帰ってきた……。
現在俺は家の門の前に立っている。時刻も五時を過ぎているので家で少し休んでから桜たちと花火大会に行く。
「少年よ」
俺が門を通ろうとしたとき背後から店長の声がしたので振り返る。
「あれ?店長どうしたんですか?」
ここにいるのは別に珍しいことではない。たまに俺に八極拳を教えに来てくれるし。
「父上から聞いたが、君は冬木の地へ行ったようだな」
「はい」
「そうか、では一つ尋ねよう」
店長が真面目な表情になる。
大切な話になるのだろう。それ相応の返答をしないとな。
「『紅州宴歳館 泰山』には行ったか」
「はい……」
「ふっ、ならばよい」
「……」
俺の返答に店長は納得したようだ。
大切な話だったな……。
「少年」
「今度はどうかしたんですか?」
「厄介な蟲を連れて来たようだな」
「蟲?」
蟲って冬木にいた使い魔の奴か?もしかして俺まだ見られてるの?気付かなかった。
「どこにいるんですか?」
店長に尋ねると店長は何処から出したのかわからないが、黒鍵一つ出して、「あれだ」と言いながら黒鍵を俺の真上に向けて投げる。
俺の上でグシャという音がなり、俺の近くに冬木で見た蟲が黒鍵に貫かれた状態で落ちてきた。
本当だ。それにしても……気持ち悪いな。
「あ、店長これって誰の使い魔なんですか?」
「冬木で蟲を使うのはマキリだろうな」
「マキリ?」
「現在は間桐と言う。当主の名は間桐臓硯」
間桐……。この世界での慎二との関係者かな?
「では、私はこれで帰るとしよう。少年よ、残り短い人生だ楽しむといい」
店長はそう言って歩き始めた。
あれ?どうして店長が知ってるんだ。
「ちょっと待ってください」
「何かね?」
「なんで店長がそれ知ってるんですか?」
「知り合いに君のことをよく知る人物がいるのだが、その者から聞いたのだよ」
俺のことをよく知る人物?でも俺の未来の話を知っているのって陽乃さんだけだけど、たぶん二人は関わりはないはず。
「その人って誰ですか?」
「英雄王だ」
まさかのAUO!
「今でもよくメールをやり取りしている」
しかもメル友!
「え、え、なんで店長がギルガメッシュと知り合いに?」
理由を尋ねたら店長はためらうことなく話してくれた。
店長の話はこういうモノだった。
店長がまだ聖堂教会にいた頃、ある紛争地で兵士として育てられている子供が魔術を使ったという噂を確かめるために、その地に出向いたときのこと。
そこで店長が目にしたのは、一帯を吹き飛ばすような一撃と、その一撃の発動元に立っていた金髪の五歳ほどの少年だったそうだ。
その子供は自分のことを『英雄王』と名乗ったそうだ。
そこでいろいろと話したり交渉したりして、ギルとメル友になって今に至る。
うん、意味がわからない。
話とか交渉の内容は話してくれなかったし。
まぁその子供は、俺の身体に憑依した英雄王・ギルガメッシュさんなんだろうけど。
もっと詳しく聞きたいのだが店長は既に帰った。
あとでギルに聞きけばいいか。
それよりも早く家に入ろう。
家に入ると、浴衣姿の桜と白乃がいた。
「お帰りなさい、兄さん」
『お父さん、お帰り』
「うん、ただいま。二人とも似合ってるよ。それじゃあ行こうか」
店長と話をしていて休む時間が無くなっちゃったからな。
「あ、兄さん。あの小町ちゃんも一緒に行くことになったんですがよろしいでしょうか?」
「別に構わないけど、どうして小町ちゃん?」
小町ちゃんのことだから比企谷と行くと思うんだが。
「それが、未来のお姉ちゃんの為だとか言ってました」
「未来のお姉ちゃん?」
とても大切そうな気がする。
「なるほど、そういうことだったんだ」
俺は桜と小町ちゃんが決めた集合場所で小町ちゃんに理由を聞いた。
理由は由比ヶ浜さんのために比企谷を花火大会に行かせたのだが、やっぱり心配になったそうだ。別に自分も遊びたいからという理由ではない。
「それに同じ受験生の桜ちゃんも行くのなら、小町も行きたっていいんじゃないかと思いまして」
そう、別に遊びたいわけでは……ない、はず。お兄ちゃんのことが心配な可愛らしい妹のはずだ。
俺が自分にそう言い聞かせていると、小町ちゃんも俺たちを見て疑問に思うことがあるようだ。
「岸波さん?そちらの小さい女の子は?」
小町ちゃんは桜と手を繋いでいる白乃を見て質問する。
「俺の養子で白乃って言うんだ」
と俺が白乃を紹介すると、白乃はコクリと頭を下げる。
「よろしく白乃ちゃん。それにしても岸波さんはいろいろとすごいですね。もう子供がいるとは……(岸波さんルートに入っている女性は前途多難だなぁ。小町もお兄ちゃんが無事にうまくいったら、そのルートに入る可能性があるんだよなぁ)うん、頑張ろう」
小町ちゃんは何かを決意してようだ。
「それにしても混んでるな……」
俺は辺りを見渡しながら呟く。
「そうですか?いつもこんな感じだと思いますけど」
「いや、実は俺って一度も花火大会に行ったことないんだよ」
「え?そうなんですか?」
小町ちゃんは俺の発言に驚いたようだ。
「簡単なことで一緒に行くような相手がいないし。うちの縁側からもここ花火ってよく見えるから」
「でもどうして今回は行くことにしたんですか?」
「誘われたからだね。俺は用事がないようなときに知り合いに誘われたらどこにでも行くよ」
そう、用事がなかったらどこにでも行く。ただブッキングだけは防ぐ、死を見る気がするから。
「じゃあ、今度兄と遊んであげてください」
「それは俺も嬉しいな。俺、未だに同年代の男子とは遊んだことないし。でも、夏休みもう終わるんだよな」
今日で残り三日。遊ぶなら明日が最後って感じになりそうだが、比企谷は動かないだろうな。
「大丈夫です。小町に任せてください」
「え?あ、うん」
もしかして俺、今小町ちゃんに思考を読まれたか?小町ちゃん恐ろしい子。
現在、俺、桜、白乃、小町ちゃんは花火大会の屋台を見て回っている。
そして俺はターゲットも発見。
「お、比企谷と由比ヶ浜さん見つけた」
「え、何処ですか?」
「あそこ」
俺は人差し指で比企谷たちがいる場所を指さす。
「あ、いますね。でも……ちょっと雲行きが怪しいですね」
確かにそうだな。
浴衣姿の由比ヶ浜さんが浴衣姿の女子と話しているんだが、その女子は比企谷のことを嘲笑したように見えた。
それに由比ヶ浜さんとの温度差を感じるな。友達と思っている由比ヶ浜さんと、それに近いがそれとは別の何かを想っている女子。
「よし、ここは俺が鍛え上げた観察眼を使った読唇術であそこの会話を再現しよう」
「おお、岸波さんすごい」
『お父さん。そんなことできるの?』
「兄さん。どんどん変な方向に進んでますよ」
桜に言われてしまったが、正直依頼と戦い以外にこの観察眼を生かせる場所ってないんだよ。
「じゃあ、ちょうど比企谷が話し始めたから始めるよ。『焼きそば、並んでるみたいだから先行くわ』『あ、うん。すぐ行く』」
そして比企谷がその場を離れた。
「「「………」」」
「もう少し早いタイミングで始めればよかったね」
その後すぐに由比ヶ浜さんが、女子と話し終え比企谷の後を追い始めた。
「……追跡は止めようか。由比ヶ浜さんのためにも」
「そうですね。結衣さんにならお兄ちゃんを任せられます」
小町ちゃんがそう言うと、桜が小町ちゃんにあることを尋ねた。
「小町ちゃんは、お兄さんが他の女性のもとに行っても何とも思わないんですか?」
意味深ですね、桜さん。
「確かにお兄ちゃんが小町から離れるのは悲しいけど、それは仕方がないことだし、それよりもお兄ちゃんが幸せになってくれるのが小町は嬉しいから……」
小町ちゃんは少し悲しそうな表情をしているが、すぐにいつもの笑顔になり、お決まりのあの台詞を言う。
「あ、これ小町的にポイント高い」
俺たちは花火が見えそうな場所に移動を始めたのだが、やっぱり人が多いな。
そして、みんなと別れないようにするために手を繋いだりした結果、右手は桜、左手は小町ちゃん、白乃は肩車。完璧だね。
「それにしてもどこに行くべきだろう?」
すると、白乃に頭をポンポンと叩かれた。
「ん?白乃どうかした?」
俺が尋ねると白乃はある方向指さす。
「白乃が指さす方に行けってこと?」
コクリと頷く。
「どうする?」
「私はいいと思いますよ」
「小町もいいですよ」
二人も了承してくれたので白乃を信じるか。
「じゃあ、白乃よろしく」
『任された』
辿り着いた場所は有料エリアの近くだった。
ここに着く頃には既に花火は始まっていたのだが、歩きながらでも見れたので別に問題はなかった。
ただ、ここは人が少ないけど、有料エリアに近いからやめた方がいい気が……あれ?
俺は有料エリアの奥の方に比企谷たちを見つけた。
なんでいるんだろう?……ああ、あの人がいるからか。
それは陽乃さんだ。
たぶん、今回は父親の代理とかかな?
みんなが花火に夢中な中、俺は有料エリアにいる比企谷、由比ヶ浜さん、陽乃さんの三人の方を見ている。
俺は先ほど失敗した読唇術で、三人の会話を盗み聞き?をする。
悪いことってわかってるけど、元はハッカーだから仕方ないよね。
会話の内容は雪ノ下さんのことが主になった。俺の話も出たようだが、俺の未来については話さないでくれたようだな。
そしてクライマックスのゴールデンシャワーが始まる、花火大会もはもうじき終わりを迎える。
「そろそろ移動しようか。混み始めて身動き取れなくなったら困るし」
「はい」
「小町も賛成です」
白乃もコクコクと頷く。
このあと面倒なことに、美少女二人と美幼女一人を侍らせていたように見られたのか、三人組の不良に絡まれた。
俺って女の子といるときよく不良に絡まれるけど、それって俺が悪いのか?
まぁいつものように撃退すればよかったのだが、人の目に付くところでそんなことはしたくないので、白乃は肩車のままで、桜を右腕、小町ちゃんを左腕で抱えながら逃げるという離れ技をしたわけだ。一応、強化スパイクのコードキャストを使ったのでしっかり逃げ切った。
たぶん、三人の体重を合わせれば100Kg近い重さになると思う。
それよりも謝らないとな。
「二人ともごめんね。恥ずかしい思いさせちゃって」
普通は恥ずかしいよな。人前で抱えられるって。
「いえいえ、小町は気にしてませんよ。それより岸波さんって見た目よりも力待ちですよね」
「そうですね。まさか私たちを抱えたまま逃げ切るとは思っていませんでした」
『目指せサーヴァント』
流石に無理だろう、憑依してもらえば話は別だが。
「まぁ鍛えているし、三人とも軽いから大丈夫だよ」
『おお!』
「「……(軽いと言っても同時に抱えている時点で軽くはない気が……)」」
それからはみんなで楽しく会話をしながら小町ちゃんを家まで送った。
そして会話の中である約束をした。
「それでは、桜ちゃん、白乃ちゃん、岸波さんまた明日。小町、明日楽しみです」
「はい、また明日です。私も楽しみです」
『また明日』
「それじゃあ、明日、駅まで迎えに行くね」
「よろしくお願いします」
小町ちゃんは手を振りながら比企谷宅に入っていた。
小町ちゃんと交わした約束は、明日、小町ちゃんが桜と勉強会をするついでに、岸波家に泊まっていくことになったのだ。
久しぶりに夢を見た。
ここは俺の過去。
知らない国で拷問のような毎日を繰り返していたときのこと。
なのにどうしてだろう。俺の過去なのに俺が知らないことが起きている。
『よくも我の所有物を汚したな、汚物どもが』
ああ、これはあの日のことか。
『貴様らには過ぎた一撃だがな。切り裂いてくれる!』
俺/ギルガメッシュは右手に英雄王・ギルガメッシュの切り札『乖離剣・エア』を持ち、一突き。
そしてそこら一帯を吹き飛ばす。
物も、建物も、人も原型を留められないほどの一撃。
まさに神話そのものだろう。誰一人としてこれから逃れることができなかった。
だがそれは違っていたようだ。その場に一人の人間が現れた。
その人物は俺/ギルガメッシュの背後に立っている。
『待っていたぞ、言峰綺礼』
俺/ギルガメッシュが振り返りながらその人物の名を呼ぶ。
『ッ!何故私の名を知っている。貴様は何者だ』
そこにはカソック姿の若い店長―――言峰神父がいた。
『我は絶対にして初まりの王……英雄の中の英雄王、ギルガメッシュ。と言いたいところだが、この身体の本当の持ち主は我ではない。いや、雑種は我の所有物、ならこの身体も我のモノ同然か』
いや、俺の身体だよ。
『まぁいい。言峰綺礼、貴様に命令だ。今後この身体の持ち主、岸波白野に危険がないよう監視し、守れ』
これが店長が言っていたギルとの交渉か。
『貴様は何を言っている。今回の目的は貴様、その身体の持ち主である子供を連れて帰ることだが、それとは別の意味だろう英雄王』
『その通りだ。残りの時間ぐらいは雑種の好きなように生きさせるだけのこと。だが、雑種の力はこの世界では存在しえない力、それを求めてくるゴミ共が現れるだろう。それもここにいたのよりも厄介なのがな』
『それらからその子供を守れと?では、英雄王に尋ねるが私がその命令とやらを受けるとでも』
『ああ、貴様はこの命令は受ける』
『どうして言い切れる』
『決まっている。この身体の持ち主、岸波白野は面白い。この我ですら飽きないほどの人間だ。それを逃すなど愚の骨頂よ』
それから話は続き、言峰神父はこの話を了承した。
了承した理由はギルが用意した秘薬だった。話を聞いてわかったが、このときカレンの母、クラウディアさんは病気を患っていたようだ。そしてギルがそれを治すことができる秘薬を渡した。
『英雄王、別に私にこの子供を育てろと言うわけではないのだな』
『ああ、雑種は朝になったらこの場から離れ、そして数日もすれば雑種を育てる人間が現れる。あとのことはメールで送る』
その後『これが我のメールアドレスだ』とか背後から波紋を生じさせながら一枚の紙切れを取り出して渡した。
なるほど、ここから二人はメル友になったんだな。
ここで夢は終わり、俺はムーンセルの自室にいた。
「今更だが、昔店長から聞いた千葉にいる理由はウソで、本当は俺を監視し守るためにいたんだな」
なんだろう、ギルといい、店長といい、急にいい人に思えてきたな。
あの二人は俺の不幸を見て喜んでるだけの人たちではなかったんだな。
「よし、今からギルにお礼でも言いに行くか」
こうして俺はあの日々から抜け出した理由を知った。
朝になり、いつも通りのトレーニングをやり、桜と白乃と一緒に朝食を食べて、小町ちゃんが使う布団を日干して、昨日メールアドレス交換したから小町ちゃんが駅に着く時間を尋ねて、その時間に間に合うように桜たちと家を出て小町ちゃんをお迎えに行く。
そして駅に着くと、そこには、小町ちゃんと小町ちゃんの分の荷物を持った比企谷が立っていた。
「あれ?比企谷も家に泊まるの?」
「決まっているだろう。お前から小町を守るために俺も一緒に行く」
そういうことか。昨日、小町ちゃんが言っていた「任せてください」ってこういうこと。
「比企谷も一緒に来てくれるなら俺も嬉しいけど、比企谷の言い方だと俺が小町ちゃんを狙ってるみたいに聞こえるんだが………」
「なんか岸波って泊まった女子と一緒に寝てそうだからな」
「………い、いや、そ、そんなことはしないよ」
そうそう、俺からはしない、いつも女の子の方からだから。
と言うか、比企谷なぜそんなピンポイントで見抜いてくるんだよ。俺ってどんなイメージな人間なんだよ。
確かに月では毎日、セイバーかキャスターと一緒のベットで寝てたけどさ……。
「まぁ、案内するから着いていてよ」
家までの移動中はいつものように他愛無い話をした。
そして岸波家に到着。
「デカいな、おい」「桜ちゃんたちのお家大きいな」
比企谷兄妹は予想通りの反応をしてくれた。そう言えば初めて留美ちゃんが来た時もこんな感じだっな。雪ノ下さんは実家が俺の家よりも大きいからそこまで大きな反応はしなかったけど。
「大きいだけで特に面白いモノはないんだけどね」
「そうですね。部屋の数は多いのに家族は私と兄さんと父さんの三人、今父さんはアメリカですから実質二人。ですが父さんのその代り白乃ちゃんがいますから、家族構成としては前と変わらず三人ですね」
「部屋数はどれぐらいあるんだ?」
比企谷は当然のように気になったようだな。
「それは自分の目で確かめた方がいいよ」
こうして、俺は比企谷と小町ちゃんに岸波家の案内を始めた。
「はぁ……お前の家って金持ち?部屋数の多さにも驚いたが、まさか土蔵に道場もあるとは」
現在、岸波家の間取りを教え終わり、俺と比企谷は居間で休息を取っている。
桜と小町ちゃんと白乃は、土蔵にいるエルと戯れている。
「雪ノ下さんの家ほどではないけど確かに金持ちの部類に入るだろうな。父さんは仕事してばっかりだから、お金をあまり使わないしな」
「お前の父親って何やってんの?」
「医者、比企谷も知ってるんじゃないかな?名医トワイス」
「え?マジで?」
「うん。マジで」
さて、ここからだ。ここからどうする。
俺の家に同年代の男子が遊びに来ているんだ。どうする。
ここは本人に聞いた方がいいのか?
「なぁ比企谷」
「なんだ?」
「比企谷はこういう状態どうするればいい?」
「こういう状態ってなんだよ?」
「自分の家に同年代と男子が遊びに来ているとき何をすべきかってこと」
「いや、知らねぇよ。俺もそんな経験ないし、同年代と知り合いの家に入ったのも初めてだしな」
「そうか」
「ああ、そうだ」
「「(まさか互いにこの状況の対処法を知らないとは、シスターズ、早く帰って来い)」」
どうする……。この状況を看破する方法。
誰かから聞けばいいか。この状況をどうにかする方法を。
そう、誰かに聞けばいいんだよ。簡単じゃないか、誰かに聞けば……。
無理だ。そういえば俺の携帯には、こういう状況をどうにかできそうな人のメールアドレスがない。
ん?比企谷は携帯をいじり始めたぞ。確かに暇だからな。だが、比企谷はすぐに携帯をいじるのを止めて、俺のほうを向いて口を開いた。
「なぁ岸波。お前、何かゲームとか持ってるか?」
「ゲーム?」
「ああ、ゲームだ。暇なときはそういったことをした方がいいだろう(さっき戸塚にメールして聞いたら、ゲームとかはどうかって薦めてくれたしな)」
なるほど、ゲームか。
「ゲームはあるけど、あってもトランプ、将棋、オセロ、チェスぐらいだけど」
「確かに二人でできるが、俺とお前じゃスペックに差が出るからダメだ」
「え?俺ってそこまで強くないぞ」
「ウソは止めろよ。お前が弱いわけないだろう」
「いや、ほんとだって前やったけど負けたし」
そう、あの『最強厨』の方に負けたからな。
「じゃあ、やってみるか」
そして、比企谷と勝負をした結果。全勝しました。
「何が弱いだ!俺、一勝もできねぇじゃねぇか!」
「おかしいな?本当に俺、弱いはずなんだが……」
「もうゲームは止めだ。俺は本を読む」
「待って、待ってよ。俺が悪かったからそれだけは止めて」
比企谷は鞄から本を取り出して始めたので、俺はどうにかそれだけは止めてもらった。
「じゃあ、何すんだよ。お前の家にあるゲーム類ってそれだけなんだろ。俺は勝てない戦いには挑まないようにしてるんだよ」
「わかった。ちょった考えさせてくれ」
ゲーム、ゲームだろ。俺が持っているゲーム………。
「あ、あるかも」
そうだ、一つだけあるじゃないか。
「比企谷ちょっと待っててくれ」
俺は居間を出て、自室に向かう。
俺はゲームで思い当たるものが一つだけあった。それは
俺は自分のパソコンを開いて、桜の花のアイコンをクリック。
『あら、ハクノ。今日は随分早い時間ね』
『キ、キシナミさん……』
こんにちはメルト、リップ。それにしてもどうしたの二人一緒って珍しいね
『そうかしら?この部屋が唯一あなたと関われる空間。私たちが揃っていてもおかしくはないわ』
まぁ本人たちが言うならそうなのだろう。
それよりBBに、頼みた、いことが……
BBの名前を出したら二人の視線が鋭くなった。
『キシナミさん……約束、覚えていますか……?』
『ええ、ハクノ忘れたとは言わせないわよ』
そうだったな……。話している本人以外の女性の名前を出したらいけないんだった。
もし出したら、一生忘れられないトラウマをまた植え付けるとか、なんとか。
いや、ちょっと待った。それって夜の会話のとき限定でしょ?まぁBBがダメなら二人にお願いしたいんだけどさ、いいかな?
俺が二人にお願いだと言うと二人はキョトンとした顔で「「お願い?」」と小首を傾げる。
この二人も月の裏側のときと違って、丸くなったよな。
そうそう、お願い。二人に持ってきてもらいたいものがあるんだよ
『も、持ってきてもらいたいモノ、ってなんですか?』
それは、俺がBBに作らされたゲームなんだけど。わかる?
『ええ、何となくだけどわかるわ。それでどうしてそれが欲しいのかしら?』
俺は二人に事情を説明する。
『そういうこと。仕方がないから持ってきてあげるわ。感謝しなさい』
『私も、持ってきます』
一分後。二人は俺が作らされたゲームを持っていた。
『二つあったけど、どっちをご所望?私的にこっちをやってもらいたいんだけど』
メルトが出してきたゲームのタイトルは『全ヒロインヤンデレ間違いなし サクラファイブ』ってゲーム。
流石に、それは止めておきます。比企谷とヤンデレしかいないゲームはやりたくないんで
『そうなると、こっちってことよね』
そしてそのゲームのタイトルは
『ドキドキ 総武学園』
………もしかして、うちの高校がモデルかな?
今回はAUOとマーボーが出会って、実はマーボーは白野くんを守っていた?みたいな感じになりました
そして次回はザビ男、ヒッキー、そしてザビ子三人で、ただただ恋愛ゲームをするだけのお話。完全なるオリジナルなので面白いかはわかりません。ゲームキャラの名前は考えていないので、その役職を名前にします。(例え:妹キャラ⇒妹、幼馴染キャラ⇒幼馴染。みたいな手抜きな感じで)
しかし、自分で書いてなんですが『サクラファイブ』やってみたい……
それではまた次回に!