噂の真相と戸塚くんの依頼
書いた結果テニスバトルまではいけませんでした。
誤字があると思いますがあまり気にせず…
それでは!!
次の日俺の下駄箱の中に五匹の内の一匹が血塗れの死骸になって入ってた。
見た瞬間なにが起きたのかわからなかった。
唯一わかったことは、俺の下駄箱の中にいたのが俺が面倒を見ていた子猫だということだけだった。
俺はその子を抱いて走り出した。自分の家まで走り続けた。
泣きたかった。叫びたかった。だがそれよりもある感情が勝った。
怒りだ。
この子猫を殺した人にではなく、自分のバカさに、自分の弱さに、自分の不甲斐なさに。
俺は自分が許せなかった。
なぜ家で面倒を見なかった。なぜこの子を守れなかった。なぜこの子にこんな残酷な運命を与えてしまった。
そう、俺がこの子を殺したのだと。
けど希望もあった。他の子は逃げることができたのだろう。
家に着いて俺はその子を庭に埋めてあげた。そうして俺は学校へむかった。
でもその希望もすぐに消えた。
下駄箱を開けるとさっきあの子で見えなかったところに手紙があった。
『お前が邪魔だ。学校に来たら他の猫も殺すぞ』
それで俺は理解した。あの子は俺のせいで死んで、他の子も俺のせいで殺されるんだと。
だが俺は教室へに行った。犯人を捜すために、残りの子たちを救うために。
俺が教室に入ったとき、授業が始まっていたクラスがざわめいた。
俺の制服に血が付いていたからだ。
先生には登校の途中に鼻血を出してしまったとウソをついて授業に参加した。
すぐに犯人を理解した。いつも俺のことを影で文句を言ったり、バカみたいな嫌がらせをしてくる不良グループのような四人組。
俺が教室に入ったとき教師や他の生徒とは明らかに別の反応をしたからだ。
他の生徒は俺の制服の血を見て驚いて、ウソの理由を聞いて笑った。
犯人の四人は最初の俺の姿を見て笑みを浮かべ、ウソの理由を聞いてムカついていた。
休み時間になり俺はその四人に近付いて
『ねぇ君たちは俺に対して腹を立たせているのになんであの子にあんな酷いことをしたの?』
俺にすでに犯行がバレた四人は驚いたあと笑みを浮かべて
『放課後、お前が大好きな神社に来いよ。いいもん見せてやる』
その言葉の内容からすぐにわかった。
あの子たちを殺すのだろう。それを俺の前で見せてくるんだろう。
今にも何かが壊れてしまう気がした。そしてそこから嫌なものが出てきてしまう。
俺が止めさせようと声をかける前にその四人は教室を出ていった。
あとを追おうとしたが授業の開始のチャイムがなって、先生に退室を止められた。
最終的に俺はその四人を追うことができずに放課後になってしまった。
放課後、俺は急いで子猫たちの面倒を見ていた神社に行くと、その四人が三匹の子猫を殺して最後の一匹に手をかけようとしているところだった。
『遅かったな。お前が遅いからもう三匹殺しちまったよ。最後はどう殺すか』
『一匹目みたいに、ナイフで刺すか?それとも二匹みたいに蹴飛ばすのもいいな』
『いいね。でもさっきみたいに叩きつけるのってどうよ』
俺の目の前で行われているバカみたいな会話。
もう我慢の限界だ。こいつらを子猫と同じ目にあわせてやれ。/ダメだ。そんなことをしてはいけない。
何を言っている。目の前の奴らはゴミも同然だろ。/嫌だ。俺がいけないんだ。目の前の四人も子猫たちも悪くない。全部俺が悪いんだ。
大切なものがこれ以上傷つくのは見たくなだろ。/当たり前だ。だけど…。
なら守るしかない。力で大切なものを守るだけだ。だから使え。/やめてくれ。そんなことを言わないでくれ。それじゃあ前と同じに…
『岸波。こいつを殺してもお前が学校に来た場合は、お前の妹やよく話しているハーフの女にも同じことをするぞ』
ああ、壊れてしまった。俺の中の何かが…。出てくる、嫌なものが…。
気が付くと四人の内の三人がボロボロの状態で気を失っていた。
見てみるとその生徒たちの腕や足が折れている。服などがところどころ焦げたりもしていた。
俺が最後の一人のほうを向くと
『ヒッ!!』
残りの一人が涙目になって折れているであろう左腕を抑え、俺を見ながら後ずさっていた。
『危ない!』
俺が叫んだときはもう遅かった。
その一人が神社の階段を踏み外して落ちていってしまった。
「それでその生徒たちは病院に搬送されたんだよ。これがその噂の真相。俺が子猫たちを殺して生徒を病院送りにしたっていう」
予想あのとき俺は初めて人に対してコードキャストを使ってしまったのだろう。
あの後カレンが来たことは言わなくてもいいか。
それでカレンが生徒たちからその記憶を消した。カレンは魔術師だった。ウィザードではなくメイガスという俺のいた世界ではもう存在しえない魔術師。
実際に暴走族のときも店長がほんのわずかだが魔術を使ったのがわかった。
「「「……」」」
俺の話を聞いあと後誰も口を開かない。
「ごめんね。嫌な気分にさせたね」
「岸波くん、あなたが謝ることはないわ。今回の噂もすべてあなたが被害者じゃない」
「そんだよ!キッシーは何も悪いことしてないじゃん!」
「ありがとう。でも俺が間違った行動したせいで子猫たちも死でしまった。いや、俺が殺してしまった」
「岸波の行動は間違ってないと思うぞ。お前の話に出てきたヤツみたいのは岸波がどんな行動をしようと子猫たちを殺していたはずだ。お前が悔いて自分を責めるのは間違ってる」
本当にここにいる人は優しいんだな…。
俺の目にはここにいる人たちの言葉はウソではなく、心から想ったことを言ってくれているとわかる。
「みんなありがとう。少しだけ気が楽になったよ。それに死んじゃった四匹もしかりと同じ場所に埋めてあげたしね。あの子たちには本当に悪いことをしてしまった」
「仕方がないとは言わないけど、あなたは正しいことをしたわ。それは誇っていいことよ。それで最後の子猫がどうなったの?」
「最後の子は俺が家に連れて帰って育てたよ」
「それじゃあ、キッシーは猫を飼ってるの?」
「いや、あの子は野良猫って感じだから飼ってはないね。今でもよく遊びに来るよ。よく縁側で一緒に月見したり、日向ぼっこしたりしてるね」
今の話しに雪ノ下さんが少しだけ目をキラキラさせてる。前から猫好きだったもんなぁ。
明るい話にしよう。
俺は笑顔になってこの前のことを話す。
「でもこの前は驚いたよ。一週間ほど前のことなんだけどさ、一時期その子が来なくなって、どうしたのか心配してたらふらったやってきて、どうしてたか尋ねたら赤ちゃんが産まれたって言われたんだよ。その子猫たちは何処にいるか聞いたらさ、俺の家の倉にある毛布のところにいたんだよ。いやぁ、アレは驚いたな。まさかいつも使ってる場所にいたとは」
俺がこの前あったことを楽しげに話していると何故か他の三人が驚いている。
「ん?みんなどうかした?」
「いやぁなんか」
「キッシーのその話聞いてると」
「あなたがまるで猫と話せるみたいに聞こえるのよ」
「え?話してなかったけ?」
アレ?雪ノ下さんに言ってなかったけ?桜は知ってるし、カレンも知ってたよな。
「おかしすぎるだろそれ!何お前超能力者!?」
いや、魔術師の生まれ変わりだよ。
「そんな羨ま…そんなおかしな話は一度も聞いてないわよ」
「キッシーたまにおかしなこと言うよね。それっていつから?」
いつからだろう?アタランテにご飯作ったり、遊んだり、お菓子作ったりしてたせいかなぁ?
でも子猫たちが死んだときはなかったもんな。アレよりはあとだったな。
「雪ノ下さんと再会する前には話せてたね。まぁ話すというより、猫の言葉が理解できるって感じかな?それに前から動物には無駄に好かれてたから。犬とか、猫とか、キツネとか、竜とか、鬼とか、神とか」
それによく公園とかでぼーっとしてるといろいろな動物が集まってくるんだよなぁ。
セイヴァーさんみたいに悟りでも開いたかな?
「岸波、途中からウソ言ってるだろ。キツネはまだいいとして、竜っておかしいだろ。最後の鬼と神ってなんだよ!」
そうか?エリザベートには好かれているとは思ってるけど。
鬼は吸血鬼のモデルだったり、一騎当千の鬼のようは武人だったり。
それに俺の周りのサーヴァントって神の血が混ざってたり、神様の加護を受けてたり、神様の分身だったりとか、そんな人たちが多いんだよね。
「岸波くんのせいでかなり話が逸れてしまったけれど、その子猫は無事だったのね」
「そうだね。あの子だけでも救えることができて本当によかったよ」
「キッシーはその猫に名前とかつけてるの?」
「一応ね。名前は俺の知り合いの人の親友の名前からもらって、エルにした」
それにエルキドゥってなぜかすごくいい感じがするんだよな。なんか馴染むって言うか。
サーヴァントたちにどんな名前がいいか聞いて回ったら、やたら長かったり、センスがなかったり、神話の神様の名前だったり、とか変なのが集まって困った結果、ギルに頼んで親友の名前を使わせてもらった。
「岸波くん、今度その子を見に行ってもいいかしら?子猫も」
「あたしも見てみたいかも」
「別にいいよ。遊びに来てもいいし、休みなら泊まってても構わないし」
「岸波、お前すごいこと言ったな。女子に向かって泊まってもいいって」
「比企谷、お前も来てよ。多いほうが楽しいし、お菓子とかも作るし、ご飯も作る」
「至れり尽くせりだな」
「でもキッシーさすがにそれは無理じゃないかな?大勢で行ったら迷惑でしょ。ご両親とか」
そうか。俺が今桜と二人暮らしって誰も知らないわ。
「いや大丈夫だよ。今俺の家って妹と二人で住んでるし、部屋の数もいらないほどあるから」
「岸波くん、桜さんと二人暮らしって本当?トワイス医師はどうしたの?」
雪ノ下さんが少し怖いぞ。
「と、父さんは比企谷の入部した日に手紙だけ残して渡米して。もう連絡は取れないよ」
「それっておかしいだろ。絶対なんかあんだろ」
「そ、それじゃあ、お母さんは?」
「俺の家には、母親はいないよ」
雪ノ下さんは知っているけど、知らない二人は固まった。
「ご、ごめん。変なこときいちゃったね…」
「い、いや、大丈夫だよ。俺の家は少し複雑だから」
「複雑ってどう複雑なんだ」
「前に比企谷が材木座の写真に写ってる妹の写真見たて、俺と全く似てないって言ったろ」
「ああ、言ったな。それで雪ノ下に止められた」
「俺の家族さ、誰一人として血の繋がりがないんだよ」
「「え」」
二人は驚いた。まぁそうだろうな。そんな関係を家族だなんておかしいし。
「父さんはさ、仕事ばっかりの人で結婚とかしなかったんだよ。ずっと独身でね。そんなとき俺に出会って養子にとってくれたんだ。そのとき俺が五歳で、それから一年後妹が養子として来たんだ。それで今みたいな家族になったんだよ」
今は慣れてるみたいだけど、小学生になる前の桜なんておどおどしっててぎこちなくて、毎晩泣いてたもんな。
よく一緒に寝てたから、今でも俺の布団に入ってこようとするんだよな。
留美ちゃんのときは完全に入ってきたけど。思い出すだけであのときの桜の怖さが…。ガクガク
こうして今日の部活は戸塚くんの依頼と俺の噂の真相についてのことで終わった。
「そうだ。キッシーもう一つだけすごく気になる噂があるんだけどいいかな?」
「他になにかあるの?」
なんだろ?
「あたしが知ってる噂にさ、キッシーがキッシー宛てにきたラブレターを読まずに破って捨てた。ってのがあるんだけどホント?」
はい?
「…フッ、アハハハハ、ごめんね。笑い事じゃないね。でもそんなわけないよ。俺は、岸波白野は産まれてから一度もラブレターなんてもらったことなんかないよ。」
「え、そうだったの。意外かも」
「そう?俺なんてモテないと思うよ。顔も平凡だし、さっきみたいな噂があるから俺に対して好意を持ってくれる人はいないよ。いても妹の桜くらいだよ」
でもどうしてそんな噂が流れたのかな?
こうして俺は昼休み筋トレに付き合わされている。
参加者は戸塚くん、俺、由比ヶ浜さん、比企谷、材木座。なんで材木座がいるんだ?
材木座以外はジャージ姿。
雪ノ下さんは制服のままで指示だけをしている。
そんな筋トレの日々が過ぎて、今俺が戸塚くんとラリーをしているわけだ。
他のみんなはそれぞれ好き勝手に過ごしている。
雪ノ下さんは木陰で本を読んで、由比ヶ浜さんは雪ノ下さんの横で寝息を立てて、材木座は必殺魔球の開発、比企谷はコートの片隅でアリの観察をしている。
なんでこうなったんだ?
ラリーを続けていたが戸塚くんが打ったボールがネットに当たってしまった。
「戸塚くん、そろそろ休憩する?」
「だ、大丈夫だよ」
息を少しだけあがっているが大丈夫だろうか。
「でも、岸波くんうまいね。テニスとかしてたの?」
「前遊びでちょっとね。それに前から運動とかは少しだけは得意だったからね」
「そうなんだ。もしよかったらテニス部に入らない?」
なるほど、比企谷はこれにやられたわけか。
もう見るからに女の子にしか見えない子から上目使いで頼まれたわけか。
「お誘いは嬉しいけど、部活を架け持ちできるほど器用じゃないから、ごめんね」
ウソです。自分でもそこそこ器用だとは思います。
「そ、そうだね。無理言っちゃってごめんね」
「でも、練習に付き合って欲しければいつでも言ってね。俺も奉仕部のみんなも手伝うよ」
「ありがとう。岸波くん」
「うん。どういたしまして。それじゃ続きしようか。三カ所ぐらいから鋭い視線を感じる」
雪ノ下さんはサボっているから睨んでるとして、比企谷と材木座はなんで睨んだいるんだ?
アレか、俺が戸塚くんと話しているからか?
翌日、俺は雪ノ下さんの指示のもと戸塚くんが打ち返せないであろう場所にボールを打ち、転がっているボールを由比ヶ浜さんが拾い集めている。
「岸波くん、もっと戸塚くんの手が届かないように打ちなさい。由比ヶ浜さんは早くボールを集めて」
そんな感じで二十球ほどで戸塚くんがこけてしまった。
「うわ、さいちゃん大丈夫!?」
由比ヶ浜さんが戸塚くんに駆け寄る。
戸塚くんは擦りむいた足を撫でながら、にっこりと笑い無事を知らせる。
「大丈夫だから、続けて」
雪ノ下さんは顔を顰めて
「まだ、やるつもりなの?」
「うん…、みんな付き合ってくれるから、もう少し頑張りたい」
コードキャストを使えばすぐにでも治してあげたいけど、さすがに無理だよな。
「わかった。俺ちょっと保健室に行って救急箱借りてくるよ」
そういって俺はテニスコートを後にして、校舎へとむかった。
「で、雪ノ下さんはなんでついてきたの?」
「それはあなただけで行くのが非常に心配なのよ」
「俺ってそこまで頼りにならないの!?俺は方向音痴ではないと思うけど」
「あなたっていつもどうでもいいところでトラブルに巻き込まれるから、帰りが遅くなるでしょ」
「た、確かにそれは否定はしないけどそこまでひどくはないと思うよ」
「どうかしらね」
そんなことを話しながら保健室から救急箱を借りてテニスコートにむかう途中、テニスのユニフォームみたいなのとスコートを着た由比ヶ浜さんが右足を引きずって歩いてきた。
「ゆ、由比ヶ浜さん大丈夫!」
「大丈夫。少し捻ったただけだから。それでね、ゆきのんとキッシーに頼みたいことがあるんだ」
「「頼みたいこと?」」
「この馬鹿騒ぎは何?」
由比ヶ浜さんに頼まれて雪ノ下さんが由比ヶ浜さんと着ている物を交換して、今雪ノ下さんがユニフォームとスコート、由比ヶ浜さんが雪ノ下さんの制服を着ている。
いやぁさすがに外で着替えるのはダメだろ。俺は少し離れた場所で目瞑ってたよ。
ウソじゃないよ。ホントだよ。覗いてなんかいないんだからね!
「雪ノ下さん。トラブルに巻き込まれたのは俺じゃなくて他の人みたいだね」
「そのようね」
「あ、お前、どこ行ってたの?っつーかその格好なに」
比企谷が雪ノ下さんの今の格好について尋ねる。
「さぁ?私にもよくわからないのだけれど、由比ヶ浜さんがとにかく着てくれとお願いするものだから」
「このまま負けんのもなんかヤーな感じだから、ゆきのんとキッシーに出てもらうってだけ」
「なんで私が…」
「だって、こんなの頼める友達、ゆきのんだけなんだもん」
「とも、だち?」
「うん。友達。それでキッシーは大丈夫かな?」
「俺は大丈夫だよ。頼まれたら断る理由もないし。そうだ。由比ヶ浜さんあそこのベンチに座ってくれるかな?」
「いいけど、どうしたの」
「足を捻ったんだから、その手当。戸塚くんもいいかな?」
戸塚くんが審判の座る場所から降りてきた。
雪ノ下さんのほうを見ると何かぶつぶつ言ってるぞ。
「雪ノ下さん?大丈夫?」
反応がないなぁ。
仕方がないから雪ノ下さんの手を引っ張っていくか。
俺が雪ノ下さんの手を握ろうとしたら、顔を真っ赤にして手を引いてしまった。
俺ってスゲー嫌われてるんだな。悲しくなってきた。
「まぁ雪ノ下さんが気が付いたからいいか。まずはここから移動しようか」
そうして由比ヶ浜さんにベンチに座ってもらい、捻った右足を見せてもらい触ってみる。
「いたっ」
「ごめんね。それじゃあ、包帯とテープで固定するから」
俺は救急箱から包帯とテープを取り出してすぐに固定を始める。
固定が終わり、最後に「heal(16)…」コードキャストを使う。
捻った程度なら鳳凰のマフラーで充分だろ。
「キッシー、こういうのこともできるんだね。それで最後になんか言ってなかった?」
「おまじないみたいなモノだよ。痛いの痛いの飛んでけーみたいなの」
「子供みたい。でも本当に痛くない」
「うまく固定できたみたいだね。戸塚くんのもやってあげたいんだけど、そろそろ相手も待たせるのも悪いし、自分でできるかな?」
「う、うん。ありがとう。岸波くん」
「それじゃあ雪ノ下さん。行こうか仲間の借りを返しに」
俺は比企谷に近付いてラケットを借りる。
「なんでこんなことになったの?」
「よくわからんが、むこうさんがテニスで遊びたいんだってよ。それで勝った方が今後このコートを昼休みに使えて、戸塚の練習相手になるみたいなことになった」
「なるほどね。なら勝てばいいんだな」
「なんでそんな自信ありげなんだよ」
「自信なんかないよ。でも仲間を傷つけられたんだ、それ相応のことは受けてもらう」
俺は笑顔で答えた。
「たまに雪ノ下よりも怖いこと言うな」
「そんなんでもないよ。あれ見てごらんよ」
俺は雪ノ下さんと相手の女性が会話しているほうへ指をさした。
「雪ノ下サン?だっけ?悪いけどあーし手加減とかできないから。オジョウサマなんでしょ?怪我したくなかったらやめといたほうがいいと思うけど?」
「私は手加減してあげるから安心してもらっていいわ。その安いプライドを粉々にしてあげる」
雪ノ下さんがそんなことを言いながら笑みを浮かべる。その笑みで相手チームのペアが身構えた。
って相手の男子、葉山くんだ。久しぶりだな葉山くんとスポーツするの小学生以来かな。
「確かに、あっちのほうが怖いは」
「比企谷、相手の名前教えてもらえるかな?」
「確かうちのクラスのやつらで男子が葉山で、女子がお蝶夫人こと三浦だ」
お蝶夫人?なんかすごそうだな?
「わかった。それじゃあ比企谷はみんなと見ててくれ。面白いモノが見れると思うよ」
「あいよ。あとは頼んだ」
そう言って比企谷は手を振りながら、由比ヶ浜さんと材木座がいるほうへ歩いていった。
戸塚くんは手当てが終わり、審判の椅子に座る。
雪ノ下さんは三浦さんにむかって
「随分と私のとも………うちの部員をいたぶってくれたようだけれど、覚悟はできているかしら?念のために言っておくけれど、私こう見えて結構根に持つタイプよ?」
いや、みんなわかってると思うよ。
俺は屈伸や深脚などで柔軟体操をしながら相手を観察する。
さて、今の試合状況は三ゲーム中二つ取ったチームの勝ちのルールで、1:0で負けている。
勝つには残り二ゲームを取る必要がある。
で相手はサッカー部次期キャプテン候補でスポーツ万能のイケメン葉山隼人くんと、テニス経験者のお蝶夫人?こと三浦優美子さん。
一ゲーム終わっても息が乱れてないから体力はあるし、テクニック等も申し分なし。
でも、負ける気はしないな。ペアが雪ノ下さんだし、どんなにうまくても英雄たちほどでもないだろ。
「よし。やるか」
「ええ、サーブは相手からだそうよ」
「わかった。ねぇ雪ノ下さん」
「なにかしら?」
「雪ノ下さんはこういうのがうまいのは知ってるけど、体力がないから最初からとばさないようにね。俺もできるだけ君のサポートにまわるよ。だから俺を頼ってくれ」
笑顔で雪ノ下さんに言うと、雪ノ下さんが少しだけ頬をほんのりと赤くした。
「え、ええ、よろしく…」
「うん。それと後半は俺にもやらせて欲しいな。もう体育の時間じゃ誰も相手にしてくれないんだよね」
「それはどういうこと?」
「他の生徒たちに完勝しすぎたんだよ…。バカみたいに」
「……。この試合あなた一人で十分じゃない?」
「さすがにそれは……いや、そうかも」
自慢ではないが体力も十分あるし、サーヴァントを相手にするぐらいなら、人間を二人相手にした方が楽だ。
だけど…。
「だけど、こうして雪ノ下さんとライバルとしてでなく仲間として一緒に戦いたいんだよ」
「そ、私もあなたと一緒に戦えるのは嬉しいわよ」
雪ノ下さんが笑顔で答えてくれた。
「ありがとう。それじゃあ、仲間が受けた苦痛を返してあげるか」
こうして俺たちは自分達の定位置につく。
テニスバトルの手前ですね
ラブレターはまぁ予想は付いている人もいると思います
白野くんの『何か』は陽乃さんがいていた心の壁みたいなものです。実際は壁というよりも箱ですね。なかに『嫌なもの』を閉じ込めている感じです
その『嫌なもの』はまた別のときに書こうと思います
白野くんに猫と会話できるとかバカバカしいスキルを与えてしまった
次回はテニスバトル。たまには比企谷くん目線でも書きたいので、最初のほうは比企谷くんの目線で書いていこうと思っています
それではまた次回