「ハッティー」
「はい」
「僕、ボクシング始めたんだ」
「へ?」
「僕の方が兄ちゃんだからな。頑張って、絶対強くなる。強くなって誰が来ても守れるようになるから」
「ダドリー⋯」
「⋯⋯だから⋯もし学校でいじめられたら、すぐ帰ってきていいからな‼」
「!」
「お前の親を殺したやつが来ても、その部下が来ても、守れるようになってやる‼だから、嫌だったらすぐに帰ってきていいんだぞ!」
「⋯⋯⋯」
思わずがばっと抱きしめた。
本当に、成長した。可愛い私のお兄ちゃん。
「行ってきます、ダドリー。ダドリーも、学校頑張ってくださいね」
「⋯⋯うん」
この家が襲われないために。
ダドリーが襲われないために。
私は流れに逆らわず、ホグワーツに行くんです。
「⋯⋯9と3/4番線なんて、どこにもないんだが?」
「⋯多分、案内の教員か、私と同じように学校に行く生徒がいると思いますから、それを探しましょうおじさん」
「⋯⋯もしかして、あの柱を通り抜けられるとか」
「あはは~、まさか⋯」
正解ですよダドリー⋯
「⋯⋯ハリエット・ポッターさんと、ダーズリー氏ですか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯!?」
「どちらですかな?」
「私は今年度からホグワーツに雇われることになった教員です。一般の家庭出身の生徒さんは、ここで戸惑うことが多いので、駅に行けない子がいないように見回っているんですよ⋯」
「じゃあ、行ってきます」
「気を付けるんだぞ!」
「風邪ひくなよ、ハッティー!」
名残惜しいけど、柱を抜けて駅に入った。
列車の中に入り、誰もいないコンパートメントを探し乗り込み、簡単に人よけの結界をはる。
「⋯⋯⋯」
暫く待つ。出発5分前になって、同じコンパートメントに、一人の男が入ってきた。
人よけはしたが簡易的なものなので、誰かが入ってきてもおかしくはない。入ってきた男を見上げる。
「⋯⋯⋯」
異常に白く、シミどころか毛穴すら見えない、美しい肌。長いまつ毛。青い瞳。ひどく整った顔にうっすらと微笑を浮かべている。耳は丸く、人間のものだ。艶々の長い白髪を三つ編みにまとめ、駅で怪しまれないためだろうか、黒のスーツを着こなして、空間拡張と質量軽減化の魔法をかけられた鞄を持っている⋯⋯
「しーちゃん」
「ん?」
「何してるの?」
「見ての通り、私も行くんだよ」
「どこに?」
「ホグワーツに」
「Why?」
「今年から教員として雇われたって言ったろう?」
「⋯⋯しーちゃん」
「ん?」
「初耳なんですけど!?ぜんっぜん、知らなかったんですけど‼」
「言ってなかったからねえ」
(⋯⋯いつの間に⋯何をしているんだ⋯教科は?)
「それは行ってからのお楽しみだ」
「⋯⋯その青い目⋯カラーコンタクトでもしてるんですか?」
「まあ、こっちの世界の吸血鬼も、目は赤いしね。勘のいい奴が目を見たら、人外だと気づくだろう。ところでハリエット、渡すものがあるんだ」
そう言ってしーちゃんは、鞄から籠を取り出した。
「⋯⋯梟?」
「入学祝だよ。白くて綺麗だろう。梟は手紙の遣り取りにいるからねえ⋯名前はヘドウィグ。店員さんにつけてもらったんだ」
「⋯ありがとう」
しーちゃんが来たので、スペースを保つためかけた人よけを解いた。
私もしーちゃんもすでに着替えている。
「しーちゃん」
「ん?」
「なんで教員になったんです?というかよく雇ってもらえましたねえ」
「教員だったらホグワーツで色々行動できるだろう?君がホグワーツに通っている間、何もしないのも暇だしね。あんなに怪しいクィレルだって雇ってもらえるんだから、私もいけるかなって思ったんだよ」
確かにクィレルは怪しい。ちらっとダイアゴン横丁で見かけたが、とても怪しかった。それに、どうやら本体が頭に憑りついているようだったし⋯
本当に、何でダンブルドアはクィレルを雇ってるんでしょうかねえ?
暫く会話していると、コンコン、とノックの音がした。
「どうぞ」
入ってきたのは、マダム・マルキンの店で会ったドラコ君だった。
「⋯⋯やっと見つけた、ポッター」
「⋯⋯また会いましたね」