ヤンデレの装者たちに死ぬほど愛されて眠っちゃうビッキーの話   作:nagato_12

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つ い に ラ ス ボ ス 現 る


■今話で、ヤンデレシリーズ最終話になります。こんな薄暗いだけの自己満足胸糞シリーズに、6日間にも渡ってお付き合い頂きまして、誠にありがとうございした。

思いのほかたくさんの方にお目汚ししてしまったようで、書き手として非常に心苦しく思っております(大嘘) 

なんとなくおかしなテンションになってしまった挙句、異常な性癖暴走が止まらなくなってしまった結果です。今度、食欲絶頂の方のビッキーにたらふく美味しいモノでも食べてもらって、許してもらおうと思います(無理かもしれないケド)。

あとがきに、うっすらおまけみたいなものを載せてみました。ただの茶番とヤンデレ設定です。どうでも良い方は読み飛ばし下さい。


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。



六人目・未来のケース

   *  *  *  *  *  ◇  ◇

 

 

 

 

 どこをどうやって歩いてきたかもはや思い出すことが出来ないくらい、ぼんやりとした足取りで歩き続けて、ワタシは気が付けば、自分の家の前に帰り着いていた。

 翼さんに殴れた場所が、熱を持ってじくじくと痛んでいる。

 

 決して小さくはないその滲むような痛みが、今日一日、自分が見てきたものが夢などではなく、紛れも無い現実で起こった事だいうことを嫌でも自覚させてきて。

 ワタシの心はすっかり、根元から叩き折られてしまっていた。

 

 もう――みんなを助けに行こうとさえ、思えない。

こうしている今だって、本当は怖くてたまらなかった。いつ誰が、こんなワタシを見つけて追いかけてくるかわからない。クリスちゃんが、切歌ちゃんが、調ちゃんが、マリアさんが、翼さんが――もしも次にまた彼女たちに見つかってしまえば、今度こそ、ワタシは逃げ出すことが出来ないような気がしていた。

 

 見つかりたくない。逃げたい。助かりたい。

 辛うじて思えることは、そんな我が身のことばかり。

 

 誰かを思いやれるほどの余裕も、もはや尽きてしまっていた。

 だからこそ、こうして自分の寮にまで無事に帰って来れたことが、奇跡みたいだった。

 

 今朝、あんなにも楽しい気分で通ったロビーの通路を抜けて、見慣れた番号が架けられた部屋の前まで辿り着く。鍵を回しそうとして、そして思った。

 

 

(そうだ……もし――もしも……未来まで、変になっちゃってたら?)

 

 

 一番、考えたくなかった想像だった。

 目の前が真っ暗になったような、そんな錯覚に襲われる。自分がちゃんと地面の上でしっかり立てているのか、それさえもわからなくなってしまった。

 

 怖くて、恐ろしくて――鍵を持ったワタシの手が、ガクガクと震えた。

 もしもこの扉を開けて、その先に未来が『あの瞳』をしながら、満面の笑顔で立っていたりしたら――そう思うだけで、また涙が零れてきそうなほど怖かった。

 

「…………っ」

 ぎゅっと、震えてどうしようもない手を、もう一方の手で抑える。

 

 未来なら……きっと大丈夫だよ。だって今朝だって、ワタシはいつもの未来に玄関まで見送ってもらいながら、『いってらっしゃい』と言われて、家を出たんだ……。

あのときだって、未来におかしなところはどこにもなかった。だから、きっと今も――

 

(おねがい……っ、神さま……っ)

 ワタシはぎゅっと目を瞑りながら、鍵を外して、ドアノブを捻った。

 

「……た、だいま」

 見慣れた廊下の景色が、見えた。その先に、わずかに覗いているリビングには明るい灯りが点けられていて、すでに同居人が帰宅してきていることを示していた。

 

 

 おそるおそる発した、ワタシの声――それに見慣れたシルエットが、顔を覗かせる。

 

「――あっ、やっと帰ってきたぁ……ッ。もーぅ、響? 何度も電話をしたのに、どうして出てくれなかったの?」

 

 

 怒ったような、心配したような声。頬を膨らましながら、こちらに向かって歩いてくる幼馴染の姿があった。

「……み、く」

 

「それともなぁに? 私からの電話も出られないくらい、今日はクリスと一緒で楽しかったのかしら――って、えッ!? うそ嫌だッ、どうしたのよ響ッ!? その顔ッ!!?」

 ワタシの腫れた顔が見えたのか、未来が血相を変えながらすっ飛んでくる。

 

「どっ、どうしたのよッ、そ、そんな酷い顔でッ!? えっ嘘っ、嫌だ嫌だなんでそんなッ、酷い怪我――きゃぁッ!?」

 ワタシの変わり果てた姿を見て、涙目になって悲鳴を上げながらパニックを起こす未来。ワタシはそんな『いつもの』幼馴染の姿を見て、なんとか今まで辛うじて保ってきた緊張が、一気にほどけていくのがわかった。

 

「み、くぅぅぅ……! うぇッ、ぐず……ッ」

 動揺してあわあわとしている未来の身体に飛び付き、未来の服に自分の血が吐いてしまうのも構わないで、ワタシは大声で泣き始める。

 

「ひっ――響ぃ……っ? ねぇ、うそ嫌だよ、ちょっと貴女――ホントにいったい何があったの……? そんなッ、ボロボロになって……っ!」

 尋常じゃないワタシの様子を目の当たりにして、不安からか未来まで、ぼろぼろと涙を流し始めてしまう始末。

 

 ワタシは玄関先で、靴も満足に脱がないまま、未来の胸の中でひたすら泣き続けたのだった。

 いつもの陽だまりの匂いが、そこにはちゃんと在って――弱りきったワタシを優しく包み込んでくれていた。

 

 

 

   *   *   *

 

 

 

「そう――そんな、ことが……あったの」

 

 散々、未来に抱きついたまま泣き喚いた後。

 

 

 ワタシは今日起こった出来事を一つも隠すことなく、全て未来に打ち明けていた。

 何度も途中で詰まってしまって、すごく聞き取りづらかったと思うけれど、そのたびに未来は優しく相槌を打ちながら、ちゃんと最後まで話を聞き続けてくれていた。

 

「……怖かったんだね、よしよし――響が逃げちゃったの……わかるよ。響は少しも、悪くなんかない」

 だから、安心して。そう言って、未来はワタシの頭を静かに撫でてくれた。

 

「ど、うしちゃったの、かな……っ、みんな……っ」

 鼻をスンスンと鳴らしながら、泣き腫らした目でワタシは、黙ってそんな未来の手を受け入れていた。そして、誰に訊くでもなくそんなことを呟いた。

 

「きのうまでは……みんな、ちゃんと普通……だった、のに……どうして――こんな……っ」

 今度は、泣かなかった。泣きたくても、もはや流せる涙さえも枯れてしまったみたいだった。

 

「きっとね、響――みんなは、響のことばかりを考えているうちに、少し疲れちゃったんだと思うよ」

「……え?」

 

 穏やかに、そしてゆっくりと発せられた未来の言葉。ワタシはそんな幼馴染の言葉を聞いて、無意識に身体が跳ねた。それって、どういう意味……?

「……ホントはね、私も――ちょっとだけだけれど、みんなの気持ちがわかるような気がするの。私も、響のことが大好きで、ずっと響のことばかりを一番に、考え続けてきたから」

 

 未来がワタシの頭を撫でるのをやめて、少しだけ照れたような顔をする。

「そういう意味では私も、ホントはみんなと同じなのかもしれない――だからといって、響のことを怖がらせたり、ぶったりしたのは幼馴染として、とても許すことが出来ないけれど……」

 

 ぎゅっと、今度は悲しそうな表情を浮かべる未来。

「ねぇ響……? みんなはね、きっと貴女のことを考え過ぎて――それで、自分の気持ちを抑えきれなくなっちゃっただけだと思うんだ……。だからきっと、いつかみんなはそれに自分たちで気が付いて、元の優しいみんなにちゃんと戻ってくれるはずだよ」

 

 だからどうか、そんなに苦しまないで、響。と。

 未来は今にもまた泣き出してしまいそうな顔で、ワタシに向かって語り掛けていた。

 

「そう、なのかな……」

 そうだったら――いいのに。

 

 今もずっと。ガタガタと震えの止まらない自分の身体。

 未来に抱きしめて貰いながら、ワタシはそんな彼女からの言葉に、必死で縋りつこうとしていた。

 

 しかし。

「……ぅッ」

 

 今日一日ずっと。自分が目の当たりにしてしまった、あの狂ったようなみんなの姿――それが、勝手に頭の中でフラッシュバックしていって。

 声にならないワタシの悲鳴。脳みその裏にびっちりと張り付いているかのような、その感情は紛れもない、ワタシからみんなへと向けられた――恐怖だった。

 

 ぎゅうっと。残った力の限りで、未来の身体を抱き締めるワタシ。少しでも未来に触れていないと、恐怖でどうにかなってしまいそうだった。

「……そうだね。しばらくは、この家から――出ないほうが良いかもしれない。もしかしたら、まだみんなは、響のことを探しているかもしれないから」

 

「――ひッ!?」

 『探しているかもしれないから』。そんな未来の何気ない一言に、ゾクッとした悪寒がワタシの背中を走っていく。

 

 怖い――みんなの顔を見るのが、怖い。

「……っあ、ご、ごめんなさい……っ! だいじょうぶ、だいじょうぶだよ、響っ……? ここは安全だから。誰かが訪ねてきても、響のことはちゃんと私が守ってあげるからね……?」

 

 

 ワタシが心の底から安心できる、陽だまりの声。

「私だけは――ずっと響の味方だから」

 

 

 未来のそんな言葉を聞いて、ワタシは殴られた顔の痛みが少しずつ和らいでいくような、そんな気持ちになった。

 

「みんなは響のことを怖がらせちゃったけれど、私は――そんなこと絶対にしないから」

 

「……うん、……うん」

「だから、ワタシだけは、響のすぐそばに居てもいいよね?」

 

 

 未来の声。ワタシがずっと待ち望んでいた、陽だまりの言葉。

「……うん、みくの……そばがいい」

 

 ワタシはすぐさま頷いた。幸せな気持ちになった。

 

「外は怖い人がいっぱいだけれど、大丈夫だよ――私の隣は、安全だからね」

ほら、いつまでも玄関にいたら、身体が冷えちゃう。風邪を引いちゃうといけないから、部屋の中へ入ろう?

 

 未来がそう言いながら、倒れこんでいたワタシの身体を優しく抱き起こしてくれた。

 ワタシの顔の近くに、未来の顔がくる。

 

 

 

 

 

 

「だから、響は――最後にはちゃんと、私のことを選んでくれるよね?」

 

 

 

 

 

 

 そこには、どろりと濁った色をした――未来の双眸があった。

 

 

 

 

「……あ、……ぁぁ」

 

 もう驚きの声すら、出ない、

 

 嘘だ……嘘だうそだウソ――嘘ウソ嘘うそウソ嘘うそ嘘嘘うそ嘘ウソ嘘ッ。

 そんなの、嘘だよ。嫌だ、だって……そんなことってッ――。

 

「どうしたの――ひびき?」

 濁った未来の瞳が、ワタシの姿を映している。クリスちゃんと同じように、切歌ちゃんと同じように、調ちゃんと同じように、マリアさんと同じように、そして……翼さんと同じように――顔が歪むような笑みを浮かべて、そこで微笑んでいる。

 

「い、嫌……だ、よっ……そんなっ、うそ、だよね……? そんな……みく、まで……ぇッ!」

 ワタシは張り付く喉を懸命に動かして、叫ぼうとした。しかし口から零れていくのは、そんな絶望の色が滲んだ言葉だけ。

 

「ねぇ響――響は私のこと、好きだよね?」

 未来が、まるで嬉しいことでもあったみたいに無邪気な笑顔のまま、そんなことを聞いてきた。

 

「い、イヤだよっ、ねぇ……そんなのって、ないよぉ……ッ! お、おねがい未来っ、ワタシのはなしを聞い――ぅ、ぁ、痛ぅッ!!?」

 

 詰め寄ろうとして、あまりの痛みに言葉を失ってしまうワタシ。見ると、ワタシの腫れた頬に、まるで優しく添えるような形で、未来の手があることに気が付いた。

 

 

 まるでワタシの傷口を舐るような、遠慮のない未来の手のひら。

 彼女の細くて白い指が、腫れの上を這うたびに、ワタシの中に突き上げるような激痛が生まれていく。

 

 

「そんな無駄な言葉は必要ないんだよ、響? 響はただ……私の質問に――答えてくれればいいの」

 

 私のこと、好きだよね? と。さっきと同じ質問を、ただ無機質に繰り返す未来。

 

「い、痛ぃ……ッ! や、やめっ……てよ、みく……ッ! なんでそんな、酷いこと……ひぐぅッ!? う、うぁああああ――ッ、ぐぅッ、ぅぁあぁああ――ッ!!?」

 ぎりっと。まるで無理やり摘み上げるようにして、ワタシの頬の肉を引っ張る未来の指。身体が弾けるような鋭い痛みが、何度も何度もワタシの中を暴れ回っていく。

 

「わぁ~、響の頬っぺた、いつ触っても柔らかいんだねぇ。私――この感触、大好き」

「痛ぃッ――痛ぃいたぃイタい痛い痛ぁ……ぁぁああッ!! ぐ、ぅ、やめ、へぇ……おねがみくぅッ、ぅぁああああ……ッ!?」

 

 絶叫を上げて暴れるワタシを見て、ようやく満足したのか未来は掴んでいた指を離した。

「……っひ、ぐ……っふ、はっ……ひぅ、ぁぅ……ッ、……ぁ」

 

 ひゅうひゅうと。浅い息を繰り返しながら、その場にまた倒れこんでしまったワタシ。未来はそんなワタシのことを見下ろしがら、そして笑顔で言った。

「もう一度だけ、聞いてあげるね響っ。私のこと――好き?」

 

 ワタシはもう、それ以上なにも余計なことは言わなかった。次また彼女の機嫌を損ねてしまったら、いったいどんな痛いことをされるのか怖くて仕方がなかったから。

 

「はぁ、はぁ……っふ、ぅ……ッき、すき、だよ……わた、ひも……ぉ……ッ」

 

 口の中にまた広がっていく、濃厚な鉄の味。ワタシは血の混ざった唾液を吐きながら、無理やり唇を動かして言葉を紡いだ。

 

 未来は、そんなワタシからの今にも途切れてしまいそうな、息も絶え絶えの返事を聞いて――そして。

 

 

 

「――ほんとぉっ? 嬉しいっ!」

 まるで小さな女の子がはしゃぐような、あどけない笑顔を浮かべて喜んだのだった。

 

 

 

(……み、く)

 すっかり枯れてしまったはずの涙が、ワタシの目から流れていった。

 

 

 

   *   *   *   *   *   *   ◆

 

 

 

「……そ、そんなっ。にわかにはとても……あ、いえっ決してボクは、響さんが言ったことを疑うつもりは全然ないのですが……」

 その――にわかにはとても信じ難いお話、です。

 

 研究室。ワタシが話した内容を一通り聴き終えて、エルフナインちゃんは真っ青な顔をしながら、そんな風に呟いた。

「……隙をみて、なんとか未来から逃げ出して、ここまでやって来たんだけど」

 

 ワタシは全身を震わせながら、弱々しい声でそう話し終えた。気まずい沈黙が、ワタシ達の間に流れていく。

 エルフナインちゃんが淹れてくれたマグカップは、いつしか中身もすっかり冷え切ってしまっていて、いくら握ってみてもワタシの指先を冷やしてしまうだけだった。

 

「……まさか、そんなことが起きていただなんて」

 エルフナインちゃんの方から、沈黙を破った。まるで理解が追いついていないような、そんな混乱した表情――当然だろう。だって、今こうして座っているワタシだって、およそ信じたくもない、まるで今も夢の中にいるような異常な話だったのだから。

 

 しばらくして。

「……いえ、事情はわかりました――とにかく響さんの身柄は、S.O.N.G.に頼んで保護してもらいましょう。弦十郎さんに事情を話せばきっと、力になって下さると思います」

 

 真剣な様子で、そんな提案をしてくれるエルフナインちゃん。

「うん……、ありがとう……エルフナインちゃん」

 

 ワタシは自らの身の安全よりも、エルフナインちゃんが自分の言葉を信じてくれた事実になによりホッとしてしまって、全身からチカラが抜けてしまったような、そんな気分になった。

 うん、そうだよ。師匠ならきっと、信じてくれる……っ。みんなのことを、ちゃんと救ってくれる……っ。だからこれで、もうだいじょうぶ……。

 

 そんな風に思った途端、気が抜けてしまったのか、自分の瞼が急に重くなっていくのがわかった。身体がまるで鉛か何かになってしまったみたいに、このまま沈み込んでいってしまいそうな感覚に襲われる。

 今日は色んなことがあったんだから……仕方ないよね……。ずっと走って、逃げてばかりいたんだし……。

 

「大丈夫ですよ、響さん。きっと装者の皆さんは、なんらかの事情によって一時的に、心身のバランスを欠いてしまっているに違いありません。きっと正しい処置を行えば、元の健常な状態に戻すことが可能だと思います」

 エルフナインちゃんの、ワタシを元気付けるためなのか、いつもよりやけに明るい調子の声が聴こえてきた。

 

「ほん、とぅ……? エルフ、ナインちゃ――……」

 あ、ダメだこれ。本当にもう眠たくて、とても意識が保っていられない。今すぐにでも意識を手放してしまいそうだった。

 

「えぇ、だってなぜなら――」

 膜で覆われたように、くぐもったエルフナインちゃんの声。朦朧とした頭で、ワタシは無意識にその言葉の続きを待っていた。

 

 

 

 

 

「なぜなら、ボクが処方した『薬』の影響で――皆さんはおかしくなっていただけなんですから」

 

 

 

 

 ――え……?

 

 

 

 座っていた椅子から崩れ落ちるように、研究室の冷たい床の上に四肢を投げ出してしまったワタシ。持っていたマグカップも転がって、わずかに残っていた中身が、辺り一面に飛び散っていった。

 

「え、るふ、ないん……ちゃ……?」

「すいません、響さん。どうしても、人が持つ感情パラメーターを正しく解析するためには、″臨床実験″によるデータの収集が必要不可欠だったもので――皆さんには今日一日、ボクの研究に付き合って頂いちゃいました」

 

 倒れたワタシのもとに、エルフナインちゃんがゆっくりとした足取りで近付いてくる。

「お口に合ったみたいで、本当によかったです――いかがでしたか、ボクの淹れた『あったかいもの』は?」

 

 そん……な……。うそ……。

 今にも消えそうな意識の中。ワタシの視界が最後に映し出した、その景色は。

 

 

 普段のエルフナインちゃんからは想像も付かないような、まるで顔が引き裂かれたような歪な笑みを浮かべて佇んでいる、一人の小さな研究者の姿だった。

 

 

「つくづく興味深いですね、人間の『愛』と呼ばれる感情は――きっと、これからここへ来て下さる皆さんの分のデータも集計すれば、きっとボクの研究は、今よりも大きく前進することになると思います」

 

 本当にありがとうございます、響さん。と。

 

 

 

 

「よかったですね、こんなにもたくさんの人に――愛してもらえるだなんて」

 

 

 

 

 遠のいていく意識の中。辛うじてエルフナインちゃんのそんな言葉だけが、ワタシの耳に入ってきたのだった。

 ワタシの意識はそこで、あっさりと暗転した。

 

 

 

 

   *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

 

 

《FIN》

 

 

 

 




ヤンデレタイプ図鑑


立花響

◇ただの可哀想な被害者。最初から弦十郎さんのもとへ泣きつきに行っていれば助かっていたのに、わざわざ黒幕の元へ行っちゃったドジっ娘さん。きっと眠らされた後、駆けつけてきてくれた他の装者たちから、たくさん愛してもらう(R18かR18Gかは置いておいて)ことになったと思われる。南無。


「……~~~ッ!! さいッてー、ですッ!!」グッ!!

――本当すいませんっ! そして、可愛い泣き顔をありがとうございmッごぼォ!! ベキゴシャァ


雪音クリス

◆依存型ヤンデレ。少しでも相手が傍を離れるだけで、パニックを起こして泣き出してしまうような、情緒不安定タイプ。一緒に居る間だけはいたって普通なのだが、一度パニックを起こしてしまうと手がつけられず、いったい何をしでかすかわからない。リストカットなどの自傷行為が最もよく目立つケース。
◆ピーキーさでは他のヤンデレタイプの追随を許さず、『この子には私が傍についていてあげないと』とついつい考えるようになってしまい、相手はドロ沼修羅場空間から抜け出せなくなってしまう。共依存エンドに陥りやすい2トップの内の一つ。


「……良い訳は、いらねぇよな?」ジャキン

――えっ、でも雪音さん言うほど今回被害受けてnあばばばばばぁッ!!? ズドドド


暁切歌

◆妄想型ヤンデレ。すべてのことを、自分の都合の良いように勝手に脳内変換して捉えてしまう、いわゆる勘違いタイプのヤンデレ。現実世界では比較的遭遇率の高い、オーソドックスな部類のヤンデレに入るが、それだけに非常にタチが悪い。
◆普段は相手の話をまったく聞かないものの、どうしても自分の理想通りにならないことがわかると、いきなりブチ切れたりする。相手を独占したい欲求が一番強く、自分の中での妄想と現実をごちゃ混ぜにして認識してしまっている。

月読調

◆崇拝型ヤンデレ。まるで従者のように相手に付き従い、全ての事柄について相手に服従しようとしてしまう、絶対服従妄信タイプ。頼んでもいないのに相手の身の回りの世話を勝手に焼き、なにかと相手のために奉仕しようとする欲求が強い。
◆すべての行動を相手の為に捧げようとしたがるので、一度でも相手にとって邪魔になりそうなものを発見すると、それを全力で排除しようと行動を起こしてしまったりする。基本的に相手以外の者には無関心。


「ふぇえええッ! 酷いデスッ! これはアタシに対する巧妙なイメージ操作デスよッ!」ジャキン

――ちょ、違っ、待っ

「……ぜったいに、ゆるさない」キュィィィ

――ぅえぇっ!? ちょ二人とも、話聞いtざばばばばばッ!!? ブシャアア


マリア・カデンツァヴナ・イヴ

◆執着型ヤンデレ。手紙やプレゼントなどを相手に頻繁に送り付けてきて、熱烈なアピールをするいわゆるストーカータイプ。相手の部屋の中に合鍵などを使って侵入し、勝手に私物などを持ち帰ってしまったりする。最終的にお巡りさんの手を焼かせるような結末になってしまいやすい、一番迷惑なタイプのヤンデレ。
◆相手のことをすべて把握しておきたいという強い欲求を持っており、そのためにはどんな強引な手段だって平然とした顔で行なう。


「……多くはあえて言わないわ。ただ黙って歯を食いしばりなさい」

――あ……えと、ハイ……。 ギュ

「なんで私だけ妙に具体的で、なおかつ変態みたいな真似をしてるのよぉぉッ!!?」ドゴォ

――えぇええ!? 顔じゃなくてお腹狙ってkぐっふぉおお!! バタ


風鳴翼

◆暴力型ヤンデレ。相手を痛めつけてでも自分の言う事を聞かせたがってしまう、いわゆるDVタイプ。カッとなってしまうと自分でも制御が出来ず、気が付けば相手を殴ってしまっている。実在するヤンデレタイプで、最も相手に身体的被害を及ぼしてしまいやすい危険なケース。
◆それ以外は基本的に普通の人なので、暴力を振るった後はいつもよりも何倍も優しい。相手はそのギャップに呑まれてしまって『怒らせてしまった自分が悪いんじゃないか』と、考えるようになってしまう。共依存エンドに陥りやすい2トップの内の一つ。


「私だけ本ッ当ッに、酷くないかッ!? なぁ!?」

――い、いやぁ、相手に暴力振るっちゃうようなヒドイ性格をしてそうな娘が、装者の中には居なかったもので、翼さんに押し付けてしまいました。す、すいません……。

「ゆるさんぞ貴様ァ! 天誅ぅッ!!」ズバァッ

――えっ、ちょ刀はさすがにマズいっtうぎゃぁああ!!? ブシュ



小日向未来

◆調教型ヤンデレ。自分のことを一番に考えてもらえるように、相手を洗脳してイチから教育する、洗脳誘導タイプ。相手にわざと心理的ダメージを与えるような行動をして、揺さぶりをかけようとしたりする。想いの強さと、そして相手のために行動する意思の固さは、文句なしのナンバーワン。
◆心理的に弱りきって無防備になった頃を見計らい、相手に近付くと、自分だけは貴方の味方だからと囁いて、思いのままに相手の心を洗脳する。目をつけられた相手は、軒並み人間不信に陥りやすい。心理的被害と、被害者の人生を狂わせる度合いでは、すべてのタイプの中で群を抜いている。


「…………」

――え? あれ……? あ、あの、ですね……? えっと……?

「…………ぐすっ」ポロポロ

――ふぁあッ!!? す、すいませんッ! ホントごめんなさいでしたッ! 本当に調子乗りましたッ! マジごめんなさいぃッ!!


エルフナイン

◆鬼畜。マッドサイエンティスト。
◆そもそもヤンデレですら無い。追い込まれた人間をさらに追い込んで、そしてそれが壊れていく姿を見るのが大好きな、ただの性格異常者。歪んだ愛情表現を持ったドS。


「えぇぇぇ……」ドンビキ

――えーと、ハイ。この件についてはホント、すいませんでした……。

「ボク……そんな酷い事なんて、しないですよ……」ズビ

――い、いやぁ、ホラ。ただのヤンデレモノにしようとしたら、色々と設定に無理が出てきちゃいそうで、それだったらなにか別の理由を考えたほうが良いかなーって……。ほらっ、ちょうどいい科学者ポジションにエルフナインさんが居てくれたので……えっと。

「……酷いです」ウルウル


???「――なぁ、オイそこの君。ちょっとこっちに来て俺たちOTONAと一緒に、建設的な話をしようじゃあないか?」バキボキ

???「翼さんの件で、僕からも少しお話が」ニッコリ


――ふぁッ!? し、しまった、そうかッ!? エルフナインさん虐めてたらそっちが出てくるのかぁッ!? う、うあぁ嫌だぁああッ、誰か助けてぇぇえええッ!?




すべては『ヤンデレタイプ別判断』なる記事を見かけてしまったことが悪夢の始まり。

えーと、本当。色々とすいませんでした(素直)。

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