やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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面白くできてるかわかりませんが、楽しく読んでもらえると嬉しいです


由比ヶ浜結衣の誕生日会。

 

 

 

 

 

「それにあの事故のときは悲しかったかもしれないけど、こうやってみんなが出会えたことは喜んでいいことなんだよ」

 

俺が話し終わるときには、みんな呆れ顔でありながら笑顔だった。

 

「岸波くん。何その変な理論は……、あなたのせいで悩んでた私がバカみたいじゃない。けれど……、その、ありがとう…。あなたのおかげで勇気が出たわ」

 

そう言って雪ノ下さんは比企谷のほうを向く。

 

「比企谷くん」

 

「あ?どうした」

 

「謝って許されるとは思ってはいないけど、その、ごめんなさい」

 

雪ノ下さんは比企谷に頭を下げた。

 

「もっと早く言うべきだったのだけれど、勇気が出なかったの。本当にごめんなさい」

 

雪ノ下さんが頭を下げて、僅かな間があってから比企谷が口を開く。

 

「別に謝らなくてもいい。由比ヶ浜に言ったように、怪我はなかったというより岸波に治してもらったみたいだし、保険会社から金も貰ったし、弁護士だか運転士だかが謝りにもきた。それに岸波が言ってたように偶然でしかなかったんだ。お前が謝る必要はねぇよ」

 

比企谷の返答を聞いて、雪ノ下さんは頭を上げ「ありがとう」とたまに見せる素直で綺麗な笑顔で答えた。

 

「お、おう……。にしても岸波、お前本当に魔法使えたんだな」

 

比企谷は雪ノ下さんの笑顔を見たせいで話を逸らしてきた。確かにあの笑顔を見せられたら、いつものギャップでかなり戸惑うな。

 

「ああ、まぁ実際は魔術が正しいんだけど、魔法の方がわかりやすいだろ」

 

「そうでもねぇよ。魔法だか魔術だかは俺には全く無縁だからどう呼ぼうがなんとも思わん。で、どんな魔術?が使えんだ」

 

比企谷の目が少し輝いて見える。アレか昔、中二病?だったか。

 

「そうだなぁ…。俺が使えるのは、治癒系、強化系が主で、あとは物探しと移動速度を上げるもの、スタンガンみたいにビリッとくるやつだな」

 

スタン系は英雄が怯むんだから人にやったら完全に気絶する。

 

他に特殊な礼装があるけどこの世界ではまず使わないな。

 

「それとこれだな」

 

そう言って俺は電子手帳をポケットに手を入れず、みんなの目の前で出す。

 

「「え?」」

 

雪ノ下さんは知ってるけど、二人は知らないもんな。

 

「え?え?あれ?キッシーそれってどうやって出したの?」

 

由比ヶ浜さんがすごい食いついて見てくる。

 

「実はこれも俺の魔術の一つ。というよりもこれがあるから俺は魔術が使えるんだけどね。この電子手帳は俺の魔力によって作られてるものなんだよ」

 

でもアーチャーの投影とは少し違うらしいんだよな。

 

「魔力?なにそれ?」

 

「簡単に言うと俺の身体の中にあるエネルギーの一つ。さらにどういうものかを知るには結構難しい話になるけど」

 

「ど、どれぐらい難しいの?」

 

「今回の中間テストが簡単に思えるぐらい」

 

「ならいいや」

 

まぁみんな元通りになったみたいだし、それ以上に仲良くなれた気がする。

 

「じゃあ、この話はここでお終い。今日は由比ヶ浜さんの誕生日を祝うんだし、俺は今から家庭科室にケーキ持ちに行ってくるよ」

 

「そ、じゃあ私は平塚先生に人員補充完了の報告をしてくるわ」

 

俺と雪ノ下さんは廊下に出る。そして雪ノ下さんが戸を閉める前に

 

「由比ヶ浜さん、比企谷くん」

 

「何、ゆきのん」「なんだ」

 

「その、こ、これからも、よろしく」

 

そして戸を閉める。

 

なんか部室の中から由比ヶ浜さんの喜んでる声が……。

 

雪ノ下さんならもっと仲良くなれそうだね。雪ノ下さん、ファイトー!

 

「岸波くん。一緒に職員室に行きましょうか」

 

雪ノ下さんが歩き始める。俺も雪ノ下さんの横を歩くが、

 

「確かに鍵を取りに行くために職員室に行くけど、雪ノ下さんは電話でもいいんじゃないの」

 

「……。そんなこと別にどうでもいいでしょう」

 

「そうだけど。効率的では、あ、ごめんなさい。だから睨まないで」

 

なんでいつも睨むんだよ。

 

「ねぇ、岸波くん」

 

「ん?なにかな」

 

「本当にありがとう。あなたがあの場で言ってくれなかったら、私はまだ言えなかったわ」

 

「別に気にしなくていいよ。俺が好きでやったことだし、それに…」

 

ここは俺の感情的な部分なんだよな。少し恥ずかしい。

 

「それに、君が自分を悪いと思って、二人から距離を離しているところが見たくなかったんだよ。さっき言ったように君は何も悪いことをしていなかったんだから、それで自分を遠ざけているところを見たくなかったんだ」

 

そう。彼女は何も悪いことをしていないんだ。それで距離を離すのおかしい。だから雪ノ下さんにはあの二人としっかりと仲良くなってもらいたい。

 

俺の話を聞いて雪ノ下さんは、ふっと笑う。

 

「あなたは優しいわね。でも、あなたはその中には入らないのかしら」

 

「いや、俺も頑張るよ。友達が欲しいからね」

 

……こうやって俺はウソを吐く。陽乃さんが言ったように周りとある一定の距離を置いているくせに……。

 

前は気付くことはなかった。俺が無意識に人との距離を取っていた。それなのに友達が欲しいと言っていた。

 

俺がそうだと気付いてのは、エルたち、俺が育てていた子猫たちを殺されたときだろう。不良たちをボロボロにした後、今までの自分がウソであったことを知って泣き崩れたな。

 

あの後カレンが来てくれて慰めてくれたから、俺は持ち直せたんだ。

 

そして俺はまたウソを吐いて、今まで通りの自分であろうとしたわけだ。

 

そういえばあの日を境に呼び方を変えたな。

 

昔は『言峰さん』と『岸波さん』って他人行儀だったもんな。まぁカレンがそうしろって言ってきたんだけど。

 

陽乃さんが俺の秘密に気付いたのもあの日の後ぐらいだな。俺ですら気付かなかったんだから当たり前か。

 

そんなことを考えているうちに職員室に着いた。

 

「じゃあ、俺は鍵を借りて家庭科室に行ってくるから先に部室で待っててよ」

 

「わかったわ」

 

俺と雪ノ下さんは一緒に職員室に入ってから、それぞれの行動に出た。

 

 

 

 

 

俺が部室に戻るとみんなが楽しそうに話していた。

 

「何を話してたの」

 

「由比ヶ浜さんにも言ったのだけど、比企谷くんが自分が立派な人間だと言って譲らないものだから」

 

「優しい人とは思うが立派ではないだろ」

 

「お前もか!」

 

「だが、比企谷、人間に立派とかはないんだぞ」

 

みんなが『どういうこと』みたいな顔をしている。ここでまたガトーの言葉が使えるな。でも実際、俺もこれはどうかと思うんだよなぁ。

 

「『人間とは―――奪い、殺し、貪り、そして忘れるもの!おお、まさにスーパーニート!嘆かわしきかな、人間とはそもそもニートなのだ!』と俺の知り合いの僧侶が言ってた」

「ま、マジか!!」

 

「「……」」

 

比企谷は理解したようだが、女性二人は『何を言ってるの?この人』みたいな眼だぞ。

 

「ということは、俺は何一つ悪くないんだな!『働いたら負け』は正しいんだな!」

 

「いや、働くニートもいるらしいよ」

 

「それニートじゃねぇだろ!」

 

「岸波くんの知り合いって、変な人多いわね」

 

「うん、そうだね」

 

話が長引きそうだからこの辺でやめておこう。

 

「そんなことは、置いておいて、そろそろ行こうか」

 

「そうね。ケーキにフルーツを使っているから、新鮮なうちに食べた方がいいわ」

 

「俺もフルーツ使ったから、早く食べてもらいたいし」

 

「やった!ケーキだ!ゆきのん、キッシー、フルーツって何使ったの!?スイカ!?」

 

スイカって野菜だよな…。さすが由比ヶ浜さん。

 

 

 

 

 

そしてときは流れ、仲間が増えた。

 

比企谷が小町ちゃんを呼んで、小町ちゃん経由で桜が呼ばれ、遊戯部といろいろあった材木座がなぜか無理矢理入ってきて、最後に比企谷がすごい勢いで戸塚くんを誘いに行った。

 

計、八人。というか由比ヶ浜さんと戸塚くんって桜と初対面だけど大丈夫か?と思ったがすぐに仲良くなった。これがコミュ力。

 

現在は由比ヶ浜さんが予約したカラオケの前。

 

比企谷と由比ヶ浜さんと材木座が受付に行った。材木座邪魔しちゃダメだろ。

 

「兄さん」

 

「どうしたの桜?」

 

「今日初めて兄さん周りの人たちを見たのですが……」

 

どうして急に黙り込む。

 

「面白い人が多いですね」

 

「それって変な人って意味でしょ。桜それはひどいよ」

 

「い、いえ、そういう意味ではなく、個性的な人たちが多いというか」

 

「そう?俺はこれぐらいなら当たり前だと思うけど?」

 

雪ノ下さん(真面目過ぎ)比企谷(捻くれ)由比ヶ浜さん(おバカ)戸塚くん(男の娘)材木座(中二)。確かに普通ではない気が……。

 

だけどムーンセルにならこの数倍はいるし、これ以上や同じレベルの人なんて結構いたぞ。

 

「でも、兄さんが楽しそうで良かったです」

 

桜は優しいな。もう誰にもあげない。俺だけの妹だ。

 

 

 

 

 

比企谷たちが受付を済ませたようなので、ドリンクコーナーで飲み物を確保してからカラオケルームに入ってそれぞれグラスを持つのだが

 

「はぁ…何やってんだ俺は」

 

「キッシー、気になくていいよ。かなりおいしそうだし」

 

「いや、でもこれじゃあロウソク刺さらないし」

 

「手が込んでんな。なにこれ」

 

「見ての通り、フルーツタルトだ。なんでロウソクの存在を忘れてたんだろなぁ。はぁ……」

 

バカだな。まぁ雪ノ下さんのケーキは刺さるからいいか。はぁ……。

 

「桜ちゃん、岸波さんって、少しアレ」

 

「はい。兄さんはたいていのことはそつなくこなすんですが、……たまに、うっかりなところがありまして」

 

「岸波さん、ハイスペックだ。女の子に好かれるモノを山ほど持ってる」

 

「はい。そこも困ってるんです。手当たり次第にフラグを建ててるんで、勘違いしてる女性も多くて」

 

なんかシスターズが意味がわからない話をしてる。

 

まぁ俺の失態もありましたが無事に由比ヶ浜さんがロウソクの火を消して乾杯。そして拍手。

…………しばし沈黙…。

 

「え!?な、なにこの空気」

 

「なんだかお通夜ではしゃいじゃったーみたいな気まずさが……」

 

「なんででしょうね……」

 

由比ヶ浜さんが驚き周囲を見渡し、小町ちゃんが不安そうな表情で、桜も似た表情でそれに相槌を打つ。

 

「いや、みんなはどうかは知らないけど、俺って誕生日を祝ったことはあるんだけど、誕生日会に行ったことがないから、どうすればいいかわからないと言うか、慣れてないんだよ…」

 

「そうね。私もそんなところよ」

 

「誕生日会とか打ち上げとか何していいかわからないから対応に困るんだよな」

 

「激しく同意。もっとも我は打ち上げになぞ、誘われないがな」

 

俺はすべて裏方だったな。料理作ったりとか。

 

 

 

 

 

そしてケーキの取りわけをしてから血液型占いの話に。

 

戸塚くんA型、材木座AB型、由比ヶ浜さんO型、小町ちゃんO型、桜O型、雪ノ下さんB型、比企谷A型ときて、俺の番なんだが

 

「俺は調べてないからわからないんだよな」

 

「兄さんの血液型はAB型のRhマイナスですよ」

 

「なんで俺が知らないのに桜が知ってるの!?」

 

「父さんから聞きました。かなり貴重な血液型とか」

 

まぁ確かにAB型でRhマイナスは珍しいな。

 

「お前輸血とか大丈夫か?」

 

「うむ、さすがは師匠。我らとは別の次元にいらっしゃる」

 

「なぁ、そろそろ師匠は止めない。俺は材木座を弟子にする気もないし。まずその呼び方は恥ずかしいから」

 

「でも、キッシーのAB型でヒッキーでなくなった血液型占いの信憑性が元に戻ったね」

 

「そうなの?」

 

「うん。AB型って、たいていのことをそつなくこなす人だって。あと変わり者?」

 

「ああ、そうなると岸波って感じだな。材木座とは違って岸波にはピッタリだな」

 

そうか。俺ってAB型なんだな。

 

「それって俺が変人ってことだよね。材木座よりもおかしいってことだよね」

 

「実際に兄さんは普通とは違う思考で考えますから、あってるんじゃないですか」

 

ひ、ひどい!!桜が笑顔で言うところを見ると悪気があって言っていないのがさらに俺の心を抉ってくる。

 

「でも、俺以外にも変人はいるでしょ」

 

「確かにいるけれど、あなたほどではないでしょう」

 

それを雪ノ下さんが言うんですか……。

 

「はぁ……、俺って変人なんだな。唯一の取柄『平凡』だと思ってたのに……」

 

「「「「「「「……」」」」」」」

 

みんな黙っちゃうんだ。

 

 

 

 

 

「んん~、ゆきのんの手作りケーキ、おいっしー!」

 

「そう、喜んでもらえて良かったわ」

 

「岸波さんのタルトもおいしいです!これは岸波さんと結婚したお嫁さんのハードルが高そうですねぇ」

 

そのとき、隣の部屋から大音量が轟いた。

 

「ひゃ!」

 

「またか……、お隣さん、ちょっと騒がしいな」

 

実はさっきから壁叩いたりとかいろいろあるんだけど

 

「なんとなくわかってきたな」

 

何が?みたいな表情の人が過半数、数名はまたか…みたいな表情。もう慣れてきたのか。

 

「お隣さんはある一つのことに反応してるんだよ」

 

「ある一つのことってなんですか?」

 

ここは試しに何か言ってみるか。

 

「じゃあ、『俺、実は彼女がいてもうじき結婚するんだ』」

 

ドンッ!

 

今までより大きく壁を叩かれた。

 

「と、まぁこの、よ、うに……、あ、あの皆さんなんか怖い顔してますよ。って雪ノ下さんと桜!ナイフを持たないで!」

 

その後、いろいろと死にそうになった。

 

「誤解が解けてよかったよ。それでまぁお隣さんは『結婚』」

 

ドンッ!

 

「という言葉に反応してるみたいだね」

 

で、そこから割り出される人物は俺の周りには一人しかいないんだけど。さすがに違うよね。

 

「なるほど、なら今度からその手の話題を出さなければいいんですね」

 

「そうだね。でも、タルトがおいしいって言ってもらえてよかったよ。日頃料理はしてるし、お菓子とかもよく作るから、料理には少しだけ自信があるんだ」

 

「あれで少しと言われると、女性としては複雑なのだけど」

 

雪ノ下さんがそう言うと、他の女性三人もうんうんと頷く。

 

「由比ヶ浜さん以外はみんな今でも料理がうまいんだし、由比ヶ浜さんだって努力すれば料理うまくなると思うよ」

 

「岸波、ウソを吐くのはよくないだろ。由比ヶ浜は壊滅的の間違いだろ」

 

比企谷が余計なことを…。

 

「ウソじゃないさ。俺だって昔は料理がおいしかったわけじゃないんだぞ。ねぇ桜」

 

「え?兄さんは私が小学生になったときにはもう、今ぐらいおいしかったと思いますが」

 

「え?そうだったけ?俺ってそんなに早く料理上達してた?」

 

あ、あれぇ……。おかしいなぁ…俺って中学入ったころに今の腕になったんじゃないの?

 

これはアーチャーとキャスターに感謝だね。

 

「うう、キッシーは小学生のときにはこのレベルだったんだ」

 

「え~、あ~、うん。なんかごめんなさい」

 

これは謝らないといけないやつだな。

 

「あ、料理で思い出したわ」と雪ノ下さんが鞄から買ってきた誕生日プレゼントを渡す。

 

雪ノ下さんがエプロン、戸塚くんと桜が髪留め、小町ちゃんが写真立て、材木座はない。本当に材木座は何しに来たんだ?

 

「最後は俺になるのか」

 

さっきから俺が最後になってばっかりだな。俺は鞄からプレゼントを取り出し、由比ヶ浜さんに手乗りサイズの包みを渡す。

 

「キッシー開けてみていい?」

 

「うん。いいよ」

 

開けてみると、立方体の機械。

 

「こ、これは……何?」

 

「まぁわからなくて当然だね。それを開けてみてよ」

 

「開ける?……こう」

 

由比ヶ浜さんは、よくわからないようだが、その立方体の機械を宝箱を開けるように開けると、この部屋を薄い青、電子の海に似たような色に変わり、白い雪のような光の粒が舞い落ちながら、綺麗な音色が流れる。

 

「綺麗…」

 

「そうね」

 

電子オルゴール。他にもいろんな機能があるけど、オルゴールとしてだけ使ってくれればいいや。充電無用、半永久に動くことができる。簡単にいえば空間内にあるエネルギーを糧にしているわけだ。人には害はない。むしろいい。安眠効果や疲労回復などなど。電子手帳を基準に作ってみた。

 

「なぁ岸波、あんな高そうな物を貰っても、逆に困るだろ」と比企谷が小声で言ってくる。

 

「何言ってんだよ。あれはタダだよ。俺が作ったんだから」

 

俺がそう言うと比企谷は驚いたあと、呆れた顔で

 

「お前って本当に何物だよ」

 

「決まってるだろ。魔術師だ」

 

 

 

 

 

「いやー、みんなほんとありがとー!今までで一番嬉しい誕生日かもしれない」

 

由比ヶ浜さんはプレゼントの山を見ながら言う。

 

そこから誕生日の話になったのだが、比企谷の家の親が適当だと言う話になり

 

「なんせ、俺が八月八日生まれだから八幡ってつけたくらいだ」

 

「ほんとに適当だ!」

 

「けれど、名前の付け方なんてそういうものではないの?私だって似たようなものよ。生まれたときに雪が降っていたからってだけだもの」

 

「あ、私もそんな感じでした。桜が咲いていたので桜と付けたようです。他にも理由はあったようですが、これが一番しっくりきます」

 

それから材木座の名前はじいちゃんに付けてもらったとか、戸塚くんは彩りを加えるで彩加とか人それぞれ名前を付けてもらった理由などを話していく。由比ヶ浜さんは知らないらしい。

 

「岸波くんの白野も珍しい名前よね。女の子らしくて」

 

「いや、俺より戸塚くんの彩加のほうが女の子らしいし、比企谷の八幡のほうが珍しいと思うけど」

 

「ボクそんなに女の子らしいかな?」

 

みんなが頷く。名前どころか性別以外は女の子だよね。

 

「まぁ俺も由比ヶ浜さんと同じで名前の由来はしらないね」

 

ムーンセルでモデルの人間から作られた情報体の一つで、生まれたころから岸波白野だったんだし、この世界でも俺自ら白野って名乗っただけだし、父さんの名字が奇跡的に岸波だったわけだし。

 

 

 

 

そろそろ飲み物がなくなってきたなぁ。取りに行くか。

 

俺が立ち上がったら、比企谷も立った。

 

「比企谷も飲み物取りに行くのか?なんなら俺が行こうか?」

 

「そうしてもらえたら楽なんだが、他のやつらのも取ってこようかと思ってな」

 

「なるほど、なら手伝うよ。さすがに八人分は多いだろ」

 

「おお、なら頼むわ」

 

俺が雪ノ下さんと桜の紅茶と小町ちゃんのコーラ。

 

比企谷が由比ヶ浜さんのコーラと戸塚くんのコーヒーと材木座の……カレー?だったっけ?

 

 

 

 

 

俺と比企谷がドリンクバーの前で頼まれた飲み物を用意していると、大音量で音楽と歌声が聞こえてきた。

 

「隣の部屋の人だな」

 

「そうだな。確か『結婚』だかで反応するんだよな。平塚先生か?」

 

「俺もそう思ったけどさすがに違うだろ。って比企谷、カレーがないぞ」

 

「マジか。仕方がねぇから材木座にはサイダーで我慢してもらうか。それより隣にあまり騒がれても困るから、ちょっと注意しておいたほうがいいかもな……」

 

「大丈夫か……?心配だから俺もついてくよ」

 

俺と比企谷は隣の部屋の前まで行ってから軽くノックをする。だが、音が大きすぎて聞こえないようだ。

 

「んー?聞こえてないのか?まぁ、ちょっと覗いてみるか」

 

そう言って比企谷は慎重にドアノブを回し、僅かな隙間から覗き込む。俺も比企谷の上から覗いてみると

 

「こ、これは……」

 

「あー、ああ、平塚、先生、か?うん、ひとりぼっちだし、平塚先生で間違いなさそうだな」

 

平塚先生はマイクを握りながらも、脱力した様子でぼーっと画面を眺めている。

 

「ふっ……ラブソングなんて詐欺で欺瞞でウソばかりだ……。歌う気にならないなぁ……。そのうえ隣は結婚だのなんだの楽しそうに騒いでるし……。リア充、爆発しろ……」

 

その言葉を聞いて、俺たちはドアを閉じた。だが、漏れる嗚咽の声は聞こえてくる。

 

「はぁ……。これは辛いな……」

 

「ふっぐっ、ぐすっ……ひ、平塚先生……。誰かもうほんと貰ってやってくれよおぉ……。っとお、やべ、こっちにくる」

 

ほんとだ、って比企谷もそこそこ気配を読むのうまいな。

 

俺と比企谷はドリンクバーまで走った。

 

そこへ疲れた表情の平塚先生がくる。

 

「はぁ、喉渇いた……。おや?比企谷、岸波。君たちがこんなところにいるとは驚きだな」

 

「お、お疲れ様です。せ、先生こそなんでここに……」

 

お、おいそれを聞いたらダメだろ。

 

「私か。私は……、ま、まぁそのストレス発散だ。君たちは……ああ、由比ヶ浜の誕生日会か。楽しんでいるかね?」

 

「はい」

 

「まぁ、そうっすね」

 

比企谷が答えると、平塚先生は穏やかな笑みを浮かべる

 

「……そうか。ああ、失礼、一服させてもらうぞ」

 

一言断ってから胸ポケットから煙草を取り出し、咥え火をつける。

 

「―――比企谷もここ最近で少し変わったのかな。以前の君なら誕生日会になどこなかっただろう。どういった経緯であれ、成長の兆しが見えるのは教師として喜ばしいことだ」

 

やはりこの先生はしっかりと生徒を見て、その本質を見極めているんだな。こんな優しい先生なのになんで結婚できないんだか。

 

「…先生。せっかくだし、顔、出していきませんか?」

 

比企谷が先生の言葉に心を打たれたのか、平塚先生を誘った。

 

「そうですね。平塚先生が来てくれればみんな喜ぶと思いますよ」

 

「ん?誘いは嬉しいのだが…(さっき、由比ヶ浜にはパーティーと言ってしまったしな…万が一にも婚活パーティーを追い出されたなんてバレたら)…いや、遠慮しておこう。水入らずを邪魔しても悪いしな」

 

「邪魔なんてことないっすよ。年代違い過ぎて全然知らない歌、歌われても拍手くらいはしますよ!」

 

「はい。しっかり……って比企谷!何言って――――」

 

「衝撃の、ファースト・ブリットォ!」

 

「ぐはっ!」

 

比企谷が倒れた。

 

「撃滅の、」

 

あ、クソッ!比企谷に気を取られていて、逃げるタイミングを逃した。ってなんで俺まで。仕方がない、ここはガードで…ま、間に合わない!

 

「セカンド・ブリットォ!」

 

 

 

 

 

「酷い目にあった……」

 

「岸波、お前なら避けれたんじゃね」

 

「タイミングが遅かった。平塚先生には魔術なしだと、クマに遭遇してそれを倒す気で挑まないといけないレベルだと思う」

 

「あの人何者だよ……」

 

平塚先生はサーヴァントにしたら、バーサーカーだな。あれ?ガトーのバーサーカーと声が似てるな。

 

俺と比企谷はそれぞれドリンクを持って自分たちのカラオケルームの前までくる。

 

「ちょっと待って、今開けるから」

 

俺はドア開ける。

 

「おかえり、八幡、岸波くん」

 

戸塚くんが笑顔でお出迎え。比企谷大喜び。

 

一人一人に飲み物を渡していき、カラオケなので歌うことになったのだが、俺ってムーンセルで楽器とかやったことあるけど、歌はあまり歌わないな。最近はマネージャーとしてセイバーとエリザベートのボイストレーニングに付き合わされてるけど。

 

あのユニットに助け舟としてキャスターを入れた。キャスターって歌うまそうだし、なんか文房具を武器にしそうなの声だし。

 

で、ペアで歌う流れらしく

 

「兄さん。私と歌いませんか?」

 

「いいけど、俺、歌がうまいかわからないよ」

 

その言葉をあの人はしっかり聞いていたようだ。

 

「岸波くん、勝負しましょう」

 

「え?どうして急に?」

 

「思ってみれば、私たちの勝負でまだカラオケはなかったわよね」

 

「そ、そうだった、かな?」

 

これはやばそうだな。雪ノ下さん絶対にうまいじゃん。

 

「そうよ。これが最後の勝負になりそうね」

 

「いや、まだ他にやってないこととかあるでしょう。……だが、勝負というなら受ける。俺には桜という美声の持ち主が付いているからな」

 

でも、美声=歌がうまい、ではないんだよな。いや、桜は歌がうまいのは知っているから俺が足手纏いにならなければいいだけ。

 

「それに俺も楽器ぐらいならいろいろやってるし」

 

「そうなの?」と由比ヶ浜さんが尋ねてくる。

 

「えーっと、ギター、ベース、ドラム、ピアノ、琴、ハープ、パイプオルガン、魔笛?……」

 

ムーンセルの英雄さん方から習っている楽器などを指を折りながら言っていくと

 

「おいおい!!途中から変なの入ってこなかった!?ハープまではいい、パイプオルガンと魔笛ってなんだよ!?」

 

「兄さん。本当に何時も何処で習ってくるんですか?」

 

「さすがAB型。ミステリアスですね」

 

「レベルが違うと思うけど……」

 

「ふむ、師匠はやはり別格だな!」

 

「と、まぁ勝負は受けるよ。雪ノ下さん」

 

俺がそう言ったあと、「まもなく、演奏を開始します」と機械の声が響く。

 

「ゆきのん、ほらほら、始まるよ!」

 

「由比ヶ浜さん、マイクを」

 

こうして由比ヶ浜さんの誕生日会は盛り上がっていくのであった。

 

 

 

 

 




次回は7.5巻の誕生日会のあとのゲームセンターの話にしようかな?

オルゴールの音はCCCのタイトル画面のBGMをイメージして下さい。ボクあのBGM大好きなんですよ

ザビ男の血液型ですが、決まりがないので、血液型占いで一番近そうなAB型にしました。
Rhマイナスは勢いです

それではまた次回!!

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