傭兵少女のクロニクル   作:なうさま

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第11話 探索

 ああ……。

 ちょっとでしゃばり過ぎたかな……。

 昨日の山本新一脱柵事件を思い出しながら食事を摂る。

 私がハイジャック犯だとばれてないよね……。

 憂鬱な気分になってくる。

 まずい、むしゃむしゃ。

 お昼ごはんの洋梨をかじる。

 いや、大丈夫、みんなには、仲間のために必死で頑張る心優しい少女の姿に映ったはず……。

 まずい、小骨も多い……。

 私は串に刺された焼き魚を頬張りながら考える。

 うん、これは、おいしい。

 まだ残っていた野菜スープをすする。

 まずい、むしゃむしゃ。

 また、洋梨をひと口かじる。

 

「ナビー、ほかに食べたい物はない?」

 

 と、隣の和泉春月が笑顔で聞いてくる。

 

「肉、お肉食べたい」

 

 塩コショウががっつり効いたやつ。

 

「肉かぁ……、そういえば、森の中には鹿とか猪みたいなのがいたよね……、どうにか捕まえられないものかな……」

 

 和泉が考え込む。

 

「に、肉って言っても、どうやって調理をすればいいの……?」

「私やった事ない、無理……」

「そ、そうだよね、ちょっと怖い……」

 

 と、生活班の福井とかが会話に加わる。

 

「いいよ、私がやるよ、魚を卸すのと一緒だから……、たく、そんな事も出来ないの……、女のくせに……」

 

 最後に残ったスープをすすりながら言う。

 

「なっ!? ナビーがすんごい生意気な事言ってるんだけど!?」

「い、いいわ、やってやるわよ!!」

「大変なのは血抜きだけでしょ? か、簡単よ、やれるわ」

「和泉くん!! 牛でも象でも連れてらっしゃい!!」

「もうこの際、マンモスでもなんでもいいから持ってこい!!」

 

 と、なぜか大盛り上がりになる。

 

「よーし、全員そのまま聞いてくれ」

 

 昼食も終わりかけの頃、東園寺が口を開く。

 

「今日はこれから、昨日、山本が発見した広場を探索しにいく」

 

 なぜか、あの広場は山本が身体を張って発見した事になっている。

 

「その前に名前を付けておく、そうだな、誰かが言っていたな、ヒンデンブルク号と……、そこから取ってヒンデンブルク広場とする。それに伴ってここにも名前が必要になるな、暫定でラグナロクとでもしておく」

 

 つまり、この広場の名前はラグナロクで、それで、ここから北に1キロほど行った、あの飛行船のある広場をヒンデンブルクと呼んで、さらに、このラグナロクから南に1キロほど行ったところにある川がルビコン川になるってわけね。

 だいたい、位置関係はこんな感じ。

 

「探索は俺の管理班と、あとは人見の参謀班にも来てもらう。他の班は通常通りの作業をしていてくれ」

 

 こうして午後の作業が決まった。

 私は狩猟班ではあるけど、管理班や参謀班の人たちと一緒にヒンデンブルク広場に行く事にした。

 まっ、和泉とか佐野とか秋葉が、木の枝を削って槍を作っていたからなんだけどね。

 本当に狩に行く気らしい。

 なので、邪魔したら悪いので、私はヒンデンブルク広場へ。

 ほどなくして、広場に到着。

 広場は私たちのラグナロクとまったく同じ、違うのは中央の旅客機が飛行船に変わっている事くらい。

 

「とりあえず、埋葬からだ」

「うっす」

「やっちゃいましょう」

 

 遺体の埋葬からはじめるらしい。

 管理班のメンバーが手にしたスコップ、それとスコップのような物で広場の隅に穴を掘りはじめる。

 

「俺たちは死体から使えそうな物を回収する、衣服は出来るだけそのままにしておいてやれ」

 

 と、参謀班の人見彰吾が言う。

 

「女性とおぼしき遺体は私たちがやるから触らないでね」

 

 綾原雫が補足する。

 ちなみに参謀班には女性が二人いる、綾原雫と海老名唯(えびなゆい)だ。

 それにしても、遺体が点在しているね。

 墜落してすぐ死んだのなら、こんなにばらけてはないと思うけど……。

 でも、墜落してしばらく生存していたのなら、死者が出たらちゃんと埋葬するはずだし……。

 私は観察しながら色々見て回る。

 

「何があったんだろうね、ここで……」

 

 草花に覆われて見えにくいけど、遺体の他にも彼らの荷物と思われる物が大量に散乱しているのがわかる。

 

「うお、なんだ、これ、ぴっかぴかだぜ」

 

 と、参謀班の青山悠生(あおやまゆうせい)が遺体から回収した剣、中世のロングソードのような物を鞘から引き抜いて言う。

 

「ビンゴだぜ、やはり武器を持っていたか!」

 

 と、同じ参謀班の南条大河(なんじょうたいが)がそれを見て歓声をあげる。

 

「ああ、こいつらは相当昔の人間らしい。他にもあるはずだ、探せ」

 

 人見が銀縁メガネを人差し指で直す。

 

「人見、鎧はどうする? これもまだ使えるぜ?」

「それも回収しよう、鎧を脱がしたら、適当にその辺の布で覆ってやれ」

「おーけー、回収する」

 

 と、彼らは次々と武器や鎧を脱がして回収していく。

 

「人見、何か変よ、この髪飾りやアクセサリー類……」

 

 綾原が銀色の髪飾りを人見に見せながら言う。

 

「変とは?」

「一切劣化がない、酸化どころか汚れひとつない……」

 

 たしかに、彼女の言う通り、その髪飾りは太陽の光を反射してきらきらと輝いていた。

 それどころか、うっすらとだが、自光している……。

 

「ふむ、わからんな……、一応、それも回収しておこう」

「了解……」

 

 彼らは武器、それに鎧やアクセサリー類などを回収して一箇所に集めていく。

 私はそれを横目に落ちている荷物を拾って何か手がかりがないか調べる。

 

「どこの文字だ……」

 

 何かのケースだろう、そこに刻印された文字は見た事もないものだった。

 ケースを開けてみる。

 中には一冊の書物が入っていた。

 私はそれを手に取り、ぺらぺらとページをめくる。

 読めないけど、なんだろうな……。

 どこかで……、魔女に与える鉄槌……、いや、違うな、ヴォイニッチ手稿のような印象だ……。

 

「ナビー、それは?」

 

 と、うしろから人見に声をかけられる。

 

「うん? わかんない、見る?」

「ああ、見せてくれ」

 

 彼に書物を渡す。

 そして私は落ちている物の探索を再開する。

 しかし、さっきの綾原が手にした髪飾りと同じく新品同様な物があるかと思えば、その隣には完全に錆び付いた物があったりと、何か二つの時間が同時に混在しているかのような印象だ。

 

「よし、いいぞ、遺体の搬入をはじめてくれ!」

 

 と、東園寺が大きな声で叫ぶ。

 それから遺体の埋葬を全員で行い、手を合わせてから、人見たちが集めた荷物、主に刃物類を持ってラグナロクに撤収する事になった。

 まだ調べ足らないけど、それは明日以降だね。

 でも、刃物類はとてもいい収穫。

 これがあれば木の伐採が出来る。

 そうすれば、薪の問題もクリアでき、尚且つ、困っていたトイレや寝室の屋根も作れてと、良いこと尽くめ。

 

「すごーい、これ、刃渡り何センチ?」

「80センチくらい? ここが日本だったら銃刀法違反だね」

「斧とか鉈もあるよ、助かるぅ」

 

 と、ラグナロクのみんなも大喜び。

 

「あれ? ハルとかは?」

 

 槍を作っていた彼らがいないので、夏目に聞いてみる。

 

「狩の練習? とか言って森の中に入っていったよ」

 

 ふーん、もうそんな段階か……。

 

「これとか料理に使えないかな?」

「うーん、でも、これって武器だよね?」

「軽いなあぁ、材質はなんだろ?」

「危ない、振り回すな!」

 

 広場では持ち帰った刃物類の値踏みが行われている。

 

「うわあああああ!!」

 

 と、森の中からそんな絶叫が聞えてきた……。

 

「た、大変だぁあああ!!」

 

 森の中から槍を持った三人組みが出てきた。

 そう、和泉、秋葉、佐野の三人だ。

 

「ど、どうしたの……?」

「な、ナビー、これ、どうしよう!?」

 

 と、和泉が血相を変えて言う。

 その手には……。

 

「めぇ……」

「めぇえ……」

 

 なんか、小さなヤギの赤ちゃんみたいなのを持ってるんだけど……。

 それも二頭……。

 

「な、ど、どうしたの、これ……?」

「い、いや、ちょっと実践しようと思って、その辺を歩いてたヤギを狙ったんだよ、そしたら、そのヤギが逃げていって、それで追いかけようと思ったら、そこにこの仔ヤギたちが残されていて」

「それで、拾ってきちゃったの……?」

「そう、かわいそうになって!」

 

 私は仔ヤギを見る。

 身体は真っ白で小さく、猫くらいの大きさ。

 

「めぇ……」

 

 かぼそく、小さく鳴く。

 

「す、捨ててきなさい! 親ヤギもまだ遠くに行ってないと思うから!」

「いや、それが、もう一時間くらい探したんだよ!」

「いなかったんだよ!」

「うちで飼うしかないんじゃないかな……」

 

 と、和泉だけではなく、秋葉や佐野までそう言う。

 

「ほら、ほら!」

 

 和泉から仔ヤギを一頭渡される。

 

「めぇ……」

 

 つぶらな黒い瞳が私を見る……。

 

「めぇ……」

 

 かわいい……。

 

「めぇ……」

 

 すごくあったかい……。

 

「めぇ……」

 

 えへへへ……。

 私たちは仔ヤギを二頭飼う事になった。

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