ですが今回では終わりませんでした。ので次回も遊戯部の続きになりますね
現在俺は部室で比企谷と由比ヶ浜さんが来るのを待っている。
俺が作ったケーキは今家庭科室で待機中。あとで取りに行こう。
雪ノ下さんはいつものように本を読んでいて、俺をじーっと見て観察をするのをやめている。
何かわかったのかな?
昨日久々にリップと会話したのだが、あまり会話ができずに終わってしまった。
『…ひ、久しぶりです…。せ、せん』
リップは先輩と言おうとしていたようだが、言い止めて、
『久しぶりです。キシナミさん…///』
リップは顔を真っ赤にして俯いている。こういうとこは小動物ぽくって可愛いよな。
うん。久しぶりだねリップ
『あ、ありがとうございます…///』
そう言ってリップか消えて行った……。えっ?これだけ?
俺が発した言葉は『うん。久しぶりだねリップ』だけだよ。
ただ前と違う変化は見えた。
リップの腕や爪、あの人を傷つけてしまうモノがなくなって、普通の人の手になっていた。
でもメルトは足は……わからないな。画面の位置だと胸の少し下までしか映らないんだよな。付けたり外したりできるようになったってことかな?
メルトは見下すのが好きだから、あの足のままなのかな?今度聞いてみよ。
服装は前と同じで目のやり場に困るものだったが。
「ねぇ雪ノ下さん」
「なにかしら」
「由比ヶ浜さんは来るんだよね?」
まぁもう戸の前で立ってる気配はあるんだけど……。
「ええ、この前、土曜日に『部室に来て』と言ったわ。彼女なら来るわ、絶対に……」
「そうか。ならいいんだ」
土曜日って『東京わんにゃんショー』に行ったときか、でも俺は会ってないから、雪ノ下さんが比企谷と猫ゾーンに行ったときだよな。そうなると犬ゾーンで会ったってことだ。
なんかややこしい勘違いがありそうだぞ……。
ん?戸の前に気配が増えたな。この気配…比企谷だな。
最近さらに人間離れし始めたかな…。
ガラッとわざとらしく大きな音を立てて扉が開いた。
大きな音に少しイラッとした雪ノ下さんがぱっと顔を上げた。
「由比ヶ浜さん……」
「やぁ、久しぶり由比ヶ浜さん」
「や、やほー。ゆきのん…キッシー……」
由比ヶ浜さんは弱々しく手を挙げてわざとらしい明るい声で答える。
「いつまでもそんなとこにいないで早く入りなさい。部活、始まってるのよ」
雪ノ下さんは下を向いて隠しているようだが、頬が少し紅潮している。
嬉しいんだねぇ。
「う、うん……」
由比ヶ浜さんはいつもの先に座るが雪ノ下さんと少し距離があるな。
比企谷もいつもの雪ノ下さんの対角線上の席に座った。
それからみんないつものように自分の好きなことやるのだが、少しぎこちない。雪ノ下さんと由比ヶ浜さんは互いを意識し合っているようだ。
誰一人として声を出さない長い沈黙。いつも由比ヶ浜さんが話しを出すことが多かったしな。なんか言おうかな…。
考えてみよう。沈黙を壊す方法は……、『!』そうだガトーのように振る舞えば…、嫌だ死ぬ。間違いなく死ぬ。
いや、大きな声で『神、サイコー!!』とか言ってみる?俺もザビエルと言われた(言った)人間だ。神を信じていてもおかしくないからな。
よ、よーし。言うz
「由比ヶ浜さん」
雪ノ下さんは読んでいた本をぱたりと閉じる。
い、言わずに済んだ……、ありがとう雪ノ下さん。俺はまた一つ過ちを増やすところだった。
「あ、あーっと……ゆ、ゆきのんと……ヒッキーのことで話がある、んだよね」
あれ?俺の名前がない?いや、だいたいはわかった。由比ヶ浜さんは雪ノ下さんと比企谷が付き合ってるって思ってるんだ。なんかここからの会話が少し面白、なんでもない。気になるな!マジで気になる!
「ええ、私たちの今後のことであなたに話を、」
「や、やー、あたしのことなら全然気にしないでいいのに。や、そりゃ確かに驚いたというか、その、ちょっとびっくりしたっていうか……。でも、そんな全然気を遣ってもらわなくても大丈夫だよ?むしろ、いいことだからお祝いとか祝福とか、そんな感じだし…」
「よ、よくわかったわね……。そのお祝いをきちんとしたかったの。それに、あなたには、感謝、していうるから」
「や、やだなー……感謝されるようなこと、あたししてないよ……。何も、してない」
「自覚がないのはあなたらしいわね。それでも、私は感謝してる……。それに、こうしたお祝いは本人が何かをしたいから行われるものではないでしょう。純粋に私がそうしたいだけよ」
「………う、うん」
面白そうって言った俺がバカでした。人が勘違いしているのを傍から見て笑うのは『愉悦クラブ』だけだ。あと陽乃さん。
「だ、だから……その」
雪ノ下さんが何かを言いかけようとして、少し黙る。
さらに微妙な空気になったなぁ。今度こそ言おうかな……よ、よーし、ん?戸の近くに人の気配。平塚先生とは少し違うな。
俺は立ち上がり戸に近付くとダンダン!と焦ったようなノック。材木座だな。間違いない。
俺が戸を開けると黒い大きな影、まぁ材木座が比企谷にむかって走って行こうとしたので、足を引っ掛ける。
材木座は盛大にズッコケながらも比企谷近付いて
「うおーん!ハチえもーん!」
「材木座…。なんか岸波にされたか?足とか引っ掛けられたんじゃねーか。それとその呼び方やめろ」
「ハチえもん、聞いてよ!あいつらひどいんだよ!」
比企谷はイラッときたのか、材木座を部屋の外に追い出そうと押し始めた。
今俺にアイコンタクトで『手伝え』みたいなこと言ってきたな。まぁ手伝うか。
俺は材木座の両肩を掴んで引っ張り、比企谷は押す。材木座は比企谷にしがみつこうと必死。
なんだこの絵面…。
さすがの材木座も二人の力に勝てるわけもなく、どんどん出口に近付いて行く。
「悪いな材木座。この奉仕部は四人用なんだ。な、ジャイアン?それと出木杉」
比企谷はジャンアンで雪ノ下さん、出木杉で俺を見た。
俺は出木杉くんではないよ。
「なぜ私を見るのかしら……」
雪ノ下さんは比企谷を怪訝な顔で睨む。
「俺は出木杉くんじゃない。出木杉くんは葉山くんだろ。」
それに出木杉くんはジャイアン側じゃないし。
材木座はもう廊下まで出ていて、俺と比企谷が頑張って押し出している。
「おい、待て八幡。ふざけている場合ではない。ハチえもんが気に入らないなら、忍者ハチとりくんでもいいから我の話しを聞け」
「一番ふざけた存在にふざけてるとか言われてしまった……」
比企谷が軽くショックを受けて力が緩む。
「ぬ、今だ!」
「させるか!」
俺は材木座の右腕を掴み、それを廊下に引っ張り出して、足払いをして体勢を崩させ、そのまま廊下側で転ばせてから、戸を閉める。
「ふぅ…。危なかったな。って俺たちはなんのために材木座を追い出したの?」
勢いに身を任せたせいで無駄過ぎる行動をしていた。
「まぁ、席にでも戻るか」
「ああ、そうだな」
俺と比企谷は自分の席に座ると、材木座がノックをせずに入ってきた。
「さて、諸君。今日は諸君らに相談があってまかり越した」
「本当にさっきの一部始終は無駄にも程があるわね」
「あははは……」
「なるほど、材木座はライトノベル作家は止めてゲームのシナリオライターになることにしたけど、それを遊戯部の部員にバカにされて、大人のようで大人じゃない材木座はその人が帰った後に、コミュに煽りの書き込みをしまくたからゲームで決着をつけることになったと」
「ゲームで決着なら健全でいいじゃんか。ばしっと決めてやれば?」
「ははははっ!それは無理な相談だな。……格ゲーだとむこうのほうが全然強いのだ」
「え?お前、すげぇ得意じゃねぇの?」
「それは、まぁ一般人に負けることはまずないだろう。だが、上にはいくらでもいる。八幡、お主知っているか?一流の格ゲーマーにはプロ契約をしている人だっているのだぞ」
「プロ……。そんなのあんのかよ。ってことはお前が前言ってた『白騎士』ってのもプロか?」
ん?白騎士……。嫌な予感。
「どうだろうな。白騎士殿は伝説の格ゲーマーだからな。そうかもしれん」
「な、なぁその白騎士って?」
俺は恐る恐る比企谷と材木座に尋ねる。
「白騎士ってのはな、この前俺が帰りに戸塚と一緒になったときにゲーセンに行って来たんだけどよ、そのときゲーセンに材木座がいて、そのとき材木座から聞いたんだよ。なんでも二年前に姿を消したこの周辺のゲーセンの伝説の格ゲーマーだそうだ」
「うむ。プレイヤーネームは『ホワイトナイツ』別名『白騎士』だ」
「へ、へぇ…」
お、俺だ……。プレイヤーネームと二年前で完全に俺と一致してるよ。
雪ノ下さんと再開するまで本当に暇だったからゲームセンターで格ゲーを勝ち続けてたなぁ。今思い出すと懐かしいなぁ。
『ホワイトナイツ』は、白野⇒野を夜⇒白夜⇒それを英語に訳したからだけど…。まぁ岸波白野の岸と白を逆に合わせて白岸⇒白騎士でもいいか。
まさか伝説のゲーマーになってるとは……。
「ホワイトナイツって白夜よね。白騎士ならホワイトナイトでしょう。単純な間違えね」
「いや、白騎士は勝手に言われてるだけらしいぞ」
当たり前だ。俺だってそんな間違いはしないよ。
話しが進んだ結果、俺たちは遊戯部に行くことになった。
材木座があの空気をブッ壊してくれたのはよかったんだが、奉仕部を挑発して雪ノ下さんがその挑発に乗ったからだ。
依頼内容は格ゲーではないゲームで、材木座が確実に勝てるものでの勝負。あるかな…。
遊戯部の部室前。
「じゃ、行くか……」
比企谷がそう言いながら全員を確認する。それで後ろで少し離れた位置にいる由比ヶ浜さんに「……お前は、どうする?」と尋ねる。
「い、行く……。行く、けど……ねぇ、ヒッキー彼女いないの?」
やっと勘違いが終わりそうだな。俺から言うのもおかしいからな。
「や、いねぇけど」
「愚問よ、由比ヶ浜さん。この男にまともな男女交際なんて不可能だわ」
これにて勘違い終了。わかっているともどかしいんだよな、こういうのって。
「あ。で、でもさ。ゆきのんと出かけてたりしてたじゃん?あれは?」
「この間『わんにゃんショー』のことなら偶然出会っただけよ。私と岸波くんは小町さんに誘われて一緒にいただけ。言わなかったかしら?」
言ってなかったんだろうね。勘違いしてるんだから。
「え?キッシーも居たの?」
「うん。雪ノ下さんの付き添いで一緒に行ってね。予想だと、俺と小町ちゃんが『ふれあいゾーン』にいたときに、雪ノ下さんたちと由比ヶ浜さんが会ったんじゃないかな?」
「じゃあ二人は別に付き合ってたりとかしないの?」
由比ヶ浜さんは比企谷と雪ノ下さんに向かって尋ねる。
「そんなわけねーだろ……」
「由比ヶ浜さん、私でも怒ることくらい、あるのよ?そ、それに私は……」
雪ノ下さんは由比ヶ浜さんに冷たい怒気を出したと思えば、なぜか急に口ごもる。
「あ、ごめんごめん!なんでもないんだ。じゃ、じゃあ行こっか」
由比ヶ浜さんは焦ったように戸に駆け寄り、上機嫌な様子でトントンと戸をノックする。
すると、「はいー」と気だるそうな声で返事がくる。
入室の許可だな。戸を開けると本や箱、パッケージなどが壁のように積まれている。
部屋の大きさは半分以下になるけど、ジナコの用務員室を思い出すなぁ……。
「まさかこの部屋には『引きこもりの蝸牛』と『施しの英雄』がいるんじゃ……」
「何言ってんだお前」
「岸波くんはたまにこうなるのよ」
材木座曰く、『積みゲーや積み読みは最も多く過ごす場所ほど高く積まれる』そうなのでそういう場所にむかうと、二人の男子生徒がいた。
学年の色は黄色、カレンと同じ一年生だな。
一年生の二人は俺と雪ノ下さんを見て
「あ、あれって二年の雪ノ下先輩と岸波先輩じゃ…」
「た、たぶん……」
「おや、雪ノ下さんはまだしも俺のこと知ってるの?」
少し嬉しいかも。
「はい。J組の言峰さんの彼氏って一年生の中ではかなり有名ですよ」
あ、ああ……、そういうこと、ねぇ……。
由比ヶ浜さん以外の三人から殺意にも似た鋭い視線が……。ガクガク
「岸波くん。少し話があるのだけど、廊下、出てもらえるかしら」
笑顔なのに怖い。由比ヶ浜さんに出した怒気よりもヤバいぞ。
「は、はい……。ちょっと用事ができたから、比企谷たちで話を進めてもらっていいかな?」
「ああ、任せておけ。このクソリア充が!」
「我の目の前から消え失せろ!!」
「さ、サイテーだこの二人。キッシーここは私たちに任せて」
由比ヶ浜さんは優しいな。他の人はアレだな。怖いな。人って怖い。
それから俺は廊下で雪ノ下さんにテニス対決のあとでのカレンとのことを話した。
説明し終わってもまだ少し不機嫌だったがあとで機嫌をどうにか直してもらおう。
そしてまた遊戯部の部室に入る。
「来たみたいだな。やるゲームは決まった」
比企谷が俺たちのほうをむいた。
「むこうがアレンジしたゲーム。名前はダブル大富豪だそうだ」
ダブル大富豪
1、すべてのカードをプレイヤー全員に均等に配る。
2、ゲームは親から始め、親の手札から最初のカードを出し、以降順番に次のプレイヤーがカードを出していく。
3、カードには強さがある。弱い順に3、4、5、6、7、8、9、10、J、Q、K、A、2。ジョーカーはワイルドカード。
4、場にある現在のカードより強いカード出さなければならない。二枚だし、三枚だしの場合はそれと同じ枚数で出さなければならない。
5、出せない場合はパスが許される。
6、他のプレイヤー全員がパスの場合、そのカードを出したプレイヤーが親になる。場にあるカードは流される。
7、以上を繰り返し、先に手札がなくなったプレイヤーから、大富豪、富豪、平民、貧民、大貧民の階級がつく。
8、大富豪は大貧民から良いカードを二枚取り上げ、いらないカードを二枚渡す。
9、ペアを組む。ペアでの相談は禁止。一ターンごとに交代で手札を出していく。
10、勝負は五試合。最後の順位で勝敗を決める。
11、ローカルルール
『革命』、同じ数字のカードを四枚出すことで、カードの強さが逆転する。
『8切り』、8を出したらそれまでのカードが流され、8を出したプレイヤーが親になる。
『10捨て』、10を出したとき、出した10の枚数に応じて手札から好きなカードを捨てれる。
『スペ3』、ジョーカーに対してスペードの3が勝つ。
『イレブンバック』Jを出したその回は、カードの強さが逆転する。
なるほど、ルールは理解したけど……。
「俺って誰と組むの?」
比企谷と材木座。雪ノ下さんと由比ヶ浜さん。遊戯部の二人。俺のペアがいない……。
「俺は参加できないの!?」
ここでも独りぼっち……。
「まっいいか。俺、運ないし。それにこのゲームには何か裏があるな」
俺の言葉に比企谷だけが反応した。
「なんだその裏っての」
「比企谷。脱衣ゲームって知ってるか」
「は?もしかして」
「ああ、俺の予想このゲームは脱衣式だ。最初に相手は負けてくる」
「本当にそうか…」
比企谷は疑いの目線を向けてくる。
「まぁやってみればわかるさ。俺はみんながやってるのを後ろで見てるよ」
俺は俺で全員の手札を確認できるから、それを見てるのも楽しい。どんなゲームでもそのプライヤーの性格が出てくるんだよ。チェスとか?
ゲームは進み、奉仕部が1、2フィニッシュ。
そして相手はベストを脱いだ。
予想通り脱衣式だった。
由比ヶ浜さんがそんなルール聞いてないと遊戯部にプンスカ怒っていると比企谷が「岸波どうしてわかったんだ?」と尋ねてきた。
「ああ、遊戯部の二人の目を見たこと……いやあんな目で仲間から見られたことがあるんだ」
「どういう意味だよ?」
「簡単だ。…………『ぱんつ はかせ ない』」
「は?」
はぁ…、今でも恥ずかしい。
次回はこの続きとできれば誕生日会ぐらいまでいきたいですね
それではまた次回!!