ミニモンスターたちとご主人様   作:天葵

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小さなイビルジョーはお好きですか?


小さな恐暴竜

 

 鮭、お米、味噌汁。他の人たちがどんな朝食を食べているか、私には分からないけど、私にとってはこの3品が大好きだ。そりゃあもう、たまに3食このメニューになることもしばしばある。それぐらい好きだ。

 

「いただきます」

 

 感謝の念を込めて、目を瞑って手を合わせる。グゥ、とお腹が早く食べろと急かしてくるので、机の上に並んでいる朝ごはんに手を付けようと目を開いてお箸を持つと、

 

「……ジョー君?ちょおっといいかな?」

「ぎゃう!ぎゃうん!」

 

 あらジョー君。あなたの口周りに付いてるそのピンク色の物と白い物は何かな?目でそう訴えかけるが、当のジョー君はぎゃうぎゃうと可愛らしく鳴くことで話を逸らそうと必死だ。

 

 私はジョー君を持ち上げて、ニコッと笑いかけると、何故かプルプルと震えだすジョー君。おかしいなぁ、何で机の上には味噌汁しか残っていないのかなあ?

 

 その言葉が決定打になったのか、観念したようにぐったりとして、その小さな体を私に預ける。

 ……うぬぬ、可愛いから許す。

 

 そう伝えると、パアッと明るくなり、尻尾をブンブンと振って甘えてくるジョー君。硬いけど柔らかいという、矛盾した感触のジョー君の皮膚を撫でながら、私は失った朝食を再び作るために席を立った。

 

 

******

 

 

 私はイビルジョーを飼っている。普通の人が聞けば「はぁ?」となるだろうけど、私が飼っているのは、小さいイビルジョーだ。

 

 子供の頃、好奇心に負けて村の外を歩いていると、何かを踏んづけた。何だろうと注視してみると、それは草でも地面でも無く、イビルジョーだった。当時の私よりもちょっと小さかったけどね。

 

 それで、踏まれたことに怒ったイビルジョーと、日が暮れるまで鬼ごっこをした。今だからこんなに軽く言えるけど、多分当時捕まってたら私死んでたね。だってイビルジョーだし。貪食の恐王なんて呼ばれるモンスターだって知ったときは、思わず倒れそうになった。

 

 まあ、今はこうして仲良しなんだから、結果良ければ全て良し、だね。それに、ジョー君は所謂特異個体って言われる個体で、通常のイビルジョーよりも食事量がずっと少なくて、凶暴性が無いに等しいから、飼う分にはあまり不自由しない。……私のご飯を取るのは勘弁して欲しいけど。

 

 

 

 今は朝食後の軽い散歩で、村の中をジョー君と一緒に歩いている。たまーに私の前に出てきて踏みそうになる。心臓に悪いから勘弁して欲しいんだけど、この子ったら相当な甘えん坊だから多分無理だね。

 

 私の住んでいる村は結構広い。だから一周するのにもかなりかかるし、それに加えて、

 

「あ!じょー君だ!」

「ほんとだ!」

「サクラお姉ちゃんもいっしょだ!」

「おはよう、みんな」

「「「おはよう!お姉ちゃん!」」」

「ぎゃうう!」

 

 何を隠そう、ジョー君はこの村では凄い人気者なのだ。道を歩けば少年たちは自らのおやつを代償にジョー君を愛でに来る。ジョー君自体も嫌では無さそうだから、良いことなんだと思う。自分の大好きな物を投げ打ってまでジョー君を愛でたいとは、この少年たち、かなり大物だ。

 

 そこからしばらく進むと、

 

「おう!ジョーとサクラちゃんじゃねえか!ほら、コイツはジョーにやるよ!デッカくなれよー」

 

 いやあの、デッカくなったら私たち食べられますよ。そう言いたい気持ちをなんとか堪え、笑顔でお礼を言っておく。ジョー君はおじさんから貰った生肉をむしゃむしゃするのに夢中らしく、尻尾がフリフリと揺れている。

 

 おばさんもジョー君を優しい目で見ている。

 

 どうやら、この村の人たちは器が大きいどころの騒ぎでは無いらしい。

 

 

******

 

 

 お散歩もそこそこに、太陽が真上に昇ってきた。つまりお昼ご飯の時間だ。今日のお昼ご飯はハンバーグ。私が腕によりをかけて作った物だ。

 

 いつも通り感謝の念を込めて、手を合わせて目を瞑ると、私の背後からトテトテと可愛らしい足音が。来たな、と気配を察知して、私のハンバーグを掻っ攫おうとジャンプしたジョー君を捕獲。

 

「ぎゃう!?」

 

 まさか捕まるとは思わなかったのだろう。足をバタつかせるが、そんなことをしても可愛いだけで、むしろ逆効果になる。……とはいえ、私はそんなに鬼畜じゃ無い。

 

 ジョー君をそっと床に下ろして、ハンバーグをお箸で2つに分ける。食器棚からお皿をもう1枚取って、そこに2つのうち1つのハンバーグを乗せて、ジョー君の目の前に置く。

 

「ぎゃう?」

 

 いつもでは考えられない私の行動に首を傾げるジョー君。別に今日が特別な日だとか、これからなにかがあるという訳でも無い。強いて言うなら、いつもご飯の取り合いをしているジョー君と、仲良く食べたいだけなのだ。

 

 ハンバーグをもきゅもきゅと頬張っているジョー君を見ると、こっちまで幸せな気分になってくる。

 

 そんなことを思いながら、私は自分の分のハンバーグを食べようと───

 

「ジョー君?」

「ぎゃうう!?」

 

 デコピンしておいた。

 

 全く、油断も隙も無い。

 

 

******

 

 

 ジョー君と戯れていると、いつの間にか日が沈んでいて、外は真っ暗だった。夜更かしはしたくないので、急いでお風呂に入った。もちろんジョー君も一緒にね。ジョー君はお風呂に入ると目を細めて、「ぎゃう……」ってなる。それを見るのが毎日の楽しみ。

 

 さて、そろそろ寝ようか。ベッドに入って目を閉じると、扉の向こうからガサガサと音が聞こえる。私はそれを気に留めることも無く、黙って少し端に寄る。

 

 すると、扉が開かれる音と共に、トテトテと足音が聞こえる。足音の主はぴょんとジャンプして、寝ている私の横まで来ると、ポテッと倒れる。その重さが心地良くて、思わずニヤける。

 

 私は何かを抱かないと寝れないので、必然的に隣にいるジョー君を抱き締めることになる。私にもたれかかる、小さくて暖かい体を優しくギュッとする。

 

 

 

 

 

 

「ぎゃう……♪」

 

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