傭兵少女のクロニクル   作:なうさま

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第158話 ダブルタップ

「悔しい……」

「怖かったよぉ……」

「全然戦えなかった……」

 

 と、負けた子供たちが意気消沈して戻ってくる。

 

「惜しかったなぁ!」

「ははは、大人の強さがわかったか!?」

「次は頑張れよ!」

 

 こっちは勝者である剣闘士たち、意気揚々と帰ってくる。

 

「で、どうします、第二戦は? このままだと実力差がありすぎて面白くないんで、俺たちと子供たち混成にして二つに分けます?」

 

 と、金暗色のシュタージが提案する。

 

「いや、いい、このままで。ただし、私が子供たちのほうに入る」

 

 手を挙げて制し、そう言い返す。

 

「チビの女神さまが?」

「それでも無理でしょう、話にならない」

「セイレイもそっちに入るならチャンスはあるか?」

 

 セイレイに視線が向く。

 

「そういたしましょうか、ファラウェイ様?」

「大丈夫、私ひとりで十分、セイレイはこれまで通り、ジャッジと監視役をしていて」

「はい、ファラウェイ様……」

 

 そして、そのまま、子供たちの輪の中に加わる。

 

「わぁ、ナビー様だ!」

「これで勝てる!」

「負けるはずないよね!」

「やったぁ!」

 

 熱烈歓迎を受ける。

 

「マジっすか、本気っすか?」

「どうなっても知りませんよ」

「泣かないでくださいよ」

 

 とか、やつらがニヤニヤしながら言っている。

 

「ふっ……」

 

 逆に泣かしてやるから。

 

「よーし、作戦会議やろーか!」

 

 と、両手を広げて元気よく言う。

 

「「「はぁい!」」」

 

 子供たちを連れて、中央に積まれた丸太の向こう側にいく。

 

「そんなのやったって意味ないんすよ」

「時間のムダムダ……」

「早くしてくださいよぉ」

 

 剣闘士たちは反対側、丸太の向こう側に歩いていく。

 

「ナビー様、どうするの?」

「先生たち、超強いよ?」

 

 子供たちは勝てるかどうか懐疑的。

 

「大丈夫、大丈夫……」

 

 と、私はしゃがんで、ところどころに生えている草を引っ張ってみる。

 うん、よく根が張っている……。

 

「ナビー様?」

「なにしてるの?」

 

 子供たちが首を傾げる。

 

「あのね、みんな……」

 

 作戦会議を始める。

 そして、10分後……。

 

「だからね、こうこう、こうするの……」

「こう?」

「違う、違う、ここを、こう……」

 

 難しい戦術は無理だろうと思って、せいぜいに三つくらいの動きを覚えておけばできる戦術にしたんだけど……。

 

「ええ……、わからないよ、こっち?」

「いや、ここの人はこっちに、そこの人はあっちに……」

 

 全然理解してくれない……。

 

「まだっすか、チビの女神さま?」

「待ちくたびれたっす」

「つーか、そんな長々作戦会議やってたら、なんか奇策を講じてくるんじゃないかって勘ぐられちゃいますよ?」

「ちげぇねぇ、バレバレだな!」

「ははは、そいつぁ、傑作だ!」

 

 剣闘士たちがげらげら笑う。

 

「とりあえず、大体の人はわかったよね? だったら、わからない人はわかる人の真似をすればいいと思うよ」

「そうそう、俺ら年長者の真似をしていればいいぞ、おまえらは」

 

 と、フェンイとタジンが話をまとめてくれる。

 

「よし、じゃぁ、やろう」

 

 これ以上やつらを待たせるのもなんだし。

 

「お? もう作戦会議はいいんすか?」

「やっとすか」

 

 私の言葉を聞いた剣闘士たちが口々に言う。

 

「セイレイ、開始の合図して」

 

 両軍位置に付く。

 そして、

 

「はじめ!」

 

 と、セイレイの手が振り下ろされる。

 

「いくぞぉお!」

「「「おおおお!」」」

 

 剣闘士たちが雄叫びを上げる。

 でも、

 

「「「わあああああ!」」」

 

 と、やつらが雄叫びを上げている間に、子供たちは丸太を次々と飛び越えて剣闘士たちの元へ殺到する。

 

「お?」

「今度は先制攻撃か?」

「考えたなぁ!」

 

 剣闘士たちが子供たちを迎え撃つ。

 

「うおおおおお!」

「いやああああ!」

 

 タジンとフェインが大きな盾を構えて突進していく。

 私はそのすぐうしろで二人のサポートをする。

 

「アポトレス、水晶の波紋、火晶の砂紋、風を纏え、静寂の風盾(バビロンレイ)

 

 こっそり呪文を唱えて、二人の背中に手を添える。

 

「よし」

 

 二人の身体がうっすらと光る。

 

「来たぞ!」

「盾構え!」

「うおおおおお!」

「いやああああ!」

 

 剣闘士たちの構えた盾に正面からぶち当る。

 盾と盾、金属と金属がぶつかる音が響き、さらに、盾同士がこすれる音がそれに続く。

 

「うお? さっきより強烈だぞ!?」

「後衛! 肩で押して来い、遠慮すんな、すげぇ力だぞ!」

「「「おおおお!」」」

 

 やつらが押し込まれまいと、姿勢を低くしてスクラムを組む。

 

「負けるなぁ!」

「「「わああああああ!」」」

 

 子供たちも負けてない、一進一退の攻防が続く。

 

「あれれ、さっきより少なくないか?」

「ああ、人数が減っている」

 

 と、剣闘士たちが子供たちの数を見て話し合う。

 

「もしかして、部隊を二つに分けたのか?」

「まさかぁ、戦力の分散は素人のすることだぜ、ふはは」

「戦力の逐次投入は悪手だってママに教わらなかったのかなぁ?」

「ははは、あー見えて、チビの女神さまもまだまだ子供なんだなぁ」

「ホント、かわいいなぁ、うはははっ」

 

 やつらが笑いながら話している。

 

「「「わあああああ!」」」

 

 そのとき、後ろの丸太の山の陰から子供たちが走り出てくる。

 

「お? やっぱり出てきたな?」

「来た来た、側面を狙う気だな?」

「かわいいなぁ」

 

 それに対して剣闘士たちが側面の防御を固める。

 

「「「わあああああ!」」」

 

 子供たちが側面にタックルをぶちかます。

 

「タジン、フェイン、頑張って、もう少し押して」

 

 と、二人の背中に手を添えながら指示を出す。

 

「うおおおおお!」

「いやああああ!」

 

 私の言葉に応えて二人が全力で押しまくる。

 

「おっ、おっ、おっ?」

「勝負に出たか?」

「でもなぁ、側面はもう壊滅状態なんだよ」

 

 やつらの言うとおり、側面の子供たちが転倒したり、逃げ出したりしていて、うまく攻撃を継続できていないようだった。

 

「くぉ、押せ、押せぇ!」

「「「わあああああ!」」」

 

 タジンのかけ声の下、子供たちが一生懸命押そうとする。

 

「側面は終わりだぁ!」

「正面に戦力を集中しろ!」

「押して、押して、押しまくれぇ!」

「「「おおおおおお!」」」

 

 剣闘士たちに勢いが付き、逆に押し込まれていく。

 

「だめぇ!」

「押し返せない!」

「に、逃げよう!」

「うん、逃げよう!」

 

 そして、一気に戦線は崩壊する。

 

「こわいよぉ!」

「助けてえぇ!」

 

 第一戦と同じ、子供たちが一心不乱に逃げ始める。

 

「こ、こないでぇ!」

「誰かぁ!」

「うわぁん!」

 

 次々と丸太を乗り越え逃げていく。

 当然、私もそのうしろに続き丸太を乗り越える。

 

「ははは、早く逃げないと斬り殺されちゃうぜぇ」

「逃げろ、逃げろ!」

「ホント、かわいいなぁ、うはははっ」

 

 やつらが嬉々として追ってくる。

 

「はははは!」

「うへへへ!」

「きゃきゃきゃ!」

 

 丸太を飛び越え、子供たちの背後に迫る。

 

「まず一人め!」

 

 そして、手にした木刀を振り上げる、が、

 

「へ!?」

 

 その直後、姿勢を崩して転倒する。

 

「うわっ」

「なっ!?」

 

 後続も同じように転倒していく。

 

「やったぁ!」

「成功だよ!」

「うまくいった!」

 

 それを見た子供たちが大喜び。

 

「な、なに……?」

「なにかあるぞ?」

「なんだ、これ?」

 

 剣闘士たちが見ているのは、草。

 そう、草と草を結んで足を引っ掛けて転倒させるトラップだ。

 

「よし! 弓兵!」

「「「はぁい!」」」

 

 と、さらに、草むらに潜んでいた別の子供たちが立ち上がる。

 

「狙いを定めて、1、2,3!」

「練習通りに1、2,3!」

 

 子供たちが剣闘士たちに矢の雨を降らせる。

 

「なぁにぃ!?」

「どこから!?」

「まだいたのか!?」

 

 そう、このために待機させていた伏兵だ。

 最初に側面を突いた別働隊はこの伏兵を悟らせないための、あれで全部だと思わせるための陽動。

 

「ふふっ、これが釣り野伏せよ」

 

 と、笑って言ってやる。

 

「つりのぶせぇ!?」

「うわ、やられた!」

「こっちもだ!」

 

 と、数人の剣闘士が矢を受け、死亡扱いとなる。

 

「攻撃に移るよ!」

「おまえらはこっちだ!」

 

 敗走していた子供たちが森の手前で左右二手に分れる。

 

「走れぇ!」

「「「わああああ!」」」

 

 二手に分れた子供たちが大きく回り込み、剣闘士たちの側面を左右同時に突く。

 

「続けぇ!」

「いやああああ!」

 

 右側はタジン左側がフェイン、その二人が大きな盾を構えて突進し激突する。

 

「「「わああああ!」」」

 

 子供たちもそれに続く。

 

「くそっ!」

「守れ!」

「盾だ、盾で防げ!」

「ぐあ!」

「死んだやつはどけろ、邪魔だ!」

「いや、死んでるから動けねぇんだよ!」

 

 死亡扱いの連中が邪魔で身動きが取れなくなる。

 

「いい様ね、ちょっと貸して」

 

 と、私は近くにいた子供が持っていた長槍を借りる。

 

「おまえら、前に武器の使い方を教えていたよな、この子たちに……、武器の長さがどうとか、相手の武器から遠い場所を狙えとか……、つまりは、こういうことか?」

 

 と、私は槍を振り上げて地面を蹴る。

 

「たぁあああ!」

 

 そして、横になぎ払うように思いっきり振り抜く、

 狙う場所はやつらが盾や木刀で守る頭や胴体ではなく、下段、足だ。

 スパーン、と、気持ちのいい音が響き渡る。

 

「うっおおおおお!?」

「ひぃいいいい!?」

「いっぎゃあぁああああ!」

 

 すねなどを激しく殴打され悲鳴を上げる。

 

「いってぇええ!」

「え、な、なんで、す、寸止めじゃなかったのかよ!?」

「や、約束が違う!」

 

 やつらが抗議する。

 

「はぁ? いつ、そんなこと言ったよ? 知らねぇなぁ」

 

 と、笑いながら言い、再度槍を振り上げる。

 

「たぁあああ!」

 

 そして、やつらの足目掛けて槍を振り抜く。

 バチーン、と、いい音を響かせる。

 

「いってぇええ! マジでいてぇ!」

「ひ、ひでぇ!」

「助けて、ホントに痛い、足が折れたかもしれない!」

「やめて、チビの女神さま!」

 

 泣き言を言い始める。

 

「あはははっ、そぉれ、もう一発、たぁあああ!」

 

 さらに槍を振り抜く。

 

「いっひいいいい!」

「死んでる、死んでる! 俺たちもう死んでる!」

「やめ、やめ、やめ!」

「降参です、降参です!」

 

 遂にやつらが地面に崩れ落ち負けを認める。

 

「ということは、あたしたちの勝ち?」

「そうだ、俺たちが先生たちを倒したんだ!」

「すごーい!」

「がんばったもんね!」

「やったぁ!」

 

 子供たちが喜びを爆発させる。

 

「お、俺たちが、負けた……」

「く、くっそぉ……」

「プライドがズタズタだ……」

「なんでだ、なんでなんだ……」

 

 一方、剣闘士たちは拳を地面に叩き付けて悔しがる。

 

「も、もう一戦!」

「お願いします、チビの女神さま、リベンジさせてください!」

「このままじゃ終われないっす!」

 

 さらに、そんなことを言い出す。

 

「しょうがないなぁ……」

 

 再戦を受ける。

 

「よし!」

「今度こそ!」

「負けてたまるか!」

「配置につけ!」

 

 と、彼らは意気込むけど、次戦も私たちの大勝利で終わったことは言うまでもない。

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