遊戯王Trumpfkarte   作:ブレイドJ

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お待たせ致しました。
今回は会話回です。
遊花視点と第3者視点でお送りします。
前回以上の超展開です。
それでは本編へGO‼︎





第77話 希望の存在意義

 

 

○ 

 

 

「ふむ………こうなったか」

 

薄暗い部屋の中、様々な機械に接続されている1枚のカードを見て、幻騎は興味深そうな声で呟く。

 

そんな幻騎に話しかける声があった。

 

「へぇーまた新しいカードが出来たんだーそれにしてはテンションが低いねー」

 

「っ⁉︎………君か。相変わらず、神出鬼没だな、正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)

 

「お生憎様。これは私の体質みたいなものだし、私にはどうすることもできないんだよねー実際凄いと思うよ、幻騎は。私の記憶が残ってないのに( ・・・・・・・・・・・・)状況証拠から私が何をしているのか認識してるんだからさー」

 

正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)と呼ばれた少女はそういってケラケラと笑う。

 

そんな少女に幻騎はつまらなそうに鼻を鳴らす。

 

「フン………君が関われば記憶が不自然に消える。後はそれまでに私が行っていた行動と、失った記憶の間に何が変わったかが分かれば、私自身がするであろう行動が予測できるだけだ。そして突然私の研究室に出現するような埒外な存在は君しかあり得ないと、確信しているからね」

 

「………あはは‼︎流石は天才‼︎あったまいいー‼︎」

 

そういって、少女はパチパチと拍手をする。

 

しかし、すぐに拍手を止めると感情がこもっていない透き通った声で幻騎に尋ねる。

 

「だけどさーちょーっと気に入らないこともあるんだよねー………何でお兄さんを手にかけたの?」

 

「お兄さん?………ああ、結束 遊騎のことか。奴は私の秘密を嗅ぎ回っていた。不穏分子は早めに消しておく。当然のことだろう?」

 

そういって幻騎はなんてことの無いようにそう告げる。

 

そんな幻騎に少女は不服そうな表情を浮かべる。

 

「お兄さんとは再戦する予定だったんだけど?私と楽しいゲームができるプレイヤーは貴重なんだよ?」

 

「そんなこと、私が知ったことではない。私の邪魔をするものは誰であろうと許さない」

 

「………………そ。じゃあこの話はおしまい。それで、結局何を作ったの?」

 

少女は一瞬不機嫌そうな表情を浮かべながらも、すぐに感情のこもっていない笑顔を浮かべる。

 

そんな少女に、幻騎は楽しげな笑みを浮かべた。

 

「希望皇ホープのレプリカさ」

 

「レプリカ?それってお兄さんに渡したのと同じ?」

 

「そうさ。ただし、実験として結束 遊騎に渡したものよりもさらに呪いを詰め込んだものだ。結果、人が耐えられるものでは無くなってしまったがね。呪いを凝縮させたため触れる程度なら影響は受けないだろうが、デュエルディスクにセットしようものなら凝縮された呪いが一気に解放され、それだけで死に至るだろう」

 

「また物騒なものを作ったねーだけど、それって本当に希望皇ホープなの?」

 

そういって少女が機械にセットされていたカードを手に取り、不思議そうな表情を浮かべる。

 

「だって、このカード。イラストも効果も、名前すら無いよー?」

 

そういって少女が幻騎に見せたカードは闇に染まりきっており、イラストは愚か効果や名前の部分すら漆黒に塗りつぶされていた。

 

「言っただろう、実験だと。希望皇ホープをベースにどれだけの呪いを詰め込めるか試していたのさ。結果として、限界を超えた呪いにより希望皇ホープの存在も塗りつぶしてしまったようだがね」

 

不思議そうに首を傾げる少女に、幻騎はそう説明しながら楽しそうな笑みを浮かべる。

 

「だが、これでカードが許容できる呪いの範囲も明確にすることができた。これで呪いの量を調節し、より強力な闇のカードを生み出すことができる」

 

「ふーん、それで?このカードはどうするのー?」

 

「残念だが、廃棄する他ないな。罠にするとしても、それだけ怪しげなカードを使用する馬鹿はいないだろう。何、実験の過程で不完全なものが生まれてしまうなど世の常だ。大したことではあるまい」

 

「廃棄ねー………それじゃあさ、これ、私が貰ってもいい?」

 

そういって、少女が手に持ったカードをひらひらと振る。

 

そんな少女に幻騎は興味は失ったかのように視線を逸らした。

 

「どの道そのカードは誰にも使用することはできない。君の好きにしたまえ」

 

「そ。じゃあありがたくいただいてくねー」

 

そういって少女は新しい玩具を手に入れた子供のような笑顔を浮かべながらそのカードをポケットにしまう。

 

「それじゃあ、私はまたプレイヤー探しにでもいってくるねー」

 

「好きにしたまえ。私は栗原 遊花を始末しなければならない。記憶に残らないであろう君の行動に関与するつもりはない」

 

「………そっか。じゃあ好きにさせて貰うねー………私の好きに、ね」

 

そういって、少女は研究室から姿を消す。

 

それを確認することもなく、幻騎は自身のデッキを取り出して怪しげな笑みを浮かべるのだった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

規則的な機械音が聞こえる病室で、私はベッドの側にある椅子に腰をかけていた。

 

「………………師匠」

 

私の呼び声に、返ってくる声はない。

 

当たり前だ。

 

その師匠は今も意識を取り戻さず、機械に繋がれたままベッドの上で眠っているのだから。

 

師匠が天神先生に襲われたあの日から一夜が明けた。

 

師匠が倒れ、放心状態になっていた私は気付けば病院の手術室の前にある椅子に座っていた。

 

どうやら私を見つけた桜ちゃん達が病院に連絡して師匠と放心状態だった私を病院に連れてきてくれたらしい。

 

デュエルセキュリティの人達も私に事情聴取に来ていたみたいだけど、正直何を話したかなんて全く覚えてない。

 

結局桜ちゃんがフォローを入れてくれて、師匠は通り魔に襲われたということになったようだ。

 

それ自体はある意味で全く間違えてはいないけど、きっと本当のことを話しても信じてくれないと思う。

 

モンスターが実体化して師匠を攻撃したなんて、師匠が倒れたショックでおかしくなったと思われるだけだ。

 

「………遊花」

 

「っ‼︎………闇先パイ………」

 

気付いたら、私の背後に闇先パイが立っていた。

 

闇先パイの表情はいつも通りの無表情。

 

でも、どこか悲しげに見えた。

 

「ずっとここにいたんだね。講義、始まってるよ?」

 

「ごめんなさい………でも、今は………」

 

「ん、意地悪なこと言った。大丈夫、桜がデュエルアカデミアで先生達に伝えておくって言ってた。遊騎や遊花が心配だから、それだけ伝えたら早退してくるって」

 

「桜ちゃんが………」

 

「遊花は真面目すぎる。前にも言ったように、サボって何かを見つめ直すことが出来るのは学生の特権。だから、休みたい時は休めばいい。それがまた、新しい一歩を踏み出すきっかけにもなる」

 

「………はい」

 

それは、初めて師匠が入院した時に闇先パイに言われた言葉。

 

あの時は、師匠は意識もあったし、怪我も命に関わるものではなかった。

 

だけど、今度は………

 

表情を暗くする私に、闇先パイは少し明るい調子で口にする。

 

「それに、かく言う私もおサボり中。遊花を悪くいえない」

 

「………えっ?」

 

「プロリーグ、ほっぽってきた。社長達、大慌て」

 

「ええっ⁉︎」

 

闇先パイの言葉に、私は思わず目を見開いて驚く。

 

そんな私を見て、闇先パイは柔らかい笑みを浮かべた。

 

「やっと、表情が変わった」

 

「えっ?」

 

「プロリーグのことは冗談。今日の試合はお昼からだからまだ大丈夫だし、遊騎のことを話したら休んでもいいって許可ももらった。暗い表情のままだと、心も引っ張られる。私は、遊花にそんな表情をして欲しくない。遊騎だって、同じハズ」

 

「っ………」

 

闇先パイのその言葉に、私は視線を今もベッドで眠っている師匠に向ける。

 

 

ーーーーーーー

 

 

『っ、遊花の思いが悪いなんて言ってない。だけど、遊花が危険な目にあう可能性があることを俺はーーー』

 

『確かに師匠の言う通りにすれば私は危険な目にあう可能性は減るかも知れません‼︎だけど、その分師匠が危険な目にあうんじゃないですか‼︎』

 

『っ………』

 

『どうして………どうして分かってくれないんですか………っ………師匠の………師匠のバカー‼︎』

 

『っ、遊花⁉︎』

 

 

ーーーーーーー

 

 

昨日の朝の師匠の悲しそうな表情が頭に浮かぶ。

 

「私は………本当に馬鹿です。いつだって私は、全てが過ぎ去ってしまったその後にしか、大切なことに気づけない………」

 

「………」

 

「私がありふれた日常を送れるように、師匠が必死になって守ってくれていたこと。師匠が察してくれているだろうからって、師匠が心配だから、師匠のお手伝いがしたいって自分の気持ちを素直に師匠に伝えなかったこと………師匠の手を振り払って、結果はこうして後悔してばかりで………絶対に、離しちゃいけなかったんです………師匠と繋いだ、この手だけは………」

 

私の目から涙が溢れ出し、思わず手を握りしめる。

 

そんな私の頭を闇先パイは優しく撫でた。

 

「昨日の朝、遊花が出て行った後に遊騎も後悔してた。遊花の気持ちも汲んでやれなかったって」

 

「っ………師匠、が?」

 

「後悔なんて、誰でもする。私だって後悔してる。遊騎がこんな大怪我をしたのに、私は助けにくることができなかった。大切なのは、後悔した後に何を成すか。手を離してしまったのなら、また繋げばいい。その機会ぐらい、きっと遊騎は与えてくれる」

 

そういって、闇先パイが真っ直ぐな瞳で師匠を見る。

 

「だから、今は私達にできることをしよう。昨日何があったのか、私に教えて?」

 

「………はい。ありがとうございます、闇先パイ。心配してくれて」

 

「気にしないで………遊花は私の大切な後輩だから………」

 

闇先パイの言葉に、私は涙を拭う。

 

そうだ、師匠はまだ生きている。

 

だからこそ、師匠が目を覚ました時、胸を張って謝れるように、今の私にできることを………

 

私は昨日、私が見たことを全て話した。

 

天神先生が師匠に重症を負わせたこと。

 

その時に交えた会話、その全てを。

 

私が話し終えると、闇先パイは真剣な表情で自分の頭をポンポンとノックするように叩くと、自分のデュエルディスクから1枚のカードを取り出し、ベッドの側に置いてあった師匠のデュエルディスクにセットした。

 

すると、デュエルディスクにセットした闇先パイのカードから闇が溢れ出し、師匠の身体とデュエルディスクを包み込んだ。

 

「闇先パイ⁉︎一体何を………」

 

「マリシャスシード。日本語に直すと悪意のある種。どの道その男は死に至るという言葉を考えると呪いによるものであり、その核になるもののハズ。そういうのを探すの、私は得意。どう、インヴェルズオリジン?」

 

『ダウヨキウヨジ ナイカツヤ ガダ ゾタケツミ』

 

「っ⁉︎この声、闇先パイのカードから………って、厄介な状況⁉︎師匠は師匠は大丈夫なんですか⁉︎」

 

闇先パイのカードから底冷えするような声が聞こえてくる。

 

私が驚いていると、闇先パイも驚いた表情を浮かべた。

 

「遊花、インヴェルズオリジンの声、聞こえるの?というか、分かるの、インヴェルズオリジンの言葉?」

 

「えっ?あ、はい。えっと、インヴェルズオリジンさんって言うんですか?えっと、分かります、何となくですけど」

 

『ナダ ノモシレサイア ハガスサ カタシイカリ ウモ ヲゴンゲ ノラレワ ウホ』

 

「『愛されし者』?私のこと、なんですか?」

 

インヴェルズオリジンさんの言葉に首を傾げていると、闇先パイが何かを考え込むような表情を浮かべる。

 

しかし、すぐに首を振ると真剣な表情で口を開いた。

 

「色々気になることはあるけど、今は遊騎のこと優先。それで、何が厄介なの?」

 

『ルイテイヅネ ニデス ニイシマタ ノコトオ ノコ ガダ ドーシスヤシリマ ノンダク』

 

「えっ⁉︎」

 

「吸収は?」

 

『ウマシ テシ ツメウヨシ モイシマタ ノコトオ ノコ バレス ニタへ イシカズム』

 

「っ⁉︎そんな………」

 

師匠の魂が消滅?

 

それって………死ぬってこと?

 

「核となるカードから干渉は?」

 

『ルイテツナ ニラガケヌ シダキハ ヲドーシスヤシリマ ニデス ハイタジ ドーカ ダリム』

 

「私からのアプローチではダメ………別の手が必要………魂に根付く悪意のある種………必要なのは………魂に干渉する力………それなら………」

 

そこまでいうと闇先パイはインヴェルズオリジンさんをデュエルディスクから抜くと、病室の外に向かいながら私に向かって口を開いた。

 

「助っ人を呼んでくる。すぐに戻ってくるし、じきに桜が来るから遊花はここを動かないで。天神 幻騎の言葉が正しいなら………次に狙われるのは遊花だから」

 

「あ、闇先パイ‼︎」

 

そういうと闇先パイは早足で病室を出て行った。

 

私は再び師匠の方に視線をむけ、その手を握る。

 

「………師匠」

 

大丈夫、ですよね?

 

師匠は………呪いなんかに負けたりしませんよね?

 

縋るように、師匠の手を握りしめる。

 

そんな私の背後から突然どこか感情がこもっていない透き通った少女の声が聞こえてきた。

 

「ふーん、本当にやられちゃったんだー」

 

「………え?」

 

私が思わず振り返ると、そこにいたのは、幼い少女だった。

 

綺麗な銀髪をツインテールにし、大きくて袖から手が出ていないデュエルアカデミアの制服に身を包んで、どこか残念そうな表情を浮かべてこちらを見ている。

 

身長からして初等部の中学年と言ったところだろうか?

 

それにこの少女の姿、顔立ち………どこかで見たことがあるような………

 

いや、それよりも今は………

 

「えっと、迷子なのかな?お母さんは?」

 

「………ぷっ、あはは‼︎お姉さん、面白いねーこの状況で私を迷子だって思っちゃうんだー」

 

そういって、無邪気そうに少女は笑う。

 

迷子じゃない?

 

でも、それならなんでこの病室に………

 

そんなことを考えていた私は、次の少女の言葉で背筋が凍り付いた。

 

「私はレイナ。幻騎は正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)って呼ぶけどねーこの街に闇のカードをばら撒いている幻騎の協力者、って言ったら分かるかな?」

 

「っ⁉︎天神先生の協力者⁉︎」

 

私は咄嗟に師匠を庇うように少女の正面に立つ。

 

そんな私にレイナと名乗った少女は笑いながら手を振った。

 

「あはは、そんなに身構えなくてもいいよー私はお姉さんとお話したかっただけだからさー」

 

「お話………ですか?」

 

「そうそう。お姉さんとは1度お話して見たかったんだよねー」

 

そういってレイナちゃんは病室にあった椅子に座って足をパタパタと振りながら口を開いた。

 

「お姉さんのこと、色々調べたんだーお父さんとお母さんを失って、クラスでもいじめられて、世の中を恨んだりしなかったの?」

 

「………確かに、辛いことはたくさんありました。それでも、そんな私をずっと守ってくれた親友がいたから、世界が残酷なだけじゃないって教えてくれたから、だから、私はそんな大切な親友と、優しい人達と出会わせてくれたこの世界を恨みたくなんかありません。この世界を恨むということは、私を守ってくれた人達の存在を否定することですから」

 

「へー立派だねーそれでも世界は残酷に時を刻むのに?決められた運命を辿るのに?そこで死にかけているお兄さんみたいにさー」

 

「っ………ふざけないでください‼︎師匠がこうなったのはーーー」

 

思わず激昂しそうになった私を、いつのまにか目の前にまで近づいてきたレイナちゃんが肩を叩いて宥める。

 

「落ち着きなよ。お兄さんをやったのは幻騎だよ。私も1度デュエルはしたけど、『次は負けない』なんて言うから、見逃したもん」

 

「っ⁉︎レイナちゃんが………勝ったんですか、師匠に?」

 

「おおー新鮮な呼ばれ方だねーまあねー私はこれでも結構やるんだよーだから、お兄さんとの再戦は楽しみにしてたんだけどねー」

 

そういってレイナちゃんが残念そうにベッドで眠る師匠を見る。

 

「だから、正直ムカつくんだよねーお兄さんとの再戦を潰した幻騎が。私はただデュエルが楽しみたいだけなのにさー」

 

「デュエルを楽しみたい………なら、何で闇のカードをばら撒いてるんですか?あなたも知ってるんですよね?闇のカードを使いこなせない人は暴走する。それで他の人に危害が加わるかも知れない状況なんかじゃ、楽しめないじゃないですか」

 

「あはは、流石は師弟。お兄さんと同じことを言うんだねー」

 

私の問いに少女は心底楽しそうに笑うと、どこか感情がこもっていないような声で口を開く。

 

「だって、ゲームって言うのはフェアじゃないと面白くないでしょ?私も相手を傷つけるんだから相手も私を傷つけれないと( ・・・・・・・・・・・・・)面白くないよ( ・・・・・・)

 

「っ⁉︎」

 

レイナちゃんの言葉に、私は思わず絶句する。

 

そんな私に構わずレイナちゃんは言葉を続ける。

 

「それにお兄さんみたいに闇のカードに適合できる人もちゃんといるしね。こうやってばら撒いてれば、どんな人なら闇のカードを使えるかが分かるでしょ?」

 

「っ、実験してるつもりなんですか?この街に生きる人の日常を壊してまで‼︎」

 

「それが闇のカードを使う人が背負う運命だよ。闇のカードを使ってデュエルをするってことは誰かを傷つけるってこと。それでも人は闇のカードを手に入れ、受け入れる。デュエルで相手に勝つために。お姉さんだって、そうじゃないの?それだけ強力な闇のカードを沢山持ってるのに」

 

「………えっ?」

 

レイナちゃんの言葉に私は首を傾げる。

 

私が持っている闇のカードはホープルーツとギャラクシークィーンの2枚のハズ………だけど、沢山って………

 

困惑する私にレイナちゃんは楽しそうに笑いながら口を開く。

 

「絶望神アンチホープ。ダークネスネオスフィア。究極時械神セフィロン。聞き覚えあるよね?」

 

「っ⁉︎このカード達が………?」

 

私はデッキからレイナちゃんが告げた3枚のカードを取り出す。

 

確かに、このカード達を手に入れた時、一瞬鈍い闇色に光った気がした。

 

あれは勘違いじゃなくて、このカード達が闇のカードだったから?

 

「お姉さんのことを調べてた時に気づいたんだけど、お姉さんが持ってるその3枚の闇のカードは街に出回ってるNo.なんかよりも遥かに危険な闇のカードだよ。その中のどれか1枚だけでも世界を滅ぼせる代物なんだよー」

 

「………えっ?」

 

「そう。そんな危険なものを3枚も所持しているのに、お姉さんは平然としていられる。それは闇のカードに適合しているということ。だからこそ、お姉さんの中にはそんな闇のカードにも適合できるような素質があるんだよ。世界を滅ぼせる素質が、世界を滅ぼす運命がねー」

 

「私に………世界を滅ぼせる素質が?私が………世界を滅ぼす?」

 

「だからこそ、そのカード達もあなたに力を貸してるんじゃないの?いつか世界を滅ぼすためにさ」

 

レイナちゃんの言葉に、嘘をついている気配は全く感じられない。

 

それなら、レイナちゃんの言葉は真実?

 

私は手にした3枚のカードを見つめ、瞳を閉じ、今までのことを思い返す。

 

このカード達が私を助けてくれたのは、この3枚と感じる繋がりは、私が世界を滅ぼすような存在になるから?

 

その答えはーーー考えるまでもない。

 

「………違う」

 

「?」

 

「違うよ、レイナちゃん。アンチホープ達が私に力を貸してくれるのは、私に世界を滅ぼす素質があるからなんかじゃない」

 

「確信を持ったように言うねーそれならなんで?なんでお姉さんに世界を滅ぼせるカードが力を貸すの」

 

アンチホープ達が栗原 遊花に力を貸してくれる理由。

 

そんなもの………1つしかない。

 

「この子達が私に力を貸してくれる理由。それはーーーこの子達が優しいからです‼︎」

 

「………へ?」

 

私の言葉にレイナちゃんが目を丸くする。

 

それでも、栗原 遊花が導き出せる答えはこれしかない。

 

「アンチホープと初めて一緒に戦ったのは師匠や島さんの思いを馬鹿にした人に負けそうになった時でした」

 

絶望的な状況で、島さん達の思いを守るための力を、私に貸してくれた。

 

「ダークネスネオスフィアと初めて一緒に戦ったのは神路祇君に私とデュエルをしてくれた学年トップの人達を馬鹿にされた時」

 

大切な人達の誇りを守るための力を、私に貸してくれた。

 

「セフィロンだけはちょっと特殊。初めて戦った時は敵同士だった。だけどそれは、私を試すため」

 

絶望的な未来を覆す力があるか、それを試すために、きっとセフィロンとは出会った。

 

「私が絶望に落ちそうになった時、いつもこの子達は私の希望になりにきてくれた。この子達の存在が、私の希望なんだ‼︎」

 

「………ぷっ、あはは‼︎お姉さんは本当に面白いねー世界を滅ぼすカードを手にして、そんなことを言えちゃうんだー」

 

そういって、レイナちゃんは心底おかしそうに笑う。

 

「だから、私はこの子達を信じます。この子達は誰かを傷つけたりしない、誰も傷つけさせない‼︎この子達と力を合わせて、私はみんなを守ります‼︎私は、世界を滅ぼしたりなんて絶対にしない‼︎」

 

「呪われた闇のカードでみんなを守る………ね。それじゃあ、その証拠を私に見せてよ」

 

そういって、レイナちゃんはポケットから1枚のカードを取り出して私に手渡す。

 

「これは………」

 

そこにあったのはイラストは愚か効果や名前の部分すら漆黒に塗りつぶされていたカードだった。

 

レイナちゃんは楽しそうに笑いながら、私に背を向けて口を開く。

 

「それはとっても強力な闇のカード。幻騎がいらないって言うから貰ってきちゃった」

 

「これが………」

 

「呪われた闇のカードでみんなを守るというのなら………そのカードを使ってみなよ。もうすぐここに幻騎がやってくる。お姉さんを殺しに」

 

「っ、天神先生が………」

 

「だから、幻騎を倒して運命を超えてみせてよ。お姉さんが、本当に、呪われた闇のカードで誰かを守れるっていうんなら、ね。それじゃあ次会った時には忘れてると思うけど、またね、お姉さん」

 

「えっ?」

 

そんなことを言われ、カードからレイナちゃんの方に視線を戻すと、そこにはすでにレイナちゃんの姿はなかった。

 

私は慌てて病室の外を見回すが一直線の廊下のどこにもレイナちゃんの姿はなかった。

 

「不思議な子だったな………あんなに印象が強くて忘れることなんてありえないのに」

 

そんなことを呟いてから、改めてベッドの上の師匠に近づく。

 

「師匠、今から天神先生とデュエルをしてきます。危険だということは、分かっています。正直、少し怖いです。負けることが、じゃなくて。このまま、師匠のいる場所に戻ってこれなくなるんじゃないかと思うと。だけど………」

 

そういって、私は目を瞑る。

 

目を瞑るといつでも思い出せる。

 

初めて師匠と出会った日の、逆境に追い込まれても不敵に笑って空閑君とデュエルをしていた師匠の姿が。

 

私はあの日のことを思い出して笑顔を浮かべると、目を開けて師匠の手を握る。

 

「だけど………平気、へっちゃらです。なけなしの勇気しか持っていない私だけど………師匠の側が、私のいる場所ですから。だから、今度は、私に師匠を守らせてください。師匠がいつも私を守ってくれていたように………私も、強くなって師匠の側に戻ってきます。………それじゃあ、行ってきます」

 

そういうと私は少しだけデッキを調整し、病室を出て、病院の外に向かって歩いていく。

 

病院の外に出たところで妙な視線を感じたけど、それも気にせずに歩いていき病院の近くにあった小さな公園に入る。

 

昨日雨が降り、空がまだ曇っているせいか、公園には人影が一切なかった。

 

そして私は、振り返りながら感じていた視線の主に話しかける。

 

「ここならいいですか………天神先生」

 

「………ほう、気づいていたか」

 

公園の木の陰から天神先生が姿を現わす。

 

その表情は冷え切っており、正直怖くて腰が抜けそうだった。

 

「狙われると分かっていながら何故1人になった」

 

「話がしたかったからです」

 

「あいにく、私が話すことは何もない。速やかに消えたまえ」

 

そういって、天神先生がデュエルディスクを起動する。

 

それでも構わず、私は話を続ける。

 

「私は、あまり難しいことはよく分かりません。だけど、天神先生がやっていることがよくないことだってことは分かります」

 

「ふっ、私に説教をするというのか?」

 

「説教なんてできる程、私は偉くありません。だけど、理由を聞いておきたいんです。何故、師匠が傷つかなければならなかったのかを」

 

「何故だと?分かりきっていることだろう?私の計画に邪魔だったからだよ」

 

「………師匠が、闇のカードについて探っていたから、ですか?」

 

「フン、そうだとも。真実を知ったものは闇に消える。それだけのことだ」

 

そういって、つまらなそうに天神先生が鼻を鳴らす。

 

それはもう、師匠が死ぬことは決まっているというような態度だ。

 

だけど、そんなことは、私がさせない。

 

「………消えません………消えさせません‼︎私が、師匠を守ります‼︎」

 

「ハッ、あの男のために命をかけるというのか?貴様は何様だと言うのだ。小娘風情が思い上がりも甚だしい」

 

そういって天神先生が私を嘲笑う。

 

「………その時には、分からないものなんです。ありふれたことが、どれだけ大切なものだったのかって………私は、失敗ばかりで、後になってから分かるんです。ああしておけば良かった………こうしておけば良かった………そんなことの繰り返しで………」

 

「………」

 

「それでも、1つだけ、誇れるようになったことがあるんです‼︎怖くても、逃げたくても、諦めずに向き合うこと‼︎今も、正直逃げ出したいです‼︎痛いのは嫌です‼︎それでも、この場所を逃げてしまう痛みよりは、全然マシです‼︎」

 

「ほう………」

 

初めて師匠に会った日の、あの夕暮れ時の公園を思い出す。

 

まだデュエルをするのが怖くて、それでも諦めきれず師匠に弟子入りした時のことを。

 

身体はまだ震えてて、変わるって決めても、やっぱりデュエルをすることが怖くて。

 

そんな私を、師匠は優しい表情で見守ってくれた。

 

まだ弟子でなかった私を、守ってくれていた。

 

私は、そんな師匠に恩を返したい‼︎

 

「私は知ったんです‼︎最初は本当に偶然の出会いでも、選択によって、偶然は運命にすることができるんです‼︎」

 

私はデュエルディスクを起動し、ポケットからレイナちゃんに貰ったカードを取り出す。

 

そんな時、公園の外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「こっちから声が………遊花‼︎」

 

「病室を動かないでって言ったのに………あれは、天神 幻騎‼︎」

 

聞こえてくるのは桜ちゃんと闇先パイの声。

 

言いつけを守ってごめんなさい。

 

それでも、このデュエルだけは譲れないから。

 

「運命を斬り開いてみせる………このカードで‼︎」

 

そういって、私がレイナちゃんから貰ったカードを掲げると天神先生が目を見開く。

 

「それは………っ、正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)め‼︎」

 

「遊花?何、そのカード………?」

 

「っ⁉︎遊花、それはーーー‼︎」

 

私はレイナちゃんに貰ったカードを勢いよくデュエルディスクにセットする。

 

その瞬間、デュエルディスクから見たこともないような闇の塊が溢れ出し、私を呑み込んだ。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「えっ⁉︎ぐぅぅぅ………あああああーーーッ‼︎」

 

「フッ、正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)の奴、えぐい事を考えたものだな」

 

「遊花⁉︎っ、アンタ‼︎一体何をしたのよ‼︎」

 

遊花がデュエルディスクから溢れ出した闇に呑まれ、絶叫を上げるのを見て、桜が幻騎を怒鳴りつける。

 

そんな桜に幻騎は愉快そうな笑みを浮かべた。

 

「あれは廃棄予定だった闇のカードの失敗作だ。どうやら、私の協力者が手渡したようだが、まさか使用する馬鹿がいるとはな」

 

「………失敗作?」

 

「あのカードはどれだけの呪いを闇のカードに詰め込めるか試したものだ。結果として、限界を超えた呪いが存在していたカードをも塗りつぶしてしまい、全てを闇が呑み込んでしまってね。結束 遊騎に与えた呪いよりも遥かに強力でとても人が耐えられるものでは無い。デュエルディスクにセットしようものなら凝縮された呪いが一気に解放され、それだけで死に至る代物さ‼︎」

 

「何ですって⁉︎っ、早く助けないと………‼︎」

 

「駄目‼︎」

 

『そうよ、桜。アレはマズいわ‼︎』

 

「闇⁉︎カグヤ⁉︎どうして止めるの⁉︎」

 

遊花に駆け寄ろうとした桜を、闇が必死に押さえる。

 

「アレだけの呪い。近づけば桜も呑まれて死ぬ」

 

『そうよ、アレは人の身で耐えられるものじゃないわ‼︎』

 

「じゃあ遊花を見捨てろっての⁉︎」

 

「そうは言ってない。やるなら私がやる」

 

「はぁ⁉︎」

 

闇の言葉に桜が目を見開く。

 

それでも構わず、闇は言葉を続ける。

 

「私の身体は限りなく闇に近い資質を持ってる。あの呪いでも耐えられる可能性は桜より高い」

 

「いや、でも………」

 

「桜より私の方が可能性が高い。なら、私の方が適任」

 

そういって、闇が遊花に近づこうとする。

 

そんな闇を止める声があった。

 

『ヨウオウヨジ ガラレワ イナウヨツヒ』

 

「ヴェルズウロボロス?」

 

ウロボロスの言葉に、闇は怪訝な表情を浮かべる。

 

それでもウロボロスは淡々と言葉を続ける。

 

『ヨウオウヨジ ガラレワ ダノイナ ウヨツヒ ガダ ダキイヘ ラナ ウオウヨジ ニカシタ』

 

「必要ない?」

 

首を傾げる闇に、ウロボロスは嬉しそうに笑う。

 

『ガイメンウ ノノモシレサイア ゾルマジハ ダトコウイ トイナキデ ハトコ スロコ ヲノモシレサイア ハデ ドイテノア』

 

「『愛されし者』の、運命?」

 

ウロボロスの言葉に闇は改めて遊花を見る。

 

そして闇と同じように公園にある木の上からレイナが遊花を見て、楽しそうに笑った。

 

「さあ、運命を決めるときだよ、お姉さん。お姉さんの選択、ちゃんと見せてね」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「っ、ここは………?」

 

気付いたら、私は真っ白な世界にいた。

 

「そうだ………デュエルディスクから溢れ出した闇に呑まれて………でも、私は公園にいたハズなのに………」

 

足を動かしてみるが進むことはできず、ただただ真っ白な世界が広がっているだけだ。

 

私が困惑していると、私の目の前にどこからともなく闇が集まり、黒い人影に姿を変えた。

 

『憎い………お父さん達を………師匠を傷つけた、この世界が‼︎』

 

「これ………私の声?」

 

黒い人影は私の声で慟哭の声を上げる。

 

『壊れてしまえばいいんだ‼︎こんな世界、何もかも‼︎全部全部、消えてしまえば‼︎』

 

「ええっ⁉︎だ、駄目だよ、世界を壊すなんて‼︎そんなことしたら、お父さん達がいたことが、師匠の帰る場所が無くなっちゃう‼︎そんなの………私は嫌だよ‼︎私はそんなの望まない‼︎私は、みんなを守りたいんだ‼︎」

 

思わず私がそう口にすると、黒い人影は急に淡々とした声で私に話しかけてくる。

 

『消えてしまいたい程辛い思いをしてきたのに?怯えて、縮みこんで、目を閉じて、耳を塞いで、自分を心配してくれた親友さえも拒絶して、ただ自分の部屋でずっと震えていただけの私が?自分が何者なのかも知らない私が?そんな私が誰かを守りたいだなんて、望みがすぎるんじゃないの?』

 

「っ………」

 

その言葉に、私は両親が亡くなった頃の自分を思い出す。

 

確かに、両親が亡くなった頃の私は自分の部屋でずっと縮みこんでいた。

 

両親がいなくなった現実が嫌で、心配してくれた桜ちゃんの声すら、私は耳を塞いでいた。

 

「もしかして、あなたは私の心の闇………なの?」

 

『そうだよ。あなたは私。だから、私が話しているのは全てあなたが思っていること』

 

そう言って、目の前の黒い人影が話す。

 

よく見れば、人影は私と同じ身長、体型をしている。

 

正直全く意味が分からないけど、これもあの闇に呑まれたのが原因なの?

 

困惑する私に構わず、私の心の闇は口を開く。

 

『だから、壊してしまおうよ、こんな世界』

 

「全然文面が繋がってないよ⁉︎」

 

『レイナちゃんも言ってたじゃない。私には世界を滅ぼせる素質が………世界を滅ぼす運命にあるって。あなただって、恨んでるでしょ?理不尽なこの世界を。あなたから大切なものを奪っていく世界を。だから、壊しちゃおうよ、こんな世界、全部』

 

「………」

 

私の心の闇の言葉に、私は少し考えてからはっきりと答える。

 

「嫌です」

 

『………』

 

「確かに、思わないわけじゃないよ。理不尽だって、どうして私の大切な人達を傷つけるのって。だけど、そんな大切な人達との出会いをくれたのも、この世界なんだよ」

 

『それでも、この世界は傷付けるよ?私の大切な人達を』

 

「世界が私の大切な人を傷付けるというのなら、大切な人達が傷つかないように、強くなって、私がみんなを守りたい」

 

私の言葉に、私の心の闇は諦めたような声で語りかける。

 

『無理だよ………私には。誰かを守るなんて………』

 

「無理なんかじゃないよ」

 

『ううん、分かってるハズだよ。あなたは私なんだから。それに、強くなりたいなんて、思ってないでしょ?本当は………』

 

「私は思ってるよ。強くなって、私は師匠をーーー」

 

『そうして、師匠が守ってくれなくなってもいいの?』

 

「っ⁉︎」

 

その言葉に、一瞬息が詰まった。

 

そんな私の隙を、私の心の闇は攻めてくる。

 

『弱ければ、師匠が、桜ちゃんが、闇先パイが、みんなが守ってくれる。だから、ずっと守られていればいいのに』

 

「でも、それじゃあ師匠達が傷ついて………」

 

『だから、壊しちゃえばいいんだよ。あなたから大切なものを奪っていく世界を。大切な人達を傷付けるもの全てを。そうして大切な人達を傷つけるものを壊して、私を傷つけようとする人から守ってもらう。そうすれば、師匠達とずっと一緒にいられる』

 

「………」

 

『師匠はきっと戦い続けるよ。残酷な運命と、その犠牲になる人達のために………私が強くなったら、私以外の誰かを優先するようになるかもしれないよ』

 

「それは………」

 

『それでもいいの?師匠が、私の側から離れていっても?」

 

「………」

 

『師匠の側にいたいよね?私の側にいてほしいよね?だから、強くなんかならない方がいいんだよ。ずっと、守られていればいいんだよ』

 

そういって、私の心の闇は優しく語りかけてくる。

 

確かに師匠は優しい人だ。

 

見ず知らずの身だった私を助けてくれるような。

 

きっと師匠は、困っている人達を助け続けるだろう。

 

自分の身を犠牲にして。

 

それはーーー栗原 遊花には赦せないことだ。

 

「………違う」

 

『………』

 

「それは違う‼確かに︎師匠の側にはいたいよ‼︎だけどそれ以上に私は、師匠に傷ついて欲しくない‼︎」

 

『でも、師匠は戦い続けるよ。勝てもしない運命と。その度に傷ついてーーー』

 

「運命に勝てないなんて、私が決めるな‼︎私は何を見てたの⁉︎私の師匠は、強くて、だけど本当はとても弱くて、それでもそんな弱さを隠して、笑顔で、どんな逆境だって乗り越える人でしょ⁉︎」

 

『だけど、師匠は負けたよ?天神先生に………そしてもう………』

 

「1度負けたぐらいがなんですか‼︎それぐらいで弱気になるな、栗原 遊花‼︎そんなこと言ってたらあなたは何回負けてるって言うんですか⁉︎師匠は絶対に戻ってくる‼︎弟子であるあなたが、師匠を疑ってどうするんですか‼︎私の師匠への思いは、その程度だって言うんですか⁉︎違うでしょ⁉︎」

 

私の剣幕に、私の心の闇が黙る。

 

これが本当に栗原 遊花の心の闇なら、こんな心の闇があることを栗原 遊花は赦せない‼︎

 

「師匠はまだ生きてる‼︎絶対にまた目を覚ましてくれる‼︎だから、私は師匠を信じてそれを待つの‼︎」

 

『自分の気持ちを素直に出せず、師匠に八つ当たりをしてその手を振り払ったのに?』

 

「確かに私は馬鹿です‼︎私のことを考えてくれた師匠の手を振り払った‼︎だからこそ、私は強くならなきゃいけないの‼︎もう1度、その手を繋ぐために‼︎もう2度と、その手を離さないために‼︎誰かを守って師匠が傷つくなら、その師匠を私が守る‼︎誰にも師匠を傷つけさせない‼︎」

 

『………』

 

「もう師匠に守られるだけの、みんなに守られるだけの私じゃない‼︎みんなを守れるように、私は強くなる‼︎そして今まで私を守ってくれた恩を返すの‼︎」

 

『私のことを守ってくれなくなってもいいの?』

 

「私はみんなに守って貰いたいんじゃない‼︎私はみんなと一緒に運命と戦いたい‼︎一緒の道を歩いていきたい‼︎1人でみんなが戦う背中を見るのは嫌だ‼︎」

 

私が息を切らしながら自分の感情を、私の心の闇に叩きつける。

 

そんな私を見て、私の心の闇は柔らかく笑った。

 

『………ふふっ、そっか。強いんだね、私は』

 

「自画自賛とか恥ずかしいですから止めてください。自己啓発キャンペーンじゃないんですから」

 

『ふふっ………確かに、あなたは私だよ。でも、私はあなたじゃない( ・・・・・・・・・)

 

「………えっ?」

 

私の心の闇が発した言葉に、私は目を丸くする。

 

この黒い人影は私の心の闇だと言った。

 

あなたは私だと言って。

 

だけど、私があなたではないと言う。

 

つまり、栗原 遊花はこの黒い人影の一部だが、黒い人影の存在全てが栗原 遊花でできているわけではないということ?

 

「じゃ、じゃあ、あなたは誰なんですか?」

 

私がそう口にすると、黒い人影は霧散し、霧のようにその場に留まる。

 

そしてその霧から、私の声に被ってどこか聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

 

『『いずれ分かるよ………いずれね。そういう運命に、"あなた()"はいるから』』

 

「いずれじゃなくて今教えて欲しいんですが⁉︎」

 

『『忘れないで、"あなた()"は光で"( あなた)"は闇。光を抱いて闇となし、闇を抱いて光に変える。それが、"あなた()"の役割。"( あなた)"の存在理由』』

 

「意味が分かりませんよ⁉︎抽象的な表現じゃなくて具体的に教えてください‼︎」

 

『『というわけで、今から"あなた()"の周りを渦巻いている闇を光に変えよう。大丈夫、"あなた()"ならできるよ。絶望を希望に変えた"あなた()"なら』』

 

「実地試験ですか⁉︎実地試験なんですね、これ⁉︎」

 

そんな私のツッコミと共に私の意識が薄れていく。

 

『『願わくば………"あなた()"が、運命を超えれますように』』

 

意識が消えゆく最中、どこか悲しげな声が聞こえた気がした。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「えっ⁉︎ぐぅぅぅ………あああああーーーッ‼︎」

 

意識が浮上した瞬間、身体中を引き裂くような痛みと破壊衝動が襲ってきて、私は思わず絶叫してしまう。

 

油断したら一瞬で意識を持っていかれそうな闇の中で、私は必死に意識を繋ぐ。

 

「遊花⁉︎っ、アンタ‼︎一体何をしたのよ‼︎」

 

闇の外から、桜ちゃんの声が聞こえてくる。

 

だけど、今はそちらに意識を配る余裕がない。

 

原因はおそらく私を包み込んでいるこの闇。

 

その闇から様々な声が聞こえてくる。

 

『お前の家族を奪った世界に復讐しろ‼︎』

 

『全て壊してしまえ‼︎』

 

『その力を、欲望を、全て開放しろ‼︎』

 

その声が聞こえる度に、私の意識が薄れそうになる。

 

ああ、これが闇のカードに取り憑かれた人達が感じていた感覚なんだ。

 

だけど、それに対する答えを、私はもう持っている。

 

『ガイメンウ ノノモシレサイア ゾルマジハ ダトコウイ トイナキデ ハトコ スロコ ヲノモシレサイア ハデ ドイテノア』

 

「『愛されし者』の、運命?」

 

闇の外から闇先パイの心配そうな声が聞こえた気がする。

 

大丈夫です、闇先パイ。

 

見ていてください、あなたの後輩が、成長するところを‼︎

 

「平気………へっちゃら………です‼︎闇を、抱いて………光に、変える‼︎」

 

「むっ?なんだ、何をしようとしている?」

 

私が祈りを捧げるように、胸の前で手を組むと、私の身体を包み込んでいた闇が少しずつ剥がれ、闇が吹き出していたデュエルディスクに集まっていく。

 

「っ⁉︎貴様、一体何をーーー⁉︎」

 

「この破壊、衝動に………塗り潰され、たりなんか、しない‼︎私、が………私が、みんなを………守る‼︎運命を、超えるんだぁぁぁ‼︎」

 

私がそう叫ぶと、デュエルディスクの中にセットされていたあの漆黒のカードが勢いよく空へと弾き出され、身体中を引き裂くような痛みと破壊衝動が消える。

 

空に弾き飛ばされた漆黒のカードを、私は目の前に落ちてきたタイミングで掴み取る。

 

すると、全てが漆黒に染め上げられていたカードは光り輝き、光が治ると、そこにはイラストや効果が浮かび上がった1枚のカードが存在していた。

 

「ゆう………か?」

 

「………これは流石に驚いた」

 

「馬鹿な、ありえない………」

 

桜ちゃんと闇先パイが唖然とした表情を浮かべ、天神先生が驚愕に表情を歪ませる。

 

私は新しいカードを一目見て、胸ポケットからカードを取り出し、共にデュエルディスクにセットしてあるデッキに加え、デュエルディスクを構える。

 

「デュエルです、天神先生‼︎私は、大切な人達を守ってみせる‼︎」

 

「っ、許さない………私以外の存在が私のカードを使って不正に新しい闇のカードを生み出すなど‼︎栗原 遊花‼︎貴様だけは、この手で屠ってやる‼︎」

 

『決闘‼︎』

 

 

遊花 LP8000

 

幻騎 LP8000






次回予告

遊騎を守るために始まった遊花と幻騎のデュエル。
怒り狂い、様々な手で攻勢に出る幻騎の猛攻を、遊花は必死で防いでいく。
襲い来る逆境に、遊花の未知なる力が希望を導く。

次回 遊戯王Trumpfkarte
『未知数の希望』


次回は遊花のデュエル回。
遊花視点でお送りする予定です。
本気を出した幻騎に遊花はどう立ち向かっていくのか。
次回をお楽しみに。

そして今回は色々な超展開盛り沢山、謎が謎を呼ぶお話でした。
というかただただ謎が深まっただけな気もします。
死にかけの遊騎、さらっと本名が明かされる正体不明の抹消者( アンノウンイレイザー)ことレイナ、そして遊花の謎。
うん、物凄く内容が濃くて消化不良を起こしそう。
1話で収まらせる系の話じゃないですね、反省。
提示された謎は徐々に解き明かしていきますので、お楽しみに。

それじゃあ今回はここまで。
季節もとうとう10月。
今年も残すこと2ヵ月と思うと時の流れっても早いなと思います。
それはそれとして、イグニッションアサルトの情報が徐々に公開されていってますね。
私が気になっているのは看板となるイグニスター。
ペンデュラムを除くEXデッキからの全召喚方法を使うテーマなので実際に使うとどんな感じなのか、楽しみです。
本編に登場させることも決定してますしね。
そしてもう1つ気になっていることが、アークライト家シリーズの強化。
好きなNo.トップ3がコートオブアームズ、ダイソンスフィア、デステニーレオであり、ゼアル期から復帰した私としては、紋章獣、ギミックパペット、先史遺産、V兄様が強化されるのは、懐かしく感じると同時にとても嬉しいです。
さらっと罠カードにコートオブアームズさんが出てましたしね。
効果も魔法カードを捨てたランクアップ関連………これは、やるしかないですね。
といったところで今回はここでお開き。
ではでは〜
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