ハリエット(シノア)の物語    作:揚げ紅葉(カスタード)

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ハロウィン 追悼とトロール

あれから特に何事もなく、ハロウィンの日がやってきた。

 

想像していたような、ヴォルの本体からの接触とか、誰かが暗殺しに来るような大きなことも無く、平穏な学生生活。まあ、グリフィンドールとの合同授業の時睨まれたり文句言われたり、スネイプから色々大人げない嫌がらせや嫌味があったりするのにはちょっと疲れるが、気にするほどのことではない。

 

 

というか、ヴォルデモート卿は私の中の分霊箱に気付いているのだろうか。視線は感じるけど反応は全く見られな⋯⋯⋯いやいやいやまさかあんな至近距離にいて、しかも『前』と違って分霊箱の意識が確立している状態で気付かないなんてそんな事は無いでしょう⋯⋯⋯

 

 

 

(無いですよね?)

 

(正直俺が一番不安だ)

 

(⋯⋯まあ確かに前は自分で自分の分霊箱破壊しちゃってますからね~)

 

(⋯⋯⋯)

 

精神世界で、少しむすっとした顔のヴォルを眺める。ここ数年、彼の表情が段々増えている気がする。

 

今日は出会って10年目の日。私としーちゃんの意識が出てきた日。

 

 

 

 

 

――そして、ハリエット・ポッターの両親の、命日。

 

「⋯⋯⋯」

 

しばらく歩いて、学校の敷地内にある湖に着いた。

 

去年まではゴドリックの谷の墓地に直接出向いていたが、ホグワーツでは姿くらましを使えない。

 

湖の前でしゃがみ込む。魔法で百合の花と、菊の花を造って、湖に浮かべる。風が吹いて、ゆっくりと花が流れていく。

 

「⋯⋯⋯」

 

それをぼんやりと見つめて、手を合わし、静かに黙祷する。

 

自分にはあまり感情がある方では無い。ほとんど知らない両親に対する執着も、復讐心も無い。

 

だが、あの二人が自分を守ろうとしてくれたのは、事実なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

毎年やっている追悼が終わって、さあ帰ろうと廊下を歩いていると、少しドアが開いているトイレから女の子の泣き声が聞こえてきた。

 

そこにいたのは、グリフィンドール所属の優秀な生徒、ハーマイオニー・グレンジャーだった。

 

「⋯⋯どうしたんですか?」

 

「~~す、スリザリンのあ、あなたには、関係ないでしょ‼あ、あなただって、どうせ⋯う、ううううう⋯」

 

だいぶ錯乱しているようだった。何があったのだろう。

 

「とりあえず、顔拭きません?せっかくの可愛い顔が台無しですよ」

 

「⋯⋯お世辞なんて、いらないわよ⋯⋯グスッ、でも、借りるわ⋯⋯」

 

別にお世辞ではない。歯を治して、髪を整えれば、おそらく彼女は見違えるほど可愛くなるだろう⋯⋯姉さんには負けるが。

 

ぽんぽんと頭を撫でる。少し落ち着いてくれた。

 

「⋯⋯グリフィンドールの私に構ってないで、大広間に戻ったら?というか、貴女何しているのよ」

 

「私はちょっと所用があって、これから戻るところです。良ければ一緒に戻りませんか?」

 

『―――いや、グリフィンドール寮に送ってあげた方が良い』

 

(⋯⋯え?)

 

『実は今、避難指示が出されて⋯⋯いや、やっぱりその場で十数秒待機。トロールが接近している』

 

今なんと言いました???

 

トロール。ホグワーツにトロール。ダンブルドア、警備体制を見直すべきでは?そしてスネイプ。「学校は安全」と言ってませんでした?

 

入れた犯人は想像はつくが⋯⋯

 

 

 

「⋯⋯ちょっと貴女、どうしたの?それに何?この臭い⋯」

 

「⋯⋯下がっててください、グレンジャーさん」

 

杖を出す。彼女の前で鎌を出すのは不味い。

 

それに、鬼を遣うような脅威では無い。

 

トロールが入ってきた。その直後に、鍵が施錠される。

 

暗殺目的、だろうか。

 

「⋯⋯⋯ひっ」

 

「グレンジャーさん」

 

「な、なに?トロールが」

 

「目を瞑っていてください」

 

「⋯⋯え」

 

トロールがこちらに向かいながら棍棒を振り上げる。その無防備な姿に向けて、杖を振るった。

 

 

遣うのは殺傷能力の高い闇の魔術、セクタムセンプラ。局所的に集中運用して、首だけを刎ねる。

 

トロールの首が放物線を描き、ころころと転がる。

 

「⋯⋯大丈夫ですか?」

 

「⋯⋯え、あなた⋯⋯いま、なに、して⋯⋯」

 

「ディフィンドの応用です」

 

嘘だ。だが流石に事実は言えない。

 

トロールの首を拾い上げる。

 

「さて、行きましょうか」

 

「え!?⋯⋯あ、うん⋯⋯」

 

鍵を開けて、外に出る。

 

右を見ると、何故かドラコとロン・ウィーズリーが、マクゴナガル先生、スネイプ、クィレルに囲まれている。

 

「⋯⋯⋯」

 

静かに近寄っていく。先生たちが気付く。唖然とした顔。クィレルが小さく「ひっ」と悲鳴をこぼす。

 

ドラコ君が必死に何かを説明している。

 

「ですから、僕たちは避難指示が出たことを知らない二人を探しに来たんです!そしたらトロールがトイレの中に入って行って⋯⋯閉じ込められると思ったんで、さっき鍵を閉めたんです!はやく何とかしてください!」

 

「⋯⋯へ~え、そうなんですか。探しに来てくれたんですかあ。てっきり、私を暗殺しに来たのかと思っちゃいましたよ」

 

「⋯は!?暗殺!?いったい何を⋯⋯⋯て、え?」

 

ドラコ君がギギギ⋯⋯と振り向いた。その腕に、ぽんっとトロールの首を置く。

 

「⋯⋯さて、ドラコ君。一年生の女の子二人、危うく殺しかけた感想⋯⋯聞いてもいいですかねえ」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 

 

 

 

ドラコは暫く硬直した後、迷うことなく⋯⋯地に足を付けて、頭を下げた。

 

それはそれは見事な土下座だったという⋯⋯

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

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