだろうし、その負けを取り返すためでも、遊陽は温存するだろう」

 

「その言い方だと、あの大人しめな遊陽って子が1番強いの?」

 

「ああ。ぶっちゃけ多分俺のデッキだと8割がた負けるな。闇も先攻をとれれば勝てるだろうが、後攻なら良くて7割悪くて5分ってところだろう」

 

「ええっ⁉︎」

 

「嘘でしょ⁉︎」

 

俺の言葉に遊花と桜が大声をあげて驚く。

 

まあ、気持ちは分からなくもない。

 

遊花達にとって俺や闇はかなり強いってイメージがあるんだろうし、そんな相手と互角かそれ以上の相手が遊陽みたいな小学3年生の少女だとは思わないだろう。

 

「まあ、相性云々意外にも色々あるんだが、そこはデュエルしてのお楽しみだな。正直、この中なら遊花が1番勝機がある。闇もそれを期待してるんだろう」

 

「………私が遊陽ちゃんに勝つのをってことですか?」

 

「多分な。あの年齢で強過ぎるって言うのも、それはそれで問題になるもんだぜ」

 

「強過ぎることが………ですが?」

 

「それじゃあそろそろ中堅戦をはじめる」

 

子供達に今のデュエルの解説をしていた闇が俺達にも聞こえるように言う。

 

その言葉に桜が少し不服そうな表情を浮かべる。

 

「結局、私の対戦する子の話は聞けなかったじゃない」

 

「ははは、悪い悪い。だが、桜の戦術は竜路相手には相性が良かったハズだから何とかなると思うぜ。まあ、俺の知らない間に竜路のデッキが変わってる可能性もあるが、桜なら大丈夫だろ」

 

「………まあ、それだけ信頼されてるってことで許してあげるわ。ちゃんと見てなさいよね」

 

「おう、頑張れよ」

 

そういうと、桜が闇がいる場所に移動する。

 

さて、どんなデュエルが見られるか………楽しみにしてるぜ、桜、竜路。




今回から3話程闇の実家での子供達とのチーム戦回。
先鋒は遊騎で何とか大人の意地を見せました。
遊戯王特有の発動していたも出来たし………まあ、正確に言えば適用していたですが。
永続効果には発動という概念がありませんから。
デッキの内容も少しだけ変わってたりします。
まあ、神剣が禁止されちゃいましたしね。
そんな遊騎の対戦相手は蟲惑魔使いのイタズラ好き元気系少女の空子。
正確にはナチュル蟲惑魔と言ったところですけどね。
ナチュルのロック効果で魔法罠を封じて出てくるモンスターを落とし穴に落としまくりじわじわと攻めていくデッキです。
虫使いは性格が悪いキャラが多めなので、たまにはこんなキャラがいてもいいかなと思ったり。
落とし穴程度ならまだ可愛いイタズラレベルのハズ、多分。
チーム戦は後2戦。
他の子供達がどんなデッキを使うか楽しみにお待ちいただけたらなと思います。

それじゃあ今回はここまで。
皆さんお正月はどうでした?
私は親戚に挨拶しに行ったり、神社で巫女さんがいると大はしゃぎして視線を集める友人を無言の腹パンで黙らせたり、そろそろ近付いてきた資格試験勉強を行なってたらあっという間に終わってしまいました………うん、ろくな事した思い出がないですね、お正月‼︎
そんなところで今回はお開き。
このペースだと二章に入るのが2月になりそうなのでどうにか投稿ペースをあげたいところです。
遅くなってしまいましたが、改めて、稚拙でスローペースな作品ですがどうか今年もお付き合いいただけたらなと思います。
というわけで、また次回。
ではでは〜
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