ダゲキ「俺のトレーナーはかなり無茶だと思うのだが皆様はどう思うだろうか?」 作:個人情報の流出
ちまちまと続きを書いている間にお気に入り登録者様がとうとう200人を越えて震えております。マジメッチャウレシイ。イエア。
皆様の期待に応えられるよう、これからも精進していきたいと思います。もしよろしければ、評価、感想などもいただけると嬉しいです。
今回は冒頭ルミア視点、その後ずっとダゲキ視点となります。それでは、本編をどうぞ。
ドンドンドン、ドンドン、ドンドンドンドン。
そんな何か強く叩く音と、窓から差すうっすらとした日の光で、私……ルミアはやんわりと意識を覚醒させました。
でも、まだ眠いです。私、朝はのんびり過ごしたいのです。だから、上半身をベッドから持ち上げようとして……そのままドサリ、とベッドに倒れ込みます。ちょっぴり固めのベッドに叩きつけられた右半身が痛いです。だからと言って、完全に意識が覚醒するほど私の眠気は柔じゃありません。このまま、すやぁと、二度寝の世界に招かれようとして……。
ドンドンドンドンドン、ドンドン、ドンドンドン、ガンガン、ドンドン。
激しさを増した何かを叩く音が、私の意識を現実に引き戻しました。うるさいです。眠れません。というかさすがに気づいたのですけど、これ、ドアを叩く音です。そうなると、さっきかなりマズイ音、してませんでした? ガンガン、って。ドア、壊れませんか? 大丈夫ですか?
そんなことを考えていたら段々段々、目が覚めてきてしまいました。私の幸せな二度寝の時間は、残念ながら来ず。全くもう、いったい誰なのでしょう。朝から私を訪ねてくる、無粋な人は。
「もー、誰ですかぁ? 寝かせてほしいのですけど……って、あれぇ? アユさん?」
ドアの向こうにいる人に起こされた事への文句を言おうとして、ドアを開くと。そこには昨日さんざん私を振り回した後、私の先生になった……殿堂入りトレーナーの、アユさんが居ました。
アユさんの姿を認識すると共に、私は昨日の出来事を色々と思い出します。そう、そうです、今日から特訓でした。でも……まだ外、薄明るいんですけど。空とかまだ真っ白なんですけど。
「おはよう、ルミア。さあ、早速朝の特訓と行こうよ!」
朝から元気にそう言うアユさん。いや、特訓はいいんですけど、今、何時です? 気になってしかたがないのですけど。
「お、おはようございます。……ところで、今何時なんですか?」
「え? 四時だけど?」
えっ早……え? 嘘ですよね? こんな時間から特訓とか、流石に想像もしてなかったんですけど、もうちょっと寝ても許されますよね……?
「……もうちょっと寝てたりとか、駄目ですかね?」
「朝は早い方がいいじゃない。さ、出掛ける準備してー。特訓、すぐに始めるからね」
……拝啓、アサメタウンのお母さん。私に出来たポケモンバトルの先生は、とんでもない人だったみたいです。
きっちりと整備された、ポケモンセンターの貸しバトルフィールド。ゆっくりと太陽が顔を覗かせてきた時間のここには、当然ながら人なんて誰もいない。わざわざこんな時間に起きてまでバトルする人なんてやっぱりいないのだろう。やはり、何もこんな時間から訓練を始める必要はないと思う。ほら、ルミアも眠そうに目を擦っているし、俺も眠い。何かやるにしても、さっさと済ませてしまおうではないか。そして俺は寝る。いいな? さて、今から何をやるのだ、アユ。
「さて、とりあえず手始めに、私とバトルしようか」
「あ、はい……はい!? えぇ!?」
え、いきなりバトルするのか?
「な、え、アユさんって、殿堂入りトレーナーなんですよね?」
「そうだよ。一応ね」
「私、バッジ一つ持ちの初心者なんですけど……?」
そう。既にバッジを取っているとはいえ、ルミアは初心者だ。そんなルミアと最初からバトルをしても、あまりいい結果になるとは思えない。まさか、バトルを何度もして無理矢理強くするみたいな、戦い方は戦いながら覚えろみたいなそんなやり方をするのか? それはルミアがつぶれてしまうのではないか……? アユって、こんなに考えなしなトレーナーだっただろうか。……考えるとそんな気がしてくるから困るな。
「知ってるよ? でも、バトル上手くなるのにはバトルしないとダメじゃない。それに、強くなるためにどんな特訓をするか決めるのも、バトルしないと出来ないからさ。だからこその、手始めのバトル。朝早ければフィールドを借りる人もいないから、待たずにできるしね」
「そ、そういうものなんですか……?」
「うん。そういうものだよ」
ふむ、そういうことだったか。どうやらアユもちゃんと考えていたらしい。後はこのバトルが終わった後の訓練が無茶でないことを祈るのみだが……うん。アユだから期待するだけ無駄かもしれないな。ルミア、頑張ってくれ。
「じゃあ、始めよう。私のポケモンは一体。ルミアは持ってるポケモン全部出してね。ルールは公式に則って、技の使用は四つまで。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になったら終了ってことで」
「わ、わかりました!」
アユはフィールド端の、トレーナーの位置につきながら簡単にルールを説明した。それを聞いたルミアは慌てて位置につきながら返事をする。
アユがベルトにセットされたボールを一つ掴む。俺のボールではなく、ジュカインのボールを。……何か理由があるのだろう。先発が俺でなく、ジュカインだと言う理由が。それならば、俺はただ見守るだけだ。
「あ、あのあの、その、て、手加減とかは……」
ルミアの声が震えている。まあ、いきなり最終進化ポケモンなど出されては引くのも当たり前だろう。しかし、アユの手持ちは俺とジュカインだけである。その辺は諦めるしかないだろう。さすがのアユもバトル面での手加減はするだろうし。……するよね?
「んー、もちろんするよ? ポケモンは二匹しか持ってないし、丁度いい特訓相手っていうのは用意できないけど、本気ではやらないつもりだから安心して」
よかった、ちゃんと手加減するらしい。アユの『本気ではやらない』がどの程度かはわからないが。
「あ、はい。わかりました……。えっと、それじゃあ……出てきて、マロンさん!」
ルミアが出したのは、昨日も見たポケモン、ハリマロンだ。カロス地方の初心者用ポケモンの内の一体、草タイプのポケモン。ルミアが彼をマロンさん、と呼ぶのは、きっとニックネームだろう。
「相手はものすごく強いけど……マロンさん、頑張れる?」
「リマリマ! (当然だ!)」
ルミアがハリマロンに話しかけると、ハリマロンはやる気満々、といった感じで返事をした。昨日コテンパンにやられていたのに、全く堪えていないみたいだ。前向きで結構。
「それじゃあ、先手はルミアに譲るよ。どっからでもかかってきなさい?」
「は、はい! ええっと、じゃあ、マロンさん、『かみつく』!」
「リマ! (おう!)」
威勢良く返事をして、ハリマロンはジュカインに迫る。が、そのスピードは遅い。そりゃあ、育ちきっていないポケモン、というのもあるが、それにしても一歩一歩の歩みが重い気がする。ルミアのハリマロンは……俺もマロンさんと呼ぼう。マロンさんは、素早さにあまり期待できない子なのかもしれない。
「ふーん……ジュカイン、『じならし』」
「あっ、マロンさん!」
向かってくるマロンさんを冷静に観察しながら、アユはジュカインに指示を出す。繰り出した技は『じならし』だ。アユがジュカインで戦うとき、主に足止めなどの目的で好んで使用する『じしん』と似たような使い方をする技。『じしん』に比べて威力も低いし、どちらかと言うと『じしん』よりも足止めに向いた技のために選択したのだろう。それに、今のマロンさんにとっては『じならし』でも十分以上のダメージとなる。
揺れる地面に足をとられ、転んでしまったマロンさんは『じならし』のダメージをモロに受ける。それに驚いたルミアはマロンさんの名前を呼んだ。……あれは、完全に思考を止めているように見える。あまりよろしくないな。
「ジュカイン、『はっぱカッター』」
アユの次の指示は、普段のタイミングよりも数瞬遅れて飛ばされた。技は『はっぱカッター』だ。
今の動きでもわかる通り、ジュカインを使う戦闘においてアユは足止めをしつつ、遠距離を維持して戦う戦法をとっている。ジュカインが再びアユの手持ちとなってからほとんど野良試合しかしてこなかったこともあって、その動きに対応してきたトレーナーは一人もいない。いつもより指示のテンポが遅いとはいえ、ルミアがこれに対応できるかどうか……。
「あ、えっと、マロンさんかわして!」
指示が遅い。マロンさんはルミアの指示を受けて回避行動を取ろうとするが、その瞬間に『はっぱカッター』が着弾した。マロンさんがルミア側に大きく吹き飛ばされる。
しかし、この程度で追撃を止めるアユではないのだ。
「もう一度『はっぱカッター』」
無慈悲な指示と共に、地面に倒れたマロンさんに向けて『はっぱカッター』が放たれる。これを喰らってしまえば、マロンさんは戦闘不能に追い込まれるだろう。むしろ、さっきの『はっぱカッター』を耐えているのかも怪しいが。
「マロンさんっ! 『ころがる』!」
「リ……マッ! (了……解ッ!)」
が。『はっぱカッター』の着弾直前、ルミアの先程までとはうってかわった鋭い指示が飛ぶ。『ころがる』を使ったマロンさんは、そのまま『ころがる』の回転で『はっぱカッター』を弾いた。マロンさんは攻撃を継続し、ジュカインに向けて転がっていく。
「……へぇ、なるほどなるほど」
『ころがる』のおかげでさっきよりもジュカインに接近する速度も早い。ものの数秒で、マロンさんとジュカインの距離が一気に縮んでいく。
「ジュカイン、『かわらわり』で迎え撃って!」
接近するマロンさんに対して、アユが選んだのは迎撃だ。ジュカインから見て位置の低いマロンさんに対して、低い位置にも無理なく攻撃できる『かわらわり』は最適解だろう。これでかち合えば、『ころがる』を止めた上でマロンさんにダメージが入る。このままではマロンさんは戦闘不能だ。
「今! マロンさん、跳ねてから『やどりぎのたね』!」
しかし、『ころがる』と『かわらわり』がかち合うことは無かった。ジュカインのかなり手前でころがったまま跳び跳ねたマロンさんは、ジュカインの頭上を飛び越えつつも『やどりぎのたね』をジュカインに植え付ける。これでジュカインは徐々にダメージを受け、その分マロンさんが体力を回復するという状態になった。体力的な問題でこれで有利とは言えないが、たった今ルミアは間違いなく有効な一手を打った。なんだ、やればできるじゃないか、ルミア。
「そのままっ、『つるのムチ』!」
そして、連続してルミアの指示が飛ぶ。指示からのマロンさんの反応速度もそこそこだ。
だけど。
「ジュカイン、回避から『じならし』!」
トレーナーの思考速度と、指示を受けてからのポケモンの反応速度ならばジュカインとアユが勝る。今の状況。『やどりぎのたね』が決まり、距離が近いその状況なら、続けて攻撃してくることなどバレバレだ。そのまま攻撃をすることを、『トレーナーにもポケモンにも読まれていた』。だからこそ回避され、そして、技を出した直後で動けないマロンさんを、フィールド全域に効果を及ぼす『じならし』が襲った。
マロンさん、戦闘不能だ。
「……マロンさん、ごめんなさい」
ずいぶんと消沈した様子でマロンさんに謝罪をしたルミアは、マロンさんをボールに戻した。しかし、消沈具合がすさまじいな。まだバトルは終わっていないのだが。
「ほらルミア、次々。まだバトルは終わってないよ」
「あ、は、はい! ごめんなさい! えっと、頑張って、ピカさん!」
続いて、フィールド中央に投げ込まれたボールから飛び出したのはピカチュウのピカさんだ。これもまたニックネームだろう。
「ピカさん、『でんこうせっか』!」
今度の指示は早かった。ルミアはついさっきまで消沈していたのが嘘かのように目が鋭くなっている。
さて、解説をしよう。意図したのかどうかはわからないが、ルミアの指示した『でんこうせっか』はこの場面での最適に近い行動だろう。ジュカインに素早く接近できる上に、マロンさんの『ころがる』よりも小回りが効く。なにより、マロンさんと比べてピカさんは格段に足が早い。それによって、『じならし』での牽制を許さない。
しかし。しかし、だ。『でんこうせっか』でフィールドを駆けるスピードは良いものの、ピカさんは指示からの反応が遅かった。その割に動きも直線的で、あれでは回避が簡単だ。それに、ジュカインの出せる技は後一つ残っている。
「ジュカイン、『ファストガード』」
ジュカインが、既に『でんこうせっか』を繰り出しているピカさんよりも早く動く。ジュカインが繰り出した『ファストガード』は、『まもる』や『みきり』と同じように自分の身を攻撃から守る技だが、『でんこうせっか』などの出の早い技よりも出が早く、ダブルバトルなどの際に味方も守ることができるほど防御の範囲が広いのが特徴だ。出の早さ、範囲の広さと引き換えに身を守る障壁が薄いのが弱点だが、出の早い攻撃技は威力も低いためその点は問題ない。
「ジュカイン、そのまま『かわらわり』!」
ピカさんの攻撃を受け止めたジュカインは、そのままかわらわりを叩き込む。ピカさんは地面に叩きつけられた。
「ピカさん、もうちょっと頑張って! 『エレキボール』!」
ピカさんは倒れたまま立ち上がらず、イナズマのようなぎざぎざ尻尾の先端にバチバチと音をたてる電気のボールを作り出す。そして、『エレキボール』を維持したまま跳ね起きると、至近距離からそれをジュカインに叩き込んだ。ルミアが、初めて、ジュカインに攻撃技を当てたのだ。
ジュカインは既に技を四つ繰り出していて、その中で至近距離からの『エレキボール』に対応できる技はなかった。だからこそのクリーンヒット。流石のジュカインも、踏ん張りきれずに一歩、二歩と後ずさりする。
「『でんこうせっか』で追撃して!」
そんなジュカインに、追撃の『でんこうせっか』が刺さる。ここに来て、ルミアの指示のテンポがどんどんと上がっている。彼女はチャンス時に強いトレーナーなのだろうか。指示が早くなった分ポケモンの反応の遅さが気になるが、ジュカインに追撃が出来た時点でそこまで気になることではないだろう。
「えっと……ピカさん、次は……『エレキボール』!」
しかし、追撃はそこで止まった。この状況で最適な技が思い付かず、判断が遅れてしまったのだろう。その指示が途切れた一瞬を見逃すアユではなかった。
「ジュカイン、『じならし』」
先に指示を受け、動き出そうとするピカさんよりも早くジュカインは動いた。でんきタイプのピカさんに効果抜群の『じならし』がピカさんを襲う。既に『かわらわり』を喰らっていたピカさんは堪らずダウン。戦闘不能だ。
「あぁ……ピカさん……」
「バトル終了だね。お疲れ様、ジュカイン。ルミアもお疲れ様ー! おかげでどういう特訓をすればいいか、大体わかったよ!」
アユはボールに戻したジュカインに労いの言葉をかけたあと、ルミアにそう告げた。いつもやっているバトルからすればずいぶんとぬるい物だったが、その分フィールドで何が起こっているのか、冷静に観察することが出来た。マロンさんはどういう戦いかたをして、何がダメなのか。ピカさんはどうなのか。また、ルミアはどうすればいいのか。しっかりと考えながら見ることが出来た。アユがまずバトルをした理由がよくわかった気がする。
「そうですか? それなら、よかったです……」
「うんうん。さて、とりあえずマロンさんとピカさんはジョーイさんに預けて回復してもらわなきゃね。特訓内容とかはその後で」
「はい、わかりました」
時計を見ると、時間はいつのまにか六時になっていた。まだまだ時間は早いが、この時間ならジョーイさんもポケモンを預かってくれるだろう。
「あ、そうだルミア。私、今のバトルで一つ確信したことがあるんだ」
「確信したこと、ですか?」
「うん。……やっぱり、ルミアは才能あるよ。いつか四天王とだって戦えるくらいにね」
「え、えぇ!? そ、そんな、そんな……私、そんなの信じられません」
本人は信じられないというが、アユが言っていることは本当だ。まだまだ未熟ではあるが、チャンスの時の畳み掛けるような指示はよかったし、チャンスを作り出すために相手の意表を突こうとする姿勢も良い。バッジ持ちに恥じない実力は持っていると思うし、磨けばもっと光るはずだ。ルミアは良いトレーナーになる。確実に。
「ま、いつか信じられるようになる日が来るよ、きっと。そんな日のために特訓特訓! さて、ジョーイさんのところに行こっか」
「え、わ、わ! ちょっと、引っ張らないでくださいよ、アユさん!」
アユがルミアの手を取って、ポケモンセンターの中に引っ張っていく。戸惑ったような声を出すルミアの顔は、困り顔なのになんだか楽しそうに見えた。
今回から地の文で技の名前に『』を付けましたが、どうでしょうか。
うっとうしくなければ、全話で統一しようと思います。よろしければご意見ください。