傭兵少女のクロニクル   作:なうさま

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第109話 竜騎兵団

「さっ、ナビー様、こちら、こちら!」

 

 と、子供たちに手を引かれて、木製の椅子の前に連れて行かれる。

 

「ここで、私たちの訓練の成果を見ててください!」

「うん、ありがと……」

 

 しょうがないので、その椅子に腰掛ける。

 

「おお……」

 

 前後にぶらん、ぶらんする揺り椅子、ロッキングチェアみたいになっている……。

 

「ぶらん、ぶらん……」

 

 ぶらん、ぶらんする。

 

「よーし、じゃぁ、みんな始めるよ!」

「気合入れていくぞ!」

 

 と、あの最年長の、12、3歳くらいの二人組みの男女、確か、フェインとタジンと呼ばれていた子たちが、大きな声を出す。

 

「「「おお!」」」

「「「頑張ろう!」」」

 

 そして、それに呼応して20人以上いる子たちが私の前に整列する。

 横に5人、それが5列って感じかな。

 

「いくよ! 1、2! 1、2! 1、2!」

「「「1、2! 1、2! 1、2!」」」

 

 あの年長のフェインとかいう少女のかけ声で子供たちが一斉に素振りを始める。

 

「「「1、2! 1、2! 1、2!」」」

 

 一生懸命木刀を振っている……。

 

「ぶらん、ぶらん……」

 

 私はその間、揺り椅子を前後に揺らしながら、さらに、足を交互にぶらん、ぶらんさせながら、子供たちの素振りを見守る。

 

「「「1、2! 1、2! 1、2!」」」

 

 でも、なんだろうなぁ、これ、剣道の素振りに近いか? 一歩前に踏み込んで木刀を振り、終わったら一歩後ろに戻り、そして、また、一歩踏み出して木刀を振る、その繰り返し……。

 

「「「1、2! 1、2! 1、2!」」」

 

 うん、ダイナミックで躍動感のある素振りだね。

 

「ぶらん、ぶらん……」

 

 ぶらん、ぶらんしながら、それを見る。

 

「やめぇい!」

 

 フェインのかけ声で素振りが終わる。

 

「疲れたぁ!」

「ふぅ……」

「いっぱい振ったね!」

「すごく、よかった!」

 

 子供たちが口々に感想を言い合う。

 

「それで、どうでした? 俺たちの実力は?」

 

 と、最年長者のもう一人の男の子、タジンが目を輝かせて聞いてくる。

 日に焼けた精悍な感じの子、大粒の汗を滴らせている。

 

「うん、いいよ、すごく強そうだったよ」

 

 ぶらん、ぶらんしながら適当に褒めてあげる。

 私は褒めて伸ばすタイプの指導者になったからね、鬼軍曹だったのは昔の話。

 

「ホントに、やったぁ!」

「頑張った甲斐があったね、みんな!」

「うん、嬉しい!」

 

 大盛り上がり。

 

「じゃぁ、俺たちをナビー様の親衛隊にしてくれますか!?」

 

 タジンが目を輝かせて聞いてくる。

 

「うん、いいよ、みんなは私の親衛隊だよ、ぶらん、ぶらん……」

 

 ぶらん、ぶらんしながら言ってあげる。

 まぁ、どうせ、子供のごっこ遊びだろうし、そのうち飽きるよ。

 

「やったぁ! 俺たち今日からナビー様の親衛隊だぜ!」

「うれしい!」

「すごーい! 本当になれると思わなかった!」

「頑張ったもんね!」

 

 と、またまた大盛り上がり。

 

「じゃぁさ、じゃぁさ、ナビー様に決めてもらおうよ!」

「そうだ、親衛隊の名前!」

「まだ決まってなかったんだ!」

 

 と、子供たちが私の周りに集まってくる。

 

「ナビー様に親衛隊の名前を決めていただきたいのです」

 

 子供たちの代表で年長者のフェインが発言する。

 

「名前? ぶらん、ぶらん……」

 

 ぶらん、ぶらんしながら聞き返す。

 

「そうです……、候補が三つあって、どれにするかで揉めていたのです……」

「ふーん、どれとどれ?」

「まず一つ目が、決死隊……」

 

 吹きそうになった。

 

「次に、斬り込み隊……」

 

 う、うーん……。

 

「最後に、駆逐戦隊……、どれがよろしいでしょうか……?」

 

 えっと、親衛隊でいいんじゃないのかな……、だって、決死隊とか斬り込み隊、駆逐戦隊って別の役割を持つ部隊だよ、親衛隊のやることじゃないよ……。

 

「俺は斬り込み隊がいい! そして、斬り込み隊長になるんだ!」

「ええ、決死隊だよ、絶対!」

「斬り込み隊とか決死隊ってダサいよ、時代は駆逐戦隊よ!」

 

 と、揉めだし、最後には、

 

「「「斬り込み隊!」」」

「「「決死隊!」」」

「「「駆逐戦隊!」」」

 

 と、大合唱が始まる。

 

「「「斬り込み隊!」」」

「「「決死隊!」」」

「「「駆逐戦隊!」」」

 

 止まらない……。

 

「このぉ!」

「いてぇ!」

 

 男の子同士の喧嘩も始まる……。

 

「もう、やめなさい!」

「離れろ、離れろ!」

 

 と、最年長の二人組み、フェインとタジンが喧嘩の仲裁をする。

 

「だから、ここはナビー様に決めてもらうの!」

「ナビー様、斬り込み隊、決死隊、駆逐戦隊、このうちどれが親衛隊の名前として相応しいでしょうか?」

 

 さらに二人がそう言う。

 

「うーん……、そうね……」

 

 私はぶらん、ぶらんするのをやめて少し考える。

 

「全部却下」

 

 そして、そう言い放つ。

 

「ええ!?」

「そんなぁ、なんで、なんで?」

「どうしてですか、みんなで一生懸命考えたのに!?」

「ナビー様、私たちのことがお嫌いですか?」

 

 と、フェインとタジンだけではなく、他の子たちも詰め寄ってくる。

 

「それはね、みんな……」

 

 私はそっと目を閉じる。

 

「斬り込み隊、決死隊、駆逐戦隊、それぞれとってもいい名前なの、どれかひとつを選ぶなんて私には出来ない……、それに、例えどれかひとつを選んだとしても、やっぱり他がよかったって言う子も出てくる……、そしたらまた喧嘩になるよね、そうなるくらいなら最初から選ばないほうがいい……」

 

 そうさとすように、ゆっくり優しく話す。

 

「じゃ、じゃぁ、どうすれば……」

「もう他の名前なんて……」

 

 みんなが顔を見合わせる。

 

「名前無しで、親衛隊のまま……?」

「やだよ、そんなの……」

「かっこ悪いよ……」

 

 そして、小さな子たちが泣きそうになる。

 

「うん、だからね、私が名前を決めてあげるの」

 

 目を開け、ぶらん、ぶらんを再開する。

 

「ナビー様が!?」

「どんな、どんな!?」

 

 興味津々に聞いてくる。

 さらに大きくぶらん、ぶらんして、

 

「とう!」

 

 と、ブランコの要領で前に飛んで、ピタッと着地する。

 

「それはね……」

 

 子供たちの真ん中で、一周ぐるっとみんなを見渡し、

 

「ファーイースト・ドラゴンニック・コーア」

 

 と、軽く笑顔を作り言い放つ。

 

「ふぁー?」

「ふぁーえい?」

「ふぇえーい?」

 

 現地の言葉ではなく、そのままの言葉で言ったからうまく発音出来ないみたい。

 

「ファーイースト・ドラゴンニック・コーア」

 

 もう一度ゆっくり言ってあげる。

 

「ふぁーいーすと?」

「どらごんにっく?」

「こーあ?」

 

 と、なんとか復唱する。

 

「どんな意味?」

 

 なんて説明したらいいか……。

 ファーイーストは当然、極東、大昔、日本はファーイーストって呼ばれていたよね。

 で、この辺りも帝国から見たら東の果て、極東にあたる。

 それを訳すと……。

 

「東の果ての竜騎兵団、って意味になるんだよ、えへ」

 

 と、現地の言葉で意訳してあげる。

 

「かっこいい! 竜騎兵団!」

「ファーイースト・ドラゴンニック・コーア!」

「すごく素敵な響き!」

「なんか、都会って感じがする!」

 

 子供たちは大盛り上がり。

 気に入ったみたい。

 

「よーし! 俺たちは今日から、ファーイースト・ドラゴンニック・コーアだ!」

「「「おお!!」」」

 

 よかった、よかった……、と、私は揺り椅子のところに戻り、そして腰掛けて、再度ぶらん、ぶらんを始める。

 

「よーし! 鍛錬だ! 整列!」

「「「おお!!」」」

 

 また素振りをするみたい。

「「「1、2! 1、2! 1、2!」」」

「「「えい、やあ! えい、やあ! えい、やあ!」」」

 

 と、みんなで素振りを始める。

 私はそれをぶらん、ぶらんしながら誇らしく眺める。

 

「「「1、2! 1、2! 1、2!」」」

「「「えい、やあ! えい、やあ! えい、やあ!」」」

 

 ああ……、風通しも良くて、いい場所だなぁ……、ぶらん、ぶらん……。

 これからもたまにここに来よっと……。

 風だろうか、奥の、森の中の草むらから、ガサゴソ、という音が聞えてくる。

 いや、風ではないなぁ……。

 なんだろう、と、思いそちらに視線を送る。

 下草、下枝が生い茂ってよく見えない……。

 

「きゃああああ!!」

 

 と、その近くにいた子供が悲鳴を上げる。

 

「ここはどこだぁ!?」

「おめぇらは誰だぁ!?」

「おい、こらぁ!!」

 

 森の中から男たちが飛び出してきた。

 

「きゃああああ!!」

「助けてぇ!!」

 

 その男たちを見て子供たちが逃げ惑う。

 その姿は……、まるで落ち武者……。

 ボロボロの鎧姿、至るところに血の滲んだ包帯を巻き、顔や身体は泥だらけ……。

 数は5人ほど。

 

「さ、山賊だぁ!!」

 

 子供たちが、そう叫ぶ。

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