ダゲキ「俺のトレーナーはかなり無茶だと思うのだが皆様はどう思うだろうか?」   作:個人情報の流出

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パルテール街道にて。

 一夜明けて、ぐっすりと眠り疲れをとって。しっかりと朝食を食べたアユは、ある場所にやってきていた。ミアレシティの中央にそびえ立つ、プリズムタワー。ミアレシティで一番の観光スポットであるこの塔は、昨日も言った通り、ジムでもある。観光客向けの正面の入口では無く、トレーナー向けの入口に、アユは立っている。

 

「ここから入ればミアレジム……な、なんか緊張してきた」

 

 何を今さら。アユよ、君はホウエン地方とイッシュ地方を巡り、合計十二ものバッジを持っているのだろう? 何故そんな人間がジムの入口で緊張するのだ。

 

「よ、よし。入るよ」

 

 十分ほど入口前をうろうろした後、ようやく決意を固めた様子のアユは、中に入るべくドアの前に立った。ちなみに、ジムの入口のドアは世界共通で自動ドアである。

 

「……あれ?」

 

 が、開かない。うんともすんとも反応しない。アユがドアの前でぴょんぴょん跳んだり、近づいたり離れたりしても、開かない。これはどうしたことか。

 

「ミアレジムの挑戦者ですか?」

 

「ぴょんぴょんと跳ね回っても、そこの自動ドアは開きませんわよ」

 

 なおも諦めずに自動ドアを開けようと悪戦苦闘しているアユに、金髪碧眼の王子さまのような男と、紫色の、なんとも言えない髪型をしたお嬢様のような女が話しかけてきた。……紫色の髪の女は、こう、ちょっと説明しづらいような髪型にしなければいけないという決まりでもあるのだろうか。

 

「あ、えーと、挑戦者って訳じゃないんですけどちょっと用事があって。ええと、あなたたちは?」

 

「ああ、自己紹介もせず急に話しかけてしまってすみません。僕の名前はデクシオ」

 

「そして麗しいあたくしの麗しい名前はジーナ!」

 

「プラターヌ博士に呼ばれて研究所に行く途中だったんですけど、なんだか困っていたみたいなのでつい声をかけてしまいました」

 

「困っている人を助けるのもあたくしたちのお仕事ですわ!」

 

 なるほど。この二人、ジーナとデクシオはなかなかにいい人のようだ。どんな地方にも親切な人というのは居るものなのだな。

 

「ありがとうございます。あ、私はアユって言います。よろしくお願いします。……それで、ドアが開かないっていうのはどういうことですか?」

 

「ミアレジムジムリーダーのシトロンは、現在シャラシティジムリーダーのコルニとのエキシビションのため、ジムを空けているんですよ」

 

「といっても、もうエキシビションは終わっていて、こっちに戻ってくる途中ですけれど。まあそんな事情があってドアには鍵がかかっているから開かないというわけですわね。シトロンは三日後には戻ってくる予定ですから、ここに用事があるなら三日後また来ると良いですわ」

 

「なるほど……ありがとうございます」

 

 ふーむ、三日後か。それまでこの街に足止めされてしまうというのも微妙だな。せっかくの旅の始まりだというのに幸先が悪い。三日後までどうするつもりなのだ、アユ?

 

「しかし、ジムへの挑戦ではないのなら、どんな用事でここに? 差し支えなければ教えていただいても構いませんか?」

 

「あー、えっと。私、才能って一体なんなんだろう? って疑問に思ってしまって。その答えを探すためにたくさんのトレーナーやポケモンを見たいなー、と、そう思いまして。それで、トレーナーが多い場所っていえばジムだよねと思ってここに来たんです」

 

「あら、随分と難しいことを目標にしているのですね」

 

「うん。答えにたどり着くのには時間がかかると思いますが、素晴らしい目標だと思います」

 

「え、えへへ……ありがとうございます」 

 

「もし、シトロンが戻ってくるまでの四日間やることがないのなら、ハクダンシティに行ってみてはいかがでしょうか?」

 

「ハクダンシティですか?」

 

「ハクダンシティは四番道路を真っ直ぐ進めばある街ですわ。ここからハクダンシティへは一日かからずに行くことができますわ。ハクダンにはジムもありますし、トレーナーズスクールもあります。きっと、ためになるお話が聞けるはずですわ」

 

 なるほど、ジムにトレーナーズスクールか。確かに勉強になりそうだし、時間も潰せそうだ。一日かからずに行けるということだから、行って帰ってくれば、ここのジムリーダーが帰って来る頃に戻ってこられるはずだ。

 

「なるほど……ありがとうございます。そうしようと思います」

 

「お気になさらず。では、僕たちはこれで失礼します」

 

「あなたの旅が素敵なものになるように願っているわ。ボン・ヴォヤージュ!」

 

 そう言って、二人は研究所方面に去っていった。しかし、あの二人のお陰でとても有益な情報が得られた。特にこれ以上ここで時間を無駄にすることがなくなったのは嬉しい。効率よく過ごすばかりが旅ではないが、ある程度効率というものを意識しないと惰性で行う旅になってしまうからな。そのあたりは気を付けなければいけない。

 

「うん、じゃあいこっか、ハクダンシティ」

 

 アユの言葉にボールを揺らして返事をする。こうして、俺たちはハクダンシティへと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 カロス地方の道路には、公式に振られた番号の他に名前がある。ミアレシティとハクダンシティを繋ぐ四番道路には、パルテール街道という名前がついている。もっとも、カロスの人間でも道路を指すときには、名前を言うのではなく『何番道路』というらしい。それじゃあ名前がついている意味がないじゃないかと思ったが、アユは例えあんまり使われないとしても、名前がついてるのって素敵だよね! と言っていたのでそう言うものなのだろう。

 

 さて、このパルテール街道だが、大きな特徴が二つある。ミアレシティを出た直後でもうっすらとその存在が確認できる、大きな噴水。それと、脇道にある植え込みでできた迷路だ。迷路はハクダンシティに雇われた庭師さんが管理しているらしい。大変な仕事だな。

 道路には腕を競うためにポケモン勝負を仕掛けるトレーナーも多く賑わっている。が、そんな中で俺のトレーナーたるアユは、あるものに夢中になっていた。

 

「わ、また行き止まりだ……難しいね、この迷路」

 

 迷路だ。子供かよ、と突っ込みたいところである。隣のボールの中にいるジュカインも呆れているようで、ボール越しにため息が聞こえそうだ。

 ミアレシティを出てパルテール街道に入ったアユは、植え込みを見るなり近くにいた庭師さんに「これ入っても良いんですか!?」と聞き、了承を貰うや否や意気揚々と入ったのだ。……そう言えば、アユがまだ暗かった頃、ライモンシティの遊園地の前を通った時に遊園地を眺めて目を輝かせていたような……気がする。好きなのか、遊園地の類い。そのわりには迷路の突破にやけに時間がかかっているがな。好きだけど、あんまり行ったことがないとかそういうことなのだろうか。

 

「ええと、この道をこっちに行って、で、そこを……右、かな? だよね、うん。こっちのはず」

 

 ゆっくりと、行ったことのある道を確認しながら曲がり角を曲がり、無視する道は無視して進んでいく。迷いながらも迷い無く進むその足取りはどこか自信を感じさせる。これは、今度は行き止まりに当たらない自信があるのか?

 

「それで、こっちに行けば……出れた!」

 

 お、本当に出られた。いつの間に全部の行き止まりに突き当たっていたのだろうか。随分と時間がかかったものだが、クリアが出来たのなら問題はなかろう。……まあ、時間を浪費したと言えば浪費したのだろうが。

 

「さて……迷路も満喫したし、ここからはトレーナーも相手しつつちゃんと進もっか」

 

 個人的には迷路なんかに立ち寄らず最初から普通に進んで欲しかったものだが、今さら言っても仕方のないことか。通ってきた迷路はミアレシティ側から入ってハクダンシティ側に進めるようにゴールが置いてあったみたいだし、普通に進んでいた場合に発生するであろう面倒なバトルを避けられたと考えればあまり文句も言えないかもしれない。

 

 

 

 

 

 さて、アユのちゃんと進む宣言から時間も経って、現在日暮れ前だ。勝負を挑んでくるトレーナーを相手して、倒した相手にアユがアドバイスをする、という流れを全員分丁寧にやっていたら、いつの間にかこんな時間になってしまっていたのだ。ちなみに、俺、ジュカイン共に攻撃は一度も喰らっていない。無傷である。殿堂入りトレーナーとそのポケモンの意地を見せつけた形になるだろう。

 

 いつの間にかあの大きな噴水も通り過ぎて、ハクダンシティも目の前に見えるところまで来た。そんな時、進行方向から技の爆発と思われる音が聞こえてきた。よく見ると、人とポケモンらしき影も見える。

 

「誰かがバトルしてる? 行ってみようか」

 

 アユはそう呟いて、駆け足で進む。ある程度近づくと、ぼんやりと見えていたトレーナーとポケモンがはっきりと見えてきた。

 

「あれ、テールナーと……ハリマロン? うわ、女の子の方苦しそう……」

 

 アユがテールナーと呼んだポケモンのトレーナーは、黒いインナーに青のチェスターコートを羽織り、下はジーパンという出で立ちの少年。フィールドを見るその目は鋭く、落ち着いた雰囲気からそこそこの実力者であることがわかる。

 対して、アユがハリマロンと呼んだポケモンのトレーナーは、白い肌に黒いワンピースが映える女の子。少々焦っているように見える。こっちの子はきっと、経験の少ないトレーナーだ。

 

「テールナー、『ほのおのうず』」

 

「うわ、わ、マロンさん、避けて!」

 

 少年は女の子が回避の命令を出したのを受けて、左と呟いた。すると、すでに発射された『ほのおのうず』が軌道を変え、ちょうどテールナーから見て左側に回避をしたハリマロンに直撃した。『ほのおのうず』はハリマロンを閉じ込め、身動きがとれないようにする。

 

「嘘!?」

 

「追撃の『サイケこうせん』!」

 

 撃ったあとの技の軌道を変更する、という技術に驚き、女の子の思考が止まった瞬間を少年は見逃さなかった。すぐさま追撃の技を指示し、畳み掛けるように攻撃する。その指示に迷いはなく、テールナーの指示を受けた後の反応速度もいい。そこそこどころではない。このトレーナー、かなり強いのではなかろうか。彼の纏う雰囲気は真剣な時のアユに似ている。もしかしたら、経験を積めばアユとタメを張れるような、そんなトレーナーなのではなかろうか。

 

「マロンさん!」

 

 テールナーの撃った『サイケこうせん』が『ほのおのうず』に包まれたハリマロンにクリーンヒットする。ハリマロンは『ほのおのうず』から弾き出され、どさっと地面に倒れる。普通ならこれで倒れてもおかしくない、というか、もう倒れているはずなのだが、しかしハリマロンは倒れてはいなかった。なんとか起き上がろうとするハリマロンを見て、女の子は泣きそうな顔になっている。

 

「マ、マロンさん……! 頑張って、ころがる!」

 

 なんとか立ち上がったハリマロンは、女の子の指示を受けて丸くなり、地面をころがる。いわタイプの技。恐らくほのおタイプであろうテールナーに効果抜群の技だ。……しかし。

 

「とどめの『サイケこうせん』」

 

 残念だが、さっきまでの動きを見るにあのテールナーは遠距離で戦うポケモンだ。容赦のない『サイケこうせん』が、勢いよくころがり、止まることも避けることもできないハリマロンに当たる。『サイケこうせん』で『ころがる』の勢いは止められてしまい。そして、ハリマロンはとうとう目を回し、倒れてしまった。

 

「マロンさん……ごめんなさい」

 

 女の子は本当に申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にして、ハリマロンをボールに戻した。少年の方はテールナーを誉めるでもなく、労うでもなく、ただ無言でボールに戻した。そのままつかつかと女の子の近くまで歩いていくと、女の子に見下すような視線を向けた。

 

「トレーナーがテンパってどうすんだよ。予想外、予定外の状況に対応するのがトレーナーの仕事だろ。それに、最後の選択。ころがるはないだろうが。俺のテールナーは遠距離からお前を攻撃する手段があるのに、わざわざ自分から避けられなくなる技を使ってどうするんだよ。あの場面は『やどりぎのたね』を使うべきだったろうが。……お前、才能ないぞ」

 

「……え?」

 

 少年の心無い言葉に、女の子の顔が悲痛に歪む。それは流石に酷くないか? 確かにこのバトルは負けてしまったが、それだけで才能なんて判断できるものでもないだろうに。しかも気弱そうなこの女の子に、わざわざそれを言う必要などないだろうに。

 

「駄目だよ」

 

 アユがどこか、悲しそうで、寂しそうな顔で呟く。しかもただの呟きではなく、その一言にとてもとても色々な感情が込められていた気がした。どうしたのだ、急に。確かにこれは酷い光景だが、そんなに顔を歪めることはなかろうに。しかも怒りでなく、悲しみなんて……何かあったのか?

 

「お前さ、トレーナーやめたら? それでバグバッジ持ってるとか、笑わせるぞ」

 

 そして。少年が決定的な言葉を放った。女の子の瞳からは既に涙がこぼれており、受けた心の傷の深さをうかがわせる。……しかし、なんだろう。あの少年の言葉、聞き覚えがある気がする。確か、最近どこかで……。

 

「感心しないなぁ、女の子をいじめるなんてさ」

 

 なんて。思考を巡らせていたら、いつの間にかアユが女の子のそばにいて、珍しく怒った様子でそう言った。

 

「なんだよ、誰だあんた……って、あんた、殿堂入りトレーナーの……!?」

 

 少年は、最初は闖入者であるアユに不愉快そうな目を向けていたが、自らの目の前にいる人間が誰なのか気づいた瞬間、その表情を驚愕へと塗り替えた。一人状況を飲み込めていない女の子だけが、え、え? と間の抜けた声をあげている。

 

「私のこと知ってるんだ、あなた」

 

「当たり前だろ。ポケモントレーナーであんたのことを知らないやつはいない。ホウエン地方で神童と呼ばれ、最近ダゲキ一匹でイッシュチャンピオンを倒し殿堂入りしてみせたトレーナーのアユ。有名人なんてレベルじゃねえぞ、あんた」

 

「え、えええぇ!?」

 

「……それは、どうも」

 

 神童、という言葉を聞いて、アユの顔があからさまに歪む。しかしアユは、ホウエン地方出身だということは言っていたが神童と呼ばれていた過去のことはマスコミの前では一言も話していない。アユという名前とホウエン地方出身だということさえわかれば調べようとすれば調べられるだろうが、この少年はそうして調べたか、昔からアユを知っていたかのどちらかだろう。ちなみに、やっぱりアユの正体―――と言っても隠しているわけではないのだが―――が分かっていなかったらしい女の子は、眦に涙を溜めたまま驚きの声をあげていた。泣いたり驚いたりと、感情の忙しい子だな、この子も。

 

「で。そのアユさんが何の用だよ。俺、そいつをいじめてなんかねぇけどな。本当のこと、言っただけだろ?」

 

「本当のこと? ……私、この子に才能がないなんて思えないけど」

 

「はぁ? 俺でもわかるのに、神童のアユが人の才能すら見極められないのか? ……なんか俺、がっかりなんだけど」

 

()()()()()()()()()()?」

 

「……はぁ?」

 

「人の才能なんて私にわかるわけないじゃない。才能ってなんなのか、何を以て才能があるとするのか。その答えを見つけるために今ここにいるんだもの」

 

「……何言ってるかさっぱりわからねぇ。才能あるやつってのは俺や、あんたみたいな人間のことだろ? 才能無いやつってのは弱いやつだ。そこの女みたいにさ」

 

「今弱いからって才能がないとは限らないじゃない。私、そういう人知ってるもの。昔は弱かったのに、今や殿堂入りトレーナーになを連ねている男の子を」

 

「だからってそいつをかばう理由にはならないだろ? あんたの言ってるその男と、そいつは違う人間なんだからさ」

 

「……駄目だよ。そうやって、自分の思うままに何も気にせず生きてたら、きっと後悔する」

 

 ……あぁ、そうか思い出した。少年のあの言葉、聞き覚えがあると思ったが……つい昨々日に聞いたばかりの話じゃないか。アユが、昔ノブに言ったという言葉そのものだ。

 

「本当に何言ってんだよあんた。訳わかんねぇ」

 

 二人はそれきり沈黙して、パルテール街道に気まずい空気が流れる。そんな中、アユはおもむろに女の子を抱き寄せると、凛とした表情で言った。

 

「この子に謝って、発言を撤回しなさい」

 

「何を言うかと思えば……なんか笑えてくるな。ホウエンの神童がこんなやつだとは思わなかったよ」

 

「聞こえなかったの? 私、あなたに笑えなんて言ってないよ。この子に謝って、発言を撤回しなさいって言ったの」

 

 少年は笑い混じりに言ったが、しかし、アユはそれに対して至極冷静に言葉を返した。そんなアユの姿を見て、少年はアユを不快そうににらんだ。

 

「誰が謝るかよ。俺は事実を言ったまでで、悪いことなんか一つもしてないんだからさ。なんなら何回でも言ってやるよ。そいつには才能がない。トレーナーに向いていないってさぁ!」

 

「それじゃあさ。この子があなたに一矢報いれば、その言葉を撤回してくれる?」

 

 アユがとんでもないことを言い出した。それを間近で聞いた女の子の顔がさっと青くなり、ふるふると首を横に振った。

 

「……どうやって、そいつが俺に一矢報いるってんだよ」

 

 そうだ。アユは今かなり無茶なことを言った。だってこの女の子はたった今少年に負けたばかりで、何をどうすれば彼に一矢報いることができるのだ。何か考えがあるにしても、難しいのではないだろうか。

 

「三日後、この子がまたあなたに挑戦する。私がこの子の特訓を見てあげた後でね。それでどう?」

 

「三日間も俺にハクダンシティにいろって言うのか? やだね。俺にはそんなやつのために立ち止まってる暇はないんだ」 

 

「あなた、次はミアレシティに行くんでしょ? ……ミアレシティのジムリーダー、今いないの。三日後に帰ってくるんだよ。必然的に、あなたは三日足止めされることになる」

 

「……」

 

 別に、ミアレシティを後回しにすれば問題はないのだが……。自信満々に言うことで、少年を考え込ませることが出来たようだ。

 

「私も三日後にはミアレに戻るし、その時に再戦にしよう。それでいいよね?」

 

「……はぁ。わかったよ。あんたの口車に乗ってやる。……でもさ、俺、絶対に言葉を撤回なんかしないから。出来るもんならやってみろよ」

 

「上等。絶対に一矢報いて見せるから。この子が」

 

 自信満々のアユの言葉に、女の子は涙目でふるふると首を振る。……さっきから思ってたけど、可哀想だなこの子。完全に巻き込まれてるだけじゃないか。

 

「じゃあ、三日後にミアレシティのポケモンセンターで会おう」

 

「……おう」

 

 少年はそのまま、もう既に日の沈んだパルテール街道をミアレシティ方面に歩いていった。それを見送ったアユは、女の子の方を振り返ってにっこりと笑顔を作った。

 

「……さて、大変なことになっちゃったけど、あの子を見返すために頑張ろっか!」

 

「……わ」

 

「わ?」

 

「私には……私にはっ! 無理ですぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 

 ……まあ、そうなると思った。




今回も拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

皆様にお気に入り登録をしていただいたおかげで、短編だったこの作品も連載となったわけですが、それによってひとつ不具合のようなものが生じてしまいました。

題名と作品内容の乖離です。


元々短編部分だった一話では、手持ちがダゲキ一匹のみの無茶なトレーナーが無茶な指示でチャンピオンと戦う、という作品で、題名もそれに準ずるようにつけました。
この時点では先の構想もなく、一発ネタだからはっちゃけてやろうという感じで書いたわけですが。
連載にする上で一つのテーマを定めなくてはならないと考えたときに出たのが、「才能とは何かの答えを探す」というものでした。そうなってくると、題名とは内容が変わってきてしまいます。

そのため、題名の変更をしようかという結論に至りました。
しかし、この作品は私の物ではありますが、皆様に楽しんでいただくものでもあります。そこで、皆様にご意見をいただきたいのです。

この第九話を投稿した直後に、活動報告として、アンケートを投稿します。題名を変更するかしないかのご意見をお寄せください。

アンケートの期間は約一週間を予定しております。よろしくお願いします。

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