やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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ザビ子登場。ザビ男どうなる!


岸波白野、娘ができました。

 

 

「それで兄さん、この子は誰との子ですか?」

 

「誰との子と言われても身に覚えもないんだけど……」

 

俺は今、桜から家族会議という名の尋問を受けている。

 

場所は居間。

 

机を挟んで俺と桜が向かい合うように座っている。俺の娘(仮)俺の膝の上に座っている。

 

「兄さんに酒癖があったなんて……」

 

「飲んだことないから!」

 

何その『酔った勢いでいくとこまでいっちゃった』みたいな感じ。

 

「じゃあ誰ですか?雪ノ下さんですか?言峰さんですか?それともあの雪ノ下さんのお姉さんですか?」

 

「いや、違うから」

 

だって俺童貞だし。

 

「それに桜、普通に考えてみてよ。俺は17歳(戸籍上)だよ。そしてこの子は見た感じ五歳くらいじゃないか」

 

俺がそういうと女の子は手帳に『四歳。もうじき五歳になる』と書いた。

 

なるほど、この子は四歳か。

 

「そうなるとだよ。俺はこの子を親だとしたら(戸籍上では)12~13歳でそういう行為をしたってことになるんだよ。普通に考えればこの子は俺の子ではない」

 

俺がそう言うと、俺の娘を名乗る『岸波白乃』という少女は涙目になりながら、俺を見つめてくる。

 

えぇ……マジか……。

 

「兄さん!何で責任を持とうとはしないんですか!?兄さんの子供でしょう!」

 

「もう俺の子って決まってるの?」

 

「だって、兄さんですし」

 

「俺だったらこの年で四歳の娘がいてもおかしくないの!?」

 

桜には俺に隠し子がいて当たり前って思われていたのか?

 

ちょっとどころか、すごくショックなんだけど……。

 

「じゃあ桜、別の考え方をしよう」

 

「別の考え方ですか?」

 

「そう。この子が生まれる前だから五年前ってことかな?五年前、俺は小学校六年年生ぐらいだ」

 

「はい、そうですね」

 

「ここでさっき桜が何故かこの子の母親候補にあげた三人を入れてみると、雪ノ下さんは留学、カレンとはまだ仲良くない、陽乃さんは………知らない。だからこの三人は違うってことに……」

 

「それは違います!」

 

桜がダン〇ンロ〇パみたいな感じで、俺の矛盾?を打ち抜く。矛盾あったかな?

 

「何か違うの?」

 

「もしですけど、雪ノ下さんの留学の理由が兄さんの子を身籠ったからだとしたら………」

 

「………マジか」

 

俺は頭を手を当てて悩み始める。

 

「いや、悩むまでもない。それだけはないよ」

 

「はい、私もそう思います」

 

「なら言わないでよ」

 

桜ったら冗談とか言っちゃって、可愛いな。

 

でも、これ以上はわからないな。どうしたものか。

 

「簡単な方法があったな」

 

えーっとなんて呼ぼう。まぁ白乃でいいか。

 

「ねぇ白乃。白乃のお母さんって誰?」

 

今更だが、本人に聞いた方が早い。

 

しかい、自分と同名の人を呼ぶって変な感じだな。しかもそれが娘って……。

 

俺の質問を聞いた俺の娘こと白乃は俺の膝から降りて、リュックサックの中を漁りはじめた。

 

そして一枚の封筒を取り出して、俺に手渡す。

 

「これを読めと?」

 

「………」コクコク

 

白乃は頷く。

 

やっぱりこの子って喋れないのかな?

 

俺は封筒を開けて中に入っていた手紙を読む。

 

『 私の大切な人へ

 

 私はもう長くはありません。ですからこの子はよろしくお願いします。

 身体の弱い私を許して。

 今でもあなたを大切に思っています。

                               Mより 』

 

「………」

 

Mって誰?

 

五年以上前に出会った頭文字がMの人………いないな。

 

雪ノ下雪乃、岸波桜(一応)、言峰カレン、雪ノ下陽乃。

 

一応、カレンのお母さん、クラウディアさんも入ってるか。絶対に手は出さない自信はある。だって死にたくないから。

 

このメンバーの中でMが付く人がいない。

 

そうなると導き出される答えは、月の方だな。

 

英雄の人たち(女性)でMが付く人は……いないな。

 

ネロ・クラウディウス、玉藻の前、エリザベート・バートリー、フランシス・ドレイク、ナーサリーライム、ジャンヌ・ダルク、アタランテ

 

最後の二人が入ったのは俺が中学二年の後半、三年に上がる前。だから違う。

 

そうなると……BB、リップ、メルト。 ん?メルト? もしかしたら……違うな、再会したのは今年だし。

 

だとすれば俺の周りの女性ではないんだな。

 

じゃあ誰だ?

 

M………ムーンセルか? 可能性は………あるな。

 

俺は白乃を見ながら考える。

 

この子は間違いなく俺と関係はある。

 

見た目からして女のときの俺にそっくしだから。

 

そうなるとこの世界でこの子を産むことができる人物は俺の元両親。だが既に殺されてしまったから違う。

 

だとすればムーンセルが関わっているってことは間違いないと思う。

 

そこまではいいけど、情報が足りないな。

 

そういうことになると俺がすべき行動は………この子を近くに置いておく必要がある。

 

なので怖いのを我慢してウソを吐こう。

 

「桜……この子は俺の娘ってことでいいかもしれない」

 

「兄さん……誰とですか?」

 

桜から禍々しい感じモノを感じる。ガクブル

 

「わ、わからりましぇん」

 

怖すぎて噛んだ……。

 

「だ、だけど桜も見たらわかるかもしれないけど、この子って女になったときの俺のそっくりでしょう。なんて言うか他人とは思えないんだよ」

 

俺がそういうと桜から禍々しいモノが消えていく。よ、よかったぁ。

 

「確かに姉さんにそっくりですけど……それじゃあどうすればいいんですか?」

 

どうすればいいって何を? 俺への処罰とか?

 

「この子は家で育てよう。俺が父親としたら桜は……母親代わり?」

 

「に、兄さん」

 

桜は顔を赤くして俯いてしまった。心なしか嬉しそうに見える。

 

ただ、それを反対する者が出ていた。

 

俺は肩を叩かれたので、そっちを向くと白乃が頭を横に振っている。

 

白乃は手帳に字を書き始めた。そしてそこにはこう書いてある。

 

『桜はわたしの嫁。お父さんでもそれは譲れない』

 

「………」

 

流石は俺の娘。

 

 

 

 

 

あの後昼食を取り、白乃に家の構造を教えたり、エル紹介したり、三人でスーパーに買い物に行ったりした。

 

現在、俺はいつも通りのトレーニング(今日は八極拳)。桜はなんだかんだで白乃のことが大好きになり、一緒にお風呂に入っている。

 

じゃあ、白乃のことを考えるとしよう。

 

まずあの子は何処から来たか?そしてどうして俺を知っているのか?

 

答えは紛れもなくムーンセルが関係してだろう。

 

あの手紙のMはムーンセルって仮定して考えると、一昨日や昨日のエネミーと同じ感じでいいのだろうか?

 

俺を殺すための何か……。

 

いや、違うと思う。手紙の内容やあの白乃という女の子の行動はそういったモノではない。

 

そうなると敵ではないのかな。

 

敵味方って判断よりはあの子同様に家族って考えよう。桜も気に入ったみたいだし。

 

一応、あとでみんなに相談してみるか。

 

「今日のトレーニングはこれぐらいでやめにするか」

 

俺は八極拳の型をやめる。

 

人の視線を感じる。

 

視線の方を見るとそこには、お風呂上がりの俺の愛娘?の白乃ちゃんがいるわけだ。

 

白乃は今、子供の頃の桜の服を着ている。捨てなくてよかった。

 

何故かあの大きなリュックサックの中には服など日用品は入っておれず、手帳、ボールペン、俺に渡した手紙、そしていろんな種類の飴が大量に入っていた。白乃曰く、大好物だそうだ。

 

「どうかした?」

 

「………」コクコク

 

白乃は頷いてから、手帳に書いてある文字を見せる。

 

『お父さん、お風呂入っていいよ』

 

「知られてくれてありがとう」

 

俺はしゃがんで白乃の頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。

 

そして撫でるのを止めると白乃はまた手帳に文字を書き始める。

 

手帳にはこう書いてあった。

 

『さっきのお父さん、アサシン先生みたい』

 

 

 

 

 

さて、俺は湯船に浸かってさっきの白乃の台詞を思い出す。台詞というより文字か。

 

「『さっきのお父さん、アサシン先生みたい』か……」

 

アサシン先生。ユリウスのサーヴァント『李書文』を知っている。

 

これで完全にムーンセル側なんだが、アサシン先生を知っているってことはユリウスと戦ったことがあるってことになるんだよな。

 

そういえば、俺が女になったときのメルトの言葉が少し不思議だったな。

 

『ハクノ、私はその姿も嫌いではないけれど、その姿だとアーチャーのほうが好みだわ。なるべく早く戻ってくれないかしら』

 

この台詞だとメルトは女の姿の俺を知っているってことになるんだよな。

 

そうなると、名前、姿、記憶などを含めて考えるとあの女の子、岸波白乃は俺、岸波白野と同一人物に近い存在ってことだよな。

 

まぁわからない場合はBBに聞けばいいか。むしろ白乃をBBに合わせればいいのか。

 

思い立ったら即行動と行きたいが、今日は疲れたからもう少しゆっくりお風呂に浸かるか……。

 

『―――パイ、センパイ』

 

ん? BB?

 

『はい、センパイが大好きなBBちゃんですよ~。先程先輩が私に聞きたいことがあるっと考えていたみたいなので、話にきました』

 

最近思うのだが、俺の思考や行動がムーンセル側に漏れすぎてると思うのだが本当に大丈夫なのだろうか?

 

『大丈夫じゃないですか?こうやってセンパイと話す条件は、センパイを見ていないとできないようですし』

 

…………そうなるとBBは今、俺の入浴を覗いているってこと?

 

『………では話を戻しますけど』

 

戻すな!ちょっといいかな?流石の俺も入浴を覗かれたら黙ってないよ

 

『だ、大丈夫ですよ、センパイの大切な部分はお風呂場の湯気とか怪しい光の線とかで隠れてますから』

 

何その最近のアニメの隠し方みたいなの?それに俺の裸を見たがる人なんて………いない、よね?

 

『どうでしょうか? セイバーさんやキャスターさんは暴走しそうですし、エリちゃんやリップは顔を真っ赤にしながら目を手で隠しながらも指の間から見てるイメージがありますね。それでメルトは舐め回すように』

 

いや、もういいです

 

何故だろう、BBが言った光景が想像できてしまう……。

 

えーっと、それじゃあ……何の話だったけ?

 

さっきの衝撃がデカすぎて吹っ飛んでしまった。

 

『センパイが私に聞きたいことあるみたいだったのでそれを聞きに来たんですよ』

 

確かにそんな感じだった。

 

じゃあ、BBが俺の生活を見ている前提で単刀直入に聞くんだけど岸波白乃、俺の娘と名乗っているあの女の子は何者?

 

『あの人はセンパイですよ』

 

なるほど予想してはいたけど、そういうことか。

 

『岸波白乃はセンパイ、岸波白野の女の可能性です。センパイには複数の可能性があります。例えば、センパイのサーヴァントがいい例です』

 

俺にはセイバー、アーチャー、キャスターっていう可能性があり、場合のよってはバーサーカーって可能性があったわけで、それが月の裏側では代わりにギルガメッシュになったわけだ。

 

『センパイに複数の可能性があるので、女性の可能性があってもおかしくないってことですね』

 

おかしいと思うけど、今回は置いておこう。

 

やっぱり白乃には聖杯戦争や月の裏側での記憶があるんだね

 

『はい、あちらセンパイにもムーンセルでの記憶はあります』

 

でも、どうして俺の娘って名乗ってるわけ?

 

『それはセンパイの子供ですから』

 

………はい?今何と?

 

今のBBの言葉が信じがたいものだったのでもう一度聞き直す。

 

『ですから、白乃センパイはセンパイの娘さんですよ』

 

そ、そんな………俺、童貞なはずなのに知らない間に………

 

ショックが大きい。なんでかって?平塚先生が可哀想だから。それと気になることが。

 

それじゃあ、俺のお嫁さんは誰ですか?

 

『私です。と言いたいところですけど、いませんよ』

 

そうなの?

 

『はい、白乃センパイはムーンセルがセンパイの遺伝子で作ったんです。それで今の四歳の姿になった白乃センパイをそちらの世界に送り出したって感じです』

 

白乃はムーンセルによって機械的に作られた子供ってこと?

 

それ以前にムーンセルは何で俺の遺伝子を勝手に使って子供作ってんだよ……。

 

『そんな感じですね。ですから白乃センパイはセンパイと違ってこの世界に生まれたというよりは、気が付いたらこの世界にいたって感じになるんでしょうか?』

 

そうなると疑問があるな。

 

それならBB、どうして白乃は俺を父親って思ってるんだ?

 

BBの説明だと、元の世界から来ただけで、俺が父親だという情報は得ていないはずだ。

 

『たぶん、ムーンセルが白乃センパイがこちらの世界に来るとき教えたんじゃないですか?』

 

途中でムーンセルの介入があったわけか……。そうなるとあの手紙のMって言うのはムーンセルって考えで間違ってなさそうだな。

 

ねぇBB?ムーンセルって何がしたいの?

 

『と言いますと?』

 

だってさ、俺を転生させてと思えば、殺そうともするし、それに今度は俺の娘を送ってくる、何を考えているのかわからないんだけど

 

『神の頭脳は人には理解なんてできませんよ。ただですね、ムーンセルには複数の思考が存在したりもするんですよ』

 

複数の思考?

 

『センパイを生かそうとする考えや、センパイを殺そうと考えなどがあるってことです』

 

この発言から、手紙は俺を生かそうとした思考のほうのでいいのだろう。そうなると白乃は俺を殺そうとしていたエネミーとは違うわけだ。そういうことが分かればいいか。一応、BBに尋ねておこう。

 

なら白乃は特に俺に害をもたらしたりはしないんだね

 

『親に害をもたらす娘なんて………いるといえばいますね』

 

間違いなく今リップやメルトのことを考えたな。まぁ白乃は娘のとして接していればいいってことだな。

 

ありがとうBB何となくだけどわかったよ。白乃は父親として大切に育てるよ

 

『あ、はい、わかりました。そういえば、センパイはサーヴァントの皆さんや白いのとのエンディングを迎えていませんよね』

 

そうだけど、それがどうかしたの?

 

『たぶんですけど、白乃センパイは全てのエンディングを迎えていると思いますよ』

 

え?マジで?

 

『ただ、その代りコードキャストやムーンセルにダイブするみたいなことをできないと思います』

 

思いますってことは確信を得てはいないんだね

 

『私にもわからないことぐらいあるんです。それではセンパイまた今度お会いするときまで』

 

こうしてBBとの通信が切れた。

 

そろそろお風呂から上がろうか。

 

 

 

 

次の日

 

昨日BBから白乃の情報をある程度もらったわけだけど、わからないことはまだあるんだよね。まぁそれは後々本人が話してくれるだろう。

 

「それじゃあ行こうか」

 

今日は白乃にこの周辺をブラブラと歩きまわりながら説明しようと思っている。

 

白乃はいつものようにコクコクと何も喋らずに頷きだけで返答。

 

俺は白乃と手を繋いで家を出た。

 

今回一番の目的は俺や桜が学校に通っている間に白乃を預かってもらおうと思っている場所に連れて行こう。

 

そう、ここだ。

 

家から白乃の歩幅に合わせて歩いて十五分くらいで、俺は通いなれたあの店の前まで白乃を連れてきた。

 

『お父さん、ここって料理屋?』

 

白乃は手帳に文字を書いて俺に見せる。

 

「そうそう、たぶん俺や桜が学校に行っている間に白乃がお世話になるかもしれない場所」

 

『?』

 

手帳にクエスチョンマークを書いて小首を傾げる。手帳に書く意味あった?

 

「まずは中に入ろうか」

 

俺は扉に手を掛けて「お邪魔します」と言いながら中に入ると。

 

「いらっしゃいませ。って白野先輩ですか」

 

カレンは嫌そうな顔を浮かべる。え?もしかして俺って嫌われてる?

 

「カレンさん、そこまで嫌そうな顔をしないでも………」

 

「いえ、別に白野先輩が嫌いってわけではありませんよ。ただ、無駄な労働になりそうだと思っただけです」

 

それってどうなんだろうか?

 

「大丈夫だよ、今回は客としてきたわけじゃないから」

 

俺がそう言うとカレンはキョトンとした顔をしてから、俺の横にいる白乃を見てから嫌な笑みを浮かべる。

 

「白野先輩ついに誘拐ですか?」

 

「違うから!」

 

「それでは隠し子?」

 

「………」

 

あらがち間違ってないよな。

 

俺の変な間をカレンは感じ取ったようで、少し焦ったような表情をする。

 

「え、もしかして白野先輩、本当に……」

 

「俺の家の、新しい家族と言えばいいのかな?」

 

俺は白乃に視線を下すと、白乃は手帳に『私は岸波白乃。お父さん、岸波白野の娘です。これからよろしくお願いします』と書いて、カレン見せる。

 

「ということらしいからよろしくね」

 

もうどうしようもないから笑顔でそう言っておこう。

 

そしてカレンは聖母のようなとても優しい笑みで

 

「白野先輩、店の裏に来てください」

 

今までのカレンからは感じたことがないような感覚だなぁ。ああ、何故だろう、すごく怖い。

 

「いや、ちょ、ちょっと話し合わない?」

 

「ですから店の裏に来てください」

 

「………わかりました」

 

俺は白乃に「少し待っててね」と頭を撫でてからカレンの後をついていく。

 

そのあと、俺はカレンからあの赤い布『マグダラの聖骸布』とか黒鍵とかいろいろと使われ怖い思いをした。

 

半ば死にかけたが、どうにかカレンに白乃のことをわかってもらった。

 

店の中に入ったら、白乃が店長とクラウディアさんととても仲良さそうにしていて、麻婆豆腐を食べていた。まぁお金はしっかり支払させられた。

 

 

 

 

 

あのあと店長に俺が学校に通っている間に白乃の面倒を見てもらえるかを尋ねたら「ああ、いいだろう」と即了承してくれた。

 

この人はなんだかんだで頼りになるかな。

 

それから俺は白乃と一緒にその辺をブラブラと歩き回っている。

 

そして総武校付近に来た時、背後から聞きなれた声が聞こえた。

 

「あ、キッシー?」

 

この声、この俺のあだ名を呼ぶ人物は。

 

俺は振り向くとそこには停車している車から顔を出している由比ヶ浜さんがいた。

 

「あれ?由比ヶ浜さん何処か出かけるの?」

 

俺は白乃と一緒に由比ヶ浜さんが乗っている車に近づくと由比ヶ浜さんも車から降りてきた。

 

「あ、うん、今から家族旅行に行くんだ」

 

「へぇ、それはよかったね。いい思い出作りになって」

 

「それで、さっきヒッキーの家にサブレを預けに行ったんだ。サブレ、ヒッキーに懐いてるみたいだし」

 

まぁ命の恩人みたいな感じだからな。

 

「キッシーはこんなところでどうかしたの?ってその子……ああ!はくのんそっくり!」

 

ナイスリアクションって感じの大声ですね。

 

「この子は、俺の妹みたいなもんかな?」

 

俺がそういうと白乃は頭をプンプンと横に振ってから、手帳に『妹じゃなくて、娘でしょ。お父さん』と記す。

 

「「………」」

 

確かにその通りなんですけどね白乃さん、普通にこの年で娘がいるって結構大事ですよ。

 

「ま、まぁそんな事とは置いておくとして、それじゃあね由比ヶ浜さん」

 

「あ、う、うん。またねキッシー」

 

こうして俺は由比ヶ浜さんに別れを告げて、歩き始めようとすると「ちょっと待ってキッシー」と由比ヶ浜さんに呼び止められた。

 

「ん?どうかしたの?」

 

「あのね、ゆきのんのことなんだけど……ゆきのん」

 

「やっぱり実家で大変だったりするの?」

 

「うん、そうみたい。電話も留守電だったり、メールも返信が遅かったりするの………」

 

やっぱりあの家はいろいろと大変なんだろうな。

 

由比ヶ浜さんも少し暗い顔してるし。

 

「大丈夫だよ。だからそんな顔しないで、今から家族旅行に行くんでしょ。それに由比ヶ浜さんは今まで通り雪ノ下さんのことを大切に思っていれば、うまくいくと思うから。だからいつもみたいな元気な由比ヶ浜さんでいてよ」

 

「う、うん……ありがとう」

 

由比ヶ浜さんは笑顔になってくれた。やっぱり彼女は笑顔が似合うな。

 

「キッシーそういうこと言う相手はもう少し考えた方がいいと思うよ」

 

え!?何で俺そんなこと言われるの!?

 

「そういえば、キッシー。その子の名前なんて言うの?」

 

そのことは白乃の事だろう。

 

「この子は字は違うけど、俺と同じで白乃って言うんだよ」

 

「へぇ、兄妹で同じ名前なんだね。どういう字なの?」

 

由比ヶ浜さんがそういうので教えることにしよう。白乃はさっきから『妹じゃなくて、娘!』と手帳を由比ヶ浜さんに見せようと頑張っている。

 

「字は、俺と同じ『白』と雪ノ下さんの『乃』で白乃って書くんだよ」

 

「ゆきのんの『ノ』ってカタカナじゃないの?」

 

それって、名字の方を言ってるのか?

 

「ごめん、言い方が悪かったね。雪ノ下の『ノ』じゃなくて雪乃の『乃』だよ」

 

「へぇ、それってキッシーとゆきのんの子供みたいだね……あれ?さっきこの子、娘って……」

 

おやぁ……雲行きが怪しいな……。

 

「えーっとキッシーもしかしてその子って、キッシーとゆきのんの」

 

「違います。考えてみて、俺まだ17歳(戸籍上)だよ。さすがに娘は」

 

「あははは、そうだよね。それじゃあキッシーまたね」

 

「うん、また今度」

 

こうして、由比ヶ浜さんは車に戻っていた。

 

由比ヶ浜さんの車が去っていくのを見送ってから

 

「ねぇ、白乃さん。確かに君は俺の娘なんだけどさ、さすがに年齢の問題があるんだ」

 

俺がそういうと白乃は首をプンプンと横に振る。

 

『お父さんはお父さんなの。だから私は娘』

 

意味が分からない文なのだが、何となくわかる。

 

「はぁ……わかったよ」

 

俺は白乃の頭を撫でながら今後のことを考える。

 

これからどうやってみんなに俺とこの子の関係を説明するべきか………。

 

はぁ……今後もっと大変になりそうだな。

 

 

 

 

 




今回はザビ男の娘となったザビ子がどんな感じの子かを説明する回でしたね。といっても、まだわからないことが多いですね

次回はまたザビ子とその辺をブラブラと散歩をします

それではまた次回に!

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