面白いかはわかりませんが、楽しんでもらえると嬉しいです。
朝、携帯電話に二通メールが来た。
一つは鶴見先生から6時半頃に『留美のことよろしくね。それじゃあ行ってきます。学校はしっかり行きなさい』
うちの学校は進学校のため、第二、第四土曜日も授業がある。
返信は『わかりました。先生も出張頑張ってください』
もう一つは留美ちゃんから登校中に『白野。お母さんに聞いたから迎えに来て』
留美ちゃんはなぜか俺を呼び捨てにして、さらにタメ口なのだが別にもうどうでもいいか。
返信は『わかったよ。学校が終わったら迎えに行くね』
そんなこんなで現在は放課後、なぜか奉仕部の部室前に俺はいるわけだ。
休み時間、雪ノ下さんに『今日は部活には参加できません』と言って、理由を言おうとしたら雪ノ下さんが『そう言うことは放課後、部室で聞くわ』と返され、そのあとも話しかけたが無視された。
部室の戸をノックしてから戸を開く。
まだ部室には雪ノ下さんしかいないようだ。
「失礼します。雪ノ下さん。今日は用事があるから部活は参加できないんだ。だから今日は帰るね」
「ダメよ」
なんぜ?
「なんでダメなの?」
「理由がしっかりしてないわ。用事の内容がわからないから帰らせるわけにはいかないわ」
なるほど、さっきは言えなかったもんな。
「鶴見先生に頼まれてね。それで―――」
「ウソね。鶴見先生は今日出張でいないはずよ。ウソに鶴見先生を使うなんて、岸波くんは最低のようね」
ウソではないんだけど…。
「雪ノ下さん。なんか怒ってる?」
「私が怒っている。そんなわけないでしょ。まず私が怒る理由がないわ。もし私が怒る理由があるとしたら言ってみなさい」
絶対怒ってるよ。目と声が怖いもん。
でも、そろそろ学校を出ないと留美ちゃんに悪いしな…。
「あ、あの雪ノ下さん。俺、ちょっと急いでるからそろそろ帰っていいかな?」
「それなら本当の理由を言えばいいだけでしょ。それとも私には言えないことなのかしら?女の子と会うみたいな」
雪ノ下さん留美ちゃんのこと知らないのになんでわかったんだろ?
「そうだけど。なんでわかったの?」
俺の返答に雪ノ下さんはビックと身体を揺らした。
「やっぱり鶴見先生はウソだったみたいね」
あれ?留美ちゃんのことじゃないの。
「あの材…なんとか君が撮った写真の一年生の女の子かしら、名前は言峰カレンさんよね」
なぜここでカレン?確かに留美ちゃんを迎えにいた後バイト先で会うけど。
「いつから付き合ってるのかしら?」
「付き合う?」
付き合うってどっちだ?でも雪ノ下さんは俺に彼女はいないことは知ってるから、よく会う関係のことだよな。
そうなると、初めて会ったのは雪ノ下さんが海外に行った年でけど、よく会ったりするようになったのは中学生の後半。俺が三年生になったぐらいかな。そうなると…。
「二年以上は前かな」
雪ノ下さんは驚いたような顔をしたあと悲しそうな顔をした。
「そ、そう…。岸波くんはずっと私にウソをついてたのね…」
あ、あれ?なんか間違えた?
「わかったわ。それなら帰っていいわよ。なんなら部活を止めても構わないわ」
ええぇぇぇ!!
「どうしてそうなるの!?」
「この部活にいるよりも、その言峰さんと一緒にいた方がいいでしょ」
「いやいや。俺この部活気に入ってて楽しいし、カレンといるときも楽しいけど、それとこれは違うよ」
「ありがとう岸波くん。でもあなたがよくても私が嫌なのよ」
「なんで!」
「私の口から言わせないで…」
雪ノ下さんの目が潤み始める。
え、え、えっとーどうしてこうなったんだ。考えろ俺!!
………。
…………………。
……………………………。
ダメだ全くわからない。
「さ、岸波くん。そろそろ出て行ってくれないかしら」
雪ノ下さんが泣きそうな顔をしているのに、ここから出て行くのは俺には無理だ。
俺は雪ノ下さんに近付いて雪ノ下さんを抱きしめ頭を撫でる。
「そんな悲しそうな顔をされたら出て行けないよ」
雪ノ下さんは少し抵抗しながら
「離して、早く言峰さん…あなたの彼女さんの所に行ってあげなさい」
「か、彼女?」
「……」
「ねぇ雪ノ下さん」
「…なにかしら、岸波くん?」
少し涙声で雪ノ下さんが答える。
「なんか、勘違いしてない」
「えっ、勘違い?」
「なるほどね。岸波君。あなたってバカでしょ」
「いや、その場合雪ノ下さんもそうなるけど。ご、ごめんなさい。睨まないでください」
何とか収拾がついた。よくわからないけど雪ノ下さんは俺がカレンと交際している勘違いをして、今まで俺がウソを付いていたと思ったようだ。
「でもどうして雪ノ下さんは、俺がカレンと付き合ってるって思ったの?」
「材…なんとか君があなたと言峰さんが仲良くお昼を食べている写真を見たときよ」
「それにしてもおかしいよと思うよ。あの写真を見た他の二人はそう思ってなかったみたいだし。しかもあのとき俺は『誰とも彼氏彼女の関係じゃない』って言ったと思うけど」
「それだけではないわ。最近、岸波くんが私を避けていたからよ。」
「そんな覚えないよ。前にも言ったと思うんだけど、俺は俺からの意思で君から離れるようなことはしないよ」
そんなことは絶対しない。してはいけない。前に決めたことがあるから。
この女の子から絶対離れて行かない友人や仲間が出来るまでは、俺はこの子、雪ノ下雪乃を一人にはしないって…。
あんな家庭であんな親の下で育ったんだ、俺はこの子が信頼できる人が来るまでは絶対にこの子の味方でいたい。
「部活動では普通に接してくれたけれど、この数週間一回も部室でお昼を食べていなかったじゃない。前は少なくても週に二回、多くて毎日来ていたのに」
「いや、それは―――」
「それで、材…なんとか君の写真を見た次の日から今日まで、昼休みにあなたの後をつけていったら、大半は言峰さんと一緒に食べていたから」
怖っ!。メルトじゃなくてリップ方向ですか。メルトのほうも怖いか…。
ヤンデレだったけ?でも雪ノ下さんは俺にデレてないから…。
それってただ怖いだけだよね。もしかしたら後ろから刺されるかも…。
「あれはね、雪ノ下さんが一人で食べるのが好きって由比ヶ浜さんに言ってたし、由比ヶ浜さんと一緒に食べているのに俺がいたら邪魔になるだろうと思ったからだよ。それで、たまにカレンと会って食べてたこともあったから一緒に食べてただけだよ」
「そうだったのね。迷惑なことをしないでくれる岸波くん」
それはこっちの台詞だよ…。
「でも、誤解が解けてよかったよ。それじゃあ俺は本当に急いでいるからこれでね」
「待ちなさい」
まだあるのだろうか…。留美ちゃんに謝らないとな…。
「何かな?」
「その場合、今から会う女の子って誰かしら?」
だから目が怖いよ。
「さっき雪ノ下さんのせいで最後まで言えなかったけどさ…」
「責任転嫁は止めてくれるかしら?」
「いや、責任転嫁ではないと……。はぁ、えーっとね、鶴見先生に頼まれていたことで、鶴見先生が出張に行っている今日と明日の二日間、鶴見先生の娘さんを家で預かるからそのお迎えに行きたかったんだよ」
「それなら早く言えばよかったじゃない」
「言わせてくれなかったんだよ!君が!」
「だから責任転嫁は止めてくれない。怒るわよ」
もぉいいや。
「それじゃあそろそろ行くね。待たせたら悪いし…」
「岸波くん」
「まだなにかあるのかな?」
「まだ、あなたに罰があったわよね」
「罰?」
「由比ヶ浜さんの依頼が終わった後に職員室前で私を待たせた罰のことよ。忘れたの?ゴミねゴミ波くん」
そういえばあったな。ってゴミ波君!?
「ゴミ波君についてはあとでいいや。それでその罰がどうしたの?」
「今、その罰を決めたわ。あなたに拒否権は存在しないわ」
それはひどい…。
「その罰ってなに?」
「今度から昼休みは毎日私に飲み物を買ってきなさい」
「完全にパシリだよねそれ!しかも今度から毎日って…」
「わかったなら帰っていいわよ。嫌だったら今日は部活に参加して、部活が終わったら私を家まで送りなさい」
「それは本当に拒否権がないな」
これ以上留美ちゃんを待たせるわけにもいかないし。考えてた学校を出る時間より三十分もオーバーしたよ…。ん?ちょっとおかしいな。
「部活が始まって三十分過ぎてるのに誰も来ないっておかしいだろ。それに外に人の気配もないし…、ねぇ雪ノ下さん。今日は本当に部活あるの?」
雪ノ下さんが顔を背ける。
この反応は…、
「騙された!謀ったシャ〇!、じゃなくて雪ノ下さん!」
くそ!いつからだ。もしかして最初からか。
そうだとしたらかなりの演技力だぞ。俺の目を欺くとは…。
それに俺はかなり恥ずかしいこともしたけど!
「ええい、ままよ!それじゃあ俺もう行くからね!また月曜日、学校で」
「ええ、また学校で。帰るということは罰は決定のようね」
「今日部活もないのに!?仕方がないわかったよ。その罰を受ける」
俺は廊下を走りだした。
走っている途中、廊下を走っていたことを注意してきた平塚先生がいたのだが無視して走り抜けようとした。しかしラリアットを受けて俺は視界は真っ白に染まりかけた。
そのあと平塚先生に説教されて大幅なタイムロスをした。
「不幸だぁぁぁ!」
学校から十キロ以上離れている鶴見先生の家まで頑張って走った。
いつもは自転車で登校するのだが、留美ちゃんを迎えに行くため今日は徒歩で登校したからだ。
移動速度を上げる礼装『強化スパイク』のコードキャストを使えばもっと速く移動できるんだけど、さすがにこの時間に使うのは人目に付くから無理だろう。
「ハア、ハア、つ、着いた…」
人の家の前で息を上げていると変態にしか見えないな…。
息を整えてからインターフォンを押す。
『どちらさまでしょうか?』
少し警戒した留美ちゃんの声が機械越しに聞こえる。
「岸波です。遅れてごめんね留美ちゃん」
インターフォンが切れて、廊下を歩く音が聞こえる。
鍵が外れる音がしてから戸が開く。
「遅い…」
軽く不機嫌な留美ちゃんはジト目で俺を睨んでくる。
「ごめん。俺の所属している部活の部長が話を聞いてくれなくて…。なかなか学校を出れなくてね。ホントにごめん」
頭を下げて謝る。
「そう。そのまま待ってて、荷物持って来るから」
「えっと…。頭を下げたまま?」
「そうだけど?人を待たせるほうが悪いでしょ」
雪ノ下さんといい留美ちゃんといいあまり待つのが嫌いなようだな。
「わ、わかったよ」
留美ちゃんは家の中に入っていく。
数分経って留美ちゃんが荷物を持って出て来る。
この体制で本当に持っていたため周りの人から変な目で見られたりした。
「白野。お待たせ」
俺は頭を上げて何事もなかったように振る舞う。
「鍵は掛けた?」
「うん。大丈夫」
「荷物持つよ」
俺が手を差し出すと、荷物ではなく留美ちゃんは手を出して俺の手を握った。
「手、繋いで行こ」
「別にいいけど、荷物は重くない?」
「大丈夫。どうせ着替えぐらいしかないもん」
そうだな。着替えが入ってるならさすがに男には渡したくないか。
「わかった。それじゃあ行こうか」
こうして俺と留美ちゃんは手を繋いで俺の家まで歩いて行った。
俺の家と留美ちゃんの家は総武高に行くよりも近く、徒歩ニ十分以内で着く。
留美ちゃんの歩くペースに合わせてゆっくりと歩き、最近あったことなどを話すながら家にむかう。
俺が留美ちゃんと仲良くなった俺が高校一年生の中頃、鶴見先生に頼まれて鶴見先生の家に行ったときからだ。
それに留美ちゃんは俺と同じだったからだ。
彼女には今友達がいないらしい。
前までは一緒にいた友人達にハブられたようで、そのことを相談された。
だけど俺は友人関係のことには自信がなくどう答えればいいのかがわからないため、『俺には友達がいないからちょっと難しいかな』と返答したら。
『白野も友達がいないの?だけど私とは違うと思う感じがする』
『それはね、俺には友達はいないけど親しくしてくれる人達がいるんだよ。そういう人達がいるから今みたいにいられるんだ』
『私にはそういう人はいない…』
『なら俺がなってあげるよ』
『え?』
『もし辛いことや、悲しいことがあったいつでも言って。俺が相談にも乗るよ。まぁ友達のことはまだ難しいけどね』
『ホント?』
『うん。頼んでくれたら家にも行くし、俺の家に来てくれても構わないよ。家に来れば妹の桜もいるからね』
そんなことから俺は留美ちゃんの家に行ったり、留美ちゃんが俺の家に遊びに来たりして桜とも仲良くなった。
それでよく留美ちゃんに料理や宿題を教えたりしている。
留美ちゃんはジャンヌよりも勉強の覚えがよかった。
ジャンヌ。ガンバ。
「ねぇ白野?」
「ん?なにかな」
「白野がお母さんに渡してくれたお菓子おいしかった」
あの由比ヶ浜さんのときに作ったマフィンかな?
「あのマフィンのことだよね」
「うん。アレの作り方教えてくれない?」
「いいよ。でも今日はバイトがあって帰りが十時くらいになるから、明日一緒に材料を買いに行って作ろうか」
まぁ、同じものは作れないけどね。
「わかった。約束だからね。…。ねぇ白野?」
「なにかな」
「お母さんが言ってたんだけど、白野の高校ってバイト禁止じゃないの?」
「……」
「……」
無言の俺を無言(ジト目)で睨む留美ちゃん。
どうしたものか…。
実際は禁止ではなく理由があり教師の許可さえ得れば時間の制限はあるがバイトはできる。
だが俺は許可をもらってはいない。
その理由は簡単。バイトをしないといけないような理由がないからだ。
「えーっとね、留美ちゃん」
「なに?」
「内緒にしておいてくれない?」
「なんで?」
「…。あのねバイト先の店長に頼まれやってるんだよ」
「ホント?」
すごい疑ってる目だよ。俺信用されてないのかな。
「お願いします。黙っていて下さい」
「わかった。その代わり…」
その代わり?
「明日の買い物はで何か買って」
「それでいいなら別に構わないけど。何が欲しいの?」
この場合買い物はスーパーよりも『ららぽーと』とかのほうがいいか。
ららぽーととは、さまざまなショップや、映画館、イベントスペースなどがあるレジャースポット。
カップルなどのデートスポットでもある。
よく桜かカレンに連れてかれたりしているわけだが、二人とも美人なため無駄に目立つ。
周りの男性の視線や憎悪がすごいから少し辛い。
「まだ決めてない」
「そうか。留美ちゃん。鶴見先生は夜まで帰って来ないって言ってたけど。明日って何時くらいに送ってけばいいかな?」
「決めてないけど、白野が送っていってくれるなら少しは遅くてもいいってお母さんが言ってた」
「なら夕食は食べていけるから…。大丈夫か」
「?」
「明日はマフィンの材料を買いに行く前に一緒にららぽーとまで買い物に行こうか」
「いいの?」
「いいよ。約束だしね。お金もそこそこあるし」
俺岸波白野の所持金はかなりある。
父さんから月に五千円のお小遣い、バイト先での給料が時給七百五十円で週に二回の四時間とその他もろもろ。
さらにムーンセルのお金のPPTとサクラメントが俺の通帳に¥として入っていた。
簡単に言えば高校生にして一千万円以上のお金を所持しているわけで、使い道がないわけだ。
大金のためこのことは誰にも話しておらず、通帳は俺の部屋の金庫の中に封印している。
俺は物欲があまりないため父さんからの五千円で十分足りる。
バイト代はお菓子の材料や私服等の生活費とバイクの燃料代に使っているのだが、それでも余るぐらいだ。
PPTとサクラメントは一銭も使っていない。
だから俺はかなりの財があるのだ。もうハサンとは言わせない。
「ありがとう白野。明日楽しみにしてる。桜さんと三人で行こ」
なぜだろうな。桜はさん付けなのに俺は呼び捨て…。
「わかった。それじゃあ家に付いたら桜に話してね」
「うん」
留美ちゃんはたまに見せてくれる可愛い笑顔をした。
「ただいま」
「お邪魔します」
玄関の戸を開いて中に入る。
「おかえりなさい兄さん。留美ちゃんもいらっしゃい」
「桜さん。今日と明日お世話になります」
留美ちゃんは桜に頭を下げる。
なぜここまで違うんだ。桜がお淑やかで大人っぽいからか?それとも俺が子供っぽいからか?
俺の身長は170センチはあるから内面が子供?いや、俺の内にはオヤジがいるしな…。
「白野どうしたの?」
「そうですよ兄さん。玄関で立ったまま何を考えているんですか?」
「気にしないでくれ。それじゃあ俺は汗を流して着替えてからバイトにむかうね」
「はい。気をつけて下さいね兄さん」
「白野。いってらっしゃい」
「まだ家にはいるよ」
俺はシャワーで汗を流しバイト用の服に着替えて自室に移動。
現時刻は17:09
バイトの時間は17:30から閉店21:30の四時間。
家からバイト先までは徒歩十分で着くし自転車なら五分もかからない。
そろそろ出ないとな。
自室を出て二人がいる居間にむかう。
「桜、留美ちゃん。俺もう行くから。ご飯は二人で食べててよ」
「わかりました。あと兄さん。さっき留美ちゃんから明日のことを聞きました。明日は私も大丈夫なので一緒に行きますね」
「わかった。それじゃあいってきます」
「「いってらっしゃい」」
こうして俺は家を自転車で出てバイト先へとむかった。
俺のバイト先の中華料理屋は個人経営で裏に言峰家がある。
言峰さんの家庭は三人家族で、父、母、娘とよくある感じの家庭だ。
ここに来る前は外国の田舎のような綺麗な場所に住んにいたそうなのだが、奥さんが言峰さんの住んでいた日本に行ってみたいとを言ったようで、旅行で日本に来て、気に入って移住を決めたそうだ。
言峰さんは昔、神父をしていたそうであまりお金は持ち合わせていなかったのだが、奥さんの実家はまぁ金持ちらしい。
それで中華料理というか麻婆豆腐を作るのが得意だから中華料理屋をやったらしい。
結構辛い物好きの人やお試し気分の人に人気でかなり繁盛している。
まぁ看板娘と奥さんが美人だしね。言峰さんもチョイ?悪な感じで人気だし。
そして俺がこのバイトを頼まれた理由は…。
いつものように好物の激辛麻婆豆腐を食べていると
『少年よ。君はバイトには興味はないかね?』
『バイトですか?興味はあります。でもうちの高校はバイトが禁止ではないですけど、そういうことには厳しいので考えてはいません』
『なに、ばれなければいいさ』
『言峰さん。俺はバイトは考えてはいないと言ったと思いますけど…』
『君は知らないと思うが、私は今でも昔の仕事を頼まれる事が多くてね。たまにこの店を休まなければならないのだよ』
『そう言えばたまにやってない日がありますね』
『それでなのだが、私のいない日に手伝ってもらいたのだが』
『それこそ無理ですよ』
『大丈夫だ。君は料理が得意だと娘から聞いている。すぐにこの店のレシピも覚えることができるだろう』
『もしそうだとしても、店長の代理で料理なんか作れませんよ。いつものように休むでいいじゃないですか』
『この店も結構有名になってしまったからね。不定期に休んだらお客も困るだろ』
『確かに行こうと思って行ったのにやっていなかったじゃ嫌ですね。俺は近所に住んでいますからいつでも来れますけど。少し遠いところや、市外、県外から来た人にしたら困りますね』
『そうであろう。だから私はこの麻婆豆腐を多くの者に食べてもらいたいのだ』
店長は珍しく笑みを浮かべたが、その笑みは俺が困っているときのギルや俺をからかった後のカレンがする感じの笑みだった。
あれだな。愉悦ってヤツだな…。やりたくねぇー。
『それでもお断りします。さすがに店長の代わりに料理を作るのは―――』
『マカナイで、麻婆豆腐を出そう』
『喜んで引き受けます』
という感じで今に至る。
現在では、休日や祝日に店長が昔の仕事の手伝いに行った場合のみ代理、他に週二回の学校帰りの四時間やって、長期休みの場合は、頼まれた日が空いていれば手伝うことになっている。
でもまだ店長の代理は二回しかやっていない。
店の裏口というか言峰家の玄関に着いてインターフォンを鳴らす。
すぐに玄関が開いてカレンが出て来る。
「白野先輩遅かったですね」
「いつもこんなものだったと思うんだけど…」
「白野先輩は私に口答えするとはグレてしまいましたか?」
「どういう解釈だよ」
「白野先輩は女性に対しては無駄に優しいので、そういうことは言わないと思っていました」
「無駄には余分だよ。それに男性のも優しいつもりだけど…」
「そうでしたっけ?」
この子もこの子でかなり癖があるよな。
「えっとそろそろ中に入れてくれるかな?」
「白野先輩。こんなところで私に性交を求めるなんて変態な鬼畜外道になったようですね」
「そんなことするか!バイトだから店の裏から入れてほしいんだよ」
「店の裏で入れるなんてマニアックすぎですね」
「バイトって言葉が聞こえなかったのかな!?」
「性交をするバイトなんて雇ってませんよ」
「知ってるよ!」
「白野先輩は冗談もわからないようですね」
冗談でも女の子の口から性交とか変な言葉は聞きたくないよ…。
「わかってるよ…。ハァ…」
カレンとの会話は楽しいときは楽しいんだけど、他は疲れるんだよ。
「フフ」
キタ、愉悦笑い。
「本当にいい表情をしますね。それでは店の中へどうぞ。バイトの時間も過ぎてしまったので急いで下さいね」
誰のせいですか。カレンさん。
さっきの不毛な会話は何の意味があったんだか…。
本当に俺の周りの女性って桜以外俺に厳しすぎないかな。
今回はルミルミとカレンの登場。
カレンは原作よりもかなり壊れた気がします…。
あと白野くんの声優さんネタはやりたかったから入れました。
今度は材木座くん辺りに『まずは、その幻想をブッ殺す』とか言わせたいですね…。
それではまた次回に。