おゆるり艦これ   作:林欅

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ゆるーり二日目

 2日目。

 

 凪が執務室に入るとすでに電が来ていて、凪に気づくとニコッと可愛らしく笑顔で挨拶をしてきた。

「おはようございます。司令官さん」

「おう、おはよう」

 その笑顔に朝の気怠さがどこかへ吹き飛んだような感覚がした。

 椅子に座ると、電が机をはさんで正面に立つ。

「今日は何をしますか?」

「ん? ああ、今日は電の力試しを兼ねてこの基地周辺の警備を行ってもらう」

 机に載せてある処理の済んでない書類の中から目的の書類を取り出し、机に並べる。

「わかりました! 電の本気を見るのです!!」

 そう言って、電は勢いよく部屋から出て行った。

「やれやれ、張り切ってるな。通信のこと言ってなかったけど、こっちからして説明すればいいか」

 電の元気さに微笑ましく思い、机の引き出しから出撃した電と通信するための通信機を取り出し、起動する。

 ザザッと雑音が入った後、電の方の音が聞こえてきた。

 

 

 数時間後。

 警備の任務を終えて、電が戻ってきた。幸いにも被弾はなく、燃料と弾薬を消費しただけで済み、数隻の駆逐イ級を落として来たようだ。ひとまず無事に帰ってきてくれたことにホッとしたが、それを悟られないように無表情を装う。

「電、ただいま帰還しました」

 がちゃがちゃと装備を鳴らして執務室に帰ってきた電。満足そうに笑っている。

「おう、おかえり。怪我はしてないな?」

 通信で被弾したなんて報告を受けてないが、念のため確認を取る。頭を撫でながら目視でも確かめる。

「してないのです!」

 えへへ、と満足げに笑う電。初出撃に1人で大丈夫かと心配していたが無事なのがわかり、無意識に撫でるのが長くなる。

(入渠は必要ないか。昼飯も兼ねて休憩にするか)

 よし、と決めて電の方を見る。

「昼休憩にしよう」

 そう言って、電の頭から手を離す。執務室のドアへと向かって歩き出す凪。

「あ、はい」

 頷き、がちゃがちゃと装備を鳴らしながら凪の後をついていく電。

 

 

 昼の休憩を終えて、再び執務室。

 やれる任務の中からどれをやるか選んでいると、コンコンとドアを鳴らす音が聞こえた。

『失礼します』

 複数の声が聞こえて、凪と電はドアの方を見る。

 ドアから3人の少女達が執務室へと入ってきた。

「あっ!」

 少女らを見て電が嬉しそうな声を上げ、少女らの方へと向かっていく。

 少女らも電に気づき、それを迎え入れて輪を作りぐるぐると回る。

 それを見て、電に似た子がいるのに気づき少女らが誰なのか理解した。

(なるほど。暁型の姉妹艦か)

 その微笑ましい4人を見ていたい気もしたが、用があってきたんだろう。凪は3人に声をかけた。

「再会で嬉しいのはわかるが、3人は何の用事でここへ来たんだ?」

 凪の質問で我に返った4人。電は慌てて凪の横に戻ってきた。3人はビシッと背筋を伸ばして立ち、真ん中にいた黒髪の少女が口を開く。

「新たにこちらへ配属となった、暁型一番艦暁よ」

 凪にしっかりお辞儀をする暁。それを確認して、右隣にいた銀髪に黒い帽子を被った少女が口を開く。

「同じく、暁型二番艦響だよ」

 角度は浅いがお辞儀をした響。最後に暁の左にいた電と似た茶髪の少女があいさつを始めた。

「わたしも同じく、暁型三番艦雷よ! よろしく頼むわね!!」

 きちっとお辞儀する雷。

 顔上げたのを確認して、凪も自己紹介をする。

「凪だ。ちょうど戦力が欲しかった所だ。こちらこそよろしく頼む」

 暁たちの方へ歩み寄り、握手を求める。

 3人とも照れつつもしっかりと握手に答えてくれた。

「君達の配属は、任務を1つこなしたからか?」

 ずいぶんと急な配属に何も思わなかったのか、電はキョトンとしていた。

「それは口実よ。元々、私達3人はここに配属される予定だったけど、何もなしに配属では周りに示しがつかない。どうするか決めあぐねてた時に、任務成功の報せが来たからその報酬として配属される事に決まったの」

 と、暁が説明する。

 ふむ、と頷く凪。

(言ってる事も理解はできるけど、若干腑に落ちないな)

 そう思いながら、ちらっと時計を見る。既に休憩が終わってから時間が経っていた。

「おっと、これから装備開発をするんだが折角だ。お前たち4人に装備の開発をする。ドッグに行くぞ」

 開発の任務の書類を手に取り、凪は執務室のドアに手をかける。

『はーい』

 4人が返事して凪の後に付いて歩く。

 ガチャガチャと言う音が朝よりも増えて、少し気になるレベルになってきた。

「……」

 思わず苦笑いする凪。

 

 

 ドッグでそれぞれ魚雷と主砲のセット装備を造ってもらった電達。砲撃戦、雷撃戦、夜戦、すべてをこなせるようにバランスを考えた装備で、主砲は初期装備をそのままに、魚雷を新たに作製してそれぞれ積ませた。ただ、暁は元々魚雷と主砲装備だったため、主砲を新たに造って交換した。自分は何もないとふてくされ気味だった暁(電達もいたため悟られないように隠していたもよう)だが、新しい装備が嬉しいのか電達と一緒でニコニコ笑顔。

 その笑顔を見ていると、何となくやってよかったと思わされる。予定外の資材消費だが、それでもいいかと思えるので不思議である。ぽりぽりと頬をかく凪。

 ふいに、4人が凪の前に並んで立ち一緒に声を揃えて言った。

『ありがとう!』

 笑顔やらはにかみやらクールやら、表情は様々な一斉のお礼に凪は驚くが、すぐに微笑み両手を使って4人の頭を撫でる。

 各々、照れながらも喜び、電と雷が一緒に執務室へと走り出した。がしゃがしゃと装備の音が響く。

(装備増えたから余計に音が……)

 苦笑いする凪。それをチラッと見た暁が不思議に思い聞く。

「どうかしたの?」

 それに響も疑問に思ったのか、凪を見る。

「いや、大したことじゃ……」

「司令官っ!」

「司令官さんっ!」

 と、急に電と雷の声が凪の声をかき消した。それに驚いた凪達が前を見る。そこに広がっていた光景を見て、3人は言葉も出ず唖然と立っていた。

『……』

 そこには2人で通ろうとしたのか、執務室のドアに装備がはさまって動けなくなっていた電と雷の姿があった。2人はドアから抜けようと必死にじたばたしていた。それに合わせてドアと壁がミシミシと悲鳴を上げる。

 慌てて暁が近寄り声をかける。

「ちょ、ちょっと、何してるのよ! みっともない!」

 暁が電のスカートを掴んで必死に引っ張る。それに慌てて手でスカートを抑える電。

「あ、暁姉さん! ま、まって! スカート脱げちゃう!!」

 いつもより上ずった電の声が聞こえてきて、相当焦ってるのがうかがえる。

 そして、ミシミシという音が先ほどよりも大きくなってきたことに凪は気づいた。このままではドアが壊される。それは良くない、と動く。

「一旦落ち着け、お前達」

 凪の声を聞き、電達はピタッとじたばたするのを止めた。

 それによし、と頷く凪。

 凪はそのまま引っかかっている個所を確認し、それぞれ外して1人ずつドアから引き戻す。

「あわわ、ありがとうございます」

「ありがとう、助かったわ」

 ドアから外れてホッとしたのか2人は深くため息をついた。

 それに文句を言いたそうな長女暁。

 ぽん、と軽く暁の頭に手を乗せて文句を言わせない凪。

「ちょっと、提案があるんだが」

『?』

 4人がキョトンと凪を見た。

 

 

 数十分後。

 執務室に凪と電達が居た。

 ただ、電達は先ほどまでと違い装備を付けていない。それに違和感があるのか、そわそわしている4人。

「落ち着かないかもしれないが、慣れてくれ。装備を外してた方が軽いし、さっきみたいに引っかかることもない。不便はないはずだ」

 今日使った資材の量と残っている資材の量を書いた書類に目を通しながら話す凪。

 新たにここでのルールを1つ決めた。

『帰ってきたらドッグに装備を置いてメンテナンスに出すこと』

 遠征でも出撃でも、ドッグに戻ってきたら装備を外すことを決めた。何より物騒なため外そうかと思っていた所であのハプニング。切っ掛けとしては充分だった。

 電達は今まで背負っていた装備の無さに違和感があるのかそわそわしっぱなしだった。

 これからどんどん人数は増える、そうなれば装備が邪魔になってくることだって増える。なら今のうちから装備を外して対策を練っておこう。先を予想して考えた手を打つ凪。

「よし。今日はここまでだ。休んでいいぞ、お疲れさん」

『お疲れ様です』

 一斉に返事をしてどたどたと4人は執務室をでていった。

 

 

 なんだかんだで時間は過ぎ、夜。

 晩飯時もわーわーと元気な4人だ、と思い出しながら凪は執務室に座る。

「にしても、駆逐イ級、か」

 今日、電に警備に行ってもらった任務の報告書を見ていた凪は、自分たちの敵である『深海棲艦』と呼ばれる化け物の1匹を思い出す。

 一番弱い化け物なのだが、他にも種類のいる化け物で、群れでいることが多く強い個体になるとなかなかやっかいで、決まって女型らしい。駆逐型や軽巡は化け物のようなみためだが、戦艦ともなると女型になるらしい。何を目的としているのか、なぜ向かってくるのか、わからないことだらけの敵。

 考えれば考えるだけわからないことがでてくる敵に、はあと大きくため息をつく凪。

 まあ、いいやとかんがえるのを止めて、明日のやることを考える。

「駆逐艦4隻になったから、少し戦力に幅が出てきた。この調子で増えていけば、遠征に行かせられる余裕もでてくるだろうな」

 そう考えながら、演習と遠征の任務を避けて、警備や撃墜、開発の任務に目を通していく。

「主力の撃破、いけるだろうか」

 駆逐艦だけでは厳しいかもな、と思いながら明日電達に相談しようと決め、凪は背もたれに体を預けて一息つく。

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