ダゲキ「俺のトレーナーはかなり無茶だと思うのだが皆様はどう思うだろうか?」 作:個人情報の流出
印象に残ったのは、ラッキーの声がやたらセクシーだったことですね。むしろそれしか覚えてないです。俺はバカなんでしょうか。
はじめまして、カロス地方!
「……ダゲキ」
今日も今日とてボールの中。キーンという飛行機の飛行音を聞きながらのんびりしているところに、少し怒った様子のアユの声。なんだなんだ、何があったのだ。
「お父さんから電話があったの。昨日の夜、ポケモンに人が誘拐されてるって通報がジュンサーさんにあったんだって。ものすごいスピードで誰かを抱えたポケモンが走り去っていって、女の子が絶叫してたって。ねえ、これダゲキと私だよね?」
む? ……うむ、そうかもしれない。しかしそうなると俺がアユを誘拐しているのだと勘違いされたということか? ……うん。深く考えるのはいいや。とりあえずボールを揺らして返事をしておこう。かたり。
「その話をお父さんが耳に挟んだらしくて、ジュンサーさんに説明してくれたんだって」
いいことじゃないか、誤解が解けたのだから。アユは何をそんなに怒っているのだ……? あ、とりあえず返事をしておこう。かたり。
「すっっっっごく恥ずかしいんだけど、私! どんなに急いでいても、これからは私を抱えて移動しないこと! わかった、ダゲキ!」
えー……? なんでそれで俺が怒られるのだ……? あれは途中で立ち止まったアユにも問題があると思うのだが……?
まあ、うん。仕方ない。トレーナーが二度とやるなと言うなら二度とやらない。納得はいかないけど。……最善の手だと思ったのだけどなぁ、あれ。
「返事は?」
……かたり。
「よろしい。さて、そろそろカロス地方に着くよ」
お? そうなのか。随分と速いのだな、飛行機というやつは。船と比べると雲泥の差だ。
さっきもちらりと言ったが、俺たちはカロス地方に向かうのに飛行機を使っている。なんでも、船に乗っていくよりも格段に早いらしい。お父さんの強い勧めによって、飛行機を選んだ。
飛行機に乗ったのは午前の十時だ。そこから何時間飛んでいたのかはわからないが、かなりの時間飛んでいたように思える。もう夜も遅いだろう。今日はもう、ホテルをとって寝るだけだろうな。
「着いたら早速研究所に行くからね。バトルとかあるかもしれないから、一応そのつもりでいてね、ダゲキ」
……わっつ? 何を言っているのだアユ。夜遅くに訪問とか、失礼ではないのか?
そんな俺の疑問の答えは、カロス地方に着いたときに明らかとなるのだった。
カロス地方の時計にして午後三時。アユと俺はカロス地方のミアレシティに到着した。
驚いている。俺は心底から驚いている。なぜだ? あんなに長く飛んでいたというのになぜまだ三時なのだ? アユよ、俺は夢を見ているのか……?
「ダゲキ、なんでそんなにびっくりしてるの? ……もしかして、時差のこと知らない?」
ジサ? なんだそれは?
「ちょっとダゲキ-、しっかりしてよぉ。イッシュからホウエンに行くときもちょっと時間ずれてたじゃない。気づかなかった?」
え、全く気づかなかった。ボールの中でグダグダするのに夢中だった故に。ところでだ。ところで、ジサってなんだ?
「カロスとホウエンでは、時刻に差があるの。大体七時間くらいずれてるんだよ。ホウエンの方が時間が早いから、ホウエンの午後十時はカロスの午後三時ってわけ」
……ほえー、そんなことがあるのか。世界にはまだまだ知らないことがたくさんあるのだなぁ。
だが、午後三時ってのも訪問にはちょっと遅くないだろうか。それに研究所に訪問って言うと、カロス地方のポケモン博士に会うのだろう? 約束とか取り付けないと駄目なのでは?
「なーんか心配してる? ダゲキ。もう時間遅めだけど、プラターヌ博士には連絡とってあるから大丈夫だよ。さ、行こっか」
行動力の化身だな……。まあ問題ないって言うならいいが。なんかここまでやる気を出しているアユを初めて見た気がするぞ……? れっつごー! と気合い充分のアユの後ろを、必死に追いかけていく俺であった。……しかし、アユはなぜ、新天地に着く度にまず俺をボールから出すのか。コレガワカラナイ。
ミアレシティはカロスで一番大きな都市である。交通網も整備されていて、観光地であることも相まって人が多い多い。この混み具合はヒウンシティといい勝負だろう。しかし、ミアレはヒウンと違って高層ビルが多いわけではない。ヒウンの持ち味は、立ち並ぶ高層ビルによる圧倒的な景観。しかしそれは、悪い言い方をすれば町に閉塞感を与えてしまうものだ。それに比べて、ミアレは解放感があっていい。ビルの背がちょっと低くなるだけでこんなにも街が明るく感じるし、それに……中央にそびえ立つ、あの塔がすごく目立つ。日が落ちかけ、暗くなり始めたミアレシティで自分の存在をアピールするかのように輝くあの塔は、プリズムタワーと言うらしい。なんでも、中がポケモンジムになってるんだとか。カロスってのはすごいところだ。
「えっと……たしかこの辺に研究所があるはず……うわ、でっか!」
マルチナビの地図機能を頼りに研究所を目指していたアユは、顔をあげるなり大声を出した。それも仕方がない。なにせ目の前にある建物は……正直、すごくでかい。周りの建物と比べても遜色ないくらい立派だ。これがポケモン研究所なのか。他の地方の研究所も、こんな大きさなのか?
「……ダゲキ、私が見てきた研究所の中で一番大きいよ、これ」
ほうほう。ということは、世界のポケモン博士の中でここの博士が一番すごいのだろうか。一番すごい博士ってどんなだ。髭モジャモジャのじいさんとかだろうか? う
うむ、気になる。
「と、とりあえず入ろっか」
おう、早くしよう。気になる気になる。
研究所の中に入ると、広いエントランスが俺たちを出迎えた。アユがうわぁ……と感嘆の声を漏らす。受付らしきカウンターに立つ女性はこちらを認識すると、笑顔で声をかけてきた。
「ご連絡いただいたアユさんですね? ようこそいらっしゃいました」
「あ、あれ? わかるんですか、電話で話しただけだったのに……」
「わかりますよ。ホウエン地方出身、イッシュポケモンリーグをダゲキ一匹で攻略した殿堂入りトレーナーアユ。ポケモン界であなたを知らない人間なんていませんよ。プラターヌ博士もあなたに会えることを楽しみにしていました」
「そ、そうですか……えへへ」
世間話などしている場合ではないぞアユ。俺はポケモン博士とやらが気になるのだ。いったいどんなモジャモジャなのだ? チルタリス位もふもふなモジャモジャなんだろうか? 早く、早くプラターヌ博士とやらに会わせてほしい。
「わ、わ、ちょっと引っ張らないでダゲキ。服破けるから。もう少し力込めたら服破けるから! もー、そんなに博士に会いたいの、ダゲキ?」
ブンブンと全力で首を縦に振る。あわよくばモジャモジャに触らせていただきたい。
「すみません、ダゲキが早く博士に会いたいみたいで。プラターヌ博士はどちらにいらっしゃるんですか?」
「プラターヌ博士は三階でお待ちです。移動はそちらのエレベーターを使ってください」
「ありがとうございます! 行こう、ダゲキ」
おう、早くしよう。待ちきれないぞモジャモジャが!
「こんにちはー、連絡しましたアユですけど、プラターヌ博士はいらっしゃいますかー?」
モジャモジャはいるか? 早く姿を見せてくれ。
「はいはい、少し待っていてほしいな。今、資料を片付けてそっちに行くからね」
間もなくか! 間もなく会えるのだな、プラターヌ博士に。うむ、気配がある。壁の向こうからガサガサ聞こえている。資料を片付けているのだろう。……お、足音が聞こえる。もうすぐだな? もうすぐモジャモジャに……
「やあ、お待たせ。初めまして、殿堂入りトレーナーアユさん。わたしがプラターヌ。カロス地方のポケモン博士さ!」
モジャ……モジャ……?
「はい、初めまして! ほらダゲキ、この人がプラターヌ博士だよ! ……ダゲキ、どしたの? なんかショック受けてる?」
紺色の髪に翡翠の瞳。顔立ちは整っているが、少々無精髭が気になるか。青いシャツの上に白衣を羽織る、いかにも博士っぽい青年がそこにいた。……めちゃくちゃ若いじゃないか。なんだそれは、詐欺じゃないか。モジャモジャを期待していたと言うのに、なんだこれは。期待はずれだ。
「……怒ってる。なんで?」
「うーん……よくわからないけど、ダゲキにも色々と思うところがあるんだろうね。……さて。いきなりだけど、バトルをしよう」
「え?」
なんだ? この人は研究者なのではないのか? なんでいきなりトレーナーみたいなことを言い出すのだ。
「バトルをすればお互いにわかりあえる! わたしはニュースで見た君しか知らない。君がどんな目的でここに来たのかはわからないが……わたしは、話をする前に君と言うトレーナーがどんな人なのか、自分の手で知りたいと思う! だからバトルをしよう、アユさん!」
「えぇと……は、はい。そういうことならやりましょう、バトル! じゃあ、バトルフィールドまで移動しますか?」
「いや、ここでやろう」
「えぇ!?」
えぇ、それは……まずいのでは? ここは研究所で、資料とか色々あるはずだ。そこでバトルなんて自殺行為ではないか。
「僕は弱いけれど、周りに気を使って戦えないほど下手くそではないよ。僕ですらそうなんだから、殿堂入りトレーナーである君はもっとそうだろう?」
じ、自信満々だ……うーむ、気を付けはするが、物を絶対に壊さないという自信はないぞ。流石にここでっていうのはしないよな? な、アユ?
「うぅ……そこまで言うなら、はい。やりましょう、ここで」
え、本当に? ……ぐぬぬ、知らないからな、俺は。物が壊れても俺のせいではないからな!
「さて、バトル形式は一対一にしよう。わたしの一番自信のあるポケモンで君に挑むよ。それ以外は公式ルールに準ずる」
「わかりました。私はダゲキで行きます」
「オーケー。わたしは……出てこい、ガブリアス!」
げ、ガブリアスだと? 弱いとか言っておきながらこの博士……ガブリアスを従えているトレーナーが弱いわけがないだろうに。これ……これ結構本気でやらなきゃ駄目なのでは? 本当にここで戦って大丈夫?
「さて、先手は貰うよ。『ドラゴンクロー』!」
おいおいいきなりだな。開始宣言もないのか。……まあいいか。プラターヌ博士の指示を受けて、ガブリアスの凶爪が迫る。が、心なしか動きが鈍い気がする。周りを気にしているからなのか、これがこのガブリアスの本気なのか。まあ、どちらでもいい。さて、周りへの被害を考えると回避するのは無しだろう。となると、ここはあれしかあるまい。
「ダゲキ、『カウンター』!」
了解、アユ。華麗に決めてやろう。俺は『ドラゴンクロー』を受け止め、その二倍の威力のパンチをガブリアスに叩き込む……ぐ、痛いな。奴に叩き付けた拳が傷ついている。これはさめはだか?
「素晴らしい! 指示を受けてからの反応が早いね。流石だ。だけど、わたしだって負けるつもりはない! ガブリアス、『アイアンヘッド』!」
「かわして『ローキック』!」
俺をめがけて飛んでくる頭突きをしゃがんで回避し、『ローキック』を繰り出して転ばせる。さて、ここまでの動きは最小限で収めた。周辺被害はゼロだ。そろそろ、とどめと行こうかアユ。
「『かわらわり』!」
おーけー、ナイスだアユ。俺は地面に突っ伏したままのガブリアスに『かわらわり』を叩き込む。ガブリアスは目を回し、そのまま力を失った。戦闘不能だ。
「……わたしの負けか。流石。ガブリアスがこうも簡単に倒されてしまうとはね。それに研究室にも被害はない。本当に素晴らしいよ」
プラターヌ博士はガブリアスをボールに戻しながら言う。アユは周りに被害を出さなかったことに心底安心しつつも、「ありがとうございます」と褒められたことへの礼を言った。
「さて……トレーナーとポケモンの信頼。そしてその強さ。君が優秀なトレーナーだと言うことを改めて確認したところで、本題に入ろうか。君も……メガシンカを求めて
プラターヌ博士は「こちらへどうぞ」と言って、アユと俺を研究室の中へと案内した。中は結構ごちゃごちゃで、いろんな資料やらモンスターボールやらが散乱していた。研究所って皆こうなのだろうか? 外観からの綺麗な研究所というイメージが粉々である。プラターヌ博士が俺たちのために用意したのだという椅子に座らせてもらったアユは、さっきのプラターヌ博士の言葉に返事をした。
「はい。私はメガシンカを手にいれたくてここに来ました」
「だろうね。しかし、君はメガシンカを手にいれずとも十分強いだろう。どうして、
「……変わりたいから、です」
「変わりたいから?」
「メガシンカは、ポケモンとの絆の結晶。それが出来るようになることで……私は、自分を変えたい」
アユはそう言って、ジュカインを繰り出した。ジュカインは相変わらずの様子だ。無言で、アユの方を見ようとしない。傍目から見てもなついているようには見えないだろう。
「……へぇ。もしかして、そのジュカインがメガシンカ候補かい?」
「えぇ。この子には酷いことをしてしまいました。……心を閉ざしても、仕方のないことを。だから、だからこの子がメガシンカ出来るようになれば……その時は、少しでも変われるのかなって。もちろん、出来ることならダゲキだってメガシンカさせたいですけどね」
……そうか。アユの目的の一つは、『ジュカインを』メガシンカさせることだったのか。いや、しかし俺だってメガシンカ出来るのならばするだろう。アユとしっかり絆は結んでいるはずだ。もし、アユがダゲキのメガストーンを手にいれることがあれば、その時はジュカインよりも先に、この俺がメガシンカを果たすはずだ。……その、はずだ。
「……なるほどね。いいだろう。君ならメガシンカを手にいれても問題なさそうだ。君にキーストーンをプレゼントしようじゃないか」
プラターヌ博士は研究室の奥に引っ込むと、なにかをガサガサと探し始めた。キーストーンで大事な物なのではないのか? 探さないと見つからない場所に置いておくのって、それはどうなのだろうか。
そして、数分後、博士は指輪を手にして戻ってきた。
「それがキーストーン、ですか?」
「あぁ。キーストーンが嵌め込まれた指輪。名付けてメガリング! ……腕輪型のキーストーンと名前が被っているけど、それは問題ないはずだ。このリングはサイズを調整できるようになってるから、どの指にもはめられるよ。さあ、受け取ってくれ」
「……ありがとうございます!」
アユはプラターヌ博士から受け取った指輪を見つめる。次に自分の左手を見つめた。しばらく悩むようなそぶりを見せたアユは、最終的に……親指に、メガリングをはめた。
「親指に指輪をはめるのかい?」
「ええ。願掛けみたいなものですけど。親指に指輪をはめると、どんな願いも叶うって言い伝えがあるらしいんです。特に左手の親指は、信念を貫くパワーが得られるんだとか。どこにはめるか悩んでるときに、急にそれを思い出してここにしました」
ほう、指輪をはめる位置にも、なにか意味があるのか。出会ったときから思うのだが、アユは結構知識がある。アユの話すことは、他の人を驚かせるような内容も多いのだ。
「メガストーンはあるかい? 生憎だけど、今この研究所にはジュカインナイトがなくて……」
「大丈夫です。ジュカインナイトなら持ってます」
「そうか。じゃあジュカインのメガシンカに関して、今できる準備は出来ているわけだね。……ダゲキに関しては、ちょっと言いづらいんだけど。メガシンカ出来る、という報告を聞いたことがない。もちろん、まだ誰も見つけていないだけ、という可能性もあるけどね。だから、ダゲキに関しては手探りになることを覚悟しておいてくれ」
「はい。わかりました」
……手探り、か。前途多難だな。そう簡単にメガシンカ出来るとは思っていなかったが、メガシンカ出来るかわからない状態だ、というのは流石に凹む。わからないのが、余計にもどかしい。……だが、可能性がゼロではないだけましだ。アユと共に、ダゲキのメガシンカ第一例になってやろうではないか。
「そうだ、メガシンカに関してもっと知りたければ、シャラシティに向かうといい。あそこにはメガシンカの古い伝承が残っているからね。僕も知らないことを教えてくれるかもしれない」
「はい、ありがとうございます」
そう言うと、アユは立ち上がった。ここでの目的を達成したのだろう。同じく立ち上がったプラターヌ博士と、がっちり握手を交わす。
「プラターヌ博士、何から何まで本当にありがとうございます。また今度お礼をさせてください」
「いいんだ。ポケモントレーナーに協力するのも、ポケモン博士の仕事だからね。……君のカロスでの旅が、素晴らしいものになることを祈っているよ」
プラターヌ博士の激励を受け、アユはカロスのポケモン研究所を後にした。カロスについて早々、有意義な時を過ごしたと言えるだろう。プラターヌ博士はモジャモジャではなかったし、なんか変な人だったが、それでも、アユにとってカロスで一番の恩人になるのだろうなと、なんとなく思った。
「さてと。じゃあポケモンセンターに行こっか」
む、なんだアユ、今日はポケモンセンターに泊まるのか。カロスのホテルに泊まれるのかとうずうずしていたのだが。
「あれ、もしかしてホテルに泊まると思ってた? ……うーん、それでもいいんだけどさ。ミアレシティに滞在するわけでもないし、ポケモンセンターでいいかなーと思って」
まあ、アユがそれでいいならいいのではないだろうか。ポケモンセンター、タダだし。
「今日はぐっすり寝て、明日はミアレジムに行こうと思ってる。メガシンカも大事だけど、才能とは何かの答えも探さなきゃね。バトルもするだろうから、ダゲキ、明日も頑張ろうね」
―――了解した、アユ。明日も君を勝利に……勝利に、導こうではないか。
「さて、じゃあ明日からの本格的なカロス旅、頑張ろー!」
こうして、俺とアユは気合い十分にポケモンセンターに向かう。プラターヌ博士から受け取ったメガリングが、夕日を浴びてキラキラと輝いていた。
すこし駆け足ぎみに進んでしまいましたが、こうでもしないとカロス編の本筋が始まるまで相当長くなってしまうのです。原作にいるキャラを動かすのが難しかったというのもあります。要するに私の力不足ですね。申し訳ありません。これからも精進していきたいと思います。