なお、感想及び的確かつわかりやすいアドバイスも待っています。
本レポートは、人類の文明及び文化の維持について一連の記録及び記憶から逸脱しており、本文書は人類生存に関して、脱出船内のデータベースに記録されていない。なおこの文書完成日は生存人類脱出日からオペレーションクレードル完了後に改めて私が今までの出来事で振り返った中で一番異質だと感じたと思うある人物達の記録である。
作成者 アキラ・サカキ 作成年2049年1月4日
2045年 オペレーショングレートウォール実行後、束の間の平穏が訪れたある日、私がある人物に接触し、彼女の思い出話を聞き取りレポートにまとめる作業を開始した。
急速な気候変動の結果、8月中旬だと言うのに厚い曇り空からチラホラと雪が降り続いたある日、今では殆んど無いに等しくなった日照量の中、旧日本現在は極東自治区と名称が変わってしまった茨城県要塞大洗町の海岸にある一軒の喫茶店に入った私は、其処で彼女と待ち合わせをしていた。暫くすると,チリンと来客を知らせるベルが店内に響き、彼女が現れた。彼女は、左目には眼帯を右腕には幾重にも固く縛られた包帯が指先までしっかりと固定されていた。彼女も私に気づいたらしく、私に向かい合う形で席に座り、今では希少価値となったダージリンを店員に注文すると、店員も彼女の意思を感じたのか、隠してあった紅茶の缶を取り出し、紅茶を入れ始め、彼女の前に置くと店内の奥の方に消えた。
彼女は一口ダージリンに口を付けると、
「この紅茶を飲むと昔の友人を思い出すの」
と私に言うと、少しの間ダージリンの入ったコップを手で包み込んだ。私も先程注文した代用コーヒーに口を付けた。
すると彼女は、ハッと思い出した様に私に名刺と自己紹介を始めた。
「、あ、ごめんない。私は、極東陸軍所属第7戦車小隊隊長の西住みほです。今日はよろしくお願いします」
と言うと、私もすぐに自己紹介を返し、今日のレポートについて告げると、彼女は少し困った表情をしながら、キッチリと「良いですよ」と答えてくれた。なお以下の文章は、私の質問に彼女が答える文面になっている。
では、早速おねがいしますね。
良いですよ。では、私の過去からお話ししましょうか。私は元々熊本出身で、今では完全に廃れてしまったに等しい戦車道の家元の次女として生まれました。ええ、今は完全に戦車道は、世界中から消えてしまい今では一部の記録のみの存在に変わってしまいましたが、2030年まで日本ではまだまだ、全国に戦車道の流派が無数にありましたし、三年間隔になってしまいましたが全国大会の試合も行われていました。勿論巨大な学園艦。ああすみません学園艦と言うのは、巨大な船体に街ひとつを丸ごと抱えた超大型の船舶で、名前のとおり、艦そのものが海に浮かぶ巨大な教育機関として成り立っていて、上甲板には校舎やグランド、学生寮といった教育施設のほかに、住居や商業施設が立ち並んでいてまた、艦内には農場や水産養殖場といった食料生産施設、浄水・発電施設や道路、ごみ焼却場などのライフラインを有し艦全体に都市の広がりをもち、恒常的な洋上生活を支え、生徒たちは学園艦のそれらを運営することで様々なことを学ぶ。学園艦の建造にはいくつもの巨大なブロックを製造し、そのブロックを繋ぎ合わせるブロック建造方式で建造されている船の事です。ええ今では、世界中の学園艦の多くは解体されるか、海の藻屑に消えた存在になりました。ええ、私が以前通っていた黒森峰の学園艦も軍に徴用後に改装された後。フィリピン沖にゲゾラの群れに襲われ大量の物資と人員と共に撃沈されたそうです。それに私達が必死で守り通した大洗女子学園学園艦も一昨年にインド洋沖に出現したマンダⅡによって撃沈されたそうです。ええ、私達の母校は、元々廃校の危機にあったのですが、何とか2034年の全国大会で優勝して廃校の危機から救ったはずなのですが、2035年に政府から強制徴収と言う形を取られてしまいました。ええ、その時には皆泣きましたよ。私を含めてね。今までの事は無駄だったのかと。注1
注1 2034年の8月から日本でも一般徴兵法が成立しました。16歳から50歳の日本国籍と日本住者全員が対象。兵役義務8年間と15年間の予備役編入。なお、戦車道及び特殊技能所得者及び関係者は全員即時強制兵役義務化された。
すると、少しぬるくなった。ダージリンを一口口に含めると、本題に入って行った。
すみません。話が脱線してしまいましたね。
いいえ大丈夫ですよ。では話を続けて下さい。
はい、ではこの写真を見て下さい。
と言うと懐から財布を取り出し、その中から古ぼけた一枚の写真を取り出した。写真の中には10台の戦車の前。笑顔で笑っている少女達が揃っていた。
これが私達の所属部隊員です。此処に映っている人全員が私達の学友だったんですけど、学園艦時代には、他にも3年生と風紀員、自動車整備部、3年生に付いて行った船舶科やネットゲーム仲間で結成されたチームメンバーも居たんですが、今は完全に音信不通になってしまい、何処で何をしているかは判りません。もし何か分かったら教えて貰えませんか?
この写真が撮られたのは、オペレーショングレートウォールの準備の際に中国大陸方面でGフォース及びその補助部隊が使用する物資や資材の運搬の際の人員の警備と護衛任務の中で撮られた一枚です。
学友の件については解かりました。何とか私の方でも調べてみますが、今のご時世、殆ど判らない可能性の方が高いですよ。
それでも構いません。宜しくお願いします。それでは話を続けますね。
徴兵制によって、真っ先に私達も他の学園艦に所属する戦車道チームと同様に徴兵されてから、当時はまだ日本防衛軍内の対獣ミサイル機動隊に配属されてから其処で2か月間の基礎教育を受けた後、私達の最初の任務先は日本国海上防衛軍の輸送艦に乗せられて、アドノア諸島に配属されました。対獣ミサイル部隊と言っても、その内容は私達の様な若輩者が使う兵器は2021年にアメリカが開発し、今現在でも日本で大量に量産されてるリジーナと呼ばれる元々携帯式対戦車兵器を名称のみ変更したシロモノ。正式名称M-101A3(注2)発射器数台と弾頭箱10セット(1セット6発入り)とを名称のみ変更したシロモノキッドが渡された後、輸送船から降ろされました。その際、アドノア諸島で待っていた部隊と交代されたことを初めて知りました。ええ、凡そ9か月間の任務だったと思います。そこで私達は、ある出会いに遭遇しました。
注2 指揮官1人とリジーナを操作する3人で運用される。
かなりの重量である為、主にアンブッシュや車輌に搭載して運用された。
対怪獣用兵器であるが、単発で怪獣を撃破することは困難であるため、集中攻撃したり間接など比較的装甲の薄い部位を狙い撃つ戦法が採用されている。なお、基本的に中型種以上の怪獣には集中攻撃をしても殆どダメージを与えられない。しかしながら、有線式誘導方式の為、誘導員の腕次第では低空を飛翔する小型種程度なら有効射程内なら命中させられることが出来るとされている。
全長157cm 口径139mm 有効射程3,500m 最大射程4,200m
ある出会いですか?
ええ、あの時の思い出は今でも思い出します。たしか、私達がアドノア島に上陸して初めて猛烈な風雨にさらされ、キャンプをしていた場所を急遽変更して、近くの山の近くで見つけた洞窟に避難した時です。私達の仲間の澤 梓(さわ あずさ)さん達が洞窟の奥で何かを見つけたらしく、走って私達の所に戻ってきたんです。
何を見つけたんですか?
巨大な卵です。そうですね、2メートル位の高さはありましたね。ええ、最初見た時全員が驚いていましたよ。もしかしたら、今にも生まれて私達を食い殺されるのかと思った人もいたんじゃないのかな。私は、もしもの時の為に卵の前に一台のレジーナを据え置き、その後ろで寝ずに番をしてましたよ。時折仲間が交代するから眠ってくれと言いましたが、私は、彼女達の隊長だったから弱気を見せるわけありませんので気丈に振る舞っていましたよ。
けれど、寝ずの番を始めて3日目位の時に私は、ついに睡魔との戦いに限界を迎えて、ウトウトと舟をこぎ始めたんですよ。すると、暫くしてから音が聞こえました。今となってその音の正体は卵が割れる音でした。私はすぐにレジーナの発射準備を整えて、何時でも撃てる準備をしたんですが、卵の近くに人影があるのに気が付いたんです。その子の名前は、丸山 紗希(まるやま さき)と言って私達の戦車道チームの中でも一番の不思議っ子でした。その子がいつの間にか卵の前に座って草笛を吹いていて、その音に呼応するかのように卵が大きく振動して、時折卵の内側から発光し始めました。勿論この時他のメンバーも集まって来て、一部は私と同じようにレジーナの射撃準備に入っていましたね。そして、遂にその卵からあの子が姿を現したんです。
何が現れたんですか?
ゴジラに極めて良く似た赤ちゃん怪獣です。ええ、後で知りましたが、オペレーションエターナルライトの時に確認されたジラと呼ばれる怪獣の赤ん坊には姿形は似ていませんでしたね。ただ、特徴的な3つの背びれとか少しは類似する点がありましたけどね。
え、ちょっと待って下さい。卵からゴジラが生まれたってことですか!
ええ、2030年に初めて確認され、人類に途轍もない被害を出した怪獣ですね。でもあの子はそんな感じは微塵も感じなかったですよ。それに何だか可愛かったですよ。それにあの子のおかげで今の私と私の仲間が生きているんです。だから、あの子は私の救世主であり、大切な仲間の一人ですよ。
そう言うと、みほは一口ダージリンを口に含み、店員にお代わりを注文した。私は、彼女の言葉に改めて驚愕した。まさか、彼女はあの忌まわしきゴジラ教の信者ではないだろうか?と言う疑問もあったが、彼女の次の言葉でそれを否定された。
ふふ、もしかして私をあのゴジラ教と言う馬鹿馬鹿しい信者とおもいましたか?あの神が遣わした獣とか言う人達の事は私も否定しますし、信じてもいません。勿論私だけでなく当時の仲間も誰一人信じていませんよ。勿論、あの宇宙人が持ち込んだ宗教も私含め当時の仲間の誰一人も全く信じていませんよ。どうも胡散くさ過ぎますので。
ああ、話がまた脱線しましたね。卵から産まれたベビーゴジラは、ゴジラの特徴である三つの背びれもありましたし、体色も少し薄緑でしたよ。ただ、あのベビーゴジラは、グレートウォールで埋没させたゴジラとは違う種類のゴジラのような気がしますね。それに後で聞いた話なんですが、私達が配属されたアドノア諸島には、無数の有害な放射性廃棄物が埋没されていたらしく、更にその周辺の海域にも無数の超高レベル放射性廃棄物が投棄されていたみたいで、普通なら一週間以内に私達は、高濃度核汚染や高濃度の放射線に曝されて全員死亡していたはずなんです。でもどういう訳か、私達がこの島を離れるときには、これらが全く検出されていないと言う事なんですよ。何故か分かります?
まさかこのベビーが食べたんですか。
半分正解ですけど、半分不正解ですね。多分ベビーは大気中の放射線とかを体に随時取り込んでいたと思いますよ。そうでなければあれだけの急速な成長は不可能ですよ。でも、ベビーは、私達が採ってきた魚や携帯食料も喜んで食べていました。特にベビーは、私達の携帯食料のビスケットがお気に入りみたいでしたね。
私達は、これが最初にあのゴジラに助けられた事の始まりですね。
と言うと、みほは、ふと窓の外を見て微笑んでいた。窓の外は未だに弧雪が降り続き、ゆっくりと地面を白に染め上げていた。
それからベビーは、すぐに私達に懐き始めると、私達は全員でベビーの面倒を見たり、一緒に寝たりしましたね。特に紗希さんには一段と甘えていましたね。これは私の勝手な解釈ですけど、ベビーが卵から産まれて最初に見たのが彼女だったんですよ。だからベビーは、彼女を母親だと間違って認識したのだと思います。
それから2か月ほど過ぎた時でしょうか。国防軍から『アドノア島の近くのバース島にも定期警戒をせよ。また、警戒任務期間の延長』と言う命令が通信機から下達されて、暫くすると国防軍の輸送機から追加の空挺輸送が実施されました。
その結果任務が伸びたというのですか。
ええ、最初は、2か月半だったのですが、延長に延長を重ね最終的に九か月間に伸びました。私も2回目の延長を聞かされた時に疑問を思って、私のチームの秋山優花里の個人的に持ってきた強力な短波通信機を私達の中で唯一第一級アマチュア無線技士の資格を持つ武部沙織さんが内地に居る学友に連絡を取り合い、私達がアドノア島の周辺諸島の調査監視と並行して密かに調査を依頼しました。
それで何が判ったのですか?しかし、本当ならこれは違法調査なのでは?
ええ、一連の通信は、本来なら違法です。けれど、私達はこの一連の任務期間の延長が何か引っ掛かっていたんです。ええ、此れと同じような事が前にもあったんですよ。私達の学園艦が廃校になりそうだったから全国大会で優勝したという話をしましたよね。
ええ、その話は聞きましたが、
その話には続きがあったんです。全国大会優勝後、暫くしてから、文科省から一人の役人が乗艦してきて「優勝すれば廃校を免れる」というのは可能性でかつ口約束であり、検討はしたものの廃校の撤回はできなかったという事実を告げられたんです。勿論それを聞いた時に全員愕然としましたよ。勿論直ぐにその担当官に猛烈な抗議をしましたし、一部の生徒は、恨み節をこれでもかと当時の担当官にぶつけたりして荒れに荒れました。けれど、暫くして国家総動員法が可決されてから、全国の学園艦の強制徴収と戦車道受講者の徴兵が始まった為、私達も徴兵された結果になりましたから、宙に浮いたままになりました。まあ、学園艦を去る時には、学園艦の備品やら何やらを紛失したと偽装し、生徒による大量の略奪紛いな事も起きましたね。
話を戻しますね。ええ、密かに調査した結果、私達をこんなアリューシャン列島の僻地に送り込んだ人物の正体が判りました。
私は暫く考えていると、ふと頭を過ぎったまさかの考えが口から発する前に表情が出ていたのか、私の前に座っていた西住さんが
ええ、そのまさかですよ。大体一週間ぐらいの後ですかね。いつもの様に通信機から本土に定時連絡をした後、暫くして通信機から連絡があって、内容は調査結果についてでした、一応私たち以外には他愛もない通信会話として記録されているはずですよ。ですが、私たち以外が聞いたら他愛もない会話内容だけれど、私達にとっては衝撃的な内容でしたね。その内容は「軍の人事に関する人の中に私達をよく思っていないグループが有り、今回の任務地選定の際にそのグループが関与している可能性が大」と言う内容でした。しかし、もし今の私達がこの任務が降りた際は勿論拒否しますし、何らかの対抗手段を撃ち出すことが出来ます。しかし、この当時の私達には全く拒否が出来ませんでした。その為、私は、他のメンバー全員に健康状態や気分等を逐一報告するように義務付けました。ただ、この報告も全て杞憂となりましたけれどね。
其れから何かありましたか?
ええ、凡そ5ヶ月位経った時でしょうか。その時にはもう,私達は全員が見違える様に心身ともに大きく成長してましたね。アドノア島でベビーと初めて出会った洞窟を住居にしていましたし、付近の海域でも比較的豊富に魚とかが取れましたね。まあ、時々、ガニメの小型種とかカメーバの小型種が数匹上陸しましたけど、私達はこの時には逆に捕まえて食べたり、残った甲羅や殻とか簡単な加工をしたり魚釣り用の餌にしていましたね。一応細々ですけど、本土から輸送機から空中投下による補給や洋上からコンテナ輸送とかで衣服とか消耗品の補給が有りましたので、そんなに苦労する事は無くなりましたね。後、この頃からベビーが近くのバース島まで泳いで渡り、其処に住みつき始めてから私達も数名ずつ一週間位のローテーションでバース島にも駐屯しましたね。其処で急速な成長を見せたベビーは、あっという間に全長が約30メートル位まで成長しましたね。その頃から私達の中であの子の名前を「ベビー」から「リトル」に変わりましたね。
ただ,リトルもベビーと同じ頃の様に人懐っこさは変わらなかったですね。まあ、全長が全長なんで私達にとって、リトルのじゃれ合いが少々危険を伴う事もありましたね。ただ、少しずつ時間が経つにつれて、背びれとか体格とかがゴジラ寄りになっていくのが私達の全員がひしひしと感じていましたね。でもあの事変が起きました。
ある事変ですか?
はい。多分あなたの所属部署内にも資料が有ると思いますよ。そう「バース島消失事件」ですね。あの事件が起こったのは私達の任務が8か月位経った日の夜、突然私達が拠点としていたアドノア島全域が揺れました。ええ、私達はすぐに、近くの比較的高所の丘の方に避難しました。勿論津波による被害の警戒として。ええ、世界でも珍しい程の地震列島の国民性ですかね。そして、私達は噴煙と紅蓮の炎を纏う様に沈みゆくバース島を見守るしかありませんでした。そこに私達の友達となったリトルを残して。この時はもう会えないと思い皆で泣きました。そしたら、バース島が噴火し、消滅(注3)して2日後に、大型輸送ヘリが本土から飛来し、私達は押し込まれる様にして、本土に帰還しました。
そう、あの時までですか。
注3 現在でもバース島の消失は不明の点が多いが、一番の定説として、地下に埋もれていた高純度の天然ウランが熱水噴射により自然核爆発が起きた結果、島自体が消滅した説が有力。
あの時までですか?
ええ、正確には、今年(2045年)のオペレーショングレートウォール時の時まで、あの作戦に私達も参加していました。ただ、先ほど述べた様に私達の任務は、オペレーショングレートウォールの準備の際に中国大陸方面でGフォース及びその補助部隊が使用する物資や資材の運搬の際の人員の警備と護衛任務でしたけどね。その時には、私達は、アドノア島から本土に帰還後、本格的な戦車運用について講習等で忙しかったり、2種類の宇宙人が来訪したりと世間でも慌しく時が過ぎましたね。
そして、2039年より実行された欧州奪還のための軍事作戦オペレーションエターナルライトの実行とオペレーション・ルネッサンスの中断、オペレーション・ロングマーチによる史上最大の陽動戦等が実行され、私達の様な学徒も総動員されていました。そんな中私達の仲間は日本国内で訓練に明け暮れていましたが、遂に私達にも遂に動員されました。2043年10月頃だと思います。私達は全員極東軍所属第77特別輸送警備中隊に配属され、量産型駆逐艦3隻の護衛の元30隻近い強制徴用された簡易改良型戦車輸送船に乗せられ、大連港に到着後、其処で私達に与えられた装備が開封されました。ええ、地球連合が発足してから急速な科学進歩のおかげで様々な新兵器が登場しました。少なくとも原子力空母マティアス・ジャクスン級ネームシップ「マティアス・ジャクスン」、轟天型潜水艦、特殊潜航艇・薩摩、D-03削岩弾頭、38式機動戦闘服ジャガー日本式(ジャガーJ)、電磁加速小銃(レールライフル)、電磁砲塔式多脚戦車(G-HED)、超音波レーザー(メーサー)戦車、対ゴジラ用超大型メーサー砲台マーカライトファープ、ツイン・マーカライト・ファープ、機動空中要塞スーパーX、スーパーXII、スーパーXIII、地底戦闘車モゲラ、F-3YS、抗核エネルギーバクテリア、43式航空偵察艇、45式冷凍メーサータンク等々が開発配備されていきました。私達の支給されるモノもこれらの系統に違いないと思いました。しかし、現実は全く違いました。私達に支給された兵器は、2034年に旧日本国防陸軍が旧米軍が開発したM4A1を発展改良し開発した34式戦車(注4)でした。ええ、先程見せた写真に写っている戦車がそれです。しかしこの戦車は、開発されたのは良かったのですが、後にエクシフ・ビルサルド両人が地球に到来し、其処から供与された急速な技術革新のせいで、殆ど量産されずに終わってしまった悲劇の戦車です。しかしながら、細々とした幾度かの性能を向上させた最終型が私達の部隊の全車両に配備されたのは奇跡ですね。
注4 34式戦車7型(性能向上最終型)正式形式M34A7 MBT
特徴 乗員は各種操作の徹底的な自動化によって車長兼砲手、操縦手兼通信手の2名となっている。駆動方式は電気式。
砲塔にはM4A1(M1A6の後継車両)系列砲塔を基にし、更なる長砲身の58口径155㎜口径(最終型は55口径158ミリ砲)の速射滑腔砲を2門搭載された。砲身左右交互の射撃により高い発射速度(初期型は1門に付き毎分10発だが、最終型の7型は毎分15発に向上)を持ち、同時に斉射することも可能。発射可能砲弾は、化学エネルギー弾の榴弾(HE) 粘着榴弾(HESH)、対戦車榴弾/成形炸薬弾(HEAT)、多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)と
運動エネルギー弾の徹甲弾(AP) 徹甲榴弾(APHE)、被帽徹甲榴弾(APCHE)、仮帽付徹甲弾(APBC)、仮帽付被帽徹甲榴弾(APCBCHE)、剛性核徹甲弾(APCR)、徹甲焼夷弾(API)、高速徹甲弾(HVAP)、装弾筒付徹甲弾(APDS)、装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)
その他として、焼夷弾(Incendiary)、曳光弾(Tracer)、照明弾(Illumination)、発煙弾(Smoke)、信号弾 、榴霰弾(Shrapnel)、キャニスター弾(Canister)、複合弾(HEIAP)、フレシェット弾(flechette)等の他、6型以降は更に33式対怪獣プロトンミサイル、D-03削岩弾頭、フルメタルミサイル等のミサイルも発射可能となり、実質的には当時最新鋭且つ有力なガンランチャーとしても機能した。
また、砲塔側面には遠隔操作型4連装85㎜多目的小型迫撃弾筒発射機(通称リボルビング・ランチャー)(4型~)が各5基(4型~6型までは2基8基)の計10基(砲塔両横に2基ずつ、砲塔後部に1基及び車体にも同様の配置)装備される1発射筒に付き6連発リボルバー式装弾機を内蔵し一弾倉につき最大各種弾頭計5発ずつ装填されている。
砲塔には砲手兼車長が乗車し、自動装填装置により給弾リングに収められた砲弾は自動で装填される。これに加え、衛星とのデータリンクにより精密長距離射撃が可能。車体前部に操縦手が乗車する。
補助射撃兵装として、砲塔上部に遠隔操作式20㎜3銃身機関銃(対小型怪獣用)と遠隔操作式50㎜自動擲弾銃を各一基装備される(7型のみ)3型以前まで7.62mm主砲同軸機関銃、13.2mm重機関銃 M-60 HMG、 5.56mm機関銃 M-299等を装備していたが、怪獣相手には全くの無力だったため3型以降廃止された。
フットペダル方式を採用し、レバーにより方向転換を行う。車体底に脱出用ハッチも設けられている。車体後部はキャリアがあり、物資や4名ほどが積載又は乗車可能(キャリアは5型まで6型以降は廃止された)。最高速度は不整地でも時速90km(最終型は87km)に達する。
なお装甲に関しては、被弾経始や多重空間複合装甲、電磁装甲等を組み合わせたモノを初期型から取り入れていき、5型以降には更に対集団小型怪獣用として、現実のリアクティブアーマーとは異なり、クレイモア式リアクティヴアーマーを車体及び砲塔全体に覆う様に纏わせた。これにより、小型怪獣の集団によって孤立した場合の最終防御手段であり、車体内部の遠隔操作による個別爆破が可能になった。6型までは各面1回しか爆発装甲が機能しなかったが、最終型は各面3回まで機能する様に改良されたしかし、その分だけ重量が増加し最高時速が低下した。しかしながら、本車が登場した時期が悪く僅か200両しか初期型が生産されず、その生産数は型が上がるごとに減少していき、最終型の7型は初期型から6型までの残存車両を共食いさせながら開発した為、20両程生産しかなかった。なお、この戦車を使用した極東軍所属第77特別輸送警備中隊に全車両が配備された。
34式戦車初期型(()内が7型)基本スペック
全長
11.6m (11.7m)
車体長
9.2m (10.0m)
全幅
4.9m (5m)
全高
3.9m (3.5m)
懸架方式
トーションバー式
速度
90km/h (87 km/h)
主砲
58口径155mm2連装滑腔砲 (55口径158ミリ 2連装速射滑腔砲)
発射可能砲弾は、化学エネルギー弾の榴弾(HE) 粘着榴弾(HESH)、対戦車榴弾/成形炸薬弾(HEAT)、多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)と
運動エネルギー弾の徹甲弾(AP) 徹甲榴弾(APHE)、被帽徹甲榴弾(APCHE)、仮帽付徹甲弾(APBC)、仮帽付被帽徹甲榴弾(APCBCHE)、剛性核徹甲弾(APCR)、徹甲焼夷弾(API)、高速徹甲弾(HVAP)、装弾筒付徹甲弾(APDS)、装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)
その他として、焼夷弾(Incendiary)、曳光弾(Tracer)、照明弾(Illumination)、発煙弾(Smoke)、信号弾 、榴霰弾(Shrapnel)、キャニスター弾(Canister)、複合弾(HEIAP)、フレシェット弾(flechette)等(33式対怪獣プロトンミサイル、D-03削岩弾頭、フルメタルミサイル等も)
副武装
7.62mm主砲同軸機関銃
13.2mm重機関銃 M-60 HMG
5.56mm機関銃 M-299
上記は後に撤去後、下記の火器を装備
遠隔操作式20㎜3銃身機関銃、遠隔操作型4連装85㎜多目的小型迫撃弾筒発射機、遠隔操作式50㎜自動擲弾銃
それからどうなったのですか?
直ぐに私達に資材等の輸送車両の護衛として、大連の湾岸部から中国奥地にある作戦実施エリアまで何度か往復し任務に励みました。何事も無く任務を終える事もありましたが、大抵は、行き帰りのどちらか、勿論その両方と言う事もありましたが、小型怪獣の小規模な集団に襲われました。特にクモンガやカマキラス、メガヌロンの小型種もしくはその亜種によく襲われましたが、何とか犠牲者を出さずに撃退する事が出来ました。ただ、44年の2月頃にヨーロッパで猛威を振るっていた。ジラの幼体の中規模な集団に襲われましたときは、部隊が壊滅する事を覚悟しましたが、偶々付近に居た有力な部隊が救援に駆け付けたおかげで何とか全員無事に帰還する事が出来ました。
しかし、まさかこの任務が終わった後にあの命令が下達されて、あんな出来事が起きるなんて思ってもみませんでした。
あの命令とは?
2044年9月に中国大陸方面のドリルビッドの搬入作業工程が終了した為、私達の任務も一段落が着いた為、私達も一時的に日本に帰国する事が出来ました。同年12月に緊急招集されて、今度は旧ロシア連邦ウラジオストックに集まった避難民の救出とその殿を命令されました。私達は今度こそ生きて帰れないと心に刻み込みました。ええ、私には少し歳の離れた姉と母が居ました。ええ私の実家は有名な西住流戦車道の家元でしたが怪獣戦争が勃発し、日本でも徴兵制が実施された際に、私とは別に私の姉と姉の母校の戦車道の仲間と一緒に戦地に送られました。そして、オペレーション・ルネッサンス中の最大の悲劇と知られる『復活したゴジラによる第3次大規模輸送船団と地球連合海軍の壊滅』の際に乗り込んでいた輸送船もろとも海に消えました。其れを知ったのは、2042年の暮れの頃でした。其れを知った母は心的外傷ストレスによる鬱症を発症し、2043年6月に病死しました。ええ、あれだけ気高かった母が日に日に痩せ衰えていくのを黙って遠くから見守るしか出来ませんでした。ただ、このような出来事はもうこの時には私達の中では日常の出来事になってしまいました。ええ、私達が戦車道の大会の時に戦った全国の有力選手たちの多くがこの時には殆どが連絡が不通になるか、私の姉の様に亡くなったかのどちらかでした。それも今では、完全に連絡が途絶え、僅かながら私が隊長をしていた部隊の仲間と此方の喫茶店に居る店員のみになりました。
私は、彼女の言葉を聴き驚いていると、彼女は自嘲気味に笑っていた。すると横から新しい茶葉に入れ替えたダージリンティーの入ったポットとコーヒーの入ったカップと茶菓子を置いた女性が、
「その事は、余り他言無用ですわ。みほさん。それから替えのダージリンとお菓子ですわ」
「御免なさいアッサムさん、それから紅茶のおかわり有り難うございます」
と店員が、空になったお皿と其々のカップを取り下げると、軽く私に振り向き一礼して奥の厨房の方に消えていった。みほは、ダージリンが入ったカップを手に取ると再び昔の思い出を思い出したように笑みを浮かべ、私に語り掛けた。
「彼女の名前はアッサムと皆が呼んでました。彼女の母校、聖(セント)グロリアーナ女学院に本当に強かったですね。私達は彼女の母校と何度も対戦しましたが遂に一勝もできませんでした。聖(セント)グロリアーナ女学院の中で最も手ごわい三人がダージリン・アッサム・オレンジペコが通称「ノーブルシスターズ」と称していました。しかし、今では彼女以外は消息は分かりません。彼女もオペレーション・エターナルライト中に右半身をジラの幼体の集団襲撃により完全に失ってしまいましたが、ビルサルドの再生医療技術により一命を取り留めました。その後、この場所で先代の店長の元で働いています。しかしながら、彼女の所属していた部隊は壊滅しています」
と淡々と私に話すと、再び彼女の思い出を話し始めた。
さて、どこまで話したのでしょうか。
2044年の緊急招集の件についてまでです。
そうですね。ただ、この時の思い出は断片的にしか思い出せませんがそれでもいいですか?
あなたが思い出せる範囲で大丈夫ですよ。
では、話しますね。2044年12月の中旬頃に緊急招集された後に、速やかに第一陣として虎の子の旧日本国防海軍初の中型空母2隻、旧アンツィオ学園改装型特殊揚陸艦1隻、巡洋護衛艦(巡洋艦に該当)4隻、汎用護衛艦6隻によって輸送された後旧ロシア連邦ウラジオストック沿岸に接岸後、速やかにそこに集まっていた避難民を特殊揚陸艦に収容する一方私達は、ウラジオストックから内陸に進出し、残存避難民の捜索と対怪獣用迎撃部隊として殿を任されました。ただ、私達が上陸後すぐに暦が2045年に変わりました。
その後私達は、沿岸部から最大80キロ地点まで進出しましたが、残念ながら生存者を確認する事は出来ませんでした。そんな時にあの通信が届きました。私達が居る地点よりも奥に約15キロの地点に大規模な小型怪獣集団が沿岸部の方に向かって来ているので、私達はその集団を確実に撃破しつつ、後退せよとの事でした。
ちょっと待って下さい。その様な一連の出来事は此方のデータベースにはありませんよ。それにあの避難民輸送船団は、航行中に何者かの水中攻撃を受けて巡洋護衛艦1隻と護衛艦2隻以外は全滅したはずです。それに貴方の所属していた部隊は第二陣として出発したのでは?
多分それは改竄された後に残った記録の方ですね。どうやら上層部の何方かがこの一連の出来事を隠ぺいしたようですね。でも今からの話は私達が経験した本当の出来事なので記録の方をよろしくお願いします。では、話を続けますね。私達は怪獣の集団を食い止めるために、すぐに迎撃線を構築しました。と言っても、私達の持ち合わせている装備は、34式戦車15両と各車両に装備されている各種主砲弾薬計100発と機銃弾8000発と今回の作戦用に支給された設置式対怪獣用自動攻撃砲10台、対小型怪獣用地雷500基を運搬する為に34式戦車の車体を流用した35式装甲輸送車3両と34式戦車の車体を流用し203㎜連装砲を固定装備化した35式駆逐戦車2両と個人装備一式のみでした。あまり時間が無かった為、最前列に最も効率的な地雷原を敷設した後、地雷原の後列に自動砲の射線を交差させる様に設置し更に後列には、自動砲の車線外に駆逐戦車を中心とした護衛3両ずつの戦車陣と残った車両はそれらを陣地を支援する為の遊撃戦車部隊として配置しました。戦車部隊が行動不能になり乗員が脱出した際の足として後方に装甲輸送車3両を配置する陣形でした。この陣形が完成したのが、第一陣とした小型怪獣集団が双眼鏡で見え始めた頃でしたので陣地はぎりぎりである程度完成したのは良かったですね。しかし、此れが地獄の始まりと言う事は当時の私達は知る由もありませんでした。
その小型怪獣の特徴はなんだったのですか?
そうですね。巨大な鼠でした。それが荒涼とした大地を鼠色に染め上げて猛烈な津波か濁流の如く真っ直ぐに此方に向かっていました。そして、2045年1月10日私達は実戦初となる大規模な防衛戦の火蓋を切りました。瞬く間に最前線の地雷原に接触し、地雷数個に付き数十~数百匹単位で屠りましたが、地雷原は瞬く間に消滅しました。相手の数が多すぎたからです。その後自動砲及び駆逐戦車、戦車は、榴霰弾及び粘着榴弾等の面制圧用弾を中心とした自動砲を支援する様に砲撃を加えました。この時、ある意味幸運だったのは大鼠は、防御力を全く持たなかったという点でしたね。その為、面制圧弾や迫撃砲弾、更には機銃弾も十分に大鼠にダメージを与える事が出来ました。しかしながら、相手は膨大な数で此方に向かって来ており、此方の各種機銃砲弾等が真っ先に枯渇する勢いで消費する勢いだった為に私は部隊をじりじりと後退させながら、相手の大群から距離を離す作戦を実行すると同時に近接航空支援を要請しましたが、この時にはもう私達を運んだ後、ウラジオストック港で避難民もろとも消滅した事は知りませんでした。その為いくら待っても巡航ミサイルの一発も届かず、遂に大鼠の大群が私達の部隊を飲み込みました。
ガリガリと言う不協和音が車内を包み込み、部隊間短距離無線内でも私達の仲間の悲鳴が木霊していました。私は何とか皆を落ち着かせようと、無線で最終防護兵装の使用を許可しました。ええ、クレイモア式リアクティヴアーマーの無制限使用許可です。これによって、各車両に取り付いていた大鼠と周囲の大鼠を排除する事が出来ましたが、多くの大鼠は私達の防衛戦を突破してしまいました、この時私達は、作戦の失敗を輸送船部隊に連絡しようとしましたが、戦車や装甲輸送車、駆逐戦車等に搭載されていたアンテナ類が完全に破壊されてしまった為通信が出来ませんでした。また、大鼠の波に飲み込まれた際に、全ての車両に深刻なダメージを食らった為に、これ以上の戦闘行為及び移動等の行動が不可能になりました。よって、私達は何とかアンテナ及び通信装置の修復しようと車外に出ようとした時です。見渡す限りの荒野が広がっていた旧満州地域の大地に一つの歪な雲が現れたので、私は、持っていた双眼鏡で確認しようとした時にはもう手遅れでした。
今度は何を見たんですか?
メガニューラの大群があたかも蚊柱を形成したかのように私達の方に真っ直ぐに向かって来ていました。そして、私は仲間に警告を発しようとしましたが、もう遅すぎました。瞬く間に私達の部隊はメガニューラの大群に襲撃されました。そして、私がこの時から後の記憶はありませんが、最後に見た光景は、私達の仲間の大半の叫び声と、数人がメガニューラに掴まり、空中に連れ去られながら、空中でバラバラにされる光景でした。そしてわたしもメガニューラの鋭い鋏で目を抉られ右腕を簡単に切断されて、空中に鮮血が飛び散る光景でした。そして、私の耳に何処からか聞いた事のある巨大な咆哮が聞こえ、私はその後の記憶が全くありません。そして、次に目を覚ました時は、残存した第一次護衛隊が第二次輸送船に曳航される最中の病院船の中でした。その船員の人によると、ウラジオストック沖で壊滅した第一次輸送船団と合流後、一応ウラジオストック港内で一塊に倒れていた所を救助されたそうです。また、その付近には、ゴジラ若しくはジラに類似した巨大な足跡が発見されたそうです。そして、私達は全員何故か今までの戦闘で負った傷類がすべて綺麗に修復されていました。その後、本土に戻り長期の休暇が全員に降りました。
以上が私の思い出す限りの記録です。こんなもので良かったのでしょうか?
と言うとみほが、ダージリンを口に含み小さく息を整えるのを確認した私は、ふと疑問に思った。そして彼女の包帯に巻かれた腕と眼帯に覆われた左目について聞くことにした。
最後に個人的な質問宜しいですか?もちろんこれは上層部に上げるつもりはなく、私個人の質問になりますが。先程貴女は、傷が癒えたと言いましたが、ではこの眼帯と包帯に巻かれた腕は如何されたのですか?と
すると今までの彼女の顔つきが険しいモノに変わり、顎に手を当て数分考え事をすると、私に幾つかの条件を出し、私の質問に重い口を開いたと同時に彼女は腕の包帯と眼帯をゆっくりと人目を避けるかのように取り払った。そして、私は、此れをレポートにするかは悩んだが、脱出船が飛び立ったいま、出来る限りの私が見たモノを正確に後に帰ってきた我々の子孫に少しでも残せるようにしたい為、本レポートの最も驚愕すべき事実と私が直で見たモノを書き残したいと思う。では上記の記録の続きを書きたいと思う。
彼女が包帯と眼帯の両方を取り去った後私は息をするのを忘れた。包帯を取り去った腕は、完全に人間の腕ではなかった。全体的に淡い黒に近い濃緑色であるが、血管の様に所々に明緑色の線が手の先から腕の全体に走っていた。また、皮膚も爬虫類に近い印象を受けた。そして、彼女の眼帯を取り去り、隠れていた眼を見せてもらうと明らかに右目とは違う眼をしていた。白目部分が無く、充血しているかのように紅に血走っている印象を受けた。そして、彼女は眼帯と包帯を再度付け直すと、みほは再びダージリンを口に含むと、懐かしむように語り出した。此れが私の今の現状です。最初にこの変化が始まったのは、収容された艦の中にいたときです。その時から私達は全員が不思議な夢を頻繁に見る様になりました。ええ、とても懐かしい夢です。ベビーに出会った頃からリトルになり、そして、何処かゴジラに酷似しているけれど、どこか違う印象を受ける姿になったリトルいえ、あれはもうジュニアと言っても過言ではないでしょうか。そして、その夢を頻繁に見た後に私を含めた全員が少しずつ体質の変化に気が付いて行ったんです。それも、先の戦闘で負傷した箇所から段々と。私も失ったはずの腕がいつの間にか元通りに治っていた時は驚きましたが、帰国後にその腕の皮膚が急に一斉に剥がれ落ち、剥がれ落ちた後からこの皮膚が現れた時は驚きましたが、何処か私の中でとても納得している自分もいたんです。そう、あの子が助けてくれたんだと。そして、私達の仲間も同じような現象が起きていたんだと、後にメールで知りました。
此れが私達全員に今現在進行形で起きている事です。この同化現象は今後どのような変化が起きるのかは私達は分かりません。でも、私達はこれを受け入れる覚悟もありますし、それにこれ以上失うものも殆どありませんし。
と言うとこれ以上彼女は私に何も言わなかった。私もこの空間を支配する雰囲気に言葉を失ったままこれ以上質問できなかった。
そして、そのまま私達は喫茶店で別れた。
この時私はもう彼女とは二度と会えないだろうと思った。
しかし、運命とは時にもう一度めぐり合わせを行うという言葉があるが、此れをまさか私が体験するとは思わなかった。
そして、奴(ゴジラ)が動きだし、我々は完全に追い詰められ、南米の一部地域まで押しのけられていき、其処で僅かながらの脱出船で一握りの人類のみが地球を捨て広大な宇宙に旅立っていった。そして、残された人類は、唯一の希望として、怪獣共生派(コスモス) モスラの民(はるか昔から南米全域の未開拓地域一帯にモスラを神として敬い信仰する原住民族)、そして、残存する地球連合軍の最初で最後の作戦である『オペレーション・クレードル』が立案実行に移された。作戦目的は『モスラの卵を南米から最も離れていて小規模かつ最低限度の行政が機能している日本の放棄された元メカゴジラ開発工場まで空母サラトガで輸送し、現地の資材を用いてシェルターを建造し、その周辺で自給自足をするというもの』参加艦艇は、モスラの卵輸送用の空母サラトガを中心に100隻程を確保したが、そのうちの90隻は対ゴジラ陽動としてモスラと共に行動を開始。陽動役として、世界唯一の稼働可能な元学園艦としてBC自由学園改装打撃艦を中心とした打撃艦隊を編成し、北方向に先行させました。その後、私を含めた技術者と子供を中心とした民間人を乗せたサラトガを含めた十隻の輸送艦とその護衛部隊が南方向にそれぞれ進路をとり出港した。何故モスラの卵をより大型艦である学園改装艦に載せなかった理由は諸説あるが、一番の理由は、超大型艦故に発見率が極めて高くなるからと言う理由が代表的であった。
その後、陽動部隊は、旧アメリカ合衆国テキサス州沖20キロ地点でゴジラと接敵後、一切の連絡が途絶した。
一方の私達が乗っていた輸送艦隊は、ドレーク海峡経由で太平洋に入り、6度の小型~中型の海棲怪獣の襲撃に遭い、此れと交戦後、一隻の巡洋艦と二隻の駆逐艦を喪失するが、何とか小笠原諸島沖20キロの海域に到達後、其れは起こった。
始まりは比較的艦隊の外側に位置していた戦車揚陸艦の一隻が所定の位置からゆっくりとあるが離脱しつつあるという情報が旗艦サラトガのCICに齎されたことから始まる。この時、艦体は四重の防衛円周を形成しており、第一周線には僅かながらに残った対潜ヘリと43式航空偵察艇と呼ばれる一種のホバー式バイクによる早期偵察網、第二周線として駆逐艦による防衛線、第三周線は巡洋艦による防衛線、最終防衛線として、当時唯一の稼働可能な戦艦として近代化と改良されたニューヨーク級戦艦の2番艦テキサス及び軽空母3隻が防衛線を形成されていた。怪獣戦争中期頃から各国で現存保存されていた軍艦(モスボール艦含め)も続々と簡易改装された後に現役復帰するという状況(注5)になり、ニューヨーク級戦艦の2番艦テキサスも例に洩れず2022年に現役に復帰後(注6)、すぐさま最前線に送られ奮戦した。ニューヨーク級戦艦以後の各艦が続々と怪獣若しくは自然災害により撃沈若しくは座礁後放棄されていったが、この艦と旧イギリス海軍に所属していたエディンバラ級軽巡洋艦級2番艦ベルファスト(注6)のみが2049年時点生き残っているのみであり、前者は我々の輸送船団と行動を共にし、後者は陽動役として出撃後音信不通となる。
注5 但し、一部保存艦はきわめて古い為解体された。当時近代化改装後現役復帰した艦及び貨客船は以下の通り、
日本 宗谷、羊蹄丸、ふじ、あきしお他。
中国 ミンスク他。
アメリカ イントレピッド、ミッドウェイ 、ホーネット 、アイオワ、クイーン・メリー、ノーチラス 、セーラム 、アラバマ 、テキサス 、レキシントン 、ヨークタウン、ウィスコンシン、ミズーリ他。
イギリス ベルファスト他。
カナダ ハイダ(トライバル級)他。
ロシア ミハイル・クトゥーゾフ(スヴェルドロフ級巡洋艦)他。
ポーランド ブリスカヴィカ (駆逐艦)他。
が現役に復帰後、各戦線で活躍後大半が喪失した。
注6 ニューヨーク級第三段階近代化改装戦艦の2番艦テキサス(()内は2049年現代)
第三段階改装場所極東自治区旧日本国横須賀造船所(最終改装時期2039年~2040年)
性能諸元
排水量 基準:27,000トン(34,000トン)
満載:32,000トン (40,000トン)
全長 174.65m (185.72)m)
全幅 32.31m (33.45m)
吃水 9.19m (10.4m)
機関 2軸 14缶 27,100hp (2軸新型量産型ガスタービンエンジン450,000hp)
最大速 21ノット (30.9ノット)
乗員 士官・兵員:954名 (772名)
兵装 45口径35.6cm砲:10門 (前後部主砲構造物撤去後 対ゴジラ用超大型メーサー砲台単装マーカライト・ファープ2基)
51口径12.7cm砲:6門※(※完全撤去後、70口径五インチ単装速射砲4門)
50口径7.6cm砲:8門※
56口径40mm対空砲:40門 (完全撤去後、30㎜7銃身ガトリングCIWS 4基)
70口径20mm対空砲:48門 (完全撤去後、小型メーサー砲4門)
(4連装D-03削岩弾頭発射器4基)、(簡易ゲマトロン演算装置)(放射能除染用の抗核エネルギーバクテリア散布装置)(ナノメタル一部使用)等
2022年に現役復帰後、主に南米航路向けの護衛として従事。2028年頃から南アフリカ西沿岸部の残存住人救出戦に駆り出されバランⅢと交戦後、後部構造物全壊した為、護衛用の駆逐艦2隻を伴い戦線を離脱。その後ゴジラ出現後には、一部未修復ながら戦線に復帰したが、2030年代の旧アメリカ海空軍の総攻撃の際ゴジラの放射熱線の余波により、甲板構造物の内95%が融解し戦闘不能後生き残った僅か4隻の巡洋艦、駆逐艦に曳航され当時の日本国神奈川県横須賀に寄港後、修復中に宇宙人(後のエクシフ、ビルサルド)が来訪し各種技術供与の実証艦としてこの艦が選ばれ、徹底的な改装が行われた。単装式メーサー砲を始めとする未来的武装が惜しげもなく投入された。オペレーション・エターナルライト、オペレーション・ルネッサンス、オペレーション・ロングマーチ、オペレーション・グレートウォール、遠州灘海上決戦等に参加しそのたびに中大破し傷ついていたが、2040年の最終改装の時にナノメタルを導入し、自動修復機能を備えた事により何度も短期的な修復期間を得るだけで早期戦線復帰が可能になる。その後、南米の人類最終生存圏の連合政府直轄海軍基地の沿岸警戒艦隊旗艦。連合政府機関崩壊後は、オペレーション・クレードルの護衛艦隊旗艦。
エディンバラ級第二段階近代化改装軽巡洋艦級2番艦ベルファスト(()内は2049年現代)
第二段階改装場所欧州自治区旧英国ハーランド・アンド・ウルフ重工業株式会社ベルファスト造船所(改装時期2034年~2039年)
性能諸元
排水量
11,553トン (15,670トン)
全長
187 m(208m)
幅
21 m(25m)
吃水
6.1 m(6.9m)
主缶
海軍式三胴型重油専焼缶4基 (撤去)
主機
パーソンズ式1段ギヤードタービン4基、4軸推進 (新型ハイパーチャージャー式3段加速型4列直流式ガスタービンエンジン4基 4軸ウォータージェットエンジン)
出力
80,000shp (258,900 shp)
速力
32ノット (40ノット超)
乗員
850名 (700名)
兵装
Mk XXIII 6インチ三連装砲4基(100mm単装式長砲身ソフトリコイルレールキャノン2基)
Mk XVI 4インチ(10.2 cm)連装高角砲4基(50ミリ速射砲2基)
ボフォース 40mm連装機関砲6基(30mm4連装速射機関砲4基)
(4連装対怪獣用多弾頭ミサイル発射器2基)(ゲマトロン演算装置)等
2022年に現役復帰後、即座に欧州大陸沿岸方面の避難民護送船団の護衛任務で活躍。しかしながら、2028年の護衛船団中にマンダに遭遇し、輸送船団の8割を失い自身も艦首~第一主砲塔部分まで喪失しながらも辛うじて沈没を免れるが、イギリス海軍ドック内で力尽き一時的に放棄されるが、度重なる海棲及び飛行怪獣による軍用艦船の急激な消耗が重なり、2030年に再度修復及び改修が開始されるが、当初修復中であったドッグがメガギラスⅢとメガニューラの集団に襲われドック施設と周辺工場が壊滅した為、急遽駆逐艦2隻に護衛されながら、間に合った簡易修復のおかげで4ノットであるが自走航行し、生まれ故郷のベルファスト造船工場に3週間かかりながらも辿り着くが、其処をイギリス気象庁観測史上最大の巨大ハリケーンが襲い掛かり、ドッグ内で修復中であった本艦に大型クレーン6基が横転し上部構造物の大半を押し潰した。結果的により長期的な修復期間になった。但しこの修復期間中に宇宙人が来訪し、急激な科学技術進歩の結果、修復中の本艦もこの技術革新の恩恵を得た結果、記念館当時の姿から大幅に姿を変え、主砲塔を始めとする甲板構造物、内部機関、推進装置、各種電子機器等々を大規模な改装を加えた結果、2039年の年明けに全ての改装が終了し、2か月間の慣熟訓練の後、オペレーション・エターナルライト、オペレーション・ルネッサンス、オペレーション・ロングマーチ、オペレーション・グレートウォール等の作戦に参加し、単艦でメガギラスⅣとメガニューラの集団を撃滅を始めとする多大な戦果を挙げるが、オペレーション・グレートウォール参加中にインド洋に再び出現したマンダⅡの迎撃戦に出撃したがマンダⅠを大幅に上回る水中機動力に翻弄され本艦が搭載する水中用各種電子機器が破損し,更に僚艦6隻を失った為止むを得ず戦闘を中断し、マドラス港に帰港する途中で、水中から奇襲を仕掛けたエビラⅤ,Ⅵの攻撃を受け、第二砲塔及び後部構造物一切を薙ぎ払われ壊滅したが、エビラⅤ,Ⅵは航空支援を受けた連合空軍によって追い払われた為、何とか本艦はマドラスに帰港する事が出来たが、この時には、殆ど簡易修復しか手が回らず、後部構造物は綺麗に撤去するだけに留まった為、当時何とか行政及び工業能力が十分にあった日本に向かう予定であったが、遠州灘決戦の敗北を受け、喜望峰経由で南米に避難すると言う経験をしたが、当時は殆どの物資が枯渇状態であった為、修復には、同搭載兵装を持ちながら、放棄された数艦から武装等を移植した結果。兵装運用システム上の不具合が度々起こったが、その不具合は無視され、オペレーション・クレードルの陽動艦の一隻に選ばれ、ゴジラ戦に投入される。最後の通信として『我、只今より最後の決戦に挑む。女王陛下万歳、大英帝国よ、永遠に』との通信の直後周辺艦隊ごとゴジラの放射熱線の直撃を受け蒸発と後に生き残った陽動艦隊から齎せれた。
一隻の戦車揚陸艦が指定場所から明らかに離脱しつつある状況で護衛艦隊旗艦テキサス内のCICでは、速やかに離脱しつつある戦車揚陸艦に無線連絡しようとしたが、なぜか無線機越しの応答では、揚陸艦内で何かあったらしく幾つもの銃声と怒号と悲鳴が無線機越しに聞こえたと思った瞬間何かが壊される音の前に何か生物の咆哮が聞こえた瞬間、プツリと通信が途切れた。
その時私は、旗艦テキサスの付近に追随していた軽空母ユニコーンⅡの甲板に居たが、この艦からも離脱しつつある戦車揚陸艦の姿が見えた。そして、私はこの時の光景を忘れないだろう。
突如戦車揚陸艦のほぼ中心の甲板から突き出た巨大かつ鋭利な紫がかっている背びれが出現すると同時に戦車揚陸艦自体にも急激な変貌を遂げていった。其れは、まるで細胞侵食の様に艦全体を覆う様に侵食していくと、まだ変化していない戦車揚陸艦の各所から幾人もの人影が海の方に飛び込んでいくのが私からも見えていたが、突如揚陸艦が内部から砕け散る様にバラバラに破壊された。そして、私は次の光景は一生忘れないだろう。揚陸艦が砕け散りながら沈んでいく中、巨大な背びれを持つヤツが砕け散り周辺にバラバラになった船体の一部を押しのけながら浮上した。中央に巨大かつ鋭利な紫がかっている背びれそして、それを挟む様に一回り小さい背びれが並んでいた。そして、強靭な爬虫類の様な体格と前屈姿勢、そして何度も映像でみた我々の世界に休止符を打った怪獣王ゴジラに殆どそっくりであり、私が以前にパリで遭遇してジラと呼ばれるゴジラに酷似した怪獣よりもその威圧感存在感が別次元な存在であり、どちらかと言えばゴジラと同等の存在が目の前に居た。そして、奴は頭上に顔を向けると、巨大な咆哮を上げた。その方向は今も耳の中で繰り返し聞こえてくる。後にこの咆哮により周辺の艦船の窓ガラス等が全て粉砕されたと記録があった。そして奴は咆哮を終えると、顔を私の方に向けた。その時私は、この時全てが終わったと覚悟したが、何も起きず、奴は海の中にゆっくりと潜水し消えた。しかしこの時私は何か違和感を感じた為に、後の独自の調査でゴジラⅡ(ベビーゴジラ、リトルゴジラ後にゴジラジュニアはこの時は未確認情報が多かったため正式に発表されていなかった)と呼称された新たなゴジラの映像を調査した後にゴジラⅡの瞳の色が僅かながら違う事が判明した。そして、この時数少ない揚陸艦の生存者の話が聞けた(後にこの生存者は急性白血病の為話が終わった数時間後に死亡した)彼が言うには艦内にいた女性隊員が突然暴れ出し怪獣に姿を急速に変えると同時に周囲を吸収するかの様に肥大化していったと言う。其れを聴いて私は、以前であった女性の話を思い出し、もう一度ゴジラⅡの記録映像を視返し、ゴジラⅡの眼球の色を詳しく調べ、そして私の仮説を立案した。このゴジラは元々人間だったんだと。そして、私は過去の怪獣戦争のデータをもう一度洗い出しを行うと、此れと似た例が幾つもあった事が確認された。例を挙げれば、2038年にインドに出現した初の人型怪獣フランケンシュタイン、2042年チリに上陸した人型肉食怪獣ガイラ、そして、未確証ながらも同年アルゼンチンで発見例があったサンダ等である。もし、いつかこのレポートを読んだ私達の子孫がこれらの怪獣達の詳細な検証を実証して欲しいと思う。
しかしながら、此処でのレポートに載ったモノ以外でも多数の未確認怪獣が報告されているが、確認されている怪獣を含め、その殆どは我々は知らない事ばかりであるもし私達の子孫がこの地球に戻って来た時にはこれらの事が少しでも解明できれば私は嬉しい。