瓦解のテンシ、アクマの鮮血   作:福宮タツヒサ

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シャルロ党とブラックラビッ党の皆様には申し訳ありませんが、二人はこの話にしか登場しません。


第5.5話 仏と独の救済

〇〇side

 

私は、“あの人”に救われた。

二年前に母さんを失って、顔も知らなかった父に引き取られて、偶々見つかったIS適性でデュノア社のIS開発の道具として生かされてきた。社長である実父の夫人には会った途端「この泥棒猫!」と強烈な平手打ちを喰らった。

居場所なんてなかった。窮屈な場所に連れて来られただけだった。

世界初の男が現れて、デュノア社の宣伝と男性操縦者のISデータを盗むため、『シャルル・デュノア』なんて偽名を名乗らなければならなかった。

……そこへ“あの人”が救ってくれた。

突然どこからともなく私の前に現れ、彼女に「自由を得たいか?」と問われる。

少し怪しかったが、デュノア社という鳥籠に囚われて自由に飢えていた私は、藁にも縋り付く思いで彼女に助けを求めた。

その際、私はたった一つの条件を焚きつけられる。

 

『今後、二度と世界中のあらゆる最新機器に関わろうとするな』

 

意味不明だったが、彼女の瞳は約束を違えば殺すと物語っていた。

それに、“デュノア”から解放されて自由になれるなら、多少不自由になろうとも構わない。

だから私は【悪魔】の囁きに耳を傾けた。

そして数日後、【悪魔】は行動を起こした。実父の会社——デュノア社を壊滅させたのだ。

デュノア社の闇情報をネットで全世界に向けて拡散・漏洩した。その日の新聞の一面を飾ることになり、ニュースでもこれに関する情報ばかり報道された。

突如として世界中に流出されたデュノア社の不正行為やスキャンダル。

そして芋蔓式にフランス政府の官僚や政治家達の賄賂や政治資金の横領……ありとあらゆる不正行為が発覚し、ネットを通じて公の場に曝された。

フランスを根拠地とする大手IS企業のデュノア社は一日にして大混乱に陥った。

一気に信用がガタ落ちとなったデュノア社は株の大暴落から始まり、会社や工場にもマスコミや講義の電話が殺到と、様々な困難に苛まれる。

デュノア社の社長や社長夫人、つまり私の父とその妻はフランス政府に私の身柄を明け渡して、全ての責任を私になすり付けようと企てた。

でも、それも無駄に終わる。

元社長の実子である『シャルル・デュノア』は事故死という扱いになって、既にデュノアの戸籍から除籍されていた。だから私は“デュノア”とはもう何の繋がりも無い。故にデュノア社の被害が私にも及ぶ心配もない。

それから数日経たないうちにデュノア社は倒産した。尚、不正行為が明るみにされた官僚や政治家は一人残らず逮捕され、元社長も夫人と不正行為を働いたため同じくフランス警察に逮捕されてしまった。

こうして……私は自由を得たのだ。

現代社会において、最新機器のない不自由な生活を送らなければならないことを余儀なくされたけど、自分の名前を捨てるよりはマシだと思うしかない。お母さんがくれた『シャルロット』という名前を捨てるよりも……。

デュノア社が崩壊した後、私はすぐにフランスの辺境地に移住した。最新の電子機器が一切ない田舎。強いて存在する電子機器といったら年代物の古いラジオぐらいだ。

そこである老夫婦が農業を経営しているのだけれど、私は住み込みで農家の見習いとして働いている。前と比べれば骨が折れる仕事だけど、お母さんと暮らした環境に似ているので慣れれば都だ。

勤め先である老夫婦は、いつも私に優しく指導してくれる。本当の孫みたいに接してくれるからとても居心地良い。デュノア社にいた頃なんかとは大違いだ。

……こんな生活を送れるのも、“あの人”の囁きに耳を傾けたからだと思う。

何の対価を支払ったのか分からないけど、この生活をこれからも先、堪能していくつもりだ。

ありがとうね………【悪魔】さん。

 

 

 

〜◇〜

 

 

 

〇〇side

 

私は、生まれた時から『人形』だった。

自分は誰なのか、生きている価値はあるのか、存在意義は何なのか……。

軍事目的のため鉄の子宮から生まれ、命じられるがままに軍人として生かされてきた。

だが……突然現れた身元不明のIS『サイレント・ゼフィルス』の操縦者に、私は完膚なきまで敗北した。開発されたドイツの最新兵であるAIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)を使用しても、奴に全く歯が立たなかった。

結果、私は再び『役立たず』の烙印を刻まれ、ドイツ軍から永久追放された。

軍こそが全てだった私は絶望に陥り、生き甲斐を失ってしまう。

知り合いもいない世界に一人放り出されて、当てもなく彷徨っていた。

そんな時……ある男に出会った。この男が、後に私の“夫”となった者。

私が軍に捨てられた『人形』と知っても、夫は顔色を変えず一人の『人間』と受け入れてくれた。この時の私は“愛”と言うものを知らなかったが、無意識のうちにこの男と人生を添い遂げたいと願った。

聞けば夫は“テンセイシャ”という者の一人だったらしい。

私もよく分からなかったが、私達の世界は彼らで言うと架空の話らしく、この世界の未来——つまり私達の未来や過去を知り尽くしているという。聞くだけで何とも不気味な人種だと思った。

だが夫は、それと関係なく私を救いたかったと語った。曰く、プロポーズのつもりだったらしい。

以前の私ならお人好しだと蔑むところだろうが、その言葉を聞いた私は顔を赤くしながら承諾した。

こういう経緯があって、私は人生を添い遂げられる夫と会うことができ、女としての幸せを掴み取ることができた。

今はドイツの辺境の地に引っ越して夫と暮らしている。軍には無かった施設や建物がたくさんあり、当時の私にはどれも目新しいものばかりだった。

夫はそこのある喫茶店の店長をしている。私も妻として、そして店員として、心身共に夫を支えて支えられて暮らしている。

決して贅沢とは言えないが、二人でいられること以上に幸せなことはないだろう。いや、()()()()()()()()()

まだ内緒だが、夫が聞いたら驚きながら泣いて喜ぶだろう。大袈裟なリアクションをして嬉々とする夫の姿を想像して、私は苦笑しながら腹部を優しく撫でる。

これも全て、あの身元不明のIS操縦者のお陰でもあるな。

……そう言えば、あの『サイレント・ゼフィルス』の操縦者が校閲な笑みを浮かべながら言っていたな。

確か………。

 

『お姉様、これが貴女への愛です……!』

 

思い返すと嘗ての自分を思い出す……偽りの虚像(ブリュンヒルデ)を崇めていた頃の自分を。何と愚かだったのだろうな。

織斑教官が傍にいたから強くなれた気になった。だがそれは所詮張りぼてに過ぎなかった。教官に縋り付くだけで、私自身が全く成長していなかった。

それをドイツ軍から締め出されたことで気付いたのだ。

嘗て軍人としての強さを欲していた私が、軍人の生き方を捨てたことで以前より強くなった。何とも皮肉な話だ……。

昔はあのIS操縦者に殺意に近い憎悪を抱いていたが、今は感謝の念を抱いている。そして、私を捨てたドイツ軍にもだ。

そうであろう? ドイツ軍から追放されなければ、私はこの幸せを勝ち取れなかったからな。

ドイツ軍人としての自尊心(プライド)を破壊し、軍人としての誇りを捨てさせてくれて…………ありがとう。

 

 

 

〜〜◇〜〜

 

 

 

——【悪魔】の撒き散らした流れは、本来の世界を崩壊させた。

 

 

 

「クソクソクソッ!! 何でシャルとラウラが転校して来ねえんだよ!? 俺が主人公なんだぞっ!? 何で俺の思い通りにならねえんだよ!!

クソがぁああああああああああ!!!!」

 

 

 

———本来の世界など既に消え去ったことに、道化者は気づきもしない。

 

 

 

「う〜ん、マドカが上手く事を運んでくれたし、思ったより早く終わっちゃったね。

どうしようかな〜? ……もうここは思い切って、自称オリ主くんとモッピーを殺っちゃおっかな?」

 

 

 

——そして物語は、いよいよ終章(クライマックス)を迎える。

 




と、いうわけで二人は救済ルートです。
書いた自分が言うのも何ですけど……良かったよぉ〜!!(号泣)
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