遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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大変お待たせ致しました。
難産でした………どうにも気に入らず書き直してばかりいたらこんなに遅くなってしまいました。
今回は桜のデュエル回です。
遊花視点と桜視点でお送りします。
今回の大部分は桜視点です。
そのうえ久しぶりの3万字超えです。
それでは本編へGO‼︎




第75話 最速最短の伝え方

 

 

 

 

もし、過去に戻れるなら。

 

そんな後悔を、何度繰り返してきただろう。

 

いつだって私は、全てが過ぎ去ってしまったその後に………そのことに気付く。

 

ありふれた日常が、どれだけ大切なものだったのかを。

 

私がありふれた日常を送れるように、必死に守ってくれている人がいることを。

 

だからこそ、これはきっとそんな大切なことを忘れてしまっていた私への、世界が下した罰。

 

どこまでも愚かで傲慢な私への………逃れられることが赦されない罰なのだ。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「師匠、食後のコーヒーはいかがですか?」

 

「ありがとう、いただくよ」

 

「いえいえ、どういたしましてです」

 

朝食を終えた師匠に用意していたコーヒーを手渡すと、師匠から柔らかい笑顔でお礼を言われ、私も思わず笑顔を浮かべる。

 

そんな私達を見て桜ちゃんが呆れた表情でため息を吐く。

 

「アンタ達が相変わらずなのはよく分かるけど、今日は朝の内にお互いの情報を交換しておくんだからさっさとしなさいよね」

 

「ああ、すまない」

 

「ご、ゴメンね、桜ちゃん」

 

「いや、いいんだけどさ」

 

行方不明になった紅葉さん、真紅ちゃん、刀花ちゃんを探すために臨時風紀委員になったり、異世界で出会った友人に再開し、ケルン中に大混乱を引き起こした『ケルン五不思議』を解決した大波乱の日から1日が経過した。

 

ここ数日、お互いに色々とあって情報交換をできていなかったため前に朝食後のミーティングを行なっていたこの時間にお互いがこの数日で得た情報を伝えることにした。

 

本当は昨日の内に色々と報告をしようと思っていたんだけど………

 

「私のせいで色々迷惑をかけてごめん」

 

「闇先パイが気にすることじゃないですよ。むしろこちらこそごめんなさいです。プロリーグでお忙しくなってきているのに何もお手伝いができず………」

 

「それこそ、遊花が気にすることじゃない。やっぱり、プロリーグは面倒。遊騎と一緒にいられる時間が減る」

 

「それを理由に面倒とか言うなよ………」

 

闇先パイの言葉に師匠が思わず苦笑を浮かべる。

 

9月も半ばを過ぎ、プロリーグではそろそろレギュラーシーズンの終了が近づきつつあり、世界ランキング2位のプロチームである『Trumpfkarte』の闇先パイは試合が続いてとても忙しいようだ。

 

桜ちゃんの師匠である不知火さんも連日試合が続いているようで、桜ちゃんは一時的に修行が中止になっているらしい。

 

それでも闇先パイはプロリーグ、デュエルアカデミアの講師、そして闇のカードの出所を探しを行なっているのだから、闇先パイは本当に尊敬する。

 

「それじゃあ本題に入るか。昨日は色々あって報告する暇がなかったからな、お互いに得た情報を報告するとしよう。まずは遊花達は何か新たな情報を得られたか?」

 

「はい‼︎実は、デュエルアカデミアの生徒が何人か行方不明になっているみたいなんですす」

 

師匠に促され、私が行方不明になっている生徒がいることについて話し始めると師匠は真剣な表情で頷く。

 

「ああ、その情報なら俺の耳にも入っている」

 

「はあ?何でアンタが知ってるのよ?」

 

「昨日、闇のカードに操られたデュエルアカデミア生に襲われてな。何とか無傷で撃退したんだがそいつは空閑の取り巻きの奴だったんだが、そいつを探して現れた空閑に聞いた話だと、その取り巻きは昨日から2日前から行方不明になっていたらしい」

 

「そんなことが………」

 

「ああ。そしてその際に空閑から詳しく話を聞いたんだが、その行方不明になっていた取り巻きは一昨日の昼間に港湾エリアで同じように行方不明になったデュエルアカデミア生と何かを運び出す作業をしていたって情報が手に入った」

 

「っ、港湾エリア⁉︎遊騎、それって………‼︎」

 

師匠の言葉に闇先パイが目を見開き、師匠は神妙な表情で頷く。

 

「ああ、多分闇の予想であってると思う。話の途中ですまないが、今度は俺達の得た情報だ。一昨日の朝、俺は新たな情報を得るために湾岸エリアまで見回りに行ったんだ。そこで、俺は闇のカードをばら撒いている奴の仲間と思われる船乗りに遭遇した。名前は水喰 鱗之助。デュエルの結果なんとか撃退したんだが、俺もそこそこダメージがデカくてその場は逃しちまった」

 

「えっ⁉︎師匠‼︎身体は大丈夫なんですか⁉︎」

 

師匠が黒幕に繋がっているであろう人物とデュエルをしたと聞き、私は思わず師匠に駆け寄ってその身体をペタペタと触る。

 

そんな私に師匠は苦笑を浮かべながらも、優しく頭を撫でてくれた。

 

「まあ、何とか大丈夫だ。それで場所がケルンの海の出入り口である湾岸エリアだったから早めに行動を移したくてな。夜、そして闇と一緒に湾岸エリアの調査をしてたんだ。その際に闇のカードに操られている船乗り達ともデュエルになってな、アジトらしきものは見つけて使われていた形跡もあったんだが、中にあった物は運び出されても抜けの空になっていた」

 

「物が運び出されて………‼︎まさか、その物を運びだしたのって‼︎」

 

「想像通りなら、闇のカードに操られた行方不明になっているデュエルアカデミア生だろうな。鱗之助に遭遇したのは朝。そして俺達が調査をしたのは夜だ。その間に物を運び出していた行方不明者がいたなら結びつくのが自然だろう」

 

師匠の言葉に、私は苦い表情を浮かべる。

 

同じデュエルアカデミア生が闇のカードに操られて師匠を傷つけた人達と共に悪事の片棒を担がされている。

 

もしかしたら、紅葉さん達も………

 

「そしてそのアジトを捜索する際に、闇のカードをばら撒いている元凶とも出くわした」

 

「えっ⁉︎」

 

「最終的には取り逃しちまったんだが、あのヘンテコヘルメット野郎………"ヘイムダル"と名乗っていたが、そいつの言葉だと闇のカードは、既にケルン中にばら撒かれていて、いつ誰が闇のカードの呪いに呑まれてもおかしくないらしい。そしてあいつは、そのことをゲーム感覚で笑ってやがった」

 

「っ、本当にふざけた奴みたいね、あのヘルメット野郎は」

 

師匠の言葉に桜ちゃんが怒りの表情を浮かべてテーブルを叩く。

 

私も気づけば自分の拳を固く握り締めていた。

 

ゲーム感覚で人を操って誰かを傷つけるなんて、許せるわけがない。

 

「とりあえず俺はもう少し色んなところで情報収集をするつもりだ。遊花達はどうするんだ?」

 

「私達のやることは決まってるわ。ね、遊花」

 

「そうなのか?」

 

私達の次の行動が決まっているという言葉に師匠が少し驚いた表情を浮かべる。

 

そんな師匠に、私は次の私達の行動を告げる。

 

「私達、デュエルアカデミアで臨時風紀委員として活動することになったんです。そこで、行方不明になったデュエルアカデミア生を探そうと思っています」

 

「………何?」

 

「っ、師匠?」

 

私の言葉を聞き、師匠の表情が変わる。

 

今まで見たことがないぐらい、真剣で怒っている表情に。

 

「俺は約束したよな?遊花が相手にしていいのはデュエルアカデミアの中でNo.を所持している人間の相手だけだと」

 

「で、でも、行方不明になった人達はデュエルアカデミア生です‼︎それなら私の方がーーー」

 

「確かに相手は行方不明になったデュエルアカデミア生かも知れない。だが、行方不明になったデュエルアカデミア生を探しに行くということは必然的にデュエルアカデミアの外に出るということ。そしてそれはデュエルアカデミア生を行方不明にしている元凶と出会す可能性があることも意味している。師匠として、遊花に危険が及ぶ可能性があることを許容することはできない」

 

淡々と、諭すように、師匠は私に言葉を投げかける。

 

師匠が私のことを心配してくれていることは分かっている。

 

だけど、ここだけは譲るわけにはいけない。

 

「それでも、私は行方不明になったデュエルアカデミア生を探したいんです‼︎だって、行方不明になった人達の中には私の友達がいるんです‼︎紅葉さんが、真紅ちゃんが、刀花ちゃんがいるんです‼︎」

 

「………なんだって?」

 

「私達は風紀委員会の資料を見せて貰ったの。その中には桜糀や真紅、刀花の名前があったわ。だから私達にとっても全くの無関係ってわけじゃいられない」

 

私達の言葉に師匠は一瞬目を見開く。

 

しかし、すぐに真剣な表情に戻り諭すように言葉を紡ぐ。

 

「………分かった。まずはデュエルアカデミア生の捜索を1番に尽力する。だから遊花達はーーー」

 

「っ、どうして………」

 

「遊花?」

 

「どうして師匠は私のものまで抱え込もうとするんですか⁉︎」

 

「っ⁉︎」

 

師匠の言葉に私は思わず声を荒げてしまう。

 

ダメだった。

 

もう我慢はできなかった。

 

「紅葉さん達を探したいのは私の意思です‼︎危険なことだって分かってます‼︎それでも大切な友達のために頑張りたいんです‼︎その思いはいけないものなんですか⁉︎」

 

「っ、遊花の思いが悪いなんて言ってない。だけど、遊花が危険な目にあう可能性があることを俺はーーー」

 

「確かに師匠の言う通りにすれば私は危険な目にあう可能性は減るかも知れません‼︎だけど、その分師匠が危険な目にあうんじゃないですか‼︎」

 

「っ………」

 

「どうして………どうして分かってくれないんですか………」

 

思い出すのは、師匠が入院したあの日のこと。

 

世界が崩れ去り、目の前が真っ暗になっていくようなゾッとする感覚。

 

「っ………師匠の………師匠のバカー‼︎」

 

「っ、遊花⁉︎」

 

静止の声も聞かず、私は涙を拭いながら玄関から飛び出す。

 

私の心を映し出すように、空には暗雲が立ち込めていた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「………ったく、あの子はカバンも弁当も置きっ放しで、本当に仕方がない子ね」

 

遊花が飛び出していったリビングで、私は苦笑を浮かべながらキッチンにおいてあった弁当とテーブルの横においてあったカバンを手に取る。

 

何とも言えない沈黙の後、遊騎が暗い表情で口を開く。

 

「………悪い」

 

「………それは遊花に対して?それとも私達に対して?」

 

「どっちもだ。遊花の気持ちも汲んでやれなかったし、そのせいでお前達にも嫌な思いをさせちまった………はは、本当に、遊花の言う通りだ。馬鹿だよ、俺は」

 

「そうね………馬鹿よ、アンタは」

 

「っ‼︎」

 

自嘲気味に笑う遊騎の頭を思いっきりブン殴る。

 

「別に、アンタの遊花を守ろうとする気持ちを否定したりはしないわ。私だって、できれば遊花に危険な目にはあって欲しくないし」

 

「………」

 

「だけど、同じぐらい………遊花も、私だってアンタに傷ついて欲しくない。それだけのことよ」

 

「仲間外れは酷い………私だって遊騎に傷ついて欲しくない」

 

「はいはい、悪かったわよ。それじゃあ遊花も、闇も、そして私も遊騎に傷ついて欲しくない、にしとくわ」

 

「ん………それなら許す」

 

「………悪い………いや、違うな。心配してくれてありがとうな、桜、闇」

 

「分かればいいのよ」

 

「どういたしまして」

 

自嘲気味に笑いながらも感謝の言葉を述べてくる遊騎に、私と闇は柔らかな笑みを返す。

 

「さてと、私もデュエルアカデミアに行くわね。勢いよく出て行った遊花のことも心配だし」

 

「悪い、桜。少しだけ待ってくれ。話しておきたいことがあるんだ」

 

「?何よ?」

 

遊花を追ってリビングを出ようとした私を遊騎が呼び止める。

 

そして、少し躊躇いながらも真剣な表情で口を開く。

 

「さっきは話せなかったんだが、闇のカードをばら撒いている奴の仲間と思われる船乗りの鱗之助って奴とデュエルしたって話をしたよな?」

 

「それがどうしたのよ?」

 

「そのデュエルのきっかけがな、鱗之助が桜糀をナンパしてたからなんだよ」

 

「は⁉︎闇のカードをばら撒いてる奴が桜糀をナンパって………待ちなさい。それってつまり………」

 

「一昨日の朝までは桜糀は行方不明になってなかったってことだ。そして、あの鱗之助って野郎が桜糀を狙ってたんだとしたら………」

 

「行方不明になった原因もそいつの可能性があるってことね」

 

私の言葉に遊騎は頷く。

 

桜糀が行方不明になった原因になったと思われる情報。

 

これは色々な面で役に立つ。

 

桜糀を探す手がかりに、そして………遊花が危険な目にあう可能性を減らすことにも。

 

「この情報をどう使うかは桜に任せる。俺も今日は仕事が休みだから、色々なところで情報を収集してみるつもりだ。また何かが分かったら連絡する………遊花のこと、頼んだ」

 

「言われるまでもないわ。遊花は私の1番の親友だもの。アンタも、あんまり無理するんじゃないわよ?」

 

「………善処する」

 

「………はぁ、仕方ないからその答えで勘弁してあげるわ。じゃ、いってくるわ」

 

「ああ」

 

「いってらっしゃい。私もなるべくプロリーグを早く片付けて帰れるようにする」

 

「闇が言うとシャレにならないんだけど………期待してるわ」

 

私は遊騎達に見送られながら玄関を出る。

 

すると、私の頭に少女の声が響く。

 

『お互いに大切に思い合っているのにぶつかり合う。面倒な生き物ね、人間って』

 

「大切だからこそぶつからないといけない時もあるのよ。まあ、それが今かどうかは別として、ね」

 

『難儀なものね』

 

「否定はしないわ」

 

デッキケースから聞こえてきた相棒の声に苦笑を返す。

 

本当に仕方がない友人達だ。

 

「でも、どうにかしてあげないとね。あの2人は、馬鹿みたいに笑ってる方が似合ってるんだから」

 

『ふふっ、それでこそ私の桜だわ』

 

「アンタのじゃないっての」

 

相棒の嬉しそうな声を聞きながら、私は親友を追って通学路を走り出す。

 

走って飛び出して行ったとは言え、遊花はそれ程運動神経がいいわけじゃない。

 

体力だってあまりある方じゃないし、私が全力で走れば………

 

そんなことを考えながら走っていると、少し先の公園で佇んでいる少女の姿が目に入る。

 

私は苦笑いを浮かべながらも走るのを止め、何の気なしにその少女に話しかける。

 

「朝から走り込み?まあ、体力をつけるのには悪くないと思うわよ」

 

「………桜ちゃん」

 

私の方を振り返った遊花は、目尻に涙を浮かべ今にも消えてしまいそうな表情を浮かべる。

 

そんな遊花を私は正面から優しく抱きしめ、頭を撫でる。

 

「もう………泣き虫ね、遊花は。ぎゅー………いいこいいこ」

 

「さくら、ちゃん………う、あ………」

 

遊花の声に涙の色が混ざる。

 

それでも構わず、私は遊花を抱きしめ続ける。

 

「大丈夫。遊花の思いは、何も間違ってないわ。そのことは、きっと遊騎にだって伝わってる」

 

「で、でも………私………」

 

「もし、それでも自信がないのなら、遊花の気持ちがちゃんとアイツに届くまで、私がずっと遊花の傍で支えてあげる。それは、絶対に絶対よ。だから、大丈夫よ」

 

「っ………桜ちゃん‼︎」

 

涙を溢しながら私の身体を強く抱き締めてくる遊花を優しく抱き締め返す。

 

雨が降り出しそうな暗雲の中、私は遊花が落ち着くまでその身体を抱き締め続けるのだった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「頼むよ、情報収集を、新聞部でね」

 

昼休み。

 

臨時風紀委員として訪れた風紀委員会の教室で、私達は宮司さんにそんなことを頼まれた。

 

「新聞部?というか、情報収集って行方不明事件の情報なら風紀委員の方が正式な情報を知ってるんじゃないの?」

 

「甘いですわね、宝月 桜。逆に言ってしまえば、風紀委員会には裏が取れた正式な情報しか集まってこないのですわ」

 

「?どういうことですか?」

 

「風紀委員会はデュエルアカデミアの風紀を守るためにデュエルアカデミアの教員とも深く結びついている組織です。そのため、風紀委員会に寄せられる情報は教員から寄せられたものが殆どとなります。ですが、デュエルアカデミアの風紀を守る者とはいえ、それでも生徒であることには変わりがありません。なので、教員から寄せられる情報もなるべく危険が伴わないものや、安全性を考慮できるものとなります」

 

首を傾げる私達に鬼石さんと珊瑚さんが説明してくれる。

 

つまり、風紀委員会に集まる情報は教員から得られた確かな情報だけってことだよね。

 

「それに比べ、我が校の新聞部に属する方々はとても行動的な方が多く、真実を求めるために危険なことにも自分から関わり、情報を得ようとする方が多いのです。そのため、確証が得られない情報や噂話と言った情報ではあちらの方が上手ですわ。そしてそういった確約されていない情報を調べ上げるのが我が校の新聞部です」

 

「つまり、今回みたいな話は新聞部の方がこちらが得てない情報を持ってるかも知れないってこと?」

 

「ええ。ですが、今回のアナタ達への指令はそれだけではありません。あなた達には新聞部の方々に忠告をしてきてもらいたいのですわ」

 

「忠告?」

 

「疎まれるものだよ、賢しすぎると」

 

そういって宮司さんは肩をすくめる。

 

「確かなものだよ、彼女達の収集した情報は。だが、危険なのだよ、その分ね」

 

「我が校の新聞部の方々は自分達が興味を抱いた情報は徹底的に調べ上げます。それこそ聞き込みや突撃取材を行って。ですが、その結果余計なトラブルにも巻き込まれやすいのです」

 

「このあいだもデュエルアカデミアの実技試験で不正を行ったとされる生徒に突撃取材を敢行し一悶着あって風紀委員会が介入することになりましたの。実際、その生徒は裏で対戦相手を脅して勝ち星を得ていたらしいのですが、事件が明るみになることを恐れた生徒が逆上し、もう少しで刃傷沙汰でしたわ」

 

「に、刃傷沙汰ですか⁉︎」

 

想定外のワードに私の表情が引き攣る。

 

実技試験で不正を行ったというのも信じられないけど、まさかそんな危険なことがデュエルアカデミアで行われていたなんて………

 

「幸い、風紀委員会が新聞部とその問題があった生徒をマークしていたお陰でその前に鎮圧できましたが、今回は行方不明事件です。怪しい何かに気付いた新聞部の方が突撃していき、行方不明になったのでは洒落になりません」

 

「だからこそ、頼みたいのだよ、情報収集を、新聞部からね。そして、してほしい、忠告を、危険ならばね」

 

「分かりました」

 

「とはいえ、しなくていいよ、無理は。知らないがね、何があったかは」

 

そういって宮司さんは心配そうに私を見る。

 

そんな宮司さんに私は今見せれる精一杯の笑顔で応える。

 

「大丈夫………平気、へっちゃらです。私を支えてくる親友が、傍にいてくれますから」

 

「………そうかい。いいことだね、それは」

 

「はい。それでは、新聞部への情報収集へ行って参ります」

 

「手伝うことにしたからには、しっかりとこなしてくるわ」

 

「期待してて、霊兎」

 

「期待してるとも、勿論ね。祈るよ、幸運を」

 

そんな宮司さんの言葉を背に、私達は風紀委員会の教室を出て教えて貰った新聞部の部室に向かう。

 

その最中、霊華さんは心配そうに私に声をかけてくる。

 

「それはそうと、話は聞いたけど本当に大丈夫?今日の遊花は波動も乱れているわ。とても大丈夫といえる精神状態ではないと思うけれど。デュエルだって、負けはしなかったとはいえ、いつもより危ない場面が多かったわ」

 

霊華さんの言葉に、私は思わず苦笑いを浮かべる。

 

今朝の師匠との小さないざこざは私の心を大きく乱していた。

 

師匠への負い目、弱い自分への苛立ち。

 

そのことが胸に引っかかり、普段なら冷静に対処できることでも必要以上に焦り、余計に状況を悪化させるかとが増えていた。

 

午前中のデュエルでも、何とか黒星はつかなかったが、いつもよりも危なかったことは事実だった。

 

「それでも………自分から望んだことですから。お手伝いもしないなら………師匠とぶつかったことすら、無意味になってしまいます」

 

「………そう。遊花がそれでいいのであれば、私は何も言わないわ」

 

そういうと、霊華さんは口を噤んだ。

 

そんな霊華さんに私は心の中で謝罪する。

 

霊華さんが謝る必要なんてない。

 

悪いのは、全部私のせい。

 

自分の気持ちを上手く伝えられず、師匠の手を振り払ってしまった私が悪いのだから。

 

もし、私がもっと上手に師匠に気持ちを伝えられていたのなら、何が変わったのだろうか?

 

私はーーー

 

「ん?遊花達じゃないか。何してるんだ、こんなところで?」

 

私が思考の海に沈んでいると、正面から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「あら、九石じゃない」

 

私の意識が思考の海から浮上すると、そこにいたのは大地君だった。

 

大地君は不思議そうな表情で私達を見て首を傾げた。

 

「よ、何してんだ?何か面白いことか?」

 

「予想外の遭遇。面白いことではないけど、私達は新聞部に用があって向かってた」

 

「新聞部に?」

 

「ええっと、実はーーー」

 

不思議そうな表情を浮かべる大地君に、私は事情を説明する。

 

説明を終えると、大地君は笑顔を浮かべて自分の胸を叩いた。

 

「へぇ、そんなことになってたのか。なら、俺も手伝うぜ。俺にとっても紅葉は楽しいデュエルを繰り広げた友達だしな」

 

「ありがとう、大地君‼︎」

 

「気にすんなって。んじゃ、風紀委員に挨拶に行く前に、ちょっと遊花達の役に立っておくかな」

 

そういうと、大地君は携帯端末を操作し始める。

 

「………これでよし、っと。ちょっと待ってな。もう少ししたら新聞部の友達が来てくれるからさ」

 

「友達?九石と新聞部って、なんかマッチしないんだけど………」

 

「まあ、色々あってな。でも、すっごく頼りになる奴だぜ」

 

「大地君の友達で新聞部………それってもしかしてーーー」

 

「いた‼︎大地くーん‼︎」

 

「お、来たみたいだぜ」

 

私が頭に思い浮かんだことを口に出そうとすると、それを遮るかのように遠くから大地君のことを呼ぶ女の子の声が聞こえた。

 

私達がそちらに視線を向ける、こちらに向かって勢いよく走ってきたのは赤髪混じりの茶色の髪の毛が特徴的な女の子。

 

「わ、私に大事な用があるって、それって………って、あれ、遊花さん?それに一緒にいるのは………えっ、と?ど、どういう状況?」

 

「よ、蛍。悪い、少し力を貸してくれないか?」

 

大地君の言葉に、大地君の友達ーーー式見 蛍(しきみ ほたる)さんは困惑した表情で首を傾げた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「臨時風紀委員になった遊花さんの手伝いで情報収集を………ふーん、それで私に用があったんだ」

 

「おう‼︎蛍は新聞部だし、何か知ってることはないかと思ってさ」

 

「そっか………はぁ」

 

九石の説明を受け、蛍と呼ばれた少女は深いため息を吐くと、ブツブツと何かを呟きはじめる。

 

「………まあ、そんなことだろうとは思ってたけど………いきなり、"大事な用がある"なんてメールがくるから、少しは期待したのに………って、なんか言ってる‼︎別に期待なんかしてないし………」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「うぅ〜何でもないよ………何でもないけど、大地君は少しぐらい私に殴られるべきだと思うよ」

 

「いや、何でだよ?」

 

「べっつにぃ〜何でもないよ」

 

そういって少女は拗ねたように九石から顔を背ける。

 

………あーそういうことね。

 

意外とやるじゃない、九石も。

 

そっとしてあげたいけど、このままじゃ話が進まないのよね。

 

「夫婦漫才中のところ悪いんだけど」

 

「「夫婦漫才じゃない‼︎」」

 

「はいはい、九石と息ぴったりなのは分かったから、とりあえず自己紹介をして貰えないかしら?遊花は知ってるみたいだけど、私達は初対面だし」

 

「あ、ごめんなさい。それでは改めて、新聞部所属の式見 蛍です。数式の式に、見るの見、蛍と書いて"ほたる"です。気軽に蛍って呼んでくれればいーよ」

 

「蛍ね。私はーーー」

 

「知ってます。デュエルアカデミア高等部学年4位『壊獣姫』、宝月 桜さんと、同じく学年7位 御子神 霊華さんだよね」

 

「流石は新聞部。私達のこと知ってるのね」

 

「まあ、皆さん有名人ですから」

 

そういって、蛍がにししっと笑う。

 

成る程、九石と同じタイプみたいね。

 

「それで、デュエルアカデミア内での行方不明者についての情報だけど、それなら部長に聞きに行った方がいいよ」

 

「部長って、新聞部の、ですか?」

 

「うん。私は今別の件を調査してるから、行方不明の方の情報は殆ど持ってないんだ。だけど、行方不明の方は部長が情報収集を行うって言ってたから、聞けば何かは分かると思うよ。よかったら、部長に話を通しておこうか?」

 

「いいんですか?」

 

「モチ‼︎というか、先に私に話しにきて正解だったよ。事前に連絡しておかないと、ウチの部長は絶対に捕まらないからね」

 

「絶対に捕まらない?それはどういう意味?」

 

蛍の言葉に御子神は首を傾げる。

 

そんな御子神に蛍はなんとも言えない表情で苦笑を浮かべた。

 

「ウチの部長、放課後になるとすぐに情報収集に行っちゃうから。それが校内でも校外でも。だから、携帯端末で事前に話を通さないとなかなか会えないんだよね。まあ、どんな人かは会ってからのお楽しみだよ」

 

 

ーーーーーーー

 

 

「ほうほう、私達に情報を提供しろと。それはそれは、余程風紀委員会も事態の深刻さに困窮しているようですね」

 

放課後。

 

蛍に案内された新聞部の部室で、遊花の言葉を聞き、茶髪のノームコアショートの少女ーーー新聞部の部長である早見 文愛(はやみ あやめ)が片目を瞑って顎に手をやり思案する。

 

「いいでしょう、私が調べ上げたものでよければ今回の事件についての情報を提供しましょう」

 

「本当ですか‼︎」

 

「ええ、ここで断って何度も尋ねられるのも時間の無駄ですからね。それは私の信条からして許容できるものではありませんから」

 

そういって早見が目を瞑って肩を竦める。

 

意外にあっさりと話が通ったことを遊花は喜んでるけど、蛍が早見の話をした時に浮かべた苦笑を考えるとこのまま終わるとも思えないのよね。

 

そんな私の予感を肯定するかのように、早見は不敵な笑みを浮かべた。

 

「ですが、こちらが一方的に情報を提供するのでは、利がありません。折角仕入れた特ダネをみすみす手放すことになってしまえば、今まで私が調査に費やした時間が無駄になってしまいます」

 

「………それで?」

 

「なので、どうでしょう?皆さんには私が提供する情報と同じぐらい、新聞に特ダネとして掲載できるような情報を提供して貰えませんか?」

 

「特ダネとして掲載できる情報⁉︎そんなの私達は持ってないですよ⁉︎」

 

早見の言葉に遊花が驚愕の声を上げる。

 

「いえいえ、あるじゃないですか。皆さんが………いえ、皆さんだからこそ提供できる情報が」

 

しかし、そんな遊花を見て早見は楽しそうに笑う。

 

確かに遊花の言う通り、私達が新聞部に提供できるような情報を持ってるとは思えない。

 

でも、早見の口ぶりだと私達がその新聞に特ダネとして掲載できるような情報を持っていると確信しているようだ。

 

私達だからこそ提供できる情報………何だか嫌な予感がしてきたわね。

 

そして、私の嫌な予感は当たる。

 

「単刀直入に言いましょう。皆さんには新聞部の取材を受け、記事にさせていただきたいんです‼︎」

 

「ふぇ⁉︎」

 

「………やっぱり」

 

「………まあ何となくそんな気はしてたわ」

 

満面の笑みでカメラを片手にデュエルディスクを起動させ、そんなことを口にする早見に私達は顔を引き攣らせる。

 

私と御子神はデュエルアカデミア高等部の学年トップ。

 

そして遊花はここ数ヶ月で急激に成長し、私達学年トップと対等に渡り合え、闇に目をかけられる程の決闘者だ。

 

その情報を独占取材という形で出せば確かに特ダネにはなりそうだ。

 

「はは、蛍。お前のところの部長、すっげぇ面白い奴だな」

 

「大地君ならそういうと思ったよ」

 

九石の言葉を聞き、蛍が呆れた表情を浮かべる。

 

面白いかはともかく、私達に他に渡せる情報なんてものはない。

 

それに………

 

チラッと遊花の方を見ると、戸惑いながらも自分のデュエルディスクを起動しようとしている。

 

あの子は自己評価が低いから、自分のことが知られても大したことにはならないと思ってるんだろうけど、この中で1番この条件を受けてはいけないのは遊花だ。

 

現在の遊花は闇に挑戦するために様々なデュエルアカデミア生からデュエルを挑まれている。

 

ここで遊花のデュエルの情報が漏れたら、その情報を元に遊花を完全に対策したデッキで挑んでくる者も出てくるだろう。

 

それは遊花にとっても闇にとってもいいことではない。

 

それに、今日の遊花は今朝の件を引きずって精神的に不安定になっている。

 

不安定なことで取材中に大きなミスをしでかしたら後々遊花が不利になる可能性もある。

 

………気は乗らないけど、仕方がない、か。

 

「いいわ。その話、受けてあげる」

 

「えっ⁉︎桜ちゃん⁉︎」

 

「おお‼︎話が早いですね。それはとてもいいことです」

 

「ただし、提供するのは私の情報だけよ。私達全員の情報を渡して、後から他の情報を手に入れた時に対価にできる情報がないから教えない、なんてこと言われたら堪らないもの」

 

「それでいて頭の回転も早い………ふふ、余計に気に入ってしまいました。いいでしょう、それで今回の件は手をうたせていただきましょう」

 

「交渉成立ね。あなたの方こそ、話が早いじゃない」

 

私がそういいながらデュエルディスクを起動すると、早見は心底楽しそうに笑いながらデュエルディスクを構えた。

 

「悩んでいる時間は無駄以外の何ものでもありません。即断即決即時即座即答‼︎それが限られた時間を有意義に使うコツですよ」

 

「立ち止まって考えることが必要な時もあると思うけど?」

 

「否定はしませんが、私としては悩む前に真っ直ぐにぶつかっていくことをオススメしますね。考えた末に得た結果が相容れなければ悩んだ時間は無駄になります。それならば考えるということに逃げずに真っ直ぐ一直線にぶつかって、お互いの求める答えを探した方が有意義というものです」

 

「真っ直ぐ一直線にぶつかって………」

 

早見の言葉を、遊花が小さな声で反覆する。

 

そんな遊花を見て、早見が私に向かってウィンクをする。

 

この子、まさか遊花の様子が変なことに気づいて………はぁ、こんなことされたら、少しぐらいサービスして答えてあげないといけないじゃない。

 

「………それじゃあ、始めるわよ、早見‼︎私は宝月 桜、18歳‼︎誕生日は7月7日で血液型はO型‼︎身長はこの間の測定では165cm‼︎体重はヒミツ‼︎趣味は裁縫‼︎好きなものは遊花の作るご飯‼︎………後は、彼氏いない歴は年齢と同じよ!!」

 

「………ふふっ、これは想像以上に面白い取材になりそうです。私は早見 文愛、17歳‼︎誕生日は10月27日で血液型はB型‼︎身長はこの間の測定では162cm‼︎体重は同じくヒミツとさせていただきます‼︎趣味はF1鑑賞‼︎好きなものはわんこそば‼︎彼氏いない歴は年齢と同じです!!『壊獣姫』の力、見せて貰います‼︎」

 

『決闘‼︎』

 

 

桜 LP8000

 

文愛 LP8000

 

 

ーーーーーーー

 

 

「先攻は私ね。まずは速攻魔法、転生炎獣( サラマングレイト)()炎陣( サークル)‼︎この同名カードは1ターンに1枚しか使えず、2つ効果から1つを選択して発動できる。デッキからサラマングレイトモンスター1体を手札に加えるか、自身と同名のモンスターを素材としてリンク召喚した自分フィールドのサラマングレイトリンクモンスター1体を対象としてこのターン、そのリンクモンスターは自身以外のモンスターの効果を受けなくする効果よ。私はデッキからサラマングレイトモンスター1体を手札に加える効果でデッキから転生炎獣( サラマングレイト)ウルヴィーを手札に加えるわ‼︎」

 

「転生炎獣………あの『壊獣姫』が新たな力を手に入れたという噂は流れていましたが、実際に体験できる日が来るとは………」

 

「さらに手札の転生炎獣ウルヴィーを捨てて、魔法カード、サイバネットマイニング‼︎同名カードは1ターンに1度、手札を1枚墓地へ送って発動できる。デッキからレベル4以下のサイバース族モンスター1体を手札に加えるわ‼︎私はデッキから転生炎獣( サラマングレイト)ガゼルを手札に加えるわ‼︎そして今手札に加えた転生炎獣ガゼルの効果発動‼︎1ターンに1度転生炎獣ガゼル以外のサラマングレイトモンスターが自分の墓地に送られた場合、このカードを手札から特殊召喚する‼︎」

 

 

〈転生炎獣ガゼル〉☆3 サイバース族 炎属性

DEF1000

 

 

私のフィールドに現れるのは炎を纏ったガゼルのモンスター。

 

「転生炎獣ガゼルのもう1つの効果発動‼︎1ターンに1度、このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから転生炎獣ガゼル以外のサラマングレイトカード1枚を墓地に送る。私はデッキから転生炎獣( サラマングレイト)Jジャガーを墓地に送るわ‼︎早速行くわよ、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」

 

「‼︎リンク召喚ですか」

 

私が目の前に手をかざすと巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件はレベル4以下のサイバース族モンスター1体‼︎私は転生炎獣ガゼルをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク1‼︎転生炎獣( サラマングレイト)ペイルリンクス‼︎」

 

 

〈転生炎獣ペイルリンクス〉LINK1 サイバース族 炎属性

ATK500 ↓

 

 

ガゼルがサーキットに吸い込まれると、代わりにサーキットから現れたのは真っ赤な装甲に身を包んだ山猫のモンスター。

 

「転生炎獣ペイルリンクスの効果発動‼︎1ターンに1度、このカードがリンク召喚に成功した場合に、デッキから転生炎獣( サラマングレイト)()聖域( サンクチュアリ)1枚を手札に加える‼︎私はデッキからフィールド魔法、転生炎獣の聖域を手札に加える‼︎そしてフィールド魔法、転生炎獣の聖域を発動‼︎」

 

フィールド魔法を発動すると、辺りの風景がマグマに囲まれた火山のフィールドに変わる。

 

「転生炎獣のフィールド魔法………」

 

「私は転生炎獣( サラマングレイト)フォクシーを召喚‼︎」

 

 

〈転生炎獣フォクシー〉☆3 サイバース族 炎属性

ATK1000

 

 

フィールドに現れたのは尻尾から炎を灯している狐のモンスター。

 

「転生炎獣フォクシーの効果発動‼︎同名カードは1ターンに1度、このカードが召喚に成功した時、自分のデッキの上からカードを3枚めくり、その中からサラマングレイトカード1枚を選んで手札に加え、残りのカードはデッキに戻すわ‼︎私はデッキの上から3枚めくり、転生炎獣( サラマングレイト)フォウルを手札に加えるわ‼︎どんどん行くわよ、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」

 

「っ、またリンク召喚ですか」

 

「召喚条件は炎属性の効果モンスター2体‼︎私は転生炎獣フォクシーと転生炎獣ペイルリンクスをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎リンク2‼︎転生炎獣( サラマングレイト)サンライトウルフ‼︎」

 

 

〈転生炎獣サンライトウルフ〉LINK2 サイバース族 炎属性

ATK1800 ↓↑

 

 

フォクシーとペイルリンクスがサーキットに吸い込まれ、代わりに炎を纏った機械的な狼が現れる。

 

「転生炎獣サンライトウルフの特殊召喚成功時、手札の転生炎獣フォウルの効果発動‼︎自分フィールドに同名カード以外のサラマングレイトモンスターが召喚・特殊召喚された場合、このカードを手札から特殊召喚するわ‼︎」

 

 

〈転生炎獣フォウル〉☆4 サイバース族 炎属性

ATK1800

 

 

サンライトウルフが咆哮をあげるとフィールドに炎の羽根を持つ孔雀が姿を現わす。

 

「さらに墓地に存在する転生炎獣Jジャガーの効果発動‼︎同名カードは1ターンに1度、このカードが墓地に存在し、自分フィールドにサラマングレイトリンクモンスターが存在する場合、転生炎獣Jジャガー以外の自分の墓地のサラマングレイトモンスター1体を対象としてそのモンスターをデッキに戻し、墓地のこのカードを自分のサラマングレイトリンクモンスターのリンク先となる自分フィールドに特殊召喚するわ‼︎」

 

「っ、まだ展開が止まらないんですか⁉︎」

 

「知らないの?1度燃え上がった炎はそう簡単には消えないのよ。私は墓地の転生炎獣フォクシーをデッキに戻して転生炎獣Jジャガーを特殊召喚‼︎」

 

 

〈転生炎獣Jジャガー〉☆4 サイバース族 炎属性

DEF1200

 

 

サンライトウルフの近くに身体に着いた棘から炎を噴き出させているジャガーが現れる。

 

そしてJジャガーが現れたことでサンライトウルフは歓喜の咆哮をあげる。

 

「転生炎獣サンライトウルフの効果発動‼︎同名カードは1ターンに1度、このカードのリンク先にモンスターが召喚・特殊召喚された場合、自分の墓地から炎属性モンスター1体を選んで手札に加える‼︎ただし、このターン、自分はこの効果で手札に加えたモンスター及びその同名モンスターを通常召喚・特殊召喚できない。私は墓地の転生炎獣ウルヴィーを手札に加えるわ‼︎さらに墓地から手札に加わった転生炎獣ウルヴィーの効果発動‼︎このカードが効果で自分の墓地から手札に加わった場合、このカードを相手に見せ、自分の墓地の炎属性モンスター1体を対象としてそのモンスターを手札に加える‼︎私は墓地から転生炎獣ガゼルを手札に加えるわ‼︎」

 

「手札補充………これだけ展開されているのにまだ4枚もの手札を残して………」

 

唖然としている早見に私は不敵に笑って正面に手をかざす。

 

「驚くのはまだ早いわ‼︎私はレベル4の転生炎獣フォウルと転生炎獣Jジャガーでオーバーレイ‼︎2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼︎エクシーズ召喚‼︎」

 

「エクシーズ召喚まで⁉︎」

 

フォウルとJジャガーが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると空から舞い降りるのは炎の翼を持つ機龍。

 

「さあ、初陣よ‼︎現世に燃えゆく炎龍‼︎転生炎獣( サラマングレイト)ブレイズドラゴン‼︎」

 

 

〈転生炎獣ブレイズドラゴン〉★4 サイバース族 炎属性

DEF1200

 

 

「驚きました。まさか宝月さんがエクシーズ召喚まで使えるようになっているとは………」

 

「驚くのはまだ早いわ‼︎フィールド魔法、転生炎獣の聖域の効果発動‼︎1ターンに1度、このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分がサラマングレイトリンクモンスターをリンク召喚する場合、自分フィールドの同名のサラマングレイトリンクモンスター1体のみを素材としてリンク召喚できる‼︎」

 

「同名カードを使ったリンク召喚?」

 

「繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎私は転生炎獣サンライトウルフをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」

 

サンライトウルフの頭上にサーキットが、足元に炎で出来た魔法陣が現れ、交差するようにサンライトウルフの身体を通過する。

 

サーキットと魔法陣が通過すると、サンライトウルフの纏っていた炎が一際激しく燃え上がる。

 

「転生リンク召喚‼︎リンク2‼︎転生炎獣サンライトウルフ‼︎」

 

 

〈転生炎獣サンライトウルフ〉LINK2 サイバース族 炎属性

ATK1800 ↓↑

 

 

「転生リンク召喚………ですか。でも、同名カードをリンク召喚することに何の意味が………」

 

「意味なら大有りよ‼︎転生炎獣サンライトウルフの効果発動‼︎同名カードは1ターンに1度、このカードが転生炎獣サンライトウルフを素材としてリンク召喚されている場合、自分の墓地のサラマングレイト魔法・罠カード1枚を選んで手札に加える‼︎私は墓地に存在する転生炎獣の炎陣を手札に加えるわ‼︎」

 

「っ、成る程。同名カードを素材にすることで更なる効果を得る………それが転生炎獣のリンクモンスターのようですね」

 

「そう、転生炎獣は生まれ変わる程強くなれる‼︎その進化にアンタはついてこれるかしら?私はカードを2枚伏せてターンエンド‼︎さあ、アンタの実力、見せて貰うわよ?」

 

 

桜 LP8000 手札3

 

ーー▲▲ー ▽

ー□ーーー

ー ☆

ーーーーー

ーーーーー ー

 

文愛 LP8000 手札5

 

 

「お見事です、宝月さん。1ターン目だというのに圧倒されてしまいました。流石はデュエルアカデミア高等部学年4位『壊獣姫』と言ったところでしょうか?」

 

「まあ、まだ怪獣も姫も使えてないけどね。そもそも私、先攻って苦手だし」

 

私の言葉に、早見は苦笑いすると、すぐに表情を切り替えて澄ました笑みを浮かべる。

 

「そのようですね。ですが、私は宝月さんの代名詞と呼ばれるモンスターを出すまで時間をかけるつもりはありません。私にも私なりのポリシーってものがありますからね」

 

「言うじゃない。何なのよ、アンタのポリシーって?」

 

「単純なことですよ。どんなことでも最速最短で成し遂げる、です」

 

そういって早見は不敵に笑う。

 

「物事を早く成し遂げればその分時間が有効に使えます。情報を仕入れるのも、新聞を作るのも、デュエルで勝利することさえも早く成し遂げればその分更なる行動に繋げる余裕が持てる。新しい情報を仕入れにいくのも、更なる記事を書き上げるのも、デュエル後に親睦を深めることも、早く成し遂げればその分使える時間が増えるんです」

 

「………成る程、面白い考えね」

 

「だからこそ、宝月さんには悪いですが。このデュエル、最速最短で勝利まで突っ切らせていただきます」

 

確かな自信を持ってそう告げる早見に、私は思わず笑みを浮かべてしまう。

 

私はこれでも学年4位。

 

自分で言うのも何だけど同じ学年の生徒は遊花に手を出す輩が多かったから容赦なく叩き潰してきた。

 

だからこそ、私の名前は同じ学年では恐怖の代名詞のように扱われているのは分かっている。

 

そんな私に対してここまで自信満々の表情を浮かべてくる決闘者は久しぶりだ。

 

「面白いじゃない、私から勝利を奪えるものなら奪ってみなさい‼︎」

 

「望むところです‼︎私のターン、ドロー‼︎自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できます‼︎来てください、SR( スピードロイド)ベイゴマックス‼︎」

 

 

〈SRベイゴマックス〉☆3 機械族 風属性

DEF600

 

 

早見のフィールドに現れたのはいくつもの独楽が合わさってできたモンスター。

 

ベイゴマックス………あのモンスターは確か異世界に行った時に見たことがあったハズ。

 

その効果はーーー

 

「SRベイゴマックスの効果発動‼︎同名カードは1ターンに1度、このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから同名カード以外のスピードロイドモンスター1体を手札に加える‼︎私が手札に加えるのはSR( スピードロイド)タケトンボーグ‼︎そして自分フィールドに風属性モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できます‼︎来てください、SRタケトンボーグ‼︎」

 

 

〈SRタケトンボーグ〉☆3 機械族 風属性

DEF1200

 

 

次に現れたのは竹とんぼを模した人形のようなモンスター。

 

その姿を確認すると、早見は正面に手をかざす。

 

「早速行きますよ、突き抜けろ‼︎疾風怒濤のサーキット‼︎」

 

「リンク召喚ね」

 

早見の正面に巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件は機械族モンスター2体‼︎私はSRベイゴマックスとSRタケトンボーグをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎リンク召喚‼︎追跡フルスロットル‼︎リンク2‼︎F.A.( フォーミュラアスリート)シャイニングスターGT‼︎」

 

「F.A.⁉︎」

 

 

〈F.A.シャイニングスターGT〉LINK 2 機械族 光属性

ATK0 ↙︎ ↘︎

 

 

ベイゴマックスとタケトンボーグがサーキットに吸い込まれると、代わりにサーキットから赤と白を基調としたレーシングカーが飛び出してきた。

 

SRデッキかと思ってたけど出てきたのはF.A.………どうやらこの2つの混合デッキみたいね。

 

「さあ、迅速にどんどん行きますよ‼︎私は手札からSR( スピードロイド)電々大公を捨てて魔法カード、ワンフォーワンを発動‼︎デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚します‼︎来てください、チューナーモンスター、F.A.( フォーミュラアスリート)カーナビゲーター‼︎」

 

 

〈F.A.カーナビゲーター〉☆1 機械族 風属性

DEF0

 

 

次に早見のフィールドに現れたのはホログラムの身体を持つ電子の妖精。

 

「F.A.カーナビゲーターの効果発動‼︎このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキからF.Aフィールド魔法カード1枚を手札に加えます‼︎私はデッキからフィールド魔法、F.A.( フォーミュラアスリート)シティGP( グランプリ)を手札に加えます‼そして即座にフィールド魔法、︎F.A.シティGPを発動‼︎」

 

マグマに囲まれた火山のフィールドに、近未来的な都市が現れる。

 

「この瞬間、F.A.シャイニングスターGTの効果発動‼︎マッハブースト‼︎F.A.魔法・罠カードの効果が発動した場合、このカードにアスリートカウンターを1つ置きます‼︎」

 

「アスリートカウンター?」

 

 

F.A.シャイニングスターGT

アスリートカウンター0→1

 

 

近未来的な都市の公道をシャイニングスターは物凄い勢いで走りはじめる。

 

「アスリートカウンターが乗ったF.A.シャイニングスターGTは相手がモンスターの効果を発動した時、このカードのアスリートカウンターを1つ取り除き、その発動を無効にし破壊することができます」

 

「‼︎成る程、モンスター効果を牽制してきたってわけね」

 

「さらにフィールド魔法F.A.シティGPの永続効果‼︎このカードがフィールドゾーンに存在する限り、フィールドのF.A.モンスターのレベルはメインフェイズ及びバトルフェイズの間だけ2つ上がり、自分フィールドのF.A.モンスターは相手の効果の対象になりません‼︎」

 

「効果耐性まで与えられるのは厄介ね」

 

 

F.A.カーナビゲーター

☆1→3

 

 

「サーチも済みましたからドローに移りましょう。デッキの上から10枚を裏側で除外して、魔法カード、強欲で貪欲な壺‼︎自分はデッキから2枚ドローします‼︎そして、私はSR( スピードロイド)ダブルヨーヨーを召喚‼︎」

 

 

〈SRダブルヨーヨー〉☆4 機械族 風属性

ATK1400

 

 

フィールドに現れたのは機械で出来た2つのヨーヨーのモンスター。

 

「SRダブルヨーヨーの効果発動‼︎このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル3以下のスピードロイドモンスター1体を特殊召喚します‼︎戻って来てください、チューナーモンスター、SR電々大公‼︎」

 

 

〈SR電々大公〉☆3 機械族 風属性

DEF1000

 

 

ダブルヨーヨーに引きずられ、太鼓を手にした機械人形が姿を現わす。

 

チューナーモンスターが出てきたということは、次の早見の狙いは………

 

「私は、レベル4、SRダブルヨーヨーに、レベル3となっている、チューナーモンスター、F.A.カーナビゲーターをチューニング‼︎」

 

「やっぱり、シンクロ召喚ね」

 

カーナビゲーターが光の輪になり、ダブルヨーヨーが小さな星に変わり、光の道になる。

 

「光速の先駆者よ‼︎即断即決最速最短、一直線に駆け抜けろ‼︎シンクロ召喚‼︎」

 

光の道が輝くと、現れたのは稲妻の如き白銀のレーシングカー。

 

「輝く雷光、疾風の如し‼︎F.A.( フォーミュラアスリート)ライトニングマスター‼︎」

 

 

〈F.A.ライトニングマスター〉☆7→9 機械族 光属性

ATK0

 

 

「F.A.のシンクロモンスター………そいつも攻撃力は0なのね」

 

「ふふっ、ご心配なく。F.A.ライトニングマスターの永続効果、スタードライブ‼︎このカードの攻撃力はこのカードのレベル×300ポイントアップします‼︎」

 

「‼︎レベルを攻撃力に変化させるモンスターなんて珍しいわね」

 

「現在のF.A.ライトニングマスターのレベルは9‼︎よって攻撃力は2700ポイントアップします‼︎」

 

 

F.A.ライトニングマスター

ATK0→2700

 

 

「さらにF.A.シャイニングスターGTの永続効果、スターミキシドライブ‼︎このカードの攻撃力は、このカードのリンク先のF.A.モンスターのレベルの合計×300ポイントアップします‼︎現在リンク先にはF.A.ライトニングマスターがいるので攻撃力は2700ポイントアップです‼︎」

 

 

F.A.シャイニングスターGT

ATK0→2700

 

 

「一気に攻撃力2700のモンスターが2体か………だけど、これで終わりじゃないんでしょ?」

 

「勿論ですとも‼︎魔法カード、アイアンコール‼︎自分フィールドに機械族モンスターが存在する場合、自分の墓地のレベル4以下の機械族モンスター1体を対象としてその機械族モンスターを特殊召喚します‼︎ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに破壊されます。戻って来てください、SRダブルヨーヨー‼︎」

 

 

〈SRダブルヨーヨー〉☆4 機械族 風属性

ATK1400

 

 

フィールドに再び現れるダブルヨーヨー。

 

これで再び早見のフィールドにモンスターとチューナーが揃った。

 

「さあ、お見せしましょう、私の切り札を‼︎私は、風属性レベル4モンスター、SRダブルヨーヨーに、レベル3、チューナーモンスター、SR電々大公をチューニング‼︎」

 

電々大公が光の輪になり、ダブルヨーヨーが小さな星に変わり、光の道になる。

 

「神速の風竜よ‼︎誰にも知覚されぬ速さに至り、清澄なる世界に吹き荒れろ‼︎シンクロ召喚‼︎」

 

光の道が輝くと、現れたのは翠の鎧を身に纏う疾風の如き白竜。

 

「事象の地平を翔ける白竜‼︎クリアウィングファストドラゴン‼︎」

 

 

〈クリアウィングファストドラゴン〉☆7 ドラゴン族 風属性

ATK2500

 

 

「………クリアウィング?」

 

現れたファストドラゴンを見て、一瞬異世界で見た緑の翼を持つ白竜の姿が思い浮かぶ。

 

でも、あの時の白竜は確かクリアウィングシンクロドラゴンと呼ばれていた気がする。

 

遊花や私が持つヴァレルシリーズのようにクリアウィングにもカテゴリーがあるのかしら?

 

「おや?クリアウィングファストドラゴンをご存知で?」

 

「いいえ、クリアウィングファストドラゴンについては知らないわ。ただ同じクリアウィングの名を持つドラゴンを見たことがあったから少し驚いただけよ」

 

「ほほう、大変興味深い話ですが、それはデュエルが終わってから伺うとしましょう。私はスケール5のライブラの魔法秤をペンデュラムスケールにセッティング‼︎」

 

「‼︎ペンデュラムモンスター⁉︎」

 

早見の右隣に光の柱が立ち上り、その光の中に金色の天秤が浮かびあがり、下に5の数字が現れる。

 

早見の手札は残り1枚。

 

例えもう1枚の手札がペンデュラムモンスターだとしてもペンデュラム召喚はできない。

 

なら、早見の狙いはあのモンスターのペンデュラム効果ね。

 

「ライブラの魔法秤のペンデュラム効果‼︎1~6までの任意のレベルを宣言し、自分フィールドの表側表示モンスター 2体を対象としてターン終了時まで、対象のモンスター1体のレベルを宣言したレベル分だけ下げ、もう1体のモンスターのレベルを宣言したレベル分だけ上げます‼︎」

 

「レベル変動のペンデュラム効果………なかなか厄介なことをしてくるじゃない」

 

「私はクリアウィングファストドラゴンとF.A.ライトニングマスターを対象に、レベル6を選択‼︎クリアウィングファストドラゴンのレベルを6下げ、F.A.ライトニングマスターのレベルを6上げます‼︎」

 

 

クリアウィングファストドラゴン

☆7→1

 

 

F.A.ライトニングマスター

☆9→15

 

 

ライブラの天秤が傾くと、ファストドラゴンのレベルが下がり、ライトニングマスターのレベルが上がる。

 

そしてライトニングマスターのレベルが上がったということは………

 

「レベルが変動したことでF.A.ライトニングマスターの永続効果、スタードライブとF.A.シャイニングスターGTの永続効果、スターミキシドライブにより、2体の攻撃力は6レベル分………1800ポイントアップします‼︎」

 

 

F.A.ライトニングマスター

ATK2700→4500

 

 

F.A.シャイニングスターGT

ATK2700→4500

 

 

「攻撃力4500が2体………‼︎」

 

「ご安心ください。F.A.シャイニングスターGTは自身の効果によりこのカードの戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージが0になります。いくら攻撃力が上がろうと、宝月さんのライフは削れません」

 

「………それでも高攻撃力のモンスターがいることには変わりがないじゃない。どこも安心できないわよ」

 

「ふふっ、それはそうですね。さあ、ひとっ走り、突っ切らせていただきますよ‼︎バトル‼︎」

 

「なら、バトルフェイズ開始時にリバースカードオープン‼︎罠発動‼︎サラマングレイトレイジ‼︎このカードは2つの効果から1つを選択して発動できるわ。1つは手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、サラマングレイトモンスター1体を墓地へ送り、フィールドのカード1枚を対象としてそのカードを破壊する効果。そしてもう1つは自身と同名のモンスターを素材としてリンク召喚した自分フィールドのサラマングレイトリンクモンスター1体を対象としてそのモンスターのリンクマーカーの数まで、相手フィールドのカードを選んで破壊する効果よ‼︎」

 

「リンクマーカーの数相手のカードを破壊⁉︎」

 

「使用するのは勿論2つ目の効果‼︎私は転生炎獣サンライトウルフを対象に効果を発動するわ‼︎」

 

「しかも対象を取らない破壊効果………使わざるを得ませんね。その効果にチェーンしてF.A.ライトニングマスターの効果発動‼︎バニシングブレイカー‼︎1ターンに1度、相手が魔法・罠カードの効果を発動した時、このカードのレベルを2つ下げ、その発動を無効にし破壊します‼︎」

 

「‼︎魔法・罠の無効効果もあったのね」

 

 

F.A.ライトニングマスター

☆15→13

ATK4500→3900

 

 

F.A.シャイニングスターGT

ATK4500→3900

 

 

サラマングレイトレイジの効果を受け、怒りの咆哮をあげるサンライトウルフにライトニングマスターが勢いよく突撃し、その身体を跳ね飛ばし、サラマングレイトレイジの効果を打ち消す。

 

「ひき逃げとはやってくれるじゃない」

 

「人聞きの悪い………ただの体当たりじゃないですか」

 

「ただの体当たりを車がやったらひき逃げって言うのよ」

 

「ごもっとも。F.A.ライトニングマスターで転生炎獣ブレイズドラゴンを攻撃‼︎攻撃宣言時、速攻魔法、アクションマジック-フルターン‼︎このターン、モンスター同士の戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは倍になります‼︎」

 

「っ、戦闘ダメージが倍になるカードを使ってるのに守備表示の転生炎獣ブレイズドラゴンを狙ってきたってことは………」

 

「F.A.ライトニングマスターの永続効果、ライトニングアタッカー‼︎このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与えます‼︎」

 

「っ、やっぱり貫通効果‼︎迎え撃ちなさい、転生炎獣ブレイズドラゴン‼︎熱誠のアオスブルフ‼︎」

 

「貫け、F.A.ライトニングマスター‼︎雷轟のシャイニングドライブ‼︎」

 

ブレイズドラゴンが炎を纏い、ライトニングマスターに突撃するが、ライトニングマスターはその突撃をドリフトで躱すと車体を高速で回転させながら背後から跳ね飛ばす。

 

空中に跳ね飛ばしたブレイズドラゴンにライトニングマスターは回転する速度を増しながら公道の傍にある斜面を利用して空高く飛び上がると、跳ね飛ばされて硬直しているブレイズドラゴンのに突撃し、その身体を貫いた。

 

 

桜 LP8000→2600

 

 

「くっ、やってくれるわね‼︎だけど、転生炎獣ブレイズドラゴンの永続効果、グルートベッセルング‼︎このカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードのオーバーレイユニットを1つ取り除くことができるわ‼︎」

 

「戦闘破壊耐性がありましたか」

 

オーバーレイユニットがブレイズドラゴンに吸収されると、ブレイズドラゴンの身体が燃え上がり、貫かれていた身体が修復される。

 

「そして転生炎獣ガゼルの効果発動‼︎1ターンに1度転生炎獣ガゼル以外のサラマングレイトモンスターが自分の墓地に送られた場合、このカードを手札から特殊召喚するわ‼︎」

 

「墓地を肥やされたら何が起こるか分かりませんからね。止めさせていただきます‼︎F.A.シャイニングスターGTの効果発動‼︎チェイスブレイク‼︎相手がモンスターの効果を発動した時、このカードのアスリートカウンターを1つ取り除き、その発動を無効にし破壊します‼︎」

 

 

F.A.シャイニングスターGT

アスリートカウンター1→0

 

 

フィールドに現れようとしたガゼルをシャイニングスターGTが跳ね飛ばして消滅させる。

 

「動物まで跳ね飛ばすなんてどれだけ余罪を増やすのよ」

 

「これで最後にするつもりですよ。クリアウィングファストドラゴンで転生炎獣サンライトウルフを攻撃‼︎」

 

ファストドラゴンが咆哮をあげ、自身の身体 に暴風を纏いはじめる。

 

アクションマジック-フルターンの効果で戦闘ダメージが倍になってるとはいえファストドラゴンの攻撃力ではサンライトウルフを倒しても私のライフが削りきられることはない。

 

それでも早見はこれで最後にすると言った。

 

そして暴風を纏ったファストドラゴンから確かに感じる嫌な予感。

 

「なら、私は手札の転生炎獣( サラマングレイト)ラクーンを墓地へ送り効果発動‼︎」

 

「‼︎まだ手札誘発のモンスターが残っていましたか………」

 

「自分のサラマングレイトモンスターが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを手札から墓地へ送り、その戦闘を行うモンスター2体を対象として対象の相手モンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復し、このターン、対象の自分のモンスターは戦闘では破壊されない‼︎」

 

「っ、戦闘破壊耐性にライフポイントの回復⁉︎」

 

「早見のクリアウィングファストドラゴンの攻撃力は2500‼︎よって、私は2500ポイントのライフを回復するわ‼︎」

 

炎の尻尾を持つアライグマが尻尾の炎を燃やし、炎の防壁を築き上げて私とサンライトウルフを守るように包み込む。

 

 

桜 LP2600→5100

 

 

「ライフポイントを回復されてしまうのは流石に想定外でした………ですが、私の成すべきことは変わりません‼︎ダメージステップ、クリアウィングファストドラゴンの効果発動‼︎ゼロマキシマムオーバードライブ‼︎EXデッキから特殊召喚された相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象としてターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は0になり、効果は無効化されます‼︎そしてこの効果は相手ターンでも発動できます‼︎」

 

「っ⁉︎攻撃力と効果を打ち消す効果‼︎だからこのターンで最後って言ったのね」

 

 

転生炎獣サンライトウルフ

ATK1800→0

 

 

暴風を纏ったファストドラゴンがサンライトウルフに向かって風のブレスを放つと、サンライトウルフが空高く舞い上げられる。

 

空中で身動きが取れないサンライトウルフに向かって、ファストドラゴンは勢いよく翔び立ち、一瞬でサンライトウルフの正面に現れる。

 

「突き抜けろ、クリアウィングファストドラゴン‼︎瞬殺のラピッドゲイル‼︎」

 

姿を現したファストドラゴンはその身に纏った暴風でサンライトウルフを斬り刻みながら勢いよく突撃し、サンライトウルフに風穴を開けた。

 

 

桜 LP5100→100

 

 

「っ………ギリギリだったけど、首の皮一枚、繋がったわね」

 

「仕損じてしまいましたか………ですが、今の宝月さんはまさに風前の灯火‼︎そのまま吹き消してみせましょう‼︎F.A.シャイニングスターGTで転生炎獣ブレイズドラゴンを攻撃‼︎撲滅のチェイスエンド‼︎」

 

「転生炎獣ブレイズドラゴンの永続効果、グルートベッセルング‼︎このカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードのオーバーレイユニットを1つ取り除く‼︎」

 

シャイニングスターが加速し、光を纏いながらブレイズドラゴンに突撃し、その身体を貫く。

 

すると再びオーバーレイユニットがブレイズドラゴンに吸収され、ブレイズドラゴンの身体が燃え上がり、貫かれていた身体が修復される。

 

「これで転生炎獣ブレイズドラゴンのオーバーレイユニットも無くなりました。エクシーズモンスターはオーバーレイユニットを使用して強力な効果を発動する。そのオーバーレイユニットが無くなってしまえば怖くありません‼︎私はこのままターンエンーーー」

 

「ふふっ」

 

「っ、何がおかしいんですか?」

 

自信満々の表情でターンエンドを宣言しようとする早見に私は思わず笑みを漏らしてしまう。

 

そんな私を見て、早見は警戒するような視線を私に向ける。

 

確かに、私のライフは残り僅か。

 

早見の言う風前の灯火という表現は何も間違っていない。

 

だけど、間違っていることもある。

 

「確かに早見の言う通り、私のライフは風前の灯火。灯火が風に煽られ消えてしまうこともあるわ。でもね、風を受けた灯火がさらに大きく燃え上がることがあるということも知りなさい‼︎バトルフェイズの終了前、オーバーレイユニットが無くなったことで転生炎獣ブレイズドラゴンの効果発動‼︎アオフローダーンゼーレ‼︎」

 

「っ⁉︎オーバーレイユニットが無くなったことで効果を発動するエクシーズモンスター⁉︎」

 

「このカードにオーバーレイユニットが無い場合、自分・相手のバトルフェイズに発動できる‼︎サラマングレイトエクシーズモンスター1体を、自分フィールドのこのカードの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する‼︎私は転生炎獣ブレイズドラゴン1体でオーバーレイ‼︎1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築‼︎転生エクシーズ召喚‼︎」

 

「転生エクシーズ召喚⁉︎」

 

ブレイズドラゴンが光となり、空に浮かんだ混沌の渦に吸い込まれる。

 

そして渦が爆けると空から舞い降りるのは青き炎の翼を持つ機龍。

 

「生まれ変われ、現世に燃えゆく炎龍‼︎転生炎獣ブレイズドラゴン‼︎」

 

 

〈転生炎獣ブレイズドラゴン〉★4 サイバース族 炎属性

ATK2300

 

 

「再び転生炎獣ブレイズドラゴンが………ですが、そのモンスターは………」

 

「お生憎様。生まれ変わった転生炎獣ブレイズドラゴンは一味違うわ‼︎転生炎獣ブレイズドラゴンの効果発動‼︎ニーダーブレンネン‼︎このカードが同名カードを素材としてエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊する‼︎」

 

「同名カードをオーバーレイユニットとすることで更なる効果を得るエクシーズモンスター⁉︎」

 

「対象はクリアウィングファストドラゴン‼︎派手にかまして来なさい、転生炎獣ブレイズドラゴン‼︎」

 

ブレイズドラゴンが青い炎を纏いながら、ファストドラゴンに青い炎のブレスを放つ。

 

ファストドラゴンは風のブレスを放ち相殺しようとしたが、風のブレスを受けた青い炎のブレスは勢いよく燃え上がり、一瞬でファストドラゴンまで到達するとその身体を燃やし尽くした。

 

「くっ………すみません、クリアウィングファストドラゴンの効果発動‼︎モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合、このカードを自分のペンデュラムゾーンに置きます‼︎」

 

「‼︎ペンデュラムカードのシンクロモンスター⁉︎」

 

破壊されたファストドラゴンが粒子に変わると、早見の左隣に光の柱が立ち上り、その光の中に粒子が集まっていき再びファストドラゴンの姿をなすと、下に4の数字が現れた。

 

どうやらファストドラゴンは想像以上に凄いカードだったみたいね。

 

「クリアウィングファストドラゴンはやられてしまいましたが、まだデュエルは圧倒的に私の方が有利‼︎このまま逃げ切ってみせます‼︎私はこのままターンエンド‼︎エンドフェイズ、ライブラの魔法秤とF.A.シティGPの効果が一時的に切れ、F.A.ライトニングマスターのレベルが下がります‼︎」

 

「それと同時にクリアウィングファストドラゴンの効果を受けていた転生炎獣サンライトウルフの攻撃力と効果も元に戻る‼︎」

 

 

F.A.ライトニングマスター

☆13→7→5

ATK3900→2100→1500

 

 

F.A.シャイニングスターGT

ATK3900→1500

 

 

転生炎獣サンライトウルフ

ATK0→1800

 

 

桜 LP100 手札1

 

ーーー▲ー ▽

ーーー○ー

☆ ☆

○ーーーー

△ーーー△ ▽

 

文愛 LP8000 手札0

 

 

私のライフは残り僅か。

 

早見のフィールドにライトニングマスターがいることから防御を固める選択肢はない。

 

だからこそ、このターンで決める‼︎

 

「私のターン、ドロー‼︎」

 

「メインフェイズ‼︎フィールド魔法F.A.シティGPの永続効果が適用され、フィールドのF.A.モンスターのレベルが2つ上がります‼︎」

 

 

F.A.ライトニングマスター

☆5→7

ATK1500→2100

 

 

F.A.シャイニングスターGT

ATK1500→2100

 

 

「構うもんですか‼︎私は転生炎獣サンライトウルフの効果発動‼︎墓地に存在するサラマングレイトレイジを手札に加えるわ‼︎」

 

「っ、また厄介なカードが手札に………」

 

「そして、繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎」

 

「くっ、またリンク召喚」

 

私が前に再び巨大なサーキットが現れる。

 

「召喚条件は炎属性の効果モンスター2体以上‼︎私は転生炎獣ブレイズドラゴンと転生炎獣サンライトウルフを2体分として扱ってリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」

 

サーキットの中にブレイズドラゴンとサンライトウルフが2体に分身して吸い込まれると、フィールドにあった火山が噴火し、マグマが溢れ都市の公道を呑み込み始める。

 

そして火山の噴火に合わせるように、サーキットの中からマグマを喰らいながら現れたのは炎の身体を持つ灼熱の獅子。

 

「古より伝わる灼熱の獅子‼︎リンク召喚‼︎リンク3‼︎転生炎獣( サラマングレイト)ヒートライオ‼︎」

 

 

〈転生炎獣ヒートライオ〉LINK3 サイバース族 炎属性

ATK2300 ↙︎↑↘︎

 

 

「リンク3の転生炎獣モンスター………‼︎」

 

「さあ、食事の時間よ、転生炎獣ヒートライオの効果発動‼︎イグズィスタンスイーター‼︎このカードがリンク召喚に成功した場合、相手の魔法・罠ゾーンのカード1枚を対象に、そのカードを持ち主のデッキに戻す‼︎私は早見のペンデュラムゾーンにあるライブラの魔法秤をデッキに戻すわ‼︎」

 

ヒートライオが咆哮を上げると、炎で出来た魔法陣が現れ、光の柱の中にいるライブラを吸収する。

 

ライブラを飲み込んだヒートライオは満足そうに両手を合わせる。

 

「くっ………ライブラの魔法秤が‼︎」

 

「まだ終わらないわ‼︎フィールド魔法、転生炎獣の聖域の効果発動‼︎1ターンに1度、このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分がサラマングレイトリンクモンスターをリンク召喚する場合、自分フィールドの同名のサラマングレイトリンクモンスター1体のみを素材としてリンク召喚できる‼︎」

 

「っ、ここで再び転生リンク召喚ですか‼︎」

 

「繋がって‼︎希望に導くサーキット‼︎私は転生炎獣ヒートライオをリンクマーカーにセット‼︎サーキットコンバイン‼︎」

 

ヒートライオの頭上にサーキットが、足元に炎で出来た魔法陣が現れ、交差するようにヒートライオの身体を通過する。

 

サーキットと魔法陣が通過すると、ヒートライオの身体からさらに大きな炎が噴き出した。

 

「生まれ変われ、古より伝わる灼熱の獅子‼︎転生リンク召喚‼︎リンク3‼︎転生炎獣ヒートライオ‼︎」

 

 

〈転生炎獣ヒートライオ〉LINK3 サイバース族 炎属性

ATK2300 ↙︎↑↘︎

 

 

「さあ、もう1度食事の時間よ‼︎転生炎獣ヒートライオの効果発動‼︎イグズィスタンスイーター‼︎今度は私はクリアウィングファストドラゴンをデッキに戻させて貰うわ‼︎」

 

「くっ………」

 

再誕したヒートライオが咆哮を上げ、炎で出来た魔法陣を生み出して光の柱の中にいるファストドラゴンを吸収し、満足そうに両手を合わせる。

 

「さあ、どんどん行くわよ‼︎リバースカードオープン‼︎速攻魔法、転生炎獣の炎陣‼︎私はデッキからサラマングレイトモンスター1体を手札に加える効果を選択するわ‼︎」

 

「これ以上展開される可能性を与えるわけにはいきません‼︎その効果にチェーンしてF.A.ライトニングマスターの効果発動‼︎バニシングブレイカー‼︎このカードのレベルを2つ下げ、その発動を無効にし破壊します‼︎」

 

 

F.A.ライトニングマスター

☆7→5

ATK2100→1500

 

 

F.A.シャイニングスターGT

ATK2100→1500

 

 

加速するライトニングマスターの生み出す風圧が転生炎獣の炎陣を吹き飛ばし無効化する。

 

だけど、それは狙い通りだ。

 

「これで無効化される心配も無くなったわ‼︎速攻魔法、バウンドリンク‼︎同名カードは1ターンに1枚しか発動できず、自分のフィールド・墓地のリンクモンスター1体を対象としてそのモンスターを持ち主のEXデッキに戻して、そのリンクマーカーの数だけ自分はデッキからドローし、その後、ドローした数だけ手札を選んで好きな順番でデッキの下に戻す‼︎私は墓地に存在する転生炎獣ヒートライオをEXデッキに戻し、3枚のカードをドローし、手札から3枚のカードをデッキの下に戻すわ‼︎さらに魔法カード、貪欲な壺‼︎」

 

「っ、ここにきてさらにドローカードを引いてきましたか‼︎」

 

「墓地に存在する転生炎獣ブレイズドラゴンと転生炎獣サンライトウルフ2体ずつをEXデッキに、転生炎獣ガゼルをデッキに戻してシャッフルし、カードを2枚ドローする‼︎」

 

『あらあら、随分追い詰められているじゃない、桜』

 

「っ、この声………遅いのよ、アンタは」

 

『何?私のこと待ってたの?それは相棒冥利に尽きるわね』

 

私の耳に聞き覚えがある女の子の声が届き、ドローしたカードに目をやると、私の相棒ーーー妖精伝姫-カグヤが楽しそうに笑っていた。

 

「全く………遅れた分、しっかりと働いて貰うわよ」

 

『はーい、了解よー』

 

「さてと、早見」

 

「なんですか?」

 

「私の代名詞と呼ばれるモンスターを出すまで時間をかけないって言ってたけど、残念ながら時間切れよ‼︎魔法カード、妨げられた壊獣の眠り‼︎このカードの発動時、フィールドのモンスターを全て破壊するわ‼︎」

 

「っ‼︎ここで怪獣の全体破壊魔法⁉︎ですが、それでは宝月さんの転生炎獣も破壊されて………」

 

「心配無用よ。この瞬間、墓地に存在する転生炎獣ペイルリンクスの効果‼︎自分フィールドのサラマングレイトカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる‼︎私はこの効果で転生炎獣ヒートライオを破壊から守るわ」

 

フィールドが揺れ、ライトニングマスターとシャイニングスターが地割れに呑み込まれて消滅する。

 

その代わりに早見のフィールドには巨大な地竜が、私のフィールドには私の切り札である三つ首の竜が現れる。

 

「その後、デッキからカード名が異なる壊獣モンスターを自分・相手のフィールドに1体ずつ攻撃表示で特殊召喚するわ‼︎この効果で特殊召喚したモンスターは表示形式を変更できず、攻撃可能な場合は攻撃しなければならないけどね。私は早見のフィールドに怒炎壊獣ドゴラン、そして私のフィールドには私の切り札を呼び出すわ‼︎あなたの全てを壊してあげる‼︎雷撃壊獣サンダーザキング‼︎」

 

 

〈怒炎壊獣ドゴラン〉☆8 恐竜族 炎属性

ATK3000

 

 

〈雷撃壊獣サンダーザキング〉☆9 雷族 光属性

ATK3300

 

 

「そして、行くわよ、相棒‼︎月より来たる永遠の姫‼︎妖精伝姫( フェアリーテイル)-カグヤを召喚‼︎」

 

 

〈妖精伝姫-カグヤ〉☆4 魔法使い族 光属性

ATK1850

 

 

現れたのは月のマークが入っている扇子を持ったお姫様。

 

『私、参上‼︎』

 

カグヤはそういうと楽しそうに自分を指差しながら扇子を掲げる。

 

「………気に入ったの、それ?」

 

『ふふん、勇ましくて素敵でしょ?』

 

「………ああ、そう」

 

『もう、つれないわねー桜はもう少しユーモアセンスを鍛えるべきだわ』

 

「はいはい、善処するわ。妖精伝姫-カグヤの効果発動!召喚に成功した時、デッキから攻撃力1850の魔法使い族モンスター1体を手札に加える‼︎私は2体目の妖精伝姫-カグヤを手札に加えるわ‼︎そして妖精伝姫-カグヤの効果発動‼︎アンリーゾナブルディマンド‼︎1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動‼︎相手はそのモンスターの同名カード1枚を自身のデッキ・EXデッキから墓地へ送ってこの効果を無効にできる。墓地へ送らなかった場合、このカードと対象のモンスターを持ち主の手札に戻す‼︎この効果は相手ターンでも発動できるわ‼︎対象は勿論、怒炎壊獣ドゴランよ‼︎」

 

「っ、私のデッキに怒炎壊獣ドゴランなんて入ってるわけがありません………」

 

「なら怒炎壊獣ドゴランは返して貰うわ‼︎」

 

『それじゃあドゴラン、久しぶりに力比べといきましょ。私の強さは泣けるわよ?』

 

早見がそう宣言するとカグヤが腕をぶんぶんと振り回しながらドゴランに向かって歩いていく。

 

向かってくるカグヤを見てドゴランは慌てて逃げようとしたが、尻尾を掴まれ動きを止められると、カグヤにジャイアントスイングの要領で振り回されながら私の方に向かって放り投げられ、カードとして手札に戻っていった。

 

「………可愛そうだから放り投げるのは止めてあげなさいよ。というか、どんな筋力してるのよ、アンタ」

 

『あら、姫に対して失礼ね。私は精霊よ?これは筋力じゃなくて霊力で干渉してるだけよ』

 

「それはドゴランも同じなんじゃないの?攻撃力的にはドゴランの方が上だし」

 

『………そこは多少筋力で補ってるのよ』

 

「………やっぱりほぼ筋力なんじゃ………」

 

『あー疲れたわー私も手札に戻って休むわねー』

 

カグヤはジト目を浮かべる私から目を逸らしながら私の手札に戻っていった。

 

………まあいいわ、追求しても得するわけじゃないし。

 

「宝月さん?何やら独り言を呟かれていたようですが、どうかしましたか?」

 

「………何でもないわ。さあ、決めるわよ‼︎墓地に存在する転生炎獣Jジャガーの効果発動‼︎墓地の転生炎獣フォウルをデッキに戻して転生炎獣Jジャガーを特殊召喚‼︎」

 

 

〈転生炎獣Jジャガー〉☆4 サイバース族 炎属性

ATK1800

 

 

ヒートライオの傍にJジャガーが再び姿を現わす。

 

「バトル‼︎転生炎獣Jジャガーでダイレクトアタック‼︎グレートフレイムクロー‼︎」

 

「くっ‼︎」

 

 

文愛 LP8000→6200

 

 

Jジャガーが勢いよく飛び出し、炎を纏った鉤爪で早見を切り裂く。

 

「続けて、転生炎獣ヒートライオでダイレクトアタック‼︎ヒートストライク‼︎」

 

「っ、まだまだ平気です‼︎」

 

 

文愛 LP6200→3900

 

 

ヒートライオが炎を集めて弾丸を作り、早見に向けて撃ち込む。

 

「まだよ‼︎雷撃壊獣サンダーザキングでダイレクトアタック‼︎グラビティレイ‼︎」

 

炎の弾丸に呑み込まれた早見にサンダーザキングの三つ首からレーザーを放ち、その身体を貫いた。

 

 

文愛 LP3900→600

 

 

「くうっ………何とか耐えきりましたか。手札はありませんが、何とか次のターンに逆転してーーー」

 

「いいえ、残念ながら次はないわ‼︎速攻魔法、ライバルアライバル‼︎自分・相手のバトルフェイズにモンスター1体を召喚する‼︎」

 

「っ⁉︎この状況でさらなる召喚を………これが、デュエルアカデミア高等部学年4位『壊獣姫』の実力‼︎」

 

「決めるわよ、相棒‼︎妖精伝姫-カグヤを召喚‼︎」

 

『ようやくクライマックスね‼︎最後は私に任せなさい‼︎』

 

 

〈妖精伝姫-カグヤ〉☆4 魔法使い族 光属性

ATK1850

 

 

「妖精伝姫-カグヤでダイレクトアタック‼︎タツノクビノタマ‼︎」

 

『私の必殺技、パート1‼︎』

 

カグヤは着物の中から綺麗な玉を取り出し、綺麗な投球フォームで早見に向かって投げつけた。

 

「うああっ‼︎」

 

 

早見 LP600→0

 

 

『綺麗に決まったわね』

 

「それも毎回言う気なのね」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「私の勝ちね」

 

「宝月さんを貫くだけの速さが足りませんでしたか………とはいえ、取材にご協力ありがとうございました‼︎『壊獣姫』の新戦術、これは特ダネとしてばっちりです」

 

「………立ち直るのも早いわね」

 

「ええ、それが私の取り柄ですから」

 

そういって、デュエルを終えた桜ちゃんと早見さんが笑い合う。

 

凄いデュエルだった。

 

後攻1ターンキルを狙おうとした早見さんも、それを受け切って逆転した桜ちゃんも………自分の思いをカードに乗せて、お互いに真っ向からぶつかり合っていた。

 

そして、2人のデュエルを見て自分の至っていない点に気づいた。

 

今朝の師匠とのいざこざで、私は自分の気持ちを素直に師匠に伝えられていなかった。

 

師匠が心配だから、師匠のお手伝いがしたいということを。

 

紅葉さん達が心配なのは本当だ。

 

だけど、その紅葉さん達を言い訳のように理由に使い、私がこの事件に深く関わろうとするのは違う。

 

きっと、師匠は私が師匠の負担を少しでも減らそうとしていることに気づいていると思う。

 

だけど、察してくれていることを理由に、それを伝えずにいるのはフェアじゃない。

 

本当に師匠が心配なら、本当に師匠のお手伝いがしたいのなら、自分の気持ちを言葉にして真っ直ぐに伝えるべきだったんだ。

 

「さて、それでは約束の報酬です。私が掴んでいる行方不明事件の情報をお伝えしましょう」

 

私が自分の至らなかった部分を後悔していると、早見さんが早速行方不明事件の情報を話そうする。

 

そんな早見さんに桜ちゃんはチラリと私を見て口を開く。

 

「あー早見。それ、風紀委員会の教室で話して貰っていいかしら?ほら、わざわざ風紀委員会で同じ話をしてその情報が正しいか確認に来られたら時間の無駄でしょ?」

 

「それは………ああ、そういうことですか。確かに、それは時間の無駄かも知れません。では、直接風紀委員会でお話するとしましょう。なので、宝月さん達は他のことをなさっていても構いませんよ。私から風紀委員会にはお話しておきますので」

 

「ありがとう。だけど、私も行くわ。アンタの取材もちゃんと受けないといけないし。でも、もし他に何か用があるんだったら、みんなは帰ってもいいわよ?私から風紀委員会には伝えておくから」

 

そういって、桜ちゃんがわざとらしく私達を見る。

 

そんな桜ちゃんを見て、皆が柔らかい笑顔を浮かべた。

 

「私も行く。霊兎に会いたいから」

 

「アンタは直球ね、御子神」

 

「俺も遊花達みたいに臨時風紀委員って奴に入れて貰わないといけないから行くぜ」

 

「それじゃあ私も‼︎それが終わったら大地君に調査に付き合って貰いたいし‼︎」

 

「結局みんな行くのね。別にいいのよ、これだけいれば1人ぐらい自分の用事を片付けに行っても」

 

そういうと、桜ちゃんは私に向かってウィンクをする。

 

………ああ、そういうことなんだ。

 

やっぱり、優しいな、桜ちゃんは。

 

「あ、あの‼︎私行きたいところがあって………報告、任せてもいい?」

 

「ふふっ、任せなさい。もう少ししたら暗くなってくるから、行きたい場所があるなら真っ直ぐに行くのよ?」

 

「うん………桜ちゃん」

 

「ん?」

 

みんなに柔らかい笑顔で見つめらる中、私は教室の扉に手をかけながら桜ちゃんを呼ぶ。

 

この胸の思いを言葉にして、真っ直ぐに、伝える。

 

「………いつも私の傍にいてくれてありがとう。いってきます」

 

「………ん、どういたしまして。いってらっしゃい」

 

そんな桜ちゃんの言葉を背に私は扉を開けて校内を走り出す。

 

向かう先は初めて師匠と出会ったあの公園。

 

何だか師匠はそこにいる気がする。

 

師匠に会ったらまずは今朝のことを謝らないと。

 

そして、今度こそちゃんと言うんだ。

 

師匠が怪我をしないか心配なんです、だから私にお手伝いさせてくださいって。

 

許してくれないかもしれない。

 

それでもちゃんと、自分の思いを師匠にぶつけて、私と師匠がお互いに求める答えを探すんだ。

 

そんなことを考えながら、校内から出ると、私の携帯端末が着信を告げた。

 

私が携帯端末に目をやると、そこに映るのは師匠の名前だった。

 

「………すー………はー………よし」

 

私は大きく深呼吸をすると、気合いを入れて着信を取る。

 

「もしもし、あの、師匠、ですか?その、今朝はーーー」

 

『………はぁ………はぁ』

 

「師、匠?」

 

携帯端末からノイズ混じりに師匠の息遣いが聞こえてくる。

 

だけど、その息遣いも少し遠くにあるようで偶然携帯端末の通話機能が作動してしまったかのようだった。

 

「あの、師匠ーーー」

 

『無様なものだな。地面を這うことしかできないのにまだ抗うというのか』

 

「っ⁉︎」

 

携帯端末越しに、師匠の声ではない、どこか聞き覚えのある声が聞こえる。

 

『うる………せぇ、よ』

 

『強がりもここまでくると滑稽だよ。さあ、終わりの時だ』

 

「師匠………師匠⁉︎」

 

師匠の苦しそうな息遣いと共にそんな声が携帯端末越しに聞こえ、私の心臓は早鐘を打つように早くなる。

 

今、私は何を聞いているのだろう?

 

信じたくない………それでも、残酷な現実は………その言霊を響かせる。

 

『真実と共に………闇に消え去れ、結束 遊騎』

 

そんな言葉が携帯端末越しに聞こえてきたかと思うと、どこからか大きな爆発音が聞こえてくる。

 

私が慌てて辺りを見回すと、ある一箇所から爆煙が上がっていた。

 

そこは初めて師匠と出会ったあの公園。

 

「っ‼︎師匠ー‼︎」

 

私は全速力で公園に向かって走り出す。

 

朝から立ち込めていた暗雲から、大粒の雨が降りはじめていた。

 




次回予告

遊花とすれ違ってしまった遊騎は、『Natural』を訪れ、島にある頼み事をする。
頼み事を終えた遊騎は空閑から得た情報を元に情報収集を続け、とある筋から重要な情報を手に入れる。
その情報を遊花達に伝えるために、デュエルアカデミアに向かう遊騎の前に、再びヘイムダルが姿を現わす。
現れたヘイムダルは遊騎にある取引を持ちかけ………

次回 遊戯王Trumpfkarte
『闇に沈む希望』

次回は遊騎のデュエル回。
今回の話と同じ時間軸の遊騎sidoのお話。
遊騎視点でお送りする予定です。
そして漂う不穏な気配………
次回をお楽しみに。

そして今回は久しぶりの桜のデュエル回でした。
新規のブレイズドラゴンを使いながらもいつも通りのカグヤフィニッシュでしたね。
そんな桜の対戦相手は新聞部の部長、早見 文愛。
デッキはSRFA。
FAはデザインが某クラッシュする歯車を思い出すので結構好きです。
そういえばあの作品も風をつかめって言ってた気がする、輝く剣の破砕者で………ストームアクセスかな?
最初はBFかB・Fにしようか悩んでいたのは内緒。
そしてそして、今回、現在コラボ中のyunnnさんの作品、「遊戸 里香の表裏生活」でのケルンから式見 蛍さんを許可を取り出させていただきました。
元々二章では新聞部が関わってくるようにしてたのですが、コラボ先の方で新聞部のキャラとして登場したので、今回のお話に関わって貰いました。
正直、yunnnさんの作品通りのキャラで描けていたか凄く心配です。
改めてコラボを描いてる人って凄いなって思いました。

それじゃあ今回はここまで。
今日はエクストラパック2019の発売日でしたね。
北欧神話好きな私はワルキューレが組みたいととりあえず3箱買ったのですが………ドリット、ヴリュンヒルデが1、女神の悪戯、Walkuren Rittが0………ガッデム‼︎
そのくせ、ビッグフット、ジャッカローブ、ツチノコ、ネッシーが2にチュパカブラ、激動の未界域が出る始末………未界域を組めということですかそうですか。
滅茶苦茶規制くらいそうなインチキ効果テーマなのに………とりあえず暗黒界と組み合わせて遊びますね。
そしてこなかったクロノダイバーとついでとばかりに出てきた神峰之天津龗………君達は泣いていい。
いや、神峰之天津龗は使えても困るけど。
といったところで今回はここでお開き。
ではでは〜
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