すいません冗談です。リアルが忙しい上にスランプ気味でしたので、投稿が大きく遅れました。不定期更新ですが、これからちゃんと投稿できると……いいなぁ(震え声)
私は怖い。私は怖い。
全ては幻想。瞬間の幻覚。
私は怖い。私は怖い。
全ては永遠。不滅の現実。
私は見えない。私は見えない。
全ては幻想。私にはなにも見えない。
そこは屍の山だった。人が人で埋め尽くされている。あちこちは血化粧を帯びていて、使っていたであろう武器が散らばっている。
銃もあればナイフもあり、中世を思わせる剣のようなものまであった。だが既にそれを使っていた者達は生きていない。
そんな中、一人の子供がいた。彼は死体に座り、それが持っていた干し肉に被りついている。彼の着ている服は擦り切れた軍服であり、到底服とは呼べない。
辺りは冷え込んでいて、既に満月が顔を覗かせていた。無論、それが見惚れるような美しさであったとしても今の彼にはどうでもいい事だった。
生きなくてはならない。奪ったのだから、生まれてしまったのだから。その思いが彼を動かしていた。服には奪ったナイフや剣、銃が括りつけられているが、それも血が付着していて武器としての役目は果たしそうにはない。
『死体を喰らう影がいると聞いたが、お前がそうか』
声が聞こえた。振り返れば女が立っている。
彼女は黒いコートに身を包んで、両手をポケットに突っこんでいる。口に加えている煙草は紫煙を曇らせていた。鋭い切れ目が少年を捉える。
『影にしてはやたらと汚れている。鴉の色がまともに見えるな』
少年は干し肉を投げ捨てて、女へ向けて銃と剣を構える。だがその構えはぎこちなく、素人も同然であった。
女は彼を見て呆れたように笑った。まるでタネの見え透いた手品を見るかのような様子であり、それが一層彼に警戒を抱かせる。
『そうして生きて来たのか。そいつらも全部、剥いで来たのか。それは全部飾り物か』
彼が狙いを定める。銃口を女の頭に、引金に指を掛ける。
あと少し、あと少しで――
『――なら、お前は本物だな。幻影じゃない』
その言葉に息が詰まる。
彼女の言葉は、彼がずっと渇望し続けて来たモノだ。己の渇きを潤すには十分過ぎた。
『這って生きた、それだけでお前は本物だ。それ以外に何と言う』
彼女が歩いて来る。脇目も振らず、ただ真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに。
その姿に思わず、たじろいだ。
認めてくれると。彼の存在を、確かな一人として認可してくれたと。
彼女は少年が握っていた銃を手に取って、遠くへと投げ捨てた。
『迷っているのならついて来るといい。丁度私も迷っていた。一人で歩くとまた迷い込みそうでな。人手が欲しかったところだ』
そう言って、女は歩き去っていく。一方的に言葉を告げて彼女は去っていた。
――僅かに遅れて少年もその後を追いかけ始める。放り投げられた銃に目もくれず、彼は走り出す。
「ハッハァッ!」
沸騰する意識の中で夢を見た。大剣を振るい、拳銃を乱れ撃ち、槍を振り回す。その腕は気が付けば無意識に動いていたらしい。
オータムを蹴り飛ばし、興奮に踊り狂う両腕に拳銃を構える。何回斬っても、何回撃っても、彼女は獰猛な獣のように立ち上がる。
『――百夜。分かってるな?』
ふとギルバの声が響く。それと共に何かが蘇り、溢れていた何かが静まる。
大剣を背中に背負い、その両手に拳銃を握りしめる。
「悪いな、地獄が見えたから走りそうになった」
『まさにデッドランだ。間違っても、突っ走ってくれるなよ?』
「オーケー、手綱は放すなよギルバ」
静けさを取り戻した魂が、現状を把握する。
「おい、どーしたよッ! まだまだ行けるだろうが!」
「――っと、意外とヤバいな」
血を失いすぎた。百夜の体は特殊な体質―と言うよりも出生―であり、血液さえあればどこを穿たれようがすぐに再生する能力を兼ね備えている。
常人の血液量は五リットル。半分近く失えば大方失血死だ。しかし百夜の血液成分はその数倍近くに凝縮されている。彼ならば例え豪雨の如き出血をしても、平然としていられる。
驚異的な血液による身体及び代謝能力の強化。それこそが彼の超人的な戦闘能力の基盤であった。
「おい、ギルバ。この辺ってビル街だよな?」
『好きなようにやれ。所詮、人だ。巻き込まれたら、運が悪かっただけとしか言えん』
『…‥! そんな事』
『違うとでも言うのか? 雅。残念だが、世界はそう出来ているんだよ。生きてれば運良くて死ねば運悪く、だ。忌々しいが私にはそう割り切る事しか出来ん』
「ちゃんと配慮はするさ。さすがに余計な仕事はしたくねぇ」
拳銃を天井へ乱射し、風穴を開ける。オータムに気配を悟られるよりも早く、彼は跳躍し車両へと駆け上がった。
凄まじい速度で速度を早める揺り籠――止めねば大参事だ。しかしオータムの方も問題である。
二者とも、看過できない問題だ。車両が何かに激突すれば死傷者はまず間違いない。そしてオータムも止めなければ何を仕出かすか分からない。
「ハッ、次は何をするつもりだァ!?」
オータムは車両と空を並走しながら、武装をこちらへと向けている。ワンアクションで集中砲火が起こるのは想像に難くない。
大剣を床へと突き刺す。柄を両手で握りしめ、さらに強く握りしめる。
「……!」
無理に引き上げようとしているのではない。ただ単純に力を溜めているだけだ。オータム操るアラクネを叩き潰す一撃のために。
「遠慮するなよ? お前のためにくれてやるぜ」
瞬間、彼が大剣の柄を握ったまま前方へと跳躍しつつ回転した。
オータムが目を疑う。彼は間違いなく、叩き付けの攻撃を行うと踏んでいた。そのために彼女は迎え撃つ体勢へと移っていた。
「んな……!?」
百夜は確かに飛んでいる。大剣を構え飛んでいる。
彼は――大剣に突き刺した車体ごと宙へと跳んでいた。
「テメェの墓標にはデカすぎるが、まぁいいだろ」
まるで玩具を弄ぶ子供のように彼は小さく笑った。その背後に強大な鉄塊を抱いて。
「あばよ、亡霊」
数トンもの質力を持つ物は、凄まじい轟音と衝撃を以てしてオータムへと叩き付けられた。