転生者は夢を見る   作:ソン

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一応完結までの大まかなプロットはあるので勢いでは無いです。
後余り、原作と絡みません。
今作のコンセプトは「戦闘モノ」になるよう心がけています。
一話に一回は戦闘シーンを用意するのが目標、故にシナリオは凄く雑ですが神様転生と言うオチはありませんのでご安心ください。
……果たして大丈夫なのか。


The fool walks the night

「……ッ」

 

 腕が痛い。否、腕だけではなく、体中が疼いている。肉の裏だけでは飽き足らず臓腑の真髄にまで抉りこむような疼痛がある。

 それを堪えながら、少年は這いずって手を伸ばす。

 

「負ける……かよ」

 

 手が掴むのは無人の街に転がる砂粒のみ。傍らには今まで戦いを共にした者達が亡骸となって倒れていた。

 少年のすぐ隣――その亡骸は彼の兄だった人物だ。

 彼らは兵士だった。家族の仇を取るべく旗を挙げた勇者だった。

 若い年ながらも果敢に戦い、多くの戦場を駆け抜けて来た猛者である。だが突然の奇襲にはどうしようもなく、そのまま襲撃を受けて凶弾に倒れた。

 その奇襲者はIS操縦者だった。どうしようもなく追い詰められながらも、奮戦し多くの仲間が散って行った。

 少年が強奪したISの武器、簡易式のハンドガンが見事にその操縦者を撃墜しその命を屠って見せた。

 表に出れば異例な出来事であるがそれを無事に見届けた者はいない。まもなく少年も知るのだから。

 血を余りにも失いすぎた。失血死としては余りにも過剰だ。まだ意識が保てているだけマシな方だろう。

 

「……?」

 

 転がっている何か。それはISのコアだった。少年が止めを刺した操縦者の遺物だった。

 失いかけた意識でそれに触れる。

 

 

 途端、少年の意識は眩しい光にかき消されていく。

 白光に塗りつぶされる視界の中で、少年は確かにその姿を見た。ずっと焦がれていて、守れなかった欠片の一つ。

 

「――母さん」

 

 そう言って、彼――光崎(こうざき)白夜(びゃくや)の全ては白い霧に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

 深夜、町はずれの一角を疾走する複数の車があった。黒塗りの車が深夜に町はずれを併走すると言う光景は誰が見ても不審を抱かざるを得ない。

 そしてその車は突如、動きを止める。その眼前に広がる無数の家財。それは簡易式のバリケードと呼んだ方がいいだろう。ただ乱雑に投げ捨てたと言う感じが強い。

 乗っていた男達が拳銃を見えぬようスーツの内側にしまい込みながら降車する。ヘッドライトの光が辺りを照らした。

 それらのバリケードの前に座り込む少年がいた。黒いコートを羽織った黒衣の少年。年は恐らく十六歳ほど。

 見かけと風貌はまだ目を瞑れば見逃す事は出来るだろうが、少年が放つ眼光はまるで獣のよう。それだけはどうしても見透かせない。

 

「よう、こんな時間に何してんだ」

「……ただの引っ越しだよ、ガキはおネンネの時間だぜ」

 

 男の言葉に少年は口元を歪める。

 怠慢な動作で立ち上がり、彼は鼻を指でこすり少しだけ笑う。

 たったそれだけの動きだと言うのに、男達は戦慄を感じ取った。

 彼は明らかに普通ではない。その佇まいも風貌も声も動きも、年相応と断ずるには余りにもズレ過ぎている。

 

「ただのおめかしにしちゃ、血の臭いが強いな。火薬と鉄はインターホン代わりか?」

「……」

 

 男達の思考が瞬時に統一する。

 この少年は危険だ。ここで殺しておかなければ。

 その判断は人の行動としては十分範囲内だろう。恐怖を退けるために攻撃行動を取ると言うのは生きてるからこそ可能な心変わりである。

 向けられた殺意に気づいてか否か、少年は鼻で笑って男達を見渡した。他愛も無い話をするかのような口調で、彼は口を開く。

 

「そういいや、二時間くらい前にとあるご令嬢が誘拐されたらしい。目標は二人の姉妹で、姉の方は自力で撃退したそうだが、妹の方は攫われたままって聞いた。

 ――さてと、んじゃその荷台の中、見せてもらうぜ」

 

 銃弾が放たれる。数十人の男達が一斉に発砲したのだ。

 初弾――暗闇の中で避ける事は至難の業だ。ヘッドライトの光は少年にとって逆行であり、尚更見えにくい。

 このままであれば間違いなく、銃弾は少年の体を穿つ。

 だと言うのに彼は落ち着いた雰囲気でコートの中に両手を入れた。

 

「――それでいい」

 

 瞬間、少年の両手には拳銃が携えられていた。

 目にも留まらぬ抜き撃ち。それは男達が放った銃弾を全て相殺し彼らの頭部を貫いていた。無論、それはただ一発の弾丸によって成し遂げられたのではなく、複数の弾丸が次々と発砲されたが故に生み出された結果である。

 銀の装飾と黒の装飾が施された二挺の自動拳銃。艶のある銃身が鏡となって、男達の姿を写した。そしてそれを携える少年の口元は更なる笑みを携えている。その瞳は刃の如く鋭利だった。

 それらの銃口から生じた音はただの拳銃にしては余りにも強力過ぎる。ハンドガンと言うよりもライフルの方がしっくりと来た。だが一体どうすれば、ハンドガンのサイズでライフルクラスの威力を出せるのか、そして少年がそれを片手で制御ししかも二挺同時に放つ事が出来るのか。

 少年は両手の銃をくるりと回して、再び構え直す。その表情はどこか不気味に微笑んでいた。まるで獣を彷彿させるような姿に、男達の足が僅かにすくむ。

 

「さぁ、銃を向けたって事はやるんだろ? 撃ってきたって事は殺し合うんだろ? 睨むって事は逃げないんだろ? だったらやろうぜ。お互い聞く耳なんて持たんよな?」

 

 軽やかな――しかしどこか重みのある足音を立てながら、少年がゆっくりと歩いて来る。両手に持った拳銃を指先で弄びながら、ゆっくりとゆっくりと近づいて来る。

 沈黙――それを破るかのように突如、一台の車が甲高い音を立てて爆走する。

 その進路の先は少年とバリケードだった。少年の体を擦り潰し、バリケードごと突破するつもりなのだろう。確かに搭載されたエンジンが持つ馬力ならばそれは難しい事ではない。

 だがそれは少年に一つの事を悟らせていた。その車の荷台に例の人物は乗っていない。それは致命的な情報だった。少年がまだもう一つの得物を振るえぬ決定的な理由だった。

まるで憑き物が落ちたかのような俊敏な動作を以て少年は迫る車へ銃を乱射する。

 直進する弾丸はフロントガラスを木端微塵にし、乗っていた男達を貫き、鮮血を迸らせる。車体を掠めた弾丸は残る男達を穿ち、絶命させた。

 秒間数十発の連射など、到底人間に熟し得る芸当ではない。しかし少年はそれをいともたやすくして見せた。

 

「仕上げだ。派手な火薬をぶちまけろ」

 

 一丁を口に加え、残る一丁をホルスターに戻す。今、少年の両手には何も握られていない。だが彼は何かを握るかのように手を動かし、大きく振りかぶる。

 突如、少年の手に一振りの大剣が姿を現した。

 剣の幅は少年の背丈ほどある銀色の巨大な剣。剣の分類でいうのならばクレイモアと呼ばれるそれは、無人の暴走車を両断の下に斬り捨てた。巻き上げられた煙と地面に刻まれた一本の直線が、その威力を物語っている。

 少年の左右を切断された車の欠片が飛来し、バリケードへと直撃した。

 

「……さて、とっととズラかるとするかね」

『あぁ、遊びすぎだよお前は。上空からさっさと仕留めればいいモノを』

 

 少年の耳につけられた小型のインカムからオペレーターである女の声が聞こえる。

 彼は大剣を背中に背負い、拳銃をコートの中にしまってから残る一台の車へと近づく。

 

「で、本当にそれはアンタの言う通りなのか。フタ開けてみて手違いだったら無駄骨だぜ」

『何、間違いはないさ。それに荷台にいる人物はスカウトするには最適な程の家系の生まれだぞ。人材不足のウチからすれば喉どころか、骨の髄から手が出る程欲しい人材だ』

「そうかい。だったら期待しかないね」

 

 少年が荷台を開けると、そこには猿轡で口元を拘束され昏睡状態にさせられた少女の姿があった。

 水色の髪に空間投影ディスプレイ搭載の眼鏡、そして品のある顔立ち――それは確かに上流階級の生まれだろう。

 容姿は確かに大当たりだ。少年は思わず口笛を吹き、彼女の猿轡を外す。呼吸をしている事からどうやら命に別状はないらしい。

 少女を肩に担ぎ、少年はインカムに呼びかける。

 

「目標確保だ」

『そろそろ夜明けだ。寄り道するなよ』

 

 そうして夜の町に突如現れ、颯爽と爆心地を作り上げた少年は軽やかな足取りでその場を後にした。

 ――彼の名は紅裂(こうざき)百夜(びゃくや)

 総従業員数二名の便利屋「アンイーヴン」に勤めるたった一人しかいない自称社員である。

 

 

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