傭兵少女のクロニクル   作:なうさま

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第65話 陽射しをうけて

 オレンジ色のリボンを手に取り、長い金髪のサイドをそれで結う。

 鏡を見ながらおかしくないかチェック。

 

「よし」

 

 今度はみろり色のリボンで反対側を結う。

 

「うん、いい感じ、かわいい」

 

 鏡に映る私は絶世の美少女そのもの。

 白く透きとおるような白い肌とほんのりピンク色の柔らかそうな唇。

 なによりあれだよね、目。

 

「私って、こんな目だったっけ?」

 

 大きなキラキラとした水色の瞳、愛嬌のある、楽しげな、幸せそうな目をしている。

 

「もう、目だけで笑ってるよ」

 

 クスッ、と、口元もほころんでしまう。

 

「そんな事より、髪型……」

 

 左右を交互に見比べる。

 これは、ツインテールのように髪を全部結うのではなく、適当に髪を一掴みして結う、ツーサイドアップとかいう髪型らしい。

 全部まとめると背中が寂しいので、邪魔な顔にかかるサイドだけ結って、うしろはそのまま流すようにしてある。

 

「ちょっと、結い過ぎたかな、おでこがでちゃってる……」

 

 前髪をなでなでして隠そうとする……。

 

「駄目だ、隠れない……、まっ、いっか!」

 

 と、私はスタンドミラーを机の引き出しに片付けて立ち上がる。

 そして、茶色のカーディガンを羽織ってロッジをあとにする。

 陽射しは相変わらず強い。

 

「暑い!」

 

 カーディガンを着ているから尚更暑い! 

 でも、気にしないで中央広場までダッシュ! 

 

「みんなぁ!」

 

 中央広場にいる、狩猟班のみんなを見つけて、大きく手を振りながら駆けていく。

 

「ナビー、こっちだよぉ!」

 

 と、夏目翼が手を振り返してくれる。

 

「おまたせ、みんな!」

 

 到着! 

 

「お、かわいい髪型してるな、ナビー?」

 

 と、秋葉蒼が私の頭を覗き込んでくる。

 

「ふふん、かわいいでしょ」

 

 腰に手を当てて自慢げにポーズをとる。

 

「うん、かわいいね」

 

 和泉春月もそれに加わる。

 

「ツインテール……? うなじも見えててかわいいね」

「や、やめろ、見るな、恥ずかしい……」

 

 と、私は頭のてっぺんを両手で隠す。

 

「え?」

「うん?」

 

 でも、やっぱり結い過ぎたかな、おでこも恥ずかしいし、次やる時はもう少し、少な目にしよっと。

 

「それじゃ、いこっか」

 

 と、笹雪めぐみが足元のリュックを持ち上げ、それを背負いながら言う。

 

「おーけー」

「ういっす」

 

 みんなも同じように荷物を担いだり背負ったりする。

 女子の荷物はバケツとかスコップとかロープとかそんなのばかりだけど、男子は弓とか槍を担いでいる。

 

「よーし、今日は奥まで行ってみるぞぉ!」

 

 と、秋葉が元気よく先頭を歩きだす。

 

「おお!」

 

 私は拳を突き上げてそのあとに続く。

 そう、これから男女合同で食料の調達にいく。

 女子は野菜とか果物の採集。

 男子は猪とか鹿狩り。

 の、適した場所の調査。

 だから、今日は遠足みたいなもので、収穫がなくても別に構わない。

 かなり奥地まで行く予定だから、服装もみんな長袖長ズボン、深い森の中を進むので帽子はなし。

 先頭を歩く秋葉が森の中に入っていく。

 方角は東のほう。

 そうそう、もし、帝国の侵攻が激しかった場合、ラグナロクを放棄して東のほうに逃げるから、その調査も兼ねている。

 ちなみに、ここまでの話は狩猟班の話であってマスコット班の私には関係ない……。

 私には別の目的がある……。

 

「ふふふ……、それはね……」

 

 それにしても、秋葉の担いでいる弓の形状がおかしいんだけど……。

 なんていうか、弓が二本……、十字に合わさったような形状、当然、弦も二本ある……。

 

「ねぇ、蒼……、その弓矢、どうなっているの……?」

「お? ナビー、よくぞ聞いてくれたな」

 

 と、秋葉が弓を手に取り構えてみせる。

 

「これは、二段弓だ」

「に、二段弓……?」

「そうだ、これを見ろ、ナビー」

 

 彼が弓筒から矢を二本取り出し弦に番える。

 

「同時に二本の矢が撃てる」

 

 あ、あほだろ……。

 

「まっ、俺はまだ二段が精一杯だけど……」

 

 と、秋葉が弓矢をしまいながら話す。

 

「ハルはもっとすごいぞ、何しろ四段弓だからな」

 

 うしろを歩く和泉を見ながらにやりと笑う。

 

「よ、四段弓!?」

 

 びっくりして、私も振り返る。

 

「はは……」

 

 と、和泉が照れ笑いしている……、けど、確かに彼の持つ弓は四段……、縦横に加えて、斜めに一本ずつ、計四つの弓が組み合わされたような形状をしている……。

 な、なんだなんだ、こいつらは、大道芸人か……。

 まぁ、いいや……。

 話を戻して、私が狩猟班の調査に同行する理由、それは、8月7日の七夕に備えて、短冊を飾るための竹とか笹とか、それに近いようなものがないか探すためだ。

 割と普通なナビーフィユリナ記念タワーから色々探してみたけど、それっぽいのが東のほうに生えているような気がするんだよね。

 なので、それが本当に使えるかどうか、直接見に行って確認する事にした。

 

「楽しみだなぁ、七夕ぁ」

 

 と、思わず声に出てしまう。

 

「うん、そうだね、ナビー」

「東園寺たちが屋台とか計画してるらしいよ?」

「聞いた、聞いた、焼きソバとかやるらしいね」

 

 夏目や笹雪、雨宮が話しに乗ってくれる。

 

「や、焼きソバ!? じゃぁ、たこ焼きも!?」

「あはは、ナビー、それは無理だよ、たこがないよ」

「ええ……、残念……」

「残念がる必要はないぞ、ナビー、出来るだけ祭りっぽくする、金魚……、メダカすくいとか、射的とか、色々考えているんだから」

 

 と、先頭を歩く秋葉が話してくれる。

 

「そうそう、人見と花火みたいな事も出来ないか検討している」

「あと、りんご飴も」

「浴衣とお面とりんご飴……、かわいい、絶対かわいいよ、ナビー」

 

 などと、七夕の話に花を咲かせながら、私たちは深い森の中を進む。

 深い森の中といっても、それなりに明るい。

 広葉樹の葉の間から光の筋、薄明光線が幾重にも差し込む。

 そして、森の中も単調ではなく、木々にもそれぞれ特徴がある。

 落ちている岩石や地盤の固さの違いなどで木々たちの形が変わり、それぞれが個性を主張する。

 しばらく歩くと、少しひらけた場所に出た。

 

「今日はこの辺かな……」

 

 と、秋葉が荷物を下ろしながら言う。

 そこは木々もまばら。

 地面は土ではなく砂利、さらに大小様々な石や岩などが点在している。

 印象で言えば、川、水の干上がった河川って感じだった。

 

「どのくらい来たぁ?」

 

 と、笹雪も荷物を下ろしながら尋ねる。

 

「5キロくらいかなぁ、ラグナロクと山のちょうど中間くらい」

「そんなものかぁ……」

 

 まぁ、そんなものだね、1時間も歩いてないし。

 

「暑い!」

 

 と、私も羽織っていた茶色のカーディガンを脱いで、その辺の大岩の上に放り投げる。

 

「ナビー、帰る時忘れないのよ」

「大丈夫、大丈夫!」

 

 とりあえず、ここには何があるのかなぁ……。

 私はそこら辺の石をひっくり返して、その裏側を覗き込む……。

 

「うわぁ……」

 

 と、すぐに石を元の場所に戻す。

 

「そ、そんな事より、竹、笹……」

 

 立ち上がって周囲を見渡す。

 深い森の中とは違って自生している広葉樹はすべて幹の細い若木って感じのものばかり。

 

「干上がってそれほど時間が経ってないね」

 

 砂利も角の取れた丸っこいのばかり。

 元河川敷、その印象そのままに、砂利とまばらな若木が続く道がくねくねと伸びている。

 幅は、だいたい30メートルくらいある、それがずっと先まで続いている。

 

「とりあえず、ここをベースにして、その周辺の探索からはじめよう」

「おう」

「みんな、あんまり森の中に入らないでね、迷子になっちゃうから」

「了解」

 

 と、みんなの話し声が聞える。

 夏目は森の中に入ると迷子になっちゃうとか言っているけど、慣れてくると案外迷子にならないんだよね。

 木々には一つひとつ特徴があるし、その枝の伸び方でも方角がわかる。

 だから、注意して見ていれば、よっぽどの事がない限り道に迷う事はない。

 

「いやな予感がするなぁ……」

 

 と、私はまだ背の低い広葉樹の若木の枝を掴んで揺らす。

 

「遠くから見えた竹っぽいのってこれだったんじゃないのかなぁ……」

 

 若木の葉は森の広葉樹たちよりも薄い黄緑色をしていた。

 ちょうど、竹とか笹っぽい色合い……。

 

「うーん……」

 

 若木を見上げて目を細める……。

 

「いや、ちょっと待てよ、葉が小さくて、なんか竹っぽく見えない?」

 

 と、目を細めながら、そのままうしろに下がっていく。

 

「おお?」

 

 葉の垂れ下がり具合とか枝単体で見るとすごく竹っぽいよ! 

 

「お、おお?」

 

 もっと目を細めて、さらにうしろに下がっていく。

 

「おお!?」

 

 なんか、バランスを崩した。

 

「ひっ!?」

 

 腕をぐるぐるまわしてバランスをとろうとするけど、だんだんうしろに倒れていく。

 

「きゃぁ!?」

 

 な、なにこれ、じゃらじゃらと砂利が崩れていくよ! 

 

「ナビー!?」

 

 夏目が異変に気付いてこちらに走ってくる。

 

「つ、つばさぁ!」

 

 でも、私は大量の砂利に飲み込まれように、うしろに転倒する。

 

「な、ナビー!?」

「きゃ、つばさ、助けて!」

 

 そして、そのまま何度も後転しながら下に転がり落ちていく。

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