遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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大変お待たせ致しました。
休日に研修が入った後に職場で風邪をうつされて完全にダウンしてました………まあ、それだけが理由というわけでもありませんが。
今回も会話回ですが、いつもより遥かに短めながらもデュエルパートはあります。
今回は意外な人がデュエルをします。
遊騎視点と途中で第三者視点を交えておりします。
それでは本編へGO‼︎




第67話 張り巡らされる警告

 

 

「No.83ギャラクシークィーン、No.39 希望皇ホープルーツ………間違いなくNo.だが、少しおかしいね」

 

「おかしい?」

 

「ああ。どうやらこの2枚は闇のカードではないようだ」

 

「は?No.なのに、闇のカードじゃないのか?」

 

「ああ、実際に触って見るといい。このカードに人を害する力はないからね」

 

そういって島さんから2枚のNo.を受け取る。

 

いつもならNo.から黒い闇が溢れ出してくるのだが、この2枚からはそんな兆候が一切見られない。

 

本当に、闇のカードじゃないのか?

 

だけど、この2枚は確かにNo.のハズ………これは一体………

 

「あの、よくわからないですけど、とりあえずその子達を返してもらっていいですか?」

 

「ん、あ、ああ、悪い」

 

思考の海に沈みそうになった俺の身体を遊花が揺すり、俺の意識が現実に戻ってくる。

 

遊花は困惑の表情を浮かべながらも、俺から2枚のNo.を受け取り、再び自分が座っていた椅子に座った。

 

桜達もそれぞれ椅子に座ったまま、戸惑った表情を浮かべて俺達を見ている。

 

「あの、師匠はこのカード達について知ってるんですよね?教えてください、このカードはなんなんですか?」

 

遊花の問いかけに、俺は夜に視線を向けると、夜は仕方がなさそうに首を振った。

 

誤魔化しきれない、そう言いたいのだろう。

 

出来れば巻き込みたくはなかったが、すでに本人が関わっているのであれば、話していないことによって引き起こされる問題の方が多いだろう。

 

俺が思わずため息を吐くと、そんな俺達を見て真剣な表情で口を開いた。

 

「ちょうど遊騎君達にも話すつもりだったから、私が話そう。そのNo.ってカードは闇のカードというものの一種なんだ」

 

「闇のカード………ですか?」

 

島さんの言葉に遊花が何かを思い浮かべるように口元に手をやる。

 

きっと遊花の頭に浮かんでいるのは初めて異世界に行った時に戦ったあのカード達なんだろう。

 

「闇のカードというのはカードの精霊に悪意が宿って歪んでしまった呪われたカードでね。闇のカードに適合できなかった使用者の意思を好戦的にしたり破壊衝動を生み出したり、身体の乗っ取りや身体を傷付けたりするカードなんだ」

 

「ちょっ⁉︎そんな危険ものを遊花に返さないでよ‼︎」

 

「落ち着け、桜。気持ちは分かるが、どういうわけかその2枚はすでに闇のカードじゃなくなってるんだ。持ってても影響はない」

 

「でも………」

 

「まあまあ、落ち着いて。桜ちゃん、だったよね?そのカードを使うことを選んだのは遊花ちゃんの意思だ。影響がないのであれば遊花ちゃんの好きにさせるべきさ。それに、もし遊花ちゃんがそのカードを手放したとして、そのカードの呪いが蘇るようなことがあれば、次にそのカードを手にした人物が乗っ取られる可能生もある」

 

「なら燃やしたりとか………」

 

「闇のカードは呪われたカードだ。破壊すればカードに込められていた呪いが行き場をなくして周囲に飛び散り祟りになる可能性がある。物理的に壊すことはオススメできないね」

 

「うっ………」

 

俺と夜、島さんの言葉に桜が心配するように遊花を見ながら、悔しそうに歯嚙みをする。

 

親友がそんな危険なものを持ってたら心配だと言う桜の気持ちも痛い程分かるが、実際何故かあの2枚のNo.は闇のカードではなくなっている。

 

遊花が所持していても危険はないハズだ。

 

「話を戻そう。そのNo.というカードは、闇のカードの中でもかなり変わったカードでね。人が心に抱く心の闇や欲望を増幅することに特化していてね。そのうえ、No.には決まった姿がないんだ」

 

「決まった姿がない?」

 

「ああ。本来の闇のカードはカードの精霊が呪いによって歪んだものなんだが、No.はNo.を手にした者の心の闇や欲望を読み取り、その姿や能力を決めてしまうんだ。例えば、誰かを倒したいという欲望なら戦闘では負けなくなるとか、誰にも邪魔はさせたくないという欲望なら相手を縛る効果、とかね。他にもその効果に付随した特殊な力を使用者に授けるんだ。最も、1度姿を獲得してしまえば、そこから変化することはそうそうないみたいだけどね」

 

「成る程、それでか」

 

島さんの言葉に、俺はブラックミストとバグースカのことを思い出す。

 

ブラックミストを使っていた男は身体から黒い霧を発しながらジャマする奴は全員叩き潰すと言っていたし、バグースカを使っていた男は静かに酒を飲ませろと怒鳴りながら、歯向かうものを眠らせる霧を発していた。

 

だからこそ、ブラックミストは戦闘したモンスターを必ず勝つ効果を持ち、バグースカは相手を静かに眠らせる効果を持っていたのだろう。

 

………じゃあ、俺が手にしたコートオブアームズの姿と効果の意味は一体なんなんだ?

 

「他に特異なところがあるといえばNo.を使用している者同士がデュエルをした場合、勝者の元にNo.が移動する、という性質があるね」

 

「えっ?でも、私がギャラクシークィーンを手に入れた時、私はまだNo.を持ってませんでしたよ?」

 

「………ふむ、不思議なこともあるものだね。基本的にNo.が移動するのは使用者同士のデュエルのみのハズだが」

 

遊花の言葉に、島さんが興味深そうに首を傾げる。

 

俺も遊花の話す事実について考えようとした時、俺の服の袖が躊躇いがちに引かれる。

 

俺が袖を引かれた方を見ると、困惑した表情を浮かべた幸土の姿があった。

 

「あの、すみません。質問してもよろしいでしょうか?」

 

「ああ、いいぞ。幸土、だったよな?悪いな置いてきぼりにしちまって………」

 

「い、いえ、その、浅学の身で申し訳ないのですが、まずカードの精霊というのは、本当に実在しているんですか?栗原先輩や宝月先輩もそのことに特に驚かれた様子が見られないのですが………」

 

「ああ〜そうだな、そこからだよな。俺もはっきりと見えるわけじゃないんだが、カードの精霊って言うのは実在してる。俺の友人の話だと、そこら辺にいて視えるか視えないかは、視力が1.0の人が視えるものが0.3の人には視えにくいのと同じぐらいのレベルらしい。俺達が驚いていないのは、そのカードの精霊関係で色々巻き込まれたことがあるからだな」

 

「そ、そうなんですか………それでもう1つ質問なんですが、何故、結束さんはNo.ってカードのことを知っているんですか?島さんの説明にもあまり驚いていないみたいでしたし………」

 

「あ、そういえば‼︎どうして師匠はそんなに詳しいんですか?」

 

「うぐっ………」

 

幸土の質問に、遊花もそういえばというように俺の方を向く。

 

鋭い………できればそこは話さないでおきたかったんだが………仕方がないか。

 

「………実はな、俺も持ってるんだよ、No.」

 

「えっ⁉︎」

 

「はあっ⁉︎」

 

「因みに、ボクも所持者だよ」

 

「姉上もか⁉︎」

 

驚く遊花達に俺は自分のデッキからコートオブアームズを、夜は不乱健を取り出し、机の上におく。

 

コートオブアームズ達を見て幸土は驚きながらも納得したように頷いた。

 

「成る程、結束さん達自身がNo.の所持者だったんですね」

 

「ああ。といっても、俺達も偶々拾っただけなんだけどな」

 

「成る程、では先程の使用者の意思を好戦的にしたり破壊衝動を生み出したり、身体の乗っ取りや身体を傷付けたりするというのに驚かなかったのは実体験があったりするんですか?」

 

「うっ………それは、だな」

 

幸土の更なる質問に俺は思わず口ごもる。

 

そんな俺を見て、遊花は首を傾げたが、すぐに何かに思い至ったのかしばらく考え込むと真剣な表情で俺の方を見た。

 

「師匠。前に仕事中に怪我をしたと言って入院したことがありましたよね?」

 

「っ‼︎あ、ああ」

 

「師匠のお仕事は公園の清掃のハズなのに入院する程の大怪我をするなんておかしいなって思ってたんです。もしかして、あの入院はその闇のカードで怪我をしたからなんですか?」

 

「うぐっ‼︎」

 

「その反応、やっぱりそうなんですね⁉︎」

 

遊花が明らかに怒った表情を浮かべて俺に詰め寄る。

 

くっ………バレた。

 

遊花は抜けている部分はあるが基本的には頭がいい。

 

情報さえ揃ってしまえばそこから答えを導くのは凄く早いのだ。

 

だから闇のカードの情報が遊花に渡れば入院した時の真実に辿り着いてしまうのではと思ってはいたが、やっぱりバレてしまったか。

 

「どうしてちゃんと話してくれなかったんですか⁉︎」

 

「いや、普通信じられないだろ?デュエルしてたら大怪我した、なんて。ただでさえ混乱してた遊花をさらに戸惑わせるんじゃないかって思ったんだよ。怪我の後遺症が、とか言って」

 

「っ、それでも、ちゃんと教えて欲しかったです………嫌なんです、何も分からないまま師匠がいなくなるのなんて………」

 

遊花が目に涙を浮かべながら、泣きそうな声で俺の服の袖を掴む。

 

「本当に………嫌なんです………」

 

「遊花………悪かったよ」

 

俺は手で遊花の目に浮かんだ涙を拭い、そのまま頭を優しく撫でる。

 

すると、遊花は首を振って柔らかく笑った。

 

「いえ、私も我儘を言ってごめんなさい。でも、次はちゃんと教えてくださいね。私は、師匠のこと、信じてますから」

 

「………ああ」

 

そうして遊花が落ち着くまでしばらくの間頭を撫でていると、わざとらしい咳払いが聞こえてきた。

 

「コホン‼︎そろそろ本題に戻ってもいいかい?」

 

俺達が咳払いが聞こえてきた方を見ると夜が俺達から視線を逸らしながら微妙な表情を浮かべていた。

 

周りを見ると、島さんはにこにこと嬉しそうに笑みを浮かべ、桜は呆れたようなジト目でこちらを見て、真紅は気まずそうに視線を逸らし、幸土は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも興味深そうにこちらを見ていた。

 

俺が何事かと首を傾げていると、疲れたような表情で夜が口を開いた。

 

「君達ねぇ、イチャつくなら人がいないところにしなよ」

 

「は?」

 

「はぅっ⁉︎い、イチャついてなんかないですよ⁉︎私と師匠はそういう関係では………あぅ」

 

夜の言葉を、遊花は顔を真っ赤にしながら手をわたわたと振って否定する。

 

俺が思わず遊花の方を見ると、俺と遊花の視線がぶつかる。

 

目があった遊花は熱でもあるんじゃないかと疑うぐらい顔を真っ赤に染めながら、慌てて俺から離れてこちらを見ないように顔を背けた。

 

「桜ちゃん、この2人はいつもこうなのかい?」

 

「大体こんな感じよ、この師弟は。本人達的には無意識なんでしょうけど………」

 

「それはまた側から見ると気疲れしそうな日常だね」

 

戸惑う俺を横目に夜と桜がひそひそと何かを話す。

 

物凄いジト目なのできっと俺の悪口だろう。

 

「それで………ええっと、どこまで話したっけ?」

 

「遊騎達がNo.ってカードを持ってるってところよ」

 

「ああ、そうだったね。この中では、ボク、遊騎、遊花ちゃんがNo.を持ってるわけなんだけど、最近、この街にNo.をばら撒いている奴がいるみたいなんだ」

 

「No.を?」

 

「ああ。桜は覚えてないか?俺が入院するきっかけになったお前が蹴り飛ばした奴のこと」

 

「あ、あの明らかに不審者って格好をしてた黒ずくめのヘンテコヘルメット野郎のこと?」

 

桜の問いかけに俺が頷くと、桜は不機嫌そうに表情を曇らせる。

 

「あいつは俺が偶然拾ったコートオブアームズを狙ってきた。しかも、その時にそいつが作ったって言うNo.を使ってきた」

 

「No.を作ったって………呪われたカードなんでしょ?そんなことできるの?」

 

「それは分からん。でも、存在してるってことはできるんじゃないか?とりあえず言えるのは、俺達はそんなNo.をばら撒いてる奴を探してるってことだ。このカードは、本当に危険だからな。遊花達に危害が加わって欲しくない」

 

「師匠………そのためにNo.を追って………」

 

「ふむ、本当にこのようなカードが人を操るのか?」

 

そういって真紅の手がコートオブアームズに伸びる。

 

「っ、馬鹿‼︎危ねぇだろうが‼︎」

 

俺は慌ててコートオブアームズと不乱健のカードを手に取る。

 

そして手に取ったところで自分の失策に気付いた。

 

コートオブアームズはともかく不乱健は俺が所持している闇のカードではない。

 

つまりーーー不乱健の呪いは所持していない俺には発動する。

 

「っ⁉︎ぐああっ⁉︎」

 

「っ⁉︎師匠⁉︎」

 

「遊騎⁉︎」

 

不乱健のカードから溢れ出した闇が俺の身体を包み込み、遊花達が悲鳴をあげる。

 

俺の身体も様々なNo.を手に入れて適合率が上がってるハズなのに、それでも不乱健は制御できないのかよ‼︎

 

「っ‼︎まずっ‼︎夜‼︎」

 

「分かってるよ‼︎」

 

夜が急いで俺の身体を突き飛ばし、俺の手元から不乱健のカードを吹き飛ばすと、俺の身体を包んでいた闇が消えた。

 

「ぐっ………あ、危ないところだった………サンキュー、夜」

 

「お礼なんて必要ないよ。元々ボクのせいみたいなものなんだから。悪かったね、突き飛ばして」

 

「いや、よくやってくれたよ」

 

「師匠⁉︎大丈夫ですか⁉︎」

 

「遊騎、アンタまた無茶をして‼︎」

 

「ああ、大丈夫だ。悪いな、遊花、桜」

 

心配そうな表情を浮かべる遊花達に俺は苦笑を浮かべて応える。

 

苦笑を浮かべる俺を見て、夜は鋭い視線を自分の妹に向けた。

 

「真紅」

 

「あ、姉上?」

 

「ボク達は話したよね、闇のカードは危険だと。それなのに、何で触ろうとしたんだい?」

 

「そ、それは本当にそのカードが不思議な力を持っているのかを試そうと………」

 

「その結果、ボクの友達が危険な目にあったわけだ。そのことに申し開きはあるかい?」

 

「っ………」

 

「夜、その辺にしとけ」

 

「遊騎‼︎だけど………」

 

「妹さんもちょっと悪ノリが過ぎただけだろ?俺は無事だったんだし、責める程のことじゃねぇよ」

 

俺は立ち上がりながら至って平静を装って静かな怒りを発している夜を宥める。

 

怒ってくれるのは嬉しいが、分からないこそ真紅は行動に移っただけだ。

 

これ以上真紅を責める必要はない。

 

このまま夜の怒りが治ってくれれば………

 

「ふ、フン‼︎其奴が余計なことをするからそんな目にあうのだ‼︎我は紅神爆牙( こうこうはくが)のアイズ・D・スカーレット‼︎その程度の闇に負けるわけがないのだからな‼︎」

 

「………あちゃー」

 

開き直るような真紅の発言に俺は思わず頭を押さえながらそんな言葉が口に出る。

 

………これは、想像以上に面倒なことになりそうだ。

 

「真紅ちゃん⁉︎何を言ってるのか分かってるの⁉︎」

 

「クックックッ、当然よ‼︎我の闇の力であれば、そのNo.の闇の力程度に飲まれるわけがない‼︎その呪われた力、我が全て手にしてやろう‼︎」

 

「っ‼︎真紅‼︎」

 

不敵な笑みを浮かべる真紅に夜と幸土が表情を硬くして怒る。

 

しかし、開き直った真紅はそんな怒りなどどこ吹く風と言わんばかりだ。

 

どうしたものか………思わず頭を抱えそうになった俺の耳に予想外の声が響いた。

 

「やれやれ、仕方がないね。子供に現実を教えてあげるのも、大人の務めだしね」

 

「島さん?」

 

一触即発とも言える真紅達の間に島さんが困ったような表情を浮かべて割って入る。

 

島さんは不敵な笑みを浮かべて自分の世界に浸っている真紅に向けて真剣な表情を浮かべて口を開いた。

 

「君の言い分は分かったよ。なら、私とデュエルをしないかい?」

 

「何?店主とデュエルだと?」

 

怪訝な表情を浮かべる真紅に、島さんは懐から1枚のカードを取り出す。

 

その瞬間、島さんの取り出したカードから吹き出す大量の闇。

 

あれって、もしかして………

 

「実は私も持っているんだよ、No.のカードを。もし、君が私とのデュエルに勝てたら、君にこのNo.をあげよう」

 

「ほぅ、いいだろう。そのデュエル、受けてやろう」

 

「決まりだね」

 

「ちょっ⁉︎島さん⁉︎」

 

驚きの表情を浮かべる俺を見て、島さんはにこりと笑って首を振る。

 

任せろ………って、ことなのか?

 

島さんはカウンターの裏からデュエルディスクを取り出し、懐かしそうにひと撫でしてから自分の腕につけて起動する。

 

そんな島さんに、真紅も不敵な笑みを浮かべたままデュエルディスクを起動した。

 

「あの、師匠。島さんってデュエル、強いんですか?」

 

突然始まる島さんのデュエルに、遊花は困惑した表情で尋ねてくる。

 

しかし、俺はそんな遊花の問いに苦笑して応えるしかなかった。

 

「分からない」

 

「えっ?分からないって………」

 

「俺、島さんとデュエルしたことないし、島さんがデュエルするところを見たこともないんだ」

 

「はあっ⁉︎アンタ、島さんと一緒に住んでたんでしょ?それなのに、1度もないの⁉︎」

 

俺の返答に遊花と桜が驚いた表情を浮かべる。

 

「俺も子供の頃、島さんにデュエルを挑んだことあるんだけど、島さんは『デュエルは苦手だから』って受けてくれなかったんだ。何か理由があるんだろうなとは思ってたんだが………」

 

「それは………私達みたいに、ですか?」

 

「ああ」

 

デュエル出来る環境を失った俺。

 

デュエルすることが怖くなった遊花。

 

同じように、島さんにもきっとデュエルができない理由があるとは思ってたんだが………何故、真紅とデュエルを………

 

「準備はいいかい?」

 

「クックックッ。後悔するがいい、店主よ。すぐに貴様を倒し、そのNo.を手に入れてみせよう‼︎」

 

「ははは、威勢がいいね。それでは、はじめるとしよう」

 

『決闘‼︎』

 

 

真紅 LP8000

 

島 LP8000

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「先攻は我だ。店主よ。汝に我が力の一端を見せてやろう‼︎魔法アクティベート、真紅眼融合( レッドアイズフュージョン)‼︎このカード名のカードは1ターンに1枚しかアクティベートできず、このカードをアクティベートするターン、我はこのカードのエフェクト以外ではモンスターを召喚( サモン)特殊召喚( スペシャルサモン)できない。だが、そのエフェクトは強力だ。我の手札・デッキ・フィールドから、融合( フュージョン)モンスターカードによって決められた融合素材( フュージョンマテリアル)モンスターをセメタリーへ送り、レッドアイズモンスターを融合素材( フュージョンマテリアル)とするその融合( フュージョン)モンスター1体をEXデッキから融合召喚( フュージョンサモン)し、このエフェクトで特殊召喚( スペシャルサモン)したモンスターのカード名を真紅眼の黒竜( レッドアイズブラックドラゴン)として扱う‼︎」

 

「ほぅ………レッドアイズとは、また珍しいカードを使っているね」

 

「その余裕、すぐに崩させてやろう‼︎我はデッキから真紅眼の黒竜とレベル6ドラゴン族モンスター、真紅眼( レッドアイズ)の凶星竜-メテオドラゴンを融合( フュージョン)‼︎」

 

 

真紅のフィールドに出来た渦の中に真紅の眼を持つ黒竜と隕石のような身体を持つ竜が吸い込まれていく。

 

そして渦が弾けると舞い降りるのは炎を纏った流星の如き真紅の眼を持つ黒竜。

 

「我が闇の力を宿し黒竜よ、宇宙( コスモス)の力を我が物とし、破滅を導く凶星となれ‼︎融合召喚( フュージョンサモン)‼︎流星竜メテオブラックドラゴン‼︎」

 

 

〈流星竜メテオブラックドラゴン〉☆8 ドラゴン族 闇属性

ATK3500

 

 

「流星竜メテオブラックドラゴンのエフェクトアクティベート‼︎流星は終焉を告げる(デミスミーティア)‼︎このカードが融合召喚( フュージョンサモン)に成功した場合、手札・デッキからレッドアイズモンスター1体をセメタリーへ送り、そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える‼︎我はデッキより真紅眼の凶雷皇( レッドアイズライトニングロード)-エビルデーモンをセメタリーに送り、その攻撃力2500の半分、1250のダメージを与える‼︎」

 

流星竜が咆哮をあげると、空から稲妻を纏った流星が島に向かって降り注ぎ、島のライフを削り取った。

 

 

島 LP8000→6750

 

 

「さらに魔法アクティベート、黒炎弾‼︎我のモンスターゾーンの真紅眼の黒竜1体を対象としてその真紅眼の黒竜の元々の攻撃力分のダメージを汝に与える‼︎このカードを発動するターン、真紅眼の黒竜は攻撃できないが、先攻ならば関係ない。そして流星竜メテオブラックドラゴンは、真紅眼融合の力により真紅眼の黒竜の名を得ている‼︎」

 

「ほぅ、これは痛いね」

 

「その余裕、すぐに崩してやろう。流星竜メテオブラックドラゴンよ‼︎その魂に宿し炎を放て‼︎黒炎弾‼︎」

 

真紅の呼びかけに応えるように、流星竜は口から黒い炎の弾丸を放ち、島の身体を炎が包み込んだ。

 

 

島 LP6750→3250

 

 

「我はカードを1枚セットし、ターンエンドだ。店主よ。貴様の力、我に見せてみよ」

 

 

真紅 LP8000 手札2

 

ーー▲ー ー

ーーーーー

○ ー

ーーーーー

ーーーーー ー

 

島 LP3250 手札5

 

 

「ふむ、1ターン目から大きくライフを削られてしまったね」

 

「クックック、怖気付いたか?」

 

「いや、ちょうどいいと思っただけさ。私のターン、ドロー。まずは私のフィールドに君を招待しよう。フィールド魔法、スパイダーウェブ」

 

島がフィールド魔法をセットすると、辺り一面に蜘蛛の糸が張り巡らされた蜘蛛の巣の上に変わる。

 

「蜘蛛の巣を自分のフィールドにしているとは、店主よ。汝は悪趣味だな」

 

「ははは、自覚はしてるよ。フィールド魔法、スパイダーウェブはモンスターが攻撃宣言をした場合、そのモンスターはダメージステップ終了時に守備表示になり、そのモンスターのコントローラーから見て次の自分のターンのエンドフェイズ時まで表示形式を変更する事ができなくなる」

 

「チィ、面倒な………」

 

「攻撃する時は気をつけなさい。最も、君に攻撃をするターンがあればだけどね」

 

「何だと?」

 

「さて、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。来なさい、プリミティブバタフライ」

 

 

〈プリミティブバタフライ〉☆5 昆虫族 風属性

ATK1200

 

 

島のフィールドに透き通った黄緑の羽根を持つ蝶のモンスターが現れる。

 

「私は手札からゴキポールを捨てて魔法カード、ワンフォーワン。デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚するよ。来なさい、ブロックスパイダー」

 

 

〈ブロックスパイダー〉☆1 昆虫族 地属性

DEF100

 

 

蜘蛛の巣を伝い、島の頭上からブロックの身体を持つ蜘蛛が姿を現わす。

 

「さらに墓地に送られたゴキポールの効果、それにチェーンしてブロックスパイダーの効果を発動するよ。このカードが特殊召喚に成功した場合に、デッキから同名モンスター1体を特殊召喚する。私はもう1体ブロックスパイダーを特殊召喚するよ」

 

 

〈ブロックスパイダー〉☆1 昆虫族 地属性

DEF100

 

 

「そしてゴキポールの効果このカードが墓地へ送られた場合にデッキからレベル4の昆虫族モンスター1体を手札に加え、この効果で通常モンスターを手札に加えた場合、さらにそのモンスターを手札から特殊召喚でき、その後、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力以上の攻撃力を持つ、フィールドのモンスター1体を選んで破壊できる。私はデッキからカマキラーを手札に加え、通常モンスターだから特殊召喚するよ」

 

 

〈カマキラー〉☆4 昆虫族 地属性

ATK1150

 

 

「カマキラーの攻撃力は1150。カマキラーより攻撃力が高い流星竜メテオブラックドラゴンは破壊させてもらうよ」

 

プリミティブの横に現れた2本の鎌の腕を持つ人型のカマキリが流星竜に向かって鎌を振るうと、鎌から発生した真空波が流星竜の身体を切り裂き、爆散させた。

 

「チッ、低レベルの通常モンスターで我が凶星を砕くか………だが、我が凶星はただでは砕けぬ‼︎流星竜メテオブラックドラゴンのエフェクトアクティベート‼︎流星は真紅に染まる(スカーレットミーティア)‼︎このカードがモンスターゾーンからセメタリーへ送られた場合、自分のセメタリーの通常モンスター1体を対象として、そのモンスターを特殊召喚( スペシャルサモン)する‼︎蘇れ、真紅眼の黒竜‼︎」

 

 

真紅の呼びかけに、爆散した流星竜の爆風から勢いよく黒竜が飛び出し、力強い咆哮を響かせた。

 

 

〈真紅眼の黒竜〉☆7 ドラゴン族 闇属性

DEF2000

 

 

「クックック、我のフィールドに黒竜は蘇った。店主よ、その低レベルな虫けらで我が黒竜を倒せるか?」

 

「ああ、勿論だとも。私は手札から機怪神(デウス)エクスクローラーを墓地へ送り、2体のブロックスパイダーを対象に、魔法カード、レベルマイスター。手札のモンスター1体を墓地へ送り、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターを2体まで選択して発動できる。選択したモンスターのレベルはエンドフェイズ時まで、このカードを発動するために墓地へ送ったモンスターの元々のレベルと同じになる。私が墓地に送った機怪神エクスクローラーのレベルは9。よってブロックスパイダーのレベルは9になる」

 

 

ブロックスパイダー

☆1→9

 

 

「何⁉︎レベル9モンスターが2体だと⁉︎まさかランク9のエクシーズモンスターを呼び出す気か‼︎」

 

「いや、ランク9じゃない。プリミティブバタフライの効果を発動するよ。1ターンに1度、自分メインフェイズに自分フィールドの全ての昆虫族モンスターのレベルを1つ上げる」

 

 

プリミティブバタフライ

☆5→6

 

 

カマキラー

☆4→5

 

 

ブロックスパイダー

☆9→10

 

 

「っ⁉︎レベル9ではなくレベル10モンスターが2体か⁉︎」

 

「見せてあげよう、君が望む力がどれだけ危険なものかをね。私はレベル10となった2体のブロックスパイダーでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚」

 

2体のブロックスパイダーが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると、辺り一面に張り巡らされた糸を伝って小さな毒蜘蛛が蜘蛛の巣の上に舞い降りた。

 

「大罪を秘めし貪欲なる捕食者よ。欲深き者に試練を与えよ。現れなさい、No.35ラベノスタランチュラ」

 

 

〈No.35ラベノスタランチュラ〉★10 昆虫族 闇属性

ATK0

 

 

「それが貴様の言うNo.か。フッ、大層な物言いをするわりには大した攻撃力も持っていないではないか」

 

「目に見える力だけで判断するものではないよ。もっとも、目に見える力だけでも君を圧倒するには十分だがね」

 

「何だと?」

 

「No.35ラベノスタランチュラの永続効果、ライフグラトニー。このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は自分と相手のライフポイントの差の数値分アップする」

 

「っ⁉︎何だと⁉︎」

 

「君によって私のライフポイントは大きく削られ3250。対して君のライフポイントは削られていない8000。よって、その差分、4750の攻撃力を私のモンスターに加えよう」

 

ラベノスタランチュラの身体が怪しげに輝くと、その光がプリミティブとカマキラーにも宿り、小さかったラベノスタランチュラやプリミティブ、カマキラーの身体が巨大化していき、黒竜を遥かに上回る大きさに変わった。

 

 

No.35ラベノスタランチュラ

ATK0→4750

 

 

プリミティブバタフライ

ATK1200→5950

 

 

カマキラー

ATK1150→5900

 

 

「馬鹿な⁉︎全てのモンスターの攻撃力が4750も強化されるだと⁉︎」

 

「これで君のレッドアイズは簡単に倒せるよ。私はスパイダースパイダーを召喚。スパイダースパイダーもNo.35ラベノスタランチュラの効果で強化させて貰うよ」

 

 

〈スパイダースパイダー〉☆4 昆虫族 地属性

ATK1500→6250

 

 

蜘蛛の糸を伝ってフィールドに現れたのはスコープを目につけた蜘蛛のモンスター。

 

そしてスパイダースパイダーの身体もラベノスタランチュラのように怪しく輝くと黒竜を遥かに上回る大きさになるまで巨大化した。

 

「バトルだ。スパイダースパイダーで真紅眼の黒竜を攻撃。スパイダーストリング」

 

スパイダースパイダーが口から蜘蛛の糸を放ち、黒竜の身体を締め上げ、動けなくなった黒竜を喰らい尽くした。

 

「クッ、下級の虫けらが我が黒竜を上回るとは………これがNo.の力だと言うのか⁉︎」

 

「スパイダーウェブの効果により、攻撃を行なったスパイダースパイダーは守備表示になる」

 

 

スパイダースパイダー

ATK6250→DEF5750

 

 

黒竜を喰らい尽くしたスパイダースパイダーが満足そうに島の元に戻ろうとすると、自身の足元に蜘蛛の糸が絡まっていることに気づく。

 

スパイダースパイダーは暴れて糸を外そうとするが、暴れる程に糸は絡まっていき、しばらくすると不貞腐れたようにその場に寝転がった。

 

「すまないね、スパイダースパイダー。さて、スパイダースパイダーの効果を発動するよ。このカードが戦闘によって相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターを破壊した場合、自分の墓地に存在するレベル4以下の昆虫族モンスター1体を選択して特殊召喚する事ができる。来なさい、ゴキポール」

 

 

〈ゴキポール〉☆3 昆虫族 地属性

ATK1000→5750

 

 

スパイダースパイダーが大きな声をあげると、スパイダースパイダーの近くに積み重なり巨大化した4匹の台所に出没してカサカサと動く黒いアレが現れた。

 

「ひっ‼︎な、なんておぞましいものを呼び出すんですか⁉︎相手は可愛い女の子ですよ⁉︎慈悲とかないんですか⁉︎」

 

「そう言われてもそういうカードだからねぇ。諦めて貰うしかないよ。ゴキポールでダイレクトアタック」

 

「む、無理無理無理無理⁉︎鬼畜ですかあなたは⁉︎リバースカードオープン‼︎罠発動、レッドアイズスピリッツ‼︎自分の墓地のレッドアイズモンスター1体を対象としてそのモンスターを特殊召喚します‼︎ま、守って、真紅眼の黒竜‼︎」

 

 

〈真紅眼の黒竜〉☆7 ドラゴン族 闇属性

DEF2000

 

 

思わず素を曝け出し涙目を浮かべる真紅に呼び出され、黒竜は仕方がなさそうに咆哮をあげる。

 

しかし、現れた黒竜を見てラベノスタランチュラが威嚇する音を出した。

 

「この瞬間、No.35ラベノスタランチュラの効果を発動するよ。グリードポイズン」

 

「えっ⁉︎」

 

「オーバーレイユニットを持ったこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手がモンスターを特殊召喚する度に相手に600ポイントのダメージを与える。ちゃんと外すんだよ、ラベノスタランチュラ」

 

島の声を聞き、ラベノスタランチュラは仕方なさそうに毒液を放つ。

 

ラベノスタランチュラが放った毒液は真紅の後方で飛び散ったが、飛び散った毒液が少量真紅のマントに当たると毒液が当たった部分が瘴気をあげて溶けた。

 

 

真紅 LP8000→7400

 

 

「えっ………な、何で本当に溶けて………」

 

「これが君の求めた力だよ」

 

驚愕の声をあげる真紅に、島は宥めるように言葉を紡ぐ。

 

「No.はただのカードとは違う。本当に人を殺める(・・・)可能生すら秘めている呪われた力だ。使いこなせるなら構わない。だが、使いこなせないのであれば使った者も使われた者もただでは済まない。今、私はラベノスタランチュラに命じて実体化させた状態で外させたが、今の効果がもし本当に君に当たっていれば君の末路はそのマントと同じだっただろう」

 

「っ………そ、そんな………」

 

「そんな中、君のお姉さんや遊騎君はこのカード達を追っているんだ。自分の大切な者を守るために、自分の身を危険に晒そうともね。こういう言い方は悪いが、君の行っている"ごっこ遊び(・・・・・)"とは根本的に違う。君のライフポイントが変動したことでNo.35ラベノスタランチュラの強化する数値も変動する」

 

 

No.35ラベノスタランチュラ

ATK4750→4150

 

 

スパイダースパイダー

DEF5750→5150

 

 

ゴキポール

ATK5750→5150

 

 

プリミティブバタフライ

ATK5950→5350

 

 

カマキラー

ATK5900→5300

 

 

 

「そして攻撃は続行だ。ゴキポールで真紅眼の黒竜を攻撃。コックローチストライク」

 

ゴキポール達が一斉に黒竜に向かって突撃し、その巨体に押しつぶされる。

 

「っ、真紅眼の黒竜‼︎」

 

「スパイダーウェブの効果によりゴキポールは守備表示になる」

 

 

ゴキポール

ATK5150→DEF5350

 

 

「カマキラーでダイレクトアタック。シャドウシックル」

 

「くぅ………」

 

 

真紅 LP7400→2100

 

 

カマキラーの真空波が真紅の身体を斬り裂く。

 

「スパイダーウェブの効果によりカマキラーは守備表示に、そして君のライフポイントが変動したことにより私のモンスターの強化も変動する」

 

 

No.35ラベノスタランチュラ

ATK4150→1150

 

 

スパイダースパイダー

DEF5750→2150

 

 

ゴキポール

DEF5350→2350

 

 

プリミティブバタフライ

ATK5350→2350

 

 

カマキラー

ATK5300→DEF2550

 

 

「覚悟はいいかい?No.35ラベノスタランチュラでダイレクトアタック。サーフィトストリングス」

 

「ひっ‼︎」

 

ラベノスタランチュラの口から大量の蜘蛛の糸が吐き出され、真紅に向かって吐き出される。

 

 

真紅 LP2100→950

 

 

思わず目を瞑った真紅だが、一向に痛みが訪れないことに疑問を持ち、少しずつ目を開けていく。

 

「あ………れ?」

 

目を開けた真紅の身体には大量の蜘蛛の糸が巻き付いていたが、糸の感触はなく、ただの立体映像のようだった。

 

「驚いたかい?使いこなせてさえいればこうしてただの立体映像にすることもできる。私も君を傷つけるのは本意ではないしね。だが、この攻撃がもし実体化していれば、君がどうなったかは想像に難くないだろう」

 

「う………あ………」

 

「だから止めているのだよ。このような危険な物に君が関わることがないようにね。スパイダーウェブの効果によりNo.35ラベノスタランチュラは守備表示に、そして君のライフポイントが変動したことにより私のモンスターの強化も最後の変動を行う」

 

 

No.35ラベノスタランチュラ

ATK1150→DEF2300

 

 

スパイダースパイダー

DEF2150→3300

 

 

ゴキポール

DEF2350→3500

 

 

プリミティブバタフライ

ATK2350→3500

 

 

カマキラー

DEF2550→3700

 

 

「これで終わりだね。プリミティブバタフライでダイレクトアタック。ファレノプシスドリーム」

 

プリミティブが羽根を羽ばたかせ、暴風と共に鱗粉を飛ばす。

 

真紅は呆然としたまま、吹き荒れる暴風に呑み込まれた。

 

 

真紅 LP950→0

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「まあ、こんなところだね。威勢の割には大したことがなかったね」

 

「………っ‼︎」

 

「真紅ちゃん⁉︎あの、し、失礼します‼︎」

 

島さんの言葉を聞き、真紅が勢いよく店を飛び出していく。

 

店を飛び出していった真紅に困惑しながらも、幸土はこちらに一礼すると真紅を追って店から出ていった。

 

静まり返る店内の中、夜は島さんの前に行くと深く頭を下げた。

 

「妹が失礼を働いてしまい申し訳ありません」

 

「いや、こちらこそすまないね。闇のカードがどのようなものかを分かって貰うためとはいえ、真紅君を怖がらさせてしまった」

 

「いえ、私が本当にあの子と向き合っていれば(・・・・・・・・)こうはならなかったと思いますから」

 

「それは私にも言えること(・・・・・・・・)だからね。君が特別気にすることではないよ」

 

「………ありがとうございます」

 

夜が難しい表情を浮かべたまま顔を上げると、島さんは困ったような表情を浮かべて俺達を見た。

 

「遊騎君達もすまなかったね」

 

「いや、気にしてないけど………島さん、デュエルして良かったのか?苦手なんだろ、デュエル?」

 

「………ああ、気を遣わせてしまったね。構わないよ、デュエルが苦手なことには変わりがないが、道に迷っている子供達に道を説くというのも、大人として必要な役割だからね。だが、気遣ってくれてありがとう」

 

笑顔でそういう島さんに、俺は何も言えなくなる。

 

何となく微妙な雰囲気になったところで、遊花が俺と夜を見て躊躇いがちに手を挙げた。

 

「ええっと、その、少しいいでしょうか?」

 

「ん?どうした、遊花?」

 

「あの、師匠と夜さんはNo.をケルン中に配っている人を探しているんですよね?」

 

「うん、そうだよ。ボクと遊騎はNo.をばら撒いている奴を探している。実際に見て分かったと思うけど、No.は危険なカードだからね」

 

遊花の問いに夜が真紅が出ていった扉に視線を向け、苦い表情を浮かべながら応える。

 

それを聞いた遊花は1度目を閉じると、覚悟を決めたような表情で口を開いた。

 

「なら、そのNo.をケルン中に配っている人を探すの、私にも手伝わせてくれませんか」

 

「「はあっ⁉︎」」

 

遊花の言葉に、桜と夜が目を見開く。

 

ああ、やっぱりこうなったか………

 

「私もNo.の所持者です。なら、勝者の元にNo.が移動するという性質を利用して、私でもNo.を回収できるハズです。だから、私でも少しは力に慣れると思います」

 

「ちょっ、遊花⁉︎アンタさっきのデュエルを見てなかったの⁉︎島さんだったから真紅は怪我をしなかったけど、本当に操られている人だったら大怪我をするかも知れないのよ⁉︎」

 

「それに、君はデュエルアカデミア生だ。講義がある昼間や夜中に動き回る訳にはいかないだろう?」

 

「はい。確かに私はデュエルアカデミア生です。ずっと街の中を探すのは難しいと思います。ですが、逆に言えば、私はデュエルアカデミア生なんです」

 

「デュエルアカデミア生だからこそ、俺達が入れないデュエルアカデミアの中でNo.を所持している人間は探すことができる、ってことだろ?」

 

「はい。実際、ギャラクシークィーンを所持していたのは私と同じデュエルアカデミア生でした。なら、またデュエルアカデミアの中でNo.の所持者が現れてもおかしくないと思います。それに、もしかしたら師匠達がケルンの街中を探して犯人が見つからないのなら、デュエルアカデミアの中にケルン中に配っている人がいるのかも知れません。だけど、師匠達がデュエルアカデミアの中に入るわけにはいきませんよね?そんな時、私がお役に立てると思います」

 

そういって、遊花が俺の目を見て柔らかく笑う。

 

………これを危惧してたから遊花にはバレたくなかったんだけどな。

 

だけど、遊花の目を見れば、遊花がどれだけ真剣に考えたかは分かる。

 

だから、そんな遊花に俺ができることは1つだけだ。

 

「………分かった。ただし、デュエルアカデミアの中でNo.を所持している人間の相手だけだ。明らかに犯人みたいな人間が見つかった場合はデュエルアカデミアにいる闇に言うか、俺達に連絡すること。できるな?」

 

「‼︎はい‼︎ありがとうございます、師匠‼︎」

 

「ちょっ⁉︎遊騎⁉︎」

 

「本気かい、君は⁉︎」

 

俺の出した条件に遊花は嬉しそうに頷く。

 

しかし、それを聞いた桜と夜は勢いよく俺に詰め寄った。

 

「何を考えてるのよ、アンタは⁉︎遊花が危険な目にあってもいいの⁉︎」

 

「良い訳ないだろ。だけど、ここで拒否したところで遊花は絶対に勝手に犯人を探すぞ?俺が犯人を探すのを止めないからな。そうすれば余計に危ない状況に陥る可能性がある。なら、分かる範囲の制限付きで許可した方がまだ安全だ」

 

「だけど、もしNo.の攻撃を受けたら遊花ちゃんは………」

 

「それは俺も危惧するところではあるんだが………心配には及ばないと思うぞ?」

 

「えっ?」

 

俺の言葉に夜が不思議そうに首を傾げる。

 

そんな夜を横目に俺はもう1度遊花に向き直った。

 

「遊花。もう1つ、条件だ」

 

「………はい」

 

「No.からの攻撃だけは一切受けるな(・・・・・・)

 

「‼︎それって………」

 

「俺でもNo.の攻撃を受けるのは結構危ないんだ。俺よりも華奢な遊花が受けたら、危険なんてレベルじゃない。だからこそ、ノーダメージで(・・・・・・・)No.を攻略して見せろ。できなかった時は、犯人探しからどんな手を使ってでも抜けさせる。できるな?」

 

試すような俺の言葉に、遊花はしばらくの間きょとんとした表情をし、それから確かな自信を持った顔で笑った。

 

「勿論です‼︎耐えることなら、私は誰にも負けない自信があります‼︎どんなNo.が相手でも、ノーダメージで攻略して見せます‼︎」

 

そんな遊花の言葉に夜は怪訝な表情を浮かべたが、桜は仕方なさそうにため息を吐いた。

 

No.の攻撃を受けるのが危険なら、No.の攻撃だけでも受けなければいい。

 

完全に屁理屈だが遊花の防御特化とまで言える防御能力ならきっと成し遂げることができるだろう。

 

不安は確かにある。

 

だが、弟子が最も秀でている力を信じることができないで何が師匠か。

 

「そうと決まれば早速デッキを組み直さないと‼︎師匠、手伝って貰っても構いませんか?」

 

「ああ。俺もついでに組み直すよ。遊花に心配をかけるわけにはいかないからな」

 

そういって、遊花の側で一緒にカードを広げる。

 

………本当は俺だって遊花を巻き込みたくなんてない。

 

だけど、気づいてしまったら、もう避けることはできない。

 

それならせめて、ちゃんと守ってやれるように全力を尽くさないとな。

 

俺は心の中で誓いを新たにし、遊花と共にデッキを組んでいくのだった。

 

 




次回予告

No.の正体を知り、誓いを新たにして手かがりを探す遊騎は街中で怪しげな雰囲気を放つ男に絡まれている紅葉を発見する。
仲裁に入った遊騎は成り行きでデュエルをすることになるが、男が出現させた2体のNo.に次第に追い詰められていく。
追い詰められた遊騎は未知なる力に望みを託す。

次回 遊戯王Trumpfkarte
『混沌の証』

次回は遊騎のデュエル回です。
遊騎視点でお送りします。
遊騎が手に入れた新たな力が解き放たれる?
次回をお楽しみに。

そして今回はNo.の説明回と真紅と島さんがデュエルをする回でした。
島さんのデッキは一応スパイダーですが、他にも色々隠し要素があります。
そこら辺はまたいずれデュエルする回が訪れるハズなのでその際にお話しましょう。

それじゃあ今回はここまで。
皆さん、今回は本当に遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
研修疲れでぼろぼろだった身体に職場で風邪が流行っている状況という時点で病弱っ子な私が耐えきれるわけがありませんでした。
今欲しいものは体力です………切実に。
といっても、今回更新が遅れたのは風邪で瀕死になっていたからだけではありません。
季節はもう6月に入り、気づけばあと1カ月程でこの小説を投稿し始めて1年になります。
というわけで、1周年記念の番外編でも書いてみようかなと内容を考えてたら、通常更新の方の内容がなかなか上手く書けなかったからです。
おかげで1周年記念の内容は決まりましたけどね。
そこら辺はまた1周年が近づいてきたら話そうと思います。
そんなわけなので、もしかしたらこれからも通常更新は少し遅れるかもです。
ただでさえ執筆が遅めなのに番外編も同時進行となるとやっぱり時間が足りないので。
その分、番外編も全力を尽くしますのでお楽しみに。

そんなところで今回はここまで。
また次回。
ではでは〜
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