やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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今回は材木座の依頼です。

それでは楽しんで見て下さい。

前書きは書くことが浮かびませんね。


小説の原稿の感想は素人よりも本職に。

 

 

 

 

 

由比ヶ浜さんが来て数日。

 

今週末に留美ちゃんが家に泊まることが決まって、そのことについて鶴見先生に呼ばれて部活に遅れてしまった。

 

「ん?部室の中から騒がしい声が…」

 

この第08小隊の愛に生きるリーダーや、勇者王に乗ってそうな声は…。

 

「まぁいいか」

 

ノックしてから部室の戸を開く。

 

「遅れました」

 

「遅かったわね岸な―――」

 

「岸波ぃぃぃ!!貴様ぁぁぁ!!」

 

なんだ。よくわからないがモップを振り上げて俺に迫って来る材木座。

 

と言うかモップどこから出した。

 

そして材木座は俺に向かってモップを思いっきり振り下ろしてきた。

 

「危ない!」

 

由比ヶ浜さんの声が響く。

 

確かに危ない。けど材木座の攻撃は俺には遅すぎる。

 

俺は左足を後ろに下げて体を逸らし材木座の攻撃を避ける。

 

そして材木座の手を左手を手刀にして叩いてモップを落とす。落ちてきたモップを叩いた後の左手でキャッチする。

 

その後、突っ込んで来た勢いがある材木座の足を後ろに下げた左足を引っ掛けて転ばせる。

 

「ぐへっ」

 

その勢いのまま廊下へ転がっていった材木座。最後に戸を閉める。

 

この間、一秒とちょっと。他の三人には何が起きたかがわからないだろう。

 

「このモップこの部屋のかな?」

 

俺は左手に持ったモップを部室の後ろにある掃除ロッカーに入れてからいつもの席に座る。

 

「今日は依頼人来るかな?ねぇみんな」

 

「「「……」」」

 

「みんなはいつまで立ってるの?」

 

「「「……」」」

 

「……」

 

返事がない。ただの屍のようだ。

 

「誰が屍だ!」

 

「比企谷。俺の心を読むなよ。ただのドラ〇エネタだろ」

 

あれ?ドラ〇エだっけ?

 

「ね、ねぇキッシー。さっきなにしたの?」

 

「アレはただの防衛手段みたいなものだよ」

 

日頃の鍛錬と俺の目のおかげだね。

 

「俺には材木座が突っ込んで行って、そのまま転がってったようにしか見えなかったぞ」

 

「あたしも」

 

「私はなんとなくわかったけれど…、さすがに早かったわね」

 

「ゆきのんすごい。アレ見えたの!」

 

ガラガラ

 

戸が開き材木座が入って来る。

 

「くっ、我の斬撃をかわすとは…。だが、まだ終わらん!」

 

「いや、お前のボロ負けだろ。材木座」

 

比企谷が材木座にそう言い放つが、

 

「う、うるさぁぁい。八幡。我はこいつ…。岸波白野だけ許せんのだ!!」

 

材木座が鬼のような形相で俺を睨む。

 

どうしてだ?

 

「だそうだ。岸波。お前材木座に何かしたのか?」

 

「そうだよキッシー。あの人怒ってるみたいだから謝ったほうがいいよ」

 

「いや、俺には覚えがないんだけど…」

 

思い当たる節がない。

 

「それなら直接聞けばいいじゃない。ここにいるのだから。その材…なんとか君が」

 

まぁそれが一番だな。

 

「なぁ材木座。俺はお前に何かしたか?さっきみたいなことは俺からやったことはないし、お前に恨まれるようなことはしたことがないと思うんだけど」

 

「き、貴様という奴は…。ええい。この剣豪将軍・材木座義輝が貴様のその首を討ち取ってやる。くらえぇぇ!!」

 

材木座がまた突っ込んで来る。

 

けど今回は椅子に座ってるし、他のみんなにも迷惑がかかるよな…。

 

机を元に戻すのとか、みんな机から遠いからケガはしないと思うけど。

 

避けたり材木座を投げ飛ばすのも簡単だけど、その場合は材木座の気が晴れないだろうし…。

 

「光に、なれぇぇぇ!!!」

 

材木座は俺に殴りかかる。

 

仕方がない。避けずにくらうか…。

 

材木座の拳が俺の顔に当たり俺はバタンと後ろに倒れる。

 

痛いな、後頭部が…。

 

俺は立ち上がり椅子を戻して座り直す。

 

「気が済んだか材木座。これで俺がお前に何をしたか教えてくれるか?」

 

「「「「……」」」」

 

奉仕部の三人と殴った材木座本人も何が起きたのかが理解出来ないようだ。

 

「岸波。お前痛くないのか?」

 

「比企谷。殴られたんだから痛いに決まってるだろ」

 

それに痛いのはなれてるし…。

 

「なんで、さっきみたいに避けなかったの?」

 

「由比ヶ浜さん。今回は椅子に座ってたし材木座が机越しで来たから避けたら机とかが倒れたりして、みんなに迷惑がかかるからだよ」

 

「他にやりようがあったと思うのだけど」

 

「雪ノ下さん。その場合材木座の気が晴れないだろ。俺に怒ってるなら殴らせるぐらいはやらせてあげるよ」

 

「「「……」」」

 

俺の行動が異常なのかみんなが黙ってしまった。

 

「で、材木座。お前が俺に怒ってる理由は何かな?人を殴るくらいだからそれ相応理由だよな?」

 

「……」

 

材木座の顔色がどんどん悪くなっていく。

 

「ど、どうした材木座」

 

すごく心配なんだが。

 

「す…」

 

「「「「す?」」」」

 

「すみませんでしたぁぁ!」

 

そう言った材木座は綺麗な土下座を俺たちの前で披露した。

 

 

 

 

 

「なるほど。ただの逆恨みよね。それ」

 

「はい。申し訳ありません」

 

材木座が怒っていた理由は、同じようなボッチの俺の周りに美形が多いことに対して怒っていたようだ。

 

殴られた俺がバカみたいだ。

 

「でも、材木座。俺の周りに美形が多いのは認めるけど、お前が思ってる関係は何一つないぞ。それなら比企谷も同じようなモノだろ?」

 

「俺はお前とは違うぞ。岸波」

 

「いや。同じだろ。お前も奉仕部にいるなら違わらないだろ」

 

「おい止めろ。俺も材木座に殴られるだろうが」

 

「八幡は別にいい」

 

「ならなぜ俺はダメなんだ」

 

おかしいな。部室の中に美形の二人といるのに俺と比企谷で何が違うんだ。

 

「これを見よ」

 

材木座は携帯電話を取り出して、写真フォルダーを開く。

 

俺と雪ノ下さんが廊下で話している写真。

 

「これはいつもと変わらないと思うけど?」

 

「ってかそれ以前に盗撮だろ。これ」

 

「ゆきのん、警察に電話したほうがいいよ」

 

「ええ。そうするわ」

 

三人を放っておいて材木座が次の写真を見せる。

 

俺とカレンが一緒にお昼食べている写真。

 

「このリボンの色は一年生だな」

 

「うわぁ、この子綺麗だね。外人さん?」

 

「ハーフだよ」

 

「岸波君この子は誰かしら?」

 

雪ノ下さんの目が怖い。

 

「最後にこれだ」

 

材木座が最後の写真を見せる。

 

俺と桜がスーパーで買い物している写真。

 

「すげー仲良さそうだな」

 

「この子も美人さんだね」

 

「これ桜さんよね?」

 

「ゆきのん知ってるの?」

 

「ええ、この子は岸波君の妹よ」

 

「岸波と全く似てないな」

 

「比企谷君。人の家庭に口出すのはどうかと思うわよ」

 

「お、おお、わりぃ」

 

材木座が俺と身近の女の子の写真を見せ終えて一息ついてから。

 

「どれだけの女子と仲がいいだ貴様は!!」

 

「いや、三人だろ。しかも一人は妹だし」

 

「どうせ。携帯のメールアドレスの量も男子より女子のほうが多いのだろ」

 

ギクッ!

 

「ど、どうしてそれを…」

 

「当たりなのかよ」

 

「だ、だって俺に男友達が出来ないからだよ。いや、女友達もいないか」

 

自分で言って悲しい。

 

俺の携帯のメールアドレスの数は11。男子というより男性が父さんと店長こと言峰さんの二人。父さんとはもう連絡は取れないけど。

 

残りの9は全員女性。雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、桜、カレン、留美ちゃん、平塚先生、鶴見先生、店長の奥さんことクラウディアさん、雪ノ下さんの姉の陽乃さん。

 

ムーンセルのほうを合わせるとかなり増えるけど。

 

「キッシーって友達いないの?以外かも」

 

「平塚先生にも言われたよ」

 

「ヒッキーならわかるんだけど」

 

「それも平塚先生が言ってたよ」

 

「だから俺に友達が出来ないって決めつけるなよ」

 

「比企谷君。まだわからないの?」

 

「いや、もう言わないでくれ雪ノ下…」

 

なんでこんな話になったんだっけ?

 

まず材木座がなぜ奉仕部の部室にいるかだな。まぁ依頼だろうけど。

 

「…。材木座ってなんで奉仕部に来てたんだ?」

 

部室に入った瞬間から命を狙われたせいでようくわからなかった。

 

「確かにすごいことが起こりすぎて忘れていたわ。確か彼の病気を治すのではなかったかしら?」

 

「病気?それは奉仕部の管轄外な気がするんだけど」

 

「いえ、比企谷君曰く心の病らしいの。確か病名は…、ちゅーに病?だったかしら」

 

ちゅーに病?聞いたことないなそんな病気。

 

「岸波もその一人だろ」

 

「比企谷。俺もその病気に罹ってるのか…。初めて知ったよ」

 

「お前、この前自分は魔術師の生まれ変わりとか言ってたろ」

 

「確かに言ったな」

 

「そういうこの世ではありえない事が自分にはあるみたいに思っているヤツを『中二病』って言うんだよ」

 

いや、ありえてるよ。俺がそうだもん。今でも魔術(コードキャスト)は使えるよ。

 

「さっき俺を殴る前に言ってた剣豪将軍ってのか?」

 

「そうだ。材木座は室町幕府の十三代将軍・足利義輝をベースにしてるんだろ。岸波のは何かベースにしてきてるもんがあんのか?」

 

ベースも何も自分が体験してきたことだよ。

 

「そうだな。話は長くなるぞ」

 

「そんならいいわ。めんどいし」

 

そのほうがありがたい。雪ノ下さんは俺が魔術こと魔法を使えることを知ってるからな。

 

「まぁ、材木座はその中二病を治したいわけで来たのか?」

 

「ええ、比企谷君の話を聞いた限りはそうだったはずよ。それで、あなたの依頼はその心の病気を治すってことでいいのかしら?」

 

「…。八幡よ。余は汝との契約の下、朕の願いを叶えんがためこの場に馳せ参じた。それは実に崇高なる気高き欲望にしてただ一つの希望だ」

 

材木座は雪ノ下さんに話しかけられたら目を背けて、比企谷のほうを見る。

 

あれか、女性とあまり話さないから免疫がないのかな?いや、これは恐怖的な何かか?

 

「話しているのは私なのだけれど。人が話しているときはその人のほうを向きなさい」

 

雪ノ下さんが材木座の襟首を掴んで無理矢理顔を正面に向けた後、襟首から手を放す。

 

「…。モ、モハ、モハハハハ。これはしたり」

 

「その喋り方もやめて」

 

「……」

 

材木座は黙って下を向いてしまった。

 

その後雪ノ下さんが、材木座の時期外れのコート、喋り方、指ぬきグローブ、喋り方について注意していた。

 

俺も月の裏ではメガネやグローブとか付けてたっけ…。懐かしいな今度メガネ買ってみようかな。なんかPCのブルーライトを減らしてくれるってやつ。

 

「とにかく、その病気を治すってことでいいのよね?」

 

「…あ、別に病気じゃない、ですけど」

 

違うみたいだな。

 

「これって…」

 

比企谷が下に落ちている紙を一枚拾い上げる。あの紙…原稿用紙かな?

 

「ふむ、言わずとも通じるとはさすがだな。伊達にあの地獄の時間を共に過ごしていない、ということか」

 

俺も一枚拾い中身を読む。

 

「これって小説の原稿だよな。ってことは、これを新人賞とかに応募したいから俺たちに読んでもらって、その感想を聞きたいみたいなことか?材木座。それがお前の依頼か?」

 

「ぐぬ。なぜだ岸波、なぜそこまでわかるのだ」

 

「魔術師の生まれ変わりだからね」

 

これ口癖とかにしようかな。

 

「うわぁ、中二だよ」

 

比企谷に引かれた。やっぱり止めるか。

 

こうして、俺たち奉仕部と由比ヶ浜さんは材木座から預かった原稿を持ち帰り、読むことにした。

 

 

 

 

 

ある程度目を通した。内容はまだだけどこれならムーンセルでも読める。

 

ムーンセルには多くの記録が存在するが、材木座が書いたような小説の原稿、言わばまだ名が知られていない者の作品などは記録されない。だが俺の目を軽く通しておけば、その記録はムーンセルの俺の部屋に持っていくことは可能だ。

 

「それじゃ寝るか。あっそうだ。こういうのは本職の人に見て貰うのが一番だろ。アンデルセンに見てもらうか」

 

一応、人類史や色んな愉悦を楽しんだギルにも見て貰うか。

 

自分のことを『裁定者』とか言ってたし。

 

二人には感想をメールで送ってもらうか。

 

そうして俺は眠りについた。

 

ムーンセルで材木座の原稿を三つに増やし、アンデルセンとギルに渡し自室に帰り読み始める。

 

何とか読み終わり、そろそろ起きる時間だが…。

 

「…。ヤバいな…。これをあの二人に見せてしまった。材木座…死ぬなよ」

 

登校前に俺の電子手帳を確認したら二人のメールが届いた。ギルからは一通。アンデルセンからは山のように。

 

「由比ヶ浜さんは読んでないだろうから、無視でいいけど。雪ノ下さんと比企谷は絶対にいい事は言わない。それに俺の知り合いサーヴァント。毒舌と見下しのトップの二人もダメだろうから。俺はよかったことを言うか…。あったかな?」

 

 

 

 

 

部室には雪ノ下さんと向かった。

 

やはり徹夜したようでかなりウトウトしていた。

 

この雪ノ下さんはレアだな。

 

「岸波君。あなたあまり眠そうではないけど、しっかり読んできたのよね?」

 

「ああ、しっかりと読んだよ。今から材木座の原稿の内容言おうか?」

 

「いいわ。ただでさえ眠くて疲れているのにさらに疲れるわ」

 

「そうだね。よく頑張ったね」

 

自分でも気付かないうちに桜にやるように雪ノ下さんの頭を撫でてた。

 

ある程度撫でて手を離す。

 

「き、岸波君」

 

「ご、ごめん嫌だった?つい桜にやるくせがでちゃって」

 

「べ、別に嫌ではないけれど…。こういう人目に着く所では止めてくれる」

 

「わ、わかった」

 

最初のほうは声が小さくてなんと言ってたか聞こえなかった。

 

最後のほうは聞こえたがその言い方だと、目に着かない場所ならいいみたいになる聞こえるな。疲れているから頭が回らないんだろう。今度からはやらない様に気お付けるか。

 

部室に入り、他の二人と材木座が来るのを待つこと数分。

 

「お疲れさん」

 

比企谷と由比ヶ浜さん来た。

 

「…驚いた、あなたの顔を見ると一発で目が覚めるわね」

 

雪ノ下さんの言葉に比企谷が少し引いたようだ。

 

「その様子じゃそっちも相当苦戦したみたいだな。岸波は全く疲れたないな。お前しっかり読んだのかアレ」

 

「読んだよ。雪ノ下さんにも言われたよ。今から内容言おうか?」

 

「いや、止めておく」

 

由比ヶ浜さん読んでないな。

 

「徹夜なんて久しぶりにしたわ。私この手のもの全然読んだことないし。…あまり好きになれそうにないわ」

 

「あー。あたしも絶対無理」

 

「お前は読んでねーだろ。今から読め今から」

 

やっぱり読んでなかった。

 

さらに数分。

 

「頼もう。さて、では感想を聞かせてもらうとするか」

 

材木座は椅子にドカッと座り、腕を組む。

 

言う順番は雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、比企谷、俺の順番だ。

 

材木座は雪ノ下さんに滅多打ちにされ、由比ヶ浜さんにとどめを刺された。

 

「ぐ、ぐぬぅ。は、八幡。お前なら理解できるはずな。我の描いた世界、ライトノベルの地平がお前ならわかるな?愚物どもでは誰一人理解することができぬ深遠なる物語が」

 

比企谷が材木座に微笑んで、

 

「で、あれって何のパクリ?」

 

「ぶぶっ!?ぶ、ぶひ……ぶひひ」

 

材木座がのたうち回っている。

 

「これは、俺が言うまでも無いんじゃ…」

 

「いや、お前は由比ヶ浜のときに言ったろ、感想は言う奴は多いほうがいいって。言ってやれよ、これも材木座のためだ」

 

お前少し喜んでね?でも材木座のためか…。

 

「わかった。全力を持って行かせてもらう」

 

材木座は比企谷の言葉で戦意喪失しているが、仕方がないな。

 

「材木座。俺はこの原稿を読んだあと、みんながお前に酷いことを言うってのはなんとなくわかっていた。だから俺はこの作品のいいところを探そうと頑張った。だけど無理だったよ」

 

「……」

 

材木座はもう駄目だな。瞳から光が消えている。

 

「岸波…。お前は材木座に恨みでもあるのか?ひどすぎんだろ」

 

「比企谷くん。あなたは人のことは言えないわよ。それに岸波くんは理不尽な理由で殴られているわけだし、恨んでもおかしくないわ」

 

今回は二人を無視して材木座に語り続ける。

 

「だけど、それはそれでいいと思うんだ。俺たちに理解されなくても他の人が理解してくれると思うからな」

 

「岸波…」

 

材木座の瞳に光が戻った。

 

「ヌハ、ヌハハ、ヌハハハハハ!そうだ。そうなのだ。たった四人意見でへこむわけにはいかぬな!礼を言うぞ岸波」

 

「ああ、なぁ材木座。俺たちみたいな素人に感想をもらっても意味はないだろ」

 

「うむ。そうとも」

 

「だから、俺の知人の童話作家と多趣味の金持ち、自称『裁定者』の意見を聞いてきないか?昨日頼んで読んでもらったから、感想はもうあるぞ」

 

「ほ、本当か!き、聞かせてもらえるか!!」

 

「ああ、ただ死ぬなよ」

 

「「「「え」」」」

 

最初はギルでいいか。一通だし。

 

俺はズボンのポケットに手を入れてから電子手帳をイメージして取り出しす。

 

まるでポケットの中に電子手帳が入っていたように見せるため。

 

「まずは金持ちのほうからね。えっと、『我にこの汚物を見せるとは貴様も外道になったな。我の目が腐ったらどうするつもりだ。このようなモノ見るに耐えんは。この汚物は後で焼き払っておいてやろう』だってよ。ハハハ、ひどいこと言うな。」

 

「「「「……」」」」

 

次はアンデルセンだけど、これはかなり長いな。

 

「次は童話作家ね。この人は雪ノ下さん以上に毒舌だし、結構長いけど我慢して聞いてくれ、『まずは一言、このようなゴミを書くとは信じられんな。まだ幼児の遊びのほうが面白い。それから―――――――』」

                   ・

                   ・

                   ・

                  十五分後

「『―――ゆえにこのような展開はいいとはいえん。本当にゴミだな。まだ―――』」

 

「き、岸波」

 

「ん?どうした比企谷?」

 

「そ、そろそろ止めようぜ」

 

「感想は多いほうがいいだろ。まだ半分も来てないぞ」

 

「これで、半分も喋ってないってどんだけだよ。書いてない俺たちですら苦痛に感じたぞ。見ろあの雪ノ下でさえ青ざめて呆然としているし、由比ヶ浜に限っては泣いてるぞ」

 

「……」

 

「うぅっ…ヒック、ご、ごめん、なさい…グスン、生きてて、ごめんなさい…」

 

ホントだ。読んでて気付かなかった。

 

「み、みんなごめん。材木座のために読んだんだけどこんなことになるとは…。って材木座本人は?どこに行ったの?」

 

「ざ、材木座ならあそこだ…」

 

比企谷の指差したほうは教室の隅っこの角。そこに体育座りして真っ白になってブツブツと呟いている材木座。

 

「比企谷。この状況どうするか?」

 

「お、俺にはどうすることもできない。というか俺は俺の心が折れないよう頑張ることに生一杯だ」

 

比企谷お前もか…。

 

「え、えっとみんなごめんね。今日は解散にしようか」

 

今日という日は俺以外の奉仕部メンバーと材木座のトラウマとなった。

 

ホントにごめんね。

 

みんなに温かいココアをおごることにした。

 

ココアのおかげでみんなの心も体もポカポカになってある程度精神状態が落ち着いてきた。

 

そうして材木座が比企谷を見て、

 

「…また、読んでくれるか」

 

耳を疑ってしまうような言葉が聞こえた。

 

だがさっきよりもはっきりと力強く。

 

「また読んでくれるか」

 

「お前…」

 

「ドMなの?」

 

由比ヶ浜さんは比企谷の影に隠れて材木座を嫌悪の目で見る。

 

「お前あれだけ―――いや思い出したくない」

 

比企谷は自分肩を抱いて震え始めた。

 

それほどかアンデルセンの毒舌評価。

 

「確かに酷評されはした。もう思い出したくはないのだが、アレを岸波の口から聞かされている間、死ぬ方法がいくつも頭を流れた。というより死んだ気分だった」

 

もう宝具レベルだなアンデルセンの毒舌評価。

 

「だが、だがそれでも嬉しかったのだ。自分の好きで書いたものを誰かに読んでもらえて、感想を言ってもらえるというのはいいものだな。この想いに何と名前を付ければいいのか判然とせぬのだが。…読んでもらえるとやっぱり嬉しいよ」

 

そのときの材木座の笑顔はとてもいい笑顔だった。

 

「ああ、読むよ」

 

比企谷がそう言うと材木座は背を向けて「また新作が書けたら持ってくる。」といって部屋を出ようとしたが、

 

「待ってくれ材木座」

 

「ぬ。どうした岸波」

 

「さっきのアレの最後まで読まなかったろ」

 

俺の言葉に俺以外の全員が身体をビクつかせた。

 

「最後までいい評価はなかったんだけどさ。一番最後はいい言葉だと思うから言わせてくれ。『ここまで感想を言わせてもらったがこれが最後だ。この作品は作者の書きたいという気持ちが伝わった。また感想がほしければ読んでやる。だから出直してこい。』だってよ」

 

実は最後に『百年後にな。』が付くが、いいか。

 

「あ、ありがとう。だがやめておく」

 

「そっか。材木座、頑張れ。応援するよ」

 

そうして材木座は帰っていった。

 

 

 

 

 




はい。今回は白野くんの戦闘レベルが少しわかりましたね。

設定ではコードキャストを使わなくても不良レベルは軽く倒せます。

次回は早くもルミルミ登場。

そろそろ白野くんの進路指導アンケートを書きたいですね。

ではまた次回に。

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