ダゲキ「俺のトレーナーはかなり無茶だと思うのだが皆様はどう思うだろうか?」   作:個人情報の流出

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※この小説には特定のキャラ、ポケモンを貶める意図は一切ありません。それでも不快に感じた方は、そっとブラウザバックをお願いします。


プロローグ:イッシュ地方編~アユとダゲキ~
VSイッシュチャンピオン!


 皆様、ご機嫌はいかがだろうか。早速だが、まずは簡単な自己紹介からはじめたいと思う。

 俺はダゲキ。イッシュ地方で発見された、格闘タイプのポケモンだ。

 皆様は、イッシュ地方の格闘タイプ、と言われたら、どのポケモンを思い浮かべるだろうか? 多くの人が思い浮かべるのは、そう、ローブシンだと思う。

 ドッコラーから2段階の進化を経て至る、強力なポケモン。きっと、ローブシンを相棒にして冒険したトレーナーは多いだろう。建築現場なんかでも役に立つし、優秀なポケモンだ。

 それに比べて、ダゲキというポケモン。訓練して技を覚えさせなければ、格闘とノーマルの技しか覚えない。進化もしない。うむ。無能。自分の事ながら無能である。

 まあ、何が言いたいかというと。俺としては、ダゲキなんてポケモンを相棒にして冒険をするなんてやつは相当な物好きと言うことだ。

 ……そう言えば、イッシュの四天王には俺と同じダゲキを使っている者が居たな。彼もそれなりの物好きと言うことなのだろうか。

 

「いやぁ……ついに、ここまで来ちゃったねぇ」

 

 ついでに。俺を相棒として冒険している、物好きなトレーナーのことも紹介しておこうか。

 今、ボールの中の俺に語りかけた女が、俺のトレーナー。名はアユと言う。肩まである黒髪ストレートで、緑色を基調とした服を身に纏っている。本人曰く、森ガール風! らしい。 

 アユという名前はイッシュ系の名前ではないが、生まれはホウエンらしい。冒険の途中、アユ自身が語ってくれた。

 

「ようこそ! 挑戦者! 待ってたよー!」

 

 アユと対峙する、天女のような服を着た褐色の女。紫色の髪の毛を、何とも言えないような形に結んでいる彼女は、イッシュ地方のチャンピオン。名はアイリスと言う、らしい。冒険の途中、アユが教えてくれた。

 さて、ここまで言えば、今がどういう状況なのかわかるだろう。

 俺と、俺のトレーナーであるアユは今。四天王を打ち倒し、チャンピオンへの挑戦権を得てここにいる。

 まったく、四天王戦と良いチャンピオン戦と言い、なぜアユは俺を使い続けているのか理解できない。彼女ならもっと強いポケモンを捕まえることくらい容易だったろうに。

 まあ、ここまで来てしまった以上何を言っても仕方がない。ポケモンはただ、トレーナーを勝利に導くだけである。

 

「あたし、アイリス! おねーちゃん、お名前は?」

 

「アユだよ。よろしく、アイリスちゃん!」

 

「うん! よろしく、アユさん! ……今までの勝負、見てたよ。すごかった。正直、少し戦うのが怖いくらい。でもね。あたし、強いトレーナーとの勝負が楽しみなの! あなたは強いよ。だからこそ、あなたと戦えたら、あたしも! あたしのポケモンも、もっともっと強くなれるし、お互いわかり合えるもの! ……じゃあ、行くよ。ポケモンリーグ、チャンピオンアイリス! あなたに……勝ちます!」

 

 いいなりの勝利宣言から繰り出されたのは、鳴き声を聞くにサザンドラ。……しかし、戦うのが怖いとは。俺はそこまですごいことをしているつもりはないんだけどなぁ。

 俺のトレーナー、アユは、俺をチャンピオン戦まで連れて来るほどの物好きだ。

 そして、ちょっと……無茶な面がある。俺はその無茶に応えてきただけだ。

 アユが俺の入っているモンスターボールに手をかける。そろそろ出番らしい。

 アユは無茶だ。無茶な状況を覆せと命令してくるし、無茶な相手に勝てと指示してくる。タイプ相性も何もかもお構いなしだ。

 それを信頼と呼べれば美談なのだろうが、俺とアユの関係はそこまで美談じゃない。

 時にはそらをとべと指示してきたり、覚えてもいない技を指示してきたり……おっと、話がそれたな。まあ、色々と無茶なアユだが、そんなのが霞むくらいの無茶を彼女はしている。

 それは。

 

「出てきてダゲキ! 今回も1人で頑張って!」

 

 彼女の手持ちポケモンが俺だけ。と言うことだ。

 なぜかは知らない。アユは色んな事を俺に教えてくれるが、俺以外のポケモンを捕まえない理由を教えてくれたことは一度も無い。

 手持ちが俺しかいないものだから、彼女の勝敗は全て俺にかかっている。

 トレーナーとの戦いも、ジム戦も、前の四天王戦ですら、俺1匹。

 俺がボールから出るときに言うと決めているセリフが一つある。ちょうど良く今回もボールから出て来たため、言っておこうか。

 

 「ダゲダ(無茶だ)」

 

 まあボールから出た瞬間無茶な状況無茶な指示などいつものことだったから、いつの間にか俺の口癖のようになってしまった。

 さて、相手は予想通りサザンドラだ。見た目的には逆立ちしたって勝てそうにないな。相手、ドラゴン。俺、人型。ついでに素手。うーむ、不利。

 

「ダゲキ、れいとうパンチ!」

 

 まあ、ちょうど良く相性有利な技を覚えてるんだから不利ってわけではないが。

 拳に冷気を纏い足にぐっと力を溜めて……一気に。サザンドラの前へと移動する。

 目の前にはサザンドラの唖然とした顔。どうやら動けない様子だ。まあ、こうも一瞬で間合いを詰められては仕方のないことだけど。

 うむ、じゃあ、喰らって貰おうか。『れいとうパンチ』。

 ドゴォッ、と、到底人がパンチで出すような音ではない轟音が鳴り響き、サザンドラが後ろに吹き飛ぶ。いや、まあ、俺はダゲキだから人ではないのだが。

 

「サザンドラ!」

 

 その一撃でサザンドラは戦闘不能。俺が全力込めて殴った。当然だろう。

 

「やっぱり流石だね! ……まさか、あたしのサザンドラが一撃でやられちゃうなんて。……ちょっと、いや、かなり悔しい!」

 

 サザンドラをボールに戻したアイリスは、2つ目のモンスターボールに手をかけた。

 

「行って、ボスゴドラ!」

 

 次のポケモンは……ボスゴドラ、か。これはアユが話してくれたことがある。おっきくて硬くてかっこよくて強ーいポケモン! と。実物を見るのは初めてだ。

 

「ボスゴドラ、ボディパージ!」

 

 アイリスの鋭い指示が飛ぶ。アイリスの指示を受けたボスゴドラは、体の余計な装甲を捨て始めた。

 ……ボスゴドラの体表の鎧は着脱式なのか。覚えておこう。

 

「ダゲキー、かわらわり!」

 

 アイリスに対してアユの方は指示が緩い。これでは気合いも入らないというものだ。もうちょっとびしっと指示を飛ばせないものだろうか。……まあ急にびしっと指示を飛ばしてきたら病気を心配するが。

 なんて考えている間にも、俺の体は自然に動く。ボスゴドラ目がけて『かわらわり』を叩き込もうとして……

 するりと、避けられた。

 ええと、こういう時はなんて言うんだったか。アユに聞いたことがあったはず。驚いたとき、驚いたとき……

 かるちゃあしょっく! これだ、かるちゃあしょっく! 巨体が素早く動いて避けた!

 アユよ、こいつは鋼タイプで動きが遅いのでは無かったのか。びっくりしたぞ、俊敏だ。

 

「ダーゲーキぃ! ダゲダゲ言ってないで追撃して! インファイト!」

 

 おっと、俺としたことが取り乱していたみたいだ。アユの声で落ち着いた。ふむ、指示は『インファイト』か。確かに相手の懐に入れば避けられない。アユ、ナイス指示!

 指示を受けて俺は相手の懐に入り込むべく足に力を……

 

「させないでボスゴドラ! もろはのずつき!」

 

 アッボスゴドラが頭をこっちに向けて突っ込んできた。無茶だアユ。相手の懐には潜り込めない。

 

「頭なんてすり抜けちゃって! ダゲキ!」

 

 無茶だアユ。俺は格闘タイプだから相手をすり抜けるとかできない。

 ぐぬぬ、だが指示を受けた以上はやらなくては。どうすればすり抜けられる? 相手の頭を。しかしボスゴドラはすごい体勢だな。ボスゴドラにしてみれば低い位置に俺がいて、その俺に頭を向けて突っ込んできてるからお腹が地面すれすれだ。

 ん、今はボスゴドラの体勢が低いじゃないか。ちょっと飛び越えるか。うむ。良い考えだ。俺は前に飛ぶべく溜めていた力を上に飛ぶための力に変更。突っ込んでくるボスゴドラにタイミングを合わせてジャンプで躱す。

 ボスゴドラの後ろに着地した俺は、ボスゴドラが振り向くのに合わせて懐に……

 

「ボスゴドラ! 連続でもろはのずつき! 相手を懐に入れちゃダメだよー!」

 

「ドラァッ! (承知しました!)」

 

 アッ懐がない。どうすればいいこれ。再びボスゴドラが頭をこっちに向けて突っ込んできた。

 タイミングがわかっているから躱せるが、一向に攻撃に転じられない。どうやって崩そう、これ。

 あー、そうだ。こうすればいいかもしれん。

 ボスゴドラがこちらに突っ込んでくる。これで都合4回目のもろはのずつきだ。

 だが、今回はさっきよりも低く躱す。そして、俺が技を繰り出そうと構えたとき。

 

「今! かわらわり!」

 

 素晴らしい。今やろうとしていたこと、アユもやろうとしていたようだ。

 すなわち、ジャンプを低めにし、落下の勢いを使って『かわらわり』を叩き込む。

 効果抜群の技がボスゴドラの大きな背中にヒット。それと同時に、フィールドに大きく砂埃が舞う。

 それが晴れた時、そこに立っていたのは俺のみだ。ボスゴドラは戦闘不能。装甲を捨てた分の防御力の低下もあるだろうが、まあ、俺が効果相性のいい技で殴ったのだ。そりゃあこうなる。

 

「……やっぱりすごいな、あなたは。サザンドラだけじゃなくて、ボスゴドラまであっさりやられちゃうなんて。でも! 次のポケモンはそう簡単には倒せないよ! 行って、クリムガン!」

 

「ムガァ! (まっかせなさーい!)」

 

 ほう、次はクリムガンかなるほど。彼の攻撃は痛い。とくにぶん殴られると本当に痛い。これは気合いをいれて回避をせねばならな

 

「クリムガン! かえんほうしゃぁ!」

 

 ひょ!? 熱い! 熱いアユ熱い! なんてことだ! クリムガンが『かえんほうしゃ』撃ってきた! いや覚えるのはアユに教えてもらったから知ってたけど! 今まで対峙してきたクリムガンは大抵一撃で倒したし技出されても物理だから完全に頭から抜けていた! 熱い!

 

「わわ、ダゲキなにやってるの!? 避けなきゃダメじゃん!」

 

 そんなこと言われても油断していたのだから仕方がない。ぐぬぬ。アユに怒られてしまった。あのクリムガン絶対許さん。

 

「効いてるよ、クリムガン! もう一度、かえんほうしゃ!」

 

 一回喰らった技はもう喰らわん。俺は学習するダゲキなのだ。飛んで弾んで避けてやろう。ほら華麗。

 

「ダーゲーキ! どや顔してないで攻撃して! れいとうパンチ!」

 

 おっと失敬。ちょっと決まったと思ってしまったもので。さて、命令された以上、それは遂行せねばならない。しかしパンチか。クリムガンのトゲトゲして固い鱗に拳を叩きつけるのか。いや、俺はパンチかキックしか出来ないし、別にいいんだけど痛いのだ。素晴らしく痛いのだあいつの鱗。個体によっては俺の拳がボロボロになったりする。ふぁっきんクリムガン。

 そんなことを考えている間にも俺はしっかり動いている。ちょっと痛いのも我慢して、今クリムガンに『れいとうパンチ』を叩き込んだところだ。さすが出来るダゲキ。ダケキが出来たところで大したこと無いと思うのだが、そのツッコミはえぬじーだ。

 

「クリムガン! ドラゴンテェェェルっ!」

 

 が、しかし。俺の『れいとうパンチ』をもろに食らったクリムガンは、持ち前の高い防御で耐えきり、思い切り尻尾を叩きつけてきたのだった。ふぁっきんクリムガン。いってぇ。アユ、まじいてぇ。やっぱり俺一匹でチャンピオンになるとか無茶だったのだ。諦めようアユ。諦めて手持ちを六匹にして戻ってこよう。俺一匹でここまで来られたのだから、六匹なら絶対チャンピオンになれるって。ね?

 

「ダゲキ! まだやれるよね! もう一度れいとうパンチ!」

 

 アッハイ。諦める気など微塵もないんですね、わかります。というかまた『れいとうパンチ』なのか。アユは鬼なのか。もう既に体中痛いのに拳までボロボロにしろと言うのか。わかりましたよやってやりますよ。『れいとうパンチ』を当てればクリムガンともおさらばだろうからな。ふぁっきんクリムガン。

 

「クリムガン、いわなだれ! ダゲキを近づけちゃダメだよ!」

 

「ムガッガム! (わかってる!)」

 

 ぐぬぬ、やはりサザンドラから合わせて三回目。もう正面から当てさせてはくれないか。邪魔だ。『いわなだれ』めっちゃ邪魔だ。進路を妨害するように落としてくるのやめろ。クリムガンお前頭いいな。

 とんとんと岩を避けることに集中せざるを得なかったからか、いつの間にか手に込めた冷気が霧散してしまっていた。こういうときに限って岩を避けきり、絶好の攻撃チャンスが訪れるのだ。冷気を溜めなおす時間はない。こういうとき頼りになる技はやはり……

 

「ダゲキ! かわらわり!」

 

 流石だ、アユ。俺は最後の岩を足場にして思い切りジャンプし、上空から渾身の『かわらわり』を……

 

「クリムガン! ドラゴンテールで迎え撃って!」

 

 ……のぉぉぉぉぉぁぁぁ! ダメだ。それはダメだ。この勢いで『かわらわり』を『ドラゴンテール』に叩きつけたら死ぬ。絶対戦闘不能になる。ならなくても戦意喪失する! ストップ、ストッいってぇ。あ、いってぇ。なんとかクリムガンを戦闘不能には出来たけどいってぇ。『かわらわり』で『ドラゴンテール』の勢いを相殺してしまったが故に余計いてぇ。ほんと、もう。ほんともう、ふぁっきんクリムガン。

 

「……クリムガン、ありがと。お疲れ様、ゆっくり休んでね。行って、ラプラス!」

 

 次はラプラス。的はデカイ。固い甲羅があるものの、殴っても痛くない柔らかいところもいっぱいある。うん。いける。きっといける。もうあれだ、とっとと六匹倒してこのバトルを終わらせたい。ぶっちゃけ最近味わったことの無いくらいの接戦をクリムガンと演じてしまってめっちゃ疲れた。あれかな? このラプラス倒せば終わりかな? え? あとこいつ含めて三匹いる? ははは、ご冗談を。 

 

「ラプラス! うたう!」

 

 ……おっとぉ? 眠くなってきたぞぉ? え、大丈夫かアユ、これ、ピンZZZ……。

 

「だ、ダゲキ! ダメだよ寝ちゃあ!」

 

「アユさん。確かに、アユさんとダゲキは強いよ。クリムガンの攻撃を三回も受けて、全部耐えちゃうくらいだもん。でも、一匹しかポケモンをつれていない、って、こう言うことなの。状態異常を受けちゃったら、それだけで大きく不利になる。本当は、こんな形で決着を着けたくはなかったけど……あたし、今度はあなたの全力と戦いたいの! だから……ごめんね。ラプラス! ぜったいれいど!」

 

「……アイリスちゃん、ありがとね。ダゲキの目を覚まさせてくれて!」

 

「……うぇ!?」

 

 さっむ!? さむい、なんだこれさむいアユ何があった? あれ、ここはポケモンリーグで、俺はチャンピオンと戦って……

 

「ダゲキ! どうでもいいから早く動いて! インファイト!」

 

 アッハイ。なんかよくわからんけど了解した。あのラプラスに撃てばいいのかな? いくぞラプラス。歯を食いしばれ。

 一撃必殺。俺の『インファイト』を真正面から喰らい、目を回して倒れるラプラス。ふぃー、なんかよくわからんが、一仕事終えた。清々しい気分だ。めっちゃ寒いけど。

 

「……どうして? どうして、あなたのダゲキは倒れていないの? ぜったいれいどが、完全に決まったはずなのに……」

 

「えへへ。うちのダゲキのとくせいは、がんじょうなの。がんじょうにいちげきひっさつ技は効かない。だからダゲキはけろっと起き上がったんだよ」

 

 おお、なんとなく色々思い出してきた。そうか、俺はラプラスの『うたう』で眠らされたんだったか。それで、めっちゃ寒かったのは『ぜったいれいど』を喰らったから、と。……それ、俺のとくせいが『がんじょう』じゃなかったらやられてるじゃないか。あっぶな。だから無茶だと言うのに。

 

「……そっか。まだまだあたし、勉強不足なんだね。でも、まだあたし負けてない! 残ってるのはあと二匹だけど、絶対に勝つからね! いくよ! アーケオス!」

 

 げ。次はひこうタイプじゃないか。まあ『れいとうパンチ』があるから大丈夫だろうが、これ、何かしらの技を喰らったら戦闘不能になるぞ俺。

 

「大丈夫だよ、ダゲキ。ここまで来れたんだもん、絶対勝てる! 自信もって!」

 

 ……いい笑顔だ。元気でた。やってやろうではないか。もとより無茶は承知の内なのだ。なら無茶を通して、トレーナーを勝利に導くのがポケモンの役割なのだ!

 ……おい、誰だ今『現金なポケモンだなぁwwww』とか言った奴。あとでお前インファイトな。

 

「アーケオス、アクロバット!」

 

 うおっとぉ!? びっくりした、いきなり攻撃してこないでほしい。脇を掠めていったぞあいつ。しかし、流石に速いなアーケオス。油断してたら食らっていた。危ない危ない。 

 ……誰だ今『いやいや油断してたろwwww』とか言った奴。お前もあとでインファイトな。

 俺は今やる気まっくすなのだ。余計なツッコミはいれないで貰いたい。

 

「ダゲキ、今度もれいとうパンチ! 相手はアーケオスだもん、当てれば一発だよ!」

 

 お、そうだな。しかし、本当に便利だな『れいとうパンチ』。アユと一緒に修行していたときはどうしてこの技を? と思ったものだが、めちゃくちゃ使えるではないか。アユ、ナイス!

 しかし、ああも素早いアーケオスに『れいとうパンチ』を当てるのは至難の技だろう。無理に当てにいったら隙をさらして逆にやられかねん。慎重に狙わなければ。

 

「アーケオス! ストーンエッジ!」

 

 えっ……それは、無理。俺は大きくバックステップして『ストーンエッジ』を避ける。が、違う。無理なのは『ストーンエッジ』じゃない。そうじゃなくて。

 

「今! アクロバット!」

 

 そのあと。空中で身動きのとれない俺に、『アクロバット』が飛んでくるのが無理なのだ。一瞬で俺の目の前までやって来たアーケオスの勢いは、まるで弾丸のよう。

 ……ああ、すまないアユ。俺たちの挑戦は、ここまでのようだ。アユが無茶なのが原因の九割な気はするが、俺はこのあとのアユの悲しそうな顔などみたくはなかっ……

 

「ダゲキーっ! 頑張れぇーっ!」

 

 ……頑張る。アユがそんなに言うならやってやろうじゃないか。

 

 どごぉん! と、派手な音がする。それは、俺が『アクロバット』を喰らった音……ではなく。俺が、アーケオスの顎めがけて『スカイアッパー』のように『れいとうパンチ』を叩き込んだ音だ。 

 危なかった。途中でアユの声援があったから咄嗟に思い付いたものの、それがなければ負けていた。トレーナーは偉大である。これで無茶でなければ最高なのだが。

 

「……嘘」

 

 アイリスは茫然といった感じで呟く。それはそうだろうな。あんなもの、勝ちが確定したようなものだ。それを声援ひとつで覆されては堪ったものではないだろう。やはりアユの……もとい、トレーナーの声援と言うのは素晴らしい。

 

「とうとう、あと一匹になっちゃったね。でも、もうダゲキも限界が見えてる。さあ! 最後の勝負だよ。あたしは……この子を信じる! 行って! オノノクス!」

 

 ラストは……凄まじい威圧感だ。これが、チャンピオンのエース、オノノクス……。なんかもう、絶対殺してやるみたいな空気だしてる。アユ、怖い。俺ボールに戻っていいだろうか。ダメですよね、はい。

 

「オノノクス、りゅうのまい!」

 

 ぐぬぬ。『りゅうのまい』だと。こりゃ参った。

 『りゅうのまい』は、こうげきとすばやさを上げる技。これ以上技を受けると厳しい俺にとっては最悪と言えよう。

 

「りゅうのまいが終わる前に倒すよ、ダゲキ! れいとうパンチ!」

 

 アイアイサー。『りゅうのまい』で強化された『ダブルチョップ』なんて喰らった日には、戦闘不能を通り越して死んでしまうだろう。なら舞い中の隙を狙って先に倒すだけだ。

 え? 『れいとうパンチ』ばっかりでつまらない? 大体真っ正面から攻撃するだけで芸がない? ……考えてもみてほしい。ポケモンは俺一匹。今回の戦闘のような公式戦では、技は四つまでしか使えない。そして、俺はダゲキだ。どうトリッキーに立ち回ると言うのか。戦法が固定化されて先が見えてつまらないのは断じて俺のせいではない。文句なら俺一匹でチャンピオンに挑んでいるアユに言って貰いたい。

 

 と、そんなことはどうでもいい。とにかく、俺は素早く勝負を決着させるべく、オノノクスに『れいとうパンチ』を叩き込む。ここまで来て負けるとか洒落にならん。頑張ってきた俺の努力が台無しだ。絶対に倒すと言う気迫をもって『れいとうパンチ』をオノノクスの顔面にぶちこんだ。オノノクス、たまらず吹き飛ぶ。これは決まったろう。アユ、やったぞ。俺たちがチャンピオンだ。

 

「……オノノクス、じしん!」

 

「! ダゲキ、ジャンプして」

 

 うぉ? 了解アユ。真上に跳ぶ。っと、おお? 『じしん』だ。めちゃくちゃ地面が揺れてる。あれ当たったら多分戦闘不能だ。あわててオノノクスが吹き飛んだ方を見ると、オノノクスはボロボロの様子だが健在。元気に地面を揺らしていた。なぜだ。『れいとうパンチ』は完全に決まったはずなのに。

 

「アイリスちゃん、あなた、オノノクスにきあいのタスキを持たせてるんだね。危ない危ない、危うくやられるところだったよ」

 

「オノノクスが吹っ飛んじゃったのは予想外だったけど、決まると思ったんだけどな。流石アユさんとダゲキだよ。一匹で六匹も相手してるって言うのに微塵も動きが鈍ってない。ねえアユさん!」

 

「なあに? アイリスちゃん」

 

「オノノクスはもう戦闘不能寸前。でも、そんな状態からとっても強いあなたに勝てたら! とっても格好いいと思わない!? マダよ。マダマダっ! マダあたしたち、戦える! オノノクス! ダブルチョップ!」

 

「ダゲキ! かわしてれいとうパンチ!」

 

 ぬおお速い。あの巨体がこうも俊敏に動くとか反則だ。だが、なんとか『ダブルチョップ』の軌道はよめる。ここから反撃の……!

 

「オノノクス、じしん!」

 

 おっとぉ!? セーフだ。なんとか上に跳んだ。しかし、脚に力を込めて地面を踏みぬくだけで繰り出せる『じしん』は相当に厄介だな。ふとした隙にやられかねん。それに、今、俺は空中にいる。これも非常に厄介だ。

 

「オノノクス! シザークロス!」

 

「ダゲキ! かわして!」

 

 無茶だ、アユ。俺はひこうたいぷやふゆうポケモンでないから空中で身動きを取ることができない。しかし、かわさないと俺がやられる。これに関しては、無茶なんて言っていられまい! どうすればこれをかわせる? どうすれば……む。『シザークロス』には隙間があるな? これを利用しない手はない! 『シザークロス』のためにバッテンにされたオノノクスの手。その上方向の隙間からオノノクスの頭をつかみ、そのまま前方に自分の体を投げ飛ばす。結果、『シザークロス』は空振り。俺はなんとか事なきを得た。あぶね。

 

「オノノクス! もっかいじしん!」

 

 またそれか! ジャンプするしか避ける手段がないと言うのはしんどいぞ、アユ!

 

「オノノクス、今度こそトドメ! ダブルチョップ!」

 

 これは。完全に俺が着地した隙に当たるタイミングだな。ぶっちゃけ、これは避けられん。今度こそ俺は技を喰らうだろう。……だが。俺はこれを待っていた!

 

「ダゲっ! (アユっ!)」

 

「わかってるよダゲキ! こらえる!」

 

「えっ……? こらえる……?」

 

 オノノクスの『ダブルチョップ』が当たる瞬間に、俺は『こらえる』の体勢にはいる。一発目をそのまま受け、二発目に振り下ろされた右腕を、左腕でガッチリとつかむ。痛い。とてつもなく痛いが、つかまえたぞオノノクス!

 

「ダゲキ! インッファイトォ!」

 

「オノノクス! 振りほどいて!」

 

 慌てたアイリスの指示にオノノクスが反応する前に、俺は『インファイト』の一発目をオノノクスにぶち当てた。そこから二発、三発、四発。そんなものではない。何十発もの打撃の乱打をオノノクスに叩き込む。そうして『インファイト』が終わる頃には、オノノクスは目を回し……。その場に、倒れこんでいた。オノノクス、戦闘不能、だ。

 

「……勝っ、た? 勝ったの? 勝ったんだ! やった、やったよダゲキぃ!」

 

 ふぃー。アユがそんなに喜んでくれると言うなら、無茶を通して六匹抜きした甲斐があったというものだ。まさか、本当にチャンピオンを撃破できると思っていなかったのだが、やはりやればできるものだな。

 

「ふわあああ……力を出しきったのに……負けちゃったんだ、あたしたち!」

 

 そして。オノノクスを倒され、バトルに負けたアイリスは、どこか楽しそうにそう言った。そして、バトルフィールドを横切りアユの前までやってきた彼女は、アユの手を両手で握りしめた。

 

「勝てなくて悔しいよ! でもね。でも、聞いて。あたし、それ以上に嬉しいの! だってそうでしょ! 真剣勝負をすることで、あなたとあなたのポケモン! そして、あたしたち……これまで以上にわかりあえたよ! 今回のバトル、あたし、すっごく勉強になった! 世界にはまだこんな人がいるんだって、まだまだあたしは勉強不足なんだって、それを知ることができた! だから……ありがとう、アユさん!」

 

「そんなこと、ないよ。私一人じゃここまでだってたどり着けなかった。ダゲキ以外のポケモンでも、きっと駄目だった。私を信じて、どんな無茶だって聞いてくれるダゲキがいたから。私のパートナーがダゲキだったから、私はアイリスちゃんに勝つことができたの。今回のバトルで、私もそれを再認識することができたよ。だから、ありがとう、アイリスちゃん!」

 

 そう言って、二人は笑いあう。っていうかおい、今聞き捨てならない言葉が聞こえたな。アユ、お前、自分がやってることが無茶だってわかってたのか。わかってたらやめてほしいものなのだが。やめてほしいものなのだが!

 

「うん! じゃあ、いきましょ!」

 

 そう言って、アイリスは部屋の奥へと走り出す。ずっとアイリスの後ろにあった部屋に向かっているようだ。

 

「アユさーん! 早く早くー!」

 

「うん! 今いくねー! ふぅ、じゃあ行こっか、ダゲキ」

 

 おう。行くとしようか。

 

 

 

 

 アイリスにつれられて入った部屋は、荘厳で神秘的な雰囲気の部屋だった。壁には様々なトレーナーとポケモンたちの写真が壁のモニターに映されていた。

 

「すごい……」

 

 アユが思わず言葉を漏らす。うん。すごい。俺もアユとの旅の中で、こんな部屋見たことがなかった。

 

「ここはね、殿堂入りの部屋なの」

 

 雰囲気に飲まれる俺たちをクスクスと笑いながら、アイリスは語り出す。

 

「ポケモンのことを考え、ポケモンのために心を尽くす。そんなあふれる優しさを持つ卓越したトレーナーと!」

 

 なんだろう。おかしい。アユにはそれが当てはまらない気がしないでもない。アユ。もしかして君には、殿堂入りする資格がないのでは?

 

「トレーナーの心を信じ、トレーナーのため全力を出す。そんな尽きない強さを持つ、素晴らしいポケモンを!」

 

 ふふ、それほどでもない。そんなに誉められると照れてしまうではないか。

 

「永遠に忘れないよう、名前を刻む場所なの! ……それでは、アユさん。ここにいるトレーナー! 共にいるポケモン! 彼らが戦いを通じて培った美しい結束! それらを永遠の宝とするため、このマシンに記録します!」

 

 アユが俺をボールに戻し、トレーナーカードと共にアイリスに渡す。アイリスはそれを機械にセットすると、アユと俺の写真が新たに壁のモニターに映された。

 

 

 

 

 

 こうして。殿堂入りを果たした俺たちは、ゆっくりのんびりとチャンピオンロードを下っていた。

 

「いやぁー、ほんっとーに出来ちゃったね、殿堂入り。ありがとう、ダゲキ」

 

 ふむ、どういたしましてだ。俺もアユがいなきゃ勝てなかったからお互い様だ。ありがとうアユ。

 

「次はなにしよっか? 他の地方に行って、またポケモンリーグに挑戦するのもいいかな?」

 

 そのときは是非俺以外のポケモンも手持ちにいれてほしいものだな。もう二度とエスパータイプとの連戦なんてしたくない。あくタイプを投げてくれ。

 

「まー、今はそれは置いといて! とりあえず、これからもよろしくね、ダゲキ!」

 

 ……うむ。よかろう。そうやって笑顔を見せてくれるなら、よろしくしてやらんこともない。

 

 

 

 こうして。俺とアユの無茶な二人旅は続いていく。なお、俺たちはあとで取材を受け、今回のダゲキ一匹での殿堂入りは新聞の一面を飾ることになった。そのせいで俺たちは有名人になり、世界各地で腕試しとして無茶なバトルをさせられることなど、このときの俺は思ってもいなかった。

 

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