ハリエット(シノア)の物語    作:揚げ紅葉(カスタード)

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スネイプ先生のメンタルが少しやられますが、作者は別にスネイプ先生が嫌いなわけではありません


尋問

「私の親を殺す情報を売ったそうですねぇ。死喰い人さん」

 

目線をスネイプに向ける。蒼白な顔をしている。

 

「⋯⋯⋯な、ぜ」

 

「あなたの口から聞きました。先程まであなたは高熱で意識が朦朧としていた」

 

まあ、彼が情報を売った男だというのは、最初から知っていたのだが―――

 

薬瓶を小さな机に置く。

 

「学生時代、私の父とは随分仲が悪かったそうですね。いたずら仕掛人、でしたっけ?会うたびに喧嘩してたそうですね。4対1で。まるで弱い者いじめ」

 

「⋯⋯⋯」

 

「確か彼らの計画で、死にかけたんでしたっけ。さぞ憎らしかったことでしょう。私への嫌がらせは、その八つ当たりですか」

 

「⋯⋯⋯」

 

「さて、そんな憎くてたまらない私の父は、あなたがヴォルデモート卿に売った情報で妻諸共に殺され、憎い男の子供は孤児になったわけですが⋯⋯どうでしたか」

 

「⋯⋯⋯」

 

「間接的に復讐出来て、愉しかった?清々した?」

 

それに彼は、声を詰まらせる。ぐっ、と感情をこらえるような顔をする。

 

言いすぎたかもしれない。

 

 

「⋯⋯⋯ぽ、」

 

「な~んて、ね」

 

声に抑揚をつけて、へらりと笑う。スネイプの顔がぽかんと呆ける。

 

今のはただの嫌がらせだ。入学当初から続いてきた、ねちっこい嫌味と嫌がらせの、お返し。

 

復讐心は無いが、思うところはあったから。

 

「チュニーおばさんから聞きました。母さんとは、幼馴染だったそうですね。随分仲が良かったそうじゃないですか。母さんのこと、大好きだったんでしょう?初恋ですか?まあ分かりますが。写真見ましたけど、と~っても可愛い美少女でしたもんねえ」

 

「⋯⋯⋯」

 

「でも別れた。『穢れた血』と呼んでしまったから」

 

「⋯⋯⋯」

 

「マグルの父親が憎らしかった。だからマグルのことも嫌いだった。でも母さんのことは好きだった。母さんに見てほしかった。何故そうなったのかは理解が難しいですが、闇に染まれば自分を見てくれると思ってしまった。そしてあなたは死喰い人になった」

 

「⋯⋯⋯」

 

「シビル・トレローニの予言の一部を聞いた。7月31日に生まれた子供がどの家の子供なのかなど考えず、ヴォルデモートに伝えた」

 

「⋯⋯⋯」

 

「ねえ、スネイプ。⋯⋯謝罪がいりますか?」

 

「⋯⋯なにを、いって」

 

「7月31日に生まれた子供がいなければ、ポッター家は、少なくともあなたが渡した情報でヴォルデモートの標的になることはなかった。母さんは、今も変わらず生きているかもしれなかった」

 

まあ、そもそもポッター家は不死鳥の騎士団側で、リリー・ポッターはマグル界出身の魔女だから、予言が無くとも戦死する可能性はあったのだが。

 

「この子供さえ、いなければ―――そう思ったことは、ないんですか?」

 

「⋯⋯そんな、ことは、」

 

「でも私のことを少なからず憎んでいますよね。違う?」

 

「⋯⋯⋯」

 

「スネイプ。謝罪が欲しければ、謝罪しますが」

 

驚きと、哀しみと、後悔が入り混じったような顔でこちらを見つめる。

 

私も静かに見つめ返す。

 

暫く沈黙が続いて、

 

「⋯⋯⋯ポッター」

 

「はい」

 

「我輩が、憎くはないのか」

 

「⋯⋯⋯」

 

「お前こそ、謝罪はいらないのか。私に復讐したくはないのか。殺したいと思わないのか」

 

「別に。あなたに復讐するために行動しようと思うほど、あなたに興味がありません。それに復讐するなら、あなたより先にヴォルデモート卿の所に行きます」

 

「⋯⋯なら、お前はどうしたいのかね」

 

「とりあえず、いい加減嫌がらせを控えていただきたいですかね。面倒なので」

 

「⋯⋯⋯」

 

「あと、あんまりネビルさんをビビらせないでほしいですね。彼が失敗するのって、半分以上、あなたが怖いからなんですよ。ハーマイオニーいわく、彼、薬草学が好きなんだそうです。一年生のレベルの魔法薬よりも難しい動く植物の剪定がうまいんですって。材料と教科書と、落ち着いて作業できる環境が揃っていたら、もっと効率よく調合ができるんじゃないかな~って思いましてね」

 

「⋯⋯⋯」

 

「ああ、あと⋯⋯」

 

薬を手に取る。

 

「薬。飲んでいただきたいですね」

 

「⋯⋯⋯」

 

スネイプが薬を受け取る。飲む。少し目を見開く。

 

「⋯⋯⋯飲みやすいな」

 

「あ、そ~ですか?よかったです。私のオリジナルなんですよ、それ」

 

「⋯⋯⋯お前のかね?」

 

「味を改良したんですよ。あ、調合する際材料をあなたの貯蔵庫から調達したんで、減っていても驚かないでくださいね。一応使ったもののリストはあなたの仕事机に置いておきました」

 

「⋯⋯そうか」

 

「それとですね」

 

「まだあるのかね」

 

「今、深夜2時なんですよ」

 

「⋯⋯⋯は?」

 

「消灯時間はとっくの昔に過ぎ去りました。良い子は寮で寝ている時間です。今外に出たら、先生に見つかって、減点されちゃうかもしれないんですよ。罰則になるかもしれないんですよ」

 

「⋯⋯⋯それで?」

 

ひくひくと頬を引きつらせながら、彼が続きを促した。

 

「スネイプ先生。私はソファでいいので、この部屋に止めてください」

 

「帰れ」

 

「嫌です」

 

「帰れ。一応ここは我輩の⋯⋯男の部屋だぞ?」

 

「え?あなた、いくら私が母さんとそっくり同じ目の美少女だからって、11歳の子供に欲情して手を出したくなるようなロリコンなんですか?やだ~へんた~い。近寄らないで」

 

「⋯⋯ポッター⋯」

 

「ははは⋯⋯ま、一応あなたのことは信じます。あなたの母への感情に、嘘はないのでしょう。だからダンブルドアはあなたを信じる。あなたは決して、母を、リリー・エバンスを裏切ることができない。あなたの生きる意味はリリーだけ。リリーの子供を守る事だけ。⋯⋯ただそれだけだから」

 

「⋯⋯⋯」

 

「⋯⋯でも、ねえ、スネイプ」

 

「⋯⋯なにかね」

 

「あなたが私のことを守ろうとするのは、最愛の人を死なせてしまった自分の弱さと愚かさを、誤魔化しているだけですよ」

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯わかっている」

 

「⋯⋯ああ、分かっているんですか。それはつらいですね」

 

鞄から毛布を取り出し、ソファに向かう。

 

「本当にここで寝るつもりか」

 

「あなたの容態が急変しても困りますから。⋯⋯あ、スネイプ先生」

 

「なにかね」

 

「あなたが開心術で私からとった情報、全部ダミーなんで、忘れたほうが良いですよ」

 

「⋯⋯⋯は?」

 

「じゃ、おやすみなさ~い」

 

「おいポッター!」

 

なにか呼ばれているが、もう反応しない。随分遅くなったが、明日も授業はあるのだ。

 

それだけ叫べるほど回復したのなら、彼も明日から復帰できるだろう。

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