原作のほうには入りませんでした
それではどうぞ!
誤字があったらすみません
「同年代の知り合いが泊まりに来てくれるって嬉しいな」
今まで雪ノ下さんが遊びに来てくれたことがあっても泊まりに来たことはなかったし。
カレンはなぜか桜とあまり仲がよくないせいか滅多に来なかったからな。
どちらかで言うと桜のほうがカレンのことを嫌ってるのかな。
現時刻は20:16。夕食を食べ終わり、女性二人は今一緒に入浴中。うちのお風呂は大きいから五人までなら一緒に入っても十分余裕がある。
俺は縁側で大好物な餡蜜食べながらエルと一緒に月見をしている。餡蜜はサイコーだぜ!!
「エル、雪ノ下さんはどうだった?」
『撫で方がうまかったよ。アレはやり慣れているね。かなりのテクニシャンだよマスター』
「言い方が少しおかしいぞ。あと何処で覚えたのその言葉」
俺は教えてないぞ。
『歩き回っていると自然に覚えるだよ』
「ほ、本当か…?でも雪ノ下さんのことは気に入ったみたいだね」
『うん。あの人は心が綺麗な優しい人だよ。少し素直になれないところがあるけど』
そこまでわかるんだな。動物ってどういう人とか見分けるのに長けているのかな?
「ックシュン!」
急にクシャミが
『マスター、風邪?』
「いや、違うと思うよ。俺は風邪とかあまりひかないから。たぶん冷えちゃったのかな」
『冷えるって言っても、桜の花も散った春の半ばだよ』
「それもそうだな。ならどうしたのかな?」
やっぱり身体が冷えたんだろう。そろそろトレーニングでも始める時間だし、餡蜜も食べ終わってるから、行こうかな。
「エル。俺トレーニングに行ってくるよ。また明日」
『マスターは毎日頑張ってるけど、何のために頑張ってるの?』
何のためか…。
「大切なモノを守れるくらい強くなりたいんだよ」
俺は弱い。俺のことを何度も救ってくれた彼らのように強くなりたいんだ。
今度は俺が他の誰かを、大切な人たちを守れるぐらいには。
『マスターらしいね。あのときボクを守ってくれたように他の人を守るんだね』
でも他の子は助けられなかった。だから俺は弱いんだ。
『でもねマスター』
エルは俺に飛び乗り、自分の頬を俺の頬に擦りながら
『マスターが傷ついたら元も子もないんだよ。マスターが傷つくのを見て傷つく人たちもいるんだよ』
「……」
『だからここはマスターらしく、自分が傷つかないぐらい強くならないとね』
「…フッ。やっぱりエルは俺が育てたせいかすごく欲張りだね」
『ボクがこうなったのはマスターのせいだよ。子供たちには変な影響は与えないでね』
「エルもたまにひどいこと言うよね。誰に似たの?」
『お姉さんじゃないかな』
カレンか…。
エルはカレンのことをお姉さんと呼んでいる。桜は妹さんだったな。
確かにエルはよくカレンのところに行ってたとか言ってるし、そこでさっきみたいな変な言葉とか習ってないよな。
まぁ大丈夫だろ。
「エル、約束するよ。俺は大切な人たちと自分を守れるぐらい強くなる」
『マスター頑張れ。ボクも応援するよ』
「それじゃあ行ってくるよ。エルも来る?」
『ボクは帰るよ。子供たちも待ってるから』
「そうか。また明日ねエル」
『また明日マスター。明日も雪乃さんと遊ぶ約束もあるし』
そう言いながらエルは俺から離れて倉庫のほうへと歩いて行った。
へぇ、エルも人の名前を覚えるんだな。俺のことはずっとマスターだし、カレンや桜もあだ名みたいな感じだったもんな。
雪ノ下さんの猫好きが成した結果か?
クシャミの理由は、お風呂場、浴槽にて
「なぜかしら?」
「どうしたんですか雪ノ下さん?」
「いえ、気にしないでいいわ」
「はぁ、そうですか」
なぜかしら?二歳も年下な桜さんのほうが胸が大きいだなんて。
食べている物は今日見た感じでは私も作って食べているし、睡眠量も差はないはず。運動は桜さんは苦手なはずだし、体力だって私とは差がないはずよね。
そうなる岸波くんかしら?彼が桜さんのを…。彼はシスコンでたまに思考がおかしい時があるからありえるわね。
『ックシュン!』
「少し遠いところから、何か聞こえませんでしたか?」
「そう?私は何も聞こえなかったわよ」
もしそうだとしたら彼の去勢も止むを得ないわね。こういうことは本人に聞いた方が早いわ。
「ねぇ桜さん」
「はい、なんでしょうか?」
「あなた、岸波くんの性の捌け口にされてはいないわよね」
急に桜さんが顔を真っ赤にして
「な、なにを言っているんですか!?」
「なにをって、彼だって男性よ。そういうことがあってもおかしくはないわ。それに桜さんは妹とはいえ義理、血の繋がりがないのよ。桜さんみたいな可愛い子と一つ屋根の下で今では二人暮らし。普通の男なら泣いて喜ぶと思うわ。それに彼はシスコンだから」
「そ、そうだとしてもないと思います。兄さんはそういうことはしないはずです(で、でも兄さんがその気なら私は受け入れてしまうかも…)///」
「桜さん、頭から湯気が出てるわよ。湯あたりかしら?」
そう。岸波くんでもなかったようね。それなら遺伝的なもの?だとしても姉さんがアレだから…、私に問題があるのかしら?
……、わからないわね。
いつもと同じ筋トレのメニューをこなす。
トレーニングは筋トレやランニングなどの基礎をやった後、英雄の皆さんから習った武術の形などをやっている。
そしてテニス勝負以降は武術の型に強化型のコードキャストを混ぜながら取り組んでいる。
次の日、身体が筋肉痛で動かないみたいなことになったらバカみたいだから、毎日のように使えば慣れてくるだろう。
でも、英雄の皆さんは頼んでいないことを含めていろいろ教えてくれた。料理に勉強、格闘、射撃、罠の張り方、ギターなどの楽器、バイク、魚釣り、愉悦とはなにかとか色々。
最近では何故か俺とギルがアイドルプロデュース。黄金Pがエリザベートとセイバーをトップアイドルまで延し上げるそうだ。
『子ブタ、私たちの美声による歌はどう?よかったかしら?よかったわよね?』
『……』
『奏者よ!なにか言わぬか!それとも声にならないほどのよかったということか?』
『二人が美声なのは認めるけど、すごい音痴でした。音程を外しまくっていました』
『なんですって!!』
『おかしいではないか!余はエンディングを任されるほどの歌声のはずだ!』
みたいな会話があり、クラス・ゴージャスこと黄金Pが立ち上がった。
それで俺は二人のマネージャーをするはめに、マネージャーって何するんだよ。
よし。筋トレも終わったし、格闘の練習でもするか。大切な人たちを守れるように、エルとの約束、自分をも守れるくらい強くなれるようにならないとな。
でもいつ戦うのかな?あっても店長と一緒に迷惑な不良の退治とか?
「よし、筋トレは終わり。今日はアサシン先生と店長から習っている拳術だったな」
暴走族の件以降なぜか店長からも八極拳を習っている。休日とか店長が暇なときに家に来て道場で相手をしてくれながらいろいろと教わっている。
未だに勝ったことがない。というより店長はまったくダメージを受けていない。店長は絶対に中級サーヴァントぐらいなら倒せると思うよ。
俺が練習をしている格闘術は、アーチャーとガウェインから習っている剣術、クーの兄貴とカルナから習っている槍、アサシン先生と店長から習っている拳術の主に三つ。
毎日ローテーションしながら練習をしている。
練習時間は朝晩合わせて学校やバイトがある日は二、三時間、休日は四時間以上。筋トレなどの基礎を三十分づつ、計一時間。残りは格闘術。
深呼吸をしてから…。よし、やるか。「gain-con(16)、gainstr(16)」守りの護符と錆び付いた古刀のコードキャストで耐久と筋力の強化。
強化の効果が切れたら、また強化をして終了時間まで同じことを繰り返す。
習っている形にコードキャストを混ぜながら一人で黙々と続ける。
毎日単純な作業のように同じことを続けているが、単純な作業だろうと全力を尽くしていると意外と楽しい。
気が付くともう22:45。二十時半から二十三時前に終わらせることにしてるから今日はこれで終わりでいいか。
今日は雪ノ下さんがいたから早めにお風呂を焚いたから冷めちゃったかな。まぁいいか。
道場から出ようと振り向くと雪ノ下さんがいた。集中しすぎて気配に気づかなかった。
「ごめん。集中しちゃってたから気付かなかった」
「気にしなくていいわ。私が勝手に見ていたのだから」
「いつからいたの?」
「十五分ほど前よ。お風呂を上がったのは九時半ぐらいだけど、桜さんがあなたは道場で何らかのトレーニングをしているから呼びに行かなくても大丈夫と言っていたのよ。だから十時半ぐらいまで桜さんと話したりしていたのだけど、少し気になったのから見に来たのよ」
「なるほどね。そうなると桜は?」
「彼女は今学校の宿題をやっているんじゃないかしら」
それもそうか。中学は宿題があるもんな。高校は課題があっても不定期だし、毎日やっても自己的な感じだからな。俺は休み時間や休日を使ってやっているけど。
「それじゃあ俺も早くお風呂に入るか。冷めるのも勿体ないし」
「ええ、そうするといいわ」
「あ、雪ノ下さん」
「なにかしら?」
「雪ノ下さんの私服とかはたまに見るけど、そういうゆったりとした感じの部屋着を見るのは初めて見たから……、なんていうか、その、可愛くて似合ってるよ」
なんだろ。急に自分で言っていて恥ずかしくなってきた。
「そ、そう。ありがとう…」
雪ノ下さんも変なこと言われて恥ずかしいのか俯いちゃったし。
「「……」」
変な間が開いてしまった。今度からこういうことは言わないようにしないとな。場の空気がおかしくなってしまう。
「え、えっと、俺、道場の電気消してから行くから、居間とか行って桜に勉強教えてあげたりしてよ」
「わ、わかった」
そう言って雪ノ下さんは先に道場を出ていった。
お風呂上がりドライヤーで髪を乾かし終え時刻は二十三時半を過ぎたぐらい、ゴールデンウィークで明日が休みだとしても良い子は寝る時間だ。
俺は自室で布団を引いて寝る準備をしてから深夜零時になるまで勉強をしている。
俺の睡眠時間は五時間、零時から五時までと少し短い気もするがそうでもない。寝ている間はムーンセルに意識が行っているから、起きることもなくグッスリと眠れる。
でも小、中、高と成長するにつれ睡眠時間も少なくなっているから、ムーンセルでみんなといられる時間も当たり前のように少なくなっている。
昼寝ではッムーンセルには行けない。ムーンセルに行くには夜、月が出ている時間からじゃないと行くことができない。
逆に月が出てから寝てムーンセルに行けば、月が沈んで太陽が昇ってもずっとムーンセルにはいれる。
これを知ったのは小学生に入る前。なんどか試した結果このことがわかった。
みんなと一緒にいる時間が少なくなっても、みんなは変わらずに接してくれているのが本当に嬉しい。
「そろそろ寝ようかな。ん?この気配は…」
なんだろうな…。留美ちゃんのときもあったけど、そういう展開にならないよな。
俺は自分の部屋の戸に近付いて戸を開けると雪ノ下さんと桜がビクッと肩を上げた。
「どうしたの?」
「急に開けないでくれる。驚くでしょ」
「そ、そうですよ。開けるときは何か言ってくださいよ兄さん」
それはおかしいよ。俺のほうが部屋の中なのに俺が合図するんですか?
「え、えーっと、それでお二人は何かご用でも?」
「兄さん、それはですね」
「三人で同じ部屋で寝ましょう」
「……」
「……」
「……」
どうしようか…。まぁ同じ布団じゃなくて同じ部屋なら大丈夫かな。
「別に構わないけど、俺は男ですよ」
「それぐらいは見ればわかるわ。それとも私があなたのことを女性として見ていたとでも?」
「そんなことは思ってはいないよ。俺が言うのは警戒のほうだよ」
「大丈夫よ。あなたはそういうことはしないわ。それともするの?」
なんだろう。質問が少しえぐいぞ。
「いや、しないよ。二人とも魅力的な女性ではあるけど了承を得ずにそんなことはしないよ」
「なるほど。了承を得れたら襲い掛かるのね」
「……。恋人とかそういう関係になってから了承を得たらするかも」
なにを言っているんだ俺は…。バカなのか。
「そ、なら大丈夫でしょ。桜さんいいそうよ」
「はぁ、そうなんですか」
いやぁ、どうなんでしょうか?
「それで何処の部屋で寝るの?」
「あなたの部屋よ」「兄さんの部屋です」
「……」
ですよねぇ…。そうくると思いましたよ。
で、どうしてこうなった…。
俺はてっきり一人一枚づつ布団を使うか計三枚使うと思ったら、布団は二枚。
俺が一枚でもう一枚を雪ノ下さんと桜が使うと思ったら、桜、俺、雪ノ下さんという順番で川の字で寝ることに…。
留美ちゃんのときと違って一人一人間隔はあるけども、緊張度があのとき以上だよ。
ね、眠れぇ…。完全に目が冴えてるよ。こうなったら二人が寝たら居間に行って寝よう。
桜はもう寝てるな。寝息を立ててるし。次は雪ノ下さんだが…。
俺は雪ノ下さんのほうに顔だけ向ける。
目は閉じてはいるけどどうだろう、寝てるよな。よし、脱出するか。
俺が布団から出ようとすると
「ねぇ岸波くん。起きてる?」
ね、寝てなかったぁ…。
「う、うん。起きてるよ」
「そう」
「……」
「……」
何か話した方がいいかな?そうだ。どうしてこんなことしたか聞いてみるか。俺の知っている雪ノ下さんなら何か理由があるはず。…誰だって理由ぐらいはあるか。
留美ちゃんは予想、一人が怖かったとか、桜は予想、兄離れできてないとかだろう。
「ねぇ雪ノ下さん」
「なにかしら」
「今聞くのもおかしな話なんだけどさ、どうして一緒に寝ようと思ったの?」
「岸波くんはどうしてそれを聞きたいの?」
「なんだろうなぁ。気になってはいたんだけどどうにもタイミングが掴めなくてね。それと」
「それと?」
俺は顔だけでなくに身体ごと雪ノ下さんのほうへ向ける。
「桜に聞いて欲しくないようなことかなって思ったんだ。本当は聞かないほうがいいかなって思ったんだけど、やっぱり気になってね。それに桜も寝ちゃったし」
俺の言葉を聞いて雪ノ下さんも俺に向かい合うように身体を動かす。
「あなたはすごいわね。それでどんなことだと思ったの?」
「わからないから聞いているんだけど…」
「本当かしら。実際はもうなんとなくわかっているんじゃない?」
俺はこの子ほうが十分すごいと思うよ。
「なんとなくだよ。当たっているかはわからないから言いたくないんだよ。間違えたら恥ずかしいし」
「でも言ってみないとわからないわよ。当たったら嬉しいでしょ」
「うーん、どうだろうな。俺の観察眼って自分の意思でやってはいるけど相手をいい気持にするようなものではないからねぇ」
「そ、でも私はあなたの口から言ってもらいたいわ。あなたもわかっていると思うけど、私ってあまり素直に自分の気持ちを言えないのよ」
気付いてたんだなぁ。
「わかった。当たってるかはわからないけど言うよ。でも間違ってた場合は訂正をお願いしてもいいかな?」
「場合によるわね」
「場合によるんだ…」
いいか、雪ノ下さんが言いたくないならそれで。俺が思ってることを言えば。
「予想だけど、温もりみたいなものかな」
「……」
「家族の温もり。俺は雪ノ下さんの家庭がどんなものかはそんなに知らないけど、君や陽乃さんを見ているとなんとなくわかるよ。自分にとって絶対的な立ち位置で逆らうことができない母親、どんなに頑張っても追いつこうとしても先を行っている姉、優しいけどいつも仕事でほとんど会えない父親」
父親に限っては俺の家とあまり大差なんてないか。
「そういう家庭で小さいころから過ごしていたから、当たり前の家族の幸せや温もりをあまり感じられなかった。それに今は一人暮らしだし、俺が言えたことではないけど君は友達と言える存在が由比ヶ浜さんと桜ぐらいだ、こういった家族の話は誰にも話さないからさ、俺にだって中学生まで話さなかったわけだしね」
まぁなんとなくは気付いてはいたけど。
「だからこういうことをしたのかなって」
「まだあるけれど、そんなところね。当たっているわ」
「そうか。それでまだってどんなこと?」
「言わないわ。頑張って一人で見つけ出しなさい」
場合にはならなかったわけですか。というか場合なんてないんじゃないかな?
「それでいつごろから気付いていたの?」
「最初の泊まりに来たでなんとなく、桜との入浴で半分以上、一緒に寝るで完全かな」
雪ノ下さんがジト目で睨んで来たぞ。少し不機嫌か?
「はぁ…。あなたって本当によくわからないわね。いつものように接しているのにすぐに違いとかに気付いて、それで相手を気遣いながらあなたもいつものように接する。(そんなに相手のことを見抜くくせに自分への好意には疎いって…)だからこそかしら?」
「なにが?」
「なんでもないわ。それでさっきの続きだけれど、そうね私があなたの家に泊まりに来たのは家族の温もりを、あなた達の温もりを味わってみたかったのよ。でも猫を見に来たのが主だけれど」
エルたちに負けた!!
「岸波くんが言ったように私はあまりいい家庭に生まれたとは言えない。家は金持ち、父は十分な地位にいる。私自身可愛くて才能もある」
急に自慢が入ったな。まぁそれが彼女の持っているトラウマに繋がるわけなんだが。
「でも家族には恵まれなかった。自分の監視下に縛り付けようとする母、憧れのままで超えることができない姉さん、仕事で忙しい父。知り合い、友達と言ってきた人たちは最後はみんな私のことを見捨てていなくなる。だけどあなたと桜さんは違った」
ここから今回の理由が始まるわけだ。
「あなたは私のことをライバルと言って競い合いながら私と同じ位置に、私の隣にいてくれた。桜さんは私を姉のように慕ってくれた。でもあなたたちの家庭のことを知ったときは本当に驚いたわ。誰一人として血が繋がっていない、なのに私の家よりも私が求めていた家族らしかった」
そういうことか、だから雪ノ下さんは気になったんだな。
「だから私は気になったの。あなたの家庭のことを知ったのは私が留学する前だったから確かめることができずにいたのよ。それで私がこっちに帰って来てから桜さんに聞いてみたの。『どうしてあなたの家族はそんなに仲がいいのか』って、そしたら桜さんは岸波くんがいてくれたからって言ったの」
「雪ノ下さんは桜の返答をどう思った?」
「すぐに納得したわ」
「その返答に俺はビックリだよ」
「そうかしら?桜さんに聞いてもあなたって桜さんが始めて会ったころから現在まで性格が変わってないそうだから、納得するしかないわ」
それだけで納得できるんだな。
「だからあなた達の、あなたの傍にいれば家族の温もりを感じられると思ったのよ」
「それでどうだった?」
「嬉しかったわ。家で同じようなことをしても絶対に超えられないほどにね」
「よかったよ。もしダメだったどうしようかと思ったよ」
笑顔で答えると雪ノ下さんが意地悪な笑みを浮かべる。これあれだろ何かくるぞ。
「でももう少しは欲しいかしら」
「な、なにをでしょうか雪ノ下さん?」
「家族の温もりよ」
そうか。ならどうすればいいかな?家族らしいことってなんだ…。
「確か桜さんから聞いたのだけれど、岸波くんて桜さんが困っていたり悲しんだりしているとハグしながら頭を撫でてあげるのよね?」
「そ、そうだけど、雪ノ下さんにも何度かやってる思うよ」
そういえば俺ってこのことを結構やってるぞ。えーっと、桜、雪ノ下さん、カレン。留美ちゃんと陽乃さんには一回だけやったかな。
「ならできるわよね」
そう言いながら雪ノ下さんは俺に近付いて来る。
「えーっとですね雪ノ下さん。もしかして寝ながらですか?」
「ええそうよ。よくやっているのでしょ」
いや、寝ながらなんて桜がまだ家に来て心細かったぐらいの一年間ぐらいだぞ。
あの頃は互いに小さかったけど今はまったくやってない。しかも相手は雪ノ下さんだし。
「岸波くんどうしたの?」
もう雪ノ下さんは俺にくっついてるし、なんだろうな、雪ノ下さんは俺のことが好きなんじゃないかって思えてくるけど、兄とか弟みたいな感じなんだろう。
もういいか、雪ノ下さんが寝たら外せばいいし、もし俺が寝たとしても明日の五時には起きるから何とかなるはずだ。
「わかったよ。それじゃあ雪ノ下さんを桜、妹のようにするよ。そうなった呼び方も今日だけ変えてみよう」
「?」
俺は雪ノ下さんを抱きしめながら頭を撫でて
「雪乃はいい子だね。今日までよく頑張ったね。今日はお兄ちゃんに甘えていいよ。だから明日からまた頑張って。辛いことがあったらまたやってあげるから。だから自分が、雪乃が信じているモノを、自分がやりたいことを精一杯、諦めずに頑張って」
そう優しい声で言う。
「あ、あり、がとう」
雪ノ下さんは少し涙声になってしまった。雪ノ下さんの頭の位置はだいたい俺の顎の下、首から胸の間にあるからどんな表情かはわからないが、少なくても嫌な表情ではないだろう。
それから俺は雪ノ下さんが眠るまでずっと抱きしめた状態で頭を優しく撫でながら雪ノ下さんに「雪乃はいい子だよ」「よく頑張ったね」などを繰り返し言い続けた。
そこまではよかった。問題は俺も疲れていたから寝てしまった。
気が付いたらムーンセルにいた。急いで戻ろうとしたらキャスターが部屋に入って来て
『ご主人様!またですか!また新しい現地妻を作って、この良妻系サーヴァントの私も怒りますよ!』
とか言って長々と説教が始まった結果、起床時間よりも長く寝てしまった。
現時刻6:12。いつもより一時間近く寝坊。雪ノ下さんはまだ俺の腕の中で寝ている。
桜のほうもまだ寝ているがいつ起きるかはわからない。
だから俺すべきことはこの状況からの脱出。
まずは俺の腕を雪ノ下さんから外す。
ジャラ
ジャラ?もしかして俺の手になにか付いてる?そういえばさっきから手首に違和感が…。
「これって手錠じゃないかな…」
雪ノ下さんが影になって見えないけど、両手首の違和感、ジャラという鎖ぽい効果音。
手錠だな。うん、手錠だろ。
オイ!誰だこんなことする奴!ムーンセルのほうの仕業か!?
「兄さん?なにをしているんですか?」
ビクッ!
こ、この声は桜さんですね。はい。絶対に桜さんですよ。間違いはありません。
「なぜ兄さんは雪ノ下さんのほうを向いているんですか?」
この前よりも怖い。ここは寝たふりを…
「寝たふりですか?わかっているんですよ。兄さんさっき動きましたよね。私しっかり見てましたよ」
「えーっと桜さん?」
「兄さんこっちを向いて下さい。私が話しているんですから。それとも私のこと見れないんですか?」
正直怖くて見れません。でも向かないとさらに怖い気がする。
俺は恐る恐る桜のほうに身体を向けようと寝返りをすると、桜の恐怖ですっかり忘れていた手錠のせいで、雪ノ下さんも俺にくっついてくる。
現在の状況、俺の上に雪ノ下さんがうつ伏せで寝ている。それを俺が抱きしめているように見える。手錠は掛け布団せいで見えない。
俺は首から上を動かして桜のほうを見ると笑ってはいるが、後ろから黒いモノを感じる。
やばいな。桜もやばいが、今は雪ノ下さんのほうがやばい。
この女の子特有のいい匂いとか柔らかさとかもういろいろとやばい。
あの普段ではわかりにくいあの胸も、こうくっついているとしっかりわかります。ええそれはもうしっかりと。
普通なら理性が無くなってもおかしくないが、桜がいるから何とかなっている。
桜、俺はやっぱりお前なしでは生きていけないかもしれないな。ありがとう桜。
「兄さん。どうして雪ノ下さんと抱き合っているんですか?」
「えーっとね話せば長いん――――」
「んっ。きしなみくん」
なんか雪ノ下さんが寝言で官能的な声で俺の名前を呼んでいるぞ。
だがその言葉は俺の人生の終わりかな?さよなら俺の人生。
「兄さん」
ぎゃああああぁぁぁぁ!!
次回からは原作の流れに入ります
雪ノ下さんはもう完全に白野くんが大好きになったでしょうね。間違いない
といってもこれからはこれ以上の進歩がなく後半まで行くでしょうね。進歩するには白野くん過去の話が出るまではないと思います。次はカレンかな
それではまた次回!