ダゲキ「俺のトレーナーはかなり無茶だと思うのだが皆様はどう思うだろうか?」   作:個人情報の流出

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アンケートに誰も答えてくれなかったので、とりあえずタイトルはこのままで行こうと思います。ちょっと寂しいとか、思ってないよ!

文字数少ないのとか、投稿遅れたのとかは文章が全然思い付かなかったからです。言い訳にもなりゃしないですね。申し訳ありません。次回はもうちょっと早く投稿できるようにします。


私を強くしてください

「……さて、どんな特訓をしよっか。頑張ってあいつを見返してやろうよ。あなたなら出来るよ絶対!」

 

 ポケモンセンターの宿泊室の内の一室。備え付けられているベッドに腰かけたアユは、同じく隣に腰かける女の子に元気にそう告げた。アユのそんな姿とは対称的に、女の子は俯き、どんよりとした雰囲気を身に纏っている。まるで一時期のアユみたいだな、と思うと、非常に失礼ながらなんだか笑えてくる俺である。プゲラ。

 

 パルテール街道での出来事の後、俺たちはハクダンシティに入った。女の子は戦闘不能になったポケモンの治療のため。俺たちは初めから目的地だ。

 日もすっかり沈んでしまって、町のいたるところに置かれたお洒落な街灯の照らす薄明かりの中を歩き、ポケモンセンターに入った。女の子はポケモンをジョーイさんに預け、二人はそのままポケモンセンターで、隣の席でアユが一方的に話をしながら食事をとった。その後女の子が治療の終わったポケモンを受け取って、今夜宿泊するための部屋を二部屋とり、そのうちの一室に女の子を引っ張り込んでこれからの事を話し合うことにした、というわけである。随分とわかりづらい説明になってしまったが、俺はただのダゲキである。その辺りを考慮して、色々多目に見てくれると嬉しい。ダゲキに分かりやすい説明などができるわけ無いのだ。

 ちなみに皆様お分かりだろうが、ポケモンセンターでの回復以外の事はアユが女の子を無理矢理引っ張り回す感じで付き合わせていた事もここに報告しておこう。そう考えてみると、女の子がどんよりとしたオーラを発しているのも仕方がないと思う。

 

「で、ですから。私はそういうの、別にいいのです」

 

 女の子は俯いたまま、ボソボソした声でそう言った。

 

「才能、無いのは本当ですから。私、何かあったら慌てちゃうし、素早くて的確な指示なんて出来ないし、状況判断も出来ないし……マロンさんとピカさんにも、迷惑をかけっぱなしで。あの男の子の言う通り、トレーナーを……」

 

「ストップ!」

 

「うえぇ!?」

 

 アユが急に大きな声で言葉を止めるものだから、女の子は素っ頓狂な声を出してベッドから落っこちてしまった。「あ、ごめんね?」とやけに軽く謝るアユを不機嫌そうな顔で見つめ、お尻をさすりながら女の子はベッドに座り直した。

 

「……急におっきな声出すのやめてくださいって、さっきから何度も言ってるじゃないですか。すごくびっくりするんですから」  

 

「いやぁ、ごめんって。あ、さっきまでのはついつい出しちゃっただけど、今度はちゃんと大きな声出そうとした結果だから勘違いしないでね!」

 

「……それなら尚酷いです」

 

「いやぁ、あなたが驚く姿が可愛いからついつい意地悪したくなっちゃって」

 

「それは最悪です! もう、なんなんですか!? さっきからずーっと私を引っ張り回して! いい加減……に……?」

 

 顔を真っ赤にして抗議する女の子を見て、アユはクスクスと笑っていた。それに気づいた女の子は目を丸くして、何事か言葉を紡ごうとして開いた口をポカンと開いたままにした。

 

「な、な、何で笑ってるんですか?」

 

「あーいや、ごめんね。……多少は元気でた?」

 

「え、あ……はい。その、多少は」

 

 俺も少しびっくりしていた。少し前に会ってから今までアユに散々いじられていた女の子だったが、ボソボソとした声でやめてくださいと言うのみだった。こんなに感情を表に出したことはなかったのだ。大人しそうな女の子から短期間で感情を引き出すほどしつこい嫌がらせをしたアユの所業を考えると誉められたこととは言えないが、こうして落ち込んでいるときに無理矢理感情を引き出されれば、ちょっとは元気になることをアユは知っている。それでちょっとだけ前向きになれることも、アユは知っている。デリカシーが無いくらいがちょうどいいのだ。きっと。

 

「……もしかして、さっきまでの嫌がらせは全部私を元気付けるためにやってたことなんですか?」

 

「最初はそうでもなかったんだけどね。途中からデリカシーの無いやつのことを思い出して、ちょっとくらい嫌がられることをして怒らせた方が気分も変わるかなぁと思ったんだ。どうどう? 大成功じゃない?」

 

「……なんか納得いかないですけど、そうですね。成功なんじゃないですか? ……私の食事に勝手にマトマのみの粉を入れたのだけは一生恨みますけど」

 

「あ、あはは……ごめんね」

 

 ちなみにアユがマトマのみの粉を入れた食事は、女の子が一口食べた後すぐにアユの物と交換された。ポケモンセンターで出る食事は全国共通で日替わりメニュー一つのみで、種類を選ぶことが出来ないのだが、アユと旅をしてきてその事が役に立ったのは今回が初めてだろう。

 ちなみに。アユは辛いものが大好物であるため、マトマ入りの食事を美味しそうに平らげていた。

 

「さて、そろそろ話を戻そっか。さっき、私があなたを止めたのはね。あなたが、言っちゃいけないことを言いそうになったから。トレーナーを(やめる)って言おうとしたでしょ」

 

 アユはやめるの部分だけを口パクにしてそう言った。女の子はアユから視線を逸らし、頷く。その顔はまた、俯きぎみになっている。 

 

「そんな事、言ったらダメだよ。ポケモンたちがショックを受けちゃうかもしれないし。それにね、あなたに才能がないわけないんだよ。ジムバッジ、持ってるんでしょう?」

 

「は、はい。持ってます」

 

 そう言いながら女の子はバッグからバッジケースを取り出すと、それを開いた。バッジケースの中の一番左上には、レディバをちょっといじったような形をしたバッジが納められていて、電灯の光を浴びてキラキラと輝いている。これが、ここハクダンシティにあるジムを攻略し、ジムリーダーに認定された証の品。バグバッジだ。

 

「でも、これと私の才能にはなんの関係も無いじゃないですか。バグバッジを取れたのだってきっと、たまたまの、まぐれ……ですから」

 

 そう言いながらバッジケースを見つめ続ける女の子の髪を、アユは優しく撫でた。

 

「ジムバッジをまぐれでとれるわけ無いじゃん。それは正真正銘、あなたに実力があったから取れたバッジなんだよ?」

 

「……そんなこと、信じられません」

 

 女の子はそう言うが、俺もアユの意見に同意だ。ただ単純にポケモンを鍛え上げたり、力押しではどうにもなら無いものがジム戦にはある。ジムバッジをとるのに完成され尽くした戦略などは必要ないが、ある程度のガッツと機転が必要なのだ。少なくとも、たまたまのまぐれでとれるようなものじゃない。いつも力押しで戦ってるお前が言っても説得力が無いって? ハハハ、ご冗談を。

 

「……まあ、そう思うのはあなたの自由だけど。でも、悔しくない? あんなこと言われてそのまま泣き寝入りなんてさ。私もあんなこと言っちゃった以上引けないし」

 

「私は……悔しくなんて、無い、です。だって、さっきも言ったじゃないですか。あの男の子が言ったこと。私に才能が無いって言うのは、本当なんですから。私が言われたこととか、そういうのにあなたは関係ないですし、だから……」

 

「ああ、もう!」

 

 またもアユの口から放たれた大きな声に、女の子はばっと顔を上げてアユを見た。そして、大きく目を見開いた。

 

「ごめん、言いたいこと言ってもいい!? 私が、私が悔しいの! あなたがあんなことを言われるのを見てて、あの男の子の言った通りに折れそうになってるのを見てて! すっごく悔しいの! ……私、知らなかったんだ。あんなことを言われた人がどうなるのかとか、あんなことを言ってるやつがどれだけ醜いのかとか、あんなことを……言われた人を見るのが、どれだけ悔しいのか、とか。それに、あの子は私の……私、が……私……」

 

 アユは泣いていた。その綺麗な翡翠の目から涙の滴を流していた。そのまま泣いているのを隠すかのように俯いて、そしたら涙がポロポロと落ちた。アユってこんなに泣き虫だっただろうか? 前は、そう、具体的にはイッシュ地方を旅していた頃は、泣いたことなどほとんど無かっただろう。最初の頃は暗かったけれど、明るくて、騒々しくて、無茶な女だったはずだ。それが、こんなに短期間に何度も泣くなんて。

 

「……私、あなたがどうしてそんなに必死なのかわかりません」

 

「……うん。ごめんね、無茶なこと言って。無理して付き合わせるのも悪いし、これで……」

 

「でも、そんなに私のために必死になってもらっているのに、私が嫌だ嫌だって言うだけでは失礼だって、そう思います」

 

「え……?」

 

 アユが顔を上げ、女の子の顔を見る。アユと女の子は、真正面から顔を合わせる形になった。女の子はずっと俯いていたり、そっぽを向いていたりしてアユと顔を合わせようとしていなかったから、二人が顔を合わせたのは今が初めてだ。

 

「私、弱いですけど。才能、無いですけど。それでも強くなれるんですよね? あの子を見返せるくらいに、強くしてくれるんですよね? ……なら、それならお願いします。特訓、させてください。私を強くしてください!」

 

 女の子はぎこちなく笑っていた。アユはなぜだか複雑な顔をしていたが、やがて涙を拭いながら笑った。

 

「わかった。厳しく行くから覚悟してね」

 

 そう言って差し出されたアユの手を、

 

「お、お手柔らかにお願いします」

 

 女の子がしっかりと握った。ここに、アユと女の子の師弟関係が成立した……の、だろうか? 人間に師匠と弟子というものがあるのは知っているが、ポケモンにはあまり無いのでよくわからない。うん。そういうものだと思っておこう。

 

「……あっ。そう言えば私たち、ちゃんと自己紹介してなかったね?」

 

 アユ、気づくの超遅い。俺はずっと前に気づいていたし、早く自己紹介しないのかとずっと思っていた。この女の子の事、ちゃんと名前で呼びたかったのだ。だって面倒ではないか、女の子女の子ってずっと呼び続けるの。言ってしまえばここにいるのはどっちも女の子である。最悪どっちを指してるかわからないなんて事態になりかねなかったのだ。アユの相手の名前を聞かない癖は早々に何とかしてもらいたいものだ。もうずっとなんだから。

 

「そ、そうでした。なんか、ごめんなさい」

 

「いやいや、私が忘れてたんだから謝らなくていいよ。……あー、あー、ごほん。じゃあ、改めまして。ホウエン地方のアユです。よろしく!」

 

「私は、ルミア、です。よろしくお願いします!」

 

 今度はさっきみたいなぎこちないものでなく。光輝くような笑顔を浮かべて、女の子……ルミアはやっと自らの名前を告げた。なんだ、ちゃんと笑えるんじゃないか、彼女(ルミア)

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー……。明日から忙しくなりそうだねぇ。ね、ダゲキ」

 

 アユはそう言いながらボフンとベッドにダイブして、「うわ、固い……」と呟いた。俺はボールをかたりと揺らして、さっきの言葉に返事をする。

 さっきまでルミアと話していた部屋はルミアに譲って、アユはもう片方の部屋で休むことになった。といっても向かいの部屋なのだがな。

 

「……ずるいなぁ、私」

 

 む、ずるい、とは? 小声で言ったから俺に向けての言葉ではないのだろうが、気になった俺は再びボールをかたりと揺らしてみる。

 

「あー、ごめんごめんなんでもないんだ。独り言だから、ただの。気にしないでね、ダゲキ」

 

 むぅ。そう言われてしまっては俺はこれ以上追求できない。まあ、追求しようにも人とポケモンでは細かいコミュニケーションなどとれないのだから無理なのだが。

 

「ダゲキ、ジュカイン、今日はお疲れさま。ゆっくり休んでね。明日はルミアのポケモンのコーチとして頑張ってもらうから」

 

 了解だ。それが俺の糧になるのなら、張り切ってやらせていただこう。俺は張り切ってボールを揺らす。隣のボールが揺れないのは相変わらずだ。

 

 こうして、カロス地方二日目の夜は更けていく。明日はもっといい日になるようにと、この日の俺は柄にもなく祈るのだ。




フランスの女性名、「ルミア」には、光という意味があるそうです。

今は後ろ向きな彼女も、この先いつかその名前にふさわしい、光輝くような女の子になれるように作者も祈っています。
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