遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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大変お待たせ致しました。
やはり夏休めないは忙しいのです。
今回は闇のデュエル回です。
遊騎視点と第三者視点でお送りします。
それでは本編へGO‼︎




第71話 不自然な凶星

 

 

「これで終わり。ヴェルズオピオンでダイレクトアタック。暴虐のクリエイションクライシス」

 

「ぎゃああああ‼︎」

 

 

船乗り LP1250→0

 

 

オピオンが口から闇を纏った氷のブレスが闇のカードに操られていた最後の船乗りを呑み込み、デュエルが終わる。

 

「一通り片付いた?」

 

「みたいだな、サンキュー、闇」

 

辺り一面に倒れ伏せた船乗り達を見ながら、闇は心なしか自慢げに胸を張る。

 

「えへん………頑張った………だから、ご褒美に撫で撫でを所望する」

 

「ぷっ、何だそりゃ。ほら、これでいいか」

 

「むふー………よきにはからえ」

 

俺が闇の頭を軽く撫でると、闇が心から満足そうな笑みを浮かべる。

 

そんなじゃれ合っている俺達を見て、夜は呆れたようなため息を吐いた。

 

「君達、仲がいいのはいいけど、こんな敵陣のど真ん中、しかも辺りが死屍累々の状態でやることじゃないでしょ」

 

「まあ、無事だったんだからいいじゃないか。誰かさんの死亡フラグも成立しなかったし」

 

「うっ、アレはその、勢いで言ったというか………」

 

「その子が遊騎の言ってた一緒に調査してるお友達?」

 

俺の言葉に視線を泳がせる夜を見て、闇が首を傾げる。

 

そういえば、来る前に友達と調査してたって話はしたが、名前までは言ってなかったな。

 

「ああ。こいつは………」

 

「知ってる、眼竜 夜。プロリーグでも有名人」

 

「やっぱり知ってたか」

 

「ん、私もデュエルしたことあるから。すごく強かった」

 

「それをボクより有名人で、苦戦もせずに圧勝した冬城プロに言われるのは少し複雑なんですが………」

 

相変わらずの無表情ながらもどこか楽しそうに口にする闇に、夜が苦笑いを浮かべる。

 

まあどちらも同じプロリーグのトップ決闘者だからデュエルする機会があるのは当然か。

 

そして圧勝したのか、闇………まあ、夜のデッキだとヴェルズオピオンを出されたらほとんど動けなくなるし、そこを突かれたのだろう。

 

「それに、プロリーグ以外でも会ったことあるから」

 

「プロリーグ以外でも?」

 

「ん。前に遊騎に少し話した1年前のーーー」

 

「あー‼︎あー‼︎」

 

「むぐっ」

 

闇が何かを口にしようした時、夜が慌てた様子で闇の口を塞ぐ。

 

何だかよく分からないが、今闇が話そうとしたことを夜は聞かれたくないってことなのか?

 

夜に口を塞がれながらも、闇は目でどうするかと尋ねてくる。

 

そんな闇に俺は首を横に振って答えとする。

 

別に本人が聞かれたくないことを無理矢理聞き出そうとは思わない。

 

話す必要があれば向こうから話してくれるだろうし、敵が潜伏している可能性があるこの場所でそんな押し問答をする意味もないだろう。

 

「夜、闇を放してやってくれないか?」

 

「うっ………だけど………」

 

「別にお前が聞かれたくないことを無理矢理聞き出したりしねぇし、闇だってお前が嫌がるなら話さないさ。だから、な」

 

「うっ………分かった、よ」

 

そういうと夜は闇の口を塞いでいた手を退ける。

 

解放された闇は夜にぺこりと頭を下げた。

 

「ごめんなさい。言っちゃダメなことだとは思わなかったから、あなたが黙ってて欲しいなら私は話さない」

 

「い、いえ、こちらこそ急に口を塞いでしまってすみませんでした‼︎」

 

「ん、別にいい。敬語も不要。遊騎と同じように接してくれた方が、私も嬉しい」

 

「………分かったよ、闇………さん」

 

「ん、呼びにくいならそれでいい。遊騎がいつもお世話になってる。これからよろしく、夜」

 

「あ、ああ」

 

「それはそれとして、これからどうする?一応インヴェルズオリジンに記憶を漁らせてるけど、ろくな情報はなさそうだよ?」

 

一通り夜との自己紹介を終えた闇が倒れている船乗り達を指差しながら首を傾げる。

 

船乗り達をよく見ると、闇のデュエルディスクに置かれたままになっているインヴェルズオリジンから溢れ出した闇が船乗り達の身体を包んでいた。

 

おそらく前にブラックミストを使っていた男にも行っていたように記憶を読み取っているのだろう。

 

「とりあえず、こいつらがいた宿舎に行ってみるか。中にいた奴らが全員闇のカードに操られてたなら、何か重要なものがあるかも知れないし」

 

「ん、分かった。本当なら無茶したことを怒りたいところだけど、私を頼ってきたから許す。さっさと終わらせて一緒に遊花のご飯を食べに帰ろう」

 

「………ちょっと待って。遊花って、この前紹介してくれた遊騎の弟子だよね?なんで遊花ちゃんの家に遊騎と闇さんが帰るのさ?」

 

「………あー」

 

闇の言葉に思わずといった風に夜が口を開く。

 

完全にいつもの感じで闇は話したけど俺達が遊花の家に居候してるのは内緒なんだよな。

 

どう説明するべきか悩んでいると何でもないことのように闇が答える。

 

「私達、今遊花の家に居候してるから」

 

「はぁ⁉︎それって同棲なんじゃ………」

 

「ん、スキャンダル。別に広めてくれてもいいよ?」

 

「こらこら、遊花にまで迷惑がかかるからそういうことを言うんじゃない」

 

「むー残念」

 

「何が残念だ‼︎悪いな、夜。今のは聞かなかったことにしてくれ」

 

「いや、色々と無理があると思うんだけど………」

 

夜は凄く引き攣った表情で目を泳がせると、深いため息を吐いた。

 

「………はー、分かったよ。ボクのことも触れないでくれたし、これでおあいこってことにしとく」

 

「悪りぃな」

 

「………まさか遊花ちゃんに手を出したりは………いや、ないか、前の感じだと」

 

「?2人共疲れてる?」

 

「「お前(闇さん)のせいだ(です)………」」

 

「むぅ………解せぬ」

 

納得がいかない様子の闇と、疲れたようにため息を吐く俺達は締まらない雰囲気のまま夜の港湾エリアを歩いていくのだった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「お邪魔します」

 

「敵陣に声かけて入っていってどうするんだよ」

 

「残党が出てくるなら早い方がいいかなって」

 

「逆に逃げられる可能性もあるだろうが」

 

「………それは盲点だった」

 

「何でもいいけどもう少し緊張感を持ってくれるかい?」

 

訪れた船乗り達の宿舎は闇のカードに操られた船乗り達が出払ったせいか異様な静けさが漂っていた。

 

俺が見た限り人がいないだけで特に怪しいところはないが………

 

「ん………ここ、かな?」

 

「闇?」

 

闇が宿舎の奥にある暖炉の壁を蹴り飛ばすと、何かが外れる音が聞こえ、暖炉が動き出したかと思うと、暖炉があった場所から階段が現れた。

 

「これって、隠し階段⁉︎」

 

「またベタな………よく分かったな、闇」

 

「隠してるつもりなのかも知れないけど、結構強力な闇の力が残ってたから………」

 

「………本当に、頼りになるよ」

 

得意げな笑みを浮かべる闇に苦笑を浮かべながらも、闇が見つけた隠し階段を降っていく。

 

隠し階段を降った先にあったのは何もない小さな部屋だった。

 

部屋の中はすでにもぬけの殻になっていて、大きなものを引きずったような痕跡はあるが、既に手がかりにはなりそうになかった。

 

「遅かったか………」

 

「君がその鱗之助とかいう船乗りを見つけたのは今朝だったんだろ?今は既に夜だ。半日分時間があれば、操られていた船乗り達を利用して使ってたものを全部運び出すぐらいはできるんじゃないかな?」

 

「でも、闇のインヴェルズオリジンでその記憶を読み取ることはできなかったんだろ?」

 

「何もここの船乗りを使う必要はない。ここの船乗り全てを宿舎から出払わせてその間に他の操られた人間で運ぶことはできる」

 

「間接的にして足を付かなくしたってわけか………」

 

「意外と厄介………っ、誰か来る」

 

「何?」

 

隠し部屋でここで行われていたことを考察していると、闇が何かの気配を感じ、俺達は階段の方を向く。

 

すると、階段を降って隠し部屋に姿を現したのはーーー

 

『まさか、この部屋が見つけられるとはね。君達か、闇のカードを追っているのは』

 

「っ‼︎お前は、あの時の‼︎」

 

黒の装甲のようなスーツに黒いヘルメットを被った男。

 

忘れるハズもないコートオブアームズを狙い、ロンゴミアントを使って俺を病院送りにしたあのヘンテコヘルメット野郎だった。

 

「闇、夜‼︎コイツが俺を前に襲った闇のカードを生み出してる奴だ‼︎」

 

「っ、なんだって⁉︎」

 

「この不審者が?」

 

『クックック、あの時は世話になったね、結束 遊騎。そのうえ、世界ランキング4位、『氷の女王』冬城 闇。現世界ランキング16位、『真祖』眼竜 夜までいるとは、私も有名人になったものだ。やはり、才能があるものは周りの目を惹きつける』

 

「やっぱり俺達のことを知ってるのか」

 

「曲がりなりにも色んな意味で有名人だしね、ボク達は」

 

「何コイツ………すごく気持ち悪い」

 

俺達が警戒するような視線を向けると、ヘンテコヘルメット野郎はデュエルディスクを起動させ、デュエルディスクを操作する。

 

すると、前にデュエルした時と同じように急に辺りの風景が変化し、気づけば隠し部屋はなくなり、辺りは闇に包まれ、草生い茂る星降る霊園になっていた。

 

「っ、またこのヘンテコ空間か‼︎」

 

『ヘンテコ空間とは心外だな。ここは私の才能により生み出された立体映像に質量を与えた現実世界とは異なる仮想領域。閉幕世界( クローズワールド)死者と生者の境界(ミッドガルド )

 

「閉幕世界………っ‼︎」

 

「遊騎⁉︎」

 

ヘンテコヘルメット野郎の言葉を聞いた瞬間、俺の頭にノイズが走り、何かが浮かんでくる。

 

 

ーーーーーーー

 

『そしてここが*の閉幕世界、******。綺麗な場所でしょ?それに便利なんだよ、ここならデュエルが終わるまで誰も出れないし入れないから、誰の邪魔も入らないもん』

 

 

ーーーーーーー

 

 

「っ、今のは前の………この閉幕世界からはデュエルが終わるまで誰も出れないし入れない、だったよな?」

 

『ほぅ………正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)と戦った時のことを覚えているのか』

 

「やっぱりあの時デュエルしたのはお前のお仲間なんだな」

 

『クックック………知っているならば話は早い。私とデュエルしなければ君達はここから出ることはできない』

 

そういってヘンテコヘルメット野郎がデュエルディスクをこちらに向ける。

 

咄嗟にデュエルディスクを起動しようすると、それを闇が手で制した。

 

「私がやる………遊騎を傷つけた落とし前をつけさせる」

 

「闇………」

 

「それに、遊騎も夜もデュエルでのダメージが抜けてないでしょ?なら、1番ダメージがない私が適任」

 

「………悪い、頼んだ」

 

「ん、素直でよろしい。夜もそれでいい?」

 

「この場で1番強いのは間違いなく闇さんだからね………任せます」

 

「ん、任された………コイツは私がブチころがす………」

 

そういうと闇がデュエルディスクを起動し、ヘンテコヘルメット野郎に構える。

 

『ほう、君がでるか。世界ランキング4位、『氷の女王』冬城 闇』

 

「私の大切な人を傷つけた落とし前、つけてもらう」

 

『できるかな、君に?』

 

「最初に言っておく………私は、強い」

 

『決闘‼︎』

 

 

闇 LP8000

 

黒い男 LP8000

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「先攻は私。私はレスキューラビットを召喚」

 

 

〈レスキューラビット〉☆4 獣族 地属性

ATK300

 

 

闇が呼び出したのはヘルメットを被った可愛いらしいうさぎのモンスター。

 

「レスキューラビットの効果、フィールドのこのカードを除外して、デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター2体を特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される」

 

現れたレスキューラビットが空高く跳び上がってそのまま姿を消す。

 

代わりに空中から落ちてきたのは2体の禍々しい闇を纏った岩石の戦士。

 

「私はヴェルズヘリオロープを2体特殊召喚」

 

 

〈ヴェルズヘリオロープ〉☆4 岩石族 闇属性

ATK1950

 

 

『それが貴様の闇のカードか』

 

「私は2体のレベル4ヴェルズモンスター、ヴェルズヘリオロープ2体でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」

 

2体のヘリオロープが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると空から青い翼を持つ漆黒の龍が舞い降りる。

 

「希望を消し去る暴龍、ランク4、ヴェルズオピオン」

 

 

〈ヴェルズオピオン〉★4 ドラゴン族 闇属性

ATK2550

 

 

「ヴェルズオピオンの永続効果、イビルソートカース。オーバーレイユニットを持っているこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない」

 

『ほぅ………厄介な効果を持っているな』

 

「さらにヴェルズオピオンの効果発動、イビルソートインベーション。オーバーレイユニットを1つ使い、1ターンに1度、デッキから『侵略の』魔法・罠カード1枚を手札に加える。私はデッキから速攻魔法、侵略の汎発感染を手札に加える。私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

 

闇 LP8000 手札4

 

ーー▲ーー ー

ーーーーー

○ ー

ーーーーー

ーーーーー ー

 

黒い男 LP8000 手札5

 

 

『私のターン、ドロー。速攻魔法、手札断殺。お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、その後、それぞれデッキから2枚ドローする』

 

「手札交換………」

 

『私は星因士( サテラナイト)アルタイルを召喚』

 

 

〈星因士アルタイル〉☆4 戦士族 光属性

ATK1700

 

 

フィールドに現れたのはわし座の名を持つ翼を持つ星の戦士。

 

『星因士アルタイルの効果発動‼︎このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、星因士 アルタイル以外の自分の墓地のテラナイトモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時までテラナイトモンスター以外の自分フィールドのモンスターは攻撃できない。私は星因士( サテラナイト)ベガを特殊召喚』

 

 

〈星因士ベガ〉☆4 戦士族 光属性

DEF1600

 

 

アルタイルの身体が輝き、その輝きに導かれて琴のような形をした星の戦士が姿を現わす。

 

『さらに星因士ベガの効果発動‼︎このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、手札から星因士ベガ以外のテラナイトモンスター1体を特殊召喚する。手札から星因士( サテラナイト)ウヌクを特殊召喚』

 

 

〈星因士ウヌク〉☆4 戦士族 光属性

ATK1800

 

 

アルタイルに呼応するようにベガの身体も輝きはじめ、その輝きに導かれてさらに蛇使いのような星の戦士が姿を現わす。

 

『星因士ウヌクの効果発動‼︎このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから星因士ウヌク以外のテラナイトカード1枚を墓地へ送る。私はデッキから星因士( サテラナイト)デネブを墓地に送る』

 

そして男はモンスター達に手をかざす。

 

『私は3体のレベル4モンスター、星因士アルタイル、星因士ウヌク、星因士ベガでオーバーレイ。3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚‼︎』

 

アルタイル、ベガ、ウヌクが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると、空から翼が生え、剣と光の輪を持つ光輝く戦士が舞い降りる。

 

『闇夜に輝く破滅の戦士‼︎星輝士(ステラナイト )デルタテロス‼︎』

 

 

〈星輝士デルタテロス〉★4 戦士族 光属性

ATK2500

 

 

『星輝士デルタテロスの効果発動‼︎オーバーレイユニットを1つ使い、1ターンに1度フィールドのカード1枚を対象とし破壊する‼私が選択するのはヴェルズオピオン。バーンコメット‼︎』

 

デルタテロスが持つ光の輪から隕石が現れ、オピオンに降り注ぐ。

 

「チェーンして攻撃力2500以上の闇属性モンスター、ヴェルズオピオンをリリースし、罠カードを宣言してリバースカードオープン。罠発動、闇のデッキ破壊ウイルス」

 

『っ、侵略の汎発感染じゃないだと?伏せたと思わせて別のカードを伏せていたのか………』

 

「自分フィールドの攻撃力2500以上の闇属性モンスター1体をリリースし、魔法・罠、どちらかのカードの種類を宣言し、相手フィールドの魔法・罠カード、相手の手札、相手ターンで数え3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、その内の宣言した種類のカードを全て破壊する。私が宣言したのは罠カード。相手フィールドの罠カード、相手の手札、相手ターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、その内の罠カードを全て破壊する」

 

オピオンの姿が消え、男の手札とデッキが全て闇に覆われる。

 

そして手札を覆っていた闇が消えると、男の手札は1枚になっていた。

 

「破壊できたのは神星なる因子と幻影霧剣( ファントムフォッグブレード)………残ったのは星因士( サテラナイト)リゲル………十分なダメージは与えれた」

 

『………バトル‼︎星輝士デルタテロスでダイレクトアタック‼︎デルタブレイク‼︎』

 

「………」

 

 

闇 LP8000→5500

 

 

高速で移動するデルタテロスが闇の身体を何度も斬り付ける。

 

しかし、身体を斬り付けられたハズの闇は表情1つ変えずにジッと黒い装甲を纏った男を見つめていた。

 

『闇のゲームによる痛みはあるハズだが、表情1つ変えないか』

 

「この程度の攻撃で怯む程私は弱くない」

 

『口が減らない女だ。メインフェイズ2、私は星輝士デルタテロス1体でオーバーレイ‼︎1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築‼︎ランクアップエクシーズチェンジ‼︎』

 

デルタテロスが再び空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると空から舞い降りたのは星のような輝きを放つ神龍。

 

『闇夜を払う幽玄なる神龍よ‼︎邪悪なる者に裁きを与えよ‼︎ランク5、星輝士(ステラナイト )セイクリッドダイヤ‼︎』

 

 

〈星輝士セイクリッドダイヤ〉★5 幻竜族 光属性

ATK2700

 

 

「っ⁉︎美傘が使ってるダースメタトロンと同じ幻竜族………しかも、遊騎の持っているプレアデスと同じセイクリッドモンスター………」

 

遊騎が使用しているプレアデスと同じセイクリッドモンスターが、美傘が所持しているダースメタトロンと同じ幻竜族として現れたことに、流石に闇も驚きを露わにする。

 

そんな闇の様子を見て、男は愉快そうな笑い声をあげる。

 

『クックック、流石に驚いたようだな。どうだ、この神々しい姿は?あらゆるカードを生み出すことができる神である私に相応しいカードだとは思わないか?』

 

「神々しい姿、か………皮肉だね………欲望塗れのあなたには過ぎたカードだよ」

 

『クックック、闇に染まりきっている君に言われても負け惜しみにしか聞こえないな。星輝士セイクリッドダイヤは自分のターンのメインフェイズ2に、同名以外の自分フィールドのテラナイトエクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚する事ができる。そして星輝士セイクリッドダイヤの永続効果、エタニティトゥインクル‼︎オーバーレイユニットを持ったこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにデッキからカードを墓地へ送る事はできず、墓地から手札に戻るカードは手札に戻らず除外される』

 

「っ………面倒な」

 

『私はこれでターンエンドだ。さあ、君の力を見せてみたまえ』

 

「ウイルスの効果、1ターン目終了」

 

 

闇 LP5500 手札4

 

ーーーーー ー

ーーーーー

ー ○

ーーーーー

ーーーーー ー

 

黒い男 LP8000 手札1

 

 

「私のターン、ドロー。私は召喚僧サモンプリーストを召喚」

 

 

〈召喚僧サモンプリースト〉☆4 魔法使い族 闇属性

ATK800

 

 

闇の前に現れたのは黒いローブを纏った魔法使い。

 

しかし、その魔法使いは直ぐにその場に座り込む。

 

「召喚僧サモンプリーストは召喚時、守備表示になる」

 

 

召喚僧サモンプリースト

ATK800→DEF1600

 

 

「私は影霊衣(ネクロス )の反魂術を捨てて召喚僧サモンプリーストの効果、1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて、デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない」

 

『無駄だ。闇の中だろうと星の光が絶えることはない。星輝士セイクリッドダイヤの効果発動‼︎スターリーヘブン‼︎相手の闇属性モンスターの効果が発動した時、このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、その発動を無効にし破壊する‼︎』

 

「っ、闇属性メタの効果………」

 

サモンプリーストが呪文を唱えようとすると、セイクリッドダイヤの身体が輝きはじめ、咆哮をあげると、サモンプリーストに向かって流星が降り注ぎ、跡形もなく消しとばした。

 

『さあ、君の召喚権とモンスターは消えた。君に星輝士セイクリッドダイヤを突破できるかな?』

 

「小物らしいセコさ………ならば逆に問う………その程度で私が止まるとでも思うの?」

 

『ほぅ………』

 

「墓地に存在するユニコールの影霊衣(ネクロス )と影霊衣の反魂術を除外して影霊衣の反魂術の効果発動、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地からこのカードと影霊衣モンスター1体を除外してデッキから影霊衣魔法カード1枚を手札に加える。私はデッキから影霊衣(ネクロス )の万華鏡を手札に加える」

 

『‼︎手札断殺の時に墓地に送っていたか………』

 

「そして、儀式魔法、影霊衣の万華鏡。儀式召喚するモンスターと同じレベルになるように、自分の手札・フィールドのモンスター1体をリリース、またはEXデッキのモンスター1体を墓地へ送り、手札から影霊衣儀式モンスターを任意の数だけ儀式召喚する………私はEXデッキからレベル10モンスター、波動竜騎士ドラゴエクィテスを墓地に送る」

 

フィールドに輝くダイヤモンドのような物が現れ、それにドラゴエクィテスの姿が浮かび上がる。

 

しばらくするとそのダイヤモンドが輝きはじめ、光が収まると、ダイヤモンドがあった場所に魔杖を持った氷の暴龍の鎧を纏った魔法使いと緑の鳥のような鎧を纏った小柄な戦士が現われる。

 

「その身に宿すは希望を粉砕する暴龍。その魔法は希望すら打ち砕く。儀式召喚。可能性を打ち砕く魔導師、グングニールの影霊衣(ネクロス )

 

 

〈グングニールの影霊衣〉☆7 魔法使い族 水属性

ATK2500

 

 

「その身に宿すは祈りの歌。その旋律は争いをも凍てつかせる吹雪となる。儀式召喚。未来に舞い上がる戦士、クラウソラスの影霊衣」

 

 

〈クラウソラスの影霊衣〉☆3 戦士族 水属性

DEF2300

 

 

「クラウソラスの影霊衣の効果発動、プレアーシンフォニー。EXデッキから特殊召喚された、フィールドのモンスター1体を対象としてターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は0になり、効果は無効化する。対象にするのは星輝士セイクリッドダイヤ」

 

クラウソラスの影霊衣が歌を歌いはじめると、吹雪が吹き荒れ、セイクリッドダイヤを氷の中に閉じ込める。

 

 

星輝士セイクリッドダイヤ

ATK2700→0

 

 

「バトル。グングニールの影霊衣で星輝士セイクリッドダイヤを攻撃。暴虐のアイシクルクライシス」

 

『チッ………迎え撃て、星輝士セイクリッドダイヤ‼︎イーサルフォール‼︎』

 

セイクリッドダイヤが再び咆哮をあげ、グングニールの影霊衣に向かって流星と共にブレスを放つ。

 

放たれるセイクリッドダイヤの攻撃にグングニールの影霊衣が魔杖を振るうと、流星とブレスが凍りついていき、ブレスを伝ってセイクリッドダイヤをも凍りつかせる。

 

凍り付いたセイクリッドダイヤに向けてグングニールの影霊衣が魔杖を振り下ろすと、凍り付いた流星が巨大な氷柱に変化し、セイクリッドダイヤに向けて一斉に放たれ、その身体は串刺しにして粉砕した。

 

 

黒い男 LP8000→5500

 

 

『くっ………』

 

「私はこのままターンエンド」

 

 

闇 LP5500 手札1

 

ーーーーー ー

ーー○□ー

ー ー

ーーーーー

ーーーーー ー

 

黒い男 LP5500 手札1

 

 

『クックック、なかなかやるじゃないか。流石は世界ランキング4位、『氷の女王』と言ったところか』

 

そういってヘルメット越しに愉快そうな声で笑う男を、闇は冷たい無表情で睨む。

 

「………こちらは退屈もいいところ。全然心が踊らない………あなた、戦う気はあるの(・・・・・・・)?」

 

『………』

 

闇の言葉に男は沈黙で応える。

 

沈黙を続ける男に、闇は冷たい無表情のまま言葉を紡ぐ。

 

「………まあいい。別にあなたが戦う気があるかどうかだなんて関係ない。あなたが生み出した闇のカードのせいで、私の大切な人が傷つけられた。やる気がないなら、さっさとブチころがされろ」

 

『物騒なお嬢さんだ。だが、まだ私の実験は終わっていないのでね。もうしばらく付き合って貰おう‼︎私のターン、ドロー‼︎』

 

「闇のデッキ破壊ウイルスの効果、ドローしたカードを確認させて貰う」

 

『クックック、いいだろう………存分に確認するがいい、私の才能を‼︎私が引いたのはRUM( ランクアップマジック)七皇の剣( ザ・セブンス・ワン)‼︎』

 

「RUM………七皇の剣?」

 

「RUMー七皇の剣、だと?ぐっ‼︎」

 

「遊騎⁉︎どうしたんだい⁉︎」

 

男が発動した七皇の剣を見て、遊騎は頭を抑える。

 

心配そうに夜が見つめる中、遊騎の頭の中に記憶がノイズ混じりで蘇ってくる。

 

「あのカード………俺は知っている。気を付けろ、闇‼︎そいつは直接No.を呼び出してランクアップさせれるんだ‼︎」

 

「‼︎………分かった」

 

『っ、確か奴は正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)とデュエルしていたな………まあいい。知ったところで防ぐことなどできやしない‼︎このカード名の効果はデュエル中に1度しか適用できず、自分のドローフェイズに通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動できる‼︎私はRUMー七皇の剣を発動‼︎CNo.以外のNo.101〜No.107のいずれかをカード名に含むモンスター1体を、自分のEXデッキ・墓地から選んで特殊召喚し、そのモンスターと同じNo.の数字を持つCNo.モンスター1体を、そのモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する‼︎RUMー七皇の剣の効果でEXデッキより現れろ、No.104‼︎偽善の仮面を被り、弱者に救いの光を与えよ‼︎不吉なる仮面舞踏会の支配人、仮面魔踏士(マスカレードマジシャン)シャイニング‼︎』

 

 

〈No.104仮面魔踏士シャイニング〉★4 魔法使い族 光属性

ATK2700

 

 

現れたのは清廉そうな仮面をつけ、白いスーツに身を包んだ青いつばさを持つ魔術師。

 

「そしてNo.104仮面魔踏士シャイニング1体でオーバーレイ‼︎1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築‼︎カオスエクシーズチェンジ‼︎」

 

シャイニングが空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると空から舞い降りたのは清廉な仮面が黒く禍々しいものに代わり、全身が血で染まったかのような真紅のスーツを身に付けた邪悪なる魔術師。

 

「現れろ、CNo.104‼︎偽善の仮面を外し、愚者を冥府の仮面舞踏会に導け‼︎絶望を告げる恐怖の死神、仮面魔踏士(マスカレードマジシャン)アンブラル‼︎」

 

 

〈CNo.104仮面魔踏士アンブラル〉★5 魔法使い族 闇属性

ATK3000

 

 

「これが遊騎が話してたCNo.………」

 

『クックック、正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)でも実験はしたが、これは想像以上の力だ。やはり私の才能に不可能はない‼』

 

「自分の才能を過信して………無駄に高いプライド………」

 

『才能がないものが何を言おうと負け惜しみにしか聞こえないな。この力、存分に味わうがいい。私は星因士リゲルを召喚‼︎』

 

 

〈星因士リゲル〉☆4 戦士族 光属性

ATK1900

 

 

フィールドに現れたのは宝石のように輝く星の戦士。

 

『星因士リゲルの効果発動。召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、フィールドのテラナイトモンスター1体を対象としてそのモンスターは、攻撃力が500ポイントアップする』

 

「む………」

 

『ただしこの効果を受けたモンスターはエンドフェイズに墓地へ送られる。私は星因士リゲルの攻撃力を500ポイントアップする』

 

 

星因士リゲル

ATK1900→2400

 

 

『バトル‼︎星因士リゲルでクラウソラスの影霊衣を攻撃‼︎』

 

「ただでやられるつもりはない。クラウソラスの影霊衣の効果発動、プレアーシンフォニー。対象にするのはCNo.104仮面魔踏士アンブラル」

 

クラウソラスの影霊衣の歌が響き、吹雪がアンブラルに向けて吹き荒れる。

 

しかし、自身に吹き付ける吹雪を見て、アンブラルは不気味な笑い声をあげた。

 

『クックック、使うと思っていたぞ、その効果を‼︎その効果にチェーンしてCNo.104仮面魔踏士アンブラルの効果発動‼︎カースドリーパー‼︎』

 

「‼︎」

 

『このカードがNo.104仮面魔踏士シャイニングをカオスオーバーレイユニットとしている場合、以下の効果を得る。1ターンに1度、相手フィールド上で効果モンスターの効果が発動した時、このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、その発動を無効にする‼︎さらにその後、相手の手札をランダムに1枚墓地へ送り、相手ライフを半分にする‼︎』

 

「っ………相手に多数の影響を与える無効効果………」

 

『私はクラウソラスの影霊衣の効果を無効にし、君の手札とライフを減らさせてもらおう‼︎』

 

アンブラルが杖を振るうと、吹き荒れていた吹雪が黒いオーラを纏いながら跳ね返され、闇を襲う。

 

跳ね返された吹雪により、闇の手札は吹き飛ばされ、ライフポイントも削り取った。

 

 

闇 LP5500→2750

 

 

「っ………」

 

『そして攻撃は続行される‼︎クラウソラスの影霊衣を砕け、星因士リゲル‼︎ダイヤモンドスター‼︎』

 

リゲルが生み出したダイヤモンドの隕石がクラウソラスの影霊衣を押し潰し、消滅させる。

 

『続けてCNo.104仮面魔踏士アンブラルでグングニールの影霊衣を攻撃‼︎ブラッディマスカレード‼︎』

 

「………迎え撃って、グングニールの影霊衣。暴虐のアイシクルクライシス」

 

グングニールの影霊衣が魔杖を振るい、巨大な氷柱を放つが、放たれた氷柱をアンブラルは踊るようなステップで躱していく。

 

氷柱を躱しきったアンブラルが杖を振るうと、グングニールの影霊衣の視界を奪うように闇が辺りを包み込む。

 

視界を奪う闇に紛れ、アンブラルはグングニールの影霊衣の背後に回り込むと頭部を杖で執拗に殴りつけ、撲殺した。

 

 

闇 LP2750→2250

 

 

「っ………ごめんね、グングニールの影霊衣」

 

『これで君のフィールドと手札のカードは全て消え、残りライフもアンブラルで削りきれる程になった。どうした、『氷の女王』?世界ランキング4位の力はその程度か?』

 

「………」

 

『だんまりか。あまり失望させないでほしいものだな。エンドフェイズ、星因士リゲルは自身の効果により墓地へ送られる。私はこれでターンエンドだ』

 

 

闇 LP2250 手札0

 

ーーーーー ー

ーーーーー

ー ○

ーーーーー

ーーーーー ー

 

黒い男 LP5500 手札0

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「CNo.104仮面魔踏士アンブラルのオーバーレイユニットは無くなったとはいえ、これはかなり厳しい状況だね………」

 

闇とヘンテコヘルメット野郎のデュエルを見て、夜が難しい表情を浮かべる。

 

確かに闇の手札は0。

 

ライフポイントも2250ではアンブラルのダイレクトアタックを受ければ削りきられてしまう。

 

闇の墓地には他の影霊衣儀式魔法をサーチすることができる影霊衣の万華鏡はあるが、結局サーチできるのは儀式魔法。

 

儀式モンスターがいなければ使用できないし、現状儀式モンスターを引いてもリリースできるモンスターがいないから使用することなどできない。

 

モンスターを引けなければそこで終わり。

 

例え引けたとしても、もしヘンテコヘルメット野郎がモンスターを引けばそれだけで危ない状況。

 

不安に思うのも無理はない。

 

だけど………

 

「大丈夫だ。あの程度でどうにかなる闇じゃない。闇は勝つよ」

 

「勝つって、闇さんを信じたい気持ちは分かるけど、この状況は………」

 

「信じたい、じゃない………信じてるんだ。闇の力を、思いを、その全てを。だから、闇は絶対に負けない」

 

「………君は………」

 

夜が驚いた表情で俺を見る。

 

子供の頃からずっとデュエルしてきたからこそ、きっと俺は世界で1番闇の実力を、その小さな身体に秘めた覚悟の重みを知っている。

 

だからこそ………

 

「………闇‼︎」

 

「‼︎………ん‼︎」

 

俺が名前を呼ぶと、闇はこちらを見て力強く頷く。

 

俺と闇の間に下手な言葉なんていらない。

 

そんなものは必要ないぐらい、確かな絆が俺達にはある。

 

だから、見せつけてやれ。

 

思いの力で世界ランキング4位にまで至ったお前の力を‼︎

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「私のターン」

 

『クックック、名前を呼ばれただけで威勢を取り戻すか。だが、君が絶対絶命な状況であることに変わりはーーー』

 

「さっきから耳障り。いい加減、その浅ましい口を閉じろ」

 

『ーーー何だと?』

 

闇の言葉に男は不愉快そうな声を出す。

 

そんな男を嘲笑うかのように、闇は淡々と言葉を紡ぐ。

 

「この程度で絶対絶命なんて、笑わせる。思いのこもってないデュエルにやられる程、私は甘くない」

 

『っ、強がりを………‼︎』

 

「強がりかどうかはこれからたっぷりと味わうといい。あなたはただ、決められた敗北への道を辿るだけ………最初に言ったハズ………」

 

そういって闇は自分のデッキの上のカードを掴むと、勢いよく引き抜いた。

 

「私は………強い‼︎………ドロー‼︎墓地に存在するグングニールの影霊衣と影霊衣の万華鏡を除外して影霊衣の万華鏡の効果発動、このカードも自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地からこのカードと影霊衣モンスター1体を除外してデッキから影霊衣魔法カード1枚を手札に加える。私はデッキから影霊衣(ネクロス )の降魔鏡を手札に加える」

 

『チッ、儀式魔法を手札に加えるか………』

 

「さらに魔法カード、貪欲な壺。墓地に存在するヴェルズオピオン、波動竜騎士ドラゴエクィテスをEXデッキに、クラウソラスの影霊衣、ヴェルズヘリオロープ2体をデッキに戻してシャッフルし、カードを2枚ドローする。まだ終わりじゃない、デッキの上から10枚を裏側で除外して、魔法カード、強欲で貪欲な壺』

 

『ここにきて連続ドローだと⁉︎』

 

「自分はデッキから2枚ドローする………っ‼あなたは………︎」

 

強欲で貪欲な壺でドローしたカードを見て、闇は一瞬目を見開く。

 

しかし、すぐにその表情を柔らかなものに変えると嬉しそうに微笑んだ。

 

「そっか、久しぶりに暴れたいんだね………いいよ。力を貸してもらうね。魔法カード、手札抹殺‼︎お互いに手札を全て捨て、捨てた枚数と同じ枚数ドローする‼あなたの手札はない。だから、︎私だけ3枚のカードを捨てて同じ枚数ドローする‼︎」

 

『チッ‼︎まだデッキからカードを引くと言うのか⁉︎』

 

「さあ、行こうか………私の眷属。私は墓地に存在する覇王眷竜ダークヴルムの効果発動‼︎」

 

『っ⁉︎なんだ、その聞いたこともないカードは⁉︎』

 

「このカードが墓地に存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードを特殊召喚する‼︎雷よ、暗雲を裂け‼︎おいで、覇王眷竜ダークヴルム‼︎」

 

闇がその名を呼ぶと、星空が暗雲で黒く塗りつぶされ、雷鳴が鳴り響く。

 

そして一際大きな雷鳴が轟くと暗雲の中から、鋭い刃の身体を持つ緑龍が闇を守るように降り立った。

 

 

〈覇王眷竜ダークヴルム〉☆4 ドラゴン族 闇属性

ATK1800

 

 

『覇王眷竜、だと⁉︎』

 

「覇王眷竜ダークヴルムの効果発動‼︎インフィニットドミネーション‼︎このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから覇王門ペンデュラムモンスター1体を手札に加える‼︎私はデッキから覇王門無限(インフィニティ )を手札に加える‼︎私はスケール0の覇王門零とスケール13の覇王門無限でペンデュラムスケールをセッティング‼︎」

 

闇がペンデュラムスケールをセットすると、闇を挟むように暗黒の柱が立ち上り、その闇の中から2つの門が現れ、その門に0と13の数字が刻まれる。

 

現れた覇王門を見て、男は怒り狂ったかのような声をあげる。

 

『覇王門零、無限、だと⁉︎覇王眷竜に続き、また私が知らないペンデュラムモンスターを呼び出すというのか⁉︎冬城 闇‼︎貴様は一体何者だ‼︎何故私すら知らないモンスターばかりを所持している‼︎』

 

怒り狂ったかのような声を上げる男に、闇は素っ気なく告げる。

 

「知らない」

 

『っ、ふざけたことを………‼︎』

 

「知らないものは知らない。覇王眷竜も、覇王門も、私が私になった時から(・・・・・・・・・・ )気付いたら持ってた(・・・・・・・・・ )。だから、知らないものは知らない。記憶があった頃の私なら何か知ってるかも知れないけど、今の私にはどうでもいい」

 

『何だと?冬城 闇、貴様はーーー』

 

闇の言葉に男が疑問の声をあげるが、そんな声を断ち切るかのように闇は言葉を紡ぐ。

 

「今の私にとって大切なのは大切な人達の幸せを守ること。私の真実はそれだけでいい」

 

『っ………』

 

「だから、さっさと終わらせる。墓地に存在するシャッフルリボーンの効果発動‼︎自分フィールドのカード1枚を対象としそのカードを持ち主のデッキに戻してシャッフルし、その後自分はデッキから1枚ドローする‼︎ただしこのターンのエンドフェイズに、自分の手札を1枚除外する‼︎私はフィールドの覇王眷竜ダークヴルムをデッキに戻し、カードを1枚ドローする‼︎これにより私は1から12までのモンスターを同時に召喚可能‼︎私の魂に宿る覇王よ‼︎善悪を超越し、運命を捻じ伏せろ‼︎ペンデュラム召喚‼︎おいで、私の眷属達‼︎」

 

闇がそういうと暗黒の門が開き、そこからフィールドに向かって闇に包まれた3つの波動が放たれる。

 

「レベル4、ヴェルズケルキオン‼︎」

 

 

〈ヴェルズケルキオン〉☆4 魔法使い族 闇属性

ATK1600

 

 

最初に現れたのは両手に杖を持った魔術師のようなモンスター。

 

「レベル4、ヴェルズカストル‼︎」

 

 

〈ヴェルズカストル〉☆4 戦士族 闇属性

ATK1750

 

 

ケルキオンに続くように闇を纏った白い鎧をつけた戦士が現れる。

 

「レベル4、ヴェルズサンダーバード」

 

 

〈ヴェルズサンダーバード〉☆4 雷族 闇属性

ATK1650

 

 

最後にフィールドに現れたのは漆黒の身体を持つ鳥のようなモンスター。

 

『クッ、ペンデュラム召喚………』

 

「私はヴェルズケルキオンの効果、自分の墓地のヴェルズモンスター1体を除外し、自分の墓地のヴェルズモンスター1体を対象としてそのモンスターを手札に加える。私は墓地のヴェルズカストルを除外して、ヴェルズオウィスプを手札に加える」

 

『っ‼︎手札抹殺の時に………』

 

「さらにヴェルズケルキオンには墓地からモンスターを回収する効果を発動したターンのメインフェイズにヴェルズモンスターを1体召喚できる。私はヴェルズオウィスプを召喚」

 

 

〈ヴェルズオウィスプ〉☆4 炎族 闇属性

ATK450

 

 

フィールドに青白い炎の姿をしたモンスターが現れる。

 

そして闇はすぐさま正面に手をかざす。

 

「私は2体のレベル4ヴェルズモンスター、ヴェルズサンダーバードとヴェルズオウィスプでオーバーレイ‼︎2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚‼︎」

 

サンダーバードとウィスプが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると空から舞い降りるのは青い翼を黒い闇に侵食されている漆黒の竜。

 

「希望を奪い去る邪竜、ランク4、ヴェルズバハムート‼︎」

 

 

〈ヴェルズバハムート〉★4 ドラゴン族 闇属性

ATK2350

 

 

「ヴェルズバハムートの効果発動、イビルソートテンプテーション‼︎1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、手札からヴェルズと名のついたモンスター1体を捨てることで相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体のコントロールを、永続的に得る‼︎」

 

『コントロール奪取だと⁉︎』

 

「私は手札からヴェルズコッペリアルを捨ててCNo.104仮面魔踏士アンブラルのコントロールを得る‼︎」

 

バハムートから黒い波動が出てアンブラルの身体を蝕んでいく。

 

アンブラルは抵抗していたが、次第に抵抗が弱まり闇のフィールドに移動した。

 

『CNo.104仮面魔踏士アンブラルが‼︎私のCNo.を返せ‼︎』

 

「いいよ、すぐに返してあげる………攻撃つきでね。バトル‼︎CNo.104仮面魔踏士アンブラルでダイレクトアタック‼︎ブラッディマスカレード‼︎」

 

『があぁぁぁ‼︎』

 

 

黒い男 LP5500→2500

 

 

アンブラルの殴打を受け、男の身体が勢いよく吹き飛ばされる。

 

「追撃。ヴェルズカストルでダイレクトアタック。イビルスラッシュ」

 

「ぐうっ‼︎」

 

 

黒い男 LP2500→750

 

吹き飛ばされ、地面を転がる男に向けてバハムートが羽根を広げる。

 

「これで終わり、ヴェルズバハムートでダイレクトアタック‼︎剥奪のカンシャスニスディサピアランス‼︎」

 

バハムートが男に向かって羽根を羽ばたかせ闇の吹雪を放つ。

 

迫り来る闇の吹雪に、男は黒い装甲から白紙のカードを取り出すと、そのカードを闇の吹雪に向けて掲げた。

 

『今こそ、ヴェルズの呪いを手に入れる時‼︎』

 

「っ、ヴェルズバハムート‼︎」

 

闇の制止するよりも早く、白紙のカードは怪しく輝くとバハムートが放った闇の吹雪は白紙のカードに吸収されていき、吹雪が収まると白紙のカードを闇が塗りつぶしていた。

 

 

黒い男 LP750→0

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

『クックック、ついに手に入れたぞ、ヴェルズの闇の力を‼︎』

 

「お前、今何しやがった⁉︎」

 

デュエルが終わり、立体映像が消え、辺りの風景が隠し部屋に戻る中不気味な笑い声をあげるヘンテコヘルメット野郎に問いかける。

 

そんなヘンテコヘルメット野郎が掲げる漆黒に染まったカードを見て、闇が悔しそうに表情を歪ませる。

 

「やられた………姿を現したのも最初からこれが狙いだったんだね」

 

「闇?どういうことだ?」

 

「ヴェルズバハムートの攻撃に込められたヴェルズの呪いの力を吸収された………今あの男が持ってるカードには、吸収されたヴェルズの呪いの力が宿ってる」

 

「なっ⁉︎」

 

『守るべきものがいれば全力を出さざるおえない。君の大切な人間を守りたいという思いは美しいが、だからこそ利用しやすいというわけさ。それに加え、もう1つの実験も成功した‼︎やはり私の才能に不可能はない‼︎』

 

「もう1つの実験、だと?」

 

不気味に笑うヘンテコヘルメット野郎の言葉に俺は眉をひそめる。

 

こいつ、まだ他にも何かを企んでたのか?

 

「遊騎………変。アイツを倒したのに、さっきのCNo.がこちらに移ってこない」

 

「っ⁉︎何だって⁉︎」

 

『私が使用したNo.104を含めたオーバーハンドレッドナンバーズは特別性でね。専用のランクアップマジックであるRUMー七皇の剣を触媒としてリンクさせ、固定させることで他者に移動するという性質を克服させたのさ‼︎』

 

「他者に移動することがないNo.だって⁉︎そんなものが出回ったら………」

 

『クックック、実に有意義な時間だった。今日のところは君達に勝利を譲るとしよう。私達の闇のゲームはまだ始まったばかりなのだから‼︎』

 

そういって、ヘンテコヘルメット野郎がデュエルディスクについてある何かのスイッチを押すと、まるで空気に溶けるかのようにその姿が消えていく。

 

「くそ、待ちやがれ、このヘンテコヘルメット野郎‼︎」

 

『………いい加減、その呼び方をされるのも不愉快だな。私のことは"ヘイムダル"と呼んでくれたまえ。戦いを告げる者としてはちょうどいいだろう?』

 

「"ヘイムダル"だと?ふざけやがって‼︎」

 

『勇敢なる決闘者諸君‼︎闇のカードは、既にケルン中にばら撒かれている。つまり、いつ誰が闇のカードの呪いに呑まれてもおかしくない‼︎手に入れたNo.を使用し人々を救うことができるかは………君たち次第だ‼︎ハハハハハ、ハーハハハハっ‼︎』

 

そんな高笑いをして"ヘイムダル"と名乗った男は完全に姿を消す。

 

「遊騎………ごめん」

 

「いや、闇は何も悪いことなんかしてない。悪いのは全部あの"ヘイムダル"とか名乗ったヘンテコヘルメット野郎だ」

 

「"ヘイムダル"………確か北欧神話の神の名前だったよね?ギャラルホルンを鳴らしてラグナロクの始まりを告げたっていう」

 

「上等だ。闇のゲームだろうがラグナロクだろうが、絶対にぶっ潰してやる‼︎そんなもので俺の大切な人達を傷つけられてたまるかよ‼︎」

 

ヘイムダルが消えた場所に向かって思い切り拳を振り抜く。

 

俺達の戦いが、次のステージに進んだ気がした。




次回予告

デュエルアカデミア内で闇のカードについての情報収集をはじめた遊花達は、デュエルアカデミアの生徒が行方不明になっているという話を耳にする。
行方不明者の中に紅葉がいることを知った遊花は更なる情報を求めて風紀委員会を訪ねる。
訪れた風紀委員会で、遊花達は調査に関わるため、風紀委員会に自身の実力を示すことになり………

次回 遊戯王Trumpfkarte
『厚遇する守護者』


次回は遊花のデュエル回。
遊花視点でお送りする予定です。
とうとうデュエルアカデミアにまで及び始めた不穏な気配に、遊花達はどう立ち向かっていくのか?
次回をお楽しみに。


それじゃあ今回はここまで。
世間が夏休みに入り、私の仕事は一層忙しくなっております。
最近では帰った瞬間意識無くして玄関でぶっ倒れてるとかよくあります。
おまけにお盆もずっと仕事という始末………
こんなのもう夏休みじゃないです‼︎
夏休めないDEATH‼︎
おかげで更新するために話を書く時間がなかなか作れません、というか土日しかありません。
あまり遅くなりすぎないよう精一杯頑張りますので、どうかご理解の程をよろしくお願いします‼︎
それはそれとして、最新弾としてデッキビルドが出ましたね。
イラストも好みだったのでとりあえず全テーマ組みましたが、個人的には王がお気に入りです。
私の好きな北欧神話系がモチーフですし、レベル9テーマなので私が好きなダイソンスフィア出せますし、ひたすら王の誕生を祝って遊んでました。
必ず本編に出してやるですよ、モチーフとこの作品の設定的にいつになるかわかりませんけど‼︎
といったところで今回はここでお開き。
ではでは〜

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