いいね?
地底って言うらしい。
文字通り地の底、底っていうか個人的にはデカい洞窟みたいなものだと思ってるけど。
ここには妖怪って人相の悪い人達が沢山いる。 たまに殺されそうになるけど、基本的にはこちらが何かをしなければ友好関係は作れる。
そして、この地底の妖怪達の中にはさとりやこいしみたいな綺麗な人もいる。
「アッハッハ! そんな事で嫉妬されちゃあお前が可哀想だ! アッハッハ!」
この大笑いをしながら酒を飲む人は星熊 勇儀さん。 俺はアネキと勝手に呼ばせてもらってる。 この人は鬼らしい、その証拠に頭には立派な角がある。 そしてデカい。 何から何までデカい。
「ふん、の割には相変わらず表情一つ変えやしない……妬ましい」
この妬ましい人は水橋 パルスィ。 パルスィはよく人を妬ましく思うそうで、俺のこのバンドで固めた真顔すら妬ましいそうだ。 よく分かんないけどそういう表情が出来てもいいことは無いと思う。 むしろパルスィのそういう妬ましい時の表情とかいいじゃん。 顔に気持ちが出てていいじゃん。
「まぁお前くらいなもんだ、さとりを前にして平然としているどころかあいつを困らせられるのは」
「たしかに、普通の人間……いや妖怪でさえ目の前に立つ事を嫌がるのに。 妬ましい」
そうは言われてもなぁ……
「あとはそのガチガチに固まった顔を何とかできりゃあ最高だ。 ほれ、酒を飲め飲め」
えぇ〜これ以上はアカン。 これ以上は酔って裸で踊り出す。
「やめときなさいって、そいつは人間なんだから」
「いいじゃあないか。 それに、前に酔っ払った時はこの固い口を開いて裸で踊ってくれたんだぜ?」
「……マジ?」
うん。(´・ω・`)
「よし、飲ませない」
「よし来た!」
わぁー!? 待って! 待ってって二人とも!
「ここであいつよりも先にアンタの口から声を聞ける事ができれば……さいっこうに悔しがるさとりを見ることができるわ!」
パルスィてめー! このエルフ耳め! そこら辺にいるオークみてぇな妖怪を呼ぶぞ! あ、勇儀のアネキがいるからダメだぁ!
「ほれ、ここに用意したるは鬼すら酔う美酒。 ささ、こいつをぐびっと、な?」
いやー! それアルコール度数いくつだよ! 鬼のアンタが酔うなら20.30の話じゃないだろー!
「さぁ、私の前で痴態を晒しなさい!」
「ほーれ、逃げられると思うなよ〜?」
いやー! アルハラいやー!
今日も俺はマスクマン。
妖怪からのアルハラを回避するために、泣く泣く口を開くことに。 ……羽交い締めにされた時にアネキとパルスィの柔らかい胸が当たって気持ちよかったです。(エロガキ並感)
たらいまー
「あらお帰りなさい……って、またあの二人にしこたま酒を飲まされたみたいですね……」
うんー
「心の声すら呂律が回ってない……無駄に器用ですね……」
あー……お水お水……
「私が持ってきてあげますよ、貴方はそこのソファにでも座っててください」
あいがとー
「ふぅ……やれやれ」
うーん、やっぱりのみすぎたー。むしろゆーぎのアネキはどうしてへっちゃらなんらー? さすおにー……なのかぁ?
「はいはい、これでも飲んで落ち着いてくださいね」
とんくす。
「……にしても飲んできたって割には随分と心は豊かに楽しんでいたみたいですね」
久々に人前で『歌った』からねーゴクゴク。
「はー、そうなんですか。 喉が酒でやられないように気を付けてーー今何と仰いました?」
んー?
「今、何と仰ったんですか!? 貴方酔っ払ったら心までヘニョヘニョになるのやめてください! 微妙に読んだ時に酔っていることしか分からないんですよ! 貴方どれだけ覚り妖怪キラーなんですか!」
さとり声が大きい……グエ。
「いいから! 答えなさい!」
ゆゆゆ揺らさないで……吐く……吐いちゃう……
「歌ってなんですか! 貴方私の前で一ミリたりともそんな事を心で浮かべてなかったじゃないですか!! 無意識にやってるんですか!? どんだけ心が器用なんですかー!!」
ごめんさとり……もう寝る……眠いから……明日になったらちゃんと説明するから……
「あ! こら寝るな! ってことは何ですか? 私だけハブですか? 私だけ陰キャラみたいな事になってるんですか? むしろ心が読めるのに私だけハブなんですか? どうなんですかー!! 寝るなー!!」
……zZZ……
「くっ……本当に寝るとは……こうなったら……!」
ZZz……
今日も俺はマスクマン。
酒に酔っても真顔のまま。 でも顔は面白いくらいに赤くなる。 あと千鳥足。
それでも寝言は言わない。
……うーんむにゃむにゃ。
「おはよー! 起きてー! 起きたー!?」
うぐふぇ!? ……空か、お前朝から元気だな……
「こらお空、お兄さんのお腹に跨るんじゃないの。 昨日酔っ払いながら帰ってきたんだから」
「うにゅ? 酔っ払うとお腹に乗られるの嫌なの?」
「お兄さん吐いちゃうからね」
「えぇー! それは大変だー!」
うぇ……空……腹の上で暴れるな……頼むから降りて……
「あ! ごめんねおにーさん! よいしょっと……」
はぁ、ようやく楽になれた……
「はい、お兄さんお水だよ」
あぁすまん……
「ありがとうお燐」
「どーいたしましーーえ?」
……ふぅ、さて、喉の調子は……
「あ。 あっ! あ〜♪ ……うん、やめとくか」
「……」
「……」
やっぱ酒飲みながら歌うのはいいけど、酷使はできねぇなぁ。 今日は喉休めとくか。 あ、のど飴舐めよ。 確かまだあったよなぁ〜
「あ、え、今……今お兄さん……!」
「あーアメ! 私も欲しい!」
お、空も舐めるか? のど飴だけど。 ほれ。
「わーい! やったー!」
「って違うでしょ! そうじゃなくて今お兄さんが喋ったでしょ!?」
「……確かに!」
「アメのせいで思考が一瞬で塗り替えられてる……まぁいつもの事だけど」
うーん? あ、君らの前では喋った事もないし声を出したこともなかったか。
「おにーさんすっごいキレーで良い声してたね!」
「うん、もしかして歌でも歌う人なのかい?」
あぁ、俺はな……
「やっはろー、おはようお姉ちゃん」
「あらこいし、珍しく普通におはようを言ったわね」
覚り妖怪の朝は早い……のかどうかは定かではないが、今現在外来人である彼を居候させているので比較的地上の人間と同じ時間帯で行動をしている。
さとりが朝早くから起きるのは単純に彼が朝から行動を開始するからだ。 こいしは何となくである。
「お兄ちゃんがいる間は出来る限りお兄ちゃんに合わせるつもりだよ〜」
「……無意識レベルで合わせるのね、流石は我が妹。 無意識なのに合わせられるとかお姉ちゃんちょっと頭痛が痛いわ」
こいしは無意識、故に色々な所が意味不明であり、そこがさとりを悩ませる部分ではあるものの……最近は比較的普通に対応できるようになってきた。 オカルトボール異変からかもしれないし、それとも元々こいしはこういう無意識で行動しており、さとりがそれに気付いていなかっただけかもしれないが。
「ねぇねぇお姉ちゃん」
「はぁい?」
「どうしてお姉ちゃんはお兄ちゃんの声を聞きたいの? 声フェチ? 声豚なの?」
「どこでそんな言葉を覚えてきたのこいし……私は単純に、未だに喋らない口を割らない彼のあのマスクを引き剥がしたいだけよ」
「え、顔面の皮膚フェチ?」
「違うわよ!? 無意識に自分で勝手に引かないで!?」
こいしは無意識、故に思った事を口にするよりも鋭角なストレートを通り越した消える魔球を放り込んでくる。 恐ろしい少女である。
「……ん〜だったら普通にお兄ちゃんを亀甲縛りで動けなくして心の奥深くまで視ちゃえば?」
「それは嫌よ」
「あ、それは嫌なんだ」
「当然よ。 私は覚り妖怪、普段から相手の心の上澄みをしっかり覗き、相手が浮かべた深層意識を深く追求できる素晴らしい能力の妖怪なのよ? そんな私が、「貴方の心の移り変わりを読むことができないから拘束させて好きなように心を覗かせて?」なんて敗北宣言をして無様に能力に任せにする結果を受け入れられると思う? いや無理よ!」
「お姉ちゃん長文は顔真っ赤の証拠だよ?」
「能力にかまける程私の脳内は残念じゃあないわ! 必ずや、この数数多の本から得た知識を元に会話の中から彼の心の深層意識を暴き出して、あの覚り妖怪キラーである彼にギャフンと言わせてみせるわ!」
「あ、これ聞こえてないやーつ。 あとお姉ちゃんそれは悪役の決まり文句だし」
さとりの熱弁を話半分くらいに聞き流し、こいしは姉の姿に呆れながらふと気付く。
「よく考えたらこうやって演説している間にもお兄ちゃんがお燐やお空の前で喋ってる可能性あるよね?」
「え?」
さとり、思わず素の反応でこいしを見る。
「だって、お兄ちゃんをいつもお燐とお空が起こしに行ってるでしょ? なら寝起きに一言二言くらい口にしててもおかしくないよね?」
「あ」
ここで気付く、圧倒的に己の過信に、驕りに。
「い、今まで主人っぽく振る舞っていたのが裏目ってたあああ!?」
こいしの目には、膝から綺麗に床につき、両手を合わせて綺麗な四つん這いになっている姉の姿があった。
思わず口にせずにはいられない。
「お姉ちゃんもしかしてポンコツ……」
「言わないでぇぇぇぇ!!」
古明地 さとり、心が読める覚り妖怪であったが……果てしないポンコツであった。
ちなみに、起きてきた彼とお空達の反応を見てまたも綺麗な四つん這いを披露した。
ちょっと面白かったとこいしは後に語る。
マスクマンは歌を歌えるようです。
歌詞は流石にアカンので載せませんが、オリジナルの歌詞とかそれもうただのポエムなのでやめときます。
今回も誤字脱字等のミスがありましたらコメントにてお教えください。