今日は遂に魔法薬学の――スネイプの授業がある。今までは、出席を取る先生が変な反応をしたり、色々な生徒から不躾な視線を向けられていること以外には特に何の問題も起こっていない。既に十数点ほどの加点もいただいているから、もしスネイプから減点されたとしても、まあ問題はないだろう。
「スネイプ先生は⋯⋯どうなんだろうな。ポッターのことは学生時代の件で相当嫌っているはずだが、超が付くほどのスリザリン贔屓だしな⋯」
「正直最後に遭ったのが一歳の、既に他界した父への恨みで嫌がらせされても迷惑なんですけどね」
そもそも手を下したのはヴォルデモート卿だが、予言を伝えてきっかけを作ったのはスネイプだ。ある意味彼が殺したと言ってもいい。復讐はしている。誰より憎い男は死んだのだ。⋯⋯⋯代償に、初恋の女性も死んでしまったが。
『前』の彼はリリーにすがって生きていた。『今』の彼はどうなのだろうか。
スネイプの授業は厨二感溢れる演説で始まった。
「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。このクラスでは杖を振り回すようなバカげた事はやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中を這い巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である……ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだマシであればの話だが」
「⋯⋯」
ちらりと周囲を見ると、期待している者、緊張している者、青ざめている者など、様々な反応が見られた。
「ポッター!」
「はい」
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
⋯⋯とても一年生の、それも初めての授業で、つい先日までマグル界にいた生徒に聞いていい内容ではない。嫌がらせはあるらしい。
「睡眠薬です。この二つを鍋に入れて二度時計回りにかき回し、ナマケモノの脳みそ、催眠豆の汁を加え、水が澄むまで反時計回りにかき回せば、『上級魔法薬』に記載されている生ける屍の水薬の出来上がり。付け加えれば催眠豆は切らずに潰した方が汁がよく出て、催眠豆は13粒の方がよく、最後にかき回す回数は7回半時計周り、1回時計回り⋯⋯という調合法が作成しやすいですね」
自分で作成して売っているのだから、答えには自信がある。
「⋯⋯⋯もう一つ、聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね?」
「本来は山羊の胃を探しますが~⋯ここから一番近いのはおそらくスネイプ教授の貯蔵庫、切らしているなら医務室ですかね」
少し冗談を言うと、こめかみがピクリと動いた。
「⋯では、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね?」
「どちらも同植物のトリカブト⋯アコナイトを指す言葉です。モンクスフードはトリカブトの花の形が修道僧の帽子に似ていることからついた呼び名で、ウルフスベーンは狼を殺すために使われていたことから来た呼び名です」
教室が静まり返っていた。⋯⋯⋯なんですかスネイプ。それにドラコも。その信じられないような眼は。仮にも命を狙われること確定な世界に行くんですよ。事前に全カリキュラムを習得するのは当然でしょう。
「⋯⋯⋯英雄殿は随分と、予習をしてきたようですな。スリザリンに10点。しかし、今の質問に答えられたからと言って慢心することのないように。諸君、何故今のをノートに取らないのかね?」
皆がノートをとっている⋯⋯やっぱり、全員羽ペンなんですね。シャープペンシルは私だけですか。そうですか。
その後、簡単なおできを治す薬を作ることになった――なったのだが。
「ロングボトムさん。落ち着いてください。説明をよく読んで。時間は十分にあります。鍋を火から下ろさないうちに山嵐の針を入れてはいけません。最初の授業で鍋を溶かすつもりなんですか」
「⋯⋯あ!ご、ごめん⋯⋯」
「いえ、いいですよ。でも手順はとても大切です。薬品を扱う授業は危険度が高いですから⋯」
ドラコが「ロングボトムは最初の授業で鍋をとかしてたな⋯」とか言ってたからペアになったが⋯正解だった。
遠い目をして新薬開発を試みているとき爆発したのを思い出す。⋯⋯あの時、たまたま近くにいたヴォルが巻き込まれてアフロになったっけ。絶望的に似合ってなかったなあ。写真を撮りたかった⋯⋯
(絶対撮るなよ)
(え~(´・ω・))
(と・る・な)