英雄の半身と弟子の交換転生 〜英雄輔翼伝〜 作:ゆうき あゆむ
取り急ぎプロローグを書き上げましたので、読んでいただければと思います。
なにぶんにも遅筆ですので、短いプロローグだけですが、このプロローグが無いとこの物語が始まりませんので、どうぞよろしく願いいたします。
宇宙歴883年、新帝国歴85年4月4日、バーラト自治政府にある閑静な住宅街の一角で、大勢の親族や友人達に見守られながらその老人は息を引き取った。
老人の名は、ユリアン・ミンツ、101歳まで生きた大往生であった。
図らずも、彼の師父にあたる人物の誕生日に息を引き取る事になった事は、最期の時まで意識のあった彼にとって、『人生の最後の日に、素晴らしい贈り物を貰った。』と思ったのではないだろうか。
彼の青春は戦争と共にあり、一部の人からは、彼の師父のヤン・ウェンリーや、獅子帝であるローエングラム朝の初代皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラム帝に次ぐ伝説の人物であった。
まだ自由惑星同盟が銀河の半分を有していた時にあっては、士官学校を卒業してないにも関わらず、わずか17歳で中尉となり、その後、師父の死の後に同盟が無くなると、イゼルローン共和政府の軍事司令官として、ラインハルト帝との会談を経て、バーラト星系の自治を獲得した。終戦を迎え平和になったその後の人生は、彼の師父であるヤン・ウェンリーの伝記やそこから連なる人々とその事象について書く事に従事した。
そう考えると、彼は実際の戦争はあまり経験していないが、そのほとんどの人生を後の世で150年戦争と呼ばれる、銀河帝国と自由惑星同盟の間の戦争について費やされたのに等しいと言えたのではないか。ただ、終戦後に書いたその著書は、ヤン・ウェンリーを中心とした150年戦争の終戦前後における歴史書としての意義が高く評価されていた。
他方、彼の死は150年戦争を体験し、詳しく知る世代がほとんど居なくなることを示唆しており、本当の意味での戦後の平和が訪れるとも言えるのではないだろうか。
彼の師父の言葉を脚色しつつも借りるのであれば、『終戦から80年以上も平和だったのだから、今後のさらに何十年かの平和は、残されている戦後世代が考えれば良い。親はもちろん、その上の世代の責任まで子が背負う必要は無いのだから…』と言ったはずであり、今の平和をこの後どれくらいの期間、享受できるのかは、残された者たちに委ねられたのである。
戦争をほとんど知らない世代に、平和を委ねて死を前にした最期の言葉は、彼らしいものだった。
「やっと、ヤン提督に会える。会ったら、誕生日のお祝いをしなきゃ…」
無邪気な少年のような心からの笑顔で言いった後、ユリアンは静かに瞼を閉じ、永遠の眠りについた。
はずであった…
序詞ー了
次回、際会
ユリアンは、キルヒアイス家の息子として生まれ変わり、彼の方と出会う・・・